全国書店新聞
             

平成15年2月11日号

『セサミ』営業権取得

『レタスクラブ』を中心に別冊・ムックを刊行するSSコミュニケーションズ(風間英昭社長、角川書店出資80%)は1月28日、・婦人生活社管財人との協議により、子供のファッションと生活の情報誌『セサミ』2月発売号から出版事業に関する営業権を譲り受けることで合意した。
『セサミ』(隔月刊、10万部発行)は創刊から27年にわたって2歳から7歳の子どもを持つ20代後半から30代半ばの読者の支持を得ており、SS社は『セサミ』ブランドを引き継ぐことでファッション分野の充実を図っていく。

販売額6年連続で減少

2002年の出版販売金額は前年比0・6%減少して2兆3105億円となり、97年以降6年連続して前年を下回ったことが出版科学研究所の調べで明らかになった。
書籍は0・4%増加して6年ぶりにプラスになったものの、雑誌は1・3%減少して5年連続のマイナス成長で、低迷が続いている。
昨年の売上高の内訳は書籍9490億円、雑誌が1兆3615億円。
このうち書籍販売金額は、昨年1年だけで1〜4巻合計200億円販売した「ハリー・ポッター」シリーズのほか、『生き方上手』『声に出して読みたい日本語』などミリオンセラー6点が出て6年ぶりにプラスに転じたものの、販売部数は1・3%のマイナス成長だった。
新刊点数は4・4%、3052点増加して7万2055点。
これは4月の新学習指導要領実施に合わせて小・中学生向けの学参書が大量に発行されたため。
新刊1点当りの発行部数は3・3%減少して5800冊となった。
雑誌部門は月刊誌の販売額が1兆194億円、前年比1・7%減。
週刊誌が3422億円、同0・1%増。
発行金額は1・4%減と抑制されたものの、金額返品率は月刊誌が0・1ポイント減の31・2%、週刊誌が前年同率の23・2%と、改善は進まなかった。
月刊誌、週刊誌ともに定期誌の低迷が著しく、これを補う不定期誌の発行が活発。
増刊別冊の新刊点数は20点増加し6065点と高い水準が続いている。
創刊点数は30点増の197点、休刊は18点減の152点。
入り広告の悪化で企画規模は小型化している。
一方で分冊百科は、ワンテーマで読者に訴求しやすい、大規模宣伝により売上増強の計画が立てやすいなどの理由から19点という大量創刊が見られた。

難問は消費税額表示

出版再販研究委員会は1月30日午後6時から銀座1丁目の山田屋で新年懇親会を開催した。
朝倉委員長はあいさつでポイントカードと消費税に触れ、「ポイント・カードの問題は昨秋から討議を始め、少しずついい方向に動き出している。
しかし終わったわけではなく、消費者も十分考慮しなくてはいけない。
消費税総額表示は来年4月ということで頭を悩ましている。
4団体で月に1回ぐらい集まり、結論出していきたい」と、新年の課題を述べた。
来賓として取協金田会長は「せっかく守れた再販を脅かす問題が次々に出てくる。
再販があった方が自由な出版と全国同一定価を守れる。
ポイントカードと消費税総額表示が再販を脅かしかねないが、一つずつ解決していきたい」。
再販研究委相賀相談役は「読者のために何がいちばん良いのか、英知を集め、新しい発想で取り組んでほしい」と祝辞を述べた。
日書連萬田会長は「読者と接する書店の立場から、再販違反店には契約に基づき厳正に対応してほしい」と注文し、乾杯の音頭をとった。

貸与権求めて法改正へ

2泊3日1冊50円、1回30冊まで、売れ行き良好書は1巻20冊の大量仕入れなど、野放し状態のレンタルコミックについて、雑協貸与権ビジネス専門委員会(講談社森武文座長)は著作物も音楽・映画なみに貸与権を−−とする著作権法改正に動き出した。
3日には森座長らが書店会館を訪れ、日書連萬田会長などに取り組み状況を報告。
これを受けて日書連も著作権法の改正に協力していく方針を固めた。
当日の説明の中で森座長はベスト電器が昨夏福岡にオープンした「ベストソフトタウン福重」の視察結果を報告。
同店では230坪の売場にビデオ4万本、CD2万枚、コミックス2〜3万冊を在庫。
コミックスは2泊3日50円、7泊8日80円のレンタル料で貸し出している。
講談社の『バガボンド』は1巻から13巻まで各7冊、最新刊の14巻は19冊と、各社の新刊、売れ行き良好書は新刊書店以上の品揃えだったという。
森座長は「1カ月に10万冊レンタルしている大型店もある。
既刊は新古書店、新刊はレンタルコミックにやられ、周辺書店の売り上げはガタ落ち」と指摘。
「コミック作家の著作権を考える会」柴田未来弁護士は「映画・音楽には貸与権が認められている。
著作物にも貸与権を認める著作権法改正が必要だ」と述べ、早ければ来年の通常国会での成立を目指すと意欲を示した。
貸与権ビジネス専門委員会の話を聞いた日書連スタートアップ委員会(井門照雄委員長)は、法改正には協力することで意見の一致をみている。

くじ精算はお早めに

昨秋実施いたしました「読書週間書店くじ」で各書店様にお立て替えいただきました1等1万円、2等1千円、3等5百円、4等百円の精算受付は2月中となっています。
まだ、くじをお手持ちの書店は所定の用紙に当選券の明細、取引金融機関名、支店名、口座番号、書店名を明記の上、日書連事務局「書店くじ係」へお送り下さい。

生活実用書・注目的新刊

1月1日から営業するデパートが出てきたが、我が家の近所には数年前からコンビニが2店に弁当屋と牛丼屋の計4軒が年中無休の上オールナイトでやっている。
元旦も当然営業しているのだから、デパートが開店してもそれほど驚くことではなくなった。
しかし、便利で結構かもしれないが、いつの間にか人っ子一人歩いていないような静かな正月はかき消えてしまった。
季節感が薄くなり、そこには彩りのない単なる長期休暇だけ残った。
四季を感じるには現代は忙しくありすぎる。
そんなあわただしい時代だが、一方で俳句の世界のようにむしろ進んで季節の移ろいを感じようとする人の心もある。
鷹羽狩行著『ラジオ歳時記俳句は季語から』(講談社+α新書135−1C780円)は現在も放送中のNHK「ラジオ深夜便」をもとに書き下ろされた本。
「俳句を作るということは、取りも直さず季語と付き合うこと」とまえがきで著者は語る。
同じ日を指しながら「立春」と「寒明け」という2つの言葉がある。
「寒明け」は寒かった冬がようやく終わるという過去に対する今の感じを表し、「立春」はこれから暖かさに向かっていくという未来に通じる現在を表現する。
観点が違うので使い分けないと良い句はできない。
季節を追いながら、日本語の持つ微妙なニュアンスを教えている。
小沢昭一著『俳句武者修行』(朝日新聞社1300円)は、変哲の俳号を持ち「東京やなぎ句会」を30年以上も続ける小沢昭一氏が、ほかの句会への他流試合を試みた実況ライブである。
「東京やなぎ句会」は入船亭扇橋、永六輔、大西信行、桂米朝、柳家小三治、矢野誠一など各氏。
この句会の年末のゲストが、前著の「狩行先生」こと、鷹羽狩行氏なのである。
先生は「あれは句会じゃありません。
句会じゃなくても句(食)う会でしょう」などと言ったという。
その鷹羽狩行氏主宰の「狩」をスタートに、著者は10の句会を探訪する。
読み上げられもせず、キビシクもまれたり、女性だけの結社で黛まどか氏代表の「月刊ヘップバーン」に修行すれば、一人華やいだりするのである。
これほどの関連書2冊が仲良く並ぶ、などという書店にお目にかからないのだから、書店は面白みを欠いている。
(遊友出版斎藤一郎)

新規出店7年ぶりに増加

業界紙「新文化」は講談社調べの数字として2002年1月から12月までの新規出店状況を発表した。
これによると2002年の新規出店数は419店で前年から43店増、売場面積も4万1500坪で前年から4800坪拡大。
出店減少傾向は7年ぶりに上向きに転じたことが明らかになった。
最近3年間の出店状況と2002年の取次別出店数をまとめたのが別表。
2002年の出店数は新規419店、4万1461坪、増改築192店、4995坪、合計611店、4万6156坪。
取次別の新規出店の数字は、トーハン123店、1万4100坪、日販145店、1万5380坪、大阪屋35店、3595坪、栗田56店、4178坪、太洋社30店、3236坪、中央社21店、640坪、協和5店、200坪。
新規出店数の64%、坪数の72%をトーハン、日販両社で占めた。
日販は前年から新規出店数43店、坪数3219坪増加した。
10年前に60坪台だった出店平均坪数は99・0坪と5年ぶりに99坪台となり、100坪の大台が再び間近となった。

業界の矛盾正す年に

東京都書店商業組合青年部(鈴木康弘会長)は1月29日午後6時半から六本木・ロアビル「センチュリーコート」で新年会を開き、52名が出席した。
新年会は吉田圭一氏の司会、三浦実副会長の開会の辞で始まり、鈴木会長が新年あいさつ。
「新春市会での取次社長のあいさつを聞き、新聞記事を読むと、書店現場の厳しい状況をわかってるのかと思う。
青年部では『我々が売るんだ』と思える商品を考え、いい商品は積極的に売っていきたい。
6月に出る予定のハリ・ポタ英語版第5巻をハードカバーで扱えないかとも考えている。
業界の矛盾点や旧態依然とした部分を改善し、他業界に負けない形を作りたい」と、今年の課題を話した。
続いて来賓の東京組合・萬田貴久理事長があいさつ。
「蓮田センターの開設で主要取次が無伝票返品処理できる時代を迎えた。
消費者の視点で商品を適時・適量供給するSCMに連動していく一過程となる。
今年は省力化・効率化が飛躍的に進み、画期的なことが始まる。
新しい枠組み作りに青年部と力を合わせて取り組みたい」と述べた。
都中小企業団体青年部協議会・橋本豊之副会長の祝辞に続き、東京組合・丸岡義博副理事長の発声で乾杯した。

大阪で婦人昼食会

大阪府書店商業組合は1月28日午後0時半から大阪市・北区のリーガロイヤルホテル7階のイタリアン・レストラン「ベラコスタ」で第2回「レディースランチの会」を開いた。
会場設営は灘組織強化委員長が担当。
今回はイタリア料理だったためか若い人が多く、総勢115名が参加し、盛況裏に終了した。
閉会あいさつで松原理事から、今後の検討課題として「組合だより」に女性向け情報コーナーがあってもいいのではとの提案があった。
(中島俊彦広報委員)

再販違反は厳正対処の方針確認

東京都書店商業組合は2月4日、書店会館で定例理事会を開催。
ポイントカード問題で、岡嶋成夫委員長は再販研究委員会の出版社11社中9社が見解を出したと報告。
「1%でも5%でも再販違反は止めてほしいというのが根本」と日書連の方針を説明し、理解を求めた。
また、八王子支部の青木寛司支部長は「啓文堂書店は組合加入店が多く、事業にも協力してもらっている」と前置きし、同書店にポイントカード中止の要望書を出すことを検討していると報告した。
これに対して下向磐副理事長は「契約上問題がある。
出版社に要望書を渡し、出版社が対処すべき」と指摘し、そのための出版社への働きかけを続けると述べた。
さらに「再販違反には厳正に対処するという方針は、いかなることがあろうと動揺することはない」と、日書連の立場を強調した。
指導・調査委員会からは店内での携帯電話使用不可をお願いするステッカーを作成することが提案され、了承された。
各店に縦型2枚、横型2枚、計4枚配布する。
店内での携帯の使用は他のお客様への迷惑となるのはもちろん、一部ではデータを打ち込み、カメラ付き携帯で撮影、メール送信するなどの行為が行われており、出席理事から「携帯で情報を盗まれている現状がある。
万引きといっしょ。
放置すれば本が売れなくなる」との意見も出た。

業界構造の問題点と日販の進めるSCM

日販菅徹夫社長は1月9日に行われた須原屋研修生OB会で「業界構造の問題点と日販の進めるSCM」を特別講演した。
この中で菅社長は「出版業界は制度疲労が見え始めている」という認識の下、市場ニーズに基づくサプライ・チェーン・マネジメントと、契約思想に基づく責任販売の導入を問題提起した。
出版物販売金額は97年に初めてマイナスに転じ、その後もマイナス成長を続けています。
昨年は書籍が「ハリーポッター」効果で6年ぶりに前年をクリアしました。
しかし、雑誌は引き続き不振で、合計では6年連続のマイナス成長。
現在の出版販売額は10年前の規模に戻りました。
出版物が売れない一因に景気低迷があるのは確かですが、本当にそれだけか。
消費支出と出版販売額の伸び率を対比すると、97年までは出版販売額の伸び率は、消費支出の伸び率を常に上回っていました。
97年以降、ともに下降局面に入りますが、出版販売額の落ち込みが消費支出の落ち込みよりも大きくなっています。
景気低迷のほかにも、出版物が売れなくなった要因としてインターネットや携帯電話の普及、少子化が言われておりますが、外部要因のせいだけではない。
出版業界独特の制度や構造が疲弊し始めている。
業界構造を見直す時期に来ています。
出版界の特徴の一つである再販制度のメリットは、全国どこでも同じ価格で出版物が入手できること。
文化を享受できる環境が全国民に均等に与えられています。
一方、デメリットは、自由競争が妨げられ、業界全体の向上意欲が減退する。
価格の硬直化を招きやすく、消費者の不利益につながるという面があります。
委託制度のメリットは、川上の出版社がリスクを負っているので、多種多様な出版物を店頭に並べられる。
消費者の選択機会が増大します。
事前の需要予測が難しく不確実な中で生産、販売活動が可能になることもあります。
デメリットは「責任を持って仕入れる。
売る」という意識が業界全体に欠如する。
返品が可能なので、書店は多めに発注しますが、出版社、取次は返品増を懸念して、注文どおりに商品を供給しない。
この悪循環は業界三者の不信感を招くとともに、非効率な流通の大きな原因になっています。
昔は、委託制でも注文品は買切りでした。
ところが昭和40年代のブック戦争の頃、注文品も委託という不文律に変わりました。
委託期間も本来のルールが守られていない。
最近は返品期限の無いムックが増加して、この動きに拍車を掛けています。
出版社が自社商品をできるだけ多く長期間置いてもらいたいと、自らルールを崩してしまったのが発端です。
問題点の2番目として需給のアンバランスが挙げられます。
書籍の販売額が低迷しているのに新刊発行活動は活発で、両者は乖離する一方です。
雑誌も同じような傾向が出ています。
実は注文品は買い切りという不文律が崩れた頃から返品率が上がってきた。
ブック戦争が起きた72年から3年間程の返品率はむしろ減少傾向にあります。
これは73年のオイルショックで紙が無くなり、発行点数も部数も減少した。
定価が値上がりして部数が減少したことで返品率が下がった。
ところがその1年後、返品で返ってきて、返品率が上昇した。
次の上昇期は82年から85年に文庫にシフトした時期。
92年から95年も同じく上昇しています。
雑誌も書籍と同じように81年にいったん跳ね上がっていますが、文庫シフトのような大きな構造変化は無かったため、80年代半ばの上昇傾向は顕著ではありません。
しかし90年代に入ってからは、書籍と同じような動きを示しています。
返品率の上昇と同じカーブを描いているのが書店の新規出店と増改築です。
80年代半ばは郊外店の出店が活発になった時期です。
90年代はバブルが弾けて地価が下がり、出版業界にも遅れバブルがやって来た。
70年代前半、ブック戦争が終結した時期の出店も急増していると思います。
書籍の新刊発行点数も3回急カーブを描いており、返品率の上昇率と重なっています。
雑誌発行点数の推移も同様の傾向です。
マーケットのニーズを無視した出店が行われ、並べる物が無いから発行点数を増やし、それが返品につながった。
どんな業界でも需要が落ちれば供給が抑制されるのが経済原則です。
ところが出版業界は販売額がマイナスにもかかわらず、新刊発行点数が増え続けた。
これは出版業界ならではの理由がある。
まず、出版業界のネットワーク化、SA化が遅れていて、マーケットニーズを的確に把握する仕組みが不十分である。
出版物そのものの特性で、発行してみないと売れるかどうか分からない。
二匹目のドジョウを狙う風潮も非常に強い。
出版物のライフサイクルが短い。
代替性が利かない。
リピートオーダーが無いといった特性も考えられます。
しかし、取次の立場から見ますと、出版社が短期融資の手段として新刊を発行している傾向が見られる。
新刊が入ると、私どもは1ヵ月後に何パーセントかの支払いをします。
そこに資金が生まれますから、次の出版物につながる。
そういうつなぎ融資的な機能を取次は持っているわけです。
それが出版社の自転車操業を助けている。
ここ数年は販売額の低迷で、この傾向が顕著になっています。
問題の3番目として、業界構造の隙を突いた新ビジネスが台頭してきました。
新古書店ではブックオフやブックマーケット、古本市場など、FC展開しています。
新刊を安売りできない再販制度の盲点を突かれた結果です。
また、新古書店は万引きした本を現金に換えることで青少年の非行を招くなど、別の意味でも大きな問題を引き起こしています。
そして、マンガ喫茶も少なからず書店に影響を与えている。
ネット社会の新ビジネスとして最近スタートしたのが書籍通販で有名なアマゾンが実施するマーケットプレイスです。
ITの伸展でメーカーと顧客が直接つながるようになりましたが、顧客にしてみればメーカーごとのサイトを開くのは面倒で、どこかでワンストップ・ショッピングしたい。
その仲介役がマーケットプレイスです。
書籍、CD、DVD、ビデオ、ソフトウェア、ゲームなど、個人や企業が所有する中古品や新品をサイトを利用して売買するサービスです。
個人の利便性は向上しますが、アマゾンは企業からの申し込みを受ける体制を用意しており、実質的な再販崩しへと進んでいく可能性も懸念されます。
業界はここへ来て、さまざまな試みを始めていますが、そもそもマーケットのニーズを無視していることが大きな問題です。
正確に言うと、把握する手段が十分でない。
また、委託制度の下で業界三者の不信感、責任意識の欠如も大きな問題です。
そんな思いから、日販は業界にSCMの仕組みを確立すべく、新しい取り組みを始めました。
220SCM、すなわちサプライ・チェーン・マネジメントは、製品の生産、流通、販売過程において材料調達から販売まで生産、流通情報をネットワークで一括管理し、生産計画の立案やマーケティングに活用することで効率的な企業活動を支援するシステムです。
他業界はメーカー主導でメーカーがマーケットの動きに併せて商品供給をコントロールする。
しかし出版業界は流通情報がサプライ・チェーンの真ん中に位置する取次に集中している。
そこで我々は「トリプルウィン・プロジェクト」と名付けたSCMの取り組みを始めました。
トリプルウィンとは書店、出版社、日販の三者が共に勝ち組になろうという意味です。
書店からは「売上良好書が配本されない」「いつ入荷するか、何冊入荷するか分からない」という声が、出版社からは「書店個々の実績が把握できない」「妥当な発注か判断できない」といった声が寄せられていました。
書店は商品が入荷しないから過剰に発注したり、客注として発注したり、神田村やネットでも発注しています。
出版社や日販は書店の注文を百パーセント信じられないため、調整せざるを得ない。
業界全体が正確なマーケット・データを把握できていない。
書店も売場でどの本がどれだけ売れているか、本当は何冊必要か正確に判断できない。
出版社も日販も同じように、どの書店でどれだけ売れているか、どれだけ必要かを正確に把握できません。
業界三者が独自の判断で、それぞれの業務を行っているところに相互不信が生まれている。
結果として、読者が書店で買いたいときに買えない。
この状況を打破するため、業界三者に開かれたネットワークを構築し、このオープン・ネットワークに書店のPOSデータ、出版社の商品データ、日販の流通データをリアルタイムに開示する。
書店は自店およびチェーン各店の販売・在庫状況をリアルに把握できる。
発注した商品がいつ、何冊入荷するか分かる。
重版状況や出版社、日販の在庫がリアルに把握できます。
一方、出版社は店舗、銘柄ごとに入荷、売上げ、返品、在庫状況がリアルに分かる。
発注データが一元管理され、発注総量や的確性を判断できます。
また許されるならば、各社の状況も見られるオープンネットワークをつくりたい。
この根幹となるインフラを昨春より相次いでリリースしました。
書店様向けには従来のサポートシリーズをよりグレードアップし、全国販売動向や、銘柄ごとの入荷、売上げ、返品、在庫状況が確認でき、店頭業務は大幅に改善されます。
また、適正な追加・発注、簡便な平台管理や棚管理ができるようになります。
出版社に対する情報開示は、オープンネットワーク・ウィンを使って、銘柄別売り上げや市中在庫、店舗別データをつぶさに確認することができます。
販売動向、市中在庫、店舗別実績が一目瞭然となり、より的確な商品製作、追加、販売促進が可能になります。
トリプルウィン参加書店の注文は日々管理をするとともに、新しい在庫管理、注残管理を行い、的確な商品供給を実現します。
参加出版社は実績データを十分に確認された上で、的確な需要予測による小ロット製作を実現してほしい。
商品を的確に供給する責任は出版社にあります。
今までどおりの重版体制、システムでは、世の中の激しい動きについて行けません。
小ロット生産で在庫を少なく持ち、効率的な運用をしていただきたい。
つまるところトリプルウィンは、業界三者が手を組み、マーケット・ニーズに基づいた販売、流通を推進する。
最終的に、欲しいときに欲しい商品が一定のルールの中で手に入る状態が到達点です。
当面、契約書店は中堅書店200店ぐらい。
地元に密着して生きている書店と手を組んで行きたい。
それをやっていかないと市場が無くなっていく。
書店が生き残っていける商品供給体制を作っていかないと、取次もつぶれてしまいます。
そのためには書店と私どもが契約を結び、返品に責任を持ってもらう。
当面は単品について契約をしていきたい。
売行き良好書が5点あれば、その5点について10%以内の返品でやると契約して、その代わり満数出してもらう。
委託だから返品が返ってくるけれども、ペナルティをいただく。
今年度中に参加出版社を100社。
書店500店つくりたい。
最終的には1500店ぐらいを考えています。
現在のところ、書店200店、版元30社ぐらいにご理解いただいています。
ネットワークが整備され、POSシステムが強化されて、単品、単店の流通データがリアルタイムに把握できるインフラは整ってきました。
各社もそういう状況は2、3年のうちに出来るでしょう。
このような転換期に、旧来の構造のままの委託制度で商売を続けて行けるのか。
そこは皆様の判断です。
日販の取引書店でもPOSの無いところは乗れません。
それが大原則です。
POSがある場合には、自分でサーバーを持っていなくても、日販へデータを送ってくれば、理論在庫を見られる。
単店の書店も、そういう方向をめざしていただければと思います。
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テキストでダッシュ

NHK出版は2月6日午後4時半から新宿京王プラザホテルに首都圏の書店280名を集めて「2003年度春の販売促進会」を開催した。
第1部説明会では、安藤正直専務取締役営業局長が「平成14年度販売概況は書籍の落ち込みはあったが、ほぼ前年なみ」と報告したあと、新年度の販売方針について「TV英語講座の改訂に伴い新規に5点のテキストを発行する。
年度後半に息切れを起さぬよう発行部数の標準化を図りたい。
語学CDは新規4点を含み19点発行、5・8%増を目指す。
書籍ではNHKスペシャル『文明の道』全5巻を放送と連動して発売する。
中島みゆきはオリコン130週でトップに立った。
社員一人ひとりがプロジェクトXの気持ちを持ちたい」と説明した。
販売促進計画は梅川昭雄担当部長が、『カラを破れば、新しい私』をキャッチフレーズに、テキストコーナーづくりをと呼びかけ、全国4千店に拡材を送付すると述べたほか、家庭5誌増売コンクール、愛読者プレゼント、別冊「趣味の園芸」『園芸入門』の特別報償などを紹介した。
第2部懇親会であいさつしたNHK出版松尾武社長は「NHKはTV放送開始50年で番組全般に力を入れているが、一番古い活字文化に比べると、まだ走り出したばかりのヒヨコ。
NHK出版の収益は、NHK本体にも還元している。
書店からの電話がつながらないという不満をいただいており、夏には書店専用のコールセンターを作り対応したい」とあいさつ。
日書連萬田会長が「TV放送と出版の融合を強め、テキストを中心とした販売で店頭を活性化していこう」と呼びかけ、乾杯の発声を行った。

学校図書自主販売書店の登録を募集

あかね書房、岩崎書店、偕成社、学習研究社、金の星社、国土社、小峰書店、ポプラ社、リブリオ出版、理論社でつくる「児童図書十社の会」は、平成15年度新学期の学校図書自主販売に向けて、自主販売特約書店を募集している。
自主販売店は事前登録制で、申し込み締切りは2月28日。
販売対象期間は4月1日から8月31日まで。
販売対象は十社の会自主販売用専用注文書及びカラーカタログ『本を選ぶほん』掲載商品。
同カタログは前年より26頁増えて474頁に869シリーズを掲載している。
販売促進費は売上金額30万円以上50万円未満が2・0%、50万円以上200万円未満3・0%、200万円以上400万円未満3・5%、400万円以上4・0%。
出荷条件は3カ月延勘。
十社の会では本年度の販売目標を、書店同行巡回販売29億1500万円(前年比100・3%)、書店自主販売18億3500万円(同102・3%)、合計47億5000万円(同101・1%)に置いている。
申し込みは自主販売事務局の岩崎書店まで(担当=籠宮、大久保、陶山/03−3812−9131、FAX03−3816−6033)。

『やきものを楽しむ』創刊

小学館は2月5日午後2時から、一ツ橋センタービルで2003年上期の雑誌新企画発表会を開催した。
発表会では小学館蜂谷常務が「出版科学研究所発表の平成14年販売金額は前年比0・6%減、書籍は0・4%増だった。
ハリー・ポッターは売上増の他にもいい影響を残した。
読者には本の世界に親しんでもらい、版元は、読者に受け入れられる企画ならばと自信を蘇らせた」と昨年の概況を述べ、「小学館の書籍は特に児童書が順調で、全体では前年に少し及ばないがまずまずだった。
問題は雑誌で前年の94%くらい。
編集力の強化が最重要課題だ。
皆さんのアドバイスを編集に生かしていく。
年間購読の推進をぜひお願いする。
出版業界は新古書店、レンタルコミック、ポイントカードと課題を残したまま新年を迎えたが、真正面から取り組み新しい未来を切り開きたい」とあいさつ。
続いて創刊2誌の編集長から新企画の説明があった。
◆週刊『やきものを楽しむ』小学館ウイークリーブックの第7弾。
全国の主要窯場ごとにやきものの特徴や歴史的名品、周辺の旅案内等を盛り込む。
30巻予定。
4月22日創刊で予価560円(創刊号は特別定価350円)。
第2号は5月6日発売、5月20日より毎週発売。
◆月刊『IKKI(イッキ)』隔月刊のビッグコミックスピリッツ増刊号を月刊誌として新創刊。
B5判無線綴じ定価500円。
2月25日創刊で毎月25日発売。
特別付録として松本大洋の2大お宝映像を収録した特製CD−ROM。
◇増刊号『MAIA(マイア)』『Oggi』増刊。
3月20日発売、定価780円。
『Domaniprecious(ドマーニプレシャス)』『Domani』増刊。
4月12日発売、予価780円。
『プラチナサライ』『サライ』増刊。
3月27日発売、予価880円。

城東日販会新年会に40名

城東日販会は1月27日、地元亀戸大根で有名な老舗割烹・升本にて、会員27名と日販担当者13名が出席して新年会を開催した。
本間会長(本間書店)は「日販は今春より雑誌無伝返品に取り組み、返品負担軽減を図っていく。
我々も経営感覚を改革して頑張ろう」とあいさつし、来賓の高橋東京支社長は「雑誌無伝化とともに、版元・日販・書店が情報を共有して、欲しい時に欲しい本が提供できるようトリプルウィン計画を推進する」と述べた。
勝山顧問による乾杯の発声で、当日の冷たい雨と厳しい売上を吹き飛ばそうと熱い気勢を上げた懇親会は続いた。
(小泉忠男)

人事

☆東京堂出版(平成14年12月20日付、◎承認、〇新任)代表取締役会長◎大橋信夫代表取締役社長◎今泉弘勝取締役・営業担当〇大上右一

結成30周年を記念し新年会開く

日販取引有志の会、日山会は結成30周年を記念し、1月24日に日販東京支店8階にて新年会を開催。
会員12名、出版社17名、日販より12名が出席した。
新年会では小泉忠男会長(小泉書店)が「30周年の区切りとなる年に新会員3名を迎え、心機一転新たな気持ちで、業界に自ら発信していく会になるよう頑張ろう」とあいさつ。
来賓の日販大久保支店長は「30周年という長期にわたる活動へ敬意を表し、日販も共に歩んでいきたい」と述べた。
集英社サービス鈴木常務の発声で乾杯を行い、熱気あふれる中、新たなスタートへの決意と業界三者の協力を誓う新年会となった。
(小泉忠男)

本屋のうちそと

先日、神奈川の古本屋で万引きがあった。
警察に通報し、警官は犯人に同行を求めたが、遮断機の下りている踏切をくぐって電車にはねられた。
この書店には嫌がらせやいたずら電話が殺到し、ついには閉店まで考えたらしい。
これには、万引きを警察に知らせたことは書店として何の問題もないと激励の電話もあったようだ。
万引きをやっているほうは簡単に物を取り、見つかったら金を払えばいいだろうと安易に考えている。
万引きが減らないのは、一つには捕まっても大きな罪にはならない、嘘八百を並べても警察をだませると思っているのではなかろうか。
見つからなければよいと思っている奴もいる。
仮に、410円のマンガを万引きされれば、2100円売らなければその利益が出ない。
そういうことを知っているだろうか。
テレビで芸能人の若い奴らが、「昔近所のお菓子屋さんからお菓子一つ黙っていただきました。
ごめんなさい」などとふざけて話している。
とんでもない話だ。
公共の電波を使って、万引きしたことがごめんで済まされるのか。
その気があるならその弁償をすべきだ。
「あの芸能人だって万引きしたことがあるんだって」という情報が流れ、誰もがやっていることだと思われるだろう。
それが子どもたちを助長しているかもしれない。
万引きをした加害者は、親や学校、警察に言わないでとか言うが、それは無理だ。
犯罪を犯したのだから。
こんな事件があったとしても、万引きがあれば当然のことながら警察に連絡することだろう。
被害者のことをもっと考えてもよいのではないだろうか。
(とんぼ)