全国書店新聞
             

平成25年10月15日号

町の本屋活性化を/文化の中心役割大きく/作家・阿刀田高氏に聞く

国立国会図書館に司書として勤務した経験があり、昨年山梨県立図書館館長に就任、これまで日本ペンクラブ会長をはじめ出版界の要職を歴任してきた作家の阿刀田高氏に、本の魅力と読書の大切さ、書店の役割、図書館と書店の関係などについて話を聞いた。聞き手は日書連の面屋龍延副会長(広報委員長)。東浦澄夫理事(山梨県書店商業組合理事長)が同席した。
面屋作家になったいきさつは。
阿刀田学生時代に肺結核にかかり、卒業後は身体に無理のない職業に就こうと国立国会図書館に就職しました。本当は新聞記者になりたかったので、勤めながらエッセーなどを書いていましたが、それが高じてとうとう給料より原稿料収入のほうが多くなってしまった。それで図書館を辞めて、小説を書き始めたのが30代半ばのことです。
面屋子供の頃から本は好きでしたか。
阿刀田小さい頃から小説はたくさん読んでいました。いつもポケットに文庫本を1冊入れて、電車に乗れば読んでいるような学生でした。でも将来作家になろうという考えはまったくなかったですね。本が面白くて、好きで、ただ読んでいただけです。それがいつの間にか頭に染み込んで、後に自分でも書きたくなったのでしょう。
面屋最も影響を受けた作家は。
阿刀田モーパッサン、オー・ヘンリー、ヘミングウェイ、チェーホフなど、療養生活をしていた時に読んだ海外の短編小説です。片仮名の作家の名前の下に「短編集」と付いている文庫本は全部読んだのではないかというほど読みました。
面屋私は大阪の曾根崎で本屋をやっています。若い作家が手書きのPOPを作って、自分の本のところに置いてほしいと持ってきます。
阿刀田このごろは物書きものんびりしていたら本が売れませんから。私は書店の売り子をやったことがあるんです。両親を早くに亡くしたので、学生時代アルバイトしなければならなかった。本に関係のあるアルバイトを探していたら、紹介してもらったのが神田駿河台の新刊書店でした。だから今でも書棚の整理は上手ですよ。本にヤスリをかけたりもしました。万引きには苦労しましたね。
面屋電子書籍の普及が進んでいます。紙の本との関係をどう考えますか。
阿刀田本を安く、早く、便利に提供することにおいて電子書籍は勝っています。今後ますます広がっていくことは間違いないでしょう。ただ物を書くというのは金銭のためだけではない。名誉とか社会的な評価のために命を賭けて、井上ひさしさんのように死ぬまで頑張って書く人もいます。デジタル化した社会では、命を賭けてまで書くことに打ち込むという態度はだんだん薄くなるでしょう。最も危険だと思うのは創造性の衰退です。
面屋学校で子供たちが1人1台、タブレット端末を持つ時代がやがて来るでしょう。大阪市は橋下市長が100億円の予算をつけると言われています。電子教科書になると紙の教科書はなくなる。そうすると教科書を取り扱う書店というインフラはなくなるでしょう。この問題は今後、大きなポイントになります。
阿刀田大事なポイントは、情報を獲得することと読書は違うということです。情報を得るには電子機器は非常に役立つ。一方、読書は生理的に人間の動作とうまく合っているのでしょう。ページを繰ることで読み手は書き手と対話し、知性を高めることができる。それは単に情報を得るのとは違う営みです。日本人はそのことの持つ重大な意味に気づくのかどうか、失ってからでは間に合わない。日本の漢字は2千年の歴史を背負っていますから、一字一字書くことで、日本文化が自然と身に備わっていきます。学校の教育現場では、少なくとも高等学校までは、手で字を書くことを残してほしいと思っています。
面屋消費税増税問題で、日書連は「心の糧である読書に課税するな」のスローガンを掲げて、出版物に軽減税率を適用するよう求めています。
阿刀田サウジアラビアの首都リヤドに行ったとき、50年前砂漠だったところが、見事な高層ビル街になっている。どうしてそんなことが出来たかというと、石油の産出量が世界一だから。世界一の財産を自国の繁栄のために使うのは当然です。では、日本で世界一のものは何かというと、90%を超える識字率です。世界一の識字率によって我々は今日の繁栄を築いてきました。だから、この識字率に根差した出版物に税金をどうかけるかについては、他の産業と同列に扱うのではなく、慎重に考えてほしいと思います。書店が軽減税率を主張するとエゴじゃないかと言われるかもしれないけれど、そうではない。これからも国が繁栄していくためには、高い識字率を支える出版物を大切にしなければならないと訴えていいのです。
面屋書店を取り巻く環境はとても厳しく、廃業が止まりません。我々の組合加入書店数も1986年の1万3千店をピークに今年は4400店まで減りました。
阿刀田昔の日本は、駅を降りれば必ず商店街があって、そこには必ず書店があった。町の本屋が消えていくのはとても悲しいことです。地方都市の県庁所在地には立派な書店があって、その地域の生んだエリートがたむろするキーポイントになっていました。そこが最盛期の半分以下に衰えてしまっている。
東浦阿刀田先生にとって理想的な書店とは。
阿刀田地域の読者に根付いた書店ですね。小田急線・千代田線の代々木上原駅前に幸福書房という昔ながらの本屋があります。林真理子さんの地元の本屋です。店内には林さんのコーナーがあって、著書が並んでいる。林さんが立ち寄ることもあるし、サイン会をやることもあるそうです。私も物書きとして、そうしたことで町の本屋が活性化するのであれば、ぜひ協力したいという気持ちはあります。
東浦具体的に考えていることはありますか。
阿刀田一時話題になったけれど下火になってしまったサン・ジョルディの日を復活させたい。私は今、山梨県立図書館の館長をやっていますが、大手広告会社と組んで甲府を中心にやりたいと考えています。甲府で本を贈る習慣を定着させてみたいですね。市民がその気になってくれることが一番で、そこに書店組合や出版社が協力してくれれば成功するでしょう。
面屋図書館で借りるばかりではなく、本屋で本を買って贈り合うのはとても大切だと思います。
阿刀田本を買うという行為は、文化に協力することです。山梨県立図書館は複本購入をしない。基本的に同じ本を2冊以上所蔵することはありません。
面屋ベストセラーをたくさん揃えることはしていないのですね。
阿刀田郷土資料など特例として複数を購入することもありますが、市民の皆さんに複本購入が当たり前だと思ってもらっては困ります。同じ本を2冊購入するということは、限られた予算の中で他のもっと大事な本を1冊犠牲にするということですから。図書館は書店店頭では簡単に手に入らないけれど価値のある本を市民が求めてきた時にきちっと提供しなければならない。その質を吟味するのが図書館員の知的能力であり、蔵書構成として何を持っていなければならないかを考えるのが図書館の本来あるべき姿です。
面屋ベストセラーをたくさん入れれば貸出冊数が増え、貸出冊数が増えることがその図書館の評価になる。それはちょっと違うのではないかと思います。
阿刀田宮部みゆきでも阿刀田高でも、自分が楽しむために読む本はお金を払って買うのが当たり前です。そこを市民の皆さんには理解してほしい。貸本屋をやっているわけではないんです。
面屋佐賀県の武雄市図書館が話題になっています。
阿刀田武雄市のことについて詳しくは知りませんが、地方の小さな図書館が苦しい中でどうやって市民の人気を集めて生き残りを図るかという時、1つのテンポラリーな方針としてああしたことをやるのは理解できます。しかし、東京や大阪といったところで同じことをやるとなったら、それは問題です。
面屋図書館と書店の関係について考えを聞かせてください。
阿刀田図書館が栄えて町の本屋が駄目になるという構図はよくない。そんな町は決してよい町とは言えません。町の本屋が果たしてきた歴史的な役割はとても大きいし、これからも書店が町の文化の中心であることは変わらないと考えています。

あとうだ・たかし1935年、東京生まれ。早稲田大学仏文科卒。国立国会図書館で司書として11年間勤務する。図書館勤務中から執筆を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年『来訪者』で第32回日本推理作家協会賞、同年短編集『ナポレオン狂』で第81回直木賞受賞。95年『新トロイア物語』で第29回吉川英治文学賞受賞。その他『短編小説のレシピ』『旧約聖書を知っていますか』など著書多数。2013年6月『悼む力』(PHP研究所)出版。03年紫綬褒章、09年旭日中綬章受章。07年から11年まで日本ペンクラブ会長。08年文字・活字文化推進機構副会長就任。12年山梨県立図書館館長就任。

版元、書店関係13氏を顕彰/出版平和堂

日本出版クラブは10月4日、神奈川・箱根町の出版平和堂で第45回「出版平和堂出版功労者顕彰会」を開催。版元と書店の関係者13氏が新たに顕彰された。書店関係は次の5氏。
松原治(紀伊國屋書店)、斉藤和雄(谷島屋)、高野嗣男(須原屋)、小川惠一郎(灘宝文館)、和泉徹郎(金喜書店)

「本と旅する本を旅する」/10月27日から第67回読書週間

10月27日から始まる「第67回読書週間」(読書推進運動協議会主催)のポスターが出来た。標語は応募総数3554点の中から平佐大輔さん(北海道)の「本と旅する本を旅する」、イラストは同1056点からサヨコロさん(東京都、イラストレーター)の作品が選ばれた。

読書週間書店くじ/特賞は図書カード5万円分

10月27日から始まる読書週間書店くじ(日書連主催)のポスターが出来た。特等賞として図書カード5万円分が30本当たり、特等賞から4等賞まで賞品総額4290万円、合計31万530本、9・7本に1本当選する。

8月期売上1・0%増/3年4ヵ月ぶりプラスに/日販調べ

日販営業推進室調べの8月期書店分類別売上調査は、対前年売上増加率が1・0%増と、3年4ヵ月ぶりのプラスとなった。雑誌扱いコミックの好調が寄与した。
雑誌の売上は6・0%増と8ヵ月ぶりにプラスに転じた。特に雑誌扱いコミックは23・4%増と大幅伸長。『進撃の巨人⑪』(講談社)、『青の祓魔師⑪』(集英社)、『黒子のバスケ23』が好調だった。
書籍は4・7%減と前月に続きマイナスとなった。実用書が15・5%減と低調だったことが響いた。前年ロングブレスダイエット関連銘柄などが好調だったことの反動減。文庫は3・4%減。半沢直樹効果で『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(ともに文藝春秋)が好調だったものの、全体をカバーできなかった。プラスだったのは文芸書1・8%増、新書1・3%増の2ジャンル。

「ためほんくん」運営、10月1日からJPOに移管

日書連が運営していた店頭試し読みシステム「ためほんくん」事業は、10月1日付で日本出版インフラセンター(JPO)に移管した。事業移管に伴う変更はなく、「ためほんくん」を利用している書店は従来と同様にサービスを利用できる。
JPOは、事業を運営する組織として「ためほんくん管理委員会」を設置。第1回会議を10月3日に東京・新宿区の日本出版会館で開催し、委員長に佐藤隆哉氏(小学館)、副委員長に角田真敏氏(講談社)の就任を決定した。
記者会見で、日書連「ためほんくん」部会の深田健治部会長は「書店への導入やコンテンツの充実、端末の活用をさらに推進していくという総合的な考えから、JPOに運営を移管することにした。今後も管理委員会で書店の意見を示しながら『ためほんくん』をよりよいものにしていきたい」と説明。佐藤委員長は「『ためほんくん』のプロモーション機能は利便性が高く、試し読みでコミックの販売が増えることはデータでも実証されている。端末の設置台数増加とともに、将来的には機能アップやサービスの追加を図っていきたい」と述べた。

フェイスブック活用で勉強会/京都組合

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は8月25日、京都市中京区の書店会館でフェイスブック活用について勉強会を開催した。
フェイスブックは日本では約2千万人が登録し、友人同士のコミュニケーションだけでなく、ビジネス等にも広く使われている。その利便性に興味はあるが、ITに詳しくなければ複雑で難解だとする声があることから、勉強会を開催することにしたもの。
参加者は、フェイスブックの登録から始め、まず参加者の間で友達リクエストを行い、承認をして「友達」として互いに登録。また「京都書店組合FB会」という名でグループを立ち上げ、今後は書店間での連絡や情報交換に活用していくことにした。今回はフェイスブックの概念から始め、基本的な一連の操作を学ぶところで予定時間を終了したため、勉強会は今後も継続的に開催する予定。
この勉強会で講師を務めた森武紀明活性化委員長は、「2時間では足りないくらいフェイスブックは奥深い。これをきっかけとした本屋同士のつながりを期待している」と話した。
(澤田直哉広報委員)

吉田理事長の再選決める/「モテる書店」テーマに講演会/滋賀総会

滋賀県書店商業組合(吉田徳一郎理事長)は8月27日、大津市の琵琶湖ホテルで第30回通常総会を開催、組合員50名(委任状含む)が出席した。
総会は、山田康義氏(山田耕雲堂)の司会で進行、吉田理事長(ヨシダ書店)があいさつ。「今回は30回目の記念すべき総会。第1回総会が開かれたこのホテルで、もう一度初心に立ち返り頑張っていきたい」と述べた。
議案審議では、平成24年度事業報告、会計報告、25年度事業計画、予算案の説明が行われ、すべての議案を原案通り可決した。
この後、来賓の滋賀県中小企業団体中央会・川口栄蔵氏が「こんな時こそ組合の組織の力が必要」と祝辞を述べた。任期満了に伴う役員改選では、新役員のメンバーが発表された後、別室で第1回理事会を開催。吉田理事長を再選した。
総会終了後、ストーリーの持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という言葉を生み出した第一人者として知られる、湘南ストーリーブランディング研究所代表の川上徹也氏が「書店をストーリーで輝かせよう!小さな書店が輝き『モテる書店』になる方法」をテーマに講演した。川上氏は、自分の店の志を明確に打ち出し、店にストーリーを作り、客に感動を与えられる「モテる書店」を作る手法について説明。質疑応答も活発に行われ、その後の懇親会も大きな盛り上がりを見せた。
(石田淳広報委員)

書店が生き延びる手段探る/千葉県組合総会で鈴木理事長

千葉県書店商業組合(鈴木喜重理事長)は9月20日、千葉市中央区の千葉県書店会館で第30期通常総会を開催、組合員85名(委任状含む)が出席した。
総会は中島浩副理事長の司会で進行し、仁木俊行副理事長が開会の辞。あいさつを行った鈴木理事長は、全国で組合員書店の減少が続く厳しい状況に触れた後、鈴木理事長が日書連で担当する指導教育委員会の活動について、2006年に発表した『全国小売書店経営実態調査』の改訂版を実施すると説明。「その当時からどのように経営実態が変わっているのかを調べ、書店の声を出版業界に反映させたい。日書連の各委員会は書店が生き延びるための手段を考えていこうと活動しており、千葉県組合もその観点に立って運営していきたい」と述べた。
鈴木理事長を議長に議案審議を行い、村田正喜理事が事業報告、事業計画案を説明。①官公庁、業務用資材の共同販売事業②会館の貸付利用事業③組合支部組織の活性化④日書連における書店経営健全化への推進⑤出版物再販維持運動の継続――等の事業計画を承認した。委託販売事業については、出窓社『自分史年表』を紹介し、書店に実のある販売条件の商品を扱っていきたいと述べて企画の提案を広く呼びかけた。
その他の報告では、消費税署名運動について、「教育・文化を支える出版物に軽減税率適用の成就を目ざして」と題する文書を作成し、各組合員に協力を呼びかけたと説明があった。
また、9月11日に「千葉県の地元書店保護育成に関するお願い」と題する陳情書を鈴木栄治県知事や県教育長、県議会に提出したと報告した。陳情書は、街の書店は地元の教育力と文化の向上に貢献しているとして、本の購入の際、学校や図書館等の公共機関は他県の業者でなく街の書店を優先するよう求めるほか、購入予算の増額などを要請する内容。
来賓あいさつで日書連の石井和之事務局長は、重要課題として消費税問題に言及。出版物への軽減税率適用を求める署名運動は、臨時国会会期中に各政党に請願を行う方針だとして、一層の協力を呼びかけた。また、現行税率で発行された雑誌は、税率改定後に次の号が発売されるまで旧税率で販売するという「経過措置」が実施された場合の問題点を説明。出版業界で関係省庁に交渉を進めており、日書連としても店頭で混乱のないよう対応を図っていきたいと述べた。
総会終了後、千葉県中央会、出版社、取次などを交えて懇親会を開催した。

書店再生、雑誌付録改善に取組み/東京理事会

東京都書店商業組合は10月2日に書店会館で定例理事会を開催した。各委員会の主な報告・審議事項は次の通り。
〔総務・財務〕
東京都最低賃金(地域別最低賃金)が改定され、10月19日から19円引き上げられて時間額869円になることを報告。TOKYO書店人月報で組合員に周知を図ると説明した。
11月2日から4日まで開催される「第23回神保町ブックフェスティバル」の「本の得々市」等に青年部が2台のワゴンを出展、東京組合から補助金を出すことを承認した。
来年1月15日(水)に開催する平成26年新年懇親会は、実行委員長を本間守世副理事長が務めることを報告した。
〔書店再生〕
書店再生運動は、実用書増売企画に続いて「雑誌の付録綴じは書店業務からなくす」に取り組むことを決定しており、付録を綴じた完成品を送付するよう改善を求める文書をまとめて日書連に提案し、出版社を訪問して要請していきたいと説明した。
〔デジタル戦略推進〕
双葉社のコミック『永遠の0』の店頭連動企画は、97店253セットの注文があり、電子書籍販売サイト「BOOKSMART」のPRが入ったオリジナルPOPなど拡材4点を、申込み書店に送付した。12月21日の映画公開を前に、著者と協力した連動企画の実施も検討していく。
〔事業・読書推進〕
増売企画として、暮しの手帖社『別冊暮しの手帖の基本料理』と『暮しの手帖』バックナンバーフェア、小学館『きっずジャポニカ新版』、河出書房新社『伊能図大全』、ぴあ「ぴあレシピフェア」他について、各社担当者が企画説明を行った。

トーハン創立64周年記念式

トーハンは9月19日に本社8階大ホールで創立64周年記念式を開催し、併せて永年勤続者29名の表彰を行った。藤井武彦社長のあいさつ要旨は以下の通り。
「現在の出版業界は大きな『転換点』に差し掛かっている。私たち全員が本来の力を十全に発揮して改革を実行するならば、トーハンは必ず転換点を乗り越え、発展していけると信じている。
今後のトーハンには3つの柱がある。第1の柱は書籍・雑誌を中心とした既存マーケットへの取り組みだ。市場の変化に対応しながら、変わらぬ挑戦をしていかなければならない。
第2の柱は『複合化』と『物流強化』だ。複合化は、4月から複合事業本部を発足、マルチメディア部門はトーハンで一体運営する体制とした。物流は、8月にトーハンロジテックスを設立、9月にトーハン本体の書籍・雑誌の物流業務を移管して、業務が順調にスタートしている。
第3の柱として、『新しい業をおこす』という視点から、本社再開発構想プロジェクトがある。本社の3750坪の土地をどのように活用するか、皆で考えていきたい。
来年は節目となる65周年を迎える。『情熱』をもって仕事に向きあい、過去に例のない改革にも思い切って『挑戦』し、『スピード』感をもってトーハンを前に推し進め、全員が力を尽くして目標を達成することを誓い合いたい」。

第22回パンパクに295名が出席/関西日販会

関西日販会は9月12日、大阪市中央公会堂で第22回関西日販会出版博覧会(パンパク)を行い、書店152名、出版社143名の計295名が出席した。
今回の商談会は出版社66社が出展し、各社がおすすめ商品を紹介する1分間の「得トーク」コーナーや商談会でアピール。日販や関連企業のお茶の水商事も出展し、文具パッケージ「Sta×2」を中心とした開発商材やLEDレンタルの提案を行った。
あいさつした長谷川政博会長は「パンパクも22回を迎えた。10年前に志ある出版社と出会ったのがきっかけで、このように継続して開催できている。この絆を大事にして、これからも続けていきたい」と述べた。
「得トーク」は、商談時間を長く確保する狙いから、前回同様に先着40社に限定。また今回も各社おすすめ商品の紹介冊子を事前に参加書店に配布した。さらに新しい試みとして、各ブースで一般読者向けに各社一押し商品の紹介シーンを撮影し、書店店頭の販促用DVDとして会員書店に提供する。

参考図書

◇『本との出会いを創り、育てるために』(本の学校編、出版メディアパル刊)
1995年から5年間にわたり、鳥取県大山町で開かれた「本の学校大山緑陰シンポジウム」は、その後ほぼ2年ごとに場所を変え、2006年からは東京国際ブックフェア会場での「出版産業シンポジウムin東京」に引き継がれた。本書は「出版産業シンポジウム2012」の全記録を1冊にまとめたもの。A5判、200ページ、定価本体2400円。
第1部は、シンポジウム全体会「本との出会いを創り、育てるために」の内容を紹介。本と出会う場としての書店空間は今後も魅力的な場所として存在し続けることができるのか、NPO法人化した「本の学校」は何を目指すのかを、星野渉氏をコーディネーターに、片山善博氏、菊池明郎氏、山﨑厚男氏、永井伸和氏の各パネリストが語る。第2部は、「ローカルな本の環境づくり」「売上を伸ばせる人材をつくれ!」「生涯読書」「リアル書店で〝デジタル〟をどう活用するか」の4つの分科会報告を掲載。

北の大地で輝けin札幌/書店新風会地方総会に133名

書店新風会は9月20日、北海道札幌市中央区の札幌パークホテルで第54回地方総会「北の大地で輝けin札幌」を開き、会員書店23名をはじめ出版社83名、取次8名など総勢133名が出席した。なにわ書房が幹事店を務めた。北海道での開催は22年ぶり。
なにわ書房で臨店研修を行った後、会員書店による総会を開催。高須博久会長(豊川堂)は、大垣書店が実施している読書マラソンに自店でも取り組んだと報告し、「会員書店が面白いことをやったら、他店にも広め、新風会として販売促進や読書普及運動のエネルギーにしたい」とあいさつした。
出版社などを交えて行った懇親会では、なにわ書房の浪花剛社長が「弊社は41年間営業してきた旗艦店『リーブルなにわ』を今年閉店した。しかし残る3店舗は、客数は前年比103・1%、売上高は105・1%と、従業員の努力で売上を伸ばしている。地場の書店として気を引き締め、1人でも多くのお客様に満足してもらえるよう努力する」とあいさつした。
高須会長は「昨年の総会で紹介したICT委員会は、若手メンバーが時代の変化をとらえ頑張っている。『右手に紙の本、左手に電子書籍』の時代がいずれやって来るが、まず紙の本を伸ばしていかねばならない。お客様に『この1冊があなたの人生を豊かにする』と訴え、いい本を紹介していく。新しい時代になっても書店が書店として経営していけるビジネスモデルを作りたい」と述べた。
出版社を代表して中央経済社の山本時男最高顧問は、なにわ書房創業者で現社長と同性同名の故・浪花剛氏が日書連で返品、消費税問題などに取り組んだことを紹介し、「出版界にかくかくたる功績を残した」と称賛。日販の平林彰社長は「雑誌愛読月間で定期購読が増えている。リアル書店の強みの1つはお客様にお声掛けし、商品をお薦めできること。飯の種であり経営の根幹である雑誌を盛り上げたい」と述べた。

日書連のうごき

9月2日全国中小企業団体中央会の商業専門委員会に舩坂良雄会長が出席。出版平和堂実行委員会。
9月3日出版流通白書の事務局連絡会。
9月6日大商談会実行委員会。
9月11日日本出版インフラセンター運営委員会に柴﨑繁副会長が出席。
9月12日出版倫理協議会に井上俊夫理事が出席。
9月13日全国中小小売団体連絡会。
9月18日各種委員会。大橋さん大川さんに感謝する会。
9月19日定例理事会。図書コード管理委員会に柴﨑繁副会長が出席。
9月24日公取協会月例懇談会に柴﨑繁副会長、影山稔監事が出席。
9月26日ためほんくん準備会・全体会・部会に深田部会長が出席。大商談会実行委員会。
9月27日日本図書普及役員会に舩坂良雄会長他出席。

日販創立64周年記念式典

日販は9月10日に本社5階会議室で創立64周年記念式典を開催。社長賞、業務革新賞、利益拡大賞、社会貢献賞の表彰を行った。平林彰社長のあいさつ要旨は以下の通り。
「我々が№1になり、№1であり続けることができているのには2つの理由がある。日販人のDNAとして受け継がれてきた『チャレンジ精神』と、取引先の成長が日販の発展に繋がるという『顧客志向』だ。
長年、新しいことへ積極的に挑戦してきた。これが『企画の日販』と呼ばれた所以だ。また『読者に応える流通革新』に向け、物流面では大型物流拠点を次々に構築して最新鋭のFA設備を導入。情報システム面では、オンライン受発注システムの構築と合わせてPOSレジやNOCSの導入を進め、業界三者間のデータ連携を実現した。
こうしたインフラをベースに、www.projectが発足し、SCMの概念を成立させた。返品率を下げ、書店マージンを30%にしようという出版流通改革は、『チャレンジ精神』と『顧客志向』から生まれている。
今年度は中期経営計画『Change』の2年目に当たる。『流通改革』の目標達成にはゴール・ビジョンを明確にし、諦めずに挑戦することが必要だ。変革を実現するための強い意思を持って一緒にチャレンジしていこう」。

乱歩賞に竹吉優輔氏の『襲名犯』

日本推理作家協会主催、講談社・フジテレビジョン後援の第59回江戸川乱歩賞の贈呈式が、9月6日午後6時から東京・千代田区の帝国ホテルで開催された。
今回受賞したのは、竹吉優輔氏の『襲名犯』。贈呈式では、日本推理作家協会の今野敏理事長、講談社の野間省伸社長、フジテレビの亀山千広社長があいさつ。今野理事長から竹吉氏に正賞の江戸川乱歩像と副賞が贈られた後、選考委員を代表して東野圭吾氏が「得点だけを言えば受賞作はナンバーワンではなかった。ただ、難易度の高い題材に挑戦していて、もっと鍛えれば乱歩賞の壁を乗り越えるような作家になってくれるだろうという期待を込め、受賞となった」と選考経過を報告した。
竹吉氏は「『襲名』という言葉には、先代の芸をただ模倣するのではなく、さらに自分の芸を付加し、その名に格を与えるという意味があると思う。私も乱歩賞受賞者という名を襲名した以上、常に研鑽し、乱歩賞出身者に竹吉ありと言われるような作家になりたい」とあいさつした。