全国書店新聞
             

平成27年2月15日号

4・5%減の1兆6065億円/2014年出版物販売金額/出版科研調べ

2014年の出版物の推定販売金額は前年比4・5%減の1兆6065億円と10年連続の前年割れとなり、09年の4・1%減を上回って、1950年の統計開始以来最大の落ち込みとなったことが出版科学研究所の調べで分かった。昨年4月の消費税増税によって読者の出版物への支出が抑制され、単発需要の強みを発揮して健闘してきた書籍が一気に落ち込んだ。さらに、若者はスマートフォンなどに時間を奪われ、雑誌の需要減退に拍車をかけたとみられる。
書籍の推定販売金額は前年比4・0%(307億円)減の7544億円と8年連続のマイナス。推定販売部数は同4・8%減の6億4461万冊と販売金額以上の落ち込みとなった。
消費税増税による購買マインドの冷え込みの影響が大きく、文庫本など廉価な商品にまで読者の買い控えが顕著に表れ、年後半になっても回復しなかった。全体を牽引する売れ筋商品が乏しく、ベストセラー商品の部数水準も低かった。同研究所の年間単行本総合ランキングでミリオンセラーはゼロ。集計対象外の実用書で唯一、『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム)が100万部に到達した。
新刊点数は7万6465点で同1・9%減。内訳は
取次仕入窓口扱いの新刊が同1・6%減の5万5162点。注文扱い新刊は同2・6%減の2万1303点。取次仕入窓口経由は文庫本、児童書、図鑑などは点数増となったが、11~13年にかけて激増した震災関連書が一気に200点以上も減少。新書の刊行も抑制されたことが影響した。
平均価格は、新刊が同2・0%増の1142円と3年連続上昇。文庫本など廉価版の発行部数の減少が要因。出回りは同1・2%増の1116円と上昇に転じた。
返品率は同0・3ポイント増の37・6%と悪化。取次各社が新刊配本の引き締めを積極的に行ったものの、それを上回る販売状況の悪化で、上昇に転じた。
ジャンル別では、文芸書の不振が目立った。本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』(和田竜、新潮社)、『女のいない男たち』(村上春樹、文藝春秋)、『銀翼のイカロス』(池井戸潤、ダイヤモンド社)など一部人気作家の作品や話題作は売れたものの、裾野の広がりは見られなかった。
一方、『人生はニャンとかなる!』『人生はワンチャンス!』(ともに水野敬也・長沼直樹、文響社)が2点で132万部になり、渡辺和子、矢作直樹がロングで売れるなど、自己啓発書や人生訓が引き続き好調だった。
書籍市場の低迷について、出版科研は「スマートフォンなど他メディアへの接触時間が増え、読書時間が減るというライフスタイルの変化とともに、14年は増税が追い打ちをかけ、『本を買って読む』ことへの読者の意欲の低下が顕著に感じられた」と分析している。
雑誌の推定販売金額は前年比5・0%(452億円)減の8520億円と17年連続のマイナスとなった。内訳は、月刊誌が同4・0%減の6836億円、週刊誌が同8・9%減の1684億円。月刊誌にはコミックスが含まれており、コミックスとムックを除く定期誌の販売実績は約7%の落ち込みとなる。
推定販売部数は同6・4%減の16億5088万冊。内訳は、月刊誌が同5・3%減の11億5010万冊、週刊誌が同8・9%減の5億78万冊となり、週刊誌の落ち込みが大きい。
平均価格は同1・5%増の532円。内訳は、月刊誌が同1・2%増の607円、週刊誌が同0・6%増の346円。推定発行部数は月刊誌・週刊誌合計で同4・5%減の26億6832万冊。推定発行金額は同3・2%減の1兆4193億円。
返品率は同1・2ポイント増の40・0%と、40%台に達した。縮小均衡に陥ることを懸念して送品を絞りきれなかったことが原因と見られる。
創復刊点数は同1点増の87点。3年連続で100点を下回った。創刊部数は同14・1%増。また、休刊点数は同45点増の169点と、創刊点数を大幅に上回った。休刊部数は同196・1%増。ムックは同1・4%減の9336点と点数増に歯止めがかかった。定期誌の不振を補うため強気に刊行されてきたムックだが、販売効率の悪化を懸念して点数を抑制する出版社も出てきた。発行銘柄数は同2・0%減の3179点となり、8年連続で減少した。
部門別動向を見ると、女性誌は同11・9%減と過去最大の落ち込みとなった。20代向けは大部数の主要誌が不振な上、インフォレストの「小悪魔ageha」をはじめギャル誌が一気に休刊し、若い女性向けの雑誌のボリュームが急激に縮小した。付録付き雑誌も大幅に部数を減らし、宝島社の女性誌で付録を外す動きが出た。「with」「MORE」「non‐no」は付録付き本誌と付録無し増刊を同時発売した。30歳前後のアラサー向けは好調なものが目立った。
男性誌は同0・8%の微減と健闘。ファッション誌では10代~20代向けストリートファッション誌が苦戦し、「Safari」「OCEANS」といった海外モデルを起用する30代~40代向け雑誌が堅調だった。
なお、電子書籍の市場規模が拡大傾向にあることから、出版科研は「紙の出版と電子出版の両方のデータを合わせて見ていかないと、出版市場の趨勢を正しく捉えられなくなってきた。今後は電子書籍、電子コミック、電子雑誌など分野別の月次統計調査を出版業界をあげて行う必要がある」と提言している。

実用書増売企画「書店金賞」スリップ受付は締切ました

昨年12月で報奨金の対象販売期間を終了した日書連主催の実用書増売企画、第1回「書店金賞」の売上スリップ受付は、既に1月15日で締切りました。

書店経営実態調査にご協力を

日書連では、各都道府県書店商業組合加盟店を対象に「全国小売書店経営実態調査」を実施します。書店経営の現状を把握し、今後の日書連活動の方向を見定める資料として役立てようというものです。全国書店新聞本号に挟み込まれた調査票に記入の上、2月28日までにFAXで日書連事務局までお送りください。調査にご協力くださいますようお願いいたします。

再販弾力運用は書店にも利益ある方法で/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(筒井正博理事長)は1月16日、横浜中華街の華正樓で定例理事会を開催した。
理事会では報告事項に続いて議題を審議。再販ではアマゾン問題について、定価販売を守る再販契約があるのだから、大手出版社が「再販を守れ」と言うべきではないか、また再販弾力運用は書店にも利益のある改善を求めたい、との議論があった。出版物への消費税の軽減税率については、消費税そのものの問題をよく考えていきたいとの考えが示された。
このほか、書店経営の実情について、街の本屋の存続の危機に「お願い」という形で、神奈川県組合として県の各政党本部に実情を訴えて理解してもらい、どのような改善策があるのかなど行動を起こしたい、との報告があった。
理事会終了後、別室に移り新年懇親会を開催した。(水越孝司広報委員)

東京組合青年部、2月20日に25周年の会を開催/来場を歓迎

東京都書店商業組合青年部は、設立25周年を迎えるにあたり、「25執念(周年)企画『無制限一本勝負!』共に飲んで熱く語ろう」と銘打った記念の会を2月20日(金)午後3時から東京・千代田区の書店会館3階会議室で開催する。
出版社、取次、書店、定年退職や閉店した方など、青年部に携わってきた全ての出版人を招待して旧交を温めたいとの趣旨で、参加費無料。時間は20日午後3時から無制限とし、「空いているお時間にいつでもご来場ください」としている。

理事定数は現行40名を継続/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は2月3日に東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。各委員会の主な報告・審議事項は次の通り。
〔組織〕
平成27年度は役員改選期にあたることから、理事定数40名を現行のままとするかについて、各エリア会議での検討を依頼していたが、その報告結果を委員会で審議し、定数は現行通りとすることとした。
〔事業・読書推進〕
組合で扱う都政刊行物の手数料の料率見直しを都に申し入れていたが、現状維持との回答が来たことを報告した。
〔取引・流通改善〕
送品・返品同日精算で、3月15日から3月末までの入帳状況の調査を、調査協力店4店に依頼した。
TS流通協同組合の12月期発注件数は5218件(前年同月比109・5%)、売上金額は612万8149円(同149・0%)、書店数は39店(同78・0%)。1月期発注件数は4042件(同94・2%)、売上金額は380万6566円(同79・7%)、書店数は34店(同68・0%)だった。
〔デジタル戦略推進〕
「BOOKSMART」の店頭連動企画は、双葉社・モンスター文庫の『ギルドのチートな受付嬢』1巻と2月27日発売の2巻に約10ページの特別版ストーリーをダウンロードして読めるクーポンを封入して販売する。実施期間は1ヵ月で36店での展開を予定。

日書連のうごき

1月6日出版情報登録センター管理委員会。
1月7日日教販春季大市会に舩坂会長が出席。書店新風会新年会に舩坂会長が出席。
1月8日出版クラブ名刺交換会に舩坂会長、柴﨑、小泉両副会長、筒井、本間両理事が出席。公正取引委員会委員長講演会・賀詞交歓会に柴﨑副会長、出版物小売公取協・吉武顧問が出席。
1月14日出版倫理協議会。JPO運営委員会。東京都書店商業組合新年会。
1月19日全国中央会決算実務研修会。
1月20日全国万引犯罪防止機構臨時総会。
1月23日JPOためほんくん全体会。
1月28日全国中央会月例研修会。公正取引委員会出版物ヒアリングに小泉副会長が出席。
1月30日日本図書普及役員会に日書連幹部が出席。出版5団体合同新年会。

書店の経営環境改善を求める/北海道新年懇親会で志賀理事長

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は、1月27日午後6時から札幌市中央区のJRタワーホテル日航札幌で、平成27年北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会を開催し、47名が出席した。
主催者側として、北海道取協のトーハン・小川徹北海道支店長があいさつ。北海道組合・志賀健一理事長はあいさつで書店の経営環境について言及し、書店にもう少し余裕がないと良い店も作れない、と指摘。取次への要望として、これ以上書店が減っていくような事態を止めていただきたいと求めた。また、懇親会の前に開催した北海道組合理事会について、「情報を共有し、知恵を合わせて生き残ろうと話し合った」と述べた。
この後、小学館パブリッシング・サービスの伊端永人北海道エリアマネージャー次長の発声で乾杯。懇親を深め、今年の活躍を誓い合った。
〔返品入帳問題、大商談会などで協議/北海道理事会〕
新年会に先立ち、北海道書店商業組合は1月27日午後4時半から、定例理事会を開催した。
志賀理事長が日書連理事会及び委員会の報告を行った後、北海道組合の活動について協議。返品入帳問題について現状の説明があったほか、第2回北海道書店大商談会について、日程調整や準備が行われている旨報告があった。
また、2015年の総会を6月19日(金)に開催することを決めた。
(事務局・髙橋牧子)

候補10作品が決定/本屋大賞

「2015年本屋大賞」のノミネート10作品が1月21日に発表された。1次投票は14年11月1日~15年1月4日に行った。今後2次投票を行い、4月7日に大賞作品を発表する。ノミネート作品は以下の通り。▽伊坂幸太郎『アイネクライネナハトムジーク』幻冬舎▽吉田修一『怒り』中央公論新社▽川村元気『億男』マガジンハウス▽阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』文藝春秋▽』西加奈子『サラバ!』小学館▽上橋菜穂子『鹿の王』KADOKAWA角川書店▽月村了衛『土漠の花』幻冬舎▽辻村深月『ハケンアニメ!』マガジンハウス▽柚木麻子『本屋さんのダイアナ』新潮社▽米澤穂信『満願』新潮社

小学館「名探偵コナン」が受賞/読売出版広告賞

新春懇親会に先立ち、読売新聞東京本社は第19回読売出版広告賞の贈賞式を開催。14年1月~12月に読売新聞に掲載されたすべての出版広告の中から、14年1月1日朝刊に掲載された小学館の「連載20周年名探偵コナン」の全15段広告に大賞が贈られた。金賞はプレジデント社/アトミックスメディア「Forbes」(同6月25日朝刊他、全5段)、銀賞はダイヤモンド社「銀翼のイカロス」(同9月3日朝刊、全15段)、銅賞はワニブックス「Cookシリーズ100万部突破」(同4月22日朝刊、全15段)、特別賞は青幻舎「盆おどる本」(同8月13日朝刊、3段8割)。

読売新聞社新春懇親会「軽減税率適用へ連携を」/読売・白石社長と取協・藤井会長

読売新聞社は1月28日、東京・千代田区の東京會舘で、出版社、取次、書店など出版業界関係者ら約600名を招いて新春懇親会を開催した。
冒頭あいさつした読売新聞グループ本社の白石興二郎社長・編集主幹は、新聞・出版物への軽減税率適用問題について「新聞界と出版界が連携し、17年10月に予定されている税率10%への再引き上げの際には、他の生活必需品と合わせて新聞・出版物に軽減税率が適用されるよう取り組んでいきたい」と述べた。
来賓を代表して登壇した日本出版取次協会の藤井武彦会長(トーハン)は「新聞と出版に共通の課題は軽減税率。ここ半年が勝負どころだ。新聞協会とスクラムを組み、新聞と出版物への適用を実現しなければならない」と訴えた。
再販問題では「再販堅持と形骸化させないことを大前提とし、市場の長期低落傾向が続く中、部分再販・時限再販の弾力的な運用に向けた議論を深めていくべき」との考えを示した。
また、公共図書館の複本問題に言及し、「住民サービスの本質をはき違えている図書館が顕在化している。住民ニーズの名の下にベストセラー、文庫、コミックの同一タイトルを多数購入し、貸し出す。複本問題は、地域書店の売上に影響を及ぼし、作家につながる拡大再生産のサイクルも弱めるという問題点が指摘されている。今の公共図書館には迎合的な図書館ポピュリズムがある」と指摘。「公共図書館の本来的な役割は何かを見据え、軌道修正の働きかけをしながら、持続可能な知的環境作りを進めたい」と語った。

高齢者、防犯画像、集団窃盗で提言/全国万引犯罪防止機構臨時総会

全国万引犯罪防止機構(万防機構、河上和雄理事長)は1月20日、東京・新宿区の主婦会館で平成26年度臨時総会を開催。万引犯罪防止のための喫緊の課題である高齢者万引対策、防犯画像の取扱い、集団窃盗の情報の取扱いに関する提言を承認した。
臨時総会の冒頭、竹花豊副理事長があいさつ。万引問題に対する社会的な関心の高まりが昨年の大きな特徴だったと指摘し、その要因として高齢者の万引が青少年の万引を上回ったこととともに、まんだらけ問題を契機に万引被害の実情が知られ、監視カメラにも関心が寄せられるようになったことを説明。また、減り続ける犯罪件数の中で万引だけは高止まり傾向にあり、犯罪全体の1割を占めるようになった点に言及した。
こうした中、万防機構は10年目を迎え、長年の取り組みが対外的に注目されているとして、「昨年来、最近の万引問題の大きな変化にどう対処すべきか正面から考えることにチャレンジしている。高齢者万引対策、集団窃盗への対処、防犯画像の取扱いについて、関係委員会でタブーを打ち破って検討を続けてきた。今後どうするか議論したい」と述べた。
議事ではすべての議案を原案通り承認した。高齢者万引対策については、65歳以上の高齢者による万引犯罪の割合が全体の3割を超えて青少年を上回り、再犯率も極めて高いことから、関係機関の早い段階での措置及び連携の重要性、水際での万引の未然防止対策の推進などを提言した。
防犯画像の取扱いについては、防犯画像内の個人の人権に十分配慮しながら、万引被害を防止するために必要な措置として、防犯画像の積極的かつ適切な活用に努めるべきと提言。この提言を推進するため、防犯情報共有コンソーシアム(仮称)の構築も承認した。
集団窃盗の情報の取扱いについては、組織的・計画的な犯行に対処するため、IT技術の活用等により被害情報の迅速な警察通報と、企業ぐるみ、地域ぐるみの情報共有が必要と提言。また、万引犯罪の全件警察への届出の促進のため、届出後の事件処理結果等の被害者等に対する通知制度の普及促進を図ることも承認した。

万防機構緊急提言・万引犯罪防止への喫緊の対応策①/高齢者万引対策に関する提言

全国万引犯罪防止機構は1月20日開催の平成26年度臨時総会で、万引犯罪防止への喫緊の対応策として「高齢者万引対策に関する提言」「防犯画像の取扱いに関する見解及び提言」「集団窃盗等の情報の取扱いに関する提言」の3つの提言を議決した。このうち、今回は「高齢者万引対策に関する提言」を紹介する。
〔1、問題の背景と当機構が検討する理由〕
万引犯罪は少年非行の代表的犯罪と言われていたが、平成24年中に発生した万引犯罪の検挙人数において、65歳以上の高齢者による万引犯罪の割合が全体の3 割を超え、青少年を上回っており、高齢者犯罪の代表的犯罪となりつつあることから、高齢者万引対策が急務である。
警視庁の被疑者データによると、高齢者が盗むのは食料品が大半を占め、被害金額は約80%が2000円以下と少額である。被疑者からの聴取によれば捕まると思わなかった、悪いことだと思わなかった、お金を払えば済むと思ったと安易に受け止めている高齢者が88%を占めている。また、
高齢者万引は極めて再犯率が高い犯罪でもある。更に、被疑者の万引に対する認識として「全件警察へ届出」を知っている者は約10%であり、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ということを半数以上の約57%の者が知らないという状況である。
万防機構が行ったスーパーなどの警備や総務担当者へのヒヤリング調査結果では、「入店後すぐに万引したい商品がある売場に直行し、持参した袋に、その商品を隠匿しており、明らかに計画的である。また、逮捕後の言い訳も巧妙で同情を誘ったり、病気を偽ったりする」といったような犯行実態が明らかになった。実際、万引をした高齢者の
大半が、支払い能力があるにもかかわらず、利得の目的で万引犯罪を犯している。
そこで、万防機構は、本年5月にこの問題を検討する「高齢者万引対策に関する調査研究小委員会」(以下、委員会という。)を設置し、万防機構メンバー、業界関係者、弁護士などが参加して、検討を進めてきた。以下のとおり、委員会の考え方をまとめたが、今後、各般の意見を賜り、機構としての見解をまとめ、公表することとした。
〔2、委員会の基本的考え方〕
①関係機関の早い段階での措置及び連携の重要性
万引をした高齢者の半数が独り暮らしという状況があり、「家族との絆」、「近所との絆」、「行政との絆」からの孤立により、自分の存在価値や役割を認識しづらくなったり、相談相手がいないために善悪の判断があいまいになったりしているのではないかと推察できる。
それに関しては、平成26年版犯罪白書で「他人とのコミュニケーション能力に乏しい者に対するカウンセリング等の心理面や医療面での支援のほか、地域社会において本人を取り巻くサポート体制を再構築し、地域社会内に再統合していく方策が必要であると考えられる。」と示されている。
さらに、同白書にある「医療的措置を講ずる必要性がある者に対しては、地方公共団体や地域包括支援センター、医療機関等も含めた関係諸機関の間で適切な連携を図ることで適切な医療的措置が講じられるようにする必要がある。」と示唆されている。
これらのいわゆる犯罪原因論に関する一連の措置は、所管する行政機関や専門機関の一層の推進と連携を希求するものである。
②水際での万引の未然防止対策の推進
万防機構の主な役割は、小売業の現場で万引犯罪を未然防止することにある。よって高齢万引企図者においても、万引できない売場作りや環境の整備を主眼する犯罪機会論の一連の措置を推進したいと考える。
犯罪に手を染めやすい人々を犯罪から守るために、経営者や店長が「この店が地域から愛されるためには、地域のお客様(高齢者や成人や青少年)から万引犯を出さないように、みんなで協力して取り組もう」と率先垂範することで、情報は共有化され対策が継続されると考える。いま一度、高齢者を含む万引の未然防止対策をご検討いただきたい。
〔3、提言〕
〈小売業関係〉
①来店時には、「こんにちは。いらっしゃいませ。」、退店時には「ありがとうございました。」との自然な挨拶によって相手の存在を認識していることを積極的に伝えるとともに、自然な会話が交わされるような明るい店づくりを行っていただきたい。
②小売業も地域社会の一翼を担っていることを認識し、店舗を取り巻く地域社会の協力を得ることが重要である。町内会・学校・警察等との連携を密にし、例えば、高齢者自身にボランティア等で店の見回りや案内をお願いしたり、店舗の近くの学校等の子どもや店舗を利用する高齢者から万引防止の標語を募り、店内に掲示するなど、地域の絆対策の推進をお願いしたい。
③まずは各地の万引防止連絡会等で開催されている研修会で指導されている未然防止に向けてのソフト面やハード面の対策を推進いただきたい。経済産業省の生産性向上設備投資促進税制等の利用もお考えいただきたい。
④平成22年から始まっている全件警察へ届けることを徹底し、更に、被害者等通知制度を使って、届けた案件がどのように処理されたかを確認することをお願いしたい。
⑤高齢者の万引犯罪にはマイバックを使用したケースも多いことから、マイバック使用時のマナー等の普及啓発活動を行っていただきたい。
⑥小売業関係団体は傘下の小売業者に対し、ポスターづくりや地域社会への広報誌づくりを行っていただくなど、その地域にあった広報活動を推進させ、万引犯罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という重大な犯罪であることを店舗の利用者に普及啓発していただきたい。
〈関係機関〉
①ある県では、高齢者に「万引防止アドバイザー」という資格を与えて店の巡回を実施しているが、このような取組みが各都道府県においても実施されることが必要である。また、このような取組みの他にも、生き甲斐や遣り甲斐を感じることができるような活気ある社会を実現するため、高齢者によるボランティア団体やサークルの設立を促進し、それらの活動を積極的に支援する取組み
を構築いただきたい。
②再犯防止の一環として、認知症や病的窃盗等の方に対して周囲が手助けをする仕組みが必要である。詳しくは平成26年版犯罪白書に委ねたい。
③高齢者は万引犯罪を非常に安易に考えている傾向が強いことから、警察は、少額事案であっても成人や青少年と同じように厳格な対応をお願いしたい。最低限微罪処分とするなど、犯歴を残すことによって、次に補足された際に、初犯か再犯なのかを正しく判別できるようにしていただきたい。
④小売業者は警察への全件届出を推進しているが処理に要する時間が未だ短縮されていないという意見と調査データがあり、この時間短縮に関して官民合同の委員会を設置するなど小売業との協議を推進していただきたい。
⑤検察は、万引犯罪に対して、刑法235条の厳格な適用と処罰内容の公表の迅速化をお願いしたい。略式事件などの罪名に関して、窃盗罪全体の統計だけでなく、万引の件数も明らかにされたい。
〈報道関係〉
①高齢者は万引犯罪を非常に軽くとらえている傾向がある。万引犯罪を犯した場合の店舗への影響、本人や家族への影響などの実態を正しく報道されたい。更に、窃盗罪の適用事例をタイムリーに報道して社会に知らせることにより、万引犯罪は“間尺に合わない”と認識させていただきたい。
②万引犯罪は暗数が多く被害実態が正確に把握できない犯罪であるが、把握されているだけでも年間推計額が4615億円という大きな経済損失を受けている。万引による経済損失は国の財政からも無視できない数字である。このことを踏まえた報道をお願いしたい。
〔4、結びに〕
〈高齢者〉
①高齢者の一人ひとりが日本社会の一員として、後輩たちの手本の役割を果たしていただきたい。
②高齢者によるボランティア団体やサークルを設立し、または、それらの活動に参加するなど、一人ひとりの高齢者が、地域社会の高齢者と気軽に付き合える仲間をつくり、生き甲斐や遣り甲斐を感じることができる活気ある社会を実現に協力いただきたい。
高齢者万引問題で、多数の海外メディアの取材があるのは、多くの国が直面する高齢化社会の行く末を案じてのことだと思われる。もはや万引はお店や警察だけの問題ではなく、あらゆる地域やすべての人に関わる問題になって来ている。安全な街づくりをオリンピック招致のうたい文句の一つにしたわが国にとっては早急に対応されるべき課題
であり、世界に対して良きお手本を示すチャンスではないかと考える。

ヤングアダルト世代向け図書目録を刊行

出版社18社で構成するヤングアダルト図書総目録刊行会(岡垣重男会長=河出書房新社常務)は2月4日に『YA図書総目録2015』を発行した。A5判、頒布価格本体286円。
ヤングアダルト(YA)世代に向けた日本唯一の目録で、110社約2300点を掲載。掲載書目は「自然科学」「社会科学」「芸術・スポーツ」「文学」など11の分類に大別し、さらに56項目に細分化して掲載しており、それぞれ「中学生向け」「高校生向け」といった読者対象を付して選書しやすくしている。
今年版は読者人気の高い巻頭エッセイを「龍のすむ家」「ドラゴンシップ・シリーズ」など多くの海外児童文学の翻訳を手掛ける三辺律子氏が執筆。また、新企画として「世界の読書」をスタート、第1回はサウジアラビアの読書環境を紹介している。
さらに29の出版社による「朝の読書」におすすめする書籍の紹介、図書館・書店でのYA図書の普及に向けた取り組み、中学・高校での「朝の読書」実践レポートなどを掲載する。
同刊行会は、全国の「朝の読書」を実践する約1万1千校の中学・高校に送付しているほか、各種ブックフェア、関連催事で配布される予定。

人事

(◎昇任、○新任)
【取締役に渡部正嗣氏/日教販】
日教販は12月22日開催の定時株主総会並びに取締役会で下記の役員を選任、併せて職制担当業務の一部変更を行った。
代表取締役社長〔全体統括〕河野隆史
取締役副社長〔物流管理部、情報システム部、デジタル事業部担当、関連会社所管〕増澤富男
同常務執行役員〔経営企画部長、総務人事部長経営企画部、総務人事部担当〕
◎宮下謙一
同執行役員〔教科書部長教科書部、仕入部、在庫管理担当〕小野田裕
同執行役員〔販売受注部長、販売部門統括営業企画部、販売促進部、販売注文部担当〕○渡部正嗣
同・非常勤〔㈱第一学習社代表取締役〕松本洋介
同・非常勤〔日本出版販売㈱専務取締役〕加藤哲朗
常勤監査役○山田俊明
執行役員〔デジタル事業部長〕新藤由幸
同〔営業企画部長〕
藤原博文
同〔情報システム部長〕
◎青木淳
同〔販売促進部長〕
◎服部健
※山去賢二常勤監査役は退任。

【取締役に村尾雅彦氏/マガジンハウス】
マガジンハウスは12月11日開催の定時株主総会で役員を選任、第1回取締役会で職務を左記の通り決定した。
代表取締役社長石﨑孟
専務取締役〔編集統括〕
秦義一郎
同〔業務統括広告、クロスメディア事業局担当〕
片桐隆雄
取締役〔総務局担当〕
南昌伸
同〔マーケティング局、経理・製作局担当〕
芝山喜久男
同〔編集総局長〕
○村尾雅彦
監査役畑尾和成
同吉田高
※木滑良久最高顧問は名誉顧問に、新宮洋取締役は退任し顧問に就任。
〈機構改革〉
1、第三編集局にクウネル編集部を移管する。
2、第四編集局を新設する。
3、第四編集局にブルータス編集部、ターザン編集部、アンドプレミアム編集部を移管する。
4、総務局にフォトクリエイティブルームを移管する。
〈職務担当変更〉
取締役(総務局担当)
南昌伸
フォトクリエイティブルーム部長兼務を委嘱する
取締役(マーケティング局、経理・製作局担当)マーケティング局局長、宣伝プロモーション部部長兼務
芝山喜久男
マーケティング局局長兼務の委嘱を解く
取締役(編集総局長)
村尾雅彦
第二編集局局長、ムック出版局局長、ムック編集部編集長兼務を委嘱する
〈異動及び役職変更〉
ブルータス編集部編集長
西田善太
第四編集局局次長兼ブルータス編集部編集長とする
フォトクリエイティブルーム部長代理金城昌芳
総務部勤務とする
〈役職変更〉
総務局局長藤野良雄執行役員兼総務局局長とする
営業部部長浪花寛通マーケティング局局次長兼営業部部長とする

【取締役に磯貝毅氏/金の星社】
金の星社は11月26日に開催した定時株主総会・取締役会で左記の役員選任と職制担当業務の一部変更を行った。
代表取締役社長〔出版本部長〕斎藤健司
会長斎藤雅一
取締役〔経営本部長・営業管理部長〕奥津惠市
同〔経営管理部長〕
長島孝好
同〔営業本部長〕
○磯貝毅
監査役鹿田昌
販売部副部長笠原則男
特販部部長◎久保田道夫
広報室室長関野泰子
出版副本部長・編集部編集長鹿田裕子
編集部副編集長
大河平将朗
同阿部文
製作部部長下川征十郎
※渡辺裕相談役は退任。

『21世紀スポーツ大事典』を刊行/大修館書店

大修館書店は、スポーツにかかわる「知」を集大成した、国内最大規模となる総合事典『21世紀スポーツ大事典』を刊行した。B5判1378㌻、本体価格3万2千円。
編集主幹は体育・スポーツ界を牽引してきた中村敏雄(元広島大学教授)、髙橋健夫(元日本体育大学教授・筑波大学名誉教授)、寒川恒夫(早稲田大学教授)、友添秀則(早稲田大学教授・スポーツ科学学術院長)の4氏。テーマごとに19名の編集委員を据え、スポーツ界に限らず各分野の第一線で活躍する執筆者4百名以上の協力を得て、企画・構想から10年超の歳月をかけて完成した。
スポーツの歴史・文化はもとより、メディアやビジネス、技術・戦術、科学技術などスポーツに関わるあらゆる事象を26のテーマ(章)の中に網羅。約250のスポーツ種目を写真やイラストを用いながら、競技の概要・ルールを解説。特に国際大会が行われるスポーツについては、技術・戦術・ルールの変遷も解説している。

日販「WIN」大幅リニューアル/データ保持期間、最大5年に

日販は出版社向けマーケット情報開示システム「オープンネットワークWIN」を大幅にリニューアルし、1月13日からサービスを開始した。
「オープンネットワークWIN(以下WIN)」は、2003年に稼働を開始し、売上推移・市場在庫などのマーケット情報を出版社向けに提供してきた。出版業界のデータインフラとして重版時期判断・部数決定に活用されてきたが、稼働から10年が経過し、出版市場を取り巻く環境が大きく変化していることから、今後のさらなる需要の創出と、商品供給の効率化を図ることを目的に、リニューアル開発を進めていた。
今回のリニューアルのポイントは、①データ提供範囲の拡大②リアルタイム分析の強化③受注・在庫情報の開示④複数銘柄の比較分析機能の導入⑤パブリシティ情報の開示――の5つで、「WIN」の基本機能を向上させ、サプライチェーンマネジメント(SCM)インフラとしての成熟度を高めるとともに、日販独自の情報やノウハウを詰め込んだ。
データ提供範囲の拡大では、従来半年から2年だったデータ保持期間を最大5年間に延長し、発売から期間が経過した銘柄の動向もより細かく分析可能に。開発品も分析対象に加えることで、刊行形態の多様性に対応した。
また、POS売上情報をリアルタイムで分析、出版社の重版情報を1日早めることを目指した。全国約8百書店の売上情報を5分更新で店舗別に閲覧できる。
受注・在庫状況の開示では、送品・売上・返品・市中在庫のデータに加え、書店からの受注状況や日販の倉庫在庫数を開示することで、全銘柄のSCMを可能とした。
銘柄ピックアップ、複数銘柄比較分析など、新たな分析機能を搭載。最大5銘柄の送品・売上・返品実績をグラフで比較できる。また、パブリシティ情報では、新聞・テレビで紹介されたり、映像化された銘柄の情報を効率的に検索できるようにした。