全国書店新聞
             

令和3年4月15日号

講演会「学校教育のデジタル化・子どもの未来」/活字の学びを考える懇談会、文字・活字文化推進機構

「活字の学びを考える懇談会」(阿刀田高会長=作家)と「文字・活字文化推進機構」(肥田美代子理事長)は3月16日、東京都千代田区の衆議院第1議員会館で「学校教育のデジタル化・子どもの未来」をテーマに講演会を開催。デジタル化が子どもに与える影響について東北大の川島隆太教授らが話した。また、日書連の矢幡秀治会長が発言し、デジタル教科書導入について「将来を担う子どもたちの問題。失敗は許されない」と慎重な検討を求めた。
【スマホやゲーム、脳発達に影響/専門家3氏が警鐘鳴らす】
冒頭、「活字の学びを考える懇談会」で顧問を務める、活字文化議員連盟会長の細田博之衆議院議員、子どもの未来を考える議員連盟会長の河村建夫衆議院議員、学校図書館議員連盟事務局長の笠浩史衆議院議員の3氏があいさつ。
講演会では、国立病院機構・久里浜医療センター院長の樋口進氏が「ゲーム・ネット依存の現状と今後の課題」、東北大学教授で同加齢医学研究所所長の川島隆太氏が「スマホ脳と子どもの学力」、作家の阿刀田高氏が「紙の本・新聞は人間をつくる」と題して話した。
樋口氏は、久里浜医療センターのネット依存専門外来受診者の特性を説明。ゲーム障害に伴い「朝起きられない」「学業成績・仕事のパフォーマンスの低下」など様々な問題が出現し、ゲームに依存している者の脳では一部委縮が見られることを明らかにした。
治療では周囲の人が本人のネット使用をコントロールすることは難しく、本人が自分の意思で行動を変えていくよう援助することが基本として、「ゲーム・ネット依存者は増加しており、主に将来ある若者の問題。国民に対する啓発、学校での予防教育、地域・学校でのカウンセリング、医療サービスの充実、ゲーム・ネット提供側の対応など包括的対策が必要」と提言した。
川島氏は、小中学生を対象とした調査で、スマホの使用時間が長いほど学力の低下が見られ、LINEの使用時間3時間以上の場合は誰もテストで平均点を超えないことが分かったと報告。また、読書習慣があるほど脳発達が促進され学力が向上するが、スマホを使い込むと脳発達に抑制がかかることをエビデンスに基づいて説明した。
そして、GIGAスクール構想について「スマホの使用を1時間未満に抑えながら道具として使いこなせるように学校で教えることを、まず第一に考えるべき」と述べた。
阿刀田氏は、エドガー・アラン・ポーのエッセイ「マージナリア」を紹介し、「マージナリアは本の余白のこと。大変な読書家だったポーが、自分が読んだ本の余白に書き込んだことをまとめた作品。読書で大切なのは書き手と対話すること。マージナリアのような読書を若者に進めたい」と語った。
また、学校でデジタル化を推進することによる経済的な負担に言及。「日本人の識字率の高さは国の力になってきた。デジタルを教育に持ち込むことにあたって、子どもたちの間に教育格差が生じることがあってはならない」と訴えた。
最後に、会場から日本新聞協会の山口寿一会長と日書連の矢幡秀治会長が発言した。
矢幡会長は「デジタル化は子どもたちの教育と成長に大きな影響がある。書店業界も声をあげなければならない。電子書籍でも文字を読むことはできるが、『ながら』になりがち。一方、紙の本はそこに没入できる。本日の講演を聞いて、紙の本は重要だとますます感じた」と語った。
デジタル教科書については「実証実験を行うのはいいが、失敗は許されない。将来を担っていく子どもたちの問題だからだ。一度これを経験して脳が発達しなくなってしまった子どもたちが成長して大人になったら、元には戻れない。そこをよく考えて、まだ研究・勉強しなければならない」と述べ、国や関係者は子どもたちの未来に責任ある行動をとるべきと訴えた。

「デジタル教科書、慎重に検討を」丸山文部科学審議官に要望/矢幡会長と春井副会長

日書連の矢幡秀治会長と春井宏之副会長は3月10日、東京都千代田区の文部科学省に丸山洋司文部科学審議官を訪問。「デジタル教科書の基準見直しに関する意見書」を手渡し、教科書のデジタル化推進にあたっては、子どもたちの健康面や脳への影響、活字文化と読書の重要性を考慮した上で慎重に検討してほしいと要望した。
丸山氏は、GIGAスクール構想が目指すものは「令和時代のスタンダードな学校教育」として、児童生徒向け1人1台端末導入と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する取り組みを進めていることを説明。「学校で情報機器を効果的に使うことによって子どもたちの能力を伸ばしたい。その中でデジタル教科書の活用も考えていく必要がある」と述べた。
また、デジタル教科書導入における現状の課題として、紙とデジタルを組み合わせた指導、子どもの発達段階や教科特性に応じた活用を挙げ、「有識者会議の提言を踏まえ、デジタル教科書を本格導入する令和6年度に向けて丁寧に議論を進めていく。書店からいただいた意見もしっかり受け止める。読書活動の重要性に対する認識は皆さんと同じ。懸念されている点は十分注意する」と述べた。

規模縮小して開催へ/全出版人大会

「第60回全出版人大会」は5月7日午後4時、東京都千代田区の出版クラブホールで、安全に配慮しながら、規模を縮小して式典のみ開催する。
当日は検温、マスク着用、消毒・除菌、換気等を十分に行い、少人数、短時間で行う。
大会委員長はオーム社・村上和夫社長が務める。古希を迎えた長寿者のお祝いと永年勤続者の表彰を行う(第59回・第60回合同。永年勤続者は各回代表者1名ずつのみ参加)。

渋谷プロジェクトの成果報告/ロス額減少・書店間の連携進む/万防機構

全国万引犯罪防止機構(万防機構、竹花豊理事長)は3月12日、東京ビッグサイトで「新しい時代のロス対策・万引対策」に関するセミナーを開催。この中で、東京・渋谷区の大盛堂書店、啓文堂書店渋谷店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店の3書店が取り組む「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」について報告が行われた。
基調講演を行った万防機構の竹花理事長は、「万引は警察が認知する刑法犯の1割以上を占め、検挙する3人に1人は万引犯。社会全体としてかなり大きな問題だ」と指摘。
万防機構の活動として、渋谷プロジェクトなど異なる事業者間での協力事業や、警察と被害者の連携強化、インターネットでの盗品処分を防ぐ仕組み、万引犯の4割以上を占める高齢者問題への対策を紹介する一方、「大海の数滴程度の取り組みで、まだ大きな効果を上げていない」との認識を示し、「小売事業者は万引によるロス対策を経営方針の重要な柱として取り組んでほしい」と訴えた。
そして、「当機構に入会し情報交換してほしい。それを元に、万引しにくい店舗づくりをハード・ソフト両面で考えていく。ハード面では、防犯カメラの設置は必要不可欠で、当機構の店舗診断を活用するのも1つの方法だ。ソフト面では、万引に対する店の方針をきちんと定め、従業員に周知することが基本だ」と話した。
続いて渋谷プロジェクトに関するパネルディスカッションが行われ、大盛堂書店社長の舩坂良雄氏、防犯カメラの顔認証システムを手掛けるグローリーの越智康雄氏、同プロジェクト事務局長の阿部信行氏が登壇した。
舩坂氏は、渋谷プロジェクトで顔認証システム導入と書店間の情報共有を実施して以降、19年9月1日~20年8月31日の棚卸ではロス金額は約100万円で、実施前に比べ約40万円減少したと報告し、「書店間で連絡を取るようになり、要注意人物を教えてもらうこともあった。勉強会を重ね、従業員の意識も大きく変わった。当初心配していたクレームも発生していない」と成果を語った。
阿部氏は渋谷プロジェクト2年目の上半期(20年8月1日~21年1月31日)の実績について、初年度上半期に比べ「登録人数」「事案件数」「再来店件数」「捕捉数」が減少したと報告、「コロナ禍の影響もあり評価は難しい」と話した。
越智氏は、コロナ禍によりマスクを着用した人の顔認証に苦労したが、マスク着用と素顔両方に対応できるよう研究開発を進めており、順次配備していく予定だと述べた。

「デジタル教科書の今後の在り方」/文科省が中間まとめを公表

文部科学省は3月17日、「デジタル教科書の今後の在り方に関する検討会議」の中間まとめを公表した。次の小学校用教科書の改訂時期である2024年度にデジタル教科書の本格的な導入を求め、今後は全国規模での実証的な研究や、紙の教科書との関係について詳細な検討が必要だとしている。
同会議は、GIGAスクール構想で整備する児童生徒1人1台端末環境におけるデジタル教科書・教材の活用促進について専門的な検討を行うことを目的に設置されたもの。デジタル教科書は19年度から、一定の基準の下で、必要に応じて教育課程の一部において紙の教科書に代えて使用できることになった。その使用については、各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととされているが、同会議ではこの基準の見直しについて検討し、20年12月に、デジタル教科書の活用の可能性を広げて児童生徒の学びの充実を図るため、当該基準を撤廃することが適当であると提言した。
20年度のデジタル教科書の発行状況は、小学校用教科書が約94%、中学校用教科書が約25%で、21年度にはともに約95%に達する見込み。一方、デジタル教科書の普及状況は、21年3月現在、公立学校全体で7・9%、公立小学校は7・7%、公立中学校は9・2%、公立高校は5・2%となっている。
今回の中間まとめでは、これからの学校教育を支える基盤的なツールとしてICTを最大限に活用しつつ、児童生徒の学習環境をより良いものに改善し、学校教育の質を高めていくためには、各学校でのデジタル教科書の活用を一層推進する必要があり、次の小学校用教科書の改訂時期である24年度を、デジタル教科書を本格的に導入する最初の契機とするよう提言。
その際、現行の紙の教科書は長年にわたり学校教育の基盤を支え使用されてきたこと、また一覧性に優れている等の特性や、書籍に慣れ親しませる役割を果たしていることなども踏まえ、「今後の教科書制度の在り方について、デジタル教科書と紙の教科書の関係や、検定などの制度面も含め、十分な検討を行う必要がある」と言及した。
そして、デジタル教科書の本格的な導入に向けて必要となる取り組みとして、以下を提示した。
(1)全国規模での実証的な研究を通じたデジタル教科書の改善や効果的な活用の検討
・デジタル教科書に共通して求められる機能や、デジタル教材等との連携の在り方
・障害のある児童生徒や外国人児童生徒等への対応
・児童生徒の健康面への配慮
・教師の指導力向上の方策
・デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保
(2)今後の教科書制度の在り方についての検討
・デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討
・紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討
・将来に向けた検討課題
(1)は、現状では公立小・中・高校等でのデジタル教科書普及率が低く、活用実践例が少ないことから、全国的な実証研究を行いつつ検討する必要性を訴えたもの。(2)は、紙の教科書との関係について、前述の研究成果や財政負担も考慮しながら詳細に検討する必要があるとし、「紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討」では、以下の5例を示した。
・紙の教科書を全てデジタル教科書に置き換える
・全てまたは一部の教科で紙とデジタルを併用する
・発達段階や教科の特性を踏まえ、一部の学年または教科でデジタルを主たる教材として導入する
・設置者が、学校の実態や、紙とデジタルの特性を考慮したうえで、当該年度で使用する教科書を選択できるようにする
・全教科でデジタル教科書を主たる教材として使用し、必要に応じて紙を使用できるようにする
また、教科書無償給与制度との関係については、全国的な実証研究の成果や、デジタル教科書の普及状況を踏まえながら、紙とデジタルの関係についての検討と併せて、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に基づく無償措置の対象について検討することが望まれるとした。

「春夏秋冬本屋です」/「町になかったもの」/千葉・ときわ書房本店文芸書・文庫担当・宇田川拓也

青山文平の時代小説作品集『江戸染まぬ』(文藝春秋)に、「町になかったもの」という短編が収録されている。
紙問屋を営む晋平は、町年寄の成瀬庄三郎に呼び出され、屋敷を訪ねる。
紙問屋仲間の長でもある成瀬の用件は、こうだ。紙を売る相手を江戸の十組問屋と定められている現状では、思うように商いを拡げることができない。ついては、江戸へ上がり、御番所へ訴え出るので、長町人と一緒についてきて欲しいというのだ。
晋平には、江戸に足を向けたくない理由があった。けれどこの件を精一杯務めようと腹を括り、江戸へと向かう。そしてなかなか出ない結果を待つ間、ふらりと入った御成路沿いの書肆の店頭で、驚きを覚えることになる。
物語の序盤、江戸を本拠とする飛脚問屋の出店が新たに置かれたことで、ついにここも重要な町のひとつと認められ、「これでもう、町にないものはない」と、晋平の紙問屋仲間が口にする。
確かに町の発展は喜ばしいことだ。しかし、これだけで「ないものはない」といい切ってしまうのは早合点である。さて、ここまで書けば「町になかったもの」がなにかを説明するまでもないだろう。当代きっての時代小説作家が、本を商うひとびとに向けて紡いでくれた応援の物語である。ぜひご一読のうえ、心のお守りにしていただきたい。

「いっしょによもう、いっぱいよもう」/第63回こどもの読書週間

読書推進運動協議会(野間省伸会長)は2021年・第63回「こどもの読書週間」を4月23日から5月12日まで、「子ども読書の日」(4月23日)から「こどもの日」(5月5日)をはさんで20日間実施する。
今年の標語は「いっしょによもう、いっぱいよもう」。読進協は実施にあたり、全国の公共図書館、小中高等学校図書館、書店、出版社、報道機関などにポスター(写真上)や広報文書を配布してPR。読書週間の趣旨を示すマーク(写真下)を作成し、期間中またはその前後を通じて各社が発行する雑誌・新聞・広報紙誌などに使用するよう呼び掛ける。また、都道府県の読進協、関係各団体の協力を得て、以下の各種行事実施を推進する。
▽公共図書館、公民館、小中高等学校の学校図書館で「子どもの読書研究会」「子ども読書のつどい」「親と子の読書会」「大人による子どもの本研究会」「子どもの読書相談」「児童図書展示会」「児童文学作家による講演会」「児童図書出版社との懇談会」などの開催。「読書感想文・感想画コンクール」の実施
▽都道府県の読進協による都道府県単位の「子ども読書大会」などの開催
▽出版社、新聞社、放送局、文化団体などによる被災害地域、児童養護施設、矯正施設などへの「図書・雑誌の寄贈運動」の実施

小さくても自分の強みを発揮する心得/小林書店・小林由美子氏が語る/兵庫組合オンライン講演会『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』出版記念

兵庫県書店商業組合(森忠延理事長)は2月6日、『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(ポプラ社)の出版記念オンライン講演会を開催した。『仕事で~』は、湘南ストーリーブランディング研究所代表を務めるコピーライターで書店好きとして知られる川上徹也氏が、兵庫県尼崎市の小林書店をモデルに書いた小説。昨年12月に刊行されて以来、好調な売れ行きを続けている。講演会では、著者の川上氏と小林書店店主の小林由美子氏が「小さくても自分の強みを発揮する心得」と題してトークセッションを展開し、10坪ほどの書店を切り盛りする小林氏が取り組んできたことをエピソードを交えながら語った。講演内容の一部を紹介する。
【喫茶店マスターから学んだ小さいからできること】
どうしたら店が大きくなるかとか、本が売れるかということは、私には分からない。でも、10坪ほどの小さな本屋でも楽しく仕事を続けるやり方なら分かる。自分の人生のほとんどの時間をそこに使っているのだから、仕事がつまらなければ人生もつまらないものになってしまう。人生を楽しく送りたい、自分が置かれた場所で輝きたいと、本屋でも何屋でもみんな考えている。小さいながらも頑張っている人が世の中にはたくさんいる。
店のすぐそばに、10人も入ればいっぱいになる小さな喫茶店がある。70歳半ばのマスターが40年以上、「街のコーヒー屋さん」を続けて繁盛していたが、3年前にチェーン店ができて、8時からのモーニングの客を取られてしまった。
週刊誌を配達に行くと、あれだけ満員だった店にお客さんがいない。「もうやめるだろう」と思っていたら、ある日、マスターが「小林さん、僕、店を朝5時に開けようと思う」と言う。JR立花駅に近いので、始発で通勤する人にモーニングを出そうと思うと。「僕はコーヒーをたてるのが生きがいだから、大きな店ができたからといってすぐにやめたくない」というのだ。
初めのうちはお客さんが入らなかったが、しばらくすると9時には満席になるようになった。トーストとゆで卵だけでなく、ホットドッグとサンドイッチのコースが美味しい。それが人気になって、9時を過ぎると幼稚園に子供を送ったお母さんが帰りに寄って食べておしゃべりして、12時まで人が途切れない。お客さんが待つほどになって、13時には閉めるようにした。それでも5時から13時まで8時間営業している。
チェーン店ではできないことで、小さいからこそできることだが、そのマスターの自由で柔軟な姿を見るたびに、私は背中を押される思いがする。「大きな本屋ができたから駄目だ」ではなく、「小さいからこそできることがきっとある」と勇気をもらっている。
【震災が人生の転機に「本屋はいい仕事」】
阪神・淡路大震災で店が半壊して大変なことになった時、夫に「日販に電話しなさい。取引先がどうなっているか心配しているだろうから、私のところは怪我もなく元気でやっていますと伝えるように。それが礼儀だ」と言われ、公衆電話の長蛇の列に並んだ。電話に出た日販の方は「小林さん、心配していたんです。よかったです」と。私は「うちは大丈夫です。それが言いたくて電話しました」と言うと、思いやりのある言葉をかけてくださった。商売は人と人とのつながりが大切ということを教えてもらった気がした。
「店を開けよう」と夫は言う。店の中はグチャグチャでとても商売なんかできる状態ではないけれども、うちは本屋で商品もある。みんな店を閉めていたら街は明るくならないとシャッターを開けた。すると待っていたように近所の人たちが集まってきた。「怖かったね」「大丈夫?」と堰を切ったように話している。
たくさんの人たちが互いを思いやっている姿を見て、「街の本屋は地域にかけがえのない存在」「本屋は本当にいい仕事」と実感した。震災の時の経験が私を変えてくれた。
震災で多額の負債を抱えたが、地域に本屋を残したい。そのためには本以外の商品が必要と考えて必死に探した。その時、たまたま手にした雑誌に、傘メーカー社長の「子供の頃から傘が好きで、日本中の人に安くて良い傘を持ってもらいたい」という言葉が載っていた。「これだ」と思い、すぐメーカーに電話して、傘を扱うようになった。
傘メーカーは社員の生活がかかっているから、必死に傘を作っている。本屋だから片手間で売ってくれればいいとは考えていない。だから、私も店だけでなくフリーマーケットでも市民祭りでもどこでも出かけて、必死に傘を売っている。本も傘も取り扱う限り、それは副業ではなく本業だと思っている。
【「うまくやらなくてもいい」という自由得る】
4年前から店でビブリオバトルをやっている。これは絶対に小さな本屋にふさわしいイベントだと思う。公民館とかだと、その時に「この本を読みたい。買いたい」と思っても、会場を一歩出るとテンションが落ちてしまう。でも、本屋でやれば、他の本にも目が行くし、その本がなくても「注文するから後で連絡して」と言ってもらえる。お金をかけなくても手作りでできる。それを面倒と思うかどうかだけで、自分が一緒に楽しめればいい。
一昨年には「本の頒布会」を始めた。年間3万円いただいて、私が選書した本を毎月1冊送る。会員は少しずつ増えて、いま90人いる。送る本は「小林書店のベストセラー」の中から選んでいる。私は新刊やベストセラーを追いかけることをずいぶん前にやめていて、自分が読んで本当にいいと思った本をベストセラーにしたいと思っている。選書もその中からすれば楽しく続けられる。
これも小さな個人の店だからやることができた。私と夫がOKすればそれでできる。誰の許可もいらない。駄目だったらやめればいい。そういう意味では大きな店のほうが大変だなと、最近は思う。
震災をきっかけに、私は自由に動くことができるようになった。それまでは、やるからにはうまくやらなければいけないという思い込みから、何もできなかった。今は、最初から成功させようとは思わない。人が集まるかとかお金になるかとかも心配しない。中途半端でもかまわない。怖いものは何もない。そう考えるようになって、本屋の仕事がどんどん楽しくなっていった。

本への愛に満ちたドキュメンタリー/映画『ブックセラーズ』4月23日公開

世界最大規模のニューヨークブックフェアの裏側から、本を探し、本を売り、本を愛するブックセラーの世界をひもとくドキュメンタリー映画『ブックセラーズ』が、4月23日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開となる。
ニューヨークの老舗書店の人々から、業界で名を知られたブックディーラー、希少本のコレクター、伝説の人物や歴史の影に隠れていた人物まで、様々なブックセラーが登場する。
また、ビル・ゲイツによって史上最高額の28億円超え(2800万ドル)で競り落とされた「レオナルド・ダ・ヴィンチのレスター手稿」、「不思議の国のアリス」のオリジナル手稿、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの手稿、「若草物語」のオルコットが偽名で書いたパルプ小説といった希少本も多数紹介される。
監督はドキュメンタリーで活躍してきたD・W・ヤング、製作総指揮とナレーションは「カフェ・ソサエティ」などの女優パーカー・ポージーが務める。
製作陣は、本を消えてしまう文化として回顧するのではなく、本の未来について真剣に問いかける。本を読む人は減り続け、ネット社会は本の世界を破壊するのかという問いに、若いブックセラーが「上の世代は悲観的。でも私は楽観的よ」と自信をもって語るシーンは印象的だ。
公開の4月23日はちょうど「世界本の日」。書店人をはじめ本を愛するすべての人に観てほしい、希望に溢れたドキュメンタリー。
公開を記念して2つのSNS投稿型キャンペーンが始まっている。
まず、「あなたのお宝本、見せてください」は、高価なものでなくとも、自分にとって大切な『お宝本』をエピソード付きで投稿すると映画観賞券や非売品プレスなどのプレゼントが当たる。
また、「ブックセラーズINJAPAN」は、日本全国の素敵なブックセラーを紹介する特別連載。新刊書店も古書店も、アンケートの回答と写真を投稿すれば順次掲載される。個性的な店主の書店や、店番ペットが人気の書店など、投稿によって日本全国の素敵なブックセラーカタログを作るという。
[映画詳細データ]
▽監督=D・W・ヤング▽製作総指揮&ナレーション=パーカー・ポージー▽原題=THEBOOKSELLERS、アメリカ映画、2019年、99分▽字幕翻訳=齋藤敦子▽配給・宣伝=ムヴィオラ、ミモザフィルムズ

紙と電子のコミック市場23・0%増の6126億円/『鬼滅の刃』と巣ごもり需要で過去最大に/出版科研調べ

出版科学研究所が発行する『出版月報』2月号は、「コミック市場2020」を特集。これによると、昨年の紙と電子を合わせたコミック市場規模は、前年比23・0%増の6126億円。紙は同13・4%増の2706億円、電子は同31・9%増の3420億円でともに大きく伸長した。
2020年のコミック全体(紙+電子)の推定販売金額は前年比23・0%増の6126億円で、3年連続のプラスに。ピークだった1995年の5864億円を抜き、78年の統計開始以来過去最大の市場規模となった。内訳は、紙のコミックス(単行本)が同24・9%増の2079億円、紙のコミック誌が同13・2%減の627億円、電子コミック(電子コミック誌含む)が同31・9%増の3420億円。新型コロナウイルス感染拡大に伴い巣ごもり需要が拡大、余暇時間の増加で手軽に楽しめるコミックが注目され、紙も電子も大幅に売行きを伸ばした。
20年のトピックとしては、コロナ禍による緊急事態宣言下の5月に書店店頭販売冊数は前年同月を5割以上上回る凄まじい売上を記録。大ヒットを続けていた『鬼滅の刃』(集英社)をはじめとしたコミックに読者が触れ、その面白さから一気に需要が高まった。『鬼滅の刃』は10月にアニメ映画が公開され、映画興行収入歴代トップを塗り替える爆発的なヒット。最終巻の23巻は初版395万部で刊行され、シリーズ累計発行部数は1億2千万部に到達。老若男女問わず幅広い読者の人気を集めたことが躍進につながった。また「鬼滅」を求める読者が書店に足を運んで店頭が賑わい、他のコミックの売行きを伸ばしたこともコミック市場全体を底上げした。
【映像化作品ヒットで過去最大の伸び/紙のコミックス】
紙のコミック市場概況を見ると、コミックスの販売金額は同24・9%増の2079億円で伸び幅は過去最大になった。内訳は、雑誌扱いコミックスが同27・4%増の1876億円、書籍扱いコミックスが同4・7%増の202億円。巣ごもり需要も相まって『鬼滅の刃』をはじめ映像化作品がヒット。過剰な送品を抑制したことなどから返品率は23・1%と同7・2ポイントも改善した。
平均価格は同0・7%(4円)減の553円で、内訳は雑誌扱いコミックスが同0・7%(4円)減の533円、書籍扱いコミックスが同3・1%(23円)増の755円。雑誌扱いコミックスは大手出版社の価格値上げが一巡し、価格の安い少年向けコミックスのシェアが伸びたことで微減。書籍扱いコミックスは、KADOKAWAの新刊が前年に続き値上げしたことに加え、『完全版ピーナッツ全集』(河出書房新社)や『100年ドラえもん』(小学館)が発売されたこともあり大きく上昇した。
新刊点数は同134点増の1万2939点となった。内訳は、雑誌扱いコミックスが同272点減の9023点、書籍扱いコミックスが同406点増の3916点。
売行きの動向を見ると、少年向けコミックスは映像化作品のヒットが多く絶好調だった。特に集英社のジャンプコミックスは、『ハイキュー!!』、『約束のネバーランド』などの大ヒット作品が完結したものの、アニメ化で『鬼滅の刃』に次ぐ勢いを見せる『呪術廻戦』や、Webコミック誌「ジャンプ+」発で初めて初版100万部に達した『SPY×FAMILY』など新たなヒット作が成長している。講談社では『進撃の巨人』、『五等分の花嫁』、『炎炎ノ消防隊』などがアニメ放映に連動して売行きを伸ばした。小学館の『名探偵コナン』は映画公開が延期となったが、人気キャラ・安室透を主人公にしたスピンオフ『名探偵コナン警察学校編』がヒットした。
青年向けは『キングダム』(集英社)や『宇宙兄弟』(講談社)などが前年に続きヒット。少女・女性向けでは『ミステリと言う勿れ』(小学館)、今年7月に実写映画公開が予定されている『ハニーレモンソーダ』(集英社)などが人気を集めた。
書籍扱いコミックのうちコミック文庫の推定販売金額は同7・8%減の14億円、販売部数は同4・6%減の180万冊。新刊点数は同51点減の80点だった。
【販売金額、部数ともに2桁減が続く/紙のコミック誌】
コミック誌の販売金額は同13・2%減の627億円、販売部数は同13・6%減の1億7229万冊で、ともに近年は2桁減が続いている。
販売金額の読者対象別の内訳を見ると、月刊誌・こどもが同13・4%減の103億円、月刊誌・大人が同17・9%減の193億円、週刊誌・子どもが同9・4%減の222億円、週刊誌・大人が同12・1%減の109億円。付録やグラビア人気で売行きを伸ばす号はあるが、継続して購読する読者は年々減少している。ほとんどの雑誌が部数を減らしており、推定発行部数は同15・7%減の2億8671万冊と激減。部数の減少で返品率は同1・3ポイント減の43・2%と10年ぶりに改善した。
コミック誌全体の平均価格は、同0・8%(3円)増の385円。内訳は月刊誌が同1・6%(8円)増の518円、週刊誌が同2・0%(6円)増の300円。創刊点数は同3点減の1点、休刊点数は同2点減の8点。発行銘柄数は20年末時点で192点で同7点減となった。
コミック誌の動向をみると、『週刊少年ジャンプ』は「鬼滅の刃」関連付録をつけた号が好調で、最終話掲載号は完売。集英社は自社雑誌に「鬼滅」関連付録をつけ、『マーガレット』が完売するなど、売行きを伸ばした。『週刊少年サンデー』は「名探偵コナン警察学校編」掲載号が好調だった。
【販売金額は31・9%増の3420億円】
電子コミック市場は、同31・9%増の3420億円。外出や書店の営業が自粛される中、テレビCMやSNSなどへの外部出広を積極的に行った電子コミックストアはユーザー数が増加。さらにユーザー1人あたりの購入金額も増えた。
トレンドとしては、動画配信サービスの利用者がコロナ禍で急増したこともあり映像化作品が特に好調だった。ジャンルでは「異世界もの」が引き続き人気。年々アニメ化される作品も増え、派生ジャンルも多岐にわたるなど、一過性のブームを飛び越え1つのジャンルとして定着している。

20年の年間店頭売上4・3%増/コミックが31・5%の大幅増/日販調べ

日販調べによる2020年の年間店頭売上前年比調査の結果が発表された。全体の売上は前年比4・3%増(前年1・7%減)で、年間で前年超えとなるのは00年に集計を開始して以来、当時と集計基準は一部異なるが初めてのこと。
書籍は同1・0%減(前年4・2%減)、雑誌は同8・7%減(前年3・9%減)、コミックは同31・5%増(前年6・2%増)、開発品は同0・7%増(前年4・3%増)。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で休業店が発生し4月は売上が大きく落ち込んだが、それ以外全ての月で前年超え。『鬼滅の刃』(集英社)の大ヒットでコミックの売上が大きく伸長、企業のテレワーク推進や学校の一斉休校要請による在宅時間の増加がビジネス書・学参書・児童書の売上増につながった。

2月期販売額は3・5%増/月刊誌がコミックスの伸長で2桁増/出版科研調べ

出版科学研究所調べの2月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比3・5%増で、3ヵ月連続プラスとなった。
内訳は、書籍が同0・6%増、雑誌は同8・0%増。雑誌はここ3ヵ月、コミックの好調で大幅増が続いている。雑誌の内訳は月刊誌が同11・5%増、週刊誌が同8・4%減。月刊誌は先月に引き続き、『呪術廻戦』の既刊(0~14巻)、『ONEPIECE』の新刊(98巻)、『鬼滅の刃』全巻(1~23巻)や『~公式ファンブック鬼殺隊見聞録・弐』(いずれも集英社)などのコミックスが非常によく売れたため、2桁増となった。定期誌のみに限ると、前年同月が閏年で搬入日が当月より1日多かったこともあり、大幅なマイナスとなっている。書籍は返品が改善し当月もプラスとなった。
書店店頭の売り上げは、書籍が約2%増。好調な分野が多く、中でも文芸書は約20%増。芥川賞を受賞した宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)が45万部へとさらに伸長した。児童書は「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」(偕成社)などの読み物、絵本、2月期に新刊が相次いだ学習漫画など各ジャンルが好調で、約10%増となった。
雑誌の売り上げは、定期誌が約3%減、ムックが約10%減。コミックスは約30%増。コミックスは2ヵ月連続で3割増となり、勢いが続いている。

シロキヤ社長・群馬組合理事長の竹内靖博氏/レソト王国名誉領事に就任/社内に領事館「文化交流に努力」

シロキヤ(群馬県桐生市)社長で群馬県書店商業組合理事長の竹内靖博氏がレソト王国の名誉領事に任命された。3月4日、同国のパレサ・モセツェ大使が同社を訪問し、社内3階に領事館の看板を設置した。桐生市に外国の領事館が開設されたのは市制100年の歴史で初めて。
同国は周囲を南アフリカに囲まれた立憲君主制国家で、1966年にイギリスから独立。首都はマセル。ソト族が住む。公用語は英語とソト語。人口は210万人。面積は3万平方キロメートル(四国の1・6倍)。
竹内氏は、知人が同国大使館(東京都港区)で秘書官として働いており、地域で書店を経営しつつ社会貢献活動を積極的に行ってきた信頼性から、同国から名誉領事就任を要請された。
竹内氏は「両国間の関係強化に努力する。書店経営の経験を活かし、文化面の交流も行っていきたい」と意欲を語った。
モセツェ大使は「日本人のレソト観光、レソトへの日本企業誘致、日本の学校教育におけるレソト人英語教師の活用が進むよう、助力してほしい」と協力を期待した。

『あるヘラジカの物語』が受賞/JRAC「親子で読んでほしい絵本大賞」

JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC、洞本昌哉代表幹事=ふたば書房)は3月16日、東京・千代田区の出版クラブで第2回「親子で読んでほしい絵本大賞」の贈賞式を開催した。
同賞は、JRAC会員44名からなる選考委員が、出版文化産業振興財団(JPIC)発行の季刊誌「この本読んで!」で紹介された過去1年間の新刊絵本400冊の中から入賞作品12冊を選出。その12冊をJRAC会員が読んで、「親子で読んでほしい絵本」1位から3位を選び投票、集計し大賞作品を決定した。今回最終選考の投票に参加した会員は104名で、大賞受賞作『あるヘラジカの物語』(原案・星野道夫、絵と文・鈴木まもる/あすなろ書房)をはじめ入賞12作品が選ばれた。入賞作のフェアを4月下旬以降に全国書店で実施するほか、JRAC会員がおはなし会などで積極的に入賞作を紹介していく。
大賞受賞作は、写真家の故・星野道夫氏が遺した1枚の写真から着想を得て、交流の深かった鈴木まもる氏が描いた作品。鈴木氏と星野氏の妻の直子氏に表彰状を贈呈した。

読者が選ぶビジネス書グランプリ/『シン・ニホン』が受賞

ビジネス書籍の要約サービスを手掛けるフライヤーは2月16日、東京都千代田区のグロービス経営大学院東京校で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」の授賞式を開き、オンラインで配信。総合グランプリに安宅和人『シン・ニホンAI×データ時代における日本の再生と人材育成』(ニューズピックス)が選ばれた。同書は政治経済部門の1位も受賞した。
各部門の受賞作は次の通り。
▽イノベーション部門=堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社)▽マネジメント部門=石井遼介『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)▽政治・経済部門=安宅和人『シン・ニホンAI×データ時代における日本の再生と人材育成』(ニューズピックス)▽自己啓発部門=鈴木祐『科学的な適職4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』(クロスメディア・パブリッシング)▽リベラルアーツ部門=デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント『LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界』(東洋経済新報社)▽ビジネス実務部門=両@リベ大学長『本当の自由を手に入れるお金の大学』(朝日新聞出版)▽特別賞=永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)

コロナ禍の読書推進活動アンケート/休校中74%が読書呼びかけなど実施/高橋松之助記念顕彰財団

高橋松之助記念顕彰財団(浅野純次理事長)は、「朝の読書大賞」歴代受賞校全42校に対して「コロナ禍における読書推進活動アンケート」を実施し、このほど結果を冊子にまとめた。
昨年3月からの休校中に、児童・生徒に対して読書の呼びかけ等、何らかの読書推進活動を行った学校は74%。具体的には、家読(うちどく)を勧めたり、登校日に朝の読書を実施。また、貸出冊数上限を2冊から5~10冊に増やすなどの取り組みを行った。
休校措置解除後、朝の読書ならびに読書活動を例年通り実施している学校は74%、段階的に実施している学校は26%、(ほとんど)できていない学校は12%だった。
コロナ禍で感じた読書の効果・影響については、「休校明けは本の貸出冊数が減ると予測していたが、予想を上回る貸出冊数となり、児童が本が好きであることが分かった」「休校の時、本好きの子どもは読みたい本が読めず、ストレスになったようだ。外出できない時こそ本の力が必要と感じた」などの意見が出た。
今後の課題としては、学校図書館の充実や学校図書館を活用した授業の工夫、学校でのタブレット普及による電子書籍と紙の本の読書活動をどう両立させるかなどが挙げられた。
書店や出版社、出版業界への要望では、子どもたちが良質な本に出会い、紙の本の文化が継承されていくよう、多種多様な本を出版してほしいなどの意見が寄せられた。

JPRO「BooksPRO」/出版社系注文サイトと連携開始

日本出版インフラセンター(JPO)は、出版情報登録センター(JPRO)の書店向け出版情報ポータルサイト「BooksPRO」のシステムを改修し、3月24日から出版社系注文サイト「s―book」「Webまるこ」「Web HotLine」「一冊!取引所」との連携を開始した。また、「Bookインタラクティブ」とも6月末に連携を行う予定で、総計150社を超える出版社の商品が対象となる。
BooksPROでは、注文サイトで取り扱いがある場合、商品ページにリンクバナーが表示され、当該サイトを通じ即時に注文ができるようになる。同様に、BooksPROの販促情報ページからも、ひもづいている商品の注文ページに直接つながる。このシステム連携を利用するためには、書店はBooksPROのほか、連携対象の注文サイトでユーザー登録していることが必要。

新社長に夏野剛氏/松原社長は取締役副会長に/KADOKAWA

KADOKAWAは3月25日に開催した取締役会で、夏野剛取締役(ドワンゴ代表取締役社長)が代表取締役社長に、山下直久取締役が代表取締役に昇任する役員人事を内定した。6月22日開催予定の定時株主総会及び取締役会で正式決定する。
松原眞樹代表取締役社長は代表権を持たない取締役副会長に、井上伸一郎代表取締役は顧問に就任する。また、J‐GUIDEMarketing常務取締役の周欣寧氏が取締役に、鵜浦博夫氏が社外取締役に新任、社外取締役の高須武男氏は退任する。
〔役員体制〕
21年6月22日付
取締役会長角川歴彦
取締役副会長松原眞樹
代表取締役社長
夏野剛
代表取締役山下直久
取締役安本洋一
同加瀬典子
同川上量生
同周欣寧
社外取締役鵜浦博夫
同森泉知行
同船津康次
同ジャーマン・ルースマリー
常勤監査役髙山康明
同渡辺彰
社外監査役渡邊顯
同菊地麻緒子

トーハンとメディアドゥが資本業務提携/書店のデジタル事業参画を支援

トーハンは3月25日、電子書籍流通最大手のメディアドゥと資本業務提携契約を結んだと発表した。
トーハンは保有する自己株式を第三者割当の方法でメディアドゥに割り当てるとともに、メディアドゥが第三者割当増資で発行する新株式の総数を引き受け、約29億円を相互出資し株式を持ち合う。メディアドゥはトーハンの筆頭株主となる。トーハンはこの提携により、地域の書店がデジタル事業に参画でき、紙の本も電子書籍も販売できる新しいサービスを提供していきたいとしている。
両社は、地域の書店が紙の本に加えてデジタルコンテンツも店舗で販売できるスキームの構築を進める。メディアドゥの持つ技術を駆使し、読者が店頭で自由に本を選び、本のバーコードを読み取るなどの簡単な方法で電子版も購入できる新しい仕組みを目指す。
一般に流通する電子書籍だけでなく、キラーコンテンツとして、メディアドゥのブロックチェーン技術を活用したリアル書店限定の電子書籍やデジタル特典(音楽や動画も含む)付雑誌などの企画を検討。デジタル技術を活用した店頭フェアやイベントなども企画し書店への送客を積極的に行う。店頭での電子書籍販売だけでなく「デジタル教科書やデジタル教材」、「電子図書館」についても、地域の書店が流通に参画できるよう検討を進める。
その他、トーハンが目指すマーケットイン型出版流通実現のため、メディアドゥの出版マーケティングサービス「NetGalley」(書籍のゲラを電子データで書店員や図書館司書等に配布するサービス)や、開発中の「出版ERP」(出版物の製作、販売情報等を一元管理する出版社向けシステムや、必要な書誌情報を自動配信するシステム)を活用した提携についても協議検討を進めているとしている。

トーハン新本社、5月10日に業務開始

トーハンが東京・新宿区の現社屋西側隣地で行っていた新社屋建築工事がこのほど完了し、左記の通り移転、業務を開始する。
新社屋住所=〒162―8710東京都新宿区東五軒町6―24
※従来と変更なし
新社屋業務開始日=21年5月10日(月)

日本文芸社を完全子会社化/メディアドゥ

メディアドゥは、日本文芸社の発行済全株式をRIZAPグループから取得し、3月30日付で完全子会社化した。
メディアドゥグループは、出版プラットフォーマーを目指す「インプリント事業」に注力しており、19年10月にはJIVEを買収。ここに日本文芸社が加わることで、複数の出版社がそれぞれのブランドを維持しつつ、管理機能やノウハウ、在庫・生産管理のシステムなどを共有し、効率的な出版プロセスの構築を目指す。

日販GHD組織改定/事業統括室を設置

日販グループホールディングス(日販GHD)と日本出版販売(日販)は3月22日、2021年度の組織改定・職制人事体制を発表した。
日販GHDは、グループガバナンス及びグループ横断的な経営・事業企画機能の強化を目的として「事業統括室」を設置し機能を一元化した。
日販は、かねてより取り組む「出版流通改革」について新たなフェーズに入ることから、各種テーマの具現化と実行に備えた組織改定を行った。
日販GHD
【室・部組織】
▽事業統括室を新設する。▽社長室、グループガバナンス室、不動産管理部を廃止する。
日本出版販売
【室・部・支社組織】
▽社長室を置く(部格に昇格)。▽管理本部に人事部を新設する。▽物流本部に運輸部を新設する。▽監査室、経営戦略室を廃止する。▽物流本部輸配送改革推進室を廃止する。

2月期は前年比4・4%増/初めて10ヵ月連続前年超え/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの2月期店頭売上は前年比4・4%増。2008年の集計開始以来初の10ヵ月連続の前年超えとなった。
書籍は0・4%減。文芸書、ビジネス書、専門書、児童書、新書の5ジャンルで前年を上回った。文芸書は、芥川賞受賞の『推し、燃ゆ』(河出書房新社)が引き続き好調。ビジネス書は『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社)、『人は話し方が9割』(すばる舎)などが売上を伸ばし、10ヵ月連続のプラス。
雑誌は7・4%減。月刊誌は、『推し、燃ゆ』が掲載された『文藝春秋3月号』(文藝春秋)や、『リンネル4月号』(宝島社)が売上を牽引した。
コミックは24・7%増で17ヵ月連続のプラス。雑誌扱いコミックの新刊は、『鬼滅の刃公式ファンブック鬼殺隊見聞録・弐』や『ONEPIECE98』が伸長。既刊は、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』(いずれも集英社)が引き続き好調だった。