全国書店新聞
             

平成22年5月1日号

5氏に黄綬褒章/春の叙勲

4月29日発表の春の叙勲で、全国教科書供給協会から次の5氏が黄綬褒章を受けた。
▽栃木県那須烏山市・越雲進一郎(越雲書店)▽埼玉県越谷市・中村仁一(明詩社書店)▽京都府京都市・川勝●三(川勝書店)▽香川県さぬき市・砂川一夫(砂川書店)▽大分県豊後高田市・渕勇(渕書店)

小売公取協新会長に大橋信夫氏/日書連会長と兼務

出版物小売業公正取引協議会は4月理事会で井門照雄会長から提出された辞表を受理し、新会長に日書連・大橋信夫会長を選出した。日書連会長と小売公取協会長の兼務は萬田貴久会長以来となる。

送品・返品同日精算、具体的改善計画示さず/取次2社が文書回答

日書連は4月22日午前11時から東京・神田駿河台の書店会館で定例理事会を開催した。日書連が最重要課題と位置づけて取り組んでいる送品・返品同日精算問題については、2月17日に正副会長らでトーハン、日販両社を訪問し、3月15日までに文書回答するよう求めていたが、両社から寄せられた回答は「理解するが厳しい」など具体的改善計画を示すものではなかったことが報告された。
〔取引改善〕
送品・返品同日精算問題について、日書連は2月17日、正副会長を中心にトーハン、日販両社を訪問し、実現に向けて努力するよう要望、3月15日までに文書回答を求めた。これに対し、トーハンは3月12日、日販は3月16日に文書回答を持って日書連事務局を訪れたが、両社の回答は「理解するが厳しい」「努力するがすぐにはできない」など具体的改善計画を示すものではなかった。柴﨑委員長は「同日精算は平成20年にお願い文書を出してから2年たったが、なかなか進展が見られない。次のステップに移るため打開策が必要」との考えを示した。
〔指導・教育〕
アップルはタブレット型端末「iPad」の米国外における発売日を4月末から5月末に変更したが、米国ではアマゾンの「キンドル」、バーンズ&ノーブルの「ヌック」など電子読書端末が広く普及している。
鈴木委員長は「日本の出版界はどうなるか危機感を持っている。デジタル化の流れは止まらない。その中で書店がどう生き残っていくかが課題」として、勉強会を開催する方針を再確認した。鶴谷副委員長も「音楽リスナーはiTunesStoreで楽曲を購入するようになり、CD販売店の売上げは激減している。書店もそうならないとは限らない。有識者を呼んで話を聞き、問題の本質を知る必要がある」とした。
また、総務省、文科省、経産省の3省が3月17日に開いた「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の初会合に出席した柴﨑副会長は「公共図書館のできた地域は書店の経営が困難になっている。国立国会図書館は所蔵出版物のデジタル・アーカイブ化により、コンテンツの権利者や著作権ばかりに目が行き、物流や小売書店は中抜きされるのではないかと心配している。町の本屋は地域社会で大きな役割を果たしている。デジタル化の流れの中で、書店と図書館の共生もテーマとしたい」と日書連の立場を説明した。
〔政策〕
全国古書籍商組合連合会、リサイクルブックストア協議会と万引撲滅キャンペーンとして「三者共同声明」を3月2日付で発表。記者会見を行い、一般メディアでも大きく取り上げられたと報告があった。
また、日書連財政が厳しさを増していることから関係団体会費の見直しを図ることになり、出版文化産業振興財団(JPIC)の負担金を現行350万円から200万円に減額することを承認した。他団体会費についても状況を勘案しながら減額していく方針。
〔情報化〕
書店店頭に設置した端末でコミックを試し読みできるシステム「ためほんくん」の店頭実証実験が3月末に終了。4月1日から9月末まで半年間をプレ稼働期間として、10月の本稼働を目指すとの報告があった。プレ稼働期間中は実験店とコンテンツの数を増やし、実験を続ける。

「本屋の歩き方」を後援/凸版運営の書店ポータルサイト/日書連

日書連は4月定例理事会で、国民読書年に連動して凸版印刷が4月1日開設したwebサイト「本屋の歩き方」(http://hon-aru.jp/pc/)を後援することを承認した。後援期間は来年3月末まで。
同サイトは凸版印刷が運営主体となり、出版業界関係各社・団体に広く協力を呼びかけたところ、トーハン、日販、大阪屋、栗田、中央社、大洋社、協和の取次7社が参加表明。文字・活字文化推進機構、出版文化産業振興財団、取協、書協、雑協が後援団体として名を連ねた。このほど日書連が加わったことで出版社、取次、書店の業界3者による協力態勢が整った。
「本屋の歩き方」は、読者に「読書の楽しさ」「書店の面白さ」を伝え、読者と書店との接点拡大を図ることを目指す書店のポータルサイト。「本屋をエンジョイする喜び」を「ほんじょび」と名づけ、本との出会いを提供するさまざまな書店を紹介する。また、凸版印刷の持つITと店頭活性化のノウハウを活かし、webとリアル書店を連動させた新しい形の情報発信を行う。
メインコンテンツの「本屋ナビ」は全国参加書店を読者が色々な切り口・書店特性で探しだせる検索コーナー。各書店が作成した情報ページ(マイページ)の内容が検索対象となる。また、個性的で面白い取り組みをしている本屋の紹介、1000のオススメ本など、その他のコンテンツも充実している。
なお、4月現在の登録書店数は1500店。

「返品運賃安い」が最多/組合加入メリット調査結果/4月理事会

〔組織〕
各都道府県組合に加入するとどのようなメリットがあるかについてアンケート調査を実施したところ、35組合から回答があった(回収率74・5%)。この結果、最も回答が多かったのは「返品運賃が安い」で38%。続いて「その他」(23%)、「公立・学校図書館の納入組合に加入しやすい」(21%)、「独自の商品券(図書券等)が扱える」(10%)など。山口理事(福岡)から「教育関係者に助成金が出され、組合加入店で利用できる」メリットにより福岡組合の組合加入率は90%にのぼると事例報告があった。
組織強化の担当者については「理事長または副理事長」33%、「組織委員長または委員」25%だったが、「特に決まっていない」も42%あった。中山委員長は「組織拡大のため、担当者を決めて加入促進活動に協力を」と求めた。
4月1日現在の日書連傘下組合員数は5・7%減の5187店となったことが報告された(3面詳報)。
〔共同購買・福利厚生〕
あんしん財団が厚生労働省から行政処分を受け、3月31日付で業務の一部停止命令を受けた。これにより4月1日から新規加入の募集と加入手続きなどができなくなっている。中山委員長は「仕分けに引っ掛かったのではないか。要件を満たしていないことで一時的に募集停止処分を受けている。1、2ヵ月で解決すると思う」との見通しを示した。
ソニーが開発した非接触ICカード技術「フェリカ」を利用した書店ポータルサイト「タッチホン」事業については、都市部から地方へと徐々に広がっていると報告があった。
〔広報委員会〕
組合員のためになる紙面作りを進めるため、「機関紙とは何か」をテーマに研究することになった。山本理事(神奈川)から「神奈川組合3月定例理事会で、書店新聞の月2回刊化に対して反対の意見があった」との報告があった。
また、「書店名簿」組合員データの正確性を高めるため、新規加入および脱退、住所・電話番号・ファックス番号変更などの異動届を定期的に日書連事務局に提出してほしいとの要望書を47都道府県組合に送付することになった。
〔読書推進〕
「2010年国民読書年推進企画費」計998万円を2月26日、27組合に送金した。西村委員長は①推進企画費は日書連経費として支出するので、各組合の会計処理の際、必ず収入計上してほしい、②企画実施概要と収支報告を記入した用途報告書を企画終了後すみやかに日書連事務局へ郵送してほしい――と要望した。
〔流通改善〕
沖縄県で月曜日発売週刊誌(首都圏基準)8誌の発売日が4月1日より1日繰り上げとなり、現状金曜日発売が繰り上げ後は木曜日発売となった。該当雑誌は『AERA』『週刊現代』『週刊プレイボーイ』『週刊ポスト』『週刊ダイヤモンド』『週刊東洋経済』『週刊大衆』『エコノミスト』。

図書館関係者など271名参加/国民読書年フォーラム

国民読書年フォーラム「日本の言葉と文化を未来に伝える図書館はなぜ必要か」が4月17日、東京・永田町の国立国会図書館で開かれ、図書館関係者、教職員など総勢271名が参加した。文字・活字文化推進機構主催、国立国会図書館共催。
冒頭、国立国会図書館の長尾真館長があいさつし、続いて作家で日本ペンクラブ会長の阿刀田高氏が「日本の言葉と文化を未来に伝える」と題して記念講演を行った。
最後に、文字・活字文化推進機構の肥田美代子理事長をコーディネーターに、文科省初等中等教育局児童生徒課長の磯谷桂介氏ら4氏がパネルディスカッション「子どもの読書と図書館の役割」を行った。

書店実務マニュアルを発売/トーハン

トーハンは書店実務マニュアル『出版販売の基礎知識第15版』を発売した。新書店人を対象に、店頭で初めて働くための基本的な知識を図やイラストを用いてわかりやすくまとめている。出版社の書店営業担当の基礎知識習得にも役立つ内容になっている。内容は「出版業界の概要」「書籍販売について」「雑誌販売について」「マルチメディア商品の販売について」「よくわかる書店の実務」「接客について」。巻末には業界用語集等が付く。A5判、208頁、頒価1050円。注文・問い合わせはトーハン・コンサルティング教育事業部まで。℡03―3267―8686

生活実用書/注目的新刊

ここ数年、精神科の診療室に新たな恐怖を抱えて相談にやってくる人が増え始めた。
30代と40代の女性がほとんどで、原因は孤独死への恐れだという。それは男性も同じだが、核家族化してきた日本はついに単身化が進み、ひとり暮らしで獲得した自由と裏腹に新しい不安を生むことになった。結婚しないという現象の孤独感もそこにある。
香山リカ著『しがみつかない死に方―孤独死時代を豊かに生きるヒント』(角川ONEテーマ21A―113724円)はそうしたシングルを襲う孤独死恐怖症候群を、恐れるだけでなく、冷静に軽減させようと提案している。
誰にも起こりうる孤独死だが、見守りサービスや遺品整理代行業などの会社もある。
「死に方」にしがみつかない、遺言など「伝え方」に悩まない、「死後の準備」にとらわれない、と論は進む。女優の大原麗子氏や飯島愛氏の場合、ライターの島村麻里氏や自分が第一発見者になった友人。さまざまなケースを分析、対処法を考察するのだ。
最もシンプルな別れ方は、死亡が確定したら、そのまま火葬場に搬送するドア・トゥ・ドア方式。直送である。火葬料の相場は民営だと5万、公営は3万といわれている。葬儀社に依頼すると、安価のミニマムプランというのがあって9万5000円。内、棺の値段が約5万円だという。
著者は「フォーラム神保町」という勉強会を開き、その連続講座「ハッピー孤独死マニュアル」を土台にして本書を書き上げた。死に方なんて、その人とは何の関係もない。死に方にしがみつくのは、なるべくやめておこう。そう語りかけて本書を結ぶ。
島田裕巳著『葬式は、要ら
ない』(幻冬舎新書157 740円)は、世間体や見栄、名誉などによって高騰した葬式を再考する。四国の平均費用が約150万で最も安く、東北は約283万。全国平均にすると231万である。
葬儀の歴史や贅沢になってきた社会背景、戒名、檀家など細部に渡って検証される。しかし、葬式は急速に変わりつつある。著者は葬式無用論
へ向かっていると指摘する。
(遊友出版・斎藤一郎)

高校生向けフェアに700冊の推薦/北海道組合

北海道書店商業組合は4月13日、組合事務所で定例理事会を開催した。
最初に国民読書年に合わせた新企画「高校生はこれを読め!」(仮称)について、久住理事長より報告があった。今夏に開催の「高校生はこれを読め!」フェアに向け、道内公私立高校教師、公立図書館関係者、大学図書館関係者、大学生などに、高校生にぜひ読んでほしい図書の推薦を依頼し、約700冊以上が集まった。今後、500冊程度を選書し、今夏に「中学生はこれを読め!」と同様にブックレットを出版予定であると報告した。
このあと、第34回通常総会について討議し、6月8日午後4時半からホテル札幌ガーデンパレスで開催することを決めた。総会に合わせた研修会は開催せず、1月開催し好評だった星野上氏(群馬県・正林堂)の研修会「10年後に生き残る書店像」を、夏以降に再度開催することを決めた。
(事務局・阿知良由紀美)

本と花の祭典に2万人/サン・ジョルディ名古屋2010

第25回を迎えた「サン・ジョルディフェスティバル名古屋2010」が4月17日・18日に名古屋市東区のOASIS21「銀河の広場」で開かれ、本と花の展示販売を中心に多彩なイベントが行われた。2日間の来場者数は約2万人にのぼった。
愛知県書店商業組合は、イベントの目玉であるリサイクル本のチャリティ販売を実施。読者から読み終えた本を寄贈してもらい、定価の1割以上で販売するもので、売上金は中日新聞社会事業団への寄付や、県内の中学校への図書寄贈などに使われている。今回は約1万冊が寄せられ、昨年から実施を始めたバーゲン本販売と合わせて134万2216円を売上げた。
会場では、フェスティバルの25周年と「国民読書年」を記念して、「かいけつゾロリ」の作者・原ゆたか氏のサイン会や、河村たかし名古屋市長と作家・井沢元彦氏のトークショーを開催。また、「本と花のラブ・ストーリー」の募集が行われ、応募作710点の中から、浜松市の石塚由加里さんがグランプリを受賞。作品の発表と表彰式が行われた。このほか、愛知組合が本作りから陳列・販売まで手伝う自費出版相談、JPIC読書アドバイザーによる絵本の読み聞かせ、花のチャリティ販売や、名古屋市の「こども図書館大使任命式」などが行われ、多くの人で賑わった。
17日昼に行われた開会式では、愛知組合・谷口正明理事長があいさつ。「このサン・ジョルディフェスティバルも25周年を迎えることができた。本当に多くの方にお力添えをいただいてここまでやってこられたと思う。特筆すべきは、平成7年の阪神・淡路大震災を契機に始めたチャリティブックセールだ。お陰さまで義捐金の累計は1千万円を超えた。中日新聞社会事業団の皆さんにお世話になっており、今年はハイチ大地震の復興支援にも贈ろうと考えている。また、一昨年からは県内の生徒数が少ない中学校へ本を寄贈して大変喜ばれている。今年は名古屋開府4百年。生物多様性条約の国際会議、COP10も名古屋で開かれる。私たちは、本を通じて文化の多様性を守っていきたい」と話した。

組合員5187店に/45都道府県組合でマイナス/日書連

今年4月1日現在で各都道府県書店商業組合に加盟する組合員数の合計は、昨年4月1日対比で315店、5・7%少ない5187店になったことが、日書連組織委員会(中山寿賀雄委員長)の調べで明らかになった。
この1年間の新規加入は全国で24店だったのに対し、脱退は339店にのぼった。加入数が脱退数を上回った組合はゼロ。増減なしが高知、佐賀の2組合で、残る45組合は組合員数を減らしている。
各都道府県書店組合ごとに加入の内訳を見ると、32組合が1年間の新規加入ゼロ。新規加入があったのは福岡の7店を筆頭に、山梨、静岡、大阪の各2店、北海道、宮城、千葉、東京、愛知、滋賀、和歌山、兵庫、岡山、熊本、鹿児島の各1店だった。
一方、脱退が最も多かったのが東京の40店。次いで大阪の24店、広島、福岡の各16店がワースト3。以下、脱退の多い順に宮城14店、北海道、神奈川各13店、愛知、京都各12店、静岡、兵庫各11店、千葉、富山各10店となっている。
加入と脱退を合わせた1年間の増減では、減少数が多い順に①東京(39店減)②大阪(22店減)③広島(16店減)④宮城、神奈川(13店減)⑥北海道、京都(12店減)⑧愛知(11店減)⑨富山、兵庫(10店減)と都市部の組合が目立つ。
減少率でマイナス幅の大きい順に見ると、①富山(20・8%減)②広島(15・0%減)③宮崎(13・5%減)④秋田(12・2%減)⑤岩手、山形(10・0%減)⑦福島(9・1%減)⑧香川(8・9%減)⑨宮城(8・7%減)⑩山梨(8・5%減)となり、こちらは地方組合の割合が高くなっている。
日書連の組合員総数は昭和61年(1986年)の1万2935店をピークに前年割れが続いており、今年で24年連続のマイナス。昭和61年対比で40・1%の水準になっている。

各県組合総会スケジュール

◆青森県書店商業組合第23回通常総会
5月13日(木)午後3時から青森市のアラスカ会館で開催。
◆愛知県書店商業組合第27回通常総会
5月14日(金)午後2時から名古屋市千種区のホテルルブラ王山で開催。
◆東京都書店商業組合第34回通常総代会
5月20日(木)午後2時から新宿区の日本出版クラブ会館で開催。
◆大阪府書店商業組合第28回通常総代会
5月21日(金)午後2時半から大阪市北区のウェスティンホテル大阪で開催。
◆福井県書店商業組合平成22年度定時総会
5月24日(月)午後4時から芦原温泉「灰屋」で開催。
◆沖縄県書店商業組合第22回通常総会
5月24日(月)午後2時から那覇市の那覇地域職業訓練センターで開催。
◆京都府書店商業組合第26回通常総会
5月26日(水)午後2時から京都市中央区の京都ホテルオークラで開催。
◆埼玉県書店商業組合第26回通常総会
5月29日(土)午後3時からさいたま市浦和区の埼玉書籍で開催。
◆北海道書店商業組合第34回通常総会
6月8日(火)午後4時半から札幌市中央区のホテル札幌ガーデンパレスで開催。

海外の出版・書店事情⑤/ノセ事務所代表取締役・能勢仁

〔フランスの出版・書店事情〕
島国の日本では考えられない程、フランスの出版事情は興味深い。それはフランス語使用圏が広いことによって出版物の輸出入が盛んだということである。日本語は国際的には閉鎖言語である。従って輸出が伸びたなんて話は聞いたことがない。
フランス出版界の特色としては、フランスの出版社はインターナショナルということである。日本の出版社で外資が導入されている例は少ない。婦人画報社、学習研究社、幻冬舎、角川くらいではないか。それがフランスでは業界売上1位のアシェット・リーヴルは別として、2位のエディティス社はスペインのプラネータ社の傘下であり、3位のフランス・ロワジール社はドイツのベルテルスマン傘下、4位のアトラスはイタリア資本、5位のメディア・パーティシペーションズはイギリス資本であり、上位社が外国資本に所有されている。第二の特色は業界トップ企業のアシェット・リーヴル社がダントツ大きいことである。上位200社売上71億ユーロの内、なんと21億の売上高を占めて、市場占拠率は29・8%と高く、前年比伸び率も8・6%と高い。出版点数は07年6万376点である。前年比4・6%増。上位5社で総出版点数の28・7%の1万7345点を出版しているが、アシェット・リーヴル社は7040点と発行点数もダントツである。
翻訳書についても面白いデータがある。前記で日本語は閉鎖言語だと述べたが、フランスでは通用しない。それは原語別翻訳書の出版点数は、07年8549点であった。一番多いのは勿論英語→フランス語で5137点(60・1%)で、第二位がなんと日本語642点で、ドイツ語の606点を凌駕したのである。この642点のうち553点がコミックである。コミックには国境がないことを示している。日本のコミックがゲーテやヘッセを凌駕したことになる。小説の分野でも、日本語からの翻訳は24%も増えている。
輸出額は6億9400万ユーロで、前年より2・9%増加している。輸出先はベルギー、スイス、カナダ、ルクセンブルグの順になっている。欧米フランス語使用国の安定した成長が、輸出全体の伸びを支えている。アフリカのフランス語使用国で伸び率の高い国はコンゴ民主共和国の2602%、ルワンダ118・8%、ギニア92・0%、アルジェリア33・5%、チュニジア、モロッコの順になっている。
ヨーロッパのフランス語非使用国ではドイツ、イギリス、イタリア、スペインの順で輸出されている。
輸入は7億900万ユーロで、前年より7・2%増加している。2005年から輸入超過となっている。輸入の相手国の明細は発表されていない。
〈ヴァージン・メガ書店〉
パリではフナック書店についで大きい。ここで紹介する店はシャンゼリゼ通りの真ん中にある店である。建物は銀行を利用したもので、地下金庫をそのまま売場に使用しているが、金庫と部厚い50センチの扉、歯車が売場のインテリアになっていて、いかにもフランスらしいと思った。営業時間は10時~24時で無休である。書籍4万タイトルが250坪の売場に配列されている。従業員は21人と同数のアルバイト、店内で働く人は全員赤い半纏をまとい、背中にヴァージンと書かれているので、目立つ存在である。レジは店内に一カ所だけで、幅三間のカウンター内に5人(女3人、男2人)のキャッシャーが座って対応している。その他にフリーランスの男性が1人いてよろず相談承りをしている。間接照明なので、日本の書店に比べれば暗い。
〈大学出版協会書店〉
カルチェラタン地区にある書店である。周囲の建物が殆ど石造であるのに対して、この書店は木造である。前の広場にはお茶をのむテーブルが多数あり、若者、教授、研究者等で賑わっている。この書店は大学出版協会が主催する書店なので、店内には著者らしい人が多くみられた。対応する従業員は年配の男性が多く、教授らしき人と話している風景が、いかにも協会書店らしいと思えた。この店は一、二階総合で約100坪くらいであった。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・谷垣裕子

◇2歳から/『たまごのえほん』/いしかわこうじ=作・絵/童心社1155円/2009・12
白、まんまる、細長い、小さい、大きいたまごの殻をむくと、赤ちゃんが次々に「こんにちは」と誕生する、しかけ絵本です。しっぽ、顔、脚、どれが見えたときに何の赤ちゃんかわかるかな?読んであげるときは、どこから殻をむくと楽しめるか、リハーサルしておくと効果倍増でしょう。
◇4歳から/『ねえ』/谷川俊太郎・覚和歌子=文さとうあきら=写真/フレーベル館 1365円/2008・1
動物たちの写真絵本です。「だーいすき」「かおかおかお」「なかよしおやこ」の3部構成。それぞれに付けられているささやき、ひとりごと、よびかけが絶妙で、その仕草に思わずクスリとしてしまいます。ことばあそびの要素がいっぱいなので、文章だけ聞いていても楽しめます。
◇小学校低学年向き/『いそがばまわれ』/いもとようこ=著/金の星社1365円/2009・12
右ページにことわざと意味、左ページに実例が、作者独特の絵と共に示されています。大人にはおなじみのことわざも、言葉を覚えつつある子どもたちには呪文のように聞こえることでしょうが、口になじんでいれば、いつか意味がわかる日が来ます。大きな声を出してもらいましょう。

本屋大賞に冲方丁氏『天地明察』

全国の書店員が一番売りたい本を投票で選ぶ「2010年本屋大賞」の発表会が4月20日に東京・港区の明治記念館で開催され、冲方丁氏の時代小説『天地明察』(角川書店)が大賞を受賞した。同書は吉川英治文学新人賞に続く受賞。

電子書籍元年といわれる今出版界が取り組むべきこと/東京電機大学出版局局長・植村八潮氏/出版科研電子書籍フォーラム2010

全国出版協会出版科学研究所は3月29日、東京・千代田区の中央大学駿河台記念館で電子書籍フォーラム2010「おしよせる『書籍から電子書籍へ』の世界潮流~電子書籍の最先端事情と関わり方を考える~」を開催。出版社など370名が参加して会場は超満員。この問題に対する出版業界関係者の関心の高さをうかがわせた。この中から東京電機大学出版局局長・植村八潮氏の講演内容を抄録する。
〔文字中心のキンドルは苦戦か〕
「電子書籍元年」と言われて話題になっている。皆さんが今日会場に足を運んだのも熱気ではなく不安からだと思う。「ビジネスチャンスが来た。これから電子書籍をやるぞ!」というよりは「大丈夫。定年まではなんとかもちそうだ」と思って帰りたいのではないか(笑)。
「キンドルが上陸していない日本には電子書籍という市場がない。一方アメリカでは成功している」――日本人の大部分はこの程度の認識しか持っていない。少し分かっている人でも、日本ではかつてソニーや∑Book等が先駆けて失敗したということしか知らない。しかし、そうではない。電子辞書という成功例がある。極めて日本的な成功例だと思う。日本文化に根差した電子出版や電子書籍を日本はやってきたのではないか。
日本発のケータイ小説はアジアに大きな影響を与えている。日本の携帯はガラパゴスと批判されるが、文化はドメスティックなもの。出版は極めてドメスティックなものだから、ケータイ小説を生み出した日本の携帯は素晴らしい。
日本の電子書籍LIBRIeや∑Bookの失敗について、出版社がコンテンツを守って出さなかったからだという言い方がされている。しかし一番大きな理由は、そもそも私たちはeブックリーダーで本を読まないということに尽きる。日本に上陸しても文字中心のキンドルは市場で言われるほど売れないだろう。新しモノ好きが買って、ツイッターなどで素晴らしさを書きまくるだけ。ただ、確信をもって言うが、iPadは売れる。だからiPadのコンテンツをやるかやらないかという問いかけはしておく必要がある。
〔日本型水平分業モデル構築を〕
日本型のコンテンツ流通モデルを考えたい。アメリカにおける成功例と言われるアマゾンのキンドルやアップル、グーグルは巨大メディア企業による垂直統合型モデルだが、それは健全と言えるだろうか。日本のどこが素晴らしいかというと、それは水平分業であること。音楽配信サイトは1000社・1万サイト、書籍配信サイトもすでに200社・1000サイトを超えている。出版社と書店の数を考えたとき、水平分業が日本的な素晴らしさ、つまり机と電話さえあれば誰でも出版産業に取り組めることを評価したい。
水平分業的な日本の出版産業をどのようにしてITに継続させるか。環境が激変する中で今までと同じことをやろうとしたら、出版社でなくても潰れる。環境の変化をきちんと見ることが大切だ。出版社の果たしてきた役割をどう継続させるか。我々はかつて経験したことのない産業規模の衰退の渦中にいる。私たちが豊かに暮らせるよう、新しい産業を育てる方法を考えねばならない。
今や出版の外の世界では膨大な文字情報があふれている。ケータイメール、SNS、ツイッターなどで膨大な文字情報が流通している。若者の文字離れなど起こっていないのだ。若者は文字の洪水の中にいる。膨大な文字を発信し読み処理するために、常にケータイ、iPhone、iPadを持っている。90年代のマルチメディアの行き着いた先は膨大な文字情報の世界だった。私たちはそれをビジネスにできていない。
ジェフリー・ムーアの「キャズム」という理論がある。先駆的なユーザーと一般的なユーザーの間にある溝のことで、この溝を超えると普及が進むという考えだ。多分キンドルはキャズムを超えない。ビジネスとして黒字にすることはできるかもしれない。でも、書籍全般が置き換わるようなものには絶対にならない。今後キャズム超えをしたものが新しいメディアを作り上げることになる。
〔出版社ブランドの信頼性活用〕
アマゾンは電子書籍の売上げよりもキンドルの売上げが10倍以上ある。アマゾンがやっていることは電子書籍コンテンツを集めてキンドルを直売しているだけだ。電子書籍コンテンツを釣り餌にしてデバイスを売っているという皮肉な見方もできる。
キンドルが日本に上陸するのは、コンテンツの数ではなくベストセラーが手に入るかどうかにかかっている。彼らはロングテールでは食えないと知っている。一番売れる本は新刊だから、圧倒的新刊を扱わなければ電子書籍市場は立ち上がらないことをわかっている。
コンテンツ化で出版社がやってきたことは「信頼保障」。コンテンツの信頼性や品質を高めることだ。出版社のブランド力はそこにある。ネットでキーワード検索して、どこの誰かわからない○○君のブログと出版社のページがヒットしたら、どちらを信じるだろうか。出版社が作りあげてきた信頼性に私たちは絶大な信頼を置いている。あとは、それをどうビジネスにつなげるかということだ。文字コンテンツに信頼性を見出していく私たちの仕事をいかにITの枠組みの中でビジネス化していくかが、今、問われている。

3月期は平均97・6%/文芸書・新書が好調/日販調べ

日販経営相談センター調べの3月期書店分類別売上調査がまとまった。3月は多雨、大きな気温変動などの天候不順が客足にも影響を与えたと見られ、客数は前年同月比96・0%となった。
売上高の全体平均は97・6%だった。。文芸書は107・7%となり9カ月ぶりに前年同月を上回った。『ロスト・シンボルLimitedEdition』、映画化関連『ダーリンの頭ン中』が好調に推移していることに加えて、『新・人間革命21巻』発売が全体の売上を牽引した。
新書は103・4%で22カ月ぶりに前年同月を上回った。4作品同時発売の西尾維新『零崎人識の人間関係』と『葬式は、要らない』が好調に推移したことが要因。
客単価は100・1%となり3カ月ぶりに前年を上回った。1人当たり買上冊数が101・5%、商品単価が100・3%と前年を上回ったことが客単価を押し上げた。

電子書籍に事業参入/デジタル事業化推進室を新設/トーハン

トーハンは4月12日付で平成22年度機構改革と人事異動を発表した。電子書籍分野への事業参入を前提とした「デジタル事業化推進室」を新設、上席執行役員に選任された鈴木仁氏が室長に就任した。また、マーケティング本部を新設し、営業本部と連携してマーケット志向を強化。マーケティング本部にはMD統括局を新設し、MVPプロジェクトの拡大と責任販売施策強化のためMVP推進部を新設した。さらに、支店長職の補佐役として副支店長職を新設、東北・名古屋・大阪・広島・九州の5支店に置いてエリア戦略の強化を図る。
【機構改革】(本部・局・部・室)
1.マーケティング本部を新設する。
2.MD統括局を新設する。
3.デジタル事業化推進室を新設する。
4.営業統括推進室を新設する。
5.MD統括部を廃止してその機能をMD統括局に移管する。
6.営業企画部を廃止する。
7.マーケティング本部にMD統括局、営業統括推進室、図書館営業部を置く。
8.MD統括局にMVP推進部、流通商品統括部、ナレッジマネジメント部を新設する。
9.責任販売推進室を廃止してその機能をMD統括局に移管する。
10.東日本営業本部、首都圏営業本部、西日本営業本部に営業推進室を新設する。
【役員人事】
委嘱・マーケティング本部長兼営業統括推進室長、解・営業企画部長委嘱
専務近藤敏貴
委嘱・MD統括局長兼MVP推進部長、解・MD統括部長委嘱
上席執行役員谷川直人
委嘱・デジタル事業化推進室長
上席執行役員鈴木仁
委嘱・輸送管理部長、解・東部営業部長委嘱
執行役員柏木祐紀
【人事異動】(部長・シニアマネジャー)
経営企画部部長・流通ネットワーク推進担当(ロジスティックス部・法人担当部長)堀川嘉一
営業統括推進室部長・市場開発担当(開発担当役員付部長)野辺忠史
営業統括推進室部長・市場開発担当兼営業総括担当(開発担当役員付部長)
藤原敏晴
営業統括推進室部長・市場開発担当・異業種開発(開発担当役員付・事業開発担当部長)矢作孝志
流通商品統括部長(責任販売推進室長)岩田新治
ナレッジマネジメント部長(経営企画部付部長)
須崎浩
MD統括局部長・書籍担当(MD統括部・書籍担当部長)小川慎二郎
MD統括局付部長(MD統括部・渉外担当部長)
奥村泰生
解・休職、命・東部営業部長(休職・他社出向)
石川二三久
東日本営業本部営業推進室長(東日本営業本部・施策担当部長)貝沼保則
首都圏営業本部営業推進室長(首都圏営業本部・施策担当部長)高倉龍則
西日本営業本部営業推進室長(西日本営業本部・施策担当部長)山田康平
トーハン桶川SCMセンター部長・桶川総括グループ担当(東京ロジスティックスセンター総括担当部長)佐藤俊之
物流担当役員付部長(輸送管理部長)清田伸一
MVP推進部シニアマネジャー(MD統括部シニアマネジャー)齋藤貴
流通商品統括部シニアマネジャー(営業企画部マネジャー)堀哲也
取引部シニアマネジャー(開発担当役員付シニアマネジャー)木村武史
東部営業部シニアマネジャー・青森秋田担当・開発担当(東日本営業本部シニアマネジャー・開発担当)
高木浩行
西日本営業本部シニアマネジャー(西日本営業本部シニアマネジャー・開発担当)松原憲仁
トーハン桶川SCMセンターシニアマネジャー(トーハン桶川SCMセンター副センター長兼同シニアマネジャー・桶川総括グループ)片桐巳喜雄

シリーズ「自伝」の刊行スタート/ミネルヴァ書房

ミネルヴァ書房は、『シリーズ「自伝」mylifemyworld』の刊行を4月から開始した。四六判上製カバー300~350頁、本体価格各2800円。
このシリーズは、速水融慶應大学名誉教授、日髙敏隆京都大学名誉教授(昨年逝去)を監修者に、人文・社会科学から自然科学まで、その分野における日本の第一人者による書き下ろしの自伝を刊行していくもの。第1回配本は、木村敏氏『精神医学から臨床哲学へ』、毛利秀雄氏『生物学の夢を追い求めて』の2点。年内は国立国会図書館長の長尾眞氏、社会学の富永健一氏、植物学の岩槻邦男氏による自伝の刊行が決まっており、今後年5点のペースで刊行する予定。
4月14日に神田駿河台の山の上ホテルでミネルヴァ書房・杉田啓三社長、木村敏氏、毛利秀雄氏が出席して記者会見が開かれ、杉田社長は「6年前に刊行をスタートした『日本評伝選』は現在80数巻に達している。『シリーズ「自伝」』はこの姉妹編として創刊する。現在40~50人の先生方にお書きいただく予定になっており、ミネルヴァ書房が続く限り発刊していきたい。ミネルヴァ書房の歴史的な蓄積を踏まえて、〝知の履歴書〟という形の自伝にしたいと考えている」と述べた。

吉川英治文学賞に重松清氏『十字架』

第44回吉川英治文学賞に重松清氏『十字架』(講談社)、第31回吉川英治文学新人賞に池井戸潤氏『鉄の骨』(講談社)、冲方丁氏『天地明察』(角川書店)、第44回吉川英治文化賞に川田昇氏、久連子古代踊り保存会、菅原幸助氏、明珍宗恭氏が決まり、4月9日に帝国ホテルで贈呈式が行なわれた。
贈呈式では、吉川英明理事のあいさつに続き、野間省伸理事から各受賞者に賞が贈呈された。文学賞選考委員の五木寛之氏は「『十字架』はいじめの問題について、当事者でなく傍観者や第三者のもつ人間的責任を厳しく問うている小説だ。今の時代に人間が担うべき罪とは何か、私たちが忘れている一番大きなものを小説の世界でまともに追求したということで、重松さんはひとまわり大きな小説家としてこの吉川賞を受けられたなと思う」と選評した。

本屋のうちそと

夜半の雨で葉桜になっていた。花が散り、葉が茂り、その葉が落ちて幹は生育するものだ。
出版不況といわれ久しいが、一部の出版社は資金繰りとして刊行してきた嫌いがある。売れずに返品されると、更に多くの出版物を刊行する。印刷費や紙原料は当然掛かるものだが、著作者原稿コストを抑えようとしてブログやメールマガジンをネタにした本や通販カタログまがいの雑誌の横行だ。また稿料未払い問題が報じられている。読者は見透かして買おうともしない。
お買い得感を高めた付録付きムックが平台を占拠している。当然新刊雑誌の平積みスペースが圧迫され、当店でも返品サイト20日を目途とするようになっている。
米国でアイ・パッドが発売になったが、キンドルが静止・モノクロ画面である事に比べてカラー画面で動画機能を有している。権利関係を動画配信を前提に契約した上で、雑誌の配信が始まれば商品広告や記事の動画配信によって訴求性は比べ物にならない。出版産業という前提ではなく、コンテンツ配信産業と括り直すとTV産業が人気番組のDVDを販売する感覚で動画通信雑誌というカテゴリーを生むだろう。若者層を中心に顧客の移動がはじまる可能性がある。いやそれどころかフォントの変換が自由になることから、活字にノスタルジアを抱く団塊世代は読み応えのある版権落ちをした古典や絶版本を大活字で読めるキンドルに雪崩こむかもしれない。元来文字は知識・情報の伝達と蓄積を可能としてきた。活字や紙は手段であり、取次・書店は流通経路に過ぎない。文化の幹は不変だが、触媒の手段・経路は変化するものだ。
モラル・ハザードに陥っている出版業界は米国と他業界による「創造的破壊」に遭っても不思議はない。一夜とは言わないが、気付けば葉桜となったように。(井蛙堂)