全国書店新聞
             

令和5年4月15日号

紙と電子のコミック市場0・2%増の6770億円/紙は1割以上減、電子は伸びが鈍化/出版科研調べ

出版科学研究所が発行する『出版月報』2月号は、「コミック市場2022」を特集。これによると、昨年の紙と電子を合わせたコミック市場規模は、前年比0・2%増の6770億円で、過去最多を更新した。紙は同13・4%減の2291億円、電子は同8・9%増の4479億円だった。
2022年のコミック全体(紙+電子)の推定販売金額は前年比0・2%増の6770億円で、微増ながら5年連続のプラスとなった。コロナ禍の巣ごもり需要と『鬼滅の刃』などのメガヒットの登場で20年、21年は大きく伸長し、ピークだった1995年を超えて2年連続で過去最高を更新していたが、22年はコロナ禍の特需がほぼ終息してわずかな伸びにとどまり、ヒット作品も前の2年には及ばなかった。紙のコミックス(単行本)とコミック誌を合わせた販売金額は同13・4%減の2291億円。電子コミックは同8・9%増の4479億円で、これまでほぼ毎年2桁増の大幅伸長を続けていたが、22年は急速に鈍化した。出版市場における紙+電子のコミックのシェアは41・5%で同1・1ポイント上昇した。
紙のコミックス単行本(雑誌扱い+書籍扱い)の販売金額は同16・0%減の1754億円。内訳は、雑誌扱いコミックスが同19・4%減の1491億円、書籍扱いコミックスが同10・5%増の263億円で、書籍扱いは3年連続増加。最近は、紙の雑誌を有しない出版社や電子ストアが電子版の連載の中から紙のコミックスを出す場合、書籍扱いで刊行することが多く、市場が拡大している。
平均価格は同4・9%(28円)増の595円と大幅に上昇。内訳は、雑誌扱いコミックスが同4・0%(22円)増の568円、書籍扱いコミックスが同2・2%(17円)増の777円。歴史的な円安・物価高による資材費高騰や物流コストの上昇分を価格に転嫁したケースが多かった。
新刊点数は同5・7%(767点)増の1万4187点。内訳は、雑誌扱いコミックスが同1・6%(145点)増の9417点、書籍扱いコミックスが同15・0%(622点)増の4770点。長年減少傾向だった雑誌扱いコミックスはここ2年増加。増加点数が多かったのは集英社、講談社、秋田書店、コアミックス、ぶんか社、スクウェア・エニックスなど。白泉社、双葉社、竹書房、宙出版などは減少した。書籍扱いコミックスはKADOKAWAが大幅に増加。
売行きの動向をみると、前年に大ブレイクした『呪術廻戦』(集英社)、『東京卍リベンジャーズ』(講談社)が引き続き売れたほか、アニメ化された『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』(いずれも集英社)が新たにブレイクするなど、22年も映像化作品の大ヒットが目立った。
『ONEPIECE』(集英社)は8月公開の映画がシリーズ歴代最高の興行収入を記録し、コミックスも大きく売行きを伸ばした。『SLAMDUNK』(集英社)も12月公開の映画が話題になり、書籍扱いの『SLAMDUNK新装再編版』を中心に売行きが急伸した。異世界ジャンルの代表作『転生したらスライムだった件』(講談社)も初のアニメ映画が11月に公開され、さらに売り伸ばした。サッカーマンガ『ブルーロック』(講談社)は10月にアニメ放映を開始、さらに11月開催のサッカーW杯における日本の活躍が重なって全巻大きく伸長した。
女性向けでは、ドラマ化した『ミステリと言う勿れ』(小学館)や、ジャニーズアイドル主演の実写映画が公開された『ハニーレモンソーダ』(集英社)、『モエカレはオレンジ色』(講談社)などが人気を集めたが、『薬屋のひとりごと』(スクウェア・エニックス)、『うるわしの宵の月』(講談社)など映像化されていないヒット作も多かった。
コミック誌の販売金額は同3・8%減の537億円。15年以降は1割超減少することがほとんどだったが、22年は比較的小幅の減少にとどまった。内訳は、月刊誌が同3・5%減の260億円、週刊誌が同4・3%減の276億円。返品率は同1・9ポイント改善し43・3%。平均価格は同2・6%(10円)増の402円と400円の大台を突破した。創復刊点数はゼロで、ここ30年で初めて。休刊点数は同4点増の6点。年末時点の銘柄数は同6点減の185点だった。
コミック誌は、人気作品の完結など特定の話題、付録、グラビアやアイドル関連などのトピックによって単発で売れる号はあるものの、定期的に買う読者は減少傾向が続く。
電子コミック市場は、同8・9%増の4479億円。統計を開始した14年以降、海賊版サイトの影響が顕著だった時期を除きおおよそ2割以上の成長を続けてきたが、22年は1桁の伸びにとどまった。コロナ禍の巣ごもり需要が落ち着いてきており、各ストアの利用者は増えているものの課金して読むユーザーは定着しつつある。紙で人気の作品や映像化作品が電子でも市場を牽引。また、女性向けの作品を中心に、広告出稿をきっかけに電子からヒットする作品も目立った。

「全出版人大会」5月8日に開催

日本出版クラブは5月8日(月)午後3時、東京・千代田区のホテルニューオータニで第62回「全出版人大会」を開催する。
集英社・廣野眞一社長が大会委員長を務め、第一部式典では古希を迎えた長寿者の祝賀、永年勤続者の表彰を行い、政治学者で東京大学名誉教授の姜尚中氏が講演する。今回は第二部懇親パーティが4年ぶりに開催される。

アクセシブルブックス・サポートセンターを発足/JPO

日本出版インフラセンター(JPO)は3月28日に定例理事会を開き、2023年度の運営体制及び各委員会の委員長を決定した。
4月からアクセシブルブックス・サポートセンター(ABSC)準備会をABSCとして正式に発足。ABSC管理委員会の委員長に小野寺優氏(河出書房新社)が就任した。また図書コード管理委員会の委員長には、村上和夫氏(オーム社)が就いた。
ABSCは秋頃にホームページを開設し、出版社のアクセシブルブックスへの取り組みや、障害者の利用事例などを紹介する予定。ABSCの取り組みについて出版業界内外へ理解促進を図るために、紙とWebで第2号まで発行した「レポート」は、JPOのホームページで電子書籍版に加えマルチメディアDAISY版を公開。第3号は6月発行を予定している。
また、出版情報登録センター(JPRO)の改修に伴い、入力マニュアル改訂版と、国際標準の書籍分類コードであるThema(シーマ)コードに関する資料を作成し、ホームページに掲載した。

「春夏秋冬本屋です」/「熱量を持ちたい」/静岡・焼津谷島屋専務取締役・中野道太

ご縁があって寄稿する機会を戴いた。しばらくの間、拙文へのお付き合い宜しくお願いする。
詳細は割愛させていただくが昨年、弊社の体制が変わった。関係各所に多大なご協力を頂き、現在も地域に根差した書店として引き続き営業させてもらっている。この場を借りてまずは感謝を申し上げたい。自分は変わらず本に関わる仕事を継続させてもらっているが、共に働いてきた父は体制が変わる際に書店に関わる仕事は引退となった。
父の引退と事務所移転も重なり、父の荷物の整理を手伝う機会があった。荷物の中身は40、50年前の雑誌創刊ブーム期に出た雑誌やコミック誌の一部を発売当時に趣味として保管していたものだった。今でも発売されている女性雑誌の創刊号や、もう販売されていない大衆誌など様々な雑誌の創刊号があった。雑誌創刊が多かった当時の華やかな雰囲気がそれらから伝わってきた。現在は雑誌の休刊情報ばかりが飛び交っている。状況は厳しく、非常に寂しい時期が続いている。
様々な創刊雑誌達を見た時に自分が感じたのは、当時の「新たな時代を築こうとしている熱量」だったと最近になって気づいた。ネットとの共存やデジタル化が進む時代に突入しているが、この時代に適応しながら本屋としての売るための熱意と熱量を持って今後も臨みたいと思う。

『がっこうにまにあわない』が大賞/ベビー賞には『いっしょだねいっしょだよ』/JRAC「親子で読んでほしい絵本大賞」

JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC、洞本昌哉代表幹事=ふたば書房)は3月14日、東京・千代田区の出版クラブで第4回「親子で読んでほしい絵本大賞」の贈賞式を開催した。
同賞は、JRACの選考委員50名が、出版文化産業振興財団(JPIC)の季刊誌『この本読んで!』で1年間に紹介された新刊絵本400冊の中から入賞候補作品12冊を選出。最終選考に参加したJRAC会員108名の投票で、大賞に『がっこうにまにあわない』(ザ・キャビンカンパニー=作・絵、あかね書房)を決定した。また、今回から新設したベビー賞には『いっしょだねいっしょだよ』(きむらだいすけ=作、講談社)が選ばれた。フェアを4月下旬以降に全国書店で実施するほか、JRAC会員がおはなし会などで積極的に入賞作品を紹介していく。
ザ・キャビンカンパニーは、阿部健太朗氏と吉岡紗希氏による夫婦2人組の絵本作家。大賞受賞作は、ある理由で「今日は絶対に遅れちゃいけない」と学校へ急ぐ男の子に突拍子もない障害が次々に待ち受ける、スピード感とスリルにあふれる作品。きむら氏のベビー賞受賞作は、仲睦まじい動物の親子が次々に登場する絵本。
贈賞式であいさつした洞本代表幹事は、ベビー賞について「JRACは、絵本だけでなく、文芸作品を中心に活動しているメンバーもいるので、我々が紹介する絵本は少し硬めになる傾向があった。『親子で読んでほしい絵本』というテーマ設定なので、お客様やJRACの仲間からベビー賞を作ってはどうかという声があったため、改めて赤ちゃん絵本としてのベビー賞を設けた」と説明。また、コロナ禍を抜けていよいよ読書活動ができる時期に入ってきているとし、「これから全国の本屋でフェアの展開が始まる。今日をコロナが明けて読書推進の新しいのろしを上げる1日にしてほしい」と述べた。
受賞者あいさつで、ザ・キャビンカンパニーの阿部氏は「どんどんページをめくる推進力のあるお話にしたいということが最初にあり、最後に学校に間に合うのかが争点になった。時間なんていいよというオチもあったが、絵本は子どもが生きていくために必要な何かを与えるものでもあるので、絶対に間に合わせたいと思った」。吉岡氏は「昔に読んだ『走れメロス』のような絵本を描きたかったというのが始まり。時間を忘れる瞬間は、芸術や本、壮大な景色を見た時によく起こるが、そういう瞬間がたくさんあるととても幸福じゃないかと思い、それを絵本の形にしたかった」と意図を明かした。
きむら氏は「僕はリアルな動物の絵を描くのがあまり好きではなく、自分の体を一回通してデザインする表現方法をとっている。でもそれぞれの動物には特徴があって、そこの表現ははずしてはいけない。小さな子どもは動物の色も形もよく理解できていないかもしれないが、日々成長していく中で、絵本の方は単純な形のままでいいのかとなる。子どもの成長とともに見方が変わってくる絵本があっていいと思うし、それに耐えうるだけの表現をしていかないといけないと思っている」と話した。
最後に来賓のJPIC・松木修一専務理事が祝辞。書店が減少傾向にあり売場スペースも限られる中で、ロングセラーの絵本が強く、新しい絵本に焦点が当てられることは少ないと指摘して、「読み聞かせのプロが選んだこれらの作品が、もっと店頭で並べられるようになれば大変うれしい」と述べた。
絵本大賞の2位以下の入賞作品は次の通り。
②『バスが来ましたよ』(由美村嬉々=文、松本春野=絵、アリス館)③『2ひきのカエルそのぼうきれ、どうすんだ?』(クリス・ウォーメル=作・絵、はたこうしろう=訳、徳間書店)④『王さまのお菓子』(石井睦美=文、くらはしれい=絵、世界文化社)⑤『夜をあるく』(マリー・ドルレアン=作、よしいかずみ=訳、BL出版)⑥『えんどうまめばあさんとそらまめじいさんのいそがしい毎日』(松岡享子=原案・文、降矢なな=文・絵、福音館書店)⑦『スープとあめだま』(ブレイディみかこ=作、中田いくみ=絵、岩崎書店)⑧『そだててみたら…』(スギヤマカナヨ=作・絵、赤ちゃんとママ社)⑨『はだしであるく』(村中李衣=文、石川えりこ=絵、あすなろ書房)⑩『へびながすぎる』(ふくながじゅんぺい=作、こぐま社)

日書連のうごき

3月1日 JPO運営幹事会に事務局が出席。定期会計監査。
3月3日 文字・活字文化推進機構理事会に矢幡会長が出席。出版平和堂委員会、平和堂維持会に事務局が出席。
3月9日 本の日実行委員会委員長会議(Web)に矢幡会長が出席。
3月15日 出版労連との意見交換に事務局か出席。
3月16日 JPO運営委員会に事務局が出席。
3月17日 九州雑誌センター取締役会(書面)に矢幡会長が出席。全国中小企業団体中央会理事会に矢幡会長が出席(書面議決)。
3月23日 出版倫理協議会に渡部副会長が出席。
3月26日 JPIC読書アドバイザー養成講座修了式に矢幡会長が出席。
3月27日 日本図書普及取締役会に藤原、春井両副会長が出席。
3月28日 JPO理事会に藤原副会長が出席。定期会計監査。
3月29日 出版クラブ理事会に矢幡会長が出席。JPIC理事・評議員会に矢幡会長

マーケットイン型流通の具現化へ/「enCONTACT」活用呼びかけ/トーハン書店・出版社向け施策説明会

トーハンは3月1日、書店と出版社を対象にオンライン施策説明会「TOHANCOMPASS」の動画を配信。昨年10月にスタートした新しい仕入・配本プラットフォーム「enCONTACT」(エンコンタクト)について、近藤敏貴社長と川上浩明副社長が開発の目的や機能をプレゼンテーションし、積極的な活用を呼びかけた。
トーハンは2019年度から中期経営計画「REBORN」をスタートし、23年度はその最終年度となる。近藤社長は「中でも22年度は新流通構築の武器となる大きな3つの施策が動き出し、いよいよマーケットイン型出版流通の具現化に向けて、REBORN計画は次のフェイズへと移った」として、「DNPとの協業」「マーケットイン型販売契約」、そして書店、出版社、取次をつなぎ、書誌をはじめとする出版情報をより高度に仕入・配本に活用していくための新仕入・配本プラットフォーム「enCONTACT」の3つの施策が新流通構築の武器になると強調した。
enCONTACTは初期の構想段階を含め約5年かけて開発。書店向けウェブシステムと出版社向けウェブシステムの2つのシステムで構成され、昨年10月末に同社グループ書店ならびに一部の出版社に先行してサービスを提供している。
近藤社長はenCONTACTをマーケットイン型出版流通の要になるものと位置付け、「マーケットイン型の出版流通とは、委託制度だけに依拠するのではなく、流通の起点を書店ひいては読者ニーズへと転換し、高すぎる返品率を適正水準へと引き下げ、流通コスト合理化と実売率改善を経て、書店、出版社、取次の業界各者が持続可能な利益を得られる流通の形のこと。ドイツの書籍流通をロールモデルの一つとしている」と説明。「ドイツと日本の最大かつ決定的な違いは近刊情報など出版流通情報の活用度合い。いかにして情報を集約し活用していくか、その意識がドイツは非常に高い。その差異に対するトーハンの回答がenCONTACTだ」と述べた。
ドイツでは業界共通の書籍データベース「VLB」が整備され、登録を経て一般書店流通と定価販売が担保されること、発売の半年~数年前から書誌が登録され、刊行前のプロモーションに時間と手間をかけるため、書店の仕入部数の精度も高まることを説明し、「ここにヒントがある。出版情報の活用レベルをドイツのように高度化していくことが流通合理化の大きなカギになる。ドイツ書籍流通のポジティブな流れを再現することがenCONTACTを通じて実現したいこと。近刊情報の集約と提供を容易にし、かつそれらをサプライチェーンの各ポイントで共有可能なものにする。また、これまでのように刊行後に一生懸命プロモーションを行うのではなく、刊行前から書店やお客様へ商品情報を届けていく。そのようにプロモーションに関する意識の転換を後押しし、ニーズに即した適宜適量流通すなわちマーケットイン型出版流通への構造転換へとつなげていきたい」との考えを示した。
そして、「情報はそこにあるだけでは意味がない。活用できる仕組み、活用する意義があって初めて真価を発揮する。enCONTACTが広く普及し、皆さんに利用されることで、出版流通情報の価値は一層高まる。私たちの考え方や意図が理解されるものと信じている」と語り、積極的な活用を求めた。
続いて、川上副社長がenCONTACTの利用拡大に向けて押さえてほしいポイント、活用してほしい機能を中心に説明。enCONTACTの特徴として①JPRO、BooksPROとのスムーズな連携、②事前申込・配本確認機能に加え、既刊発注機能を持つTONETSVとも連携する体系的な流通情報システム――の2点を挙げ、書店向けウェブシステムと出版社向けウェブシステムの2つのウェブシステムで構成されると述べた。
書店向けウェブシステムのポイントは2つあるとして、「1つは近刊情報収集・事前申込機能。ドイツの書籍流通のように出版情報を徹底的に活用し販売につなげていく。enCONTACTがあれば日々近刊情報を集め、それを元に事前のプロモーションを実施し、お客様に事前予約を呼びかけ、その反応を見て自店の仕入数を検討し、実際に申込まで行える。2つ目は送品予定数の事前確認が可能になること。この機能は書店から特に期待の大きかったもので、店着前にどの商品がどれだけ入荷するか確認することができ、従来よりも早い段階で計画的に売場を作ることができる」とメリットを語り、販売力強化のため活用するよう呼びかけた。
出版社向けウェブシステムのポイントも2つある。「1つ目は取次搬入・仕入に関わる業務がウェブ上で完結できるので、当社の窓口に来る物理的・時間的コストが不要になる。また、JPROデータと連携しており、enCONTACTへの搬入登録にあたってはJPRO登録済み項目の再入力が不要になる。2つ目は近刊情報を広くあまねく発信するための強力なサポートツールになる。これまでは人的・時間的制約で、すべての書店に自社商品の情報を発信することは困難だったが、BooksPROとシームレスに接続しているenCONTACT上であればそれも可能となる。これまで以上に出版社発信の情報が書店に届きやすくなり、出版社の取次対応業務、営業の効率化・省力化に貢献する」とした。
日本出版インフラセンター(JPO)の渡辺政信専務理事は「JPROには新刊書籍の95%が登録され、販促情報も充実している。JPRO、BooksPRO、enCONTACTをフル活用し、書籍市場をもう一度活性化してほしい」と呼びかけた。
扶桑社の梶原治樹営業局担当局長は「JPROに商品情報を登録しているが、enCONTACTはJPROとデータ連携がやりやすく、作業の効率化につながっている。今後は商品情報の登録をもっと早くして、発売前に書店へ商品情報を届けて事前注文・配本につなげ、発売と同時にスタートダッシュで販売展開できるよう努めたい」と語った。
川上副社長は「enCONTACTは情報プラットフォーム。行き交う情報量が多いほど利便性は高まる。そのためにも情報の大本である出版社に積極的に活用してほしい。1月下旬からサービス提供範囲を順次拡大している。できる限り多くの書店、出版社に利用してほしい」と訴えた。

「御書印プロジェクト」3周年/全国393書店参加、押印4万回突破/小学館

小学館と小学館パブリッシング・サービスが事務局を務める「御書印プロジェクト」は3月1日で3周年を迎えた。
御書印とは人と書店を結ぶ印のこと。全国の参加店で書店のオリジナル印を含む3つの印を捺してもらい、訪問した日付と書店員が選んだフレーズ(本のタイトルや1節、キャッチフレーズなど)が記入される。御書印代は1回200円程度かかるが、御書印帖はスタート時に参加店で無料進呈される。
参加書店は47都道府県393店(閉店、対応終了店を含む)になった。参加者は1万8000名、押印回数は4万回を突破した。異なる御書印店で50個の印を集めた巡了者は93名、複数回巡了者は11名になる。7月には台湾・新北市の小小書房が加わる予定。海外では初の拠点となる。
書店別の御書印押印ランキングは、①銀座蔦屋書店(東京都中央区)1726回、②書泉グランデ(東京都千代田区)1016回、③内山書店(東京都千代田区)839回、④ジュンク堂書店池袋本店(東京都豊島区)828回、⑤山陽堂書店(東京都港区)531回。
銀座蔦屋書店を皮切りに紀伊國屋書店京橋店(大阪府都島区)、中西書店(石川県能美市)などで、書店の垣根を越えた「御書印フェア」を開催している。全国の参加書店107店の推薦本を展示・販売し、御書印をPRしている。

地球の歩き方の新井社長らが講演/日販マネジメントセミナー、130名参加

日本出版販売(日販)は3月8日、第59回「日販マネジメントセミナー」を開催し、全国の取引先書店など約130名参加した。2月に御茶ノ水本社7階にリニューアルオープンしたオフィスフロア「オチャノバ」のイベントスペースを会場に、オンライン配信で開催した。
第1講では、地球の歩き方の新井邦弘社長が「地球の歩き方マーケティング戦略」と題し、コロナ禍にどのようなマーケティングで同社の実績をV字回復させたか、またマーケティング戦略はどう変化し、コロナ終息後の展望をどう見ているかについて話した。
第2講では、元ヤクルトスワローズ監督で野球解説者の真中満氏が「前へ進むマネジメント」と題し、チーム活性化の方法論や選手の自主性を重んじた人材育成方針、既成概念にとらわれないマネジメントの大切さについて話した。
第3講では、生活協同組合コープさっぽろの大見英明理事長が「『逆境を味方にする新時代経営』コープさっぽろの実践から」と題し、社会貢献とSDGsの取り組み、経営危機から業績回復を成し遂げた組織風土改革、地域に根差した事業と展望を語った。

日販調査店頭売上/2月期は前年比6・3%減/一部ジャンルで前年上回ったが

日本出版販売調べの2月期店頭売上は前年比6・3%減だった。雑誌は前年の分冊百科創刊号が好調だった影響で1月期に引き続き週刊誌が落ち込んだ。書籍は新書と実用書が前年を上回ったものの、全体は厳しい状況が続く。コミックは前年が人気作品の発売で好調だった影響もあり落ち込んだ。
雑誌は同5・4%減。月刊誌は芥川賞受賞作全文掲載「文藝春秋3月号」(文藝春秋)が売上を牽引した。週刊誌は「週刊ベースボール2月25日増刊号2023プロ野球全選手カラー写真名鑑」(ベースボール・マガジン社)が売上を伸ばした。ムックはJリーグやプロ野球の選手名鑑が好調で、前年を上回った。
書籍は同6・7%減。実用書は「ポケットモンスター」ゲーム攻略本が売上を牽引し、前年を上回った。新書は『日本史を暴く』(中央公論新社)が売上を伸ばし、同2・9%増となった。文芸書は『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)が好調だった。
コミックは同6・1%減。雑誌扱いコミックは「僕のヒーローアカデミア37」(集英社)が好調。書籍扱いコミックは1月期に続き『THEFIRSTSLAMDUNKre:SOURCE』(集英社)が売上を牽引した。

ロングセラー絵本増売企画「ミリオンぶっく」/トーハンが展開中

トーハンはロングセラー絵本の増売企画「ミリオンぶっく」を3月下旬より全国851書店で展開している。累計100万部以上発行された絵本の販売支援企画。対象銘柄は絵本ジャンルのPOS売上の10・2%(22年同社調べ)を占め、児童書コーナーの柱となるロングセラーが揃う。
売場では発行部数上位銘柄を中心に店頭フェアを展開。コーナー作りに役立つ商品紹介や季節フェアを定期的に提案し、絵本の売場作りを通年でサポートする。
また、対象銘柄全点の書誌情報・表紙・対象年齢を紹介する読者向けパンフレットを制作。展開書店で無料配布する。パンフレット内容は、今回新たにミリオンを達成した『おばけのてんぷら』(ポプラ社)、『バムとケロのにちようび』(文溪堂)を加えて「ミリオンぶっく」132点、ミリオン達成間近の作品「ミリオンぶっくNEXT」は6点。

児童書選書用カタログ『Luppy』発行/トーハン

トーハンは4月3日、児童図書選書のための総合ブックカタログ『Luppy(るっぴぃ)2023年版』を発行した。小中学校・公共図書館に適した児童図書1万3299点を掲載する。
今年版より図書館向け選書ウェブサイト「HONLINE(ホンライン)」と連動し、掲載書目のQRコードからHONLINE上の内容紹介ページに直接アクセスできる。選書リストの作成や、銘柄によってはHONLINEで試読も可能。
A4判、1677頁。頒価本体2315
円。

桐野夏生氏『燕は戻ってこない』が受賞/第57回吉川英治文学賞

吉川英治国民文化振興会は3月2日、吉川英治4賞を発表し、第57回吉川英治文学賞は桐野夏生『燕は戻ってこない』(集英社)、第8回吉川英治文庫賞は上橋菜穂子「守り人」シリーズ(新潮文庫)、第44回吉川英治文学新人賞は蝉谷めぐ実『おんなの女房』(KADOKAWA)、第57回吉川英治文化賞は小林普子(外国にルーツを持つ子どもたちに教育支援を20年以上続ける)、近藤博子(子どもと地域をつなぐ「こども食堂」の名付け親)、村上龍男(閉館寸前だった加茂水族館を負債を抱えながら世界一のクラゲ水族館に育てる)の3氏に決まった。
同日都内で行われた記者会見で、桐野氏は「受賞作品は2年半かけた連載。その間に生殖医療に関する状況が変わり、若い女性編集者たちが色々なことを調べ、実感を教えてくれ、私にとっても勉強になった」と作品への思いを語った。
上橋氏は「このシリーズは26年以上も書き続け、私の人生の道筋と大きく関わっている。この長い物語を表してくれる吉川英治文庫賞をいただいたことがとてもありがたい」と喜んだ。
蝉谷氏は「ゼロから編集者と作り上げた初めての本。受賞できてとてもうれしい」と話した。
贈呈式は4月11日、都内のホテルで開催した。

不読率、小中高生いずれも増加/「本を読むことに興味がない」41%/東京都教育委員会が調査

東京都教育委員会は3月30日、令和4年度子供読書活動推進に関する調査の集計結果を公表した。
この調査は、都内の子供の読書の状況、公立学校や公立図書館での読書活動の現状を把握し、今後の施策に活用することを目的として、第4次東京都子供読書活動推進計画に基づき、隔年で実施している。実施期間は2022年9月上旬~中旬。調査対象は都内公立学校の児童・生徒(高校二年生のみ全数調査、他学年は5%を目安に抽出)、都立学校および都内公立小中学校、都内区市町村教育委員会、都内区市町村子供読書活動主管課(図書館等)。
1ヵ月間に本を読んでいない児童・生徒の割合(不読率)は、小2が4・4%(19年度2・9%)、小5が5・1%(同4・2%)、中2が10・3%(同9・9%)、高2が33・4%(同30・6%)と、いずれの学年も19年度調査に比べて不読率が増加した。また、いずれの学年も第4次計画目標値に届いていない。
本を読まなかった理由は、「本を読むことに興味がないから」が41・1%(同39・1%)、「読みたい本がなかったから」が39・5%(同37・0%)という回答が多かった。
読み終わった本の平均冊数(読み終わった本が1冊以上ある児童・生徒のみ回答)は、小2が12・2冊(同14・3冊)、小5が7・8冊(同8・3冊)、中2が4・0冊(同4・1冊)、高2が2・9冊(同3・3冊)で、特に小学校低学年で減少した。
読んだ本の中に電子書籍があった児童・生徒の割合は、小2が12・3%(同10・3%)、小5が18・3%(同14・9%)、中2が23・7%(同19・8%)、高2が27・6%(同25・6%)と、ほとんどの学年で増加した。

東野圭吾氏著作、1億部突破/出版社の垣根越えたフェア実施も。

作家・東野圭吾氏の著作の国内累計発行部数が1億部を突破した。講談社、KADOKAWA、文藝春秋など出版社各社が4月3日、発表した。
国内累計発行部数は4月3日時点で1億7万7380部。これは電子書籍を含まない、国内で発行された紙の書籍のみの部数で、1冊平均100万部発行されている計算。東野作品は海外でも幅広く翻訳されており、現在37の国・地域で出版中。その推定累計発行部数は約6800万部。国内外を合わせると全作品の推定累計発行部数は1億6800万部を超える。
今回の発表にあたり、公式ツイッターとインスタグラムでは記念動画と日本のトップスノーボーダーたちによるお祝い動画をアップ。今後は、各出版社の担当編集者による作品紹介や読者からの感想ツイート募集、書店店頭での出版社の垣根を越えた「ありがとう!東野圭吾1億部」フェアの実施などを予定している。
東野氏は「夢の数字だと思っていましたが、まさかの到達に私自身が一番驚いています。もちろん最大の功労者は、私の物語世界に付き合ってくださる読者の皆様です」とするコメントを発表した。

「本屋のあとがき」/「桜を背に現れた者」/ときわ書房本店文芸書・文庫担当宇田川拓也

満開だった桜も散り始め、色づいた花びらを浴びながら仕事に向かう。家から駅までの道には桜の樹がいくつも並んでおり、歩くたびに四季の移ろいを教えてくれる。
かくも美しい桜だが、「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という強烈な一文から始まる、梶井基次郎「桜の樹の下には」では、鮮やかな美しさだからこそ、そこに言い知れぬ怖さを覚えてしまう複雑な心情が描かれており、狂気的なれど妙に惹かれるものがある。
美に怖さを重ねて見てしまうというなら、私も似たようなものかもしれない。というのも、舞い落ちる桜の花びらのなかを歩きながら真っ先に思い浮かべてしまうのが、『八つ墓村』の一場面だからだ。ただし横溝正史の小説ではなく、1977年公開の松竹映画版だ。
芥川也寸志作曲による勇壮な劇伴とともに登場する、山﨑努演じる多治見要蔵(原作では田治見)が、とにかく怖い。刀と猟銃を手に桜吹雪のなかを疾走し、村人32人をつぎつぎと殺して回る暴れぶりは、少年時代にテレビで観て度肝を抜かれた。『八つ墓村』はその後も繰り返し映像化され、色々な役者が要蔵を演じているが、山﨑努を超えるには至っていない。
映画の歴史上、もっとも鮮烈に暗闇から現れた悪役といえば、オーソン・ウェルズが『第三の男』で演じたハリー・ライムだが、桜を背に現れたというなら、山﨑努の多治見要蔵が一番だろう(異論は認めん)。未見の方は、一度ご覧になってみてはいかがだろうか。