全国書店新聞
             

令和4年12月15日号

中小小売商サミット/小売8団体が中小企業庁と懇談/日書連、本の競争入札廃止などを要望

日書連など小売8団体で構成する全国中小小売商団体連絡会(小売連絡会)は12月1日に東京・千代田区の経済産業省本館で第21回全国中小小売商サミットを開き、中小企業庁の角野然生長官ら幹部と懇談。日書連の矢幡秀治会長は書店業界の現状を報告して、①国や地方自治体による本の競争入札の廃止、②出版物への軽減税率適用、③学校教育デジタル化についての慎重な検討、④キャッシュレス決済手数料の軽減――の4点を要望した。終了後、小売連絡会一行は衆議院第一議員会館に松野博一官房長官を表敬訪問してサミット宣言文を手渡した。
〔松野官房長官を表家訪問〕
サミットでは、サミット実行委員長の全国商店街振興組合連合会・阿部眞一理事長があいさつ。阿部理事長は、新型コロナウイルス感染症による消費の落ち込みに加え、国際情勢の緊迫化等に起因する物価高騰による消費のさらなる落ち込みという難局に直面していると指摘。補正予算で中小事業者へ向け各種支援策が盛り込まれたことに謝意を表するとともに、物価高騰等の影響の長期化を視野に入れた各種支援策の継続・拡充と思い切った個人消費喚起策の実施を要望した。
中小企業庁の角野長官は、今回の補正予算で約1・1兆円の中小企業支援策を計上しており、資金繰り支援に万全を期すとともに、事業再構築補助金や、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金などを通じて中小事業者を支援していくと説明。また需要喚起策として「がんばろう!商店街事業」の推進で、商店街が行う新たな滞留交流空間の整備や、地域資源を活かした消費の創出を支援していくと述べた。このあと阿部理事長が角野長官にサミット宣言文(別掲)を手渡した。
各団体からの報告で日書連の矢幡会長は、物価高騰でまずは生活必需品からという消費行動で本は後回しとなり、書店は厳しい経営が続いていると説明し、国や地方自治体による本の競争入札の廃止など4点について要望した。このうち競争入札廃止については「出版物は『定価』として価格拘束が認められ、決定権は出版社が有しており、さらに書店の利益率は約20%で固定されているので、その上に競争入札させられると非常に厳しい。競争入札を行うのは主に図書館納入で、我々が売っている本を図書館は無償で提供している。国民が全国どこでも本に触れられることは大切であり、図書館の存在は重要だと理解しているが、入札して安く仕入れるというのはいかがなものか。図書館と書店が一緒にやっていくためにぜひお願いする」と訴えた。
〈第21回全国中小小売商サミット宣言〉
「全国中小小売商団体連絡会」は、全国各地域において地域住民の生活を支え、また地域コミュニティの一員として、地域社会への貢献や地域経済の発展に資するため活動している8つの中小小売商業者団体で構成する組織である。
現在、中小小売商業者は、相次ぐ自然災害、新型コロナウイルス感染症の影響長期化による国内消費の落ち込みに加え、国際情勢の緊迫化、為替変動等に起因するエネルギー及び原材料価格の上昇と物価高騰の影響による個人消費の更なる落ち込み懸念など過去に経験のない難局に直面している。
このため、政府においては内外情勢への迅速な対応の継続と情報発信による社会的経済的安心感の醸成とともに、苦境にある中小小売商業者に対する支援強化を図るために以下の措置を講ずるよう強く要望する。
1.中小小売商業者への事業継続支援と消費喚起策の実施
(1)厳しい状況にある中小小売商業者に対し、新型コロナウイルス感染症の影響長期化を踏まえた資金供給支援拡充、事業再構築補助金等の拡充、雇用調整助成金の特例措置延長、電気料金等引下げ及び省エネ設備導入支援、固定資産税等の負担軽減措置、高度化融資等要件緩和を図ること。
(2)個人消費を喚起するために、国、地方公共団体が連携し地域の実情に応じた需要喚起策を講じるとともに、インバウンド促進支援、そして最大規模となるプレミアム商品券事業の実施を検討すること。
2.地域住民の生活を支え地域の社会経済に貢献する中小小売商業者への支援
(1)地域の持続的発展に向けて中小小売商業者等が行う街の環境・施設整備、賑わい創出等、多様性のあるまちづくり創出への支援策を講じるとともに事業承継支援の拡充を検討すること。
(2)新しい生活様式に対応するためのデジタル化、キャッシュレス化、サイバーセキュリティ強化等を推進するための基盤整備支援と人材育成、専門家派遣等の支援策を講じること。
3.中小小売商業者に対する各種優遇税制の維持と拡充
(1)消費税関連について
①インボイス制度は、中小小売商業者に過度な事務負担、免税事業者の取引からの排除の可能性が高いことから、十分な検証を行い、実施の是非は慎重に検討すること。
②小規模・零細事業者の事務負担を軽減するため、簡易課税制度及び事業者免税点制度を維持するとともに、適用事業者の範囲拡大、免税点の引き上げを図ること。
(2)法人事業税外形標準課税の中小企業への適用について
外形標準課税を資本金1億円以下の中小企業には適用しないこと。
(3)中小企業関係税制の特例制度の延長等について
法人税率軽減措置の延長、中小企業経営強化税制及び中小企業投資促進税制の延長、地域未来投資税制の拡充・延長、中小企業防災・減災投資促進税制の拡充・延長、DX投資促進税制の拡充・延長を図ること。
令和4年12月1日
第21回全国中小小売商サミット

出版業界の新春行事

【書店関係】
[静岡]
◇静岡県書店商業組合新年総会=1月26日(木)午前11時から、静岡市葵区のレイアップ御幸町で。
[大阪]
◇令和5年大阪出版販売業界新年互例会=1月10日(火)午後2時から、大阪市中央区のザ・ランドマーク・スクエア・オオサカで。[京都]
◇令和5年京都府出版業界新春を祝う会=1月11日(水)午後4時半から、京都市中京区のホテルオークラ京都で。
【取次関係】
[日教販]
◇第72回日教販春季展示大市会=1月11日(水)午後1時から同31日(火)午後5時まで特設サイトでオンライン開催(https://www.nikkyohan.co.jp/special/ichikai/2023/)。各団体代表あいさつ、書店向け研修会など予定。
【関連団体】
[日本出版クラブ]
◇出版関係新年名刺交換会=1月6日(金)正午から、東京都千代田区の出版クラブビルで。
[書店新風会]
◇新年懇親会=1月11日(水)午後5時半から、東京都新宿区のハイアットリージェンシー東京で。
[悠々会]
◇新年会=1月13日(金)午前11時半から、東京都千代田区の帝国ホテルで。
[全国医書同業会]
◇新年互例会=1月6日(金)正午から、東京都千代田区の帝国ホテルで。
[出版梓会]
◇第38回梓会出版文化賞贈呈式=1月12日(木)午後5時半から、東京都千代田区の如水会館で。

年末年始の日書連事務局体制

年末年始の特別体制により、日本書店商業組合連合会事務局の業務は、年内は12月27日(火)午後5時半をもって終了いたします。年明けは1月4日(水)午前9時より通常業務に復します。ご了承ください。
日本書店商業組合連合会事務局

公正な競争環境の整備など期待/藤原理事長、書店議連の活動説明/宮城組合総会

宮城県書店商業組合は11月18日、仙台市青葉区のホテルモントレ仙台で第41回通常総会を開き、会場出席15名、書面議決書提出48名、計63名が出席した。
総会は梅津清太郎専務理事の司会で進行。開会あいさつで藤原直理事長は「ここ数年続くコロナ禍で日書連は理事会や委員会の活動が思うようにできず、粗利30%以上獲得運動も進んでいない。一方、全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)で状況改善への議論が開始された」として、11月2日に開催された書店議連の総会で書店産業振興のための経済対策の実施、出版物への消費税軽減税率適用、図書館への図書納入の際の入札値引きについて公正な競争環境の整備、公共図書館の「複本」「新刊本の貸出不可期間」について一定のルール設置――などを要望したことを報告。「今後も読書推進や書店経営継続のための活動にさらなる協力をお願いする」と述べた。
引き続き藤原理事長を議長に議案審議を行い、令和4年度事業報告、決算報告、令和5年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
総会終了後、永年勤続者表彰を行い、30年勤続4名、その他13名を表彰した。(佐々木栄之広報委員)

組合加入の意義確認できる「場」創出へ/別所理事長を再選/三重総会

三重県書店商業組合は11月26日、津市の三重県教科書特約供給所で第37回通常総会を開催し、組合員31名(委任状含む)が出席した。新型コロナウイルス感染予防の観点から委任状での出席を呼びかけ、本人出席は最少人数とした。
総会は石垣副理事長(北洞書店)の司会で進行し、はじめに別所信啓理事長(別所書店)があいさつ。「組合活動は大変厳しい状況だが、健全な活動を行うため、各種手数料の値上げも含めた抜本的な財政健全化を決断する時期に来ている。書店経営が厳しい中、少なからぬ賦課金を支払っている組合員に、組合加入の意義を再確認し参画していただける『場』『環境』を創出することが必要」と述べた。
引き続き石井理事(石井書店)を議長に議案審議を行い、令和3年度事業報告、収支決算、監査報告、令和4年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
任期満了に伴う役員改選では、理事12名、監事1名が重任。正副理事長、専務理事を全員再選した。
また昨年同様、新型コロナウイルス感染症対策で、総会終了後の懇親会は取り止めた。
[三重組合役員体制]
▽理事長=別所信啓(別所書店)
▽副理事長=川口力(川口書店)、石垣直人(北洞書店)
▽専務理事=磯田智(井筒屋書店)
(冨森康宏広報委員)

秋の読者還元祭2022/11万9938件の応募/前年から78%大幅増加

日書連と「本の日」実行委員会は12月15日、「読書週間×本の日秋の読者還元祭2022」の実施報告書を公表した。有効応募件数は11万9938件と、前年の6万7313件に比べて78・2%増加した。
昨年に続き「本の日」キャンペーンとのコラボレーションが相乗効果を生んだことに加え、今年は秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」で読書推進キャンペーンが業界横断で活発に行われたこと、コロナの落ち着きもありイベントを求める多くの読者が書店店頭を訪れたことが奏功したと見られる。
読者還元祭は、日書連が毎年春と秋に行ってきた書店くじに代わる店頭活性化・販売促進策として2021年春からスタート。2年目の今年も「本の日」との合同企画として規模を拡大し、10月27日~11月23日までの28日間実施した。賞品は図書カードネットギフト1万円分×200本、同3000円分×500本、同1000円分×1500本。賞品総額500万円。
書店はQRコード付ポスターを店頭に掲示し、一部書店は書籍・雑誌を一定金額購入した読者にしおりも配布。読者はスマートフォンなどでQRコードを読み込み、キャンペーンサイトにアクセスして必要事項を入力して応募。12月下旬までに、図書カードネットギフトを当選者2200名のメールアドレスへ送信予定。

物価高による消費意欲減退を懸念/キャッシュレス手数料負担も重荷に/秋田総会

秋田県書店商業組合は11月7日、秋田市の加賀谷書店本社で第36回通常総会を開催した。昨年に続き新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から書面議決書の提出を要請し、本人出席を限定して出席組合員16名(委任状含む)で行った。
総会は平野左近専務理事(ひらのや書店)の司会で進行し、はじめに加賀谷龍二理事長(加賀谷書店)があいさつ。新型コロナウイルスの影響に触れ、「感染者数は増減を繰り返しているが、政府による行動制限が解かれたことで街中に人が戻ってきた。しかし戦争と円安による物価高で消費意欲が削がれている。ガソリンの値上がりが止まらず配達を含む経費の掛かり増しが気がかりだ。コロナ禍でキャッシュレス決済の利用率が上がってきているが、他業種と違い比較的少額の利用が多いので、決済手数料負担や入金処理が大きな問題になっている」とと懸念を示した。
引き続き加賀谷理事長を議長に選任して議事を行い、第1号議案から第7号議案まですべての議案を原案通り可決決定した。
(石川信広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「コロナ禍でも続けたこと」/愛知・近藤商店代表取締役・近藤五三六

書店組合の活動といえば書店、取次さん、版元さんの「三位一体」で活動することが多いのですが、愛知県では外部の人(お客様など)と触れ合えるイベントとしてサン・ジョルディフェスティバル名古屋を私が高校生の頃から開催しています。ここ3年間中止になってしまい、淋しい思いでいます。
もうひとつ、10月になると県で「青少年によい本をすすめる県民運動」が行われ、園児や小学生にハガキ大の用紙に読んでよかった本についての感想や友達にお勧めするコメント、そしてイラストを書いてもらい、主に学校単位で応募してもらっています。その応募の多かった園や学校に出版社さんから寄贈いただいた本をお届けしています。今年で61回目にもなります(近藤商店の創業年と一緒なので覚えやすい)。
先日は組合事務所まで行き、約10人がかりで本の仕分け作業をしてきました。そして各々の地域の学校へ本を届けます。私の持って行く学校は小規模校が多く、教育事務所の方と一緒に寄贈に行く時は「式典」までやっていただけるほど喜んでいただいています。児童会長さんや図書委員さんに感謝の言葉を言ってもらうと毎回、こちらも「仕分け作業は大変だったけどやって良かったな」と思います。
コロナ禍の中でこの運動だけは中止とならずに読書の習慣付けの活動を続けてこられたことに感謝です。

「朝の読書」「文字・活字文化推進」大賞の贈呈式/高橋松之助記念顕彰財団

読書推進運動と文字・活字文化振興に貢献した学校などを表彰する第15回高橋松之助記念「朝の読書大賞」「文字・活字文化推進大賞」(高橋松之助記念顕彰財団主催)の受賞者が決まり、10月24日、東京・千代田区の出版クラブホールで贈呈式が開かれた。
朝の読書大賞は嬉野市立久間小学校(佐賀県嬉野市)、高崎市立第一中学校(群馬県高崎市)、和歌山県立田辺中学校・高等学校(和歌山県田辺市)、文字・活字文化推進大賞は三郷市教育委員会(埼玉県三郷市)が受賞し、それぞれに賞状、トロフィーおよび副賞30万円が贈られた。
主催者を代表してあいさつした同財団の浅野純次理事長は「読書ほど継続が大事なものはない。受賞者の皆さんはこれがゴールではなく、地元や周辺の自治体を巻き込んで、さらに読書推進の活動を広げてほしい」と求めた。
続いて、柳楽節雄理事が選考経過を報告し、選考顧問で大正大学教授の片山善博氏が「学校図書館は司書が孤軍奮闘している光景があるが、校長をはじめ学校全体の支援があれば良い仕事ができる。教育委員会が先頭に立って読書教育や読書環境の整備に力を入れてほしい。学校の担任や卒業生が薦める本は児童・生徒に刺激的であり、様々な工夫をしていることが今回の受賞につながった。これからも子どもたちのために奮闘してほしい」と講評。各受賞者に賞を贈呈した。

朝日新聞朝刊で帯コン紙上表彰式/大阪組合

大阪府書店商業組合(深田健治理事長)は11月12日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
読書推進委員会は11月12日の朝日新聞朝刊で大阪こども「本の帯創作コンクール」の紙上表彰式を行ったことを報告した。
定款・規約等委員会は理事削減案・委員会統合案を提出。12月定例理事会で方向性を出すことにした。
経営活性化委員会は富士山マガジンから受けた雑誌販売の提案について検討することとした。
(石尾義彦事務局長)

日書連のうごき

11月1日 本の日ブックカバー大賞表彰式に矢幡会長が出席。
11月2日 JPO運営幹事会に事務局が出席。書店議連総会に矢幡会長、春井副会長が出席。
11月7日 野間読書推進賞贈呈式に矢幡会長が出席。定期会計監査。
11月9日 書店大商談会実行委員会に矢幡会長が出席。
11月17日 出版倫理協議会に渡部副会長が出席。JPO運営委員会(ウェブ)に事務局が出席。図書コード管理委員会(ウェブ)に藤原副会長が出席。
11月18日 九州雑誌センター取締役会(ウェブ)に矢幡会長が出席。新聞之新聞新年号インタビューに矢幡会長が出席。書店再生支援財団理事会に髙島、平井両理事が出席。
11月21日 文化産業信用組合理事会に矢幡会長が出席。JPIC理事会・評議員会に矢幡会長、春井副会長が出席。
11月22日 全国書店新聞新年号インタビューに矢幡会長が出席。
11月24日 全国小売商連絡会に事務局が出席。雑誌コード管理委員会(ウェブ)に柴﨑副会長が出席。出版物関係輸送懇談会に事務局が出席。書店議連幹部会に矢幡会長が出席。
11月28日 流通白書打ち合わせに事務局が出席。出版ゾーニング委員会に渡部副会長が出席。読書推進委員会。読書推進活動補助費審査会に矢幡会長、春井副会長が出席。
11月30日 日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。

『明治・大正・昭和の出版が歩んだ道』/能勢仁、八木壮一両氏が上梓

ノセ事務所代表で書店クリニック・出版コンサルタントの能勢仁氏と八木書店ホールディングス代表取締役社長の八木壮一氏はこのほど、共著『明治・大正・昭和の出版が歩んだ道』を出版メディアパルから上梓した。
近代出版の誕生から現代まで150年間の軌跡を解き明かした入門書。日本書籍出版協会が1968年に編纂・発行した『日本出版百年史年表』に記載された史実をテーマごとに分類整理し、独自の解説を試みた。シリーズ企画として『昭和の出版が歩んだ道』(2013年刊)、『平成の出版が歩んだ道』(2020年刊)の2冊をすでに刊行しており、今回で「近代出版が歩んだ道」3部作が完成。日本の出版150年の歴史を俯瞰できるシリーズになった。
同書は①明治の出版史探訪②大正の出版史探訪③昭和戦前の出版史探訪④昭和戦後の出版史探訪⑤昭和後半の出版と再販制度⑥古書業界と神保町の150年⑦明治・大正・昭和の出版創業記⑧回想〝本と読者をつなぐ知恵〟――の8章で構成。⑥を八木氏、他は能勢氏が執筆している。
第4章・12「戦後の書店事情」では、「本を売る〝知恵と心〟を目指して、書店の明日を考える日書連の登場」というタイトルで、日書連の歴史・活動の解説に2ページを割いている。「会員が減少している現在、今こそ求められることは一層の結束である」と能勢氏は提言する。
出版史を学ぶ人や出版界に興味のある人に広く読んでほしい1冊。A5判、174ページ、定価1980円(税込)。

県代表の責務を負い活動/組合組織・運営の強化に力入れる/安永理事長を再選/福岡総会

福岡県書店商業組合は11月24日、福岡市中央区の福岡県教科図書で第44期通常総会を開催し、組合員156名(委任状、書面議決書を含む)が出席した。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から昨年同様に少人数による本人出席での開催となった。
総会は加来晋也理事(朝日屋書店)の司会で進行し、森松正一副理事長(森松尚文堂)の開会のことばに続き、安永寛理事長(金修堂書店)があいさつ。「福岡組合は、福岡県や福岡市をはじめとする『対公共機関』に対して福岡県を代表する唯一の団体。その責務を負いながら対外交渉を行っていく」と述べ、福岡組合の発展のため努力してほしいと呼びかけた。
長谷川功常務理事(ブックイン金進堂)を議長に議案審議を行い、第44期事業報告・委員会活動報告、収支決算報告、監査報告、第45期事業計画案・収支予算案、組織案・役員改選の6議案を原案通り承認可決。役員改選では安永理事長をはじめ全役員を再選した。
第45期事業計画について安永理事長は「コロナの感染状況、ウクライナ情勢の長期化、店頭売上高の16ヵ月連続マイナスなどが、書店経営に大きな影響を与えることを懸念する。福岡県選出の自民党衆議院議員に『全国の書店経営者を支える議員連盟』への参加要請を行った」と述べ、①福岡組合の組織・運営の強化②再販制度下における書店の役割の明確化③取引慣行の弊害是正④ネットワーク化による情報・物流の改善⑤読書推進と文字活字文化の振興⑥万引防止・青少年健全育成の周辺整備――の6項目の達成に向けて引き続き尽力すると宣言した。
白石隆之副理事長(白石書店)の閉会の辞で総会を終了した。
[福岡組合役員体制]
▽理事長=安永寛(金修堂書店)
▽副理事長=森松正一(森松尚文堂/麒麟書店)、白石隆之(白石書店)
(加来晋也広報委員)

合同新年会の中止決定/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は11月7日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催した。
志賀理事長は11月2日に大阪で開催された「BOOKEXPO」を視察したことを報告。寺下徹副理事長は税理士事務所でインボイス制度の説明を受けた旨を報告し、適格請求書発行事業者登録番号を取得することを了承した。また、2023年度合同新年会はコロナの感染状況を鑑みて中止することを決定した。
(事務局・髙橋牧子)

ABC雑誌発行社レポート2022年上半期雑誌販売部数

日本ABC協会は2022年上半期(1~6月)雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載したのは32社107誌。各雑誌部数の前年同期比の平均(既存誌ベース)は、週刊誌94・81%、月刊誌87・95%、合計89・61%となった。報告誌の状況は、光文社『Mart』は報告を中止。主婦と生活社『JUNON』の雑誌ジャンル・カテゴリ区分が、「女性ヤング誌」から「女性ティーンズ誌」へ変更となった。講談社『with』は発行周期を月刊から不定期刊に、『おともだち』は月刊から年5回刊に、『たのしい幼稚園』は月刊から年6回刊に、中央公論新社『婦人公論』は月2回刊から月刊に変更した。
一般週刊誌のトップは『週刊文春』の22万8939部で前年同期比10・9%減となった。2位の『週刊現代』は同12・5%減の16万9610部、3位の『週刊新潮』は同6・3%減の13万6569部、4位の『週刊ポスト』は同4・0%減の13万595部と、いずれも部数を落とした。新聞社系は『週刊朝日』が同9・8%減の4万5824部と約1割のマイナス。
男性月刊誌は、ヤング誌の『MEN’SNON-NO』が同44・1%減の3万391部、『smart』が同41・5%減の2万8274部と大幅に落ち込んだ。
ビジネス・マネー誌は、『週刊ダイヤモンド』がデジタル版の伸長により同37・4%増の8万1739部と伸長。『週刊東洋経済』は同5・2%減の4万2374部。『日経ビジネス』はほぼ横ばいの14万8887部、『プレジデント』は同9・7%減の10万5927部だった。
女性週刊誌は、『女性セブン』が同2・5%減の15万6809部、『女性自身』が同1・1%減の14万6488部、『週刊女性』が同11・6%減の6万8922部といずれも減少傾向が続く。
女性月刊誌は、女性ヤング誌の『mini』が同53・1%増の7万1772部と好調。女性ヤングアダルト誌の『sweet』は同48・2%減の5万8522部と落ち込んだ。女性シニア誌の『素敵なあの人』は同37・7%増の5万5682部で、2期続けて前年を上回った。『ハルメク』は17年上期から8期続けていた伸張が21年下期に止まったが、今期は同14・8%増の44万2093部と盛り返した。

取次大手2社2022年年間ベストセラー/総合1位は『80歳の壁』/老後を元気に過ごす秘訣に関心

トーハンと日本出版販売(日販)は12月1日、2022年の年間ベストセラーを発表した。総合1位は両社とも和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎)。2位は、トーハンが『WORLDSEIKYOvol.2・3』(聖教新聞社)、日販が永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)。3位は、トーハンが逢坂冬馬『同志少女よ、敵を討て』(早川書房)、日販が厚切りジェイソン『ジェイソン流お金の増やし方』(ぴあ)だった。集計期間はいずれも2021年11月22日~2022年11月21日。
『80歳の壁』は、80歳を目前に寝たきりや要介護などといった大きな「壁」を乗り越え、長生きするよりも元気でいることを提案し、シニア層のニーズをとらえた。同著者の『70歳が老化の分かれ道』もトーハンは7位、日販は8位にランク入りしている。
『人は話し方が9割』は、日販は2位、トーハンは『人は聞き方が9割』との合計で4位にランクイン。コロナ禍で対面での交流機会が減り、職場のみならず友人・家族とのコミュニケーション不足が不安視される中で、解決に向けての行動に引き続き注目が集まっていることをうかがわせる。
『同志少女よ、敵を討て』はトーハンで3位、日販で5位にランク。デビュー作ながら直木賞候補となって脚光を浴び、その後本屋大賞、高校生直木賞を受賞し、より多くの読者の支持を獲得した。
日販で3位、トーハンで6位に入った『ジェイソン流お金の増やし方』は、簡単にできる節約や投資術などを解説。将来のお金に不安を持つ人々の関心を集めた。
〔トーハン調べ〕
①『80歳の壁』和田秀樹、幻冬舎②『WORLDSEIKYOvol.2・3』聖教新聞社③『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬、早川書房④『人は話し方が9割』『人は聞き方が9割』永松茂久、すばる舎⑤『メシアの法「愛」に始まり「愛」に終わる』大川隆法、幸福の科学出版⑥『ジェイソン流お金の増やし方』厚切りジェイソン、ぴあ⑦『70歳が老化の分かれ道若さを持続する人、一気に衰える人の違い』和田秀樹、詩想社⑧『898ぴきせいぞろい!ポケモン大図鑑上・下』小学館⑨『20代で得た知見』F、KADOKAWA⑩『本当の自由を手に入れるお金の大学』両@リベ大学長、朝日新聞出版
〔日販調べ〕
①『80歳の壁』和田秀樹、幻冬舎②『人は話し方が9割』永松茂久、すばる舎③『ジェイソン流お金の増やし方』厚切りジェイソン、ぴあ④『20代で得た知見』F、KADOKAWA⑤『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬、早川書房⑥『メシアの法』大川隆法、幸福の科学出版⑦『898ぴきせいぞろい!ポケモン大図鑑(上・下)』小学館⑧『70歳が老化の分かれ道』和田秀樹、詩想社⑨『本当の自由を手に入れるお金の大学』両@リベ大学長、朝日新聞出版⑩『私が見た未来完全版』たつき諒、飛鳥新社

単体・連結とも減収で赤字に/店頭実売減少、経費高止まりが影響/トーハン中間決算

トーハンは11月28日、2022年度中間決算(22年4月1日~9月30日)を発表した。コロナ特需の反動による店頭実売の減少や、経費の高止まりの影響を受け、単体売上高は前年比10・5%減の1786億7300万円、営業損失は9億6100万円(前年は5億200万円の利益)、経常損失は5億5000万円(前年は9億5200万円の利益)、中間純損失は6億2000万円(前年は2億7100万円の利益)と赤字決算になった。
単体売上高の内訳は、書籍が同12・9%減の751億7300万円、雑誌が同7・9%減の526億1200万円、コミックが同12・0%減の247億4700万円、マルチメディア商品が同3・2%減の212億8800万円と、4部門すべてで減少した。
返品率は、書籍が同3・3ポイント増の40・5%、雑誌が同0・2ポイント増の48・7%、コミックが同2・1ポイント増の25・0%、マルチメディア商品が同3・6ポイント増の25・2%で、総合で40・2%と同2・1ポイント悪化した。
売上総利益は204億3400万円で同8・1%減。販売費及び一般管理費は213億9500万円で同1・5%減と、経費の伸長率が売上高・売上総利益の伸長率を上回った。販売費のうち送品運賃は、送品金額の推移が抑えられているのに比べ、1キログラム当たりの運賃単価が上昇を続けている。出版社に協力を要請している運賃協力金では、雑誌の超過運賃負担金の制度改定は、9月末現在で641社中412社、書籍の物流・運賃協力金については1580社中1072社から協力するとの回答を得た。また、物流会社への業務委託料も、最低賃金の上昇の影響を受け、送品金額に比べ高止まりしている。一般管理費は、不動産事業の新規展開に伴う租税公課の一時的な増加や、水道光熱費の増加などで前年を0・3ポイント上回った。
子会社26社を含む連結決算は、売上高は前年比10・2%減の1913億8300万円、営業損失は7億4300万円(前年は11億2600万円の利益)、経常損失は6億4100万円(前年は11億1900万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損失は9億5700万円(前年は4億7800万円の利益)。
事業セグメント別の経常損益を見ると、書店系(10社)も売上減少に加え人件費・光熱費等の上昇が影響して赤字に。卸売、メーカー等の「その他」(12社)では、マリモクラフトのキャラクター事業が、書店ルート限定企画「ちいかわ書店」の展開などにより好調だった。
11月28日の記者会見で、小野晴輝専務取締役は「直近の11月の月次店頭POS売上が前年実績を上回り、書店の店頭状況がようやく下げ止まりつつあるという感触がある。新刊書籍、雑誌、コミックの単価上昇もプラスの要素になるとみている」とし、12月からの丸善ジュンク堂書店の取引一本化に加え、社内のコスト管理を下半期も徹底していくことで、「上半期の遅れを取り戻し、通期で黒字化したい」と話した。

江戸川乱歩賞に荒木あかね氏/歴代最年少で栄冠/日本推理作家協会

日本推理作家協会が主催する第68回江戸川乱歩賞(後援=講談社、フジテレビジョン、協力=豊島区)、第75回日本推理作家協会賞の贈呈式が11月7日に東京・池袋の豊島区立芸術文化劇場で開催された。贈呈式は昨年に続き一般読者を招待して行った。
江戸川乱歩賞を受賞したのは、荒木あかね氏『此の世の果ての殺人』(講談社)。日本推理作家協会賞は、長編および連作短編集部門が芦辺拓氏『大鞠家殺人事件』(東京創元社)、短編部門が逸木裕氏『スケーターズ・ワルツ』(小説野性時代2月号)、大山誠一郎氏『時計屋探偵と二律背反のアリバイ』(Webジェイノベル2021年10月12日配信)、評論・研究部門が小森収氏『短編ミステリの二百年1~6』(東京創元社)。
あいさつした同協会の京極夏彦代表理事は「パンデミックはなかなか終息せず、国内外で問題が山積し、不安のいや増す1年だった。それでもエンターテインメント文芸はその力を衰えさせることなく数々の傑作を世に送り出し、おかげで本年も素晴らしい作品を選定することができた。なにとぞ手に取ってご一読いただきたい」と述べた。
江戸川乱歩賞の荒木氏は歴代最年少の23歳7ヵ月での栄冠。「中学3年生の時にミステリー作家を志してから乱歩賞はずっと憧れの賞だったので、受賞の知らせを聞き喜びとともに信じられない思いでいっぱいだった。近所の書店に私の書いた小説が本の形をして並んでいるのを見て、夢がかなったんだとようやく強く実感することができた」と喜びを語った。このあと、荒木氏がミステリー作家を目指すきっかけとなり、憧れの存在だという有栖川有栖氏がサプライズ登場し、花束を手渡した。

「書店実務手帳」23年版/トーハン

トーハングループのメディアパルは11月18日、書店での販売・営業に役立つ資料満載の手帳「書店実務手帳」2023年版を発売した。150×85㍉、260頁、頒価税込950円。
売場別年間スケジュールなど、業務計画を立てやすい各種スケジュール一覧や、出版物及び出版販売の基礎知識、出版統計データ、主要出版社及び各種団体名簿を掲載。その他お役立ち情報として、英会話基本表現、万引犯罪の基礎知識なども収録する。

河出書房新社第59回文藝賞/安堂ホセ、日比野コレコ両氏に

河出書房新社が主催する第59回文藝賞は、安堂ホセ氏『ジャクソンひとり』と日比野コレコ氏『ビューティフルからビューティフルへ』に決まり、11月14日に東京・港区の明治記念館で贈呈式が行われた。
受賞者あいさつで安堂氏は「小説を書いている間にも世界では様々なことが起き、私自身の気分や考えにもグラデーションがある。小説はそういった思念のバリエーションを、その矛盾も含めて描くことができると感じている」。日比野氏は「私にとって小説は、自分という人間の器官という言葉が合っている。感情とか考え方とかをとりあえずそこに投げ込めば済むような感じで、だから生きている限り、私が小説を書くのをやめることは絶対にない」とそれぞれ創作への思いを語った。
主催者あいさつで小野寺優社長は「作家が切実さに突き動かされるように生み出した言葉がどこかで読者の心に刺さることがある。その言葉を待ってる人は、私たちが思うよりも遥かに多いのではないか。私たちは、効率化を求める一方で、1人でも多くの方がその言葉に出会う場を作り、『これは私の話だ』と思える、そんな幸せな瞬間をたくさん作り出さなければいけない」と話した。

地域の読書普及に貢献/団体・個人を表彰/野間読書推進賞

読書推進運動協議会(読進協=野間省伸会長)は11月7日、東京・千代田区の出版クラブビルで第52回野間読書推進賞の贈呈式を開催。団体の部として「萠えぎの会」(群馬県前橋市)、「近江八幡おはなし研究会」(滋賀県近江八幡市)、個人の部として渡邉満州子さん(愛知県北設楽郡)、奨励賞として法崎よし子さん(大分県竹田市)、功労賞として山本清治さん(鹿児島県鹿屋市)をそれぞれ表彰した。
贈呈式で野間会長は「コロナ禍で読書推進運動も様々な制約を受けたが、現場で活躍する皆様の報告を伺い、1人ひとりの方と笑顔を交わしながら手を取り合って本に親しむ時間を持つことの素晴らしさを感じた。皆様が以前に増して活発に、自由に、安全に活動できる日が来ることを願っている」とあいさつした。
受賞者あいさつで、読み聞かせと歳時記飾りの2つを柱に地域の読書推進活動を行っている「萠えぎの会」会長の猿木尚子さんは、「例会で定期的に顔を合わせ、学び合う時間を共に過ごすことで会員の信頼感が生まれ、読むことのスキルアップもできた。皆さん笑顔が素敵で、その心地よさがこの会の一番の魅力だ。賞を励みにこれからも楽しい絵本や、四季折々の季節感ある歳時記を多くの方々に届けていきたい」と話した。

第6回「ロス対策士検定試験」1月に実施/全国万引犯罪防止機構

全国万引犯罪防止機構は2023年1月18日正午~同19日正午、オンラインで第6回ロス対策士検定試験を実施する。試験開始から60分経過すると自動的に試験が終了するため、19日午前11時までに受験する必要がある。
また、同試験の受験対策セミナーを1月5日午後3時~5時にオンラインで実施する。受講料無料。
申し込みは同機構ホームページから。https://www.manboukikou.jp/exam-about/#exam

取次・小売事業が大幅減収/日販の売上高2000億円割る/日販GHD上半期決算

日販グループホールディングス(日販GHD)は11月25日、2022年度上半期(22年4月~9月)決算を発表した。売上高は前年同期比10・8%減の2198億1300万円、営業損失は1億400万円(前年同期は16億4500万円の利益)、経常利益は同99・2%減の1500万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同19・9%増の11億7800万円だった。取次・小売事業で大幅減収となったことが影響し、営業損失を計上した。しかし、取次・小売事業の不振を他事業でカバーし、経常黒字は確保。不動産事業での土地・建物の交換差益により、親会社株主に帰属する中間純利益は増益となった。
事業別では、取次・小売事業が想定以上の市況悪化で減収・赤字となった。一方、海外・雑貨事業は国際情勢や消費行動が変容する中で健闘した。コンテンツ・エンタメ事業は売上・利益ともに拡大し、不動産事業は堅調に推移した。
各事業の業績は次の通り。
▽取次=売上高2006億7600万円(同11・4%減)、営業損失7億6200万円(前年同期は5億9300万円の利益)、経常損失6億3800万円(前年同期は7億2100万円の利益)▽小売=売上高256億6800万円(同12・0%減)、営業損失3億1800万円(前年同期は100万円の損失)、経常損失3億4000万円(前年同期は5300万円の利益)▽海外=売上高34億5000万円(同2・7%増)、営業利益9900万円(同7・4%減)、経常利益9500万円(同13・2%減)▽雑貨=売上高16億2700万円(同9・4%増)、営業利益6400万円(同35・2%減)、経常利益6500万円(同45・7%減)▽コンテンツ=売上高19億7900万円(同45・0%増)、営業利益3億2500万円(同13・6%増)、経常利益3億2600万円(同14・0%増)▽エンタメ=売上高6億800万円(同14・2%増)、営業利益800万円(前年同期は3800万円の損失)、経常利益800万円(前年同期は3800万円の損失)▽不動産=売上高15億9700万円(同1・7%増)、営業利益6億2400万円(同1・0%増)、経常利益5億7900万円(同0・3%増)▽その他=売上高39億5800万円(同3・9%減)、営業損失1400万円(前年同期は9200万円の利益)、経常利益8100万円(同55・8%減)
日本出版販売(日販)の売上高は同11・7%減の1775億4100万円、営業損失は6億2600万円(前年同期は4億3700万円の利益)、経常損失は4億9400万円(前年同期は5億3200万円の利益)、中間純損失は5億8400万円(前年同期は3億4800万円の利益)だった。減収による売上総利益率減少に加え、送品高に占める運賃構成比の上昇、光熱費の高騰も重なり赤字決算となった。
商品別売上高は書籍が同12・7%減の888億5400万円、雑誌が同5・6%減の462億7900万円、コミックスが同14・2%減の314億8100万円、開発品が同11・6%減の113億3400万円といずれも減収となった。
返品率は雑誌が同3・7ポイント減の46・8%と改善したが、書籍は同2・6ポイント増の31・6%、コミックスが同2・5ポイント増の27・5%、開発品が同0・7ポイント増の41・9%と悪化し、合計は同0・4ポイント増の36・3%となった。
奥村景二社長は「日販の売上高が2000億円を切り、マーケットが急速に変化しているという事実に対応する力を持ちえなかった。下期から改革のスピードを上げ、中長期的に利益を出し続ける構造に変える。マーケットに合わせた質の高いトランザクションを増やし、成長ビジネスの創造を拡大していく。当面の課題は書店の構造的赤字の解消と、業界および社内のコスト削減だ」と話した。

10月期は前年比8・1%減/全ジャンルで回復基調に/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの10月期店頭売上は前年比8・1%減だった。雑誌、書籍、コミックともに回復基調となり、全体では前月より5・6ポイント良化した。
雑誌は同6・0%減。月刊誌はなにわ男子が表紙の「Мyojo12月号」(集英社)、週刊誌は9月27日創刊の「隔週刊鉄道車両金属モデルコレクション」(デアゴスティーニジャパン)が売上を伸ばした。
書籍は同5・9%減。児童書は9月30日から開催のニコニコカドカワ祭りも影響して『角川まんが学習シリーズ日本の歴史全15巻+別巻4冊定番セット』(KADOKAWA)が好調だった。新書は『80歳の壁』(幻冬舎)が売上を伸ばした。
コミックは同13・3%減。雑誌扱いコミックは「SPY×FAMILY10」(集英社)、書籍扱いコミックは『乙嫁語り14』(KADOKAWA)が売上を牽引した。

「犯罪小説界の新星に注目!」/「本屋のあとがき」/ときわ書房本店文芸書・文具担当宇田川拓也

国内外の小説を読み漁ることを日々の愉しみとする筆者にとって、2022年最大の収穫は、S・A・コスビー『黒き荒野の果て』(ハーパーBOOKS)であった。
主人公のボーレガードは、かつて車を走らせたら右に出る者のない、プロの犯罪者たちの間で語り継がれる伝説的なドライバーだった。いまは足を洗い、ヴァージニア州で家族とともに自動車整備工場を営んでいたが、経営は傾き、母親の医療費など、まとまった金の必要に迫られる。そこに昔の仕事仲間から声が掛かる。家族のために一度だけと決め、裏稼業に復帰するボーレガードだったが、思わぬ事態が……。
話の骨組みは類型的だが、抜群の人物造形とディテールにより、クラシックの風格と現代的な疾走感を併せ持つ破格の犯罪小説に昇華した本作。本国で大絶賛を巻き起こし、数々の賞を獲得したのも頷ける傑作だが、2023年の早いうちに、この著者の最新作『Razorblade Tears(原題)』が同版元から翻訳刊行されることが決定したという。
筋立ては、こうだ。同性愛者である息子を受け入れられないアイクに、悲しい報せが届く。息子のアイザイアと彼の夫のデレクが、何者かに銃撃され死亡したという。葬儀の後、デレクの父親から犯人捜しを持ち掛けられるも首を横に振るアイクだったが、息子たちの墓が汚い言葉とともに無惨に破壊されたことで復讐に立ち上がる――。犯罪小説界の新星、S・A・コスビー。要注目の逸材だ。