全国書店新聞
             

令和3年8月15日号

「読者還元祭」参加で店頭活性化を/日書連読書推進委員会委員長・春井宏之

日書連は、「書店くじ」に替わる新たな店頭活性化・販売促進策として今年の春から「読者還元祭」をスタート。今秋には読書週間に合わせ、「秋の読者還元祭2021」を「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンとコラボして実施する。同事業を担当する読書推進委員会の春井宏之委員長(愛知県書店商業組合理事長)に、「読者還元祭」の成果や狙い、今後の展開について報告してもらった。
〔QRコード付しおりを読者に配布/申込み書店数は昨年を上回る〕
「書店くじ」に替えて今年の春に実施した「春の読者還元祭2021」には、皆様ご参加いただけましたでしょうか。この企画は、応募サイトのQRコードを印刷した「しおり」を書店店頭で配布し、読者が応募すると抽選で3000名に図書カードネットギフト1000円分が当たる仕組みです。「書店くじ」は組合加盟書店の減少とともに参加書店、販売枚数の減少傾向が続いていたため、抜本的な改革を行いました。賞品の図書カードネットギフトは、日本図書普及から当選者のスマートフォンにメールで送られます。「書店くじ」で必要だった当せん券の交換や当せん額の立替等の作業がなくなり、店頭の業務負担の軽減を図ることで、より多くの書店が参加しやすい仕組みとしました。
「春の読者還元祭」では、「しおり」の申込み書店数が前年の「春の書店くじ」を上回るという成果を上げました。自店のお客様から「当たったよ」という声を聞くことができた書店が何店もあったのではないでしょうか。今回の当選率は10%弱で、100人のお客様が応募したお店の場合10人程度が当選したことになります。本・支店合わせて100人もの当たりが出た会社もあります。
この新企画に対していただいた100件程のご意見の分析もしましたが、概ね「よかった」というご意見でした。この秋行う「秋の読者還元祭2021」では、「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンと合同で実施し、賞品の1000円分の図書カードネットギフトを多くの方にお届けしたいと考えております。QRコード付の「しおり」をまた作ります。お客様に「応募してください」と一声かけてお渡しいただければ、当たる確率も必ず上がると思います。
〔賞品の図書カードネットギフト/認知度高め販売促進につなげる〕
「読者還元祭」と名付けて始めた新事業の目的は、もちろん読書推進と店頭の活性化です。しかし、この文章をお読みの方に少し失礼なことを申し上げますが、出版業界の皆さんは、図書カードネットギフトの仕組みや使い方をご存じでしょうか。「図書券」には昔から不思議な魔力が存在し、何でも買えるクオカードとは違った権威とか格のようなものがあります。利用目的からくる生真面目さや奥ゆかしさが日本人に愛され、幅広い世代の方々に認知されてきたのだと思われます。ところが「図書カードネットギフト」については業界の人も含め多くの方にあまりご理解いただけていないのです。
コロナ禍の中、学校が休校となった生徒への学習支援策として、一部の自治体が図書カードを配布しました。大阪府は2000円分の図書カードネットギフトを約100万人の小中高生に配布しており、この「ネットギフト」の認知度が上がってきています。自治体や、読書推進に協力的な企業での採用が広がり、図書カードの需要が増えるということは、より多くの図書購入費用が市井に発生するのだということを我々は忘れてはいけません。この秋、出版業界の皆様に「読者還元祭」に参加していただきたい。出版社、取次、関連会社の皆様には書店に足を運んでいただき、ご自分や回りの親しい方も含めて応募して、賞品を当ててください。得をするとともに、出版業界の将来のために、図書カードネットギフトの可能性と有効な利用方法を考える機会としていただければと思います。
〔業界挙げて「読者還元祭」へ参加を〕
「読者還元祭」を開始するにあたり、長く続けてきた「書店くじ」の形を変え、どのように実施するかについて考えました。まず我々書店にとって図書カードの存在価値は、
☆本しか買えない
☆ご利用の際にはリアルの書店店頭に足を運んでいただける
☆プレゼントや謝礼および賞品としての教育的色合いを強く出せる
主にこんなところだと思われます。一方、読者への訴求や利便性を図る上で、インターネットやスマートフォンの利用が拡大していることも考慮しました。それには、プレゼント企画での応募や抽選において個人情報の厳格な管理が必要です。そして、日本図書普及が、個人情報保護体制や運用状況が適切であることを認定された「プライバシーマーク」を取得されたということがありました。これらを踏まえて協議を重ねた結果、「本の日」図書カードプレゼントキャンペーンで実施していた、スマートフォンを利用した企画へ移行することにチャレンジしました。
実施にあたっては、日書連でも情報管理に十分気をつけるよう配慮しました。また、「書店くじ」からQRコード付きの「しおり」に変わることへの違和感が現場では必ず発生するであろうことや、読者用・書店用資材のデザインやあり方。配布でご協力いただく取次会社との体制。前述の通り「図書カードネットギフト」の認知度を上げること。これらの課題について円滑な推進や達成を図ることを念頭に事業に取り組みました。今後も改善を加え、読者の方だけでなく関係者の皆様にもご理解をいただき、さらなる利活用につなげていかなければならないと考えています。
賞品総額と当選者数については、将来的にはもっと夢のある金額を提示できればとは思っていますが、今はまず「認知」ということで、1冊ぐらい本を買えると思っていただける最低額とし、賞品の金額を1000円に設定しています。「当たり」の店頭での取り扱いに関しては、他の一般的な図書カードの取り扱いとの差異もなく自然に業務を行えるようにすることに成功したと思います。あとは、自店のお客様に得していただくだけです。
私は1961年生まれで、「テレビばっかり見てないでたまには本でも読みなさい」と言われて育った呑気で平和な世代ですが、本を読まない人の多い世代の始まりであったと思われます。我々はこの国の将来のために読書を推進し続けなければなりません。この国の方向性を形作るには、次の世代が、読書によって確かな知識と語彙力を得るよりほかないからです。業界に関係のある人たちは、まず自分が読書を習慣づける。そういう意識や雰囲気を業界から発しましょう。そのために「読者還元祭」を活用し、一緒に盛り上げていただければ幸いです。

芥川賞は石沢、李両氏、直木賞は佐藤、澤田両氏

日本文学振興会は、第165回芥川賞に石沢麻依氏「貝に続く場所にて」(群像6月号)、李琴峰氏「彼岸花が咲く島」(文學界3月号)、第165回直木賞に佐藤究氏『テスカトリポカ』(KADOKAWA)、澤田瞳子氏『星落ちて、なお』(文藝春秋)を決定した。コロナ禍の状況を鑑み贈呈式は関係者のみで行う。

総会、今年も来賓と懇親会なしで開催へ/奈良組合

奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)は7月12日、大和郡山市のディーズブックスで第3回理事会を開き、令和3年度の総会を9月6日に開催することを決めた。昨年に引き続き来賓招待や懇親会のない形式で開催する。
冒頭、林田理事長は「新型コロナで書店業も大変な状況が続くが、アフターコロナを見据えた計画も必要。地域に根差した書店の大切さを再認識したい」とあいさつした。
4月1日から5月10日まで実施した「サン・ジョルディの日」キャンペーンの抽選会を行い、バラのオブジェ(プリザーブドフラワー)10名、500円図書カード200名の当選者を発表した。
総会は9月6日午後3時、大和郡山市のディーズブックスで開催する。今年もコロナ対策で取次、出版社などの来賓は招待せず、懇親会も開かない。組合員の書面出席も可とした。
(靏井忠義広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「誰かの明日を動かす一冊」/千葉・ときわ書房本店文芸書・文庫担当・宇田川拓也

なぜ本屋の店員になったのか。改めて考えてみると、高校生の時分に「僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」という文章のみを頼りに探し当てた一冊の文庫本に人生を動かされた経験が大きい。
どう具体的に動かされたのかは別の機会に譲るが、たった数百円でひとを変えてしまうほどの力を持つ他に類のない商品を扱う誇らしさが、毎日の仕事の根底にあることは間違いない。
ただ残念ながら、自身で選び、仕入れ、並べた本が、お求めいただいた方々の人生をどう動かし、変えたのかを見届けることはできない。想像力を働かせ、この売り場のご利用が豊かな人生を送る一助になっていることを願うばかりだが、あるミステリ系新人賞の贈賞式でのことだ。デビューが決まった若い男性にご挨拶すると、学生時代によく当店でミステリをお買い求めくださっていたことを告げられ仰天。さらにお話を伺うと、ミステリ作家を志すきっかけになった一冊は、確かに当時、私が熱烈にオススメしていたものだった。
ミステリが好きで、いささかミステリに偏り過ぎた品揃えであることは自覚しているが、まさかこのような喜びを味わう日が来ようとは。今日この売り場に並ぶ本が、また誰かの明日を動かしてくれると信じている。

新理事長に青天目敦氏/「お客様から支持される書店に」/茨城総会

茨城県書店商業組合は6月29日、水戸市の茨城県教科書販売で第35回通常総会を開催し、組合員65名(委任状含む)が出席。新理事長に青天目敦氏(ヤマサン)を選出した。
総会は河原崎美津江理事の司会進行のもと、秋山誠二理事の開会の辞で始まり、池田和雄理事長があいさつ。「相次ぐ雑誌の休刊や長期に及ぶコロナ禍で、得意先からの配達が停止し、店頭の客足も減少している。一時的な巣ごもり需要も終わり、ここに来てコロナの影響がじりじり出てきた。しかし、全国で書店数が減る中、茨城組合は77店舗を維持している。今一度気持ちを奮い起こし、一丸となってコロナ後の明るい未来を目指したい」と協力を呼びかけた。
続いて田所和雄副理事長を議長に議事を進行し、令和2年度事業報告、収支決算報告、監査報告、令和3年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り可決した。
任期満了に伴う役員改選では、高橋雅夫委員長他3名から成る選考委員会が理事13名、監事2名、顧問1名を選出。このあと理事会を開き、全会一致で新理事長に青天目氏を選出した。
池田前理事長は在任6年間の組合員の協力に謝意を表し、後任の青天目新理事長の手腕に期待を示した。
青天目新理事長は「社会は目まぐるしく変化している。お客様の嗜好は今後ますます変化し、出版業界のデジタル化も進む。現在生き残っている組合員が協力して時代の変化に対応し、お客様から支持される書店になりたい」と就任あいさつを述べた。
[茨城組合役員体制]
▽理事長=青天目敦(ヤマサン)▽副理事長=川又英宏(茨城県教科書販売)田所和雄(忠愛堂田所書店)飯田浩一郎(博英堂書店)
(飯田浩一郎広報委員)

近畿ブロック会/新会長に深田健治氏(大阪)/面屋龍延会長の後を受け

日書連近畿ブロック会は7月1日、書面による会合を開催し、新会長に深田健治氏(大阪府書店商業組合理事長、ブックスふかだ)を選出した。面屋龍延会長(大阪組合前理事長、清風堂書店)は退任した。
6月26日開催の大阪組合理事会で理事長を退任した面屋会長は、同28日に近畿ブロック会を構成する滋賀、京都、奈良、和歌山、兵庫の5組合理事長に大阪組合理事長交代の経緯を説明。その上で、本来は近畿ブロック会を招集して新会長を選出するべきだが、コロナ禍の状況であること、9月まで日書連定例理事会の開催がないことから、7月1日に書面で新会長を選出することを諮った。
面屋会長は、大阪組合の新理事長に選ばれた深田氏の経歴と人物を紹介し、近畿ブロック会の新会長にと各府県理事長に書面での採決を要請。7月12日までに理事長全員の賛同を得たことから、深田氏の新会長就任が決まった。
深田新会長は各府県理事長に電話で就任あいさつを行った。また、大阪組合として面屋前理事長の退任あいさつと深田新理事長の就任あいさつ並びに新体制の編成を書面で各関係会社・団体へ発出した。
(石尾義彦事務局長)

古泉淳夫理事長を再選/県立図書館と協力関係続ける/鳥取総会

鳥取県書店商業組合は6月21日、琴浦町生涯学習センター(まなびタウンとうはく)で第33回通常総会を開き、組合員16名(委任状含む)が出席。古泉淳夫理事長(鳥取今井書店)を再選した。
冒頭あいさつに立った古泉理事長は、「昨年はコロナ禍で生活様式が一変した。書店業界は巣ごもり需要の恩恵や全国書店再生支援財団による新型コロナウイルス対策支援金の支給があったものの、外商専門店を中心とした地方書店は定期刊行物の発売中止で大きな影響を受けた。また、デジタル化の動きで教科書や図書館の先行きは不透明になっている。輸送問題ではトーハンと日販の物流協業がスタートした」と業界の諸問題に言及。「組合員数が減少しており、新年度は組合員の増強に力を入れる。鳥取県立図書館の館長が交代したが、新館長は地域内循環にも積極的なので、書店組合として協力関係を継続したい。業界を取り巻く環境は厳しいが、全組合員が協力してこの局面を乗り越えたい」と呼びかけた。
古泉理事長を議長に議案審議を行い、令和2年度事業報告、収支決算報告、令和3年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
任期満了による役員改選では、理事8名を選出。このあと理事会を開き、古泉理事長を再任した。副理事長2名も再任した。
総会終了後、組合員研修として鳥取県中小企業団体中央会の指導員による「国等の新型コロナ関係支援策活用による経営改善」の解説を聞いた。
[鳥取組合役員体制]
▽理事長=古泉淳夫理事長(鳥取今井書店)▽副理事長=杉嶋運一(杉島書店)下山雄士(下山書店)
(五丁泰次郎広報委員)

「本屋を続けて良かったなぁ通信」NET21-協業化の現場から

【「単店ではできないことができる」/恭文堂書店代表取締役・田中淳一郎】
私はNET21に創業時から加入しています。20年が経過して、改めて自店が加入していなかったらと想像すると背筋が寒くなる思いです。
日常的に行われている共同仕入れ、出版社との交渉、緻密な情報交換など、到底単独店では成しえない事です。長い年月、会員書店同士で培われたノウハウが凝縮されているように思われます。
このようにボランタリーチェーンとして、システムを通して、書店業務へのサポートはもちろん商品情報を公開し、会員書店同士が様々な情報交換(商品の融通、商品構成の見直しなど)が出来るように工夫されています。
NET21は会社ではありますがビジネスプロジェクトでもあるのです。書店業界を取り巻く環境の変化に合わせ、会員書店全員でそれを打開するための創意工夫する会社です。
だから、この会社で最も重要なものは人的資源だと思います。ふとしたヒラメキが皆を助ける事になるかもしれないからです。

中小書店協業化で活路開く!/NET21代表取締役社長・今野英治氏

中小書店が戦略的に組織化するための共同出資会社「NET21」は今年、設立から20年を迎えた。書店有志数名で始まった同社も、現在は全国の23法人28店舗が加盟する協業組織へと拡大し、それぞれが地域に密着した書店経営を行いながら、ボランタリーチェーンの支店として共同仕入れや販売データ・情報の共有を行っている。7月28日開催の社員総会で新社長に就任した今野英治氏(今野書店)に、協業会社に加盟するメリットについて話を聞いた。
NET21は2001年6月1日、書店12法人・1個人の出資を受けて設立された。合理的で効率的な仕入れを行い、書籍を売るための販売情報を集め、売り切る環境を作り、各加盟書店が売上げを伸ばす。地域に根差した街の書店が消えていく中、生き残りをかけて書店協業化のビジネスモデルを追求している。
法人組織となる前は、書店有志4~5名のメンバーで任意団体として活動していた。しかし、出版社と交渉を続けていくうちに任意団体では目的を遂行できない事例が増え、現在の形で再スタートした。
設立メンバーの一人である今野氏が経営する今野書店は、本好きの街・西荻窪で48年前から店を構える街の本屋さん。NET21の歴史と自らの商売の歩みを重ね合わせ、「当店は西荻窪の商店街で営業し、お客様に恵まれていると思うが、それでもNET21に加盟していなければ書店を続けることは難しかったかもしれない」と話す。
〔販売データ共有し共同仕入れを行う〕
NET21に加盟すると、出版社に対する屋号をNET21の冠がついたものに変更しなければならない(書店共有マスターの変更)。つまり業界内でNET21の支店となる。店舗での営業は従来の屋号で行うことができる。また、加盟書店は必ず出版社の担当を数社持ち、自店を含めてNET21の仕入れの責任を負い、報奨金の交渉なども行う。
システムの導入も必須だ。流通改善と効率販売のため、NET21は情報基盤を整備し、書店のネットワーク化を進めている。加盟書店はNET21仕様の同じPOSレジを使う。NET21の根幹を支えるのはPOSデータシステムだ。販売データは日々収集され、ASPサーバーに反映される。この販売テータを元に、出版社の窓口になっている担当者が共同仕入れを行う。「個々の書店で頼むよりも、NET21として大きい数字をまとめて頼むと入ってきやすい」
販売データは全加盟書店間で開かれており、経営判断の材料として活用できる。オンライン上で全加盟書店と自店の販売データを比較して、前年割れになったジャンルがあっても、自店だけが悪いのか、全体がそういう傾向なのかといったことも確認できる。
〔出版社にもデータ提供/適材適所の配本可能に〕
出版社にもデータを有償提供している。出版社との信頼関係を高め、一過性ではなく継続的な関係を築いていくことを目指している。出版社はNET21本部または担当者とデータを共有できる環境が整い、適材適所の配本が可能となり、機会損失の軽減や返品率低減に効果が期待できる。在庫データの閲覧もできるので、積極的な商品提案(欠品補充、抜き取り提案など)を行うこともできる。「正しいデータで効率販売を行い、製販が一緒になって販売していくことの礎を作る」という狙いがある。
NET21オリジナルのポイントカードを利用した顧客分析システムも構築している。ポイント付与や囲い込みは副次的なもので、顧客情報の取得とその購買分析を重視している。自店の顧客はどこに住んでいて、どういう購買行動をとるかを知ることで、店舗の構成変更やプロモーションに役立てることができる。
3年前から、出版社の倉庫に眠っている既刊在庫を直取引・低正味で入荷し、再度販売する仕組み「SPS(ストックブック・プライオリティ・セール)」に取り組んでいる。取引条件は完全委託と買切の2種類を設定。完全委託の場合は出版社が58%、買切の場合は25%で出荷する。2種類の条件に合った商品を出版社が提案し、書店が自主的に仕入れる。委託品は3ヵ月間販売する。取次業務はトランスビューが代行する。「新刊時は売れなかったが、もう一度売りたい本をリストアップし、その中から書店が目利きで仕入れ、自店の一等地で売る。書店店頭でのプロモーションの有効性をアピールできる」と自主仕入れ・積極販売の狙いを説明する。
〔地域読者に良い本を届ける!強い気持ち〕
様々な施策によって、NET21の加盟書店は自由度が高く効率的な販売を行うことが可能になっている。「売り損じのないよう売れる本をタイムリーに仕入れ、地域の読者にしっかり届けたい」という。
中小書店を取り巻く経営環境は日々厳しさを増している。売上低迷、資金不足、後継者不在、情報不足、人材不足、商品仕入れ力の低下、競合店の脅威、ネット通販の普及――こうしたマイナス面を組織の力で補うのが協業会社だ。良い商品を仕入れ、地域の読者とつながり、将来にわたって経営を続けたいという強い気持ちをもつ書店関係者は、NET21への加盟を検討してもいい。
[編集部より]本紙は、街の書店が協業することで生き残りを図るNET21のビジネスモデルに改めて着目し、本号から連載「『本屋続けて良かったなぁ』通信~NET21‐協業化の現場から」をスタート。加盟書店の声を紹介していく。協業化や書店間の連携に関心のある方は参考にしていただきたい。
【NET21新会員入会までの流れ】
①NET21の経営理念、各種決まり事を了解した上で、月例の定例会に3回以上参加して、どんな活動かを見極めてもらいます。入会の場合は入会申込書を本部に提出してください(会員に直接わからないことを聞いていただいて結構です)。
②申込書到着後、店舗の視察と簡単に経営状況を見せていただくために、2名の会員で来店いたします(経営状況も大事ですが、債務超過でない限り経営者の考え方とやる気が優先します)。
③審査終了後、直近の定例会にて入会を了承します。
④入会後の手続きとして、出版社に対する屋号の変更(書店共有マスターの変更)、出資、システム導入などがあります。
【問い合わせ】
ホームページの問い合わせフォームから
NET21ホームページ
http://www.book-net21.jp/

新会長に阿刀田高氏/新理事長は山口寿一氏(読売G社長)/文字・活字文化推進機構

文字・活字文化推進機構は6月24日、東京・千代田区の日本プレスセンターで評議委員会と臨時理事会を開き、新会長に阿刀田高氏(作家、山梨県立図書館名誉館長)、新理事長に山口寿一氏(日本新聞協会理事、読売新聞グループ本社代表取締役社長)をそれぞれ選出した。福原義春会長(資生堂名誉会長)と肥田美代子理事長(童話作家、元衆議院議員)は退任した。会長、理事長の交代は2007年の設立以来初めて。
同日開かれた記者会見で、山口理事長は「活字の危機の時代に大役を仰せつかり、心して取り組んでいく決意だ。これまでの歩みを大事にして、活動を一層強化していく」と所信表明。同機構の4つの重点事業として①学校教育のデジタル化に関する提言②学校図書館の人と資料の充実③読書バリアフリー法の普及促進④書籍文化の海外発信支援――を挙げ、「①のデジタル教科書の導入に強い関心を持っている。学校教育のデジタル化については脳科学など様々な分野の様々な研究で課題が指摘されている。内外の研究・論考を収集・整理して教育行政に問題提起していきたい」と話した。
阿刀田会長は「紙に字を書いて利用することは、私たちのメンタリティの構成に大きな役割を果たしてきた。ITの普及に対してきちんと消化していかなければいけないと同時に、本来の紙に字を書いてきた文化の伝統を守っていかねばならない」と述べた。
新役員は次の通り。
▽会長=阿刀田高(作家、山梨県立図書館名誉館長)▽理事長=山口寿一(日本新聞協会理事、読売新聞グループ本社代表取締役社長)▽副理事長=丸山昌宏(日本新聞協会会長、毎日新聞社代表取締役社長)、相賀昌宏(日本書籍出版協会副理事長、小学館代表取締役社長)▽専務理事=松木修一(出版文化産業振興財団専務理事)▽理事=足立直樹(凸版印刷特別相談役)、石井直(日本広告業界副理事長、電通グループ相談役)、一力雅彦(日本新聞協会副会長、河北新報社代表取締役社長)、伊藤雅俊(日本アドバタイザーズ協会理事長、味の素執行役会長)、小川恒弘(日本製紙連合会理事長)、北島義俊(大日本印刷代表取締役会長)、中村史郎(日本新聞協会副会長、朝日新聞社代表取締役社長)、長谷部剛(日本新聞協会理事、日本経済新聞社代表取締役社長)、平林彰(日本出版取次協会会長、日本出版販売取締役)、藤森康彰(日本印刷産業連合会会長、共同印刷代表取締役社長)、堀憲郎(日本歯科医師会会長)、堀内丸惠(日本雑誌協会理事長、集英社代表取締役会長)、矢幡秀治(日本書店商業組合連合会会長、真光書店代表取締役社長)、山本信夫(日本薬剤師会会長)▽監事=北村哲男(弁護士)、能勢正幸(公認会計士)▽顧問=細田博之(衆議院議員、図書議員連盟会長、活字文化議員連盟会長)、河村建夫(衆議院議員、子どもの未来を考える議員連盟会長、学校図書館議員連盟会長)

6月期は前年比4・8%減/コミック健闘も前年を下回る/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの6月期店頭売上は前年比4・8%減。雑誌は前年の発売延期などが本年はプラスに影響、コミックは人気タイトルの新刊が売上を牽引したが、全体では前年割れになった。
雑誌は0・7%減。月刊誌は、「GLOW8月号」(宝島社)、「会社四季報2021年3集夏号」(東洋経済新報社)が売上を牽引した。週刊誌は、6月1日発売の「隔週刊Gメン’75DVDコレクション」(デアゴスティーニ・ジャパン)が売上を伸ばした。
書籍は9・0%減。学参書のみ前年を上回ったが、前年の巣ごもり需要の影響を受け、書籍全体では落ち込んだ。文芸書は、本屋大賞受賞作の町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』や、樋口恵子『老いの福袋』(ともに中央公論新社)が好調だった。
コミックは前年と変わらず。人気タイトルの新刊発売により、『鬼滅の刃』(集英社)で好調だった前年を更に上回ったが、コミック全体では横ばいとなった。雑誌扱いコミックは『呪術廻戦16』、『ONEPIECE99』(ともに集英社)や、最終巻となった『進撃の巨人34』(講談社)が売上を伸ばした。書籍扱いコミックは『聖女の魔力は万能です6』、『煙と蜜第三集』(ともにKADOKAWA)、『ドラゴンクエストダイの大冒険新装彩録版22』(集英社)が売上を牽引した。

「ピーナッツ」関連商品など発売/河出書房新社・企画説明会2021

河出書房新社は7月19日、「企画説明会2021」をオンラインで開催し、「ピーナッツ」関連の新企画や、『漫画サピエンス全史』第2巻など今年下半期に刊行する注目企画を説明した。
あいさつした小野寺優社長はこの1年の実績について、文芸書に収穫の多い年だったと振り返り、第56回文藝賞を受賞した遠野遥氏と宇佐見りん氏がそれぞれ受賞第1作で芥川賞を受賞、宇佐見氏の『推し、燃ゆ』は52万部を突破してトーハン、日本出版販売が発表した21年上半期ベストセラーランキングで書籍総合1位を獲得したこと、柳美里氏の『JR上野駅公園口』は20年の全米図書賞翻訳部門を受賞し単行本・文庫の累計で43万部を突破したことなどを報告。文芸書の好調について、コロナ禍で憂鬱なニュースが多い中、日常から離れることができる物語が求められているのではないかと指摘し、「多くの方が知った文学の楽しみを更に広げるべく今後も魅力的な作品を送り出していきたい」と述べた。
一方、コロナ禍の影響で外商を中心とする大型企画はやや苦戦したと報告。「オンラインで説明会を行ったり、YouTubeチャンネル『河出STATION』を開設して企画の魅力を伝える努力をしているが十分とは言えない。大型企画はしばらく昨年と同様の状況が予想される。昨年の反省を踏まえ、現状に適した販売促進体制を整えて書店にご拡売いただけるよう考えていく」と語った。
説明会で発表された主な企画は次の通り。
▽「ピーナッツ」関連企画=19年の刊行開始以来大きな反響を呼び、昨年完結した『完全版ピーナッツ全集スヌーピー1950~2000』(全25巻)に続く企画として、『スヌーピーめくり2022ピーナッツ日めくりカレンダー』を9月下旬に、『ピーナッツ大図鑑』を11月下旬に発売。『カレンダー』は卓上タイプで、裏面に谷川俊太郎氏の日本語訳付き。『大図鑑』は、50年の歴史を図版満載・オールカラーで紹介する。
▽『まるごとわかる海の科学大図鑑』=10月下旬発売。大迫力の図版560点で海のすべてを解説、SDGsの理解や調べ学習にも最適な図鑑。
▽『漫画サピエンス全史文明の正体編』=11月上旬発売。『サピエンス全史』著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏がシナリオを担当する公式漫画化の第2弾。また、同氏の『21Lessons21世紀の人類のための21の思考』の文庫版を11月に発売する。
▽『純猥談私もただの女の子なんだ』=9月23日発売予定。オンライン投稿された匿名恋愛体験談を書籍化してヒットした『純猥談一度寝ただけの女になりたくなかった』に続く第2弾。同書を原作とする漫画を『週刊ヤングマガジン』(講談社)で今年末に連載開始予定。
▽チコッと古典シリーズ『チコちゃんと学ぶチコッと論語』=11月発売。NHK番組の人気キャラクター・チコちゃんをナビゲーターに、世界の古典を楽しく学ぶ。今後は「菜根譚」「ブッダの言葉」「ニーチェの言葉」などを4ヵ月に1冊ペースで順次刊行予定。”