全国書店新聞
             

平成28年11月1日号

会員所属員数3604店に/日書連組織委調べ

今年10月1日現在で日書連の会員(46書店商業組合)に所属する組合員数の合計は、今年4月1日対比で90店、2・4%少ない3604店になったことが、日書連組織委員会(中山寿賀雄委員長)の調べで明らかになった。
この半年間における新規加入は全国で6店に対し、脱退は96店。加入数が脱退数を上回ったのは、島根の1組合のみ。増減なしが秋田、岩手、群馬、山梨、三重、富山、石川、長野、福井、滋賀、和歌山、高知、佐賀、大分、沖縄の15組合で、残る30組合は組合員が減少している。
各組合ごとに加入の内訳をみると、この半年間に新規加入があったのは、東京の3店をトップに、宮城、奈良、島根が各1店。残りの42組合は新規加入ゼロとなっている。一方、脱退が最も多かったのは東京の14店。次いで大阪の9店、神奈川の7店がワースト3で、以下脱退の多い順に福岡6店、千葉、熊本各5店、栃木、愛知、愛媛、長崎各4店、北海道、宮城、静岡各3店となった。
加入と脱退を合わせた半年間の減少率で、マイナス幅の大きい順にみると、①愛媛(11・1%減)、②熊本(8・6%減)、③神奈川(7・5%減)、④長崎(7・3%減)、⑤徳島(7・1%減)となっている。

書店740名が来場/第7回書店大商談会

第7回「書店大商談会」が10月4日に東京都文京区の東京ドーム・プリズムホールで開催された。来場書店は前年より80名少ない740名で、成立した商談は4205件、金額は9490万9288円(前年比4・8%増)となった。
この商談会は「書店大商談会」実行委員会(実行委員長=矢幡秀治・真光書店社長)が主催、出版文化産業振興財団(JPIC)が事務局を担当して開催。会場には一般書、ビジネス書、児童書、第三商材の各コーナーとコミックサロンが設けられ、出展社は前年より7社減の237社が250ブースを展開し、初出展は25社だった。総来場者は前年より187名少ない2246名(書店740名、出展社1171名、取次194名、その他141名)。成立した商談は4205件、金額は9490万9288円で、前年実績は4332件、9057万8246円となっており、商談件数は減少したが金額は前年を上回った。
サロン形式で運営されたコミックは、21社が出展。10月20日には、コミック分科会が文京区の講談社を会場に別途開催された。セミナー会場では、書店員向け座談会「『これからの雑誌販売』を考える―出版社・販売会社・書店にできること―」を開催、雑誌を売るための新たな方策が話し合われた。
児童書コーナーは34社が出展し、児童書ブースを回って集めたスタンプの数に応じて各社特別提供の拡材や賞品が当たるスタンプラリーを実施したほか、ラッピング講習会、店頭ディスプレイ実演が行われた。
また、9月に発表された「料理レシピ本大賞」受賞作品をブースで展示。サイン会ブースでは作家・阿部智里さんが、人気の「八咫烏」シリーズ最新刊『玉依姫』(文藝春秋)のサイン会を行った。

大垣守弘会長の再選を承認/書店新風会、北陸で地方総会開催

書店新風会は9月29日、富山県富山市の文苑堂書店富山豊田店で第57回地方総会「北陸総会2016」を開き、会員書店32名をはじめ出版社、取次など総勢146名が出席した。文苑堂書店(富山県高岡市)、清明堂書店(富山県富山市)、勝木書店(福井県福井市)が幹事店を務めた。
始めに会員書店のみによる総会を開催し大垣守弘会長(京都府京都市・大垣書店)があいさつ。大垣会長は、9月23日~25日開催の東京国際ブックフェアで初めて出展した「郷土出版パビリオン」について、「読者からの反応が良く、『故郷の書店の名前があって懐かしい』『今度ここへ行ってみよう』と、それぞれの想いで買っていただき、新たな趣向として喜んでいただけたと思う」と述べた。
総会では、役員改選で大垣会長の再選を承認。東京国際ブックフェアの売上について、井之上健浩総務副委員長(東京都町田市・久美堂)から、3日間合計で114万9997円、購入客数540名、購入冊数893冊と報告があった。また、来年の地方総会は、ブックエース・川又書店が幹事店を担当し、茨城県水戸市で開催することを決めた。
総会終了後、文苑堂書店富山豊田店で臨店研修。高志の国文学館と富山県水墨美術館を見学したのち、宇奈月温泉「延楽」で懇親会を開催した。
懇親会では、文苑堂書店の吉岡隆一郎会長兼社長が歓迎のあいさつ。大垣会長は「東京国際ブックフェアでは初めてブースを出し、郷土出版パビリオンとして各会員書店のそれぞれの郷土本を展示販売し、予想以上のお客様に本を見ていただいた。我々地方の書店は売上が低迷し厳しいと言われているが、たくさんの本好きの方が集まる機会だということで、一度見てもらいたいという思いでブースを出展した。地域に合った本、地域に求められる本をこれからも一生懸命売っていく」とあいさつした。
来賓のトーハン・藤井武彦社長は「文苑堂書店富山豊田店は1年前のオープン時に行ったが、さらに磨きがかかり、時間消費型の書店像として全国のモデルとなる書店だと思う。参考になるところが多かった」と述べ、「出版業界は大転換期で、デジタルとリアルをいかに融合させるかが1つの大きなテーマだと思う。常套句として出版不況と言われるが、将来を見据えて方向性をきっちり見定めたい」と話した。
続いて、KADOKAWA・角川歴彦会長が「アメリカの出版界は特に書籍が堅調で、チェーン店は良くないが独立店は非常に良いという。アメリカの出版界を研究し、新風会でも取り入れてみては」と述べて乾杯の音頭を取った。

県立図書館の図書購入で県に要望書/千葉組合

千葉県書店商業組合(鈴木喜重理事長)は9月28日の総会で、鈴木栄治・千葉県知事宛で県立図書館3館の図書購入に関し配慮を求める要望書を承認した。
県立図書館の図書購入に関する要望書
時下、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。日頃は、当組合の活動につきましてご理解ご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
さて、貴館3館(中央図書館・東部図書館・西部図書館)への当組合の図書納入実績は、平成20年度よりほぼ毎年度減少しており、昨年平成27年度には平成20年度の図書納入額の60%を切る額にまで減少しています。特に中央図書館の納入額は年額数百万円程度ですので、他館同様に当組合並びに県内の組合員(書店)に全面発注を要望いたします。
また、資料によりますと、利用される来館者数は若干の減少がみられますが、中央図書館はむしろ増えている状況です。
このような観点から、それぞれの書店が今後とも読書推進活動並びに地域文化を支える活動を活発にしていくためにも、特段のご配慮を賜りたくよろしくお願い申し上げます。

帯コンに1万1394点応募/大阪組合

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は10月8日に大阪市の大阪組合会議室で定例理事会を開催した。
会議に先立ち、面屋理事長が、日書連9月理事会の流通改善委員会で報告された活字文化議員連盟の「全国書誌情報の利活用に関する勉強会」(会長=細田博之衆議院議員)による提言について説明。特に、「地域書店と図書館の連携強化」の提言の中で指摘する「指定管理業者と納入業者の区分」、「図書納入における地域書店の優先」、「競争入札の範囲などの見直し」の法制度整備について意見を交わし、図書館委員会(深田副理事長)に大阪組合として大阪府・市への陳情も視野に入れて、検討を付託した。
委員会報告では、読書推進委員会から、第12回大阪こども「本の帯創作コンクール」(帯コン)の応募作品は1万1394点(課題図書3541点、自由図書7853点)、参加学校は265校(大阪府内232校、府外33校)、参加自治体は48だったと報告。また、実際に帯として本に巻かれて販売される、課題図書部門の大阪府知事賞・朝日新聞社賞・大阪国際児童文学振興財団賞の受賞作を発表した。表彰式は、11月12日(土)に大阪市中央区のエル・おおさか大ホールで開催される。
雑誌発売日励行委員会では、違反報告は無く、9月期委員会は休会、10月期委員会は10月13日に開催予定と報告した。
定款改正委員会からは、規約等の改正を年内をめどに進め、11月に委員会を開催予定と報告があった。
事業委員会では、小学館の「世界地図カレンダー」の販売数等について経過報告を行った。
広報・HP委員会では、9月14日に開かれた日書連全国広報委員会議に東委員長が出席したと報告した。
図書館・情報化委員会では、大阪府教育委との府立高校の日書連マークの契約が来年8月に更新時期が迫っていることから、前回契約時の経緯、現在の折衝経過の報告があり、契約について委員長に一任することを承認した。
(石尾義彦事務局長)

SJ図書カードの促進図る/児童書セットを積極展開/富山総会

富山県書店商業組合(丸田茂理事長)の第29期通常総会が8月25日に富山市電気ビルで開催され、組合員31名(委任状含む)が出席した。
総会は丸田理事長を議長に選出して議案審議を行い、第29期事業報告、収支決算、役員改選、第30期事業計画、収支予算案など全ての議案を原案通り承認可決した。第30期事業計画案は以下の通り。
①サン・ジョルディの日の推進企画として、組合員の販売促進のためにオリジナル図書カードの作成、販売を実施する。実施時期を1ヵ月早めて、新学期プレゼント用として利用促進を図る。今まで約10絵柄のカードを作成しており、現在は氷見の梅、黒部の桜、秋の立山、城端の桜の4種類ある。富山県に立ち寄った際、最寄の書店で購入してもらうよう促進する。
②日本児童図書出版協会加盟社が刊行した選りすぐりの169点169冊、2016年度「心にのこる子どもの本秋・冬セール」のセットを積極的に展開していく。
③日書連の消費税増税の際に出版物への軽減税率適用を求める運動に、県組合として協力していく。
④日書連や出版物小売業公正取引協議会に出席し、意見具申を行う。
(澁谷英史広報委員)

訃報

柴田信氏(しばた・しん=岩波ブックセンター信山社代表取締役会長)10月12日死去、86歳。通夜は同15日、告別式は同16日に家族葬にて営まれた。「お別れの会」が11月21日午後2時から東京都千代田区の如水会館で執り行われる。

売上伸び率マイナス3・36%/トーハン『書店経営の実態』

トーハンは、全国134企業572店舗の経営資料を集計分析した平成28年度版『書店経営の実態』を発行した。これによると、平均売上高伸長率はマイナス3・36%(前年マイナス3・37%)で、21年連続のマイナス成長となった。
『書店経営の実態』は、売上高対経常利益率が0・0%以上の企業を「健全企業」、0・0%未満の企業を「欠損企業」として分析している。売上高伸長率をみると、健全企業がマイナス2・12%(前年マイナス2・35%)、欠損企業がマイナス6・11%(同マイナス6・46%)で、総平均でマイナス3・36%(同マイナス3・37%)と、21年連続の前年割れになった。
売上高対粗利益率は書店業界では20~23%が平均的と言われる。健全企業は23・57%、欠損企業は22・80%で総平均では23・37%(同22・98%)となった。
企業の営業力の指標といえる売上高対営業利益率は総平均で0・30%(同0・47%)。健全企業は1・18%だったが、欠損企業はマイナス2・19%。売上高対経常利益率は健全企業が1・91%、欠損企業がマイナス1・61%で、総平均は1・00%(同1・70%)になった。
売上高対販売費・管理費率は総平均で23・07%(同22・51%)。健全企業は22・39%、欠損企業は24・99%だった。また、売上高対人件費率は総平均で11・35%(同11・33%)。健全企業は10・81%、欠損企業は12・92%だった。
粗利益対経費率は、販売費及び一般管理費が粗利益に占める割合をみるもので、収益が厳しい低成長期には特に重要になる。総平均では98・72%(同97・95%)で、健全企業が94・99%に対し欠損企業が109・61%だった。労働分配率は50%以下が目標とされるが、健全企業が45・86%、欠損企業が56・67%で、総平均では48・57%(同49・30%)になった。
従事者1人当りの月間売上高は、健全企業が192万5千円、欠損企業が153万8千円で、総平均では181万1千円と前年比5万9千円減少した。従事者1人当りの月間粗利益高をみると、健全企業45万4千円に対し欠損企業35万1千円。総平均で同7千円減の42万3千円だった。
商品回転率は健全企業4・95回、欠損企業4・02回で、総平均は同0・02回増の4・55回。売上高対粗利益率に商品回転率を掛けた商品投下資本粗利益率は、収益性と商品投資効率を総合的に判断する指標だが、健全企業116・67%、欠損企業91・66%で、総平均では同2・23ポイント増加して106・33%になった。
総資本に占める純資産(自己資本)の割合を示す自己資本比率は、健全企業が26・06%、欠損企業が9・11%で、総平均は同1・97ポイント減の22・25%だった。事業に投下された資本総額の回転速度を示す総資本回転率は、書店経営では約2回転が目安。総平均は同0・12回増の1・76回で、健全企業が1・82回、欠損企業が1・63回だった。
流動比率は、1年以内に回収される資産である流動資産と、返済義務を負う流動負債のバランスをみることで短期支払い能力を表す指標で、130%以上の確保が望ましい。健全企業は171・49%、欠損企業は148・61%で、総平均は同7・39ポイント増の166・02%となった。
固定資産への投資が適正かを判断する尺度となる固定比率は、100%以下が目標。健全企業は150・77%、欠損企業は311・20%で、総平均は同8・63ポイント減の164・00%だった。
店舗単位での売上伸長率は、前年のマイナス4・1%に対しマイナス3・3%と、前年に比べ小幅なマイナスにとどまった。
売上高伸長率を売場規模別にみると、最も下げ幅が大きかったのが60~100坪未満のマイナス4・5%。立地環境別では、商店街がマイナス5・6%と振るわなかった。売上規模別では、5千万円未満がマイナス4・8%と不振が目立った。地域別では北海道・東北の下げが最も大きく、マイナス3・9%と落ち込んだ。
複合型書店の調査では、書籍・雑誌以外の売上構成が20%以上の店舗を複合型書店、20%未満を本専業店に分類。複合型書店の売上高伸長率を部門別にみると、セルCD・DVD複合店がマイナス3・6%、レンタル複合店がマイナス2・2%、文具・雑貨複合店がマイナス1・6%、その他の商材の複合店がマイナス1・6%で、本専業店はマイナス3・4%だった。
平成28年度版『書店経営の実態』(B5判46ページ、頒価税込1512円)に関する問い合わせは、トーハン・コンサルティングまで。℡03(3266)9623

公立図書館の指定管理者制度について―2016/日本図書館協会、「基本的になじまない」との見解を公表

日本図書館協会は9月30日、「公立図書館の指定管理者制度について―2016」と題する見解を公表。05年、08年、10年の3回にわたって表明した見解を踏まえ、今回も「公立図書館への指定管理者制度の導入については、基本的になじまない」とする考えを示した。内容を掲載する。
【はじめに】
2003年6月の地方自治法の一部改正により指定管理者制度が導入されてから13年が経過しました。日本図書館協会(以下「当協会」という。)では、この制度について調査研究を重ね、2005年、2008年、2010年の3回にわたって見解を表明してきました。このたび、これまでの3回の見解や近年の状況を踏まえ、この制度の持つ基本的な課題や新たな課題を整理し、改めて考え方を取りまとめました。
この制度の公立図書館への導入の判断は、各自治体の自主性に委ねるものですが、当協会は、我が国の今後の公立図書館の健全な発達を図る観点から、公立図書館の目的、役割・機能の基本を踏まえ、公立図書館への指定管理者制度の導入については、これまでの見解と同様に、基本的になじまないと考えます。そこで、これまでの経緯と現状における課題を整理し、公立図書館に求められている本来の望ましい姿を確認し、公立図書館に関心を持つ幅広い人々に対し、指定管理者制度の導入について慎重で丁寧な検討を行うための参考として提示します。
【1公立図書館のあるべき姿】
(1)公立図書館の役割
公立図書館は、住民が持っている基本的な権利や様々な欲求に応えるために地方公共団体が設置し運営する図書館であり、乳幼児から高齢者まで、住民すべての生涯にわたる自己教育に資するとともに、住民が情報を入手し、芸術や文学を鑑賞し、地域文化の創造に資することを目的とした教育機関です。また、公費によって維持される公の施設であり、住民はだれでも無料でこれを利用することができます。
公立図書館は、住民一人ひとりの資料要求に対する個別対応を基本とし、住民の公平な利用の観点からすべての住民に公平に基本的なサービスを保障することを目的としています。さらに、公立図書館は、住民の生活・職業・生存と精神的自由に深くかかわる機関であり、地方公共団体の責任において直接管理運営し、住民の権利である資料要求を保障していくことが重要であると考えます。
(2)管理運営の基本
図書館法(以下「図法」という。)に基づいて設置する公立図書館は、教育委員会が管理する機関であり、図法に示されている図書館運営やサービスを行うことは、自治体の責務です。したがって、設置者が図書館の運営方針や事業計画を定め、図書館の運営について評価をします。また、図法に基づき告示されている「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日文部科学省告示第172号)において公立図書館は、事業の継続性、安定性の基にサービスを計画し、適切な図書館評価を行い、改善を図りながら運営することが求められています。「ユネスコ公共図書館宣言 1994年」においても、公共図書館のサービスは、社会的身分を問わず、すべての人が平等に利用できるという原則に基づいて提供されることや、利用に関する費用は無料としていることなどから、地方及び国の行政機関が責任を持つものとしています。このような基本的性格に照らせば、公立図書館は、地方公共団体が直接運営することが基本であり、本来、図書館の管理を他の者に行わせることは望ましいことではありません。
【2公立図書館における指定管理者制度の運用状況】
(1)指定管理者制度の導入状況
公立図書館における指定管理者制度の導入は、発足時との比較でやや増加したものの、多くの自治体では、図書館運営の継続性や安定性、専門職員の確保・育成、他機関や地域との連携などが難しいことなどから、公立図書館に指定管理者制度を導入していません。
・日本図書館協会「図書館における指定管理者制度の導入の検討結果について2015年調査(報告)」
導入数430館、導入率13・2%
なお、指定管理者制度を導入し、直営に変更した館が12館あることは注目に値します。
・文部科学省「社会教育調査」2011(平成23)年度調査(2011年10月1日現在)
導入数347館、導入率は10・7%
・総務省「地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査」(2015年4月1日現在)
導入数501館、導入率15・2%
(2)図書館職員数
公立図書館職員数のうち、専任職員数(司書・司書補を含む。)がこの10年間で26%減少する一方で、委託・派遣の職員(司書・司書補を含む。)、指定管理者の職員(司書・司書補を含む。)が4・5倍増加しています。これはすべてが指定管理者制度に起因するものとは限りませんが、看過できない状況です。
・「日本の図書館2015」(日本図書館協会刊)は、委託・派遣の職員に指定管理者の職員と業務委託職員がともに含まれるため、指定管理者の職員の実数が把握できませんが、増加が推測されます。
(3)指定管理者制度の導入をめぐって
指定管理者制度の適用は、地方自治法第244条の2第3項で「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」としており、住民への公立図書館のサービス向上を図る観点から適用か否かを判断するものです。公立図書館における指定管理者制度の導入をめぐっては、多様な意見がありますが、導入を推進する多くの自治体では、例えば、次のような理由をあげています。
「民間事業者等の創意工夫を活かし、多様化する市民ニーズに、より効果的・効率的に対応することで、市民サービスの向上を図るとともに経費の削減がなされることを期待して、指定管理者制度を導入する。」このことで、開館時間の延長や開館日数の増加が行われ、図書館運営経費が節減される事例を見受けますが、一方で、経費や手間のかかるサービスや事業への取組みが十分ではないなど、責任の所在が明確とは言えない場合などがあり、公立図書館の目指すべき姿とは必ずしも思えない状況が見受けられ、継続的かつ安定的なサービスの維持向上に結びつくものとなっていないのが現状です。
【3指定管理者制度の課題】
(1)制度上の課題
ア指定期間の設定
指定期間の設定は、地方自治法第244条の2第5項で「指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。」としており、おおむね3年から5年という指定期間の短さがあり、次回も引き続き指定管理者として指定されるとは限りません。したがって、指定管理者の職員の雇用期間も年毎に更新する有期雇用の場合が多く、経費節減が厳しく求められる状況において、安定した長期雇用が必ずしも保障されません。このため、短期的に職員が入れ替わることとなり、指定管理者の職員として、安定した身分を確立し、優れた人材を確保するための状況改善には課題があり、サービスの維持・向上を果たす上での職員の基層における影響が避けられません。
イ職員の研修機会
図法は、第4条から第7条までと第13条で司書や専門的職員の配置について規定しています。司書に必要な資質・能力は、司書資格を取得した後、図書館の業務経験や研修及びその他の学習機会等による学習等を通じて、徐々に形成されていくものです。このため、図書館の設置者には、司書に資質・経験等に応じて継続的に研修に参加させ、知識・技術を向上させるように努めことが重要で、専門性と継続性を確保し、図書館奉仕を行うことが求められています。指定管理者における職員の研修機会については、一部の指定管理者を除いては、研修を企画運営する職員の人材不足や外部研修への予算、時間の確保が難しいなど、多くの課題を抱えている状況にあります。
ウ指定管理者側の経済的利益
地方自治法第244条の2第8項で「利用料金制」が規定されていますが、指定管理者側の経済的利益の期待は、図法第17条において「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。」としており、指定管理者側の事業収益が見込めず、経済的な利益を期待することは困難です。このため、人件費を抑えざるを得ない構造上の事情から不安定な雇用状況の中、厳しい条件の下での労働という社会的課題の側面とも関わるということがあります。公立図書館において公正で安定した管理運営を行い、サービスを維持・向上させていくことができる物的能力、人的能力を確保することは、地方自治体の責務であり、自らが直営で維持管理し、運営していくことが必要です。
(2)手続き上の課題
指定管理者の選定については、複数の候補団体の中から、公正かつ透明性を確保しつつ、住民や議会の理解や合意を得ながら行うことが必要です。しかしながら、地方公共団体が、特定の団体以外に図書館の指定管理を最も効率的かつ効果的に行うことができないと認める場合については、特定団体を選択することは法令上妨げられていません。指定管理者制度の導入に当たっては、議会の議決が必要であることは当然ながら、あらかじめ図書館協議会に諮ることや住民への十分な情報提供や説明を行うなど、必要な手続きを十分に行うことが不可欠です。本来図書館の運営を考えるに当たっては、住民のための望ましい図書館を住民とともに作り上げていくよう機運を醸成することが肝要であり、利用の主体である住民の意向を最大限尊重することが重要です。
(3)設置者側からの課題
ア企画立案への職員参加
図書館に関する政策立案や教育振興計画、子ども読書活動推進計画、図書館サービス計画などの立案に当たっては現場の図書館員の参加が必要であり、また、図書館の評価を行うに当たっては、図書館サービスの専門的知識・経験や、図書館経営の力量を持つ者が行うことが必要です。指定管理者制度では、指定を受けた団体の職員が、これら企画立案へ参加できず、計画の趣旨が十分に伝わらない可能性があります。このように、政策決定と運営主体との間の分離により、図書館運営の維持発展が難しくなるおそれがあります。
イ指定管理者と地方公共団体との責任
公の施設の設置・管理において、通常有すべき安全性の確保等利用者への損害の賠償責任については、直営においては当然、指定管理者制度においても地方公共団体が負います。また、管理上の詳細事項については、両者の協議によると定めることがありますが、責任分担にあいまいさが残ると、訴訟問題に発展する可能性があります。公立図書館は、乳幼児から高齢者、図書館の利用に障害のある利用者まで様々な利用者が数多く利用する公の施設であり、両者間で協定をあらかじめ詳細に締結しておくことが望まれますが、実際には諸状況に対処していくための運営上の課題も少なくありません。このほか、利用者からの窓口での苦情などについて、指定管理者がすぐに回答するのではなく、設置者に聞いてから回答することもあるため、円滑かつ迅速に対応ができていない場合があります。
ウ運営内容の共有化
住民にとって図書館サービスを利用する上で、自治体内の各図書館サービスの質的均一性と継続性が重要です。そのためには、各図書館相互における運営内容の共有化を図り、緊密な連携が求められます。自治体内において、指定管理者の分離指定(中央館と分館、複数の分館)が行われた場合、意思疎通や調整上の舵取りの難しさが避けられないことや、次の指定がなかった場合にサービスの質的均一性や継続性を確保できるかが大きな課題となっています。
(4)利用者側からの課題
ア 図書館サービス・事業
公立図書館は、利用者への資料提供を基本とし、求める資料についてはリクエストや相互貸借などの制度を活用し、きちんと応えることが大切です。また、住民からの様々な読書相談や資料要求に迅速かつ的確に対応することがレファレンスサービスでは求められます。そのためには所蔵資料の把握はもちろん、その地域の事情に精通し、資料に関する専門的知識と経験の蓄積を持った司書が的確に対応し、要求に応えていく必要があります。指定管理者のような短期間の契約ではこのようなサービスを実現させることは大変難しいと考えます。必要となる資料の選書や保存、除籍等についても同様に、自治体職員の司書が長期的な視野に立ち、一貫した運営方針の基での取組みが肝要です。
イ地域の図書館の役割
公立図書館は、様々な住民が社会に参加し社会を形成していく上で住民の知る権利を保障し、必要な資料や情報を提供するという大切な役割を担っています。地域社会の発展をめざし、優れた図書館サービスを提供することが自治体の責務です。地域の事情から施設の複合化や集約化を効果的に構築したり、結果として集客や賑わいが生まれることは望ましいことと言えますが、集客や賑わいを求めることが第一の目的ではありません。図書館本来の機能の充実を踏まえてさらなるサービスや機能の拡充をめざすことが望まれます。今後、公立図書館が地域との連携をますます進展させ、地域に根差した多様な活動を展開していくには、地方公共団体が直接運営することが重要であり、地域住民との協働や関連機関との連携などを通して、住民のための地域図書館として豊かに発展していくことが大切です。
ウ個人情報にかかわる懸念
個人情報の保護については、公務員の規定に加えて「図書館の自由に関する宣言」(1954年図書館大会採択、1979年日本図書館協会総会改訂)や、「図書館員の倫理綱領」(1980年日本図書館協会総会決議)などにおいて、利用者の秘密を守ることを明記しています。指定管理者が運営に加わる場合においても自治体職員と同様の義務は負うことになりますが、これまで指定管理者に起因する個人情報に関わる出来事が散見されており、利用者の立場からは、図書館の管理を他の者に行わせるため、個人情報にかかわる懸念がないとは言えません。
【4導入の検討に当っての留意事項】
(1)指定管理者制度を検討する視点
当協会は、指定管理者制度について様々な指摘をしてきましたが、2007年に作成した「指定管理者制度を検討する視点―よりよい図書館経営のために(試行版)」において「2、指定管理者制度を検討する場合のチェック項目」
1(省略)について示しています。指定管理者制度を導入するかどうかの検討に当たっては、これらの項目についての検討が必要です。参考資料として文末に添付しましたので、参照ください。
(2)文部科学省の動向
2008(平成20)年6月3日参議院文教科学委員会において文部科学大臣から、指定管理者制度について実態の把握状況と、その認識及び今後のあるべき姿について、次のような答弁がありました。
「(略)十七年度、少し古くなりますが、この社会教育調査によりますと、公立図書館への指定管理者制度の導入率というのはまだ一・八%なんですね。その最大の理由は、やっぱり今御指摘がございました、大体指定期間が短期であるために、五年ぐらいと聞いておりますが、長期的視野に立った運営というものが図書館ということになじまないというか難しいということ、また職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなる、こういう問題が指摘されておるわけでございます。やっぱりなじまないということで一・八%なのかなというふうに私は受け止めております。そういった点からすれば、(中略)図書館に指定管理者制度を導入されるということであれば、先ほど言いましたような点について、しっかりとそういった懸念が起こらないようにしていただいた上で導入をしていただくということが大事なのではないかなというふうに考えております。」このように長期的な視野に立った運営が必要なことや、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなるという問題があり図書館にはなじまないという判断で導入率が低いことなどを示し、懸念されている問題を払拭した上で判断することが重要であると述べています。
また、同日の同委員会における社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議では、「指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと」としました。
さらに、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」が告示され、公立図書館サービスの向上を図り、図書館の機能を達成するために要望される基本的な諸条件や考え方、具体的な方策など公立図書館の中身を実現するための具体的な手立てが示されており、この基準を指針として、より良い見直しを図ることや、関係機関に働きかけることが肝要です。この基準における指定管理者制度導入の検討に当たっての留意事項としては、「図書館の設置者は、当該図書館の管理を他の者に行わせる場合には、当該図書館の事業の継続的かつ安定的な実施の確保、事業の水準の維持及び向上、司書・司書補の確保並びに資質・能力の向上等が図られるよう、当該管理者との緊密な連携の下に、この基準に定められた事項が確実に実施されるよう努めるものとする。」との規定が示されています。
このほか、この基準の告知とともに公表された生涯学習政策局長通知(24文科生第57号平成24年12月19日)においても、「地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定により指定管理者制度を導入するに当たっては、「指定管理者制度の運用について」(平成22年12月28日総行経第38号)も参考にしつつ、経費削減効果のみに着眼するのではなく、適切な指定期間の設定等に留意し、図書館の設置の目的の適切な達成を図ること。」との留意事項が示されています。
(3)総務省の動向
総務省は、厳しい財政状況下において2015(平成27)年8月28日に「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」の中で指定管理者制度等の活用等行政サービスのアウトソーシング等の推進を示しています。この中でも「指定管理者制度の運用について」(総務省自治行政局長通知同上)の内容を十分に踏まえて対応されたいとし、8つの留意点
2(省略)を示しており、この制度の持つ課題に鑑み、公立図書館への指定管理者制度の導入の検討に当たっての留意事項ともなっています。この運用については、2011(平成23)年1月5日の片山総務大臣閣議後記者会見の概要において図書館の指定管理者制度導入に懸念を表明し、今日においてもこの制度の持つ課題や留意点が変わっていないことから、慎重に対応すべき旨を示唆していると考えます。
また、2015年11月の経済財政諮問会議の「経済・財政一体改革の具体化・加速に向け地方行財政の取組について」(2015年11月27日 高市議員提出資料)においてトップランナー方式導入における検討対象業務の図書館管理への指定管理者制度導入等に係る課題等が示され、地方交付税の基準財政需要額の算定に反映する取組みを推進することとしています。単位費用に計上されている業務の課題等を検討し、可能なものから導入するものの中に、図書館管理も対象とされ、指定管理者制度導入等を業務改革の内容としています。このような指定管理者制度導入を前提とした地方交付税の算定には十分な注意が必要と考えます。必要な資料費を確保し、図書館協議会の設置、充実や活性化を図り、住民のための図書館評価を適切に行うなど、長期的視野に立ち、我が国の図書館の健全な発達を図るため、慎重で丁寧な検討や対応が望まれます。
【おわりに】
当協会では、地域住民とともに図書館づくりを進めてきたこれまでの公立図書館の形成の歩みを踏まえ、現在においても公立図書館に指定管理者制度の導入は基本的になじまないとの考えを示しています。我が国の人口減少や高齢化の進行、厳しい財政状況下において、今後、公立図書館の健全な発達や図書館サービスの充実をどのように図り、図書館を運営していくかは、管理運営形態のいかんにかかわらず、大きな課題であり、地方公共団体による直営でも効果的、効率的な図書館経営への努力が求められることに変わりありません。公立図書館の望ましい姿を堅持するためには、司書の専門職制度の確立に向けて努力することが目指すべき方向性と考えます。
また、当協会では、指定管理者制度の公立図書館への導入の検討に当っての根拠として、憲法、教育基本法、社会教育法、図書館法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、図書館の設置及び運営上の望ましい基準等があるとともに、「図書館の自由に関する宣言」(1979年改訂)を決議し、「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。」としています。当協会は、「公立図書館の任務と目標」(2004年改訂版、2009年増補)を策定し、公立図書館事業の基本に立ち戻って課題や問題点を確かめ、展望を見出すための参考・指針としています。
これからも、人々の暮らしに果たす図書館サービスの可能性をより豊かに実体化し、公立図書館の健全な発達を図るため、情報提供や意見表明などを引き続き行っていくよう努めて参ります。

生活実用書/注目的新刊

キレやすい人や意地の悪い人が、年々増加しているような気がする。幼児虐待や青少年の残虐な犯罪も多くなっているのではなかろうか。食べものや電子機器などの影響もあるが、実はその育ち方にも問題があるのかもしれない。
山口創著『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書145700円)は臨床心理学、身体心理学者が説く、人間の皮膚と心、頭、体の関係である。本書は12年を経て、15刷りというロングセラー。
元来、日本の子育ては母子密着型の育児法だった。家事をするのでも、おんぶひもで背中に接触していたし、抱けない時は祖母がだっこしていた。それが欧米の育児法によって、非科学的だと否定されてきた。赤ん坊が泣いてもすぐに抱いてはいけない、自立を妨げるというものである。
ある大学の調査では乳児期に母親とのスキンシップが少なかった学生は、多かった学生より人間不信や自閉的傾向が高く、自尊感情が低いことがわかった。「キレる脳」に関しても、スキンシップ不足の子供の方が顕著だった。
抱いたり、頭をなでたり、さすったりという、皮膚感覚が子供を健常に育てるのである。きちんと育てようという思いから、甘えさせずに叱ってばかりいると、思いやりがなく自己中心的に育つ。辛い経験を持つ子供は、すぐ身構えるために、筋肉だけでなく骨や内臓にも影響が出るのだという。母子のスキンシップはそれほど大切なのである。
柴田輝明著『跳び箱に手をつき骨折する子ども』(ポプラ新書103800円)は学校保健の整形外科医が報告する、最近の子供達の運動機能低下の実態である。これをロコモティブシンドロームという。長いので、ロコモ。
正しい姿勢で「きおつけ」ができるか、片足立ちが5秒以上ふらつかずに立てるか、かかとが上がらずにしゃがみ込めるかなど6項目の運動器検診でもできない子がいる。体幹筋がしっかり育っていないからで、当然姿勢も悪い。乳児期にハイハイをあまりしないで歩き始めたり、全身を使った遊びをしなかった子供に多く見られる。子供の老化減少は1985年位から始まり、年々進んでいるという深刻な状況である。何よりも親が子供をよく観察しなければ改善は難しいかもしれない。
(遊友出版斎藤一郎)

和田真希『野分けのあとに』が受賞/暮らしの小説大賞

産業編集センターが主催する第3回「暮らしの小説大賞」の授賞式が9月30日、東京・千代田区のマルノウチリーディングスタイルで開かれた。
大賞は和田真希氏の『野分けのあとに』(受賞時タイトル『遁(とん)』を改題)、今回初めて設けられた出版社特別賞は小林栗奈氏の『利き蜜師物語銀蜂の目覚め』(同『利き蜜師』を改題)が選ばれた。
『野分け~』(本体1300円)は10月21日、『利き蜜師~』(本体1200円)は9月15日、ともに産業編集センターから発売されている。
大賞の和田氏は多摩美術大学卒業後、神奈川・丹沢の限界集落に移住し、農業を営みながら執筆、絵画制作を行っている。あいさつで「台風の後の恵みの季節に合わせるかのように『野分けのあとに』を発売していただくことに縁を感じ、感謝している」と喜びを語った。

東京・あおい書店の全株式を取得/トーハン

トーハンは10月17日に開催した取締役会で、同社の100%子会社で中間持株会社であるブックス・トキワが、あおい書店(本社・東京都中野区、八木隆司社長)の発行済株式の全株式を譲り受けることを決議。25日に株式譲渡契約書を締結した。
あおい書店は平成28年9月1日、あおい書店(本社・愛知県名古屋市)から分割により設立。東京、愛知、神奈川、京都、岐阜、静岡で19店舗を展開している。売上高は約50億円。資本金1000万円。

「文藝別冊シリーズ」で時限再販フェアを開催/河出書房新社

河出書房新社は12月1日から来年1月31日まで、期間限定の時限再販の試みとして、創業130周年企画「文藝別冊シリーズ読者謝恩価格フェア」を今年も開催する。
昨年開催の第1回フェアでは品切れ店が続出し、実売率43・7%と通常価格でのフェア開催と比べると約2倍の売上を記録。書店から引き続き開催を求める声が多数寄せられていた。
対象商品は、昨年の売れ行きベスト5の①向田邦子、②ナンシー関、③萩尾望都、④佐野洋子、⑤立川談志を含む30点。A、B、Cの3種類のセットを用意した。
出荷条件は通常正味、4ヵ月長期委託。売上本体価格の20%が報奨金として支払われ、20%の値引きでも通常の書店マージンが確保できる。
事故防止のため、表4バーコード付近に専用シールを貼付。シール空欄には販売価格本体を記入できる。また、通常スリップのほかに赤色スリップ、専用表1シールを付けて出荷する。
期間中、書店は自店で販売価格を決めることができる。期間を過ぎて継続販売する場合は、シール、オビを外して定価で販売する。
参加申込制で、11月10日までに注文書・申込書に記入して申し込む。セット数限定のため、申込数超過の場合は出荷できないことがある。11月20日頃より搬入を予定。POSデータまたはスリップで売上集計し、来年8月10日に報奨金を支払うことを予定している。

京都本大賞に望月麻衣氏『京都寺町三条のホームズ』

過去1年間に刊行された京都を舞台にした小説の中から地元の人に読んで欲しい作品を決める「第4回京都本大賞」の授賞式が10月5日、京都市中京区の京都書店会館で開かれ、望月麻衣氏の『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)が大賞に選ばれた。
この賞は、京都府内の書店、取次、出版社などで構成する京都本大賞実行委員会が主催。実行委員が選んだ最終ノミネート作品から、書店員および読者の投票で決定するもの。京都組合ホームページで投票すると1ポイント、組合加盟書店の店頭で投票すると5ポイントが加算される仕組み。今回は最終ノミネート3作品のうち、『京都寺町三条のホームズ』が2位を10倍近く引き離す2141票を獲得した。総得票数は2551票だった。
『京都寺町三条のホームズ』は、京都の寺町商店街の骨董品店を舞台に、女子高生が「寺町のホームズ」と呼ばれる店主の息子とともに、客から持ち込まれる奇妙な依頼を解決するミステリー。小説投稿サイトで連載された後、双葉文庫から刊行された。
北海道出身で京都在住の望月氏は「京都人の夫と結婚した際、小説の舞台となった寺町三条付近の商店街にある色々な店を見て、活気と歴史ある独特な雰囲気にカルチャーショックを受けた。3年以上、趣味と取材を兼ねて寺社仏閣を見ているが、まだまだ回りきれない。京都人は地元を誇りに思っていて素敵だと思う。よそ者の目線で京都のことを面白おかしく書くことができた」とあいさつし、受賞記念の盾と賞状が贈られた。
「第3回京都ガイド本大賞」「第2回京都ガイド本リピーター賞」も発表された。
京都ガイド本大賞は『ひとりで歩く京都本』(京阪神エルマガジン社)が受賞した。賑やかな観光地ではなく、一人でマイペースで歩くからこそ楽しい店・寺・街を網羅したムック。同社の中村正史取締役編集本部長は「非常に良い出来で、出版した甲斐があった。来年に向けてV2を狙いたい」と抱負を語った。
リピーター賞は梅林秀行氏の『京都の凸凹(でこぼこ)を歩く』(青幻社)が選ばれた。京都の出版社と京都出身の著者によるディープな京都マニア・上級者向けの玄人本。有名テレビ司会者も「京都街歩きの達人になれる本」と絶賛した。梅林氏は「世界的に有名になった京都の真のリピーターは、京都の住民に他ならない。京都人にこそ読んでほしかったので、今回受賞することができて良かった。この本では有名なスポットを訪ねたりしない。そこに住む人たちが刻んできた生活の風景や歴史、色々な記憶や感じ方と、読者の主観がうまく凸凹を削ることで、京都の人がどんな風に生きてきたかがつながる。その瞬間を感じた読者が僕に語る数字(順位)だと思う」と話した。
(若林久嗣広報委員)

オタク系コミックを強化/講談社、一迅社を完全子会社化

講談社は10月14日、一迅社の全株式を取得し完全子会社化すると発表した。
一迅社は1992年設立。累計210万部を超える『ヲタクに恋は難しい』や『ゆるゆり』などのコミック作品、漫画月刊誌「月刊コミックゼロサム」「月刊コミックREX」「まんが4コマぱれっと」「gateau」、隔月刊誌「コミック百合姫」「Febri」、ライトノベルスを刊行する、オタク系コンテンツに強みを持つ中堅出版社。第25期(15年8月~16年7月)は売上高44億4238万円を見込んでいる。
14日、都内で開いた共同記者会見で、講談社の野間省伸社長は「両社が強みを生かし、シナジー効果を発揮して、コミック市場の活性化に寄与していくものと確信している」と述べ、「一迅社はオタク系コンテンツを得意として、読者から熱い支持を得ている。講談社は様々なジャンルのコミックを刊行しているが、一迅社を子会社化することで、コンテンツのさらなる拡充を図ることが可能になる。オタク系と言ってもニッチではない。マーケットとして確立されている。一迅社の力を借りて強化したい」と展望を語った。
また、一迅社が人的リソース不足などの理由から機動的な展開ができずにいた電子書籍や海外事業で、講談社のインフラを活用することによって課題を解決することができると強調。「講談社は何年もかけて電子や海外のインフラを整備し、ノウハウも蓄積してきた。一迅社にどんどん使ってもらい、世界に飛び出てほしい」と期待を示した。
一迅社の原田修会長は「これから業績が伸びそうな分野は電子と海外。ビジネスチャンスが広がっているが、中小出版社にとってはオーバーフロー。本格的な事業として考えると一迅社の規模では難しい。大きなビジネスインフラのあるところに協業を申し込むしかないというのが結論。講談社であればいい補完関係に入れるのではないかと資本提携を申し込んだ」と述べた。
一迅社は編集の独自性を保持し、雑誌などの発行を継続するとしている。

135店舗を日販帳合に/文教堂グループホールディングス

文教堂グループホールディングス(文教堂GHD)は9月30日、トーハンと共栄図書帳合の135店舗を11月1日から日販帳合に変更すると出版社に通知した。
文教堂GHDは大日本印刷(DNP)の連結子会社だったが、DNPと傘下の丸善ジュンク堂書店が保有する文教堂GHDの株式51・86%のうち28・12%を日販へ売却することで、10月末付でDNPの連結子会社から外れ、日販が筆頭株主に。
9月12日には日販との業務提携を発表し、文具・雑貨をはじめとする複合商品の共同研究、アニメ関連商品等のオリジナル商品・PB商品の共同開発と展開、新業態の開発、販売データの活用・共有化やシステム整備で協力体制を構築するとしていた。