全国書店新聞
             

平成24年3月15日号

仮設商店街から一歩/津波で流された店の再建誓う/岩手県釜石市・桑畑書店

東日本大震災から1年。被災地では活字の意義が見直され、東北6県の書店売上は震災後、前年比5%増で推移しているという。しかし津波の被害を受けた沿岸部では店舗や商品を失い、苦労して営業再開に漕ぎ着けた書店が多い。経営環境も総じて厳しい。津波で店舗を流失しながら、仮設商店街で営業再開した岩手県釜石市の桑畑書店を訪ね、桑畑眞一社長に話を聞いた。(本紙・白石隆史)
〔店舗、自宅が流失〕
桑畑社長は昨年11月末、津波で大破した店舗から500メートルほどの距離にある仮設商店街「青葉公園商店街」の一角で営業を再開した。同商店街は敷地面積3070平方メートル、軽量鉄骨2階建の全5棟から成る。桑畑書店のほか、飲食店、美容院、服飾店などが入居する。3キロ離れた仮設住宅からクルマで通いながら、少しずつ営業再建を進めてきた。
震災の日、目の前に迫る津波から間一髪で逃げた。津波は沿岸部の市街地にある2階建店舗と自宅をのみ込んだ。店舗は鉄骨だけ、自宅は土台だけ残る惨状だった。商品の在庫、パソコン、データをバックアップしたCD―ROMも流された。被害総額は1億円を超える。
〔水浸しの顧客名簿〕
避難所で暮らしながら、どうすれば配達を再開できるか考え続けた。3月下旬に事務所を借りて、4月11日から仕事を始めた。まず取りかかったのは瓦礫の整理。すると瓦礫の中から水浸しの顧客名簿の一部を見つけた。これに社長と従業員5名の記憶を頼りに、借りた事務所を拠点として、約500名の顧客を自転車で訪問した。ほとんどの客が配達の継続を希望したという。5月20日に配達を再開した。「店を失っても、配達先の8割が残っていた。訪ねると『うれしい。よかった』と言ってくれる。お見舞い金をくださる方もいました」。出版界からも多くの支援が寄せられた。日書連や出版社数社の義援金。中央社からは4月に風間賢一郎社長が駆けつけ、激励してくれたという。
〔9坪からの再出発〕
創業は昭和10年。平成7年に吹き抜けのある2階建店舗に建て替えた。1階は売場面積62坪。2階は学参売場8坪とイベントスペース20坪。釜石で一番広い本屋。洒落た本屋。楽しいイベントが行われる本屋。地域の人たちが集まる場所として欠かせない存在になった。近年は経常黒字が定着してきた。そんな矢先に震災に遭った。
配達を続けているときも、店舗がほしいと思い続けた。仮設商店街に入居して営業再開したのは震災から8ヵ月後の11月末。このとき、一時解雇した従業員5名のうちベテラン3名を再雇用した。「従業員とお客さんのことを考えるとやめるわけにはいかない。だからやってこれたんです。店ができたときはうれしかった」
被災した店舗で行っていた月1回の絵本読み聞かせを敷地内にある「復興ハウス」で再開した。釜石の遺体安置所を題材としたルポルタージュ『遺体』の著者、石井光太氏を招きトークイベントも開催した。
〔3年で新店舗建設〕
仮設店舗の売場面積は9坪。以前の店舗は70坪。売上は震災前と比べて60%減った。「きついですね。やっぱり本屋は広さがあって、モノを置いて、新刊が入ってこないと。ベストセラーや震災関係の本は頑張って仕入れているけれど、肝心要の雑誌がほとんど動かない。津波の被災地は人が少ないですから」
以前のような広い店を建てたいと考えている。「被災した店は鉄骨が残っているから、これを活かして1階に書店、2階に自宅を建てられればと思っているんです。できれば3年以内に。一歩一歩できることから確実にやっていきたいです」と力を込めた。

被災地の雇用支援/書籍の電子化事業通して/JPO

日本出版インフラセンター(相賀昌宏代表理事=小学館、JPO)は2月21日、電子書籍の普及と東北の被災地支援を目的とする経済産業省の「地域経済産業活性化対策費補助金(コンテンツ緊急電子化事業)」を受託したと発表した。
この事業は約6万点の書籍を電子化する作業を東日本大震災の被災地で行い、費用の一部を国が負担するもの。電子化作業を行う企業は公募で選ぶ。出版社と企業の間をJPOが結び、経産省から補助金を受ける。事業総額は約20億円で、このうち平成23年度3次補正予算で9億9700万円の補助金を国が出す。東北・被災地域の出版社が保有する書籍や東北関連の内容となる書籍は費用の3分の2、それ以外の書籍は2分の1が補助される。
JPOは出版社から申請・申し込みを受けて、企業に電子化作業を発注。企業は電子化済書籍を出版社に納品するとともに、被災3県(岩手、宮城、福島)の中心的な図書館に電子化対象書籍を紙の本の形で1冊ずつ献本する。
事業全体の方針、電子化作業や書目選定の優先順位に関する基本方針の策定は、有識者委員会「パブリッシャーズ・フォーラム」が行う。31団体の出版社団体・業界団体で構成し、日書連からは大川哲夫専務理事がメンバーとして参加。委員長はJPOの野間省伸運営委員長(講談社)が就いた。
2月21日に東京・新宿区の日本出版会館で開かれた記者会見で、JPOの相賀代表理事は「被災地の雇用を出版業界として支援する。補助金を受けることで小さな出版社でも電子書籍事業に参入できるようにし、ユーザーに喜んでもらえるものを作りたい」、野間委員長は「電子と紙は補完効果があることを多くの出版社が理解すれば業界の発展につながる」とそれぞれ期待を語った。

地域経済の回復なくして被災地の復興はない/宮城県大崎市・佐々栄文盛堂・佐々木栄之氏

〔外商の車中、地震が〕
2011年3月11日14時46分、私はいつものように外商ルートの田んぼ道を車で移動中だった。年度末だったので15時30分にある学校の先生と集金の約束をしており、その学校に向かう道中、突然、激しい揺れが襲ってきた。車は何度も対向車線にはみ出し、道路脇の電柱はぐるぐると回るように揺れ、今にも私の車の方向へ倒れてくるかのようだった。電線も上下左右に暴れ、いつ切れてもおかしくないような状態だった。
目的の小学校に到着してみると、校舎内は真っ暗で、教室の中にあったであろう机やラジカセが廊下に転がっており、人の気配が一切しなかった。事務室、職員室を確認後、約束の先生の教室に向かう途中、何気なく外を見てみると、校庭に先生方とそのとき学校にいた生徒たちが整列していた。学校近辺の生徒父兄もぞくぞくと集まりだした。集金どころではないと思い、先生に日を改める旨を伝え、次の目的の学校へと向かった。
道程半分まで進んだところで渋滞に巻き込まれた。少し進むと、さっき前にいた車が引き返してきた。不審に思いながら進むと、幅1メートルをゆうに超える亀裂が道路に入っていた。そのとき初めて2008年に起きた岩手・宮城内陸地震の記憶が呼び覚まされ、事の深刻さに気づいた。
今回、大崎市の震度は6強。携帯電話を取り、その日外回りをしている従業員に対し一斉メールで会社に戻るよう指示をして、自分も店舗へ向かった。たった5キロほどの店舗までの道程だったが、1時間以上かかった。
店舗に着いてみると勤務していた従業員たちが揺れにおびえながら駐車場に立っていた。店内は当然真っ暗で、商品の告知映像用のモニターが落下し通路をふさいでいた。棚に陳列されていたはずの商品も膝丈以上に通路に崩れ、通り道がまるでなくなっていた。店内では火災報知器も鳴り響いていたので、店舗裏口から入店しサイレンを止めた。その後、外回りをしている従業員たちの帰りを待ちながら、本部事務所や支店に連絡を取ろうとしたが、そのときは既に携帯電話は使用不能の状態になっていた。
外回りの従業員が1人また1人と帰ってくる中、店舗の片付け作業を行った。17時30分ぐらいで日は沈みあたりが真っ暗になったので作業を中断し従業員は退社させたが、まだ1人外回りの従業員が戻ってこなかったので、私だけ店舗に残った。最後の従業員が戻ってきたのは20時30分を回っていた。
翌日の打ち合わせを済ませ、家族が避難する近所の中学校の体育館に向かった。受付の名簿で家族が来ていることを確認してもらい、呼び出してもらってやっと家族と再会をしたのは21時30分を過ぎていた。
雪の降る中、体育館内で毛布に包まり、度重なる震度3から5の余震の中で、避難民がそれぞれ持ち寄ったちょっとした食べ物を分け合って暖を取った。非常食のおにぎりが各自に配られたのは翌日の午前1時を過ぎていた。何とか仮眠を取り、翌朝を迎えた。避難所には朝早く新聞の号外が配られ、各地の被害が報道されていた。職場に向かう前に家族全員で自宅に戻り、とりあえずの生活をするためのスペースを確保した上で職場に向った。
〔お見舞いの声励みに〕
本部事務所の倉庫部分にはそのとき納品・販売前の教科書・副教材があったが全て崩れて、学校・学年ごとに仕分けされていたものがめちゃくちゃの状態になっていた。教科書のアルバイトたちとも地震の状況の情報交換をし片付けの段取りを指示した後、店舗の片付けの指示に向かった。
その後もう一つの店舗の状況を確認に向かった。そちらは食品スーパーのインショップで建物が閉鎖されている。真っ暗であちこちに水溜りがある店内奥の店舗に向かった。商品の散乱状況は最初の店舗ほどではないものの、こちらはスプリンクラーがあちこちで破裂し、天井が落ちてきている部分もあったので、電気が回復してからの作業と諦め、もう一方の店舗の片付けに向かった。片付け作業は教科書作業・店舗それぞれ15時までとし、その後は各自の生活維持に努めた。
電気の復旧とともに電話通信網も回復していった。最初はいつ届くかわからないメールによる連絡のやり取りだったが、徐々に県外の書店仲間や出版社の方々からお見舞いのお電話が来るようになった。いつ終わるかまだまだ見込みの立たない片付け作業や食糧難の中、それらのご連絡はとても励みになった。
教科書の関係の学校とも連絡が取れるようになり、小中学校から4月13日より学校再開の連絡を受け、納品スケジュールも立ってきた。高等学校は通学の電車の関係で県内一斉4月21日からの再開に向け販売予定が組まれた。
地震直後の週明け月曜日、トーハンから片付け手伝いチーム数人と9号ダンボール1箱の支援物資が届いた。
地震翌週の停電の中、気の早いお客様が週刊誌の地震特集号が出ているはずと問い合わせに見えたが、荷物が止まっている事を話しお引取り頂いた。荷物の再開は4月9日からだった。
4月7日の地震で再び店舗と教科書の片付けが振り出しに戻され、度重なる余震でジャブを受け続けた建物は外壁がはがれたり、床に亀裂が入ったりと、建物の被害は2度目の地震の方が深刻だった。
〔建物修理手つかず〕
何とか教科書の納入と販売を終えたところ、今年度の学校図書館の納入方法が、光の交付金を受ける関係で全て見積もり合わせになるという連絡が学校から来た。受注はするものの粗利が大幅に圧縮され、例年以上の労働を余儀なくされた。地方自治体も被災者ではあるが、納入業者も被災者。まだまだ復旧にはお金がかかるし、足りない。各社そのために無理な受注に走り、納品価格は限りなく原価に近づく。平成24年度の光を注ぐ事業では使用方法も国でしっかり指示を出してほしいと思った。
周辺の自治体の話を聞くと、当社のある市とは違い、地元業者に注文を振り分けていたようだ。平成27年度会館予定だった公共図書館の開館も計画がストップした。同じ被災地の岩手県のとある市では計画通り公共図書館を開館する予定ということである。行政それぞれでこれほど考え方が違うものかと呆れてしまう。地方経済の回復なくして被災地の復興などありえないと思うのだが。
現在、当社の建物設備は震災当時のまま、一切修理もされること無く放置されている。建築業者の深刻な人手不足によりまだまだ手がつけられないということだ。雨が降れば雨漏りをし、風が吹けば隙間風がとても寒い店内。修繕が成された後は震災の特別融資を受けることになるのだが、資金繰りの大幅な見直しが必要になってくるだろう。被災地では震災バブルが起きていると言われる。食品スーパーなどでは前年比150%で売上が推移し、仙台の国分町の飲み屋街も震災の被害分を取り返したお店が多いと聞く。当社も店舗再開後130%~150%で推移はしているものの、追加融資の額があまりにも大きくなることが予想されている。
〔お客と社員のために〕
年が明けて1月26日に仙台市の法華クラブで、毎年恒例の書店有志の新年会が行われた。今年の担当幹事は当社の店長2名とたちばな出版社。「絆」という名で行われたその会合で、各書店は震災後に取次・出版社から受けたご恩や支援に感謝する意味を込め、それぞれ壇上で挨拶を行った。今年の参加者は書店19店、出版社54社、取次その他8社、飛び入り参加を含めて101名と、例年以上だった。
わが社は震災を経て、従業員全員この震災後の不便な生活をお互い助け合い、業務内容でもそれなりの結果を残すことができている。現在当社に所属する従業員は会社にとってかけがえの無い財産になってくれた。そして、わが社を信頼し利用してくれるたくさんのお客様のためにも、厳しい状況ではあるが何とか会社を維持存続し、願わくば発展させていくことが私の仕事であることを肝に銘じ、書店人として活動して行きたいと思う。

ためほんくん・電子書籍/各地で研修会

〔埼玉組合〕
埼玉県書店商業組合は2月21日午後2時半より、浦和ワシントンホテルで平成23年度研修会を開催し、30名が参加した。
研修会は、三井田誠教育指導委員長の司会で進行。川嶋孝文理事長の開会のあいさつに始まり、2部構成で研修会が行なわれた。
第1部では、試し読みシステム「ためほんくん」について、日書連「ためほんくん」部会の田江泰彦部会長より、システムの趣旨や、機能についての解説、導入実績、店頭での利用方法などの説明があった。
第2部では、ウェイズジャパンの小橋琢己執行役員より、「書店での電子書籍販売」と題し、システムの概要や販売方法、ロイヤリティ・販売手数料の仕組みの詳細な説明があり、書店組合と組合員書店との役割について講演いただいた。
続いて懇親会が行われ、日書連の石井和之事務局長の発声で乾杯した。懇親会には東京組合デジタル戦略推進委員会の下向副委員長も臨席し、「電子書籍販売」について個別の質問に対応していただくなど、最新の情報を交えて組合員の親睦を深めた。
なお、研修会に先立って理事会が開催され、大震災出版対策本部作製の「募金箱」、ならびに「軒先.com」による書店の未使用スペース有効利用が紹介された。(石川昭広報委員)
〔佐賀組合〕
佐賀県書店商業組合は2月14日、佐賀市アバンセで書店研修会を開催。午前11時から「書店における電子書籍サービス」について、昼食をはさんで店頭試し読みシステム「ためほんくん」の説明が行われ、21名が出席した。
研修会は吉竹理事の司会で始まり、岩永理事長はあいさつで「今日説明をいただく電子書籍サービスは、書店で販売することを前提に開発されており、お店の経営に寄与できると思う。『ためほんくん』についても、書店のデジタル化が急速に進んでいる中、今日の研修で多くのことに理解を深めてほしい」と述べた。
午前の研修は、ウェイズジャパンの菊池直行、中川純一両氏に出席をいただき、会社の概要やデジタルコンテンツの取り組み、電子書籍サービスのプラットフォーム、プリペイドカード販売、ロイヤリティ、販売契約等について、カラーチャートで詳細な説明があった。
午後は、日書連「ためほんくん」部会の田江泰彦部会長が説明。プロジェクターによる多くの画面と、簡潔で的を射た説明により理解を深めることができた。ためほんくん設置店の場合、店頭でのコミックスの売上げ増加等の具体的な数字の提示があり、出席者はさらに関心を持ったようだった。(古賀嘉人広報委員)

特賞は図書カード5万円/4月20日からスタート/春の書店くじ

4月23日の「世界本の日サン・ジョルディの日」に合わせて、第16回「春の書店くじ」の配布が4月20日からスタートする。特等賞には、「図書カード5万円」40本を用意した。
27年目を迎える「世界本の日サン・ジョルディの日」に合わせて実施する「春の書店くじ」。配布するくじは、男の子と女の子が本を覗き込む図柄、宣伝用ポスターは、女性が文庫本を胸に微笑む図柄となっており、特等賞の図書カード5万円分が40本当たることや、はずれ券10枚で図書カード5千円分が当たるダブルチャンス賞に応募できることなどを大きくアピールする。
店頭活性化活動の一環として、組合加盟店全店に無料の「書店くじセット」(くじ50枚、ポスター1枚)1組を送付する。くじの配布期間は、4月20日(金)から30日(月)まで、当せん番号発表は5月23日(水)。

書店くじ立替金振り込みました

昨年秋実施した「2011読書週間書店くじ」で各書店にお立て替えいただきました1等1万円、2等千円、3等5百円、4等百円の清算業務は終了いたしました。入金をご確認いただくようお願いします。
書店くじ係

書店再生改善案5項目提案後の経過を報告/東京理事会

東京都書店商業組合は3月2日、書店会館3階会議室で定例理事会を開催した。各委員会の主な報告・審議事項は次の通り。
〔書店再生〕
東京組合が提案した書店再生のための改善案5項目について、日書連は2月理事会で全面的に承認。日書連はこの提案を、出版業界3者で構成する出版流通改善協議会に2月23日付で提出、改善案の早期実現に向けて検討を要請したと報告があった。
〔指導・調査〕
支部活動報告の中で、武蔵野支部から、「本で指を切った」と言いがかりをつけ慰謝料等を要求する事件があったことが報告された。このような事件が起きた場合は、警察に相談するとともに、支部や組合に連絡してほしいと呼びかけがあった。
〔取引・流通改善〕
雑誌付録問題で、店頭陳列に支障をきたす厚さの付録や、単行本と区別がつきにくい装丁をした付録の事例が報告され、調査を進めることにした。
〔デジタル戦略推進〕
ウェイズジャパンと提携して進めている電子書籍サービスは、先行販売として5書店で展開中。東京組合は同事業の初期導入費用2万5千円について、先着申込100書店に1万円を補助することを決めており、3月6日と8日に書店会館で事業説明会を行うと説明した(後段に記事掲載)。
また、3月10日から月刊『文藝春秋』電子版がウェイズジャパンの電子書籍プラットフォーム「雑誌オンライン+BOOKS」で配信されるのに合わせ、文春オリジナルデザインのプリペイドカード(3千円)を作成すると報告した。
〔電子書籍販売事業説明会を開催〕
東京組合は「電子書籍販売事業説明会」を3月6日と8日の両日、書店会館3階会議室で開催した。
6日の説明会で大橋信夫理事長は「この事業は、デジタルの本も我々の商品として扱っていこうというのがポイント。今まで手掛けたことのない商品なので、疑問点は今日の説明会で聞き、お申し込みをいただきたい」とあいさつした。
続いて、ウェイズジャパンの小橋琢己執行役員が電子書籍サービスの概要を説明。当初の仕様からの改善点として、プリペイドカードの追加と、電子書籍端末「ISTORIA」をコミック専用リーダーとしたことを挙げ、「端末の販売だけでなく、プリペイドカードを販売することによっても、そのお客様をお店の所属ユーザーとして認識できるようになった。敷居が低くなり、取り組んでいただきやすくなったのではないかと思う。『ISTORIA』は、サイトで販売されるコミックコンテンツを読む1つのリーダー端末という位置付け。若い読者をターゲットにしている」と説明した。

日書連のうごき

2月2日全国中央会主催全国団体事務局代表者会議に大川専務理事が出席。
2月6日「社会保障・税一体改革」説明会に面屋副会長が出席。
2月7日「ためほんくん」部会。栗原均氏お別れの会と東京組合青年部新春懇親会に石井事務局長が出席。
2月8日学校図書館整備推進プロジェクトに大川専務理事が出席。
2月9日日本出版インフラセンター運営委員会に大川専務理事が出席。第3回首都圏書店大商談会委員会に石井事務局長が出席。
2月10日近畿ブロック「ためほんくん」研修会に田江理事が出席。被災地域販路開拓支援事業(コンテンツ緊急電子化事業)に関する説明会に大川専務理事が出席。
2月14日図書館サポート部会。佐賀組合「ためほんくん」「電子書籍」研修会に田江理事が出席。「第54回こどもの読書週間」標語選定委員会に石井事務局長が出席。
2月15日日本図書普及役員対象説明会に鈴木副会長ほか役員が出席。各種委員会(指導教育、取引改善、流通改善、書店再生、広報、政策、地震対策本部、読書推進、組織)。
2月16日日書連2月定例理事会。児童図書出版協会幹事会「ためほんくん」研修会に田江理事が出席。第6回ISBNマネジメント委員会に藤原副会長が出席。出版物公取協理事会。
2月17日フューチャー・ブックストア・フォーラムに田江理事が出席。第146回芥川・直木賞贈呈式に大橋会長が出席。
2月20日「ためほんくん」幹事会。
2月21日埼玉組合「ためほんくん」「電子書籍」研修会に田江理事が出席。被災地域販路開拓支援事業〈コンテンツ緊急電子化事業〉有識者委員会に大川専務理事が出席。
2月22日文化産業信用組合臨時総会に大橋会長が出席。
2月24日読書感想画中央コンクール表彰式に大橋会長が出席。
2月27日公正取引協議会月例懇談会に大橋会長ほか役員が出席。
2月29日第12回活字文化推進委員会に大橋会長が出席。

小学館渡邊氏を招き勉強会開く/兵庫理事会

兵庫県書店商業組合は2月14日に神戸市エスカル神戸4階会議室で2月度定例理事会を開催した。
昨年10月に就任した山根金造理事長は「ワクワクする理事会」を持つことを方針として打ち出しており、今回は小学館関西支社渡邊光昭エリアマネージャーを招き、理事会に先立って勉強会が開かれた。
渡邊氏は、小学館商材で売上げをとる方法を、具体的かつ詳細に説明。小学館の持つTV枠とのコラボによる店頭商材の展開方法、児童書の知られざる売り伸ばし方等、参加者の耳目を集める1時間となった。
先月は、扶桑社関西支社部長松島弘幸氏を招いて勉強会を開き、扶桑社既刊本の仕掛け販売で売上げが上がる事例をお話しいただいた。参加書店の中からは、早速仕掛け販売を実施し、実績が上がったとの報告があった。
理事会では、組織拡大の取り組みについて状況報告。次に、長年にわたり淡路の支部長を務められた富田譲氏(富貴堂)に対し感謝状を贈ることが満場一致で決定された。なお、理事会は3月は休会し、4月からは、エスカル神戸の会議室閉鎖に伴い、神戸駅前「神戸市立婦人会館」で開催する。
(安井唯善広報委員)

学参売場の基礎知識から増売のポイント/ジュンク堂書店池袋本店・田中康之氏が講演/学習参考書協会・辞典協会「学参・辞典勉強会」

学習参考書協会と辞典協会が主催する「2012年新学期学参・辞典勉強会」が2月15日午後1時半から飯田橋の研究社英語センターで開催。ジュンク堂書店池袋本店学習参考書担当の田中康之氏が、「学参売場にかかせない基礎知識から増売のポイント」をテーマに講演した。
〔高校は1年理数のみ新課程〕
ジュンク堂書店池袋本店は池袋駅中心部から徒歩5分ほどの立地で、近くには代々木ゼミナール、駿台予備校、河合塾がある。学参の売上比率は小中学生が3割、高校が7割で、12月から1月の受験期になると、高校が売上の8割ぐらいまでなるという、かなり偏った構成になっている。
学参は季節ごとに重点商品が変わるので、それに合わせて棚を作っていく必要がある。そのためにまず1年間の流れを知ることが大切だ。
まず新学期だが、今年のポイントは中学と高校の新指導要領の改訂だ。中学は、全学年が対象になる。新しい教科書に変わるために教科書ガイドや教科書準拠問題集は基本的にすべて入れ替えになる。ただし、一部科目については旧教科書を使用する生徒もいるので、該当する商品は返品せず残しておく必要がある。
高校は、今年は理数科目を先行実施ということで、新1年生のこの2科目だけ新課程になる。高校の場合は中学と違い、3学年が同時に新課程に切り替わるのではなく、学年進行型と呼ばれる方式になっている。今年の新1年生は、理数は新課程、英国社は旧課程で学習するが、4月に2年生または3年生になる生徒は卒業まで全科目を旧課程で学習する。2015年度にようやく全科目が新課程に切り替わることになる。
しばらく新課程で学ぶ生徒と旧課程で学ぶ生徒の両方がいるため、また大学入試で旧課程内容での試験がある間は、売場でも両方の商品を展開しなくてはいけない。その際、新課程コーナーは「新課程」と表示するよりは、「新1年生用」もしくは「新課程・新1年生用」と表示したほうが、お客様にはわかりやすいと思う。
この新課程コーナーのスペースについてだが、今年の場合、まだ2、3年生と浪人生のほうが多いので、新旧の比率は3対7ぐらいになるのではないか。普通は6対4ぐらいが目安になると思うが、売場の状況に応じて調整してほしい。
〔商圏特性に合わせて仕入れ〕
新学期は昔と比べると4月集中型ではなくってきていて、最近は5月までダラダラと新学期商品が続くような傾向だ。とは言っても、4月第2、第3土曜・日曜がこの時期の売上のピークであることに変わりはない。この時期のメーン商品は教科書準拠品だ。それにはまず自分の店舗周辺の教科書採択状況を把握する必要がある。
地元中心の客層の場合は、店がある市町村や隣の市町村で採択している教科書を押さえて、その準拠教材を店頭に置けばいい。広範囲からの来客が見込める場合は、採択表を細かく調べるよりは、前年のデータを見たほうが間違いはないと思う。私どもの店では、新学期分の発注は前年のデータを見て、それを基準に数を決めている。そのためにも販売データを残しておくことが重要だ。
新学期の教科書準拠品は早いものは1月から入荷してくる。実際に商品が動き出すのはもう少し先になるが、売れる時期よりも早く商品を展開し、お客様に印象づけることが必要だ。事前に棚替えをする日を決めておき、スムーズにできるように準備しておきたい。
陳列方法は、まず小・中学生はガイドと準拠問題集を分けて並べ、問題集はシリーズごとに分ける。高校の教科書ガイドは、ガイドに書いてある教科書番号の順に並べる。高校は問題集を含むガイド関連商品の数は少ないので、問題集や英単語集、CDなどは該当するガイドの横に置くほうがいいと思う。特定の学校の需要が見込める場合は、その学校で使用している教科書準拠品をまとめたコーナーを作るのもいいだろう。
新学期に向けての準備について、私どもの店では毎年、3月から5月の間に売れる数を昨年の販売データを見て計算し、その数で注文している。約3ヵ月分で仕入れる理由は、新学期は何かと忙しく、在庫をチェックして追加注文するところまではなかなか手が回らないといったことがあるからだ。商品によってはなくなる可能性があるので、確保しておきたいものば、早めに手配をしたほうがいいかもしれない。
教科書準拠品は5月半ばぐらいから在庫を順に減らしていく。まず余分なストックを減らし、そのあと学校別の問題集など入試ものが増えてくるのに合わせて徐々に棚も減らしていく。辞典の年間売上における新学期の比率は高く、中学は特にその傾向が顕著だ。小学辞典は、辞典の使い方を教える授業が4月から6月にあるので、6月ぐらいまでは縮小せずに販売してほしい。
辞典でよくある問い合わせに、「この辞典とこの辞典はどう違うのか」というのがある。おおまかでよいので、それぞれの辞書の特徴を把握しておきたい。最終的にはお客様自身に見比べていただくのが一番。同じ単語で説明の仕方の違いを比べてもらうのも1つの方法だ。
〔過去のデータの活用が重要〕
次のポイントは7月。新学期ほどではないが夏は非常に売れる時期だ。小中学生向けでは夏休み用のドリルが出てくるので、これを大きく展開する。高校は、国語だけ他の科目と違って夏休みが売上のピークになっていることに留意したい。推薦入試関連書が動くのもこの時期。面接や小論文が中心になる。予備校の夏期講習にも注目する。夏期講習だけ参加するというケースがあるので、普段来店しない新しいお客様を獲得するチャンスだ。
夏期講習では市販されている参考書や問題集を指定して、生徒に購入させるケースが多い。同じ本を立て続けに聞かれたら、可能であればお客様に聞いてみることだ。メモに控えておき、次に入荷しそうだったら急いで発注する。推薦ものは毎年同じものを買わせるケースが多い。推薦した先生の名前もわかったらメモしておきたい。
夏休みが終わると徐々に受験対策にシフトしていく。教科書準拠物と学校別の過去問題集などの入試ものは棚を増やす時期と減らす時期が正反対になっているので、この2つを近くに配置すると棚の調整がしやすくなる。
入試関連本について。センター試験対策の年度版問題集は4月から6月の間にほぼ全種類が出揃う。できれば大量に在庫を抱え込むことは秋以降にしたいが、その頃に追加注文しても出版社で在庫切れになってしまっていることが多く、早めに在庫を確保しておく必要がある。河合出版や教学社は追加注文が難しいので、在庫を持ちきれないからといって返品してしまうのは避けたほうがいい。
赤本もセンター試験同様、秋口ぐらいから徐々に売れ始めてくるが、ピークはセンター試験後の1週間だ。受験生はセンター試験の結果を自己採点して受験校を決め、それから赤本を買いに行く。高校学参はセンター試験後の月曜日が1年間で売上がもっとも上がる日なので、赤本や2次試験対策本を大々的に展開するようにしてほしい。
赤本やセンター試験対策本で重要なことは、どれだけ仕入れて、どれだけ売ったのか、単品ごとに記録し次の年に生かすことだ。私どもの店では管理用の台帳を作り、入荷数や販売数を記録している。売り切れてしまった場合は品切れになった日付を記録し、在庫が売れなかった場合は、どれぐらい売れたのかというところまで計算して、翌年の注文数を決めている。
学参は昔からの定番商品が売れる比率が高いジャンルだ。年間を通して見ても売上の上位はそれほど変化しない。まずは定番商品をしっかり押さえ、確実に売っていくことが大事だ。学参は過去のデータがかなり参考になる。毎月の売上データを残しておけば、その月に何が売れるのかを確認でき、過去の翌月のデータを見ておけば、それに合わせて先手を打つことができる。前年分だけではイレギュラーな要因も含まれてしまうことがあるため、過去3年分ぐらいを残しておけばいいと思う。
〔中学生用辞典の動向に注目〕
最後に、最近の傾向で印象に残っていることを挙げたい。1つは季節商品、特に入試に関するものの通年化が進んでいる。センターの年度版問題集は、まもなく新年版が出る3月になっても、在庫があればけっこう売れている。大学別の過去問も、特に毎年新年版の発行が遅い大学は、早めにやりたい人が購入しているようだ。
もう1つは、紙の辞典の復調だ。深谷先生の「辞書引き学習法」が広まってから、小学辞典は売上が伸びている。中学生用の辞典も一昨年ぐらいから少しずつ伸びてきているようだ。今年は、辞書引き学習が広まった年に小学1年生だった児童が中学に入学する年。また、各社の中学生用辞典も改訂される年なので、動向を注目してみたい。

1月期は4・3%減/雑誌・書籍ともに上向く/日販調べ

日販営業推進室調べの1月期書店分類別売上調査が発表された。売上高対前年比は4・3%減で先月より2・2ポイント上昇した。
雑誌は全体で4・4%減と先月を2・8ポイント上回った。コミックは、「君に届け15」(集英社)の好調や、発売日の影響により、売上は6・2%減と先月より5・6ポイント改善。しかし前年は「ONEPIECE」(集英社)関連本や「進撃の巨人1~3」(講談社)の売行きが良好だったため、今月もマイナスが続く結果となった。
書籍は全体で4・2%減と先月より1・6ポイント増。文芸書は『麒麟の翼』(講談社)、『蜩ノ記』(祥伝社)が好調だったが、前年の売行き良好銘柄(『くじけないで』『KAGEROU』)の売上げをカバーできず、14・0%減となった。実用書は「タニタ」関連本等の好調で2・2%増と3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

NET21、加入説明会を開催/協業化の意義アピール

中小書店協業化チェーンのNET21(田中淳一郎社長=恭文堂)は2月4日、東京・文京区の文京シビックホールで新規加盟書店を募集するため説明会を開き、全国の18書店・20名が出席した。当日は出版社とのトークセッション「書店協業化の未来と出版社が期待すること」と、出席書店との個別説明会を行い、NET21に加盟する意義をアピールした。NET21は1997年に7法人で任意団体としてスタートし、01年に12法人より出資を受けて有限会社を設立。現在は22法人・44書店が加盟し、合計の年商は107億円。出版社の法人特約ランクはおよそ30位。共同仕入や埋もれた本の発掘などで大手との差別化を図り、中小書店協業化のビジネスモデルを追求している。
説明会の冒頭、初代社長を務めた渡辺順一相談役(進駸堂)は「本日の説明会で、NET21の仲間入りをするための物理的、心理的なハードルを低くしたい。当初は会社として認めてもらえなかったが、色々な出版社のお力添えで11年間続けてこれた。毎月定例会は店長会兼役員会兼オーナー会で、手弁当で集まっている。忙しい中ほぼ全員出席してこれたのは『元気』『やる気』『熱心』をもらえるから。書店は簡単ではない。単店舗では限界がある。組めるところとは組む。だが入ったら何でも解決できるわけではない。それぞれが役目を果たすみんなの会。メンバーが増えることでNET21が儲かるわけではないが、やる気のある人が入ってくることで活性化する」と述べた。
田中淳一郎社長の司会進行、講談社販売促進局の佐藤雅伸局長、ダイヤモンド社営業局営業部の井上直部長が参加して行われたトークセッションの模様は以下の通り。
〔書店協業化の未来と出版社が期待すること/トークセッション〕
田中NET21の意義は2つ。取次、出版社から独立して会員書店の利益のためにある。書店オーナーが経営レベルで交流できる会であることも重要だ。主な仕事は共同仕入。加盟書店のオーナー22人が出版社の担当を持って仕入を行っている。NET21が他の法人と違う点を聞きたい。
佐藤20年前に60人いた販売促進局は現在13人。全国の書店をくまなく訪問するのが難しくなった。本部機能を持つ書店とビジネスを進めていく形を取らざるを得ない。そこにNET21の存在意義がある。
井上本来1店ごとに話をするのが当たり前だが、出版社は人員削減を進めており、本部を持つ法人との付き合いが深くなる。出版社側からもっと声をかけなければいけないのだが、声をかけても「うちはビジネス書は売れない」と言われることも多かった。NET21加盟書店は町の本屋さんが多いので、設立された時は、ビジネス書を売る裾野が広がる可能性を感じた。
田中情報をいかに早く入手するかが本を売る仕事の生命線。出版社から情報が流れてこない書店は多いが、NET21は情報を共有できるのが強み。ただ10年以上ずっと変わらない仕事をしてきて、問題点を見過ごしていると感じる時もある。欠けている点を教えてほしい。
佐藤法人格はあるが、22人のオーナーがいて、各書店が独立している。全体の売上目標の設定などが明確になっていないのではないか。
井上首都圏の都市型の店を除くと、ビジネス書の売上は低い。付き合いの中で「もっとこの商品がほしい」と文句を言ってほしい。ビジネス書の売り方について大きな枠で話ができれば、よりよい関係を築くことができる。
田中NET21は、情報を受ける機能は優れているが、情報を発信する機能は物足りない。そういう要素を入れて会社を育てたい。世の中が変化しているのに同じことを続けるのは後退に等しい。厳しい環境の中で売上を伸ばしたい。ステップアップするため何が必要か。
佐藤バイヤーが22人いるのは他の法人に比べて圧倒的に多い。やりようによっては濃い情報をたくさん集められる。最近の読者は本を読むけれど、色々と工夫してあげないと買ってくれない。昔は本好きに向けたざっくりした展示でよかったのが、今は選んでもらえるよう細かな環境作りが欠かせない。出版社から書店、書店から読者への提案の方法を変えていかねばならない。
井上自分の店を持ちながらNET21のバイヤーをやっており、大変だと思う。バイヤーは出版社に対する顔。その対応によって出版社の対応も変わる。重要な役割だ。バイヤー同士の情報交換が今後大切になるだろう。
田中電子書籍の取り組みは。
井上ビジネス書の著者は最先端の情報に触れているので、やってみたいという声があがり、50タイトルほど出している。いちばん売れたのは「もしドラ」で15万部。
佐藤当初から積極的に取り組んできた。紙と電子は食い合わない、利用し合ってパイを広げるという考えからスタートした。
田中NET21が今後やるべきことついて。
井上もっと多くの出版社と積極的な付き合いをしてはどうか。売り場作りで提案してほしい。
佐藤ジャンル別に分析することも必要。NET21発のベストセラーや営業支援をもっとアピールすべき。
田中仕入は店の能力ではなく人の能力。仕入担当者同士が情報交換して精度を磨くことが重要。仕入はすべての窓口。重要性を肝に銘じたい。いま返品率が大きなキーワードになっている。売れる数よりも返品率がクローズアップされることもある。仕入時の問題がそのまま返品率に響く。仕入は高感度な人が高い精度で行うべきだ。

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

もう1年、まだ1年……。
来る春は暖かいでしょうか。
週刊誌を開くと、特集ページに仙台の書店員Sさんの姿があります【註1】。誌面から飛び出してきそうな笑顔を拝見して、きっと良い春になると確信いたします。「笑顔満願(満顔)菩薩」と名づけたいくらいです。拝んでどうする?特集では、営業を再開できたお店、新規開業されたお店が紹介されています。Sさんのイラストエッセイも読めます。
ここでこの話を終わればよいものですが、私、一言多いのでございます。関西では「イランコトイイ・ショーモナイコトイイ」と申します。Sさんのグラビアデビューです。わくわくしながらページをめくってしまったのです。まだSさんの写真があるはず!
イケナイことを考えた不良オヤジをお許しください。次のページは本屋さんの記事です。それでも、またコソコソと何度もページをめくり直しているアホです。
「ひょっとすると、さっきはめくりそこなったのかも……」
仙台の出版社から、当代人気作家の本が出ました【註2】。同社の雑誌連載エッセイ他と、被災地の移動図書館を題材にした書き下ろし短篇小説が収録されています。震災後のエッセイは重いものですが、お子さんとの会話から「希望と決意」を伝えています。小説には実在のモデルがいますが、もちろん創作です。ふたりの男性ボランティアそれぞれが訳ありの過去を持っています。悲しい恋の香り、凄腕の犯罪者の匂いを読者に感じさせます。読みようによってはファンタジーの世界にも入り込めそうです。私たちの想像を広げてくれる小説です。
被災地の本屋訪問を続ける作家がいらっしゃいます。その方の新刊ゲラを読ませていただきました【註3】。本屋を舞台にしています。ふたりの女子書店員を中心にした「お仕事小説」ですが、恋愛小説であり家族小説であり、さらに吉祥寺という街を取り上げた都会小説です。全国の本屋を訪れ、直接私たちと対話をしてくれる作家ならではの作品です。前半の女性同士の戦い・いがみ合いは、旧作からさらに凄まじさを増しています。「女は怖い!」
しかし、本と本屋に対する熱い思いは共通で、要するに似た者同士のぶつかり合いなのです。主人公は閉店の決まった店をスタッフと共に建て直し、継続を訴えますが、叶いません。電子書籍部門への異動を断わり、辞表を出します。「……電子書籍は本ではない。データだ。本とは別物だ。本屋はお客様や営業の人や書店員、いろいろな人間がいて、直接会って話したり、ときにはぶつかりあって何かが生まれる。本という物を媒介に人と人が繋がっていく。それが書店だ。わたしの好きな書店というものだ。……」
リアル書店を大切に思ってくれる作家の真心であり、私たち本屋で働く者へのエールであります。
この3冊を読み、いろいろな言葉が思い浮かびます。
映画評論家の決め台詞
「いやー、○○ってほんとうに楽しいですね」
さらに、和田誠の著作から、「お楽しみはこれからだ」
そして、ドタバタコメディの「優香姫」。
「たっのしーねー」連呼しているおらが春であります。
【註1】『週刊ポスト』2・27号「復興の書店」小学館
【註2】碧野圭『書店ガール』(PHP文芸文庫3月中旬発売。2007年刊『ブックストア・ウォーズ』改題)
【註3】伊坂幸太郎『仙台ぐらし』(荒蝦夷短篇小説「ブックモビール」)

山根隆氏が専務昇任/清水保雅氏と鈴木哲氏が常務に/講談社

講談社は2月20日の定時株主総会と取締役会で役員とその担当を決定。山根隆常務が専務に、清水保雅、鈴木哲両取締役が専務に昇任した。また、渡瀬昌彦学芸局長、重村博文キングレコード社長が取締役に新任した。
講談社の新役員体制は以下の通り(○印は昇任、◎印は新任)。
代表取締役社長野間省伸
専務取締役(編集部門統括・雑誌事業担当)担当局=第一編集局・第四編集局
持田克己
同(営業部門統括)担当局=広報室・メディア事業局
森武文
同(管理部門統括)担当局=社長室・総務局
○山根隆
常務取締役(コミック事業担当)担当局=第三編集局・第五編集局
○清水保雅
同(書籍事業担当)担当局=編集総務局・校閲局・文芸局○鈴木哲
取締役(ライツビジネス担当)担当局=ライツ事業局・国際事業局・中国事業室入江祥雄
同担当局=業務局・流通事業局・経理局・システム部金丸徳雄
同担当局=第二編集局・生活文化局田村仁
同担当局=販売促進局・コミック販売局・新事業営業部峰岸延也
同担当局=第六編集局・児童局・ディズニー出版事業局・新事業プロジェクト
大竹永介
同担当局=雑誌販売局・書籍販売局・宣伝企画部
大竹深夫
同担当局=第七編集局・デジタルビジネス局
古川公平
同担当局=学芸局
◎渡瀬昌彦
同(非常勤)岩崎光夫
同(非常勤)◎重村博文
常任監査役木村芳友
監査役足立直樹
顧問横山至孝

トーハン、電子書籍販売サイトをオープン/「e‐hon」と連携

トーハンは2月に電子書籍販売サイト「Digitale‐hon(デジタルイーホン)」をオープンした。これに伴い、2009年から運営していた医療従事者向け電子コンテンツ販売サイト「Medicale‐hon(メディカルイーホン)」を「Digitale‐hon」に移行した。
「Digitale‐hon」は、「Medicale‐hon」の販売スキームを継承したまま、コンテンツを全ジャンルに拡大。スタート時のコンテンツは約7万3千点で、2012年度中に10万点規模まで拡充する計画。当面、コンテンツの検索・購入・閲覧の機能はPC上でのみ可能とする。「Medicale‐hon」から移行する医療関連コンテンツについては引き続き記事・論文単位での配信とするが、今回追加される一般書籍は書名単位(1冊単位)での配信が中心となり、コンテンツの特性や利用者のニーズに応じた購入方法が可能になる。
「Digitale‐hon」は「全国書店ネットワークe‐hon」の提携サイトとして商品・会員の両面で連携を図る。「Digitale‐hon」で電子書籍を購入するには、「e‐hon」と両方の会員登録が必要(登録料無料)。決済方法はクレジットカードで、会員獲得面で連携する加盟書店に対しては、販売手数料が支払われる。

2012年版総目録を発行/ヤングアダルト図書

出版社22社で構成するヤングアダルト図書総目録刊行会は、このほど『ヤングアダルト図書総目録2012年版』(掲載社数99社、約3000点)を発行した。A5判297頁、頒価税込300円。
ヤングアダルト(YA)とは13歳から19歳までの世代を言うが、同書は日本で唯一のYA向け図書目録。
目録には出版社がYA世代にお薦めする書籍を多数収録しており、11の大分類を55項目に分類。今年度版は、文学の分類で「日本の小説」という分類に加えて「世界の小説」を、また「古典・名作」「ファンタジー」といった項目を新設した。
巻頭カラーページでは、掲載出版社によるYA世代に特におすすめの1冊を表紙画像付きで紹介。毎年好評の読み物ページは、作家の森達也氏によるエッセイをはじめ、図書館協議会・図書館員・書店員のエッセイ、学校現場での『朝の読書』実践の取り組みも紹介する。
同刊行会では、毎年新年度を間近に控えたこの時期に目録を発行。『朝の読書』を実践している全国の中学校・高校約1万300校に無償で配布している。また、「YA基本図書セット」に同梱するほか、各種ブックフェア・図書館大会等で積極的に活用する。

移転

◇ブックサービス
本社オフィスを下記の場所に移転し、3月12日から営業を開始した。
〒101―0051東京都千代田区神田神保町3―25住友神保町ビル6F
代表・管理部門=℡03―3239―4821FAX03―3239―4829
※書店のフリーダイヤル(FAX含む)は変更なし

難局打開は自助努力が必要/神奈川日販会総会で松信会長

神奈川日販会は2月7日、横浜市のヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルで第41回総会を開き、会員書店、出版社、日販関係者あわせて172名が出席した。
冒頭、松信裕会長があいさつに立ち、「マイナス成長が続いているのは我々の業界だけではなく、日本を代表するような巨大企業も同様だ。巨大企業はいろいろな手を打っているが、我々はなすべきことが何なのかよく見えない。紀伊國屋書店の故松原会長がよく『自助努力』とおっしゃっていたが、結局行き着くところはそれしかないのではないか。日販が進めるPARTNERS契約においてインセンティブ契約よりインペナ契約の方が多いというのは書店の覚悟の表れだと思う。良い本を作る製作側の努力と売り切る書店の意思と、それらをつなぐ日販の施策がかみ合って成果が出ていくと思う。今後ますます厳しくなっていくかもしれないが、自助努力で出版の灯を燃やし続けていきたい」と述べた。
続いて昨年度の活動経過報告・収支決算報告及び今年度の事業計画案・収支予算案などが審議され、いずれも可決承認。役員の担当変更では浅海栄一監事(第七有隣堂)が理事に、越地祐一郎理事(越地書店)が監事に変更となった。
その後、あいさつした日販古屋文明社長は「業界3者の基盤を確固たるものにするためには、書籍で収益を確保することを考えていかなければならない。日販では2015年までに書籍返品率25%を達成することを目指しており、生み出された原資は3者で分け合っていく。書店のマージン拡大に向けて、買切・歩安・時限再販といった取り組みを拡大していきたい。課題は多いが、意欲のある出版社・書店と組んで奮闘していきたい」と述べた。

「読んで復興支援」フェア/読売新聞との連動企画/トーハン

トーハンは、2月29日付読売新聞全国版朝刊に掲載された「学校図書館げんきプロジェクト~読んで復興支援」に連動し、「読んで復興支援」フェアを全国約350書店とオンライン書店「e‐hon」で開催している。
「学校図書館げんきプロジェクト」は、活字文化推進会議、全国学校図書館協議会、文字・活字文化推進機構が主催し、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の小中高校に本を贈る募金活動として昨年12月にスタート。2014年3月まで学校図書館の要望に沿って順次寄贈を行う計画で、寄贈する本は地元書店を通じて購入する。学校図書館の復興を通じて教育による被災地域の復興・再生を目指している。
「読んで復興支援」フェアは、震災から1年を迎えるにあたり、さらに支援の輪を広げる目的で、活字文化推進会議、トーハン、電通が実施するもの。協賛出版社7社の対象商品をフェア実施書店および「e‐hon」で購入すると、読者に代わり読売新聞社が1冊につき50円を「学校図書館げんきプロジェクト」の基金に寄付する。2月29日付読売新聞全国版朝刊には、地元書店や参加書店の声とともにフェアの告知広告が掲載された。参加書店ではプロジェクトの告知が入った専用帯付きの商品を販売する。実施期間は書店によって異なるが5月下旬まで。
対象商品は以下の通り。
▽心のおくりびと東日本大震災復元納棺師(金の星社)▽くちびるに歌を(小学館)▽逆境を越えてゆく者へ(実業之日本社)▽悲しみの効用(祥伝社)▽世界史(上・下)(中央公論新社)▽河北新報のいちばん長い日(文藝春秋)▽前向き。93歳、現役。明晰に暮らす吉沢久子の生活術(マガジンハウス)

書店員が選んだコミックフェア/日販

日販は「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」と題してランキングベスト15位を発表し、1800軒の取引先書店でフェアを開催している。
このフェアは、日販が全国の書店員から「刊行5巻以下のおすすめコミック」をアンケート調査し、投票結果に基づいて店頭展開を行う毎年恒例の企画。今回は過去最高の1104名(862書店)の書店員が投票に参加。1位には『鬼灯(ほおずき)の冷徹』(講談社)が選ばれた。以下、5位までは、『銀の匙SilverSpoon』(小学館)、『アオハライド』(集英社)、『となりの関くん』(メディアファクトリー)、『姉の結婚』(小学館)というランキングになっている。
今回は新たな取組みとして、ランクイン作品の中から読みたい作品をツイッターでつぶやくことでHonyaClubポイントが当たるキャンペーンを、HonyaClub.comのフェアページで実施。購入者向けには、フェア専用帯の応募券を送ると著者サイン色紙が当たるキャンペーンを実施し、SNSと書店店頭の双方からフェアを盛り上げる。

月刊『文藝春秋』4月号から電子版配信/ウェイズ社サイトでも

文藝春秋は、月刊『文藝春秋』電子版の国内配信を3月10日発売の4月号からスタートした。
『文藝春秋』は2011年2月から海外向けの配信を行ってきたが、国内での配信を希望する読者の声が多く、配信を決定したもの。配信をスタートする電子書店は、日書連が電子書籍サービスで提携するウェイズジャパンの「雑誌オンライン+BOOKS」と、紀伊國屋書店「BookWebPlus」の2電子書店で、税込価格1千円。文藝春秋は、「この2電子書店は実質的に既存の書店が運営に関わる電子書店であり、電子書籍と紙の本との共存方法が模索されているなかで、この配信開始が、これまで雑誌『文藝春秋』を支えてきていただいた書店への支援策となることを強く願っています」とコメントしている。