全国書店新聞
             

平成27年2月1日号(前)

書店のマージン向上望む/藤原理事長が新年あいさつ/宮城

平成27年度宮城県書店・取次・運輸合同新年会が1月8日、仙台市のホテルメトロポリタン仙台で行われ、出版社、取次、書店など総勢61名が出席した。
始めに司会の日販・石井暢氏が開会を宣言。続いてあいさつを行った宮城県書店商業組合の藤原直理事長は、今年で40回を迎えた新年会のこれまでを回顧したほか、例え話として「同じ肉を使ったステーキランチを2種類の値段で提供している店があり、違いを聞くと、高い値段の方はよく切れるナイフを提供していた」という小話を紹介して、「我々書店も同じ商品を提供していく中で、工夫次第で利益を取れるような仕組みができないかと感じている。出版社、取次には書店のマージン向上の策を考えてほしい」と語った。
祝辞を述べた日販の大久保元博東部支社長は、消費税問題について、「ヨーロッパ各国のように軽減税率で提供することを、業界全体で強く求めて行きたい」と言及。書店店頭については、今までのリスク回避の受身の姿勢から、攻めの姿勢へ変容をと述べた。また出版社への希望として、高マージン商品の開発などを要請した。
トーハンの金子俊之東部支社長は、年末年始の書店の店頭状況を説明。トーハンの施策について、既存の棚のリフレッシュや、客注品受注の強化、複合化施策の3点を進めていくと話して乾杯した。
恒例の年男・年女の発表では、永岡書店・鈴木和広氏、プレスアート・川元茂氏、佐藤和幸氏、ヤマト屋書店・遠山尚秀氏が小関真助副理事長から記念品を受け取った。続いて、参加各社が新年のあいさつと今年の抱負を披露。中締めで小関副理事長が一本締めを行って散会した。
(佐々木栄之広報委員)

書店経営実態調査にご協力を

日書連では、各都道府県書店商業組合加盟店を対象に「全国小売書店経営実態調査」を実施します。書店経営の現状を把握し、今後の日書連活動の方向を見定める資料として役立てようというものです。全国書店新聞2月15日号に挟み込む調査票に記入の上、2月28日までにFAXで日書連事務局までお送りください。調査にご協力くださいますようお願いいたします。

実用書増売企画「書店金賞」スリップ受付は締切ました

昨年12月で報奨金の対象販売期間を終了した日書連主催の実用書増売企画、第1回「書店金賞」の売上スリップ受付は、1月15日で締め切りました。

軽減税率の導入運動を継続/大阪新年互礼会で面屋理事長

大阪出版販売業界新年互礼会が1月9日、大阪市のウェスティンホテル大阪で開催され、出版社、取次、書店、協力会社の関係者など108名が出席した。
新年互礼会は大阪府書店商業組合・堀博明副理事長の司会で進行。大阪組合の面屋理事長は「年末年始の売上は厳しい。昨年は消費税に明け暮れた1年だった。4月の消費税率アップで出版物の売上はさらに落ち込み底割れの状態で、最盛期からの書籍の総売上は3割も減少してしまった。業界が団結して軽減税率の導入運動を継続して行うことが大事だ」と述べた。
大阪組合の活動については、売上の低迷が続く中で「ストップザ廃業委員会」を設けて組合員の相談に応じていると紹介。また、本の帯創作コンクールや読書ノート事業の実施、BOOKEXPOの後援など業界発展のため活動していると述べた。
日書連の活動では、全国書店新聞1月1日号に掲載された舩坂会長インタビュー「書店再生の施策強化、業界3者が利益享受できる仕組みを」を紹介し、実用書増売企画「書店金賞」や、外商雑誌の買切による報奨金で収益改善を目指す施策などに取り組んでいることを説明した。
続いて、大阪屋の大竹深夫社長が、同社の再生への意気込みを披露。トーハン・小川慎二郎近畿支社長の発声で乾杯した。宴の半ばで出席出版社が自社のPRと抱負を述べ、創元社・矢部敬一社長の閉会の辞でお開きとなった。
(金田喜徳郎事務局長)

書店の収益改善に力注ぐ/舩坂理事長が決意表明/東京組合新年懇親会

東京都書店商業組合は1月14日、東京・文京区の東京ドームホテルで新年懇親会を開催し、出版社、取次、組合員ら総勢260名が出席。舩坂良雄理事長は年頭あいさつで、昨年日書連で提案した外商雑誌の買切による報奨金制度の実施に取り組むと説明、「書店の収益改善に一層力を入れていく」と話した。
新年懇親会は越石武史実行委員の司会で進行し、小泉忠男副理事長が開会の辞。年頭あいさつを行った舩坂理事長は、消費税問題について「10%への引上げは1年半伸びたが、引き続き出版業界4団体で軽減税率導入へ各政党に働きかけていきたい」と説明。また書店の経営環境について、「冬のボーナスの伸びが報道され、個人消費を押し上げる可能性が出てきたが、書店業界はまだまだ厳しい。2015年は何としても書店経営を良くしていかないと、大変なことになる」と強い危機感を示し、「本の定価を上げて書店のマージンを増やしてほしい。そのためには各書店が1冊でも多く販売に努力し、雑誌の定期購読獲得にも力を入れていく。再販制度の弾力的運用についても、書店の意見を聞きながら読者が喜ぶサービスを考えたい」と述べた。
組合活動については、書店再生の一環として昨年提案した、外商雑誌の買切による報奨金で書店の収益改善を目指す取り組みを挙げ、「クリアすべき問題はまだあるが、出版社、取次の協力を得て今年は実施したい。今後も経営が続けられるよう収益改善に一層力を入れていく」と抱負を述べた。
来賓の日本雑誌協会・石﨑孟理事長(マガジンハウス)は、「2020年の東京オリンピックまでの5年間は、我々にとって生き残りをかけた勝負の年と思っている。昨年の消費税アップは出版界にとって大打撃となった。軽減税率適用へ業界4団体が一致団結して運動していく。今年は、編集と販売が協力してアイデアを結集し、売れる雑誌を一つでも増やしていきたい」とあいさつ。
トーハンの近藤敏貴副社長は、公共図書館のベストセラーの複本購入問題や、書店店頭での客注獲得の推進について言及したほか、舩坂理事長が提案する外商雑誌の買切制度について、「どのようなハードルがあるのか具体的に詰めるよう社内で指示した」と報告し、乾杯の音頭を取った。
歓談の後、最後に柴﨑繁副理事長が閉会の辞を述べて正副理事長が登壇。出席者全員で三本締めを行って終了した。

佐藤理事長が辞意表明/5月開催の総会で勇退へ/愛知組合賀詞交歓会

愛知県書店商業組合は1月13日、名古屋市千種区のホテルルブラ王山で平成27年新春賀詞交歓会を開催。組合員、出版社、取次など総勢90名が出席した。
年頭のあいさつで佐藤光弘理事長は「出版業界は20年前と比べ売上が35%もダウンしている。昨今はミリオンセラーも年間で数点しか出ていない。しかし、店頭に並べればロングセラーとなる。出版社には店頭で売れる本を多数出版してほしい」と要請。「書店の売上は右肩下がりで大変厳しい状況だが、『右肩下がり』ではなく『左肩上がり』だと思い1年間頑張っていきたい」と述べた。また、自身の進退について「4年間理事長を務めてきたが、5月で勇退する」と表明。その後も理事として残り、出版物への軽減税率適用の呼びかけなどをしていきたいと抱負を語った。
続いて乾杯のあいさつでは、中央社の竹内文利取締役名古屋支店長が「暗い話はせず1年間頑張っていこう」と音頭をとった。
宴席では、佐藤理事長の母校である名古屋市中村区の松陰高校和太鼓部による演奏が披露され、迫力ある太鼓で参加者を魅了。NHK出版の荒井正之名古屋事務所長の一本締めで閉会した。(太田武志広報委員)

軽減税率獲得が重要課題/政府与党へ働きかけを/京都組合新年互礼会

京都府書店商業組合は1月8日、京都市東山区のウェスティン都ホテル京都で平成27年京都出版業界新年互礼会を開催した。日本書籍出版協会京都支部、京都出版取次京栄会との共催。今年は書店、出版社、取次、業界団体関係者など153名が出席した。
中村晃造理事長はあいさつで消費税問題に触れ、「今年10月に予定されていた消費税率の10%への引き上げが延期された。今こそ出版社、取次、書店の3者が一体となって政府や与党に働きかけ、17年4月の増税時に出版物が軽減税率の対象品目として適用されるという目標を達成したい」と意気込みを語った。
また、読書によって想像力が高められ、自分の言葉で考える力が身に着くのは、紙の本が持つ独自の力によるものだとする研究結果を紹介し、「これは紙の本を読むことで自然と得られる効果で、電子書籍に勝るものだ。京都でも公共図書館に占める電子書籍の割合が年々増加傾向にあるが、京都市内では公共図書館の紙の本の割合を今後高めたいとの行政の意向があるほか、学校図書館に今年度内の追加予算が計上されたことも新年の朗報。これからも行政からの期待に応え、組合員書店の売上増加に寄与するよう努めたい」と抱負を述べた。
書協京都支部の杉田啓三支部長(ミネルヴァ書房)は「昨今の良いニュースは、消費税増税の先送りと、出版物への軽減税率適用の可能性が出てきたこと、そして電子書籍に対応した出版権の整備を主な目的とする改正著作権法の施行。業界挙げての運動が実ったものと考えている。京都には元気な出版社、着実な書店が多い。少子化や高齢化が進む中、原点回帰して読者を掘り起こす活動が求められる。我々が率先して本好きな子供を増やす活動などをしていきたい」と話し、乾杯の発声をした。
日販関西支社の奥村景二支社長が結びのあいさつを述べ、一本締めで閉会した。(澤田直哉広報委員)

春の書店くじ実施要綱

▽実施期間平成27年4月20日(月)より30日(金)まで。書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数200万枚。書店には1束(500枚)3571円(税別)で頒布
▽申込方法と申込期限注文ハガキに必要事項を記入し、束単位で所属都道府県組合宛に申し込む。締切は2月20日(厳守)
▽配布と請求方法くじは取引取次経由で4月18日前後までに配布。代金は取引取次より請求
▽当せん発表5月23日。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品総額2760万円
当せん確率は9・7本に1本
1等賞=図書カード1万円400本
2等賞=図書カード
又は図書購入時充当1千円600本
3等賞=同5百円6000本
4等賞=図書購入時に充当百円20万本
▽賞品引換え1、2、3、4等賞は取扱書店で立替え。図書カード不扱い店または品切れの場合は、お買い上げ品代に充当
▽引換え期間読者は5月23日より6月30日(消印有効)まで。書店で立替えたくじは7月31日までに「引換当せん券・清算用紙(発表ポスターと同送)」と一緒に日書連事務局に送付
▽PR活動「春の書店くじ」宣伝用ポスターは日書連ホームページ(http://www.n-shoten.jp/)よりダウンロード(郵送はしません)。全国書店新聞に実施要綱を掲載。日書連ホームページで宣伝

再販堅持で一致結束/店頭元気になる施策を/神奈川組合新年懇親会

神奈川県書店商業組合は1月16日、横浜市中区の華正楼で新年懇親会を開き、書店、出版社、取次など103名が出席した。
あいさつした筒井正博理事長は、再販問題について「昨年末に行われた様々な会合で部分再販・時限再販の拡充の話が出た。神奈川組合は再販堅持の立場からこの問題を考えていくことで一致している。これから議論を深めていきたい」と述べた。また、トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房)が話題になっていることに触れ、「なぜ高価で難しい内容の本が売れているのか。どのように話題作りをして売上に結び付けるか真剣に考えたい。マイナストレンドを打ち破り、元気のある店頭を作ろう」と呼びかけた。
来賓の神奈川県中小企業団体中央会の遠藤雄仁氏があいさつしたあと、トーハン神奈川支店の佐藤光幸支店長が「既存店を上げようというのが取次各社の共通認識。トーハンは客注の取り組みに力を入れている。来店してくれたお客さんを逃がさない。それを増売のきっかけにしたい」と乾杯の音頭をとった。

電子化の中で生き残り模索/福岡新年の会で都渡理事長

平成27年福岡県出版業界新年の会が1月6日、福岡市博多区の八仙閣福岡本店で開催され、出版社、取次、運輸、書店など総勢89名が出席した。
出版社を代表して九州出版懇話会の古川一夫代表幹事(主婦と生活社)は「消費税増税の昨年は厳しい1年だった。ただ、マクロの視点で数字を見ると厳しいが、書籍以上に苦しい状況の雑誌をミクロの視点で見ると、確実に販売部数を伸ばしている雑誌もある。売上を伸ばしている雑誌を更に伸ばし、全体の売上増進につなげたい」と述べた。
取次を代表して九州出版取次協会の牧野宏章会長(トーハン)は年末年始の売上動向を発表し、「年始の悪天候の影響もあり、前年比95・3%と厳しい数字となった。業界を取り巻く環境は厳しく、変化の激しい時代になっていく。取次各社は書店を支える取り組みを強化する」と述べた。
書店を代表してあいさつした福岡県書店商業組合の都渡正道理事長は高橋文夫著『本の底力』(新曜社)を紹介し、「電子メディアが便利なのは認めざるを得ないが、その中で書店、出版業界が生き残っていくにはどうしたらいいかを考えながら、今年1年やっていく」と語った。また、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』から「本は文字ではない。本は人だ」という一節を披露し、「出来る限りそのような良い本を売っていきたい」と抱負を述べた。
乾杯の後、年男・年女の記念品贈呈、景品の抽選会。この後、大石宏典(大石金光堂)、前田保美(天龍運輸)、山本太一郎(福岡金文堂)の各氏による祝い目出度が披露され、福岡組合・安永寛副理事長の博多手一本で締め、森松正一副理事長のあいさつで閉会した。(加来晋也広報委員)

帯コン展示会、茨木、堺でも/大阪組合

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は12月13日、大阪市北区の大阪組合会議室で定例理事会を開催した。各委員会からの報告事項は以下の通り。
〔読書推進委員会〕
第10回大阪こども「本の帯創作コンクール」の表彰式が11月15日、大阪市中央区のエル・おおさかで開かれ、受賞者90名をはじめ約400名が出席した。表彰式の後に行われた絵本作家・長谷川義史氏による絵本の読み聞かせ「えほんライブ」とサイン会には70名が参加した。また、同会場10階で行われた展示会には約400名が来場した。売上は、課題図書86冊・9万5697円、長谷川義史氏の著書109冊・12万1727円、計21万7424円。
なお、茨木市版展示会が11月29日~1月12日に阪急茨木市駅2階ロザヴィア、堺市版展示会が12月11日~12月13日に堺市立中央図書ロビーで行われていることも報告された。
〔図書館委員会〕
面屋理事長、深田副理事長、坂井委員長、金田事務局長は12月2日、府立中央図書館資料情報課を訪問し、仙田課長、山田氏と面談。入札仕様書について意見交換した。新刊書籍の納入について見計らい納品を図書館から求められるが、普通の書店では不可能なので、入札制である以上は特定の業者しか対応できない。新刊雑誌について随契といえども難しい面があるなど問題点が多いようだった。(金田喜徳郎事務局長)

大分組合青年部第1回会合開く/若手書店人の声発信

第1回大分県書店商業組合青年部会が12月5日、大分図書会議室で開かれ、青年部4名と親会の福田理事長、二階堂副理事長の6名が出席した。
冒頭、樋口純一部長が設立のあいさつを行い、続いて10月に参加した日書連書店経営・販売研修会の内容について報告。参加した他の青年部員からも「いい勉強になった」「機会があればまた参加したい」との意見が出た。
今後の青年部の活動については、①会員増を目指す②交流会・勉強会等を頻繁に行う③大分組合青年部の活動が全国の若手書店人に伝わり、波及することを願う――などの意見が出た。
最後に福田理事長が、自身が書店を始めた頃の状況、これまで指標にしてきたこと、現在の出版業界の状況などを語りながら青年部員に助言。閉会した。
翌6日は大分市のホルトホール大分で、「辞書引き学習法」の提唱者で中部大学准教授の深谷圭助氏を招いて「辞書引き学習会」を開いた。大分組合主催、大分図書後援、小学館協賛。
会場には約250名の父兄と子供が集まり、大変な盛況となった。学習会終了後には深谷氏のサイン本販売会を行った。青年部4名も準備作業や販売に熱心に取り組んだ。
(大分組合青年部・大隈智昭)

生活実用書/注目的新刊

佐藤章夫著『牛乳は子どもによくない』(PHP新書961980円)は、誰もが安全だと信じて疑わない牛乳の危険性をわかりやすく解明している。著者は山梨医科大学の名誉教授。専門は予防医学である。
欧米の風土病だった乳がんと前立腺がんが、近年日本でも急増している。ここ35年を見ると女性の乳がんは4倍、男性の前立腺がんは8倍にもなっている。食生活の欧米化が主な要因とされているが、それは日本人が牛乳を飲み、バターやチーズを食べるようになったからに他ならない。
では牛乳のどこが問題なのかというと、まず牛乳は大量消費に応じて大量に生産される。消費者は安く飲めるのでありがたいが、現実の酪農は生後12~14月の牛を人工授精で妊娠させ、出産するとミルクを分泌するために、結果牛に1年のうち300日も搾乳させている。この妊娠中の牛乳が問題なのだ。女性ホルモンが含まれていて、加熱原菌処理によっても分解されない。数百pg/mlの卵胞ホルモンとその数十倍の黄体ホルモンを含んでいる。現在のアイスクリーム、チーズ、バターやヨーグルトも女性ホルモン入りの妊娠牛の白い血液から作られている。牛乳は1日に1㎏も増える子牛には良いが人間の子供に良いのかはわからない。加工加熱しても消えない成長促進作用が問題なのである。背は伸びないし、骨粗鬆症を助長し、がんの原因になる可能性の高い牛乳を、学校給食で推進するのはいかがなものであろうか?著者は妊娠した牛から搾乳しない、安心安全な酪農を提案する。
渡辺雄二著『危ない食品添加物ハンドブック』(主婦と生活社900円)は身近な食品に使われている添加物の危険度をとりあげる。パン、冷凍食品や飲料まで110種類の食品表示を検証する。
たとえば食パン。イーストフード、乳化剤は特に注意。イーストフードは塩化アンモニウムなど16品目の中から5つほどを混ぜたもので、何が添加されているのかわからない。乳化剤も同様で11のうち6品目は安全に問題がある。NG・OK・注意の判定で、すぐに判断できる仕組みだ。
消費者が賢くならないと危険はいっぱいある。本を提示して、読者を道案内するのは書店の大切な仕事である。
(遊友出版齋藤一郎)

総合読書率1ポイント減少/家の光協会・全国農村読書調査

家の光協会は昨年7月実施した第69回「全国農村読書調査」の結果をまとめた報告書『2014農村と読書』を発行した。これによると総合読書率は58%で、前年から1ポイント減少。雑誌読書率は49%、書籍読書率は30%と、いずれも前年と同率だった。総合読書率と雑誌読書率は過去最低値、書籍読書率は過去最低値に近い低迷状態となった。
■総合読書率
総合読書率(月刊誌、週刊誌、書籍のいずれかを読んでいる割合)は前年比1ポイント減の58%となり、調査開始以降初めて60%を下回った2012年から3年連続して60%に届かなかった。
性別では男性が同1ポイント減の54%に対して、女性は同1ポイント減の62%。女性の総合読書率が27年連続で男性を上回った。
年齢別では10代が最も高く73%。以下、20代が66%、30代が64%、60代が62%、50代が54%、40代が53%、70代が最も低く47%となった。前年と比べると60代で10ポイント、10代で9ポイント、30代で8ポイント増加しているが、40代で17ポイント、50代で10ポイント減少している。
職業別では学生が最も高く67%。以下、主婦が62%、自営業が60%となり、前年同様、無職が最も低く49%だった。
■雑誌読書率
雑誌読書率(月刊誌か週刊誌を読んでいる割合)は前年と同率の49%だった。
性別では男性が同1ポイント増の47%に対して、女性が同1ポイント減の51%。男女ともほとんど変動はなく、総合読書率と同じく女性の雑誌読書率が27年連続で男性を上回った。
年齢別では30代が最も高く57%。以下、60代が54%、20代が52%、10代が50%、40代・50代が45%、70代が最も低く41%だった。
職業別では自営業が最も高く56%。以下、農業が53%、給料生活・主婦が49%、学生が48%、無職が最も低く39%だった。
■月刊誌の読書状況
月刊誌読書率は同3ポイント減の35%だった。
性別では男性が同3ポイント減の35%に対して、女性は同4ポイント減の38%と、女性が男性を7ポイント上回った。
年齢別では10代が最も高く43%。以下、30代が42%、20代が40%、60代が35%、50代が33%、40代が32%、70代が最も低く27%だった。
職業別では前年に続いて学生が42%と最も高く、以下、主婦が41%の順で、無職が22%と最も低かった。
毎月読む人の割合は14%。毎月ではないがときどき読む人は21%だった。
同じ月刊誌を毎号読んでいる定期読書率は前年と同じ14%だった。
■週刊誌の読書状況
週刊誌読書率は前年と同率の30%だった。
性別では男性が同3ポイント増の32%だったのに対して女性は同2ポイント減の28%。
年齢別では60代が36%と最も高く、以下、30代が31%の順。最も低いのは20代・40代の26%だった。
職業別では自営業が42%と最も高く、最も低い学生は21%だった。
毎週読む人の割合は6%。毎週ではないがときどき読む人の割合は24%だった。
同じ週刊誌を毎号読んでいる定期読書率は同1ポイント増の6%だった。
■書籍の読書状況
書籍読書率(この半年間に書籍を読んだ人の割合)は30%で、前年と同率だった。
性別では男性が同3ポイント減の27%だったのに対して、女性は同2ポイント増の32%と、女性が男性を5ポイント上回った。
年齢別では10代が60%と最も高く、以下、20代が45%、40代が32%の順で、70代が21%と最も低かった。
職業別では学生が最も高く48%。以下、自営業が33%、給料生活が32%の順で、農業が18%と最も低かった。
過去1ヵ月の平均読書冊数は、前年より0・1冊減って0・8冊だった。男性は0・7冊、女性は0・8冊。冊数は「0冊」が24%、「1~4冊」が圧倒的に高く55%、「5~9冊」が5%、「10~14冊」が3%、「15冊以上」が4%。
■雑誌・書籍の入手法
月刊誌の購入先または借覧先と入手法は、1位書店55%、2位スーパー・コンビニ32%、3位美容院・食堂・病院13%、4位JA(農協)と予約購読がそれぞれ12%。週刊誌は1位スーパー・コンビニ51%、2位書店37%、3位美容院・食堂・病院36%。書籍は1位が書店82%で他を圧倒している。以下、2位図書館・公民館18%、3位スーパー・コンビニ17%、4位インターネット11%。
■1ヵ月当たりの本代
本を読まない人も含めた1ヵ月の支出金額別構成をみると、最も高いのは「本を買わなかった」54%で、前年比1ポイント減。支出金額別では500円未満が4%、500円以上3000円未満が26%、3000円以上が7%。本を買う人の平均支出額は前年より133円減の1835円。
■1日平均の読書時間
1日平均の本(月刊誌、週刊誌、書籍)の読書時間は、読まない人も含めた全員の平均は13分で前年比1分減だった。性別では男性が12分、女性が15分。年齢別では10代が26分、職業別では学生が23分と最も長かった。本を読んだ人の1日平均読書時間は前年より1分短くなり31分だった。

兵庫組合座談会「阪神・淡路大震災を振り返る」/もっと書店と地域のつながりを深めよう

1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災は、兵庫県神戸市、芦屋市、西宮市、宝塚市を中心に建物の倒壊や火災など甚大な被害を与え、多くの方々が犠牲になった。20年の節目を迎え、兵庫県書店商業組合(山根金造理事長)は座談会を開催。兵庫組合・中島良太副理事長の司会で、当時、組合役員として復旧・復興の陣頭指揮をとった安井書店会長・安井克典氏、三宮ブックス社長・村田耕平氏、大杉広文堂社長・大杉誠三氏、そして山根理事長、小林書店・小林由美子氏が、震災当時の記憶と今日までの歩みを語った。
〔地震直後の書店組合の動き〕
中島阪神・淡路大震災発生から2015年1月17日で20年になります。記録を残す最後の機会と思われますし、いただいたご支援に改めて感謝を示したいということで、兵庫県書店商業組合として20年誌を作ることになりました。本日はみなさんに、当時の記憶を思い起こしていただき、今日までの歩みなどもお話しいただきたいと思います。
では、はじめに、当時の兵庫県書店商業組合理事長として獅子奮迅の働きをしていただいた安井書店の安井克典さんからお話しいただきます。激震地の神戸から少し離れた山崎町におられたわけですが、地震があった時はいかがでしたか?
安井安井書店は中国山地の南、宍粟市山崎町(当時・宍粟郡山崎町)にあり、近くに「山崎断層」という大きな断層が走っています。朝、相当大きい地震で目が覚めて、まっさきに、山崎断層が動いたのかと心配しました。山崎町は震度4でした。テレビをつけると、淡路が震源地で、神戸は大変なことになっていた。神戸の本屋さんはどうなんだろう、状況を確認したり、対策を考えなきゃと思いました。
日本書店商業組合連合会(日書連)の定例理事会および出版販売新年懇親会が1月24日に、その年は箱根の湯本富士屋ホテルで開かれることになっていまして、兵庫県組合の代表として出席する予定にしていました。ただ、被害の報道をみると、新幹線は明石の鉄橋なんかが壊れていて動かない、中国縦貫道も崩れて通れない、私の利用できるすべての交通機関が止まっておりました。だから東京の日書連に電話で、「こういう状況なので新年の理事会には行けません」と欠席を申し出ました。
すると翌18日に、日書連の白幡専務理事から、「東京では出版社が募金活動に立ち上がった。地震対策協議会も立ち上げなければならない。なんとか理事会に出席して被害状況を説明してほしい」と連絡をいただきました。
これは、何としても行かなければならない。なので被災地の中心地におられて、組合の専務理事だった村田さんに「自宅や店が大変なときだけれど、理事会に同行してください」とお願いしました。村田さんも「何をおいても行かなければならないですね」とご同行いただけることになりました。私は、岡山まで車で行き、岡山空港から飛行機で羽田に飛び、箱根に入りました。
村田神戸市中央区のポートアイランドにある自宅も、三宮にある店も被災地のど真ん中でした。自分の家や店は壊滅的な状況でしたが、専務理事という立場で同業仲間が心配でした。安井さんから連絡をいただき、日書連理事会、そして出版社や取次会社など含めて300名くらい出席される新年懇親会で、実情を説明する使命があると思いました。
理事会の前日、JRは、甲子園口から確か須磨の間は動いていなかった、新幹線もストップしたままでした。箱根に行くには、ポートアイランドから三宮まで歩いて、そこから代行バスに乗ってJR甲子園口まで行って、新大阪から新幹線に乗ることになります。道路は渋滞し、代行バスの窓から見える国道2号沿いの建物はほとんど崩壊していました。すぐ横の車線を救急車や支援車がひっきりなしに走っています。3、4時間かかって甲子園口にたどり着きました。そこから、一旦、大阪で途中下車しました。日本出版販売(日販)が被害状況を表にまとめておられて、見せていただけることになっていたんです。大阪駅近くのホテルの喫茶室で日販の幹部の方に会い、資料をいただいた。ホテルではシャンデリアが光り輝き、お客さんが優雅にお茶を飲んでいます。かたや甲子園口から西は地獄のような状態で、水や食料がなく、まだ救出されずがれきに取り残されている方もあった。電車でわずか20分ほどの距離なのにギャップが大きくて…ショックでした。
それから新幹線に乗り、夜10時過ぎに箱根に着き、地震後初めて、何日かぶりに風呂につかりました。そこでお目にかかった福島県の高島理事長が「ズスンはおっかねー」とおっしゃった。その「ズスン」という訛りにリアリティがあるなと思いました。後に、福島に、東北に大きな地震が来るなんて思いもしませんでした。
そして、翌1月24日の理事会で、体験したこと、見聞きしたこと、日販の資料などを用いて小1時間説明しました。皆さん熱心に聴いてくださり、質問を受けました。
日書連が即1000万円の義援金拠出を決定されました。その後の懇親会席上でも、三笠書房、講談社、小学館など、出版社も支援してくださることになったように思います。義援金については、日書連で「阪神大震災対策協議会」を設置し、口座を作っていただくことが決まったと覚えています。
〔助かった、素早い対応〕
中島安井さん、村田さんが日書連理事会で説明いただいたことが多くの支援につながったのだと思います。共済の方では大杉さんが動いてくださいました。
大杉震災後、共済会の果たした役割は大きなものがありました。加入者の方には大変喜んでいただけたと思います。一口につき、被害状況によっては60万円、80万円とあり、見舞金も出ました。
手元に阪神・淡路大震災で支払った一覧表があります。ここで一軒一軒の金額は申し上げませんが、加入された方は非常に助かったのではないかと思います。共済というのは、平時は何も感じないけれども、いざという時にこのように助かるわけで感謝しています。
安井日書連の会議を受けて、2月3日に神戸の書店会館で兵庫県の緊急理事会を開きました。多額の保険に入っていたけれど、地震では保険金が1円も下りなかった。今回は共済のありがたさがしみじみと分かったという発言がありました。
中島共済は加入口数に応じて補償が出たわけですが、日書連を通じた義援金は、非組合員の書店にも分けられましたね。
村田義援金を公正に配分するために、日書連の阪神大震災対策協議会が、大阪府書店商業組合の中に設けられ、会長には大阪府書店商業組合の理事長でヒバリヤ書店社長の森川勝敏さんが、実行委員長には安井さんが就かれました。近畿ブロックの書店組合の理事長もしくは副理事長、出版社、取次会社が出席し、そこで1週間に1回強、会議が開かれ、義援金の分配方法についてなどを決めていきました。
中島配分が非常に大変だったのではないかと思います。
村田被害の度合いにより金額を変えるのですが、被害程度をどう認定するか、非組合員はどうするかなど意見が食い違うこともあり、激しい議論になったこともありました。
そして、緊急の見舞金5万円は、非組合員も含めて皆さんにお渡しすることになりました。組合員店に対しては被害状況に応じて、A: 240万円:被害額1000万円単位。再開業まで半年以上
B: 50万円:被害額100万円単位。再開業まで半年以内
C:5万円:被害額10万円単位。国税局指定地区以外の被災地
D:3万円:軽微な被害。被災地区指定のない地域
の4ランクで分配することになりました。
安井集まった義援金は出版社や取次会社には配らず、書店のみに配分すると決まりました。第一次配分となる見舞金は、早急に配る必要がある、ということで、組合員・非組合員にかかわらず、組合員は組合役員が、非組合員には取次会社が、一律5万円を届けることになりました。
地震が1月17日にあって、対策協議会が1月27日、2回目が2月7日という風に、非常にスピーディーに業界が動いてくれたのが印象的です。
〔義援金は1円も残さず〕
村田義援金配分のための判定は、各支部の支部長さんにお願いし、その確認には安井さんらと数人で各店を回りました。もちろん私たちは専門家ではありませんから、できるだけ支部長の決定に従いました。日ごろの整備不足による傷みじゃないかと思われても地震被害だと言われるところや、反対に明らかに地震の被害だろうと思われるのにお金は最低ランクでいいとおっしゃるところもあり、さまざまでした。
安井平成7年の7月7日で、義援金の収支報告書を締めています。2月8日から運用を初めて、5カ月で終結したことになります。兵庫県組合にいただいた義援金は、保証小切手にして渡しました。全額被災書店に分けるべきだとして、5回に分けて分配し、本部に1円も残しませんでした。5回目については、各店ではなく支部に配分することになりました。明石支部(第4支部)は辞退され、第1支部、第2支部、第3支部に、組合員の数に応じて按分し、各支部で書店の復興に役立てていただくことにしました。
中島山根さん、神戸市の西隣の明石は最後の義援金を辞退されていますが、被害はいかがでしたか?
山根明石・三木は第4支部で、私は支部長を、県の組合では書記を務めていました。明石は明石川という川が明石市域の東の方を南北に流れていて、明石川を境に東は被害が大きく、西は小さかった。幸い私の店は西にあり、本が落ちたり、壁に亀裂が入ったりはありましたが、棚を詰め直して2、3日で営業できました。明石は、震源地の淡路島の北淡町(現・淡路市)に非常に近いにもかかわらず被害が小さかったと思います。
中島活断層が北東の方向に走っていたからですね。
山根日書連さんから早々に見舞金が配られ、助かったという思いがしました。共済会でも見舞金をいただけた。非組合員にも公平に配られて本当に良かったと思いました。
中島後方支援はいかがでしたでしょうか?
安井第5支部は、皆さんが義援金を集めてくださった。書店同士も助け合ったんです。書店の結びつき、業界の団結が強かったという思いと、感謝の気持ちでいっぱいでした。こういう大規模な自然災害は、近年では阪神・淡路大震災が初めてに近かったからかもしれません。
村田阪神・淡路のあと、たくさんの自然災害が発生しましたからね。
〔「本屋っていい」と思った瞬間〕
中島公のお立場から、組合の仕事に走り回ってくださった村田さん、ご自宅やお店はどんな状態だったんですか?
村田自宅はマンションの10階でしたので揺れも大きく、部屋の中で立っているものはすべて倒れ、テレビは飛び、断水という状況でした。今から振り返ると、どうやって生活していたか分からないような非常時でした。初期のころはエレベータも止まっていたので、10階まで水を歩いて運び上げたり、何をするにも並んだ記憶が強く残っています。ポートアイランドは埋め立て地のため、液状化現象が起き、歩行も困難なほどでした。三宮とつながっている橋が傷んで交通機関がすべてストップしていたため、三宮まで出るには歩くしかなかった。そんななかでもいろんなところから電話連絡が入るし、出版社の訪問も受けました。
三宮ブックスは私ともう一人の従業員しか出勤できず、2人で本を1冊1冊棚に戻していきました。そのうちに、取次会社が10人~20人のグループを作り、各書店を回ってお店の支援をしてくれました。本を拾い上げる、書架やシャッターのゆがみを直す、などしてくれました。神戸へ入るだけでも大変な状況のなか、福知山を経由したり船を使って苦労されたでしょう。お店の復旧には取次会社の力が活きました。
神戸の中心地では、元町の海文堂書店が1月25日にいち早く再開され、お客さんが待ってましたとばかり押し寄せたと聞き、びっくりしました。
中島武庫川を挟んで東側の尼崎は、神戸・西宮に比べると幾分被害は軽微でしたが、小林さんの所はいかがでしたでしょうか?
小林うちは尼崎で、半壊の判定でした。北側の壁が落ちてしまって雨が降ると座敷に水が入り、雨のシミがついこの前まで残っていました。店から50~60メートル離れた文化住宅が潰れて、火が出て7人の方が亡くなられたんです。よく知っているおじいさんがその中におられ、本当にショックでした。電気こそ早く復旧しましたが、ガス管が切れてずっとガス臭かったですし、水も長く来ませんでした。
店はウインドーが全部割れ、コンピュータが吹っ飛んで、データをバックアップしていなかったもので、配達の記録から何からなくなってしまって、それが一番困りました。日販のシステムを使っていたのではなく、主人がソフトを作っていたんです。頭のなかが本当に真っ白になりました。寒い風が入るのでシャッターを閉めたまま、真っ暗で、棚から本が全部落ちている。どうしよう、どうしようと座り込んでいました。しかも、半月もしないうちに支払いをしないといけない、そのことばかりが心配でたまりませんでした。
店の中に座り込んでいたのですが、暗いので、ふとシャッターを1枚開けたんです。そうしたら、人が入ってくるんです。お客さんというより、道を歩いている人が。で、「怖かったね、大丈夫だった?」と聞いてくれるんです。「大丈夫だったよ」と答えたら、今度はご自分が怖かったことを一気に話し出されるんです。わーっと話をして、最後に、「でも、またがんばらなあかんね」と言って、帰っていかれた。本を買いに来られたわけではないんです。恐怖を話しに来られるんです。その時に「ああ、本屋ってすごいいい!安心して話ができる場所なのかな」って思ったんです。近くの食べ物屋さんなどは、水やガスが来ないから営業ができません。でも本屋は本があれば再開できる。本は埃まみれになってしまっているけれど、それを棚に戻せば、とりあえず本屋の形がつく。「店を開けよう」と思ったんです。
入口には透明のビニールシートを押しピンで貼り、子どもたちも、おじいちゃん、おばあちゃんも一緒に、一冊一冊本をはたいて、埃をぬぐって棚に戻していきました。みんな無言で作業に没頭しました。「店を開けよう、人がホッとして入って来られる場所がなかったらあかん」と、その一心で作業しました。
それから主人に「うちは大丈夫やって、日販に電話してこい」と言われて、固定電話が通じないから公衆電話に並んで、連絡しました。するとすぐに日販の支店長と課長が来てくださいました。出版社の人も水とかを持ってきてくださった。大阪の本屋仲間が食べるものやガスボンベを持って来てくれた。モノもありがたいのですが、そのときは「気持ち」を助けてもらいました。幸いコンピュータが得意なお客さんが毎日のように来てくださって、少しずつメモリーを修復してもらえて作り直すことができました。
支払いのこととか壊れた壁とか、現実的にはどうにかしないといけないことはありますが、「本屋ってすごいいいな、みんなに助けられて、でもみんなが安心して入って話ができる場所やな」と思いました。それから、自分の思いが伝わるような商品も並べるように考えていきました。
中島うちは、店長の家が全壊で店に出られる状況ではないと連絡をくれて、店も開けられる状態ではないので、すぐにバイクに乗って、店長の家を見に行ったんです。
武庫川を西に渡って、一本道を入った途端に、ぷんと材木が裂けたにおいというか、埃っぽいにおいが一面に漂っていて、見えるのは瓦礫ばかり。景色が全然違っていました。
店は本が縦揺れで滑落して、横揺れで混ざって、本の海のような状況です。一番大変だったのが、消火器が破裂して、本が粉まみれになったことでした。すると、次の日だったか、トーハンが応援に駆け付けてくれて、3日後くらいには営業を再開できました。尼崎だったからましやったんだと思います。
大学時代の友人がガスボンベを大量に分けてくれたので、原付バイクの後ろに段ボールに6ケースくらい積んで、神戸のトーハン会青年部部員のところに持って回りました。道路も穴が開いていて、バイクで走るのも危ない状況でしたが、何とか須磨まで行ってみんなの無事を確かめて帰りました。
尼崎の中央・三和本通商店街ではその後、被災者のために、自由に使える洗濯機がある場所と、お風呂屋さんの場所が載ったマップを配りました。そんな形でしか我々は協力ができませんでした。
〔地域のなかで絆を深めたい〕
中島さて、我々が経験したことがその後の東日本大震災などに活きていると思いたいのですが、アドバイスというか、後々の人たちに残したいことはありますか?
山根阪神・淡路大震災で、自分の人生が変わった、見方が変わりました。若者が自分のことをほうってでもボランティアに走り回った。今困っている人を助けたいという人が多くいました。そういうことをつぶさに見て、近くの人たちとの絆の大切さをいやというほど知りました。
地域で、祭りとか活発なところほど近所のお年寄りの住んでいる場所なんかを知っていて、おばあちゃんを助けたりできているんです。そういうことは日ごろの地域でつながりがあってこそできます。
僕らは本屋だから比較的地域とつながっているとは思いますが、まだまだもっとつながっていかないといけない。それを震災に教えてもらいましたし、長い目でみれば本屋の商売にとっても大事なのかなと思います。
仲間が非常に心配してくれて、友だちの大事さ、付き合いの大事さを改めて知りました。本屋さんでこそ活かせる、人と人とのつながりを通して、新しい何かが生まれるのではないかと思いました。
中島東日本大震災が起こったときに、ボランティアで本を集めて、被災地の子どもたちに届けに行ったんです。子どもたちは普段はゲームばかりしていると思うんですが、久しぶりに本に目を向けてくれたように思います。待ち望んでくれたというか、奪い合うように、むさぼるように本を読んでくれた姿が印象に残っています。
そういう心のケアのようなお手伝いができるのが本屋の仕事なんだなと、「本屋をやっていてよかった」と思いました。もっとできることがあるのではないかと思います。
〔組合の中でシステム構築が必要〕
村田20年前と今を比較すると、携帯電話など生活様式は随分変わっているから単純に比較は難しいけれど、これだけ自然災害が多発している現状で、書店組合の中に、なにかコトがあったときに緊急に対応するシステムを作っていかなきゃいけないでしょうね。他県の組合でもこのようなシステムはないのではないでしょうか。緊急時にどういう風な連絡網でどういう風にやるかということを組合で取り決めなきゃいけない。それを使う日が来ないことが一番いいのですが、きちっとして備えておくべきだと思います。
兵庫県だからこそ作らないといけないと思います。
中島危機管理マニュアルですね。
村田取次さんにもそんな特別なものはないかもしれません。
あと、取次さんの支援としては、各担当者の奥さんが作ったお弁当を持ってきてくださったことは印象深く、涙しながらいただきました。
大杉人間万事塞翁が馬という言葉があるように、どんなことがあっても地道に頑張っていれば、「本屋をしていてよかったな」という状況が作れるというのは嬉しいことです。
中島まだまだ話は尽きませんが、ここでの話を読んだ方が、書店組合の必要性を感じていただければ幸いです。
安井これまでご支援をいただいた各方面の皆さまに、兵庫県書店商業組合から改めてお礼を申し上げます。
※この座談会は、兵庫県書店商業組合が「阪神・淡路大震災20年事業」の一環として編集・制作した冊子『阪神・淡路大震災20年の歩み』(A4判、47ページ、非売品)から転載したものです。冊子に関する問い合わせは兵庫県書店商業組合(巌松堂書店内)まで。℡078―936―4069
【被災書店復興の記録/兵庫組合が冊子発行】
兵庫組合は1月17日、書店の被災状況や復興の足取りを記録した冊子『阪神・淡路大震災20年の歩み』を発行した。A4判、47㌻。非売品。部数は800部。内容は「写真で見る阪神・淡路大震災」「座談会もっと、書店と地域のつながりを深めよう」「被災と支援の記録」「取次会社の奮闘」「復興から復旧へ兵庫から発信」など。