全国書店新聞
             

平成30年4月1日号(前)

「子どもの読書活動推進フォーラム」4月23日に

「子どもの読書活動推進フォーラム」(文部科学省、国立青少年教育振興機構主催)が、子ども読書の日の4月23日(月)午後1時、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催される。
文部科学大臣表彰(優秀実践校、優秀実践図書館、優秀実践団体・個人)、絵本作家・とよたかずひこ氏の特別講演「小さな人たちへの応援歌」、事例発表と対談、表彰式が行われる。

全国万引犯罪防止機構シンポジウム/万引ロス防止で収益改善を

全国万引犯罪防止機構(万防機構)は3月8日、東京・江東区の東京ビッグサイトで「収益2倍へ!ロスプリベンション教育と盗難情報共有の実現に向けて」と題したシンポジウムを開催。万引問題の現状と対策などについて関係者が意見を交わし、小売事業者が万引防止に「経営課題」として取り組むことで収益改善につなげる方策を話し合った。日書連など出版業界6団体・1企業で構成する万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長は、業界と地域社会が連携して万引犯罪防止に取り組むことの重要性を訴えた。シンポジウムの内容を紹介する。
【シンポジウムの出席者】
〔コーディネータ〕
全国万引犯罪防止機構理事長竹花豊
〔サブコーディネータ〕
全国万引犯罪防止機構政策・広報委員長菊間千乃
〔パネリスト〕
経済産業省消費・流通政策課長(オブザーバ)林揚哲
ユニクロ計画管理部 佐藤 誠
全国万引犯罪防止機構理事/日本チェーンドラッグストア協会防犯・有事委員長石田岳彦
全国万引犯罪防止機構理事/同LP教育制度作成委員会委員長近江元ロスプリベンション協会代表理事秋元初心
全国万引犯罪防止機構万引防止出版対策本部事務局長阿部信行
〔被害情報の共有が不可欠(石田)〕
竹花各業界の万引の実態と対策について、しっかりとした議論が必要だ。まずドラッグストアの状況を聞きたい。
石田ドラッグストアではここ数年、組織的な大量窃盗が横行している。
日本チェーンドラッグストア協会ではソフト、ハード両面で様々な取り組みを業界に対して提案し、万引防止キャンペーンなどを継続的に実施している。
その中で、2015年から、企業の枠を越えた大量窃盗に関する情報共有の取り組みを始めた。当初は首都圏の7社・2000店舗で実験を行った。売価5万円以上の大量万引に関して、情報を日本チェーンドラッグストア協会の事務局にメール送信してもらい、それを7社にフィードバックする取り組みだ。
現在、アジア各国で日本の医薬品や化粧品は人気があり、これらのカテゴリーを中心に狙われている。
こうした状況を踏まえ、昨年10月からこの実験の全国展開を開始した。現在、全国42社・約8900店舗が参加している。全国を9ブロックに分け、それぞれのエリアの中で情報共有している。正会員企業の3分の1にあたる50社を目標に登録を呼びかけている。登録企業、情報発信ともにまだ十分ではない。どんどん情報発信してもらい、なるべくスピーディーに情報共有することを目標に進めている。
これまでの取り組みで分かってきたのは、犯人の国籍が確認された事案ではアジア系が54・6%を占めている。また、複数人による犯行が62・5%にのぼり、何らかのバッグ等を持参して入店するケースが非常に多いことが防犯カメラ等で確認されている。
発生件数と被害金額は、15年が360件・4088万9361円、16年が391件・4128万6178円、17年が424件・4965万1651円。時間帯別発生状況は、繁忙時間、パートが帰宅した後など、夕方から夜にかけての時間帯に多く発生している。カテゴリー別発生状況は、医薬品、化粧品、健康食品の3カテゴリーで約80%を占め、最近はベビー用品が増加傾向にある。
大量窃盗に関する新たな取り組みをいくつか紹介したい。
まず、先程説明したように大量窃盗に関する情報共有を首都圏展開から全国展開に拡大した。
2番目は、都道府県警察との情報共有と連携した注意喚起。16年9月より警視庁、17年11月より埼玉県警との情報共有を開始し、東京都練馬区では検挙につながった事例もある。
3番目は、重大かつ緊急な内容は事務局からの一斉注意喚起を行っている。昨年12月、岡山県赤磐市で入口をハンマーで破壊して侵入した窃盗が発生し、被害は1049点、約101万円だった。重大な内容のため、情報共有への参加有無に関わらず県内に出店しているすべてのドラッグストアに注意喚起のメールを一斉送信した。
4番目は、18年2月から、窃盗が集中する商品の注意喚起の情報発信を実験的に開始し、同一ブロックで2週間以内に10回以上被害に合った商品情報を発信している。
情報共有を実施するにあたっての課題は、企業によって万引対策の重要性に対する意識に温度差があること。大量窃盗の情報共有の仕組みでも、本来は当日すぐ、遅くとも翌日には情報発信するようお願いしているが、1週間かけてから発信したり、そもそも発見するまで3日、4日気づかなかった事例もある。保険対応に任せている企業もある。また、中堅企業では専任の防犯担当者が少ないのが現状。総務部長や営業部長が兼務していることがほとんどで、通常業務が多忙な中、大量窃盗の情報共有まで手が回らないことが現実的な課題になっている。
情報共有の精度を高めるためには多くの課題がある。情報発信件数がまだ少なく、もっと意識を高めなければならない。大量窃盗発生から情報発信までの時間を短縮することも必要だ。この仕組みに参加してどれだけロスが減ったかという数値的な効果検証が難しいことも課題で、これを解決できれば説得力も高まるだろう。
「万引」とは異なる、「組織犯罪」「大量窃盗」だという認識はもっと共有しなければならない。一昨年の警視庁との取り組みをきっかけに、ドラッグストア業界における大量窃盗団の存在への認識は全国に広がったと思う。小売、メーカー、卸、警察、行政が一丸となって転売、不正流通撲滅に向けた取り組みをする必要があると思っている。もぐらたたき的な対処ではなく、大量窃盗団の撲滅に向けた取り組みを皆さんと協力して進めていきたい。
〔業界と地域が連携して対策を(阿部)〕
竹花書店での取り組みはどうか。
阿部出版業界は売上減少に歯止めがかからず、色々な課題が噴出している。そうした中、万引被害が書店経営に与える深刻な影響はますます大きくなっている。ただ、万引問題への業界をあげた組織的な対応についてはまだ緒についたばかりだ。
01年に「タグ&パックの会」を発足したことが、われわれが万引問題に取り組むスタートラインになった。換金目的のコミック万引を防止するため、三洋堂書店の加藤社長の呼びかけで書店33社が結束し、小学館、講談社など出版社5社に対して新刊コミックへのソースタギングとビニールパッキングを要請した。
そして03年、東京都書店商業組合が、後に万防機構となる東京都万引防止協議会に「万引被害がひどいのでなんとかしてほしい」と陳情した。当時、万防機構の竹花理事長は東京都の副知事で、われわれの話を聞いてくださった。
万引についてこれまでいくつかの調査があるが、日本出版インフラセンター(JPO)が08年に行った書店万引に関する詳細な調査結果が、現在のわれわれの基本的なデータになっている。11年に、経済産業省の補助事業として、JPOを中心に紀伊國屋書店、丸善、フタバ図書の3店舗でICタグの実証実験を実施したが、コストの問題を解決できず、プロジェクトは中断している。とはいうものの、出版業界としてこれ以上万引問題を放置できないということで、昨年、万引防止出版対策本部を設立したというのが、これまでの経緯だ。
万引防止出版対策本部は、日本書店商業組合連合会、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本出版インフラセンター、日本医書出版協会、日本図書普及の6団体・1社で構成し、出版業界全体で万引問題に取り組むことを目的としている。日書連の舩坂良雄会長が本部長に就いた。
08年の調査は「書店万引き調査等結果概要」として発表されたが、調査店の平均ロス率は1・91%で、当時の書店の全国平均経常利益率0・6%の3倍強にあたる。推定ロス金額は261億7193万円。これに対する万引ロス率は73・64%で、万引被害金額は約192億円ということになる。
08年と比べて現在は相当売上が下がっているので万引被害金額が下がっているかというと、私は逆に拡大基調にあると考えている。金額で見ると、最も盗られているのはコミックで40・7%。2番目は写真集・高額本で33・0%。冊数ではコミックが67・8%と圧倒的に大量に盗られている。
書店における万引被害の変遷を見ると、03年はコミックを中心とした少年による出来心的犯罪、いわゆる初発型犯罪としての青少年問題として取り上げていた。コミックを新古書店に売りに行くのが顕著な例だ。現在は高齢者による万引が急増している。また、常習者による医学書など高額専門書の万引が目立つ。高額専門書はネットオークションに出品されたり、ネットフリマで処分されているのが現状だ。
具体的な被害事例を報告したい。
まず、高額医学書を中心に万引を繰り返す悪質常習犯について。13年に一度逮捕された後も執行猶予期間中に万引を繰り返し、万引した書籍をネットオークションで処分していた。約2年半の間に約1300冊を出品し、落札合計額は約1300万円と概算される。被害書店、出版社、警察、オークション運営会社、万防機構が協力して、膨大なエネルギーを使って、16年11月22日についに逮捕に至った。
次は、四国地方で起きた事例だが、書店チェーンを中心に万引を繰り返し、書店だけで813冊、約105万円相当を万引。逮捕されるまで毎日20品以上をフリマアプリに出品し続けた。被害書店で特定タイトルの在庫が大きく合わないタイトルが見つかったため、店員がフリマアプリ上でその出品タイトルを検索し、被害書籍とタイトルがほぼ合致する県内からの出品者を発見。商品を実際に落札して犯人の特定に至ったというものだ。
次は、ネット通販で新品として販売していた事例。売れ筋のビジネス書を中心に東京都内で万引を繰り返し、被害は判明しているだけで約100冊、約20万円相当にのぼる。万引した書籍をネット通販で新品として複数出品し、30冊以上を同時に出品しているタイトルも見つかった。被害書店で特定タイトルの在庫が大きく合わないタイトルが見つかったため、店員がネット通販でそのタイトルの出品を検索。被害店舗からほど近い住所からの出品を発見し、出品タイトルと被害書籍との重複が多数あったことから犯人と断定したというものだ。
万引問題への今後の取り組みについては、「万引防止出版対策本部の活動の推進」「地域防犯」「ICタグ(RFID)の普及」の3つに力を入れたい。
出版業界の中では従来、万引問題は書店固有の問題という位置づけで語られることが多かったが、事ここに至って、もうそんな風に看過できる状況ではないと認識されるようになってきた。出版業界6団体・1社で万引防止出版対策本部が設立されたのは、大変画期的なことと評価できる。
万引防止出版対策本部では、①書店における万引被害の実態把握、②二次処分市場との連携、③個体識別方法の検討、④地域書店間の連携、⑤万引被害に対する損害賠償請求制度の普及、⑥書店による共同防犯プロジェクトの確立――を推進したいと考えている。
地域防犯では、東京・渋谷区で渋谷署管内書店万引き防止連絡会が17年7月に発足した。警視庁、渋谷警察署、書店、商店街などが一丸となって、各社・各店だけでは対応が困難な万引犯罪対策に積極的に取り組んでいこうということだ。
ICタグについては、08年に経済産業省の委託事業として導入を検討したことがある。当時、出版業界はJPO・ICタグ研究委員会の下、出版社・取次倉庫部会、装着・古紙化部会、書店部会、図書館部会の中で横断的に研究したという実績がある。
経済産業省は2025年までに主要コンビニエンスストアの全取扱商品にICタグを付ける計画を策定したが、是非ここに出版業界も加えていただきたい。われわれはICタグ導入を前向きに検討している。
竹花書店における万引被害額は、08年の調査結果である程度は推計できる。今後、万引被害の実態を正確に把握するために何をすべきと考えているか。
阿部万防機構は今年1月、全国1943社の小売業に向けて「第12回全国小売業不明ロス・店舗セキュリティー実態調査」(旧「全国小売業万引被害実態調査」)の調査票を送付した。今回、万引防止出版対策本部が合同調査として初めて参加したことで、書店の調査件数を昨年の5倍を超える538法人に増やした。これを機会にデータ収集にもっと積極的に取り組んでいかなければならないと考えている。
竹花万引被害が書店経営に与えるダメージについて聞きたい。
阿部よくある議論として「粗利益率が20%だから、1冊盗られたら5冊売れば取り返せる」というものがあるが、それはまったく違う。人件費、家賃、光熱費など様々なコストを考慮すると、5冊売ってもとても間に合わない損害を書店は被っている。
〔大量窃盗団、重機で壁壊し侵入も(佐藤)〕
竹花ユニクロの被害状況と万引対策をうかがいたい。
佐藤当社が特に苦慮している集団窃盗の万引対策について話したい。
日本の小売業全体のロス率は1%というのが今の常識だが、ユニクロ業態の店舗がまだ100店舗もなかった94年頃、弊社のロス率は1%をはるかに超えていた。そこで経営者が経営課題としてこれを解消したいと考えて専任チームを作った。ロス率は2年で飛躍的に改善し、3年で日本の小売業平均の半分以下になり、その後は3分の1程度を維持している。
ところが、14年~15年からアジア系外国人による大量窃盗が都市圏、都市近郊を中心に発生するようになり、今、非常に困っている。彼らは3~5名でばらけて入店して、人気商品を盗む。2枚、3枚なんていうかわいいものではない。10数枚から100枚超の商品を盗んでいく。複数人で入店して、見張り役・声掛け役・実行役と役割分担があって、ターゲットの商品を事前に決めている。1名が売場従業員に声をかけてターゲット商品外売場に誘導し、2名で持参の買物袋や大きなカバン、リュックに大量に詰め込んで帰る。犯行後、時間差で退店し、防犯アラームが鳴った場合は脱兎のごとく逃亡する。
直近の被害では、昨年12月初旬から今年1月末の平日の深夜、名古屋近郊2店舗と三重県内2店舗で、建物裏手の壁を重機で破壊して侵入し、売場とバックルームから人気商品を大量に持ち去っていった。犯行時間は30分以内。被害金額は、2店舗が売価で各100万円、2店舗が700万~800万円。3月初旬時点で未解決。大量窃盗はここまで悪質になっている。
大量窃盗の特徴は、男女の混合グループが多く、人数は3~5名。ほとんどが語学留学生で、摘発後、学生証の学校に問い合わせても在籍はまずない。在留カードは偽造であることが多い。銀座店で摘発した女性は在留カードを3枚所持していた。
摘発した外国人からヒアリングすると、「日本では万引で摘発されても微罪で済む」と言っており、罪の意識が薄い。3、4回捕まって留置所に勾留されることもあるが、国選弁護人が付いて示談を持ちかけられる。これに対して、社内の通達として「何人であろうが、金額がいくらであろうが、一切の示談には応じないように」という指示を出している。基本的に年齢、性別、職業を問わず、犯罪は駄目だというポリシーを貫いている。
大量窃盗の犯罪を受けて、当社ではターゲット商品への防犯タグの取り付けを改めて徹底している。従来は高単価中心だったが、1000円以下の低単価であってもロスリーダー商品については全部防犯タグを付けている。
また、不審なグループが入店したなど少しでも不安を感じた場合、緊急ボタンで契約警備会社を呼べる体制を構築した。店舗近隣の所轄警察への協力依頼も行っている。社内的には、店舗で窃盗が発生した時、被害届を提出することを義務化している。社内ポータルで詳細情報の全社的な共有も行っている。
社内での情報共有だけでなく、今後、不審者や被害発生の情報を小売業界間でリアルタイムで共有するシステムを構築できないか。本当に悪質な窃盗は完全排除しなければならない。皆様と一緒に防犯に取り組んでいければと考えている。
〔「社会問題」では片付けられない(林)〕
竹花ドラッグストア、書店、衣料品店と小売3業種の話を聞いて、経済産業省としてどのような感想を持ったか。
林非常に驚いている。これはもはや「社会問題」「犯罪問題」だけで片づけることはできないのではないか。万引によるロスは経営に大きなインパクトを持つ。これを少しでも防ぐことができたら、小売事業者の利益率の改善に大きく寄与する。経営者が「経営課題」としてしっかりと取り組むべき問題という印象を持った。
小売業全体の売上140兆円のうち1%がロスだとして、1兆4000億円の金額になる。これまでの話を聞いていると、2兆円以上になるのではないか。
地方の中堅スーパーの年間売上は10億円。1%の利益率だと1000万円になるが、この中で設備投資などをしていかなければならず、経営は非常に厳しい。地方のスーパーがどんどん疲弊して、利益率を上げなればならない時、万引によるロスを少しでも防ぐことができれば収益の改善に大きく寄与するだろう。経営層はこの問題にしっかりと取り組まなければならない。
多くの小売事業者はこの問題に真剣に取り組んでくださっていると思うが、もしなんとなく「現場でうまくやれよ」という状況であるならば、そういった意識は正す必要があるだろう。
竹花全国万引犯罪防止機構として活動する中で、「万引対策」あるいは「犯罪対策」ということだと、経営層を取り込み、その気にさせるのが難しいという印象がある。
林小売事業者は売場という現場を持つ。楽しい買物体験をお客様に提供しなければならないのに、ネガティブなイメージを持つ犯罪対策に正面から取り組むことに経営者が躊躇するのは理解できる。ただ、数字の観点から見ると万引ロスは大きなインパクトを持っているので、これを経営課題としてきちんと捉え直すことが重要だ。
〔経営者の関心と関与が重要(近江)〕
竹花繰り返しになるが、「万引対策」と言っても被害者である経営者をなかなかその気にさせることができず、限界を感じていた。そこで、もう少し幅を広げて、経営に関わる問題である「ロスプリベンション(損害防止)」の観点から考えてみてはどうかと取り組みを始めたところだ。万防機構・ロスプリベンション教育制度作成委員会の近江委員長から説明してほしい。
近江全世界の小売業における不明ロスは合計1234億ドル(13兆円)にのぼり、売上総額の1・23%を占める。これだれの金額が消えてなくなっているのだから、驚くべき数字だ。国別では、アメリカ、中国、日本の順。日本は149億ドルで売上総額の1・35%を占める。
林課長がおっしゃったように、不明ロスはまさに経営問題だ。経営者は、ロスも万引もあまり表に出したくないという気持ちを持っている。しかし「経営の恥部」というのは間違った認識で、これをコントロールできれば「利益を生み出す金脈」になる。ネガティブではなくポジティブにロス対策を考えてほしい。
多店舗展開で売上を追求している企業もある。もちろん売上は重要だ。しかし売上至上主義に偏っていないか。経営会議でロス率は議題になっているだろうか。ロス率を聞いても答えられない経営者は多い。店長は前年からどれだけ売上を伸ばしたかだけで評価されていないか。ロス率が評価項目に入っている企業は少ない。現場が売上だけに執着していないか。最終的に目指すのは利益であることを忘れてはならない。
外部窃盗である万引と内部不正は実は同じぐらいある。共通した要因としてあげられるのは経営トップの無関心。経営トップのコミットメントがないと、中間管理職は「防犯設備を入れたい」「防犯教育をしたい」と思っても動けない。失敗するよりは何もしないほうが評価されるという事なかれ主義になっている。悪い情報をきちんと上に報告できる企業風土と制度を完備して現状を把握しなければ、企業として良い結果を出すことはできないのではないか。
推定の数字になるが、日本国内の1世帯あたりの不明ロスの負担額は2万8000円あるという。経営者は善良な顧客に負担させている責任を感じてほしい。
ロスプリベンションは経営マター。経営会議の議題とすることはもちろん、経営陣の中にロスの数値責任者を設け、さらにロスの原因を追求するための専任担当者を置いてほしい。
まずは継続して正確なロス率を測定し記録する。そして店舗ごとのロス率を店長に、部門ごとのロス率を部門責任者にいち早く伝え共有する必要がある。
〔ロス防止は利益率向上に寄与(秋元)〕
竹花秋元さんはロスプリベンション協会でこの問題に長く関わっている。考えを聞かせてほしい。
秋元アメリカではロスプリベンション担当者の社内での地位が高く、副社長が就いている場合もある。利益率の向上にも寄与している。ところが日本では上場企業でも担当者が1人か2人しかいないところがけっこうある。そこで、アメリカのロスプリベンションの手法を日本の企業にも広めたいと思い、この協会を設立した。
ロスプリベンションとはいわゆる商品ロス、棚卸滅耗とか棚減りと言われているが、これは万引だけではない。業務プロセス全般に関するものも当然入っているはずだ。商品ロスをゼロにすることはおそらく無理だろう。でも、ロスを最小化して、利益を最大化することはできる。そのためには、事が起きてから対処するのでは遅いので、事前の予防と、それを日常的に継続することが必要になる。ロスプリベンションが従来の商品ロス対策と最も異なるのは、一部門の問題ではなく、全社的な経営課題であるという点だ。商品ロスを2分の1に削減すると営業利益は25%増加する。この数字を経営者に伝え、ロスプリベンションの必要性を強く進言してほしい。
ロスプリベンションは店舗だけの問題ではない。法務、人事、商品管理、経理、施設管理など社内の各部署に、それぞれロスプリベンションに関わる課題がある。これらすべての人たちが集まらないと、施策を立てても動かない。
まずやらなければならないのは、すべての関係部署を統一してコントロールすること。それができるのは役員層しかいない。だから、必ず役員のコミットメントを取ってほしい。
現状、商品ロスに経営課題として取り組んでいる企業は少ない。責任を取る主管部門があいまいで、関連部門の連携ができていないのが現実だ。その結果、高ロス店舗の単独の問題として扱われたり、万引対策に偏重したりする。事後対処的で事前予防の視点が欠けるといった問題も出てくる。これを解決するためには、全社横断ロスプリベンションプロジェクトの組成が必要になってくる。
ロスプリベンションを実施することで、従業員は自分のやっていることが店の利益につながっているという自負を持つことができ、従業員満足度が高まる。店の雰囲気も良くなり、顧客満足度も高まる。地域の青少年健全育成に役立ち、地域の治安維持にもつながる。そうした意義も考えてロスプリベンションを実施していただきたい。
竹花ロスプリベンションの実施は、費用対効果の問題で躊躇する企業も多いと思う。私たちは成功事例を収集し、シンプルで効果的な方法を考えたい。万引問題拡大版として、万防機構の1つの大きな柱として、時間はかかるかもしれないが取り組んでいきたいと考えている。
これまでの議論を聞いて、万防機構が進めている万引対策や色々な問題について、経済産業省としてどのような感想を持ったか。
林万引を社会問題から経営問題へと昇華させて利益に変えるための、精緻で前向きな議論だと感じた。経営者のコミットメントが必要というコンセプトには非常に共感する。経済産業省としても、万防機構や事業者の皆様とともに、この問題に引き続き一緒になって取り組んでいきたい。
竹花菊間さんの意見を聞きたい。
菊間万防機構に携わるようになって4、5年たつが、最初の頃は、こういうふうに皆さんが集まったとき、各業界の被害を把握するために話を聞くことがメインだった。ところが昨年あたりから、経営課題としてポジティブな施策を検討する場に変わってきた。今はまだ各社の企業努力の中でやっているが、もっと国全体で取り組むようにしなければいけない。
竹花いま万防機構が進めている情報共有と活用の仕組み作りは、個別企業ではやりきれない課題。まず第一次的にリスクを負う団体がまとめないと話が進まない。私たちはその役割を担う覚悟を持っている。
昨年、東京・渋谷周辺の書店同士が万引被害や犯人の情報を共有し、渋谷警察署や渋谷区などと連携して万引防止対策を行う「渋谷署管内書店万引き防止連絡会」が発足した。この取り組みでも、参加する書店の皆さんにできるだけリスクを負わせず、万防機構がリスクを負う形を作っていきたいと考えている。
人材や資金面の課題はあるが、皆さんと協力して取り組みを継続したい。

「春夏秋冬本屋です」/「『LIVE版・山陽堂だより』始めます」/東京・山陽堂書店取締役・遠山秀子

みぞれまじりの雨が降る春分の日、お墓参りをしながら改めて思ったこと。それは、初代が明治24年に創業した本屋のおかげで私達の生活はこれまで支えられてきたということでした。
当店は、家族経営の6・5坪の小さな本屋ですが、戦争・東京オリンピック青山通り拡幅による店舗縮小・バブル時の店主逝去など、何度かの危機は、「本」を売り続けることでくぐり抜けてきました。しかし今、これまでにない変化が私たち本屋に求められています。
そこでまず、この閉塞感を打破できないかと、4月より月に1回「LIVE版・山陽堂だより」を開催することにしました(「山陽堂だより」は2009年秋より店頭・配達先に配布しているお知らせ)。LIVE版では、本の話や山陽堂書店の最近の取り組み、今後のイベント・展示情報などをお届けする予定です。参加費はワンドリンクご購入いただいて500円。「LIVE版・山陽堂だより」のあとは3階喫茶がその日限りのBAR営業。参加してくださった皆さんと一杯傾けながら過ごせたらと思います。
ぽとっ、と雨粒がお線香の頭に落ちて、灰がへこみました。消えないように風を送り続けると、朱い火がまた見えてきました。本屋の灯も風を送り続けていれば光がみえてくるでしょうか。
それを願ってこの春、はじめの一歩、ふみだします。

6月総会終了後に作家講演会を開催/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は2月20日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催した。
理事会では、志賀理事長から2月15日に開催された日書連理事会について報告。続いて道組合の活動を審議し、6月12日開催の総会後に作家・河治和香氏の講演会を開催することを了承した。また、表紙返品の実現に向けた活動や、消費税軽減税率について協議したほか、事務局から中間決算について報告を行った。
(事務局・髙橋牧子)

大阪市内の小中学校図書館へ地元書店による納入を陳情/大阪組合、大阪維新の会を訪問

大阪府書店商業組合の面屋龍延理事長と図書館問題委員会・田上順一委員長は3月6日、大阪維新の会大阪府議団会長岩木均議員、政務調査会長中司宏議員を大阪府議会大阪維新の会会長室に訪ね、図書館問題について約1時間にわたり陳情した。
面屋理事長は、活字文化議員連盟の答申や日書連の「全国小売書店経営実態調査報告書」などをもとに日書連活動と書店の経営実態について説明。また、在阪出版社・取次とともに書店組合が大阪読書推進会を立ち上げ、読書ノート活動は今年15年目を迎えること、14回目の実施となる「大阪子ども『本の帯創作コンクール』」には毎年約1万2千人の応募があることを経緯を交えて話した。
さらに、活字文化を支える地域インフラの役割を果たしている書店が年々減少していると説明して、子どもの読書力を下支えするための端緒として大阪市内の小中学校図書館への納入を書店が担うことができるようにお願いしたいと陳情した。
田上委員長は、書店の現状や公共図書館政策、学校図書館の司書配置と発注実務の問題、図書館MARCの状況、図書装備の実態、材料経費や人件費の実情と抱える諸問題について説明し、理解を求めた。
岩木府議会長や中司政調会長から自治体行政の図書館政策や読書普及政策について維新の会としての見解を聞くとともに、活字文化の振興と、大阪が「全国で本を読まないワースト1位」であることの解消のため、読書普及の施策としてどのように図書館問題を進めるのか考えてみたいと回答があった。
(石尾義彦事務局長)

第5回東淀川えほんまつり/迷路やわらべ歌を楽しむ/大阪組合他で受託の「絵本読み聞かせ事業」

「第5回東淀川えほんまつり」が2月25日、大阪市東淀川区の東淀川区民ホールで開催された。
この催事は、大阪府書店商業組合と出版文化産業振興財団(JPIC)、東淀川区のおはなしボランティアとことこ、モダンブックスの4者によるジョイント事業として東淀川区から業務委託を受けた「平成29年度絵本読み聞かせ事業」の掉尾のイベント。
「えほんまつり」は午前10時半に開会。あいさつに立った東淀川区の北岡均区長は「大阪市の24区の中で他はどこも行っていないイベント」とし、「絵本の楽しさを味わって下さい」と語りかけた。
イベントに登場した迷路絵本作家の香川元太郎さんは、月刊誌「歴史群像」(学研プラス)に城の緻密なイラストを毎号載せており、「迷路絵本シリーズ」(PHP研究所)は14作品で約270万部を売上げている。今回は「おもちゃの迷路」(PHP研究所)で共著している娘の志織さんと一緒に「絵本の世界にとびこもう!」と題し、プロジェクターを使って迷路や隠し絵を見つける催し物で親子の参加者を魅了した。
また、「野の花文庫」主宰の岩出景子さんは、今ではほとんど歌われなくなったわらべ歌を大阪訛りのユーモアあふれる語り口で紹介。初めて聞く幼児は目を輝かせて一緒に歌い、遊んだ。
よみきかせボランティアサークル「3丁目の鷹」主宰の鈴木健司さんは、意外な展開の読み聞かせとミニ積み木を使った語りかけで子どもの心をぐいぐい引き寄せ、終了後も鈴木さんの周りに子どもたちが集まって話をせがんでいた。
同時開催された絵本バンク「絵本展」と、区役所の職員が牛乳の空き箱とストローで作った「プラコプター」も大変好評で、大盛況の裡に午後3時半に終了した。
(石尾義彦事務局長)

取次、出版輸送と懇談会開く/早売り問題、返品等で協議/滋賀組合

滋賀県書店商業組合(吉田徳一郎理事長)は、1月30日午後3時より、近江八幡市の湖東信用金庫近江八幡支店会議室で、書店、取次、出版輸送の三者懇談会を開催した。
出席者は、書店組合から吉田理事長をはじめ、理事、監事12名、取次、輸送からトーハン京都支店・大垣支店長、日販京都支店・小川支店長、大阪屋栗田大阪営業所第二課リーダー・矢野氏、出版輸送から手嶋社長をはじめ、下川営業係長、滋賀営業所・中本所長の合計18名。
懇談会では、吉田理事長のあいさつ、出席者自己紹介の後、取次3社の現状と問題点が発表された。取次3社からは、人件費、家賃の高騰による書店の閉店問題、収益向上のための雑貨の販売、楽天やpontaなどポイントサービスとの連携模索、webアプリとの連動により書店のコミック棚を活性化する取り組み等の報告があった。
出版輸送からは、昨年の県内書店送品は重量ベースで5%減、返品は3%増であったことが報告された。
書店側からは、名神高速道路パーキングエリア内における少年ジャンプの早売り問題が報告され、取次、出版輸送の対応を確認したが、そのカギを握る仲卸の全容は把握しきれなかった。また、書店からの返品の速やかな首都圏返送についても、取次、出版輸送それぞれに確認が行われた。その折に出版輸送から、書店の返品が送品のない土・日曜日に準備され、月曜日に集中しがちな点が報告され、書店に配慮を求める要望がなされた。
その他、書店新風会により11月1日が「本の日」に制定されたことを受け、読書推進、増売を図る戦略展開を支援してほしい旨の意見が出された。
約2時間の会合を終えた後、別席にて懇親会を行った。
(川瀬浩太郎広報委員)

県立高校書籍納入で教育長らと話し合い/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(井上俊夫理事長)は2月20日、横浜市中区のかながわ労働プラザ会議室で定例理事会を開催した。
今回は決議する議案事項は無く、報告や意見交換、問題提起が行われた。
次年度の理事会日程について、2月及び3月は教科書の時期にあたり理事の都合がつかないことが多いため、この時期の開催をはずす案が示され、了承した。
日書連報告では、書店経営環境改善のための要望で粗利30%獲得を求めていくことについて意見が交わされた。書店くじの購入については、現行の500枚単位から100枚単位に変更できないか検討を要請することにした。また、小型手帳「ポケッター」の斡旋が終了したことに伴い、神奈川組合独自の手帳について検討を進めることとした。
神奈川組合の報告事項では、県立高校の書籍の納入問題について、教育長らと話し合いをもったことを報告。県の方針はあくまで1円でも安いことが最重要であり、書店側としては教科書納入等を含めた教育環境、地域社会への協力などを考慮してもらいたいが、双方の主張に隔たりがあることから、今後、県議会議員などとも話し合いを続けることで、県立高校の書籍納入を求めていくことにした。
(山本雅之広報委員)

訂正とお詫び

本紙3月15日号2面掲載、大阪理事会の記事で見出しと文中に「総代会」とあるのは「総会」の誤りでした。お詫びして訂正します。(編集部)

「はじまるよ!本のカーニバル」/第60回こどもの読書週間

2018・第60回「こどもの読書週間」(読書推進運動協議会)が4月23日から5月12日まで、「子ども読書の日」(4月23日)から「子どもの日」(5月5日)を間に挟んだ20日間実施される。
今年の標語は「はじまるよ!本のカーニバル」。読進協は実施にあたり、全国の公共図書館、小中高等学校図書館、書店、出版社、報道機関などにポスター(写真上)や広報文書を配布してPR。読書週間の趣旨を示すマーク(写真下)を作成し、期間中またはその前後を通じて各社が発行する雑誌・新聞・広報紙誌などに使用するよう呼び掛ける。また、都道府県の読進協、関係各団体の協力を得て、以下の各種行事の実施を推進する。
▽公共図書館、公民館、小中高等学校の学校図書館で「子どもの読書研究会」「子ども読書のつどい」「親と子の読書会」「大人による子どもの本研究会」「子どもの読書相談」「児童図書展示会」「児童文学作家による講演会」「児童図書出版社との懇談会」などの開催。「読書感想文・感想画コンクール」の実施
▽都道府県の読進協による都道府県単位の「子ども読書大会」などの開催
▽出版社、新聞社、放送局、文化団体などによる被災害地域、児童養護施設、矯正施設などへの「図書・雑誌の寄贈運動」の実施

1月期販売額3・5%減/書籍は返品改善で1・9%増/出版科研調べ

出版科研調べの1月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は、前年同月比3・5%減となった。
部門別では、書籍が同1・9%増、雑誌が同9・5%減。書籍が前年を上回ったのは4ヵ月ぶりで、返品が改善したことが要因。雑誌は5ヵ月ぶりに2桁減を免れた。雑誌の内訳は月刊誌が同9・1%減、週刊誌が同10・8%減。月刊誌はムックの新刊点数減と返品率悪化が響き、週刊誌は前年同月の土台が高かったことと、週刊分冊百科や総合週刊誌の部数減で2桁のマイナスになった。
書店店頭の売上は、書籍が同約2%減。一般・教養書ジャンルは『漫画君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が1月に百万部を突破する絶好調の売行きで、約13%増となった。学参・辞典は約12%増。定番参考書が好調で、1月12日発売の『広辞苑第7版』(岩波書店)の売行きもよかった。雑誌は定期誌が約9%減、ムックが約10%減、コミックスが約17%減と厳しい状況が続く。

大学生の過半数が読書時間ゼロ/書籍費も過去最低に/学生生活調査で

全国大学生活協同組合連合会が発表した「第53回学生生活実態調査」によると、1日の読書時間について大学生の53・1%が「ゼロ」と回答。半数を超えたのは、調査に読書時間の項目が加わった2004年以降で初めてとなった。
この調査は昨年10~11月に実施し、全国の国公立・私立大学30大学の学生1万21人が回答した。大学生の1日の読書時間は平均23・6分で3年連続減少。「0分」の割合は53・1%と前年から4・0ポイント増加し、初めて5割を超えた。読書時間がゼロと回答した割合は、2000年代後半から12年まではおおむね35%前後で推移していたが、13年に40・5%と4割を突破。直近の5年間では18・6ポイント増と急激な伸びを示している。
1ヵ月の生活費のうちで「書籍費」は、自宅生が1340円(支出に占める構成比2・1%)、下宿生が1510円(同1・3%)で金額、構成比とも1970年以降最低を記録した。

寄稿「読書習慣が身につく環境作りに取組む」/滋賀県書店商業組合理事長・吉田徳一郎

1868年は、明治維新の年。プラス150年が本年2018年。明治150年です。NHK大河ドラマも、本年(明治150年)を背景として「西郷どん」となったのではと思います。西郷さんは、150年前に生き、時代の移り変わりに一役を担った人物です。庶民から尊敬され、遺徳をしのばれた、そんな「西郷さん」の教えを弟子が書き写したものが「西郷南洲翁遺訓」という書名で出版されています。それを繙いてみました。
150年前の遺訓の多くの言葉が、今の日本にもあてはまる言葉でした。その中のひとつ、西郷さんは、明治維新後も西洋の思想書をたくさん取り寄せて読んでおり、次のように述べています。
「広く各国の制度を採り、開明に進まんとならば、先ず我国の本体を据え、風教を張り、然して後徐かに彼(各国)の長所を斟酌するものぞ」と。そうではなく「猥りに彼(各国)に倣いなば、国体は衰退し、風教は萎靡して匡救すべからず」と。150年前に「日本人の美点を忘れ、日本人のアイデンティティーを失い」、ただ、「西欧の真似をする」時代の流行に警鐘を鳴らしました。150年後グローバル化のもと、「日本人の美点を忘れ、日本人のアイデンティティーを失った」状態の今日の日本を、西郷さんが言っていたように思えます。
嘗ての優秀な企業も、「日本人の美点を忘れ、日本人のアイデンティティー」を伝承、継承できず、曲がり角に立たされています。そして、日本人の図書離れ、活字離れによる、20年以上続いている今日の厳しい出版業界の現状も、そうと言えるのではないでしょうか。
そんな厳しい出版状況ですが、いろいろな対応が生まれています。「読書習慣が身につく環境づくり」は、児童書の販売維持に繋がっています。出版・取次・輸送会社・書店が連携しての対応の呼びかけ、書店が仲間として協力しての課題対応などです。「何もしなければ売れない、アクションを」と訴え、「11月1日を『良い本の日』」にとの提案もあります。バレンタインチョコのお返しに「図書カード」をという提案もあります。
滋賀組合としても、今年のアクションとして①「図書カードの増売」の取り組み②11月初旬の「『良い本の日』フェア」などに取り組みたい考えです。①は、組合書店の皆それぞれが、身近な知り合い・企業・団体に「お祝い・お礼・贈答・報奨品・賞品などに図書カードを!」と図書カードの販売を拡げる活動です。②『良い本の日』フェアは、粗品の進呈などお客様サービスフェアができないかというものです。是非、組合書店様からのアイディアをいただければと思います。

雑協・取協「年末年始本屋さんに行こう」キャンペーン/書店への集客で効果上げる/

日本雑誌協会(雑協)と日本出版取次協会(取協)は2月22日、17年~18年の年末年始に実施した「年末年始本屋さんに行こう」キャンペーンの実績を発表した。キャンペーン期間中の書店売上で前年を上回るという目標には届かなかったが、出版科学研究所は年末年始市場の分析で、最近の市況トレンドに照らして一定の成果があったとし、キャンペーン実施店の来客数は非実施店に比べ2%プラスになるなど集客効果があったと評価している。発表の概要を紹介する。
今回のキャンペーンは17年12月29日と18年1月4日を特別発売日に設定し、定期雑誌と特別商品約300点を発売。12月29日から1月8日までをキャンペーン期間として、書店店頭を盛り上げるため、図書カードが抽選で当たる「キャラクターしおり」や、レトルトカレーの配布を行った。また、SNSで「あなたのおススメの本屋さん」「好きな本屋さん」をつぶやいた人の中から抽選で図書カードやレトルトカレーを贈る企画も実施した。
キャンペーンの実績発表によると、12月29日、1月4日の特別発売日は前年比プラスとなったが、雑協・取協が目標とした12月29日~1月8日までの期間では94・8%(キャンペーン実施店95・2%)と前年を上回ることはできなかった。トーハン、日販、大阪屋栗田、中央社のPOSデータ(調査軒数4666軒)で定期誌の売上をみると、12月29日、30日、1月4日、6日及び1月1日~4日合計では前年比を上回る結果になったが、12月31日や正月3が日などに売上面で健闘できなかったことが反省点だとしている。
出版科学研究所は年末年始市場を分析して、キャンペーン期間中の定期誌のPOS前年比は6・1%減となったが、「推定販売金額で1割近いマイナスが常態化している雑誌市場を鑑みれば一定の成果があったと言える。なによりキャンペーン実施店の来客数は非実施店に比べ2・0%プラスになるなど集客効果があった点は非常に大きい」と指摘している。
期間中に発売された雑誌を個別にみると、年末発売誌では「nicola」(新潮社)、「てれびくん」(小学館)、「たのしい幼稚園」「おともだち」(ともに講談社)など、女性向けや児童向け雑誌で前年を上回る銘柄が多かった。年始発売誌は、「ヤングジャンプ」(集英社)、「週刊ポスト」(小学館)、「花とゆめ」(白泉社)、「Tarzan」(マガジンハウス)など週刊誌、コミック誌、月2回刊誌で前年を大きく上回る雑誌が見られた。
また、特別発売誌では、「続日本100名城公式ガイドブック」(学研プラス)、「週刊ニャン大衆」(双葉社)、「キン肉マンジャンプ」(集英社)、「純愛プリンスお兄ちゃんはキミが好き8」(宙出版)が売上を伸ばし、重版に至っていると報告した。
「キャラクターしおり」は全国約2500軒(前年約2200軒)で配布。応募者全員にキャラクタースタンプ風画像をプレゼントし、さらに抽選で図書カードを贈る企画で、応募数は16万5129件と昨年の同期間の3・1倍に拡大した。ハウス食品協力によるレトルトカレーの配布は200軒(前年130軒)で実施し、1軒あたり配布数も420個(前年240個)、総数8万4000個と軒数・店舗当たり個数とも増やして実施した。雑協公式ツイッターのフォロワー数は、1月8日キャンペーン終了時点で約1万6000と、12月29日のキャンペーンスタート時に比べ約2・4倍に拡大。総リーチ数は約1029万、リツイートは約5000と想定以上の反響があった。
キャンペーンに対する書店の感想では、「カレーは配布好評で当日配布終了。しおりも年末年始にご来店される方が多く、使い勝手が良く配布もスムーズだった」(ジュンク堂池袋店)、「カレー企画はお客様に好印象を持たれた。しおり効果もあり1月4日は前年比31・7%増と好影響」(紀伊國屋書店梅田本店)など、来店客の反応に手ごたえを感じたという声を紹介した。