全国書店新聞
             

令和3年9月15日号

ロスを減らすなら、まず社内で「ロス対策士」の養成を/万防機構、資格試験制度をスタート/万引防止出版対策本部事務局長・阿部信行氏が寄稿

全国万引犯罪防止機構は「ロス対策士資格試験制度」をスタートした。7月の第1回ロス対策士検定試験には書店、取次など250名近い小売企業やロス万引対策のセキュリティサービスに携わる人々が受験した。ロス対策の第一歩は「教育」。この制度は、小売業の経営と収益の改善に貢献することはもちろん、買い物客が安心して快適なショッピングを楽しめる環境を実現し、働く人々にとって働き甲斐のある、誇りを持てる職場となることに貢献する。万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長に、制度の概要と目的について寄稿してもらった。
【ロス対策士資格試験制度の位置付け】
万引防止出版対策本部はこの10月で発足から5年目となります。
今回は、ロス対策士テキストや当該試験制度を必要としている経営者や店長、保安担当の方々に向けたご提案です。
この2月に「『ロス対策士』検定試験公式テキスト」を刊行しました。そして、第1回検定試験が7月6日、応募者245名、合格者175名をもってスタートしました。
【「ロス・プリベンション」「ロス対策士」とは】
「ロス・プリベンション」とは何でしょうか?「ロス対策士」とは一体何をする人でしょうか?
「ロス・プリベンション」は、直訳すれば「損失・損害の予防・防止」という意味です。ロスの中身は不正行為(万引・内引き等)やミス(納品先責任や自作業等)があります。これらをどのように予防、防止するかについて書かれたものがこのテキストです。その内容はパート・アルバイトを含む初歩的な知識をまとめたもので、いわば初級・中級者向けというレベルです。同委員会では更に上級者向けのものを準備しています。
これらをベースに「ロス対策士」は何をやるのでしょう。お店にとってどのような存在なのでしょう。テキストでは「小売業におけるロスについての知識及びロスを発生させない実務上の技術についての資格」と定義されています。現在まで成り行き管理だったロス対策に、知識と科学的なメスを入れようとするものです。
経営者にとっては、成り行き管理から数値管理というロスの見える化への変化と、ロス対策士がいわば利益流失阻止の強力な止血剤とも言うべき存在になると言えます。
【合格者インタビューから】
その具体的な一例は、以下の第1回テストの合格者へのインタビューから伺い知れます。
▽「長時間営業、広い売り場、限られたスタッフでの運営という環境の中、チェーン店中万引被害を防ぐのが難しい複数の重点店舗が選ばれ、当該店舗で万引されやすい売り場の巡回、発生場所の特定、報告書のスタッフ間共有等の強化策等を実施している」(書店店長)
▽「説得力のある理論的なバックボーンを身に着け、店舗に対してアドバイスする立場であり、一方上司や年長者に対して説得できるような知識を身に着ける必要性を感じた」(書店スタッフ)
▽「書店への出向経験を活かし書店と同じ目線を持ちその知識を得るために、ロスを体系的に学び書店と共通言語を持つことが大切と考えた」(取次営業担当)
(「万防時報」29号掲載のインタビューから抜粋)
【最後に:渋谷プロジェクトの実情から】
渋谷プロジェクトはこの7月で実施満2年が経過しました。今年4月中旬に顔認証カメラがバージョンアップしたところ、5月~7月の3ヵ月間の万引事案件数に占める敢行者の再来店率は64・2%に急増しました。5月単月では85・7%の高率を記録しております。常習者は貴店の弱点を熟知し再来店を重ねます。ロス対策士資格試験が貴店のロス予防能力向上、社員の士気向上、そして何より利益率向上に貢献することを願います。
〈「ロス対策士」検定試験公式テキスト/『ロス対策テキスト2021』発売中!〉
小売業、ロス対策システムサービス、防犯セキュリティのプロが集まって作った実務と理論体系を両立させた書籍
◇書籍内容
はじめに/ロス・プリベンションとは/ロス・プリベンション教育の必要性/小売業の概要・役割/小売業とロス/ロスの原因と対策/人材と教育/ツールと技術(運用方法)/安全対策
◇NPO法人全国万引犯罪防止機構/星雲社発売
◇定価3&#44