全国書店新聞
             

平成15年12月1日号

年内解決へ運動強化/出版社へ要請活動展開/ポイントカード

ポイントカードによる再販出版物の値引き問題で、日書連は11月20日の理事会で主要出版社33社に値引き行為の中止を求める働きかけを遅くとも12月理事会までに実施する方針を再確認した。すでに9月理事会で出版社33社に対する各県組合の担当を決めていたが、10月末に至って講談社、小学館の2社が取次を指導する文書を出したことから、年内解決をめざして取り組みを強化した。
11月理事会では岡嶋再販委員長がポイントカードについて最近の動きを経過報告。講談社、小学館の2社が10月31日付でトーハン、日販、栗田の3社に違反店の指導を求める文書を出し、1カ月以内に回答を求めていること、筑摩書房も11月17日に同様の文書を出したことが説明された。
岡嶋委員長は「出版社の数が多いほど取次へのプレッシャーになる」として、各県組合またはブロック単位で出版社への働きかけを
強く求めた。
各県組合では、19日に神奈川組合が講談社を訪問、浜田副社長、小此木雑誌販売局長と懇談したことが報告されたほか、大阪組合は同日の理事会終了後、文藝春秋を訪問した。
11月26日までの報告によれば、山口組合が主婦の友社、福岡組合が小学館、愛知組合がNHK出版をそれぞれ訪問している。また、東京組合は岩波書店、朝倉書店、流対協とトーハン、日販、大阪屋、栗田の取次各社に働きかけることを表明している。

各県組合の情報化支援/第2次分として30万円/日書連

〔情報化〕
日書連は各県組合の情報化支援として、本年3月に1組合30万円の補助金を交付したが、情報化推進委員会ではその後の追跡調査を兼ねてアンケート調査を行い、第2次分として1組合30万円を上限に、総額7百万円の追加補助金を出すことになった。
アンケートではパソコン購入、インターネット環境整備、ホームページ開設、地方出版物データベース化などの各項目について「完了」「進行中」「予定」「未定」と記入してもらう。各県でホームページを開設しているのは山形、東京、愛知、大阪、京都、和歌山、香川、愛媛、沖縄の9組合。沖縄組合山田理事長からは、沖縄の地方出版物データベース化について「11月いっぱいに整備して、販売もできる状態にする」と報告があった。
〔流通〕
「10月増刊号でありながら返品期限が10月16日。九州雑誌センターに返品したら11月3日まで許容範囲だった」など別冊・増刊号のL表示について問題点が提起された。
この問題について東京組合が雑協に①返品期限の統一性がない、②表示場所が一定していない、③表示が小さく見えない――などの問題点を確認した。この結果、①週刊誌増刊号の返品は版元―取次90日、取次―書店60日の規定がある、②L表示の位置、大きさも規準があり、会員社の雑誌は雑協販売委員会から徹底させる、非会員社は取協を通じて徹底を図る旨の回答があった。
高須副会長は「雑誌発売日から60日でなく、発行日から60日のルールを申し入れてほしい」、井門副会長からは「増刊・別冊は従来フリー入帳だったのを、取次ぎの要望でL表示を始めた経緯がある」などの発言があった。
「週刊朝日」が新聞販売店で1日早く販売されている問題では、朝日新聞社から「問題なし」の回答があったが、顧問弁護士と相談の上、対策を講ずる。
〔消費税〕
出版業界4団体でつくる税制問題委員会がまとめた「税制に関する要望書」案がまとまり、学術・文化の振興・普及の観点から「書籍・雑誌等の出版物の消費税率を軽減税率または据え置くこと」とする要望書を承認した。各団体の承認を得て、12月中に開催予定の税制問題特別委員会で可決後、財務省など関係機関に提出する。
また、来年4月から実施される消費税の総額表示については、書籍・コミックス・ムックの税込み金額は売上げカードに表示しているとする店頭表示用ポスターを準備している。
〔スタートアップ〕
書店データベースについては共有データベースユーザ会との話し合いがほぼまとまり、非組合員も含めて書店ID、住所、店名、電話のデータを管理していくことになった。貸与権問題では11月末にテストが終了し、著作権分科会法制小委員会のヒヤリングを経て、法制化の作業に入る。ICタグの実用化では埼玉県越谷市の昭和図書を12月4日に視察することになった。

平成16年理事会日程

委員会理事会
1月新年懇親会23日(金)2月18日(水)19日(木)3月休会
4月21日(水)22日(木)5月20日(木)定時総会21日(金)6月16日(水)17日(木)7月21日(水)22日(木)8月休会
9月15日(水)16日(木)10月移動理事会21日(水)11月17日(水)18日(木)12月15日(水)16日(木)

共済会給付

(15・10・20~15・11・19)▼病気傷害川上郡標茶町富士町5廣瀬書店廣瀬功殿5口
爾志郡熊石町雲石53岸田書店岸田資男殿
山形市七日町2―7―23郁文堂書店原田吉則殿3口
柴田郡柴田町船岡東2―8―40文星堂楠目美代子殿6口
上水内郡信州新町198
前沢書店前沢政利殿5口
御坊市薗207―13いろは書房竹田初三殿2口
北九州市小倉北区金田2―5―8中尾書店中尾礼隆殿10口
▼病気傷害・死亡弔慰横須賀市大滝町1―27杉山書店杉山久子殿3口
▼死亡弔慰豊橋市松葉町2―41高英堂書店鈴木紀男殿
▼配偶者死亡(阿部久代)三浦市南下浦町上宮田1486―1はまゆう書房阿部善元殿5口
同(四間丁千枝)新湊市堀岡228四間丁書店四間丁敏二殿
▼全焼都城市上町6街区8都城金海堂中村亮介殿2口6百万円
▼地震川上郡標茶町富士町5廣瀬書店廣瀬功殿5口24万3千円
厚岸郡浜中町霧多布西2条1―4カマザワ鎌沢史代殿2口120万円
中川郡池田町字大通5――7内外商事井上明殿1口60万円
遠田郡子牛田町字藤ヶ崎町56高橋売店高橋詮殿2口24万円
▼その他被災春日市ちくし台1―5石橋書店
石橋誠一殿1口1万円

中尾氏らを講師に日書連マーク研修/佐賀県組合

佐賀県書店商業組合は11月5日午後2時から大和町龍登園で日書連マーク研修会を開催。講師に福岡県・中尾書店の中尾隆一氏とナノビットの高崎氏を迎え、組合員25名が参加した。
はじめに岩永理事長があいさつ。「佐賀県内でも各地でTRCが学校図書館への図書納入を拡大しつつある。このままでは、われわれ地元書店が学校図書館に図書を納入できなくなる。こういった危機的状況の中、日書連マークが開発され、成果を上げている。本日は中小書店さんに来ていただき研修会をやっていただくことになった」と、趣旨説明。
研修会では中尾氏が図書館納入の現状と日書連マークのできた経緯を報告したあと、福岡県を例に納入に至る行政との交渉、書店の対応、日書連マークの利点を説明。「日書連マークは他のマークと比べて安く、新刊データも早い。地元書店が誰でも納入できるシステムとして組合から行政に働きかけてほしい」と述べた。
研修の後半はナノビットの高崎氏が担当し、行政との交渉、対応を詳しく説明。質疑応答ののち、午後4時過ぎ、研修会を終了した。(近藤甲平広報委員)

今年最も低い94%台/『ハリポタ』の影響受けて/日販調べ

日販経営相談センター調べの10月期書店分類別売上げ調査がまとまった。これによると10月の売上げ前年比は94・1%で今年に入って最も低い数字。前年割れも連続12カ月目となった。
しかし、ジャンル別に見ると文芸書が平均50・8%と大きく落ち込んでおり、前年同月に発売した「ハリー・ポッター」の影響がくっきり。児童書も同書の影響が懸念されたが、『ダレン・シャン⑨』もあって、文芸書ほど大きな落ち込みはなかった。コミック、実用書、文庫、新書の各ジャンルは前年同月の数字を上回った。
立地別では、先月「商店街」が回復を見せたが、今月は87・1%と再び大幅ダウン。学参書、専門書が2割減と落ち込んだ。
平均客単価は1042・8円で前年同月比4・1%のマイナス。大型店は5%台のマイナス。

執行理事制を導入/兵庫県組合

兵庫県書店商業組合は11月8日、神戸シーガル会館において11月定例理事会を開催した。
先の総代会で選出された三上新理事長は、「今後の組合運営を精一杯務めていく」と力強く述べたあと、執行部以下の組織編成を発表した。従来相談役となっていた理事長経験者の活躍の場を広げる意味で、新しく執行理事制を導入し、安井元理事長と村田前理事長両名が着任した。
また、副理事長には再任の大杉誠三氏(大杉広文堂)、大利信夫氏(大利昭文堂)に加え、山根金造氏(巌松堂書店)が就任。専務理事には森井宏和氏(森井書房)が、常務理事には引き続き坂田正美氏(甲南堂)がそれぞれ指名された。
各委員会及び委員長は以下の通り。
総務・企画運営=高井忠明(文明堂書店)、再販研究=三宅節男(大書堂書店)、取引・流通改善=井上喜之(井上書林)、広報=中島良太(三和書房)、情報化推進=奥則夫(オクショウ)、出店問題=谷隆三(谷書店)、出版倫理=小谷俊作(小谷書店)、増売=山口武司(文進堂書店)、図書館事業部=大利信夫(大利昭文堂)、組織強化=小松恒久(小松書店)、雑誌発売日励行=春名洋志(大和堂書
店)、日書連共済=大杉誠三(大杉広文堂)、財務=大利信夫(大利昭文堂)
(中島良太広報委員)

来年度総会で定款変更/書店くじ来春も7百万枚発行/11月理事会

〔組織強化〕
中小企業団体が安定化事業、合理化事業を行えなくなり、定款の規定と整合性がなくなっているため組織強化委員会は日書連定款の見直しを図っている。鈴木委員長は今後のスケジュールについて、「12月理事会で定款変更の集中審議を行い、全国中央会の了承を経て来年5月総会で承認を求める」と説明した。
〔指導教育〕
東京組合は東京都、警視庁の協力により、12月から万引き防止のポスターを組合書店に一斉に掲示、「万引きは犯罪」とするキャンペーンを開始するが、萬田会長は「青少年からの出版物買い取り禁止へ、都青少年条例改正を働きかけていく」と強調。秋田県、群馬県でも青少年条例が改正されたことが報告された。〔増売運動〕
来春4月に実施する「春の書店くじ」実施要領を承認。来春は今秋の読書週間書店くじと同じ7百万枚を発行する。高須副会長は「くじ参加率を上げる活性化のアイデアを募集したい」と問題を提起。萬田会長も「当選率の手直し、賞品内容の検討もしてきたが、今ひとつ盛り上がりに欠ける。何ができるか、提案いただきたい」とし、木野村理事から「雑協に協力を頼み、くじ配布を雑誌でPRしてはどうか」などの提案があった。
〔読書推進〕
第4土曜日は子どもの本読み聞かせ運動の来春の実施組合は滋賀、香川、佐賀の3組合が立候補し、出版文化産業振興財団(JPIC)による現地説明会が開催されることになっている。高須委員長は、すでに3分の2の都道府県で読み聞かせキャンペーンが行われており、読書推進に役立ててほしいと報告した。〔共同購買〕
中山委員長から「日書連オリジナル手帳「ポケッター04年版」について、製作部数を1万5千部減らしたが、完売できず、1万部を各県組合に割り当てたいとし、了承された。カレンダー斡旋については、テスト販売の結果、申込み店が少ないため実施しない。
〔広報〕
今西委員長は各県組合にホームページ、メーリングリストができてきたのを受けて、日書連と各県組合のメーリングリスト立ち上げを検討したいと提案した。

売上大幅に増加/TS協同組合総会

TS流通協同組合は11月21日午後4時から書店会館で第4回通常総会を開催。新年度は加盟書店、取引出版社の拡大、システム及び運用方法の改良、システムを利用した受注の拡大等に取り組むことを決めた。
同組合の現在の組合員数は153書店、取引出版社は117社で、1年間のTS客注システムの売上は5788万円(対前年比138・8%)と前年度を大きく上回った。
総会の席上、片岡理事長は「小学館の支援で新しい客注システムが完成し、従来に比べて書店の注文操作が飛躍的に簡単になった。新システム完成を記念して新規加入促進と販売促進キャンペーンを実施した結果、13書店が新規加入し、売上も大幅に増加した。また、新潮社、幻冬舎、光文社等が取引出版社に加わり、発注書店数も月平均60書店から80書店に拡大した。東京組合との協業化はいっそう進み、組合からの予算化も実現した。経営基盤が安定することで、組合員への加入メリットを増やすことができる」と報告。課題として①取引出版社のさらなる拡大②新規事業の拡大③加盟書店の拡大④流通経費の赤字削減――などをあげた。
来賓の東京組合・萬田理事長は「TS流通協同組合の客注システムは書店にとって大きなメリットがあり、順調に伸びている。東京組合は全会一致で支援を決めており、ともにこの事業を進めたいと考えている」と祝辞を述べた。

03読書週間書店くじ/出版クラブで抽選会

今秋行われた「読書週間書店くじ」の抽選会が11月19日午後5時から東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で開かれ、特等から4等までの当選番号を決めた。
抽選会は日書連増売委員会の伊澤崇委員の司会で進行。冒頭、あいさつに立った日書連の萬田貴久会長は「書店くじは出版社、取次、印刷会社などの協力で昭和49年から30年間継続することができた。今後も続けていくためには企画内容の変更も必要。良いアイデアがあれば提供を」と話した。続いて舩坂増売委員長が経過報告を行い、「書店くじは読者からも書店からも支持されており、春秋とも全国からあたたかいメッセージが寄せられている」と述べた。
抽選はボウガンの射手に日本児童図書出版協会の小峰紀雄会長、日本雑誌協会の浅野純次理事長、日本出版取次協会の國弘晴睦常務理事、同・風間賢一郎理事、日本書籍出版協会の山下正専務理事の各氏を選び、別掲の当選番号を決めた。
抽選会に続き、雑協の浅野理事長が祝辞。「本や雑誌には読む楽しさとともに選ぶ楽しさがあるが、これは本屋さんに行かねば味わうことができない。書店くじにも大きな夢と楽しさがある」として乾杯の音頭をとった。

ポイント、万引き問題など討議/長野理事会

長野県書店商業組合(赤羽好三理事長)は11月3日、松本市駅前グリーンホテルで理事会を開催、17名が出席し、ポイントカード問題など山積する諸問題を討議した。
〔ポイントカード〕
ポイントカードは再販違反である。取次、出版社への「割引に類する行為である」旨の要望書、再販遵守のお願い等の文書を送付、中止方運動続行中であることが報告された。
〔万引き〕
万引きは複雑かつ巧妙になり、年間2百万円もの金額となって、書店経営もピンチ、古書店への18歳未満の買い取り禁止する条例によって万引き防止を青少年育成条例に加える県の報告、カメラ付携帯電話によるページ盗撮等の防止について企業団体にマナー啓発を呼びかけている等の議論をした。
〔日書連マーク〕
図書館問題で日書連マークの採用について教育委員会、小、中、高校の学校図書館への働きかけについて議論した。
〔広報〕
全国広報委員会議について報告。書店新聞が週刊から旬刊になって速報性が鈍ったが、それをカバーするのにパソコンのフル稼働によって情報の迅速化が図られる。インターネット、ホームページ、電子メールにより速報性を活かした情報網の確立を図りたい旨が報告された。
〔情報化〕
県書店組合員名簿は、メール・アドレスを加えた名簿を作成するため資料収集中。日書連が推進する書店情報網へのパソコン導入、電子メール活用法等について講習会を開催する予定。
〔図書券〕
図書券はお客様のためにも残すべきと白熱の議論。
〔出版倫理〕
長野県青少年育成条例違反で組合員以外の経営者が逮捕された事例の報告があり、成人向け書籍・雑誌の販売には細心の注意を願いたいと報告があった。
〔創立百周年〕
長野県書籍商組合からの創立百周年を数年後に控え、百周年記念事業準備委員会を発足させたいとの報告があった。
(高島雄一広報委員)

万引防止キャンペーン/ポスター2種・各3千枚作成/東京組合

東京組合は12月10日から3ヵ月間にわたり「万引防止キャンペーン」を展開。全組合員書店は「万引防止ポスター」を店内に掲出して、「万引は犯罪である」ことを訴える。ポスターは「STOPザ万引」「東京の書店は、万引0(ゼロ)を目指します!」の2種類、各3千枚を作成。実施要領は以下の通り。
〔キャンペーン実施要領〕
▽名称=万引防止キャンペーン
▽目的=青少年の健全な育成を図るため、万引防止キャンペーンを行い、「万引は犯罪である」ことを訴えるとともに「初発型非行」の防止に努める。
▽時期=平成15年12月10日(水)から平成16年3月9日(火)までの3ヶ月間
▽場所=全組合員書店
▽後援=東京都、警視庁
▽キャンペーンの内容=東京都書店商業組合は、青少年の健全な育成を図るため、全組合員書店内に2種類のポスターを掲出し、店主・従業員が一致協力して万引防止キャンペーンを実施します。キャンペーンでは、①ポスターの掲出によって「万引は犯罪である」ことを訴えます。②万引の疑いが持たれるような行為を発見した場合は、その段階で声をかけるなどの対応をして、「初発型非行」の防止に努めて下さい。しかし、③悪質及び常習者による万引が行われた場合は、直ちに警察に通報するなど毅然たる態度で対応して下さい。

書店活性化のために/s-bookで書店に元気を/小学館代表取締役社長・相賀昌宏

東京都書店商業組合(萬田貴久理事長)の指導・調査委員会は11月14日、書店会館で平成15年度中小書店経営研修会を開き、小学館・相賀昌宏社長が「書店活性化のために~s―bookで書店に元気を~」をテーマに講演。相賀社長は、値引きにつながらない読書ポイント等の施策を提案したほか、s―bookや出版倉庫流通協議会の展開について説明し、「出版業界はお互いが手を結びトータルメリットを追求する時代になった。書店も持っている力を集めて共有化し、大きな武器にすることが大事になるのではないか」と述べた。
〔「読書ポイント」の提案〕
今日は具体的な提案をいくつかまとめてきた。1番目はポイントカードについてだが、昨日も再販ラウンドテーブルで皆さんの意見を拝聴した。主婦連の加藤さん(副会長)の意見は非常に常識的で、「ポイントがたまるといってもその店でしか使えないし、次にそこで買うかどうか。ポイントカードを使わない人もいる。見えない形で不公平が存在している。ポイントカードに対して主婦連はいささか疑念を持って対処している」というお話だった。
そして、常識的な考えでは5%というのがいいところだと思うけれども、書店の今の正味では5%は無理ですね、ということで、具体的な数字は挙げられませんでしたが、「お楽しみ程度ならば、いろいろ問題はあっても、やはり読者と何らかの形でつながるのは必要なのではないだろうか。町の小さな書店が若干の値引の差で消えていくのはしのびがたい」ということをおっしゃった。
これについて下向さん(日書連理事・東京組合副理事長)は、確かにそれはその通りだけれど、例えば電鉄系書店のようなところが駅の店全部で1%引けば、外の書店にボディブローのように効いてくるという現実があり、やはりポイントカードは書店には合わないとおっしゃっていた。
私はそれぞれ一理あるなと思っている。解決策は何かとずっと考えていたのだが、ポイントカードを別のものに置き換えられないだろうか。
神奈川県書店商業組合で「ステージアップ読書ノート」という運動を展開していただいた。私どもの考えでは、やはりポイントみたいなものをほしいというお客様はいると思う。この運動は、書店で買った本だけではなくて、自分が読んだ本の書名を読書ノートに書いて書店に持っていくと、レジでスタンプを押してくれる。自分の読んだものを記録していくとすごく便利だし、そういうことは何かきっかけが無いとできないものだと思う。
そういう読書ノートをやらないかということで、スタートには若干お金がかかるため、その部分は私どもが応援させていただいた。その後は、ノートの追加が必要な分は書店に1冊50円で頒布したりというように、持続的にやる形で進めている。その辺の費用や実際の成果については、一度神奈川組合と情報交換してはどうだろうか。東京組合のやり方はまた別であってもいいと思う。
これを何らかの形で、読書ポイントカードみたいに値引につながらないカードにうまくできないかなと思っている。これはぜひ皆さん方でいくつか案を作って検討されてはどうだろうか。それが第1の提案だ。それについて何かありましたら私どもでなんらかの協力をしたいと思っている。
〔顧客対応をデータベースに〕
2番目の提案だが、現在は65歳以上の方が4、5人に1人という高齢社会だ。新聞や雑誌も字を大きくしたり行間を開けて読みやすくしているが、まだ対応できていないと思う。日本には約30万人の視覚障害者の方がいる。かなり大きな字の本が必要になっているが、そういう本を書店に置くのは不可能だと思う。
大活字本は図書館に置いていただいて、店にはそういう方のためのガイドブックを置いてほしい。こういった本をみれば、大活字の本や障害を持っている方が助かるようなグッズ、さまざまなサービスの連絡先などがわかる。今日の資料にあげた『みえない・見えにくい人の便利グッズファイル』『視覚障害者のための情報機器&サービス2003』(㈱大活字発行)の2冊はとてもよくできているので、ぜひお買い求めいただいたらいいと思う。
書店は本を売る仕事だから書棚は全部お客様のものだけれども、これからの時代は、書店が自分で使うコーナーを作ってもいいのではないかと思う。つまり、売る本ではなく見てもらう本のコーナーだ。お客様が店に来たときにちょっと見てすごく助かるという本を置く。どうしても欲しい人は別に買ってもらう。行けばいつも覗けて、そこから先に進めていけるようなガイドブックを、大勢の人に見えるような形で提示していくことが書店の魅力を高める道かなと思っている。これは一例で、同じようなことはたくさんできるのではないかと思っている。
皆さんは本を探すプロであるけれども、本探しのノウハウというのはたくさん本が出ているし、パソコンで本を探すのは非常に容易になっている。本探しの技術を磨くと同時に、本以外のさまざまな質問にも答えていくというのが、これから求められると思う。ここで紹介する『まちの図書館で調べる』というのは柏書房から出ている本だが、お客様のあやふやな質問に対して、どうやって調べるかというのが図書館にとってもものすごく大変な仕事で、そのさまざまな実例と、どの本を探したかというのが全部紹介されている。
提案の3番目として、これと同じようなものを書店も作ったらよいと思う。お客様に、「こういうことで困っているんだけれど、どんな本を調べたらいいの」と聞かれる。そういう本を図書館のように書棚に置いておくのは不可能だが、書店さんのそういった経験、質問と答え、探し方などといったデータを、日書連や東京組合のパソコンにデータベースとして全部入れていったらどうだろうか。
何か質問があったときは検索をかけて、お客様に「この本に載っているはずですよ」とか、もしその本がある程度データベース化されていれば、パソコンで実際にそこを見てお答えできるというように、本探しだけでなく「なんでも調査団」のような気持ちで調べる、街の中の情報相談室のような機能がこれから書店に求められているのではないかなと思う。もちろん忙しいのは存じていますが、お客様が「あそこに行けば便利だな」と思えるところに、未来の書店というのが生まれてくるのではないかと思う。
地域の中でどのように書店が役に立つかというところから、もう一度今の仕事をみてほしい。出版社も協力できることはたくさんあるので、一緒にやっていきたいと思っている。その1つが「ジャパンナレッジ」だ。私どもと富士通、シーエーシーという会社で出資して作ったもので、辞書類をはじめとする知識のデータベースである。『週刊エコノミスト』の紙面も画面でみることができる。平凡社の東洋文庫も300冊を閲覧でき、来年の今頃までには700冊全部見ることができるようにする。
利用料は月1500円で、今こういうデータベースは多くが無料だが、これはある程度確定された知識が載っているので決して高くないと思う。ただ1人で使うには高くなってしまうので、先ほど言ったように、いろいろな質問にこれで答えて元を取るという形があるのではないか。ジャパンナレッジのページで問い合わせいただければ無料パスワードを出すのでぜひ覗いてみていただきたい。
〔協業化で流通改善進める〕
s―book.netの方に話を進めたい。そもそものスタートは1995年だった。小学館でどの本がどういう状態でどれだけあるかという実態についてデータベースの構築を始めた。これにより97年7月に読者向けオンラインショップを立ち上げた。書店さんに登録してもらって読者が自宅の最寄書店を探せるようにし、その店で商品を受け取るという形でスタートしたが、むしろ書店がオンラインショップを使って本を注文し始めた。
売れ筋でなかなか品物が入ってこないコミックのような本はだいたい書店の名前で注文が来ていたので、書店向けのものをちゃんと作ろうということで1998年11月にブックス小学館をオープンした。オープン時は参加が1600店ほどだったが、注文を受けて品物がお店に届くまでが早くて4日間でできたということで、どんどん入ってくださった。そして集英社、白泉社、祥伝社などのグループに声をかけて、2000年7月にs―book.netをオープンした。
そのあと講談社、双葉社、秋田書店、少年画報社、主婦の友社などの社が加わった。このあたりは全部コミック出版社だ。コミックの90数%がこのネットで入る。今年は偕成社、ポプラ社が入り、来年には福音館書店が参加する。今後は児童書の利用が増えるのではないかと考えており、この分野の出版社に声をかけていこうと思っている。
今年9月時点で参加書店9200店、1日平均入店数が8600店となっている。最初は1回に5冊という注文の仕方だったのが、毎日のように入って1冊2冊と注文するようになってきている。それで返品がどんどん減っている。合計出庫冊数がひと月に325万4千冊だから、大変な数字が動いている。
これと並んで読者向けのs―book.comが走り出した。これは私どものグループの商品が流れている。全国9800店の中から最寄の書店を指定していただき配送4日というのが全体の50%を占めている。無料で近くで受け取れる、自分がいないときでも安心して預かってもらえるというのが50%の意味かなと思っている。
今s―book.netで進めているのは、受注データをシールにして商品に貼って皆さんのお手元に届けるというもの。これは誰が注文したものですよというシールをつけて皆さんの方にお返しするというサービスで、今月から開始している。お客様が忘れていたりしても、安心してできるのではないかと思う。
これらを進めていく中で考えたのが倉庫の整備だ。日本の出版社数はいろいろなデータがあるが、出版科学研究所の2003年度出版指標年報によると3721社になっている。このうち1年間に1点から10点刊行するのが2746社で全体の74%。11点以上出している出版社は975社で全体の26%になる。出版点数は、1から10点の出版社が7572点に対して、11点以上の出版社で6万4483点。約千社の出版社が出版点数の90%を占めるということがわかる。
その千社が商品を預けている倉庫の数を調べたところ60社あった。これらを見ていくと、昔ながらのただ積んでいく倉庫もあるし、非常に進んだ倉庫もある。今とりあえず23社で倉庫をネットワークで結び、それぞれの倉庫のデータを全部リンクしていくことを進めている。
出版社もこれによって自社の書誌データを作らなければならなくなった。出版社は倉庫をしっかりとみることがビジネスチャンスになる。ネットワーク化によって、注文に正確に答えることが実現できると思っている。まだとりかかったばかりで、一見遠回りのようだが、大きく出版流通を改善できると思う。
先程のジャパンナレッジや出版倉庫流通協議会、s―book.netもそうだが、出版業界は、お互いがライバルである一方で、いかに手を結んでいくか、少し(システムが)進んだところが、まだ手をつけていないところへどれだけ援助していくかということが進められている。これによって総合力がプラスになるという、トータルメリットを追求する時代に入ってきたと思う。それは書店も同じではないか。皆さん自身が、それぞれの書店の持っている力や、お客さんの質問・注文を集めて整理し、皆さんで共有化して大きな武器にしていくということが大事だろうと思う。

ふるさとネットワーク/関東・東京ブロック編

〔茨城〕
茨城のランドマーク筑波山はその優美な山容、色から紫峰と呼ばれ、万葉集にも詠まれました。男体女体の双峰を持つため、場所によって見え方が変わります。東側からが良いとされますが、私は西側に住むためこちらの方が見慣れていて落ち着きます。西側の下妻市には筑波嶺(つくばね)詩人と呼ばれた横瀬夜雨が、石下町には農民文学不朽の名作「土」を残した長塚節が生まれています。横瀬夜雨は明治11年生まれで、17歳のとき文芸誌「文庫」に「神も仏も」を投稿したのをきっかけに「夕月」「夜雨集」等を残し、56歳で惜しまれつつこの世を去りました。一方、長塚節は明治12年生まれで、3歳の頃百人一首をそらんじ、明治43年に「土」を朝日新聞に連載しました。
私も「土」を読んでみましたが話が暗く10ページでギブアップ。いつか再挑戦しますが、今は「殺人事件」の方がおもしろいですね。(舘野弘広報委員)
〔栃木〕
栃木県南東部・茨城県に近い八溝山系のふもとに広がる益子町は、陶器の「益子焼」で全国的に有名です。
益子では毎年春と秋に「益子陶器市」が開かれ、期間中は大勢の観光客で賑わいます。特に本年は益子焼が誕生して150年という大きな節目にあたり、「益子焼開窯150周年記念・秋色益子陶器市」と銘打ち、例年以上に盛大に催されました。
市には各窯元がテントなどで臨時の売店を出店。その数も200を超します。陶器が普段の市価の3~7割引で買えるとあって、遠来のお客様方は皿や花器などを手にとって、熱心に選んでいました。
また、農産物の直売・地元の食材を使った飲食物の出店・街かどでのミニ・コンサートなどもあり、終日にぎわっていました。11月1日から4日までの期間中は天候にも恵まれ、30万人を超す来場者がありました。
(小崎治広報委員)
〔群馬〕
世界の雑誌王といわれる野間清治は明治10年12月17日に群馬県山田郡新宿村(現在の桐生市新宿)の新宿小学校(現在の桐生市立南小学校)内教育宿舎で生まれた。苦学の末、教員を経たあと大志を抱いて上京し、東京帝国大学法科大学主席書記官となり、出版事業に進出。雑誌「雄辯」や「講談倶楽部」を発行し、大正14年「大日本雄辯会講談社」を創設し、現在の「講談社」の基礎を築きあげた。
野間清治の偉業を尊び生誕120年を記念し、「野間清治顕彰会」が平成9年に設立され、翌年野間文庫のある桐生市立図書館の前庭に顕彰碑が建立された。「志あるところ道自ら生ず/これを追及すること真剣なれ/道は近きにあり」と刻まれた直筆の言葉は野間清治の生き方そのもので、「社会の公益を目標とした出版が成功しないはずはない、自分が行おうとしているこの事業は立派な精神事業」との考えが根底にある。出版人の鑑、郷土の誇りとして、いつまでも語り継がれていくことであろう。(竹内靖博広報委員)
〔埼玉〕
埼玉県北部の中心都市熊谷は春ともなると荒川堤の桜が咲き誇る美しい郷土である。
熊谷駅前の像は、源平合戦の一ノ谷で平敦盛と戦った熊谷次郎直実の勇あり情ある市民の姿を代表しているよう思われる。
関東一の祇園といわれる「うちわ祭り」は、7月20日から22日の炎天下、疫病を退け五穀豊穣・商売繁盛を祈願して、各町内の山車と屋台12台が勇壮なお囃子とともに市内を練り歩き、随所で豪快な叩き合いを繰り広げ、祭りの期間中は全国から見物客が訪れる。
日本で熊谷市のみ生息するムサシトミヨは冷たいきれいな川のみ生息するトゲウオ科の魚。生息地の環境悪化からその数が激減し、絶滅の危機にある。
平成16年「彩の国まごころ国体」の主会場として熊谷スポーツ文化公園陸上競技場、屋内運動施設「彩の国熊谷ドーム」も完成し、開催が待たれる。
(神田貞夫)
〔千葉〕
今年もあと1ヵ月を残すのみ。お正月も間近に迫ったが、初詣といえば関東では東京の明治神宮、神奈川の川崎大師、そして千葉の成田山新勝寺が有名。その参拝客数は初詣をはじめ年間1千万人以上に及ぶ。
創建は940年。朱雀天皇が平将門の乱を鎮圧するため、寛朝大僧正に命じて、弘法大師作の不動明王像を京都から下総に運び、平和祈願の護摩祈祷を行ったことに始まる。大任を果たした大僧正は再び像とともに都へ帰ろうとしたが、像は「この地に留まりたい」と微動だにしない。これを聞いた天皇は深く感動し、お堂を建立。東国鎮護の霊場として成田山が開山されたと言い伝えられている。
当初は武家の帰依を集めていたが、江戸時代より民衆の信仰を集め、全国から参拝者が集まる関東有数の大寺となった。家内安全、無病息災、災難除け、縁結びなど幅広いご利益がある。(植田栄一広報委員)

〔神奈川〕
小田原・箱根と言いますと、城と温泉を思い出す向きが多いかと存じます。しかしそれ以外に戦国時代に始められ、江戸時代にはみやげとして評価された伝統をもつ寄木細工の特産があります。世に言う箱根細工がそうです。箱根の入口にあたる箱根湯本に、寄木細工の小箱から家具調度品を集めた、専門の美術館があります。小生の高校の同期生で、寄木細工の名人としてテレビに何回か紹介された本間昇氏が平成6年に設立した本間寄木美術館がそれです。独特の美を持つ格子天井や版画にも利用されております。別に体験教室もあって製造の実演もあります。
なお、小田原市では海外からの観光客誘致の国策にそって、市の幹部の方々が中国上海市に行き、上海の高校生の修学旅行に小田原箱根をすすめに行って来られました。小田原に外国人が大勢来る日もあるかと思います。(平井弘一広報委員)
〔東京〕
第13回神保町ブックフェスティバルが華やかに楽しく開かれ、秋晴れの空の青が似合い大盛況だった。たまたま第1回の写真を見て「世界一の本の街・神田神保町」の底力とメンバーの熱意を感じた。ポスターは本の得々市、在庫僅少本セール、消え行く印刷活字セールの文字が青と赤の2色印刷で、横断幕も白い布に黒字で「古本まつり協賛・神保町ブックフェスティバル」とあるだけの質素なものだった。回を重ねて今年の華やかさは…である。
▼本の街・神田では「古本まつり」が開かれている。主役は日の目を見てから久しい本の数々だ。年季が入っていて落着いたその顔は、柔らかな秋の日差しにほどよく溶け合っていた(天声人語)。当店で買われた1冊が、いつか神保町の秋空の下で再度本好きのお気に召したら本屋冥利と言える。年間7万点に及ぶ新刊の中で幸せ者(本)は何冊?(小泉忠男広報委員)

「声」/消費税増税阻止へ更なる運動を/北海道・高野名書店・高野名正治

かつて、東北・北海道一とうたわれた札幌の老舗書店「冨貴堂」の閉店が象徴するように、「心の糧」といわれる町の本屋が次々つぶされています。
コンビニ、大型店、通販などの攻撃に耐えられず、まじめに必死に年中無休で書店を経営していても、今の構造改革の痛みに耐えられず、弱肉強食で売上は3分の1に減りました。
人口4500人の漁村でも、学校帰りの午後は30坪の店も満員でにぎわったのですが今は夢、立ち読みに店へ入る人もなく閑古鳥が鳴く現状です。消費税も改悪され、免税点が年間売上1千万円へと引き下げられました。さらに10%の消費税値上げなどが実施されたなら、シャッターを閉める運命が目に見えています。
日書連の消費税問題委員長、下向磐さんが私たちに親身の努力をされておられるのは評価しますが、まだまだ運動が足りないと思います。かつて北海道組合の理事長が浪花剛さんの時代は、署名運動や決起集会などで戦ったものです。今の日書連は、組合員減少などで衰えたりとはいえ、危機感が不足しています。署名運動や、ムシロ旗を立ててでも消費税粉砕の行動をすべきではないでしょうか。
未来を託す子どもたちのためにも、町の本屋を残す気概が今日こそ日書連に求められており、その存在を示す時です。力をあわせ、粘り強く戦っていかなくてはならないと思います。

「声」/愛知書店新聞創刊100号おめでとう/久留米市・尚文堂・鹿子島慶正

「愛知県書店新聞」が送られてきた。第1面のメインには「祝、創刊100号初志貫徹」とある。たいしたものである、100号とは!愛知県書店組合の組合員さんと広報委員の方にお祝いを申し上げます。
わが「福岡県書店新聞」は不定期発行。11月の総会の前に発行することにしていたが、私の個人的都合で発行できなかった。こんな勝手なことではいかんと思いながら、ついサボッテしまった。業界新聞といえども、作ってみるとわかることだが大変な仕事である。
愛知書店新聞のように毎回4頁建てで発行となると片手間ではできないことである。毎回これだけ充実した内容の新聞だったら、読者の書店や関係業界の方々も期待しながら発行日を待っていると思う。そうなるまでの苦労は並々ならぬものがあったと察せられる。「初志貫徹」という言葉の重みがズッシリと響く。
書店業界もご多分に漏れずいまだ不況。こうした状況の中で愛知書店新聞の果たした力は大きかったと思う。新聞コラムの「丸の内界隈」が100号までの苦労と意義をピシャリと語っている。これからのますますのご発展を祈念しております。100号達成おめでとうございました。

『週刊名城を行く』など3誌/小学一年生は付録を充実/小学館雑誌企画

小学館は11月20日午前11時から東京・一ツ橋の小学館センタービルで販売会社を対象に2004年度雑誌企画発表会を開き、『小学一年生』の増売、『週刊名城をゆく』『ぼくドラえもん』『Precious』の創刊について説明した。
冒頭、あいさつした蜂谷常務は同社の現況と今後の展開について「上期の売上は99・6%で、内訳は雑誌95・0%、コミックス105・2%、書籍107・8%。雑誌は『小学一年生』が売上率平均84%と好調で、『週刊ポスト』はABCでトップ奪回、女性誌も『CanCam』を中心に順調に推移している。昨年は『PS』創刊など積極的に種を蒔き、今年はその成長を見守った。来年は再び攻めに転じる」と話した。
続いて『小学一年生』塩谷編集長が「『小学一年生』は実売数・売上率ともに昨年を大きく上回る成績を収めた。増売運動・年間定期購読キャンペーン、付録、ポケモン人気回復、積極的な新企画が好調の原因と思う。特に付録には力を入れている。この勢いを保ち、新しいキャンペーンに進みたい」として、入学直前号、4月号、5月号と3号連続の特別付録について詳細な内容説明を行った。新創刊3誌の内容は以下の通り。
◇『週刊名城を行く』日本全国の名城70余を歴史・人物・城下町・建築美の各面からビジュアルに紹介。オールカラー36頁、税込560円(創刊1号・2号各350円)。毎週火曜日発売、全50巻。1月27日創刊。
◇『ぼくドラえもん』ドラえもんのテレビ・映画25周年を記念。幅広い年齢層にわたるドラえもん世代に向けたファンマガジン。A4判、定価未定。月2回刊、全25冊。2月20日創刊。
◇『Precious』30代後半から40代の働く女性を応援するファッション雑誌。A4変型無線綴じ、予価700円。毎月7日発売。3月8日創刊。

新刊紹介

☆『日本の出版社2004年版』
出版年鑑編集部による出版社名簿の決定版。出版ニュース社刊、四六判800頁、本体4500円。
出版社約4400社の社名、所在地、電話、創立年、組織、資本金、従業員数、URL、Eメールアドレス、振替番号、社長・出版代表・営業代表者名、発行部門、発行雑誌名などのデータをはじめ、教科書発行所、取次会社、関係団体、主要新聞社、全国共通図書券加盟書店名などのリストを収載する。
☆『赤ちゃんパワー脳科学があかす育ちのしくみ』
京都の児童書専門店「きりん館」の吹田恭子さんと、東京女子医科大学の小西行郎教授による共著。ひとなる書房刊、四六判207頁、本体1500円。
脳科学や発達行動学の進展によって、赤ちゃんが生まれつきもっている能力や特徴が明らかになってきた。本書は小西教授が専門家として説明することを、子どもの現場近くにいる吹田さんが受け止めて文章にするというコラボレーションの形を取っており、赤ちゃんのいろいろな動きや反応をわかりやすく解説している。赤ちゃんと過ごす時間が一層楽しくなる本。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・渕本紀子

◇2歳から
『ねずみくんのクリスマス』/なかえよしを=作/上野紀子=絵/ポプラ社1000円/2003・10
ねずみくんの絵本シリーズです。おなじみの動物たちの「クリスマスツリーの大きさを自慢している顔」「クリスマスケーキをみて困っている顔」「クリスマスツリーにぶらさがって辛さを我慢してニコニコしている顔」がそれぞれ楽しめて、心が温まるお話になっています。

◇4歳から
『ゆきのひのステラ』/メアリー=ルイーズ・ゲイ=作/江國香織=訳/光村教育図書1400円/2003・10
外は吹雪です。初めて雪を見るサムは、ステラにさそわれて外に出ます。「ゆきってつめたいの」で始まる2人の問答は、愉快で思わず笑ってしまいそうになります。また随所に登場する犬や鳥たちが、ユーモラスに描かれているのも印象的です。雪の日が来るのが待ち遠しくなります。

◇小学校低学年向き
『虎落笛(もがりぶえ)』/富安陽子=作/梶山俊夫=絵/あかね書房1400円/2002・12
風の強い冬の日、その子は1人で新しい凧をあげたくて原っぱにいきます。ふと足を止めて耳をすますと、風の音にまじって声が聞こえてきます。「きょうの虎ぁでぇかいぞう」と声は何度も何度も不気味に大きく響いてきます。声は聞こえるけれど姿がみえない怖さが伝わってきます。

『船キチの航跡』/柳原良平ワールド海事プレス社から

サントリーの「アンクルトリス」で知られる柳原良平氏は子どものからの大の船好き。このたび、船旅専門誌「クルーズ」(海事プレス社)に連載したイラスト&エッセイ35編を中心に、開高健、山口瞳との交友や後日譚を加筆した『船キチの航跡』を海事プレス社から刊行した。
A5判300頁、定価本体2500円。油彩・水彩・切り絵など50数点をカラーで掲載。船・港・お酒が織りなす良平ワールドを凝縮した。同書挟み込みのハガキで応募すると、もれなく良平オリジナル・ポストカード(5枚組)をプレゼント。
11月18日に行われた企画説明会で海事プレス社市川公一社長は「1989年に創刊した『クルーズ』に毎号連載している企画から35編をピックアップしたものを中心に、船への思いを集大成した。読物としても絵を見ても楽しめる内容」と説明した。

人事

(◎昇任、○新任)
◇有隣堂(11月25日)代表取締役社長松信裕
代表取締役副社長(情報システム担当・人事総務担当・経理財務担当)
松信一雄
専務取締役(経営企画室長・営業統括本部統括・労務担当)◎笹島克彦常務取締役(出店開発担当・営業統括本部副統括・第1営業本部長)
◎山形正利
取締役(第1営業副本部長・営業推進室長)
早見文雄
同(店舗システム開発室長)村越武
同(経理担当・経理部長)猿渡二三夫
同(財務担当・第2営業本部長)桑原康高
同(第2営業副本部長・官需営業部長)○宮出幸夫
同(人事総務部長)
○高木明郎
同(第1営業副本部長・宣伝広報室長)○渡辺泰
常勤監査役大谷忠弘
同田中紀一郎
監査役佐藤忠夫
同横地敏雄
*任期満了につき退任した篠崎孝子代表取締役会長、田宮隼人代表取締役副会長は相談役に就任。
◇研究社(10月27日)
代表取締役社長
荒木邦起
取締役副社長(編集総括) 池上勝之
取締役営業部長
川辺吉雄
取締役出版部長兼辞書部長兼電子出版室長
関戸雅雄取締役総務部長
○西岡俊章
取締役小酒井雄介
監査役佐藤晃輔
◇東京書籍(10月29日)
専務取締役編集局長(常務取締役)◎大谷武彦
取締役営業局次長件関西支店長(関西支社次長)
○奥村俊二
取締役編集局次長兼第1編集副本部長(編集局次長)○上野健次郎常勤監査役(取締役副社長)内村弘志
顧問(取締役)八色康次
同永井修司

客注、宅急便で取寄せ/ブックサービスに業務委託/太洋社

太洋社はヤマト運輸の子会社、ブックサービスに業務委託して、取引書店の客注品の集荷・出荷に宅急便を利用した「太洋社応答くん客注便」を11月20日から開始した。
書店はブックサービス作成の専用FAX用紙で注文すると、最長1週間でお客様にお渡しできる。また、客注品の取寄せ状況は受注から5日目にFAXで応答する。システムへの参加費は無料だが、登録制で書店卸は85掛け。
11月19日に行われた記者発表で太洋社國弘社長は「当社の在庫はWEBに公開しており、在庫があれば地方でも3、4日で届く。それ以外は『応答くん』。書店の手間をとらせず、取り寄せが明確になる。ブックサービスは経験も豊富で、太洋社も飛躍になる一石三鳥の委託」と述べた。
ブックサービス伊丹社長は「私どもは書店客注専門取次を標榜しており、今回の提携は喜ばしい。書店の
客注で取寄せ日数が不確かなのが一番困っているのではないか。取次在庫を引き当てるのでなく、出版社在庫に当たるので出荷率は高くなり、書店に喜ばれると思う」と説明した。
太洋社は11月11日からWEB上で在庫の有無を公開しており、年明けには本社在庫スペースを拡大して、同社からの客注品出庫率も向上させる予定。

強力な販売集団に一新/地域の活字文化守る拠点/読売中公会

より強力な販売集団を目指して組織を一新した書店読売中公会の総会が11月21日午後3時からパレスホテルで開かれ、会員96名が出席した。
同会は全国を11の販売エリアに再編成した結果、22法人が退会、12法人が新加入し、現在の会員数は107法人。書籍販売シェアは48・8%から59・2%に拡大した。
書店読売中公会亀井会長(三省堂書店)は「読売新聞は日本を代表する新聞社。地域文化の発展を念頭に活字文化の推進に貢献されている。新しい会には販売委員会を設け、読売、中公の商品をエリアマーケティングする販売組織にしていく」と、書店会の新しい性格を説明。
主要企画発表では、読売新聞社から「読売ウィークリー」ディスプレー・増売コンクール、中央公論新社から「中公文庫増売キャンペーン」、大江健三郎「二百年の子供」増売コンクールなどの企画が説明され、読売グループ各社が紹介された。
総会第2部では読売新聞東京本社滝鼻副社長のあいさつに続いて、中央公論新社中村社長が「読売中公会は単に本を売るための協力組織ではなく、活字文化を守る拠点。中央公論新社は今年も毎日出版文化賞、サントリー学芸賞など各賞を受賞し、すぐれた出版活動が評価された。しかし百年以上の歴史あるがゆえに、作った本は売れるという思い込みがあった。新社になって編集者の意識が変わってきた。本に普段親しんでいない人への働きかけが足りなかった。養老孟司の『まともな人』は20万部、『ケイタイを持ったサル』は10万部を突破した。普段読まない人が買わなければ10万部はいかない。読売中公会という多様でユニークな会で交流を深め、活字文化を支えていきたい」と、あいさつした。
販売会社を代表して日販鶴田社長は「読売新聞社は130周年、中公は100年の歴史がある。いろいろなメディアを複合したグループが新たな枠組みで活動するのは、ありがたい。中核になる読売、中公と一体となって活字文化を深めたい」と祝辞を述べた。書店読売中公会役員
会長=亀井忠雄(三省堂書店)
副会長=吉村浩二(金高堂書店)、副会長兼販売委員長=田村定良(田村書店)
常任幹事=藤原直(金港堂)嶋崎欽也(文教堂)松原治(紀伊國屋書店)高須博久(豊川堂)早嶋茂(旭屋書店)手塚弘三(啓文社)宮脇富子(宮脇書店)山本太一郎(福岡金文堂)小島敦(読売新聞東京本社)横山孝(同)中村仁(中央公論新社)小林進(同)

本屋のうちそと

(小さな)本屋で悪いか!と時々開き直ってはみるのだが、「CCC中間期決算利益増」だとか、「講談社・新潮社・ソニーなどが電子出版事業を」なんてニュースにふれると、もう自分の店は時代から離れてしまっていて駄目なのかな、なんて途端に気弱になってしまう。
過疎の町では自営の商売を継いでも先が無いから、次男・三男は言うに及ばず長男さえも帰っては来ない。規制緩和で出来た、その地域の購買力以上の売り場を持つ大型SCは周辺の商店街の自営業を廃業させ、流動的労働力の低賃金労働者にしてしまう。本家のウォールマートが出店して来る前に、とっくに日本ではウォールマート現象が起きている。
自営業が地元で稼ぎ、稼ぎを地元の町で使うから、今までこの国の小さな地域社会は成り立って来た。程々に稼いで、程々に使う地元小売業がいなくなり、儲けは全部東京に持って行く大企業ばかりでは、田舎町でお金は回らない。競争だけの市場経済社会では一握りの勝者と多くの低賃金労働者としての存在しか生じえない。
本来、自営業とは仕事に誇りを持った自立した商人であったはずだ。人間が生き得る正しい国家や良い経済社会の有り方とは、たとえその商売の規模が小さかろうと、そこに生き、働く人間が己の職業に誇りを持って働いて日々生きるべき社会だと思うのだが。それに一人勝ちの会社ばっかりだと全体の売上はそれ程伸びないと思う。だって残りは皆貧乏な敗者だから。(海人)