全国書店新聞
             

令和5年12月1日号

京都ブックサミット/1700名来場/業界関係者や著名人「本を愛する人」集まる

出版文化産業振興財団(JPIC)などが主催する秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」のメインイベント「KYOTOBOOKSUMMIT」(京都ブックサミット)が11月8、9日、国立京都国際会館や平安神宮会館など京都市内の各会場で開催され、書店や出版社、図書館、読者など本を愛する人たちが2日間で約1700名参加した。今回が初開催。作家の今村翔吾氏、歌手・俳優の小泉今日子氏、元ボクシング世界ミドル級王者の村田諒太氏ら著名人や業界関係者が本にまつわる多彩なテーマで講演やトークショーを行い、たくさんの聴衆が訪れた。出版DX化関連の展示も関心を集めた。

京都ブックサミット/シンポジウム「図書館と著者・書店・出版社の未来」/作家の今村翔吾氏、久美堂の井之上健浩社長、JPICの松木修一専務理事が提案

[今村翔吾氏/トーナメントで受賞作品決める/「図書館本大賞」創設を提唱]
9日、京都市左京区の平安神宮会館では、作家の今村翔吾氏、日本図書館協会の岡部幸祐専務理事兼事務局長、原書房の成瀬雅人社長、久美堂の井之上健浩社長が「図書館と著者・書店・出版社の未来」と題してシンポジウムを行い、参加した業界関係者らが熱心に聞き入った。司会進行はJPICの松木修一専務理事が務めた。
登壇した5氏は全員、書店、出版社、著者や図書館の関係者らが共存・共栄の道を話し合う「対話の場」の構成員。対話の場の会合はこれまで10月3日、同30日の2回行われているが、今回のシンポジウムはよりざっくばらんに意見交換や提案を行うために設定された。
今村氏は「図書館本大賞(仮)」の創設を提唱し、賞の概要を説明。地域文化振興や書店と図書館の共存・共栄のためにも開催を検討してほしいと呼びかけた。
この賞は図書館司書が選ぶ文学賞。各都道府県在住の作家の中から代表作家を一人選び、47人の作家が甲子園のようなトーナメントを行う。代表作家はその都道府県の図書館司書の投票で選び、数ヵ月のトーナメント戦を経て、その年の受賞者が決まる。
トーナメントを3、4ヵ月かけて行うことで、書店は長期間にわたりご当地作家の本を増売することができ、図書館にとっても貸出数増加につながる。地方創生が言われる中、作家と地域のつながりが生まれ、図書館が地元の推す作家を育てれば、その作家を中心に文化事業も行ないやすくなる。
今村氏は同賞の目的について、①地域からの文化の振興、②ふだん本を読まない人たちへの訴求、③図書館と書店の協調――と説明。「カリスマ書店員はたくさんいるが、図書館司書も本のプロ。47都道府県の図書館司書が選ぶ、本屋大賞に優るとも劣らない文学賞を創りたい。野球のWBCは高い視聴率を記録したが、日本人はトーナメントが大好き。このような文学賞があってもいい。我が町の我が作家が受賞すれば、その町に住む子どもにとっても励みになり、未来の読者、未来の作家を育てることにもつながる」と述べ、創設を検討してほしいと訴えた。

[久美堂・井之上氏/図書館の本を書店で受け渡し/新サービスで来店客・売上増]
東京・町田市を中心に書店6店舗を展開する久美堂の井之上氏は「公共図書館との連携について」と題して自社の取り組みを紹介した。
鶴川駅前図書館の指定管理者である同社は、新たな取り組みとして、市立図書館全8館の蔵書を対象に「本町田店」の店頭で予約資料の受け取りと資料の返却サービスを実施している。利用者はネットで貸し出し予約をして、受け取り場所に「本町田店」を指定、3日ほどで店頭で受け取ることができる。返却BOXの設置事例はあるが、受け取りができるのは日本初。サービスを開始した6月1ヵ月で約200人が438冊を受け取った。そのうち164冊が児童書。
このサービスを始めたことで来店客数が増え、学参・児童書の売上が前年比120%に増加。貸出本は図書館巡回の物流で対応するため店頭での複雑なオペレーションもないという。
井之上氏は「どの書店でも出来る可能性があり、地域の書店と図書館が共存できる一つのモデルになるのではないか。損益はトントンでも、一人でも読者を増やし、書店で本を買ってもらうことがメリットになる」と述べた。

[JPIC・松木氏/「書店在庫情報プロジェクト」発表/図書館帰りに街の書店で買物を]
JPICの松木氏は、図書館蔵書検索サイト運営の㈱カーリル、版元ドットコムとともに準備を進めている「書店在庫情報プロジェクト」について発表した。
同プロジェクトは、近隣の書店に求める本があるかどうかをスマホで検索できるようにして、書店に人を呼び込むことが目的。チェーン書店、個人書店、独立系書店を問わず、すべての書店の店頭在庫をインターネット上で公開し、地域住民が近くの書店で本を買いやすくなる環境作りを目指す。図書館やウェブサイトで近隣書店の在庫を見て、書店で本を購入する道筋を構築する。トーハン、日販も協力。
日本図書館協会の岡部氏は自治体の立場から、大型書店だけでなく街の書店も網羅し、検索する書店に偏りが出ないようにしてほしいと求めた。

京都ブックサミット/今村翔吾氏が講演「未来の本のため、先頭に立つ」

京都ブックサミット初日の8日、京都市左京区の京都国際会館で、作家の今村翔吾氏は「100年後の本のために」と題して講演し、約430名の聴衆が熱心に聞いた。
今村氏は、100年後について「本は残るが、骨董品を集めるような趣味になる。市場は小さくなっていく」と予測。「今の出版界は幕末だとしたら黒船どころではなく3分の1ぐらい植民地になった状態」とし、「このままだと全員一緒に沈む。読者のためにここらでどうにかすべき。それを考えながら全国行脚や書店経営をしてきた。僕は本の世界に人生のすべてを賭けたい。『BOOKMEETSNEXT』が出版界を盛り上げる最初の一歩になる。先頭に立つので同じ思いの人は力を貸してほしい」と呼びかけた。

12月13日に出版販売年末懇親会

日書連は12月13日(水)午後6時、東京・千代田区の帝国ホテルで恒例の「出版販売年末懇親会」を開催する。
書店が主催する出版業界の懇親の場として、出版社、取次、業界関連団体などを招いて毎年行っているもので、同ホテルの本館中2階「光の間」を会場に開催する。

京都ブックサミット「オープニングセレモニー」/出版界の未来の地図、発信/近藤氏「力合わせて行動を」

秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」(BMN)のメインイベント「京都ブックサミット」のオープニングセレモニーが11月8日、京都市左京区の京都市京セラ美術館で開催された。
BMN実行委員会の近藤敏貴実行委員長(出版文化産業振興財団理事長)は、10月27日から11月23日までのBMN期間中、全国の3700書店で7500のイベントが行われると報告。「出版界は非常に厳しい状況にある。苦しい時に戦ってきた先人のように書店、出版社、取次の3者が力を合わせて行動するしかない。BMNをきっかけに出版界の未来の地図を京都から発信したい」と述べた。
来賓の文科省の日向信和審議官(文化庁京都担当)、京都府の西脇隆俊知事、読書推進運動協議会の野間省伸会長の各氏があいさつし、BMNアンバサダーからのビデオメッセージを上映した。
続いて、「本の日」記念ブックカバー大賞2023の表彰式を行った。今回は東京のイラストレーター斉藤みおさんのデザイン「それ面白い?」が大賞に輝いた。斉藤さんの作品は文庫カバーとして全国の書店で同時に展開されている。
懇親会では、京都市の門川大作市長、元ボクシング世界ミドル級王者の村田諒太、日書連の矢幡秀治会長、近藤実行委員長の4氏で鏡開き。門川市長の発声で乾杯した。
京都ブックサミットの開催に尽力した大垣書店の大垣守弘会長は中締めのあいさつで登壇。「書店が持続するためには、出版社が時代に合った本を出し、書店も努力してしっかりと展開することが大事。出来れば来年も京都で開催したい」と話した。

神保町ブックフェスティバル/ワゴンセール「本の得々市」が盛況

第31回「神保町ブックフェスティバル」(同実行委員会主催)が10月28、29日の2日間、千代田区神田神保町のすずらん通り、さくら通り、神保町三井ビルディング公開空地の各会場で開催され、本を求めるたくさんの人たちで賑わった。昨年は新型コロナウイルスの感染防止対策のため各種イベントを中止し飲食店の出展を見送るなど規模を縮小したが、今年は通常通りの開催となった。
出版社が謝恩価格本や汚損本を割引販売するワゴンセール「本の得々市」では、掘り出し物を求めて多くの読書家がつめかけた。早川書房と東京創元社のワゴンは今年も人気で、サイン本やグッズを求めて終日長蛇の列ができた。
「こどもの本ひろば」では、絵本・児童書ワゴンセール、紙すき体験、シールラリー、おはなし会、音楽ライヴなどが行われ、親子連れで賑わった。

書店大商談会/来年はジャンル別で開催/書店員表彰企画の実施も

「書店大商談会」実行委員会は10月18日、東京・千代田区のアルカディア市ヶ谷で第12回「書店大商談会」を開催し、書店66名、出版社122名など計約220名が参加した。今回は従来の商談ブースの出展を中止し、デジタルパンフレットでの発注に切り替えるとともに、情報交換の場として研修会や企画説明会、懇親会を実施した。
懇親会の席上、主催者を代表して登壇した矢幡秀治実行委員長(真光書店)は、「商談会ではあるがブース形式ではなくなってしまったことを申し訳なく思う。参加書店が集まらないなど様々な課題がある中、書店と出版社のつながりはリアルにしたいと考え、懇親の場を設けた」と説明。「書店の売上が伸びずに厳しい中で国に助けを求めるということではなく、国は書店と出版界が残るために手伝うべきだと思っている。色々なことに取り組みながら書店存続のために努力したい」と話した。
加藤勤実行委員(ブックスタマ)は次年度の企画について説明した。書店、出版社からの声を受け、2024年はリアルでの商談会復活を予定。いくつかのジャンルに分けて数回開催し、開催時期は各ジャンルの繁忙期に間に合う時期にする。また、エントリーされた商品の増売や飾り付け、POP、接客、棚作りなどいくつかのテーマで書店員を表彰することも計画している。
研修会では、PubteXの永井直彦社長が同社の「AI発行・配本最適化ソリューション事業」と「IoTソリューション事業」の取り組みをテーマに講演。続いて矢幡実行委員長と出版文化産業振興財団の松木修一専務理事、文化通信社の星野渉社長が「韓国に学ぶこれからの書店」と題して鼎談を行った。また、元ボクシング世界ミドル級王者で読書家として知られる村田諒太氏が記念講演を行った。聞き手は髙橋小織実行委員(隆文堂)が務めた。

絵本わーるどinひょうご/家族連れ500名が来場/絵本キャラとの写真撮影が人気

兵庫県書店商業組合は10月1日、西宮市の西宮市民会館で「絵本ワールドinひょうご」を開催した。
当日は500人超の家族連れが参加。絵本作家のたかいよしかず氏と森くま堂氏のサイン会、絵本原画展・パネル展、塗り絵や工作などのワークショップ、紙芝居や絵本の読み聞かせ、さらにデブ猫のマルやゾロリ、キャベツ君といった絵本キャラクターと一緒に写真を撮るフォトスポットは大変な賑わいとなり、参加者は絵本の世界との触れ合いを楽しんだ。
最後に森忠延理事長が来年の開催を約束し、閉会した。
(大橋崇博広報委員)

日書連のうごき

10月4日 JPO運営幹事会に事務局が出席。
10月6日 東日本地区書店楽結会懇親会に矢幡会長が出席。
10月11日 中小企業全国大会に矢幡会長が出席。公取協連合会連絡会議に柴﨑副会長が出席。塩谷立議員を励ます会に矢幡会長が出席。
10月13日 JPIC補助金セミナーに事務局が出席。公取委ヒアリングに矢幡会長、春井、平井両副会長が出席。
10月16日 読売出版懇親会に矢幡会長が出席。本の日委員長会議(Web)に矢幡会長が出席。
10月17日 出版倫理協議会に事務局が出席。「BOOK MEETS NEXT」オープニングイベントに矢幡会長が出席。
10月19日 政策委員会に矢幡会長、鈴木、藤原(Web)、柴﨑、春井、深田(Web)、平井各副会長、小泉、葛西(Web)、渡部各監事が出席。定例理事会。読書推進委員会(Web)。
10月25日 出版平和堂「出版功労者顕彰会」に矢幡会長が出席。
10月27日 全国書店再生支援財団臨時理事会に平井副会長、髙島理事が出席。
10月30日 出版物関係輸送懇談会に藤原副会長。
10月31日 出版ゾーニング委員会に事務局が出席。

新会社「ブックセラーズ&カンパニー」方針説明会/2つの取引モデル提案/高井会長「売上増と返品減を両立」

紀伊國屋書店、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、日本出版販売(日販)が10月2日に設立した新会社ブックセラーズ&カンパニー(BS&C)は11月2日、東京・渋谷区の紀伊國屋サザンシアターで方針説明会を開催し、出版社211社・293名が出席した。当日はBS&Cの高井昌史会長、宮城剛高社長が登壇し、店舗が仕入れに責任を持ち、売上拡大と返品減少で生まれる利益をシェアする「販売コミットモデル」(全銘柄包括契約)と、ロングセラー銘柄・シリーズの売場展開、売上をコミットし、完全買切・低掛率で仕入れる「返品ゼロモデル」(単品買切売買契約)の2つの取引モデルで本を直接仕入れる新しいスキームを説明。「出版流通改革で書店・出版社の利益を最大化する」と訴えた。

[参画書店代表して出版社と直仕入契約]
BS&Cは書店主導の出版流通改革の実現に向けて10月2日に設立された。会長に紀伊國屋書店の高井昌史会長兼社長、社長に紀伊國屋書店の宮城剛高経営戦略室長、取締役にCCCの内沢信介事業戦略室長・書店流通改革プロジェクトリーダー、日販の日野泰憲マーケティング本部部長、非常勤取締役に日販グループ会社NICの近藤純哉社長がそれぞれ就いた。
説明会の冒頭、高井会長は会社設立の意義について次のように話した。
BS&Cは3社の書店の代表となって出版流通の課題解決に向けたチャレンジを始める。新会社を通じて出版社に伝えたいのは3つ。1つ目は書店と出版社が直につながってビジネスをしていきたいということ。2つ目は合理的な物流の実現に向けて協力していこうということ。3つ目は書店の復興に向けてさらに支援いただきたいということ。
紀伊國屋書店、TSUTAYA、日販グループ書店のNICを合わせると約1000店舗になる。書店を通じて販売される本の売上の20%を超える。これだけの規模の書店が売上を増やして、返品を減らすことにコミットしていく。3書店の代表であるBS&Cと出版社が直接交渉して仕入数を決め、各店舗でしっかりと展開していくことで売上増と返品減を両立させることを目指す。商品によっては1000店舗分の在庫を買い切ることも提案していく。
物流経費が上昇し、2024年問題も控えている今は、物流合理化に向けた最後のチャンス。新会社では紀伊國屋書店などの大型店舗を核にして参加書店間における在庫のローリングも計画している。新刊の在庫の偏りを解消し、書店と出版社の売りたい本が旬の状態で店頭に並ぶ環境を実現していきたい。業界の大きな課題として雑誌配送の合理化にも取り組む。時限再販や海外店との連携も検討しながら、雑誌の返品を極力減らし、輸送問題の対応策を出版社とともに講じていく。
1000店舗で働くスタッフや本部スタッフを含めると約1万人の従業員すなわちブックセラーが働いている。新会社ではAIを使った需要予測にも取り組むが、何より重視しているのは現場やバイヤーの力。プロのブックセラーと作り手である出版社や著者がコミュニケーションをとれる環境を整え、読者にとって魅力的な書店を作っていく。
こうした思いを実現していくには出版社の賛同と支援が欠かせない。現行の取次委託取引からBS&Cとの直接契約に変更してもらうことで出版社にも多くのメリットが生まれるようチャレンジしていく。今後とも支援していただきたい。

[従来の出版流通を改革/利益最大化図る]
続いて宮城社長が設立の目的、提供したい価値、新しいビジネスモデルについて、次のように説明した。
BS&Cとして取り組んでいきたいビジョンは3つある。一つ目は新たな売上の創出。1000店舗の商品ごとの販売データ、在庫データをBS&Cで串刺しに分析できる体制を整える。店の規模や地域といった特性の違いを踏まえた上で、ある店舗で売れている商品の横展開や重点販売商品の取りまとめ、書店間の在庫のローリングも計画している。
2つ目は仕入の適正化。1000店舗の実績のデータの分析に加えて、AIなどのテクノロジーや現場の目利き力を活用しながら、需要予測の精度を高めていく。そして、書店からの一方向ではなく、出版社の声にも応える双方向の仕入れ計画を実現していきたい。
こうしたサイクルを回していくため、出版社と直仕入の契約を結びたい。書店と出版社が直接手を結んで販売と返品にコミットし、売上を伸ばし、返品を減らす。出版流通の改革を実現させたい。そうして生まれた利益をシェアし、書店というビジネスを継続して営めるようにしたい。
BS&Cは参画書店の代表として、出版社と直接仕入の契約代行と共同仕入を担う。参画書店からはバイヤーなどの人材を派遣するとともに、スキルやインフラの提供、BS&Cと各書店がシームレスにつながる体制を構築していく。
物流については日販に委託し、精算を含めて両社のインフラを活用していく。皆様に伝えたいのは、我々は新たな取次を作ろうとしているわけではないということ。目標は従来の出版流通を改革して書店と出版社の利益を最大化することだ。賛同する出版社、志を共にする書店が大きな負担を抱えることなく参画できるオープンな仕組みを目指していく。
3社それぞれの従来の取り組みとBS&Cで提供したいスキームの違いは2つある。まず、書店の代表として我々が直接出版社と契約を結び、取引条件と仕入数を決める。これは書店にとっても大きな覚悟がいることだ。我々のスキームでは物流コストを書店も負担する。書店が自ら仕入数を決めて、仕入れた商品を最大限売り伸ばし、返品を減らす。そのことが書店の利益増加に直結していく。また、雑誌配送の合理化への取り組みや、紀伊國屋書店とTSUTAYAの海外店舗の活用にも取り組んでいく。書店の自助努力が経営改善につながっていくサイクルを作っていきたい。
もう一つは、書店と契約出版社が双方向につながる環境を整えること。出版社の声をダイレクトに店舗に伝えるための各種の定例会、チェーンの垣根を超えたオリジナルの企画、地域単位での参加店コミュニティを計画している。
私たちがこだわりたいのは、単に返品率を下げるだけではなく新たな売上を創ること。従来の取り組みでは返品率を下げることに重きを置くあまり、送品が絞られる傾向にあった。その反省を踏まえて、我々は売上を創るための必要な送品を増やしていくことにこだわる。参画する書店の英知を集めて、売上を増やしていくめの様々なプランを用意した。
取引モデルとしては2種類用意した。この2つのモデルを組み合わせて、各出版社に最適化する形でカスタマイズし、提案していきたい。
契約出版社の書籍全体を対象とする「販売コミットモデル」、その中でも一部の商品については「返品ゼロモデル」という形で買切にもチャレンジしていく。
より多くの人々に書店に来てもらうための施策も行う。参加する書店が共同で実施する販売促進企画や、チェーンの垣根を超えて最寄の書店の在庫がひと目で分かる書店共通アプリの導入も検討する。オンラインやバーチャルにはないリアル書店の強みや魅力をBS&C発で伝えていきたい。
最後に事業計画だが、参画する書店の全取引の半分を、3事業年度を目安として「販売コミットモデル」による直仕入に切り替えていく。これに加えて、全取引の1割を「返品ゼロモデル」として買い切る。また、必要に応じて従来の取次委託も併用していく。

[来年4月、本稼働へ]
説明会の後に行われた囲み取材で、宮城社長は今後のスケジュールについて「まずは3社1000店舗の運用をしっかりと固める。来年1月から出版社数社とスタートし、4月に本稼働したい。その段階で目途が見えたら、他の書店への説明の機会を設けたい」と話した。

東京組合/本屋巡り謎解きゲーム/参加登録者286人に達する

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は11月2日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
謎解き・デジタルサイネージ特別委員会は、10月27日より実施している本屋巡りLINE謎解きゲームの第1弾の参加登録者数が11月2日現在で286人に達したと報告。12月2日からの第2弾では拡材とあわせてオリジナル小冊子を各店に送付するので、商品購入者から優先的に配布するなど、売上向上に活用してほしいと呼びかけた。
また、デジタルサイネージについては、①現在は50店舗で運営中であり、希望店舗には順次設置を進めている、②設置3パターン(店外、店内児童向け、店内一般向け)に合わせた3番組を制作、③内蔵カメラで通行数・視聴数などのデータ収集、効果測定が可能――と解説し、希望書店は東京組合事務局まで申し込むよう呼びかけた。
総務・財務委員会は、2024年1月以降の理事会等の日程を次の通り提案し、承認を得た。
▽理事会=1月休会、2月5日(月)、3月5日(火)、4月2日(火)、4月23日(火)臨時理事会、5月休会▽通常総代会=5月20日(月)

九州選書市が出版社に高評価/福岡組合理事会

福岡県書店商業組合(安永寛理事長)は10月24日、福岡市中央区の福岡県教科図書で定例理事会を開催した。
9月12日に福岡市の電気ビル共創館で開催した「九州選書市2023」について、出展出版社は131社245名、来場書店数は151店280名(前回比96・6%)だったと報告した。
また、当日に出版社と書店を対象に実施したアンケートの結果を公表。出版社アンケートによれば、会場の立地・スペース、ブースの広さ、開催時間についてはおおむね好評で、来年も参加したいかの問いには約9割が「是非参加したい」「参加したい」との回答だった。一方、「書店との商談件数が思ったより少なかった」「その場で注文がもらえなかった」「担当者が来場しないため、案内を渡すだけで終わってしまう」との意見もあった。
同実行委員会は、書店(特に売場責任者)の来場を増やすことが今後の課題として、選書市限定の注文書を作ったり、書店の発注金額によってインセンティブを付けるなど、様々な方策を検討していくことにした。
(加来晋也広報委員)

小学館新企画発表会/幅広いラインナップをアピール

小学館は10月18日、東京・千代田区の本社ビル講堂に報道関係者を招いて新企画発表会を開催した。
今秋から年明けにかけて同社が予定している企画を説明するもので、作家の呉勝浩、原田ひ香、絵本作家の鈴木のりたけ、タレントの木梨憲武の各氏がそれぞれ自著を紹介した。
冒頭のあいさつで相賀信宏社長は「より多くの皆さんにワクワクが届けられることを期待している」と述べ、幅広いラインナップで読者が普段関心のないジャンルの作品にも興味をもってもらいたいとした。
発表された企画の概要は次の通り。①『Q』(呉勝浩著、11月8日発売、税込2420円)、②『喫茶おじさん』(原田ひ香著、発売中、税込1650円)、③『大ピンチずかん2』(鈴木のりたけ著、11月22日発売、税込1650円)、④『みなさんのおかげです木梨憲武自伝』(木梨憲武著、2024年1月26日発売予定、税込2200円)、⑤藤子・F・不二雄生誕90周年記念出版『ドラえもんプラス』7巻、『ドラミちゃん』(12月1日発売)、⑥『小学館の図鑑NEO 音楽 DVDつき』(11月22日発売、税込2640円)、⑦コミック『BEYBLADEX』(河本ほむら/武野光/出水ぽすか共著、発売中、税込770円)、⑧SUMO本『十三代目市川團十郎白猿』(11月22日発売、税込36万3千円)。
当日は同社の読書バリアフリーへの取り組みについても報告があった。
相賀社長はあいさつの中で、2年半前に立ち上げたアクセシブル・ブックス推進室が10月から事業室として動き出すと説明し、「なかなか届けられなかった方々にどれだけ多くのタイトルを届けられるか検討してきた。それを少しずつ業界に広げて、潜在読者を開拓していきたい」との考え方を示した。
これを受けて、マーケティング局アクセシブル・ブックス事業室は、冊子版・電子版・オーディオブック版の同時発売などの実績を示すとともに、児童書やYAなどのジャンルでアクセシブル対応に注力していく方針を明らかにした。

連載「生活実用書・注目的新刊」~出口治明『人類5000年史Ⅴ』(ちくま新書)/遊友出版・齋藤一郎

一年を振り返る年末だが、ならばいっそのこと大昔までさかのぼる。出口治明著『人類5000年史Ⅴ』(ちくま新書900円)はシリーズ第5巻。西暦1700~1900に照準を当てている。第1巻は文字の誕生など、紀元前2000年に及ぶ通史であった。
18世紀は産業革命とフランス革命の世紀だが、イングランド王国、ポーランド王国やロシア帝国など、領土をめぐる戦争の時代だった。アメリカやカナダも英、仏、スペイン領が大半だったし、中国は清の時代だった。フランス革命は1848年のヨーロッパ革命で終るが、60年間に200万人の命が奪われた。アメリカは南北戦争で61万人の戦死者が出た。日本でも戊辰戦争などで1万2千人が亡くなっている。当時の発明や文化など各国の様子も縦横に語られ、世界が一望できる。山崎晴雄/久保純子著『日本列島100万年年史』(講談社ブルーバックス1000円)は、日本の地形の成因を知るための地形発達史を、わかりやすく解説。11刷のロングセラーである。
2章の北海道から8章の九州まで地形の誕生と消失を解説。地震は全て地下の断層運動が原因であるし、地形を変えていく。身近な場所の成り立ちがわかる一冊である。