全国書店新聞
             

令和3年5月15日号

読書で学ぶ力あがる/東北大学・川島隆太教授が講演/子どもの読書活動推進フォーラム

文部科学省と国立青少年教育振興機構は4月23日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで「子どもの読書活動推進フォーラム」を開催。『スマホが学力を破壊する』などの著書がある脳科学者・川島隆太氏(東北大学加齢医学研究所長、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長)が講演し、読書の効果と学力に与える良い影響、読書と脳の関係について、科学的データに基づいて具体的に話した。また、子どもの読書活動優秀実践校・図書館・団体(個人)の文部科学大臣表彰、受賞者による事例発表が行われた。
このフォーラムは、4月23日の「子ども読書の日」を記念して毎年開催されているもの。国民の間に広く子どもの読書活動について関心と理解を深めるとともに、子どもが積極的に読書活動を行う意欲を高めることを目的に実施している。
新型コロナウイルス感染症の状況に鑑み、全国の都道府県から被表彰者らが参集する従来の方式ではなく、規模を縮小しての開催となった。講演と事例発表はいずれも事前収録した動画を放映する形で行った。フォーラムの模様はYouTubeでライブ配信した。
主催者を代表して丹羽秀樹文部科学副大臣は「子どもたちが読書を通して心豊かにたくましく成長するためには社会全体で積極的に読書環境の整備を推進していくことが極めて重要」とあいさつ。
来賓を代表して子どもの未来を考える議員連盟会長の河村建夫元官房長官は「デジタル時代になり、多くの子どもたちがタブレットを持つようになった。デジタル技術を学ぶことは必要だが、そこばかりに集中して、本を紐解いて読む、記憶に留める能力が落ちるのではないかという懸念もある。直接本を手に取って読むことの重要性を改めて認識したい」と述べた。
文部科学大臣表彰受賞者による事例発表に続いて、川島隆太氏が「読書が子どもの脳を育てる」をテーマに講演した。
はじめに親子のコミュニケーションに関する研究を紹介し、家庭における親子のリアルなコミュニケーションが子どもたちの脳の発達に良い影響を与えるという科学的事実を提示。読み聞かせは親子の究極のコミュニケーションであることが脳科学のデータで見えてきたとして、「幼少期において、読み聞かせは最優先の遊び」と指摘した。
また、読書をしている人の脳の活動についてMRIで調べたところ、前頭前野を中心として脳の様々な部位が働いていて、読書を習慣化している子どもたちは脳がより発達していることが明らかになったという。
仙台市の小中学生4万人を対象とした学習状況の調査で、読書習慣がまったくない子どもたちは「毎日2時間以上の勉強」「7~8時間の睡眠」を確保しなければ平均点を取ることができない一方、読書習慣が少しでもある子どもたちは毎日30分程度の勉強で、6時間以上の睡眠を取っていれば平均点を超えることができることが分かったと報告した。
スマホやタブレットの学習への影響については、スマホやタブレットを使う時間が長い子どもたちは脳の発達が止まり、成績も下がっていることがデータで明らかになっていると指摘。LINEをまったく使わない子どもたちが平均点を超えるには毎日30分程度の勉強を確保すればいいが、LINEを3時間以上使っている子どもたちは3時間以上の勉強を確保し、しっかり睡眠を取っていても、平均点に届かないことが分かったと報告した。
電子書籍の読書については、スマホやタブレットのような汎用端末を使うことはすすめられないとした。「スマホで読書している時にLINEでメッセージが届けば、よほど強い意思を持っていない限り、読書を中断し、LINEを開いてメッセージのやり取りをしてしまうだろう」と述べ、読書は出来るだけ紙の本・活字を使って行ってほしいと呼びかけた。

デジタル教科書に慎重な声目立つ/文科省パブリックコメント公表

次の小学校用教科書の改訂時期である2024年度にデジタル教科書の本格的な導入を求めた「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の中間まとめについて、文部科学省は4月26日にパブリックコメント(意見募集)の結果を公表した。3月18日~4月4日に合計310件の意見が寄せられ、紙に代わる教材として有効とする声がある一方、学習効果の科学的根拠がない、検証が不十分、健康や脳への影響が懸念されるなどとして、本格的な導入に慎重な声が目立った。
3月17日に公表された中間まとめは、紙の教科書とデジタル教科書との関係について、「紙の教科書をすべてデジタル教科書に置き換える」「すべてまたは一部の教科で紙とデジタルを併用する」「発達段階や教科の特性を踏まえ、一部の学年または教科でデジタルを主たる教材として導入する」――などの5例を示した。
今回寄せられた意見では、「教科書は紙であるべき。教材であればデジタルのものでもよい」「学習効果が上がる科学的根拠がない。文章を深く読むことや書くことが疎かになり、読解力の低下につながる可能性がある」「効果が十分に検証されていないことから、拙速に進めるのではなく、十分な研究を行い、効果を見極める必要がある。紙とデジタルを適材適所で使い分けることが重要」「視力や姿勢、睡眠、脳への影響も懸念され、慎重に議論すべき」「災害で停電が発生すればデジタル機器は利用が不可能であり、紙の教科書が必要」「家庭環境・地域環境によって教育を受ける機会に格差が生じないようにすべき」など、慎重な対応を求める声が多く見られた。

全国教科書供給協会元副会長・髙野隆氏(埼玉)が旭日双光章

令和3年春の叙勲が4月29日付で発令となり、全国教科書供給協会から元副会長の髙野隆氏(埼玉県教科書供給所取締役社長、埼玉書籍取締役社長、須原屋取締役社長、埼玉県書店商業組合専務理事)が旭日双光章を受章した。
また、髙梨好司(東京・髙梨文房具店代表者)、森靖夫(北海道・上澄好商店代表取締役社長)、吉川照博(福井・吉川隆文堂代表取締役)の3氏が黄綬褒章を受章した。

書店東北ブロック大会、今年も中止

書店東北ブロック会(藤原直会長=宮城県書店商業組合理事長)は、7月上旬に山形県書店商業組合(五十嵐太右衞門理事長)の設営で開催を予定していた第72回書店東北ブロック大会を、昨年に続いて中止すると発表した。
新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、今年も開催を見送ることを決めた。

「望月麻衣書店」1日限定で出店/サイン本を販売/京都

3月28日、京都市北区の建勲神社の境内で開催された「ふなおか桜パンまつり」(紫野小学校区イベント実行委員会主催、京都市北区役所後援)の会場で、地元の若林書店とふたば書房が「望月麻衣書店」を1日限定で出店した。
毎年、同神社で開催されている「さくらまつり」が、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止を余儀なくされ、今年は感染症対策を万全にして、「ふなおか桜パンまつり」と名前を変えて装いも新たに開催。区内のパン屋16店から買い取った約70種・計2700個のパンをテントの下に並べて販売し、完売した。
「望月麻衣書店」は、建勲神社のある船岡山が登場する望月麻衣さんの人気小説シリーズ「京都寺町三条のホームズ」(双葉社)と北区役所のタイアップで実施している「船岡山を盛り上げたい!」キャンペーンとコラボして出店。地元の小学生が「書店員」となって、望月さんの直筆サイン本を販売した。望月さん本人も来場し、写真撮影に応じるなど盛り上げに協力した。サイン本目当てに福岡から訪れたファンもおり、多くの人で賑わった。
また、昨春スタートした小学館「御書印プロジェクト」に参加している若林書店は、「望月麻衣書店」内で御書印帳の配布を行った。このプロジェクトは、客が持参した御書印帳などにオリジナルの書印を押し、書店員が選んだ本のタイトルや一節などのメッセージを添えるというもの。個性的な書印やメッセージを楽しみに各地の書店を巡る読書家も多いという。中京区寺町通二条下ルで営業する若林書店のメッセージには、店の近くが舞台となっている「京都寺町三条のホームズ」のタイトルを記しており、訪れた人の関心を集めた。
(若林久嗣広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「本屋は子供のワンダーランド」/愛媛・文具座やまさき会長・山﨑由紀子

絶滅危惧個人商店の本に掲載されているような、小さな街の本屋です。
コロナ禍の中、一番のお得意様の高齢の方たちのご来店がめっきり減り、『鬼滅の刃』の人気で小学生や幼児を連れたお母さんたちに助けられています。
創業70周年を経て、お客様は親子3世代で購読する常連さんが多く、「この店は、小学生の頃の私のワンダーランドだった」とおっしゃる60代の方もいます。
小学2年生の課外授業の「まちかど探検」で、児童が希望する行きたいお店に選んでもらいました。小学生にとって街の本屋は興味津々。質問タイムもあり、その応答がとても楽しいのです。
後日届いたお礼状に「赤ちゃんが読める本から大人が読める本まであったのでびっくりしました」とあり、この感想が一番嬉しかったです。
小学2年生から3年生の頃に好きな本に出合うと、人生の幸せにつながります。読書好きな子供が本屋の未来を照らします。
後でご両親を連れて店の中を案内してくれたり、欲しい本を購入してくれたり。その親御さんが昔、当店の利用者さんだったりもして、話が盛り上がりました。
書店新聞に掲載される「日書連所属員数増減表」の調査結果を目にするたびに胸が痛みます。頑張る書店の心の悲鳴が聞こえてくるようです。

宮崎一心堂・宮﨑容一社長、熊本の聖火リレー参加「感動忘れない」

熊本県13市町村を結ぶ東京2020オリンピック聖火リレーが3月5日、6日の両日行われ、宮崎一心堂社長の宮崎容一氏(熊本県書店商業組合副理事長、熊本トーハン会会長)が5日、水俣市陸路最終ランナーとして聖火を手に走った。福島県からスタートした聖火リレーは熊本県で19府県目の実施。
宮崎氏は長年、陸上競技を中心にスポーツの発展に携わり、その集大成としてメモリアル出走。沿道から大きな拍手を受けながら約200メートルを走った。走り終えた後、「感謝の気持ちで走った。これからも聖火ランナーの感動を忘れることなく、地元で書店業を営みながらスポーツ界の発展に貢献したい」と抱負を語った。
(宮崎俊明広報委員)

ゴールデンウィークの書店売上動向/トーハン24%増、日販9%増/前年の休業店の影響で大幅増

トーハン、日本出版販売(日販)の両社はゴールデンウィーク(4月29日~5月5日)の書店売上動向を発表し、トーハンは前年比24・4%増、日販は同9・3%増と、いずれも前年を上回った。昨年に続いて緊急事態宣言下でのGWとなったが、今年は発令区域が東京、京都、大阪、兵庫の4都府県に限定されていたことから、昨年に比べて営業継続の店舗が多く、売上も大きく伸長したとみられる。
【トーハン】
商品種別では、書籍は前年比31・9%増、雑誌は同4・0%増、コミックは同28・3%増、マルチメディアは同33・7%増。購入客数は同19・6%増、客単価は同0・6%増だった。
立地別の売上伸長率を、コロナ禍の影響がない2019年および2020年の2ヵ年で比較した結果は以下の通り。
都市型立地、商業施設立地では、20年比で「駅前駅内」同64・6%増、「繁華街」同9・5%増、「ショッピングセンター内」同100・1%増と大幅に伸長した。20年は全国的に書店が休業し、特にこれらの立地の書店は大きな影響を受けたが、21年は緊急事態宣言が4都府県にとどまり、人の流れも前年ほど減少しなかったため、売上が増加した。しかし、19年比では「駅前駅内」同17・4%減、「繁華街」同12・9%減、「ショッピングセンター内」同15・2%減となり、コロナ以前の水準には戻っていない。
生活圏立地では、20年比で「商店街」同9・1%減、「住宅街」同12・6%減、「郊外」同3・5%減と、昨年大幅に伸長した反動減となった。しかし、19年比では「商店街」同10・4%増、「住宅街」同18・1%増、「郊外」同16・6%増と2桁の伸長率となった。都市部からの消費者のシフトが継続していることに加え、読者の書店回帰が引き続きプラス影響となっている。
ビジネス街立地は、20年比で同100・1%増、19年比で同15・2%減。ただ、調査対象サンプル数が少なく、コロナ禍の影響よりも個店ごとの状況を反映した結果となった。
【日販】
雑誌は前年比5・2%減。月刊誌が同7・6%減、週刊誌が同6・9%減と定期誌は厳しいトレンドが続く中、ムックは国内レジャー誌が回復して同1・0%増と前年を上回った。
書籍は同12・8%増。学参・文庫を除く7ジャンルで前年超えとなった。総記は、前年が休校の影響で辞典売上のピークが後ろ倒しとなったことから、同59・9%増と大きく伸長した。文芸書は本屋大賞を受賞した町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)が牽引して同20・8%増、実用書は『日向坂46写真集日向撮VOL01』(講談社)が好調で同10・4%増となった。
コミックは同15・4%増。前年は吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(集英社)が売上ランキング上位を独占したが、今年はあいだいろ『地縛少年花子くん15』(スクウェア・エニックス)や『「ディズニーツイステッドワンダーランド」アンソロジーコミックVol2』(スクウェア・エニックス)などが売上を牽引し、好調を維持している。
開発品は同16・1%増。日向夏『薬屋のひとりごと11ドラマCD付き限定特装版』(主婦の友社)や映画公開で話題になった貞本義行「【愛蔵版】新世紀エヴァンゲリオン」シリーズ(KADOKAWA)が好調だった。

20年文庫本市場/3・8%減の867億円/コロナ禍で感染症関連書がヒット

出版科学研究所発行の『出版月報』3月号は「文庫本マーケット2020」を特集。これによると、昨年の文庫本(コミック文庫を除く)の推定販売金額は前年比3・8%減の867億円。市場のマイナスが続くが、14年以降では最も減少幅が小さかった。同特集から文庫本市場の動向を紹介する。
2020年の文庫本市場の推定販売金額は867億円、前年比3・8%減だった。14年以降は前年を5~6%下回る傾向が続いており、20年が4%以下の減少にとどまった要因は、①新刊刊行の減少もあり、送品が大幅に減少したうえ返品率が大きく改善した、②平均価格の上昇、③新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要で既刊の販売が好調だった――の3つが挙げられる。推定販売部数は同6・0%減の1億2541万冊で、販売金額は価格の上昇が寄与した面はあるものの、部数ベースでは厳しい状況が続いている。
新刊点数(コミック文庫除く)は同6・1%(448点)減の6907点で、6年連続の減少。コロナ禍で新刊刊行を延期・中止するケースも見られた。出版社別に点数を見ると、KADOKAWA(122点減)、講談社(50点減)、集英社(23点減)、新潮社(20点減)、文藝春秋(17点減)と大手各社が軒並み減少。一方、中央公論新社(38点増)、小学館(24点増)、宝島社(19点増)、SBクリエイティブ(17点増)などは増加した。20年に創刊された文庫は2シリーズのみだった。
新刊推定発行部数は同10・5%減の7534万冊。新刊1点当たりの部数も1万900冊と同4・7%減少した。各社が返品改善を目指し発行部数の適正化を進めていること、20年は前年の『十二国記』(新潮文庫)の新刊のような大部数作品がなかったこと、コロナ禍で書店の休業が相次ぎ、春先に送品数を大幅に抑制したことも減少の要因となった。新刊に既刊(重版+注文分)を加えた推定出回り部数は、同10・8%減の1億9384万冊で、重版部数にも慎重になる傾向が見られた。
返品率は同3・3ポイント減の35・3%で2年連続の改善。年間で3ポイント以上改善したのは91年以来で、35%台の数字も96年以来の水準になった。20年は送品が大幅減となったことに加え、既刊を中心に書店店頭の売行きが健闘し、返品改善につながった。
出回り平均価格は、同16円(2・4%)増の691円。新刊平均価格は同25円(3・6%)増の723円といずれも大きく上昇。新刊は初めて700円を超えた。重版のタイミングで既刊の価格を上げるなど、各社が値上げの方針を取っているほか、ライトノベルでは付録をつけた高価格の豪華特装版が増えていることも上昇の一因となった。
20年の文庫本の販売動向は、コロナ禍が様々な影響を及ぼした。カミュの名著『ペスト』(新潮文庫)は、20年1月時点の累計部数は84刷88万6千部だったが、2月初め頃から注文が跳ね上がり、年内に累計96刷125万部に達した。混乱期の生き方を説いた五木寛之『大河の一滴』(幻冬舎文庫)も再評価され、年内に28万部増刷がかかり累計201万部となった。東北の疫病を描いた吉村昭『破船』(新潮文庫)や、小松左京『復活の日』(角川文庫)なども売行きを伸ばした。
緊急事態宣言発出や自粛ムードもあり、文庫作品を原作とした映画の公開やドラマの放送が軒並み延期となって出版社は販売計画の変更・調整に追われた。また、4月に東野圭吾が7社7作品のベストセラー文庫を初めて電子化、4~5月に森絵都、湊かなえ、百田尚樹なども一部作品の電子化を決めるなど、人気作家の電子化解禁が相次いだ。
年間ベストセラーを見ると、東野圭吾『マスカレード・ナイト』(集英社文庫、65万部)、伊坂幸太郎『AXアックス』(角川文庫、35万7千部)など、映像化が少なかった分、人気作家の作品が上位を占めた。19年本屋大賞受賞の瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文春文庫)は34万部に到達。柳美里『JR上野駅公園口』(河出文庫、17年刊)は11月に全米図書賞の翻訳文学部門を受賞し、40万部を突破した。時代小説は、佐伯泰英、髙田郁の書下ろしシリーズの人気が引き続き高い。
20年のライトノベル(文庫本)の推定販売金額は同0・7%減の142億円。18~19年は2年続けて2桁減だったが、減少に歯止めがかかった。コロナ禍のなか動画配信などでアニメ作品を見て原作小説を購入するケースも見られ、既刊が大きく伸長。アニメ化された新刊も好調だった。新刊点数は同13・8%(260点)減の1629点。新刊の平均価格は同14円(2・2%)増の665円。フィギュアやドラマCDなどの付録つき特装版が増加しており、上昇が続いている。

読書は知識と思考力伸ばす/小学生の読書に関する調査/ベネッセ教育総研

ベネッセ教育総合研究所は、小学生の読書に関する実態調査・研究の結果をこのほど公表した。
同研究所は、進研ゼミが提供する会員向け電子書籍サービスの読書履歴を元に、読書が子どもの学習や生活に及ぼす影響を調査・研究している。20年度は、読書が国語の知識や思考力の形成にどのような効果を持つのか検証することを目的に、小学校5年生から6年生にかけての1年間の読書履歴と実力テストの結果に、アンケート調査を組み合わせて分析した。
これによると、本を多く読んでいる子どもほど、国語の知識と思考力にプラスの効果が見られた。その傾向は、漢字や文法などの知識問題だけでなく、思考力を問う物語文・説明文の読解や、日常生活場面での問題解決のいずれにおいても同様に見られた。
また、読書の量が多い子どもほど、気になったところを読み返したり、登場人物の気持ちになりながら読むなど読み方を工夫。「長い文章を読めるようになった」「新しいことを知ることができた」など、自分でも読書の効果を実感していることが分かった。さらに、本をよく読む子どもは、本を読んでいて「時間がたつのを忘れるくらい夢中になる」「心が落ち着く」を肯定する比率が高く、読書は夢中になる体験や心理的な安定につながっていることがうかがえた。

3月期販売額は6・5%増/4ヵ月連続のプラス、返品改善が続く/出版科研調べ

出版科研調べの3月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比6・5%増で4ヵ月連続のプラスになった。
内訳は、書籍が同5・9%増、雑誌が同7・7%増。雑誌の内訳は月刊誌が同10・0%増、週刊誌が同4・1%減。書籍は大部数の新刊が多かった文庫本や、学習指導要領改訂で新版の刊行が相次いだ中学学参などで送品ボリュームが増え、出回り金額が同5・0%増と大幅に増加。それに加え返品が改善したためプラスになった。月刊誌は引き続きコミックスが健闘し2桁増。
返品率は、書籍が同0・6ポイント減の24・9%、雑誌が同1・9ポイント減の38・8%。内訳は、月刊誌が同2・4ポイント減の38・2%、週刊誌が同0・7ポイント増の42・1%で、週刊誌以外はいずれも返品が毎月改善し、全体実績が上向く傾向が続く。
書店店頭の売上は、書籍が約6%減。前年は小中高校の一斉休校が実施され児童書・学参が爆発的に売れて数字を押し上げたため、全体ではマイナスに。しかしジャンル別では、文芸書が約2%増、ビジネス書が約3%増、趣味・生活が約1%増と好調なジャンルが複数みられた。
雑誌の売上は、定期誌が約4%減、ムックが約8%減、コミックスが約4%増。コミックスは20年10月以降、毎月30%以上増加していたが、前年同月は『鬼滅の刃』が激増していたため2桁増とはならなかった。しかし『呪術廻戦』が猛烈な勢いをみせているほか、アプリ「少年ジャンプ+」で連載中の『怪獣8号』(いずれも集英社)など新たなヒット作が次々出現している。

こどものための100冊キャンペーン/参加書店でプレゼント企画実施/文化通信社

文化通信社は6月20日から8月20日までの2ヵ月間、書店や図書館、保育園を通して子どもたちが本に触れる機会を創出する「こどものための100冊」キャンペーンを実施する。著名人や書店員、図書館員が選んだ児童書100点を収録したカタログ(B5判・48頁)を参加書店、図書館、保育園を通して配布し、参加書店での購入客が応募できるプレゼント企画も実施する。全国書店再生支援財団、日本児童図書出版協会などが協賛。
カタログには、子育て中の著名人15人、書店員5人、図書館員5人の25人が選定した、幼児から小学校低学年向けの児童書100点を、選者のコメント付きで掲載。デザインは、NHK教育テレビ「ハッチポッチステーション」などを手掛けた藤枝リュウジ氏が担当している。
「こどものための100冊」キャンペーンの期間中、参加書店での購入者を対象にプレゼント企画を実施。来店客が店頭で購入した1千円以上のレシート(店内のどの商品も対象)を添付して専用サイトで応募すると、子どもや母親を対象にした商材のメーカーから提供された商品を抽選で景品としてプレゼントする。専用サイトには参加書店を掲載してプレゼント企画実施をアピールする。
キャンペーンへの参加には、カタログ100冊と販促ツール(ポスター、POP、チラシ等)のセットを購入することが必要。セット価格は5千円(税別)。参加書店の店頭でカタログを無料配布してもらい、カタログ掲載書籍による「こどもの本フェア」を実施することで売上拡大に役立ててもらうことを企図する。また、児童書売場がなかったり、フェア展開が難しい小規模書店の要望に応え、プレゼント企画のみに参加できるパッケージを提供している(参加費税込1100円)。参加書店として専用サイトに店名を掲出するほか、チラシ等の拡材を提供する。キャンペーンの参加についての問合わせは、文化通信社営業部(℡03―3812―7466)まで。プレゼント企画限定参加は、5月20日締切にて同社オンラインショップの申込みページで(https://bunkanews.shop-pro.jp/?pid=158907830)。
キャンペーンの実施にあたっては、全国の公共図書館にカタログ掲載書目の館内展示を呼びかけ、購入を希望する来館者に近隣書店を紹介してもらう取組みを行う。また、大手保育園を通して保育園児約3万5千人の父母にカタログを配布し、書店での児童書増売に結び付ける。全国紙、地方紙などマスコミとSNSによる大規模プロモーションを展開し、参加書店への訪店を促す。

日書連のうごき

4月1日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。
4月5日定期会計監査。
4月6日本の日実行委員会に矢幡会長が出席。
4月7日JPO運営幹事会(Zoom)に事務局が出席。
4月8日図書館サポート部会に髙島顧問が出席。JPO運営委員会(Zoom)に春井副会長が出席。
4月9日定期会計監査ならびに決算業務。
4月13日政策委員会に矢幡会長、鈴木、藤原、面屋、柴﨑、渡部、春井各副会長、小泉監事が出席。
4月20日読書推進運動協議会常務理事会に矢幡会長が出席。全出版人大会役員会に事務局が出席。
4月21日全国の書店経営者を支える議員連盟会合に矢幡会長が出席。
4月22日全国書店再生支援財団臨時理事会に平井理事が出席。公明党文部科学部会・経済産業部会合同会議と出版4団体の意見交換に春井副会長が出席。

日販ほんのひきだし/1~3月コミックス第1巻売上ランキング/1位は『デスノート短編集』

日本出版販売(日販)が運営するWEBメディア「ほんのひきだし」は、2021年1~3月の「コミックス第1巻売上ランキング」を発表した。新しい漫画と出合うきっかけを作ることを目的に発表しており、集計期間中に第1巻が発売されたタイトルを、期間中の第1巻の売上のみで集計するもの。
今回1位になったのは、『DEATHNOTE短編集』(原作=大場つぐみ、漫画=小畑健/集英社)。03~06年に『週刊少年ジャンプ』で連載された『DEATHNOTE』の約14年半ぶりとなる新刊で、主人公・夜神月亡き後の世界を描いた短編のほか、連載開始前に発表された読切などを収録する。2位は『図書館戦争LOVE&WAR番外編』(白泉社)、3位は『九条の大罪』(小学館)だった。

講談社、新企業理念とロゴを発表

講談社は4月15日、創業以来の同社の方針である「おもしろくて、ためになる」の精神を英語で表現した新しい企業理念「InspireImpossibleStories」とロゴを発表した。
新しい企業理念は、作り手と読者・ユーザーの両者に新たな発見や創造性を提供し(=Inspire)、あり得ない、見たこともないような(=Impossible)物語(=Stories)を生み出し続ける会社である、との決意を込めたという。
また、同社は今回初めてコーポレート・ロゴを作成した。正方形に講談社の頭文字「K」をあしらったデザインは、「さまざまな交差点」を意味する。「おもしろい」と「ためになる」の交差するところに立ち、そこは同時に「読者・ユーザー」と「作り手」の交差点、日本と海外の交差点でもあり、様々な要素が行き交う接点に立って泉のように「ImpossibleStories」を生み出し続ける強い決意を込めた、としている。このロゴは全10色で展開し、文化の多様性を表現する。
この理念とロゴは、ネットフリックスやナショナルジオグラフィックのブランディングを手掛けた米国のグレーテル社と共同で作成しており、これらを紹介するWEBサイト「講談社ブランドストーリー」も開設した。