全国書店新聞
             

平成17年1月1日号

「萬田会長に聞く今年の課題」/ポイント問題打開策探る/野口課長発言で激震/今年は景品規約の改訂も

自然災害に振り回された2004年が終わった。出版業界は年末に至ってポイントカードの対応で、公取委との間で緊張が走った。日書連萬田会長の年頭インタビューはポイントカードをめぐる経過と、公取委取引企画課野口課長発言に対する疑問を語ることで終始した。
――昨年の出版業界は前半順調でしたが、後半は雲行きが怪しくなってきました。まず1年間を振り返っていただけますか。
萬田年初1月16日の東京組合新年会の日に芥川賞選考会がありました。河出書房新社若森社長に『蹴りたい背中』受賞の連絡が入り、飛び出していったのが印象的でした。受賞作の『蹴りたい背中』はミリオンセラー、『蛇にピアス』も60万部。受賞作を掲載した『文藝春秋』3月号は3倍くらい売れました。そのあとも『世界の中心で愛をさけぶ』や『バカの壁』が引き続き好調で上半期は前年比プラスでした。
ところが7月頃から台風が10個上陸し、局地的な集中豪雨や地震です。新潟中越地震は阪神大震災に匹敵する規模で、自然災害が日本全土を覆いました。
9月1日には『ハリー・ポッター』5巻が290万セット販売され、長雨で抑えられていた売上げをカバーしました。『グッドラック』『いま、会いにゆきます』とミリオンセラーも続きました。雑誌は週刊誌の落ち込みでマイナスですが、書籍がよかったので、全体ではわずかながらプラスになる。8年ぶりにマイナス脱出が期待されます。
――2005年の景気見通しはいかがですか。
萬田経済の回復は大企業を中心にアメリカ、中国向け輸出に支えられ好調裡に来ていました。中小企業、特に非製造部門の回復感が遅かったが、昨年11月頃からようやく好況感が広がりつつあります。
――定率減税廃止など、景気の足を引っ張る要因もあると思うのですが。
萬田定率減税廃止は18年1月までは増税にならないし、2段階に分け、今後の景気動向次第で見直すとのこと。年金保険料引き上げもありますが、橋本内閣の時は消費税引き上げ、特別減税廃止、医療費引き上げで9兆円の国民負担増となった。それに比べ、今度は2兆円規模です。
政府月例経済報告では足踏み状態が年末2ヶ月続いて、今年前半がよくないと言われますが、後半は回復する見通しです。一連の金融改革で過剰債務、過剰投資も一応整理がつき、その次の発展段階にヘッジできれば今年以降経済は安定的に推移すると見ています。
ただ、消費税引き上げ問題があります。小泉内閣では上げないと言っていますが、政府税調は会長の考えを発表しています。福祉目的税と違って、今度は一般財源化するとのことです。国債発行残高480兆円を解消しないままいけば、子々孫々まで負担しなければいけない。そういうことのないよう手を打ち、経済を活況化させて税収を上げることが必要でしょう。
――ポイントカードの問題は、この1年足踏み状態が続きました。
萬田昨年1月に取次が週報で「ポイントカード中止お願い」を行い、ポイントカードは値引きであると通知しました。問題はカメラ・電器量販店が一般書まで扱い出して、5%とか、それ以上のポイントを付けている。当然、これら量販店との交渉を進めると思っていたのに、なかなか進展しない。取次は動いたようですが、同業他社がやめればというだけで、進展はありませんでした。実は一部の取次が公取委に相談してから動こうとした。公取委は待ってましたとばかり、そのあと何回か取次が連絡・呼出しを受けられた。そのため秋口から取次はなりを潜めてしまいました。
私どもは、ポイントカードが値引きなら再販契約上の不法行為に当たるから、やめさせるよう2年半ほど前から出版社に要請してきました。出版社も同じ認識で、取次の通知が生かされるよう期待していました。
そうこうするうち、4月に公取委取引企画課長に就任した野口課長のインタビュー「ポイント阻止要求は独禁法違反」が、文化通信11月1日号に掲載されました。4団体で構成する出版再販研究委員会は急遽11月30日に野口課長と意見交換をしましたが、話し合いは平行線でした。12月9日の書協・雑協説明会でも野口課長が再び同じような話をしています。
ようやく、ポイントカード問題に筋道がつけられると思っていましたが、野口課長発言で逆転してしまった。野口課長は「今まで公取委がお話していたことと、なんら変わりはありません」と言いますが、事業者団体のガイドラインを持ち出され、契約当事者以外は口もきけないと言う。野口課長の発言は業界に今年最後の激震を与えました。
――野口課長発言の問題点を整理してください。
萬田13年6月28日付の大脇議員の質問趣意書に7月31日付で小泉総理の答弁書が出ています。その中では「お尋ねの割引制度やいわゆるポイントカードの提供が、再販売価格維持行為について定めた事業者間の契約に反するかどうかについては、当該事業者間において判断されるべき問題である」と述べています。
公取委が平成10年3月31日に示した「著作物再販制度の取扱いについて」という文書の効力を、同年9月に大脇議員が質しています。小渕総理は「独禁法24条の2(その後23条に繰り上げ)の規定に該当しないと認められる再販売価格維持行為を行った場合には、独禁法19条等に違反するものとして対処することとなる」と回答しています。
つまり、再販売価格維持行為は、独禁法19条の不公正な取引方法に違反するものとして処理されていたわけです。ところが、平成13年3月23日付「著作物再販制度の取り扱いについて」で、同制度は当面存置の結論を出しました。それ以後13年7月31日の小泉総理の答弁書では「再販契約は当事者間の契約だから、当事者間で判断されるべき問題」と答えている。そこが大きく違う。小泉総理の答弁書は閣議決定で出された文書です。再販契約書のヒナ型は『当面存置』の方針が決まった13年以降、再販研究委員会が1年以上かけて検討して、公取委も認定したものです。そういう意味で小泉総理の答弁書はきわめて重い。
ところが野口課長は、先のインタビューで、いきなり再販売価格維持行為を不公正な取引方法で違法だと言っている。最初からそう強弁している。
著作物再販制度は指定再販品と違い、独禁法23条4項の適用除外で規定された法定再販です。ただ、23条1項には「消費者利益を損なってはならない」「事業者の意に反してはならない」と書かれています。それに違反すれば独禁法違反になるわけです。
高値で価格設定して定価をつける行為なら消費者利益を損なうので問題がある。あるいは事業者間で共同でカルテルを結べば独禁法違反です。それを適用除外した著作物再販制度まで「不公正な取引方法」に戻している。民法には契約自由の原則がある。自由意思でゆるやかな契約を交わすことで済むはずのものを、また「不公正な取引方法」に戻してしまった。小渕首相、小泉首相の答弁書から見ても自家撞着です。
歴代の企画取引課長も、山本和史課長は弾力運用について「弾力運用とは時限・部分再販の取り組みと出版主導の各種割引制度(年間予約購読、大量一括購入等)に関することで、小泉総理の答弁書に抵触する指導は行えない」(再販研究委『弾力運用の手引き』)と言っています。
松尾勝課長は「出荷停止は契約を維持するための正当な行為で、独禁法上問題ない」((2003年11月13日、再販ラウンドテーブル第4回)としています。
歴代課長と進めてきた話し合いと、野口課長の話はニュアンスが異なる。一見スジが通っているようだけど、現実と乖離しています。私どもが出版社に要請している内容は、再販契約に基づいて運用をしっかりやっていただくことをお願いしているだけです。再販契約書は合法の契約書ですから、なんら問題ないはずです。
違反書店は自分たちの売上げ促進、誘引効果のためにポイントを出しています。片や再販契約を守っている書店があるのに、そういうことを平気でやらせる。ヤマダ電機は標準価格を高く設定して、見せかけの価格から15%引き、20%引きし、不当表示で勧告を受けたことがあります。公取委に「ポイントカードは値引きだと思わない。買ってポイントが増えた時が値引きではなく、引き換えた時に経理処理すればいい」と言ったそうです。
デパート等ではポイントの付与は将来の債務だと、発行したときに経理処理しています。ヤマダ電機はそれを先延ばししています。不当表示では摘発していながら、おとり行為のポイントカードは野放しです。
一方、取次は取引先を変えられないようヤマダ電機に継続的に商品供給してきた。これが結果的に一般書まで広がった。出版社は自社の本がヤマダ電機に並んでいるかどうか知らない。取次しか把握していません。公取委は出版社だけが当事者で、取次や書店は当事者じゃないから関与できないと言う。そこまで言うのはまさに見当違いの不当介入で、規制緩和どころか規制強化につながります。
――出版再販研究委は、どう対応していきますか?
萬田野口課長との話し合いは今後も継続します。これまでも楢崎部長や山田課長等、歴代の部課長と話を続けてきました。野口課長がいきなりあれもやるな、これもだめというので、私なりにこれまでの資料を読み返しましたが、大筋では間違っていないと思います。野口課長の発言以来、出版業界が手足を縛られ、ものが言えない状態になっているのが心配です。
新しいカード時代を迎え、キャッシュ、クレジット、プリペイドと多種類の機能を持つICカード化の急速な進展が見られます。そこに割引行為も潜んでいる。そういう問題も抱え、少額の業界カードは業界活性化のため検討してみようという声が聞かれます。
――今年は小売公取協の景品提供ルールも見直しが予定されています。
萬田書店の景品ルールは現行7%、年間60日の期間制限があります。認可された公正競争規約を持つ団体として、消費者取引課とも忌憚のない意見交換をしていきます。部長裁定が必要になるかもしれませんね。

年度内に経営実態調査/取引慣行見直しへ6年ぶり/12月理事会

日書連は12月16日に定例理事会を開き、99年以来6年ぶりに書店経営実態調査を行なうことなどを決めた。 〔組織強化〕
12月16日現在の日書連傘下書店数は7213店、昨年4月比で250店のマイナスになった。鈴木委員長は「書店業が成り立たなくなっている。書店の生き残り策、経営強化を考えていく必要がある。支払いサイト延長など、取引慣行を見直すため、書店の問題点についてアンケートをもとに研究会を」と問題提起。
各理事から「北海道組合は3年前から支払いサイト60日を求めている」「取次の債権回収に問題がある」「約定書の見直しが必要」などの声が上がった。
これを受けて萬田会長は「日書連では書店経営実態調査をほぼ10年ごとに行なっており、年度内に実施案をまとめてほしい」と述べ、書店経営実態調査の準備に入ることになった。
〔情報化〕
ISBNコード13桁化について、表4への表示方法は決まったが、スリップ表示は結論が出ていない。13桁化に伴い、OCR数字を読み込むスキャナーは使えなくなる。日書連マークについては、司書ツールを学校に配布し日書連マークの浸透を図っていく。
〔流通改善〕
雑誌別冊・増刊号のL表示は返品期限に統一性がないとして、取協あてに改善の要望書を出したことが報告された。今後、L表示の期限を書店の返品日とするよう求めている。
発売日問題では、鳥取、島根、山口県が3月中旬より2日目地区に繰り上げられることをめぐり、九州ブロック会から九州全域も2日目にするよう要望書が届いた。藤原委員長は日書連から発売日本部委員会に申し入れると説明した。
朝日新聞社のASAが分冊百科「街道をゆく」を無料で配布したり、DMで送料サービスの宣伝を展開している問題については「朝日新聞出版局に同義的責任があるのではないか」と抗議した。
〔指導教育〕
青少年有害図書の販売で日本フランチャイズチェーン協会の「自主基準」が紹介された。同基準では①都道府県条例の指定図書、②出倫協で選定された表示図書、③成人誌でシール留めしていない図書を扱わないとするほか、④サンプルディスプレイに成人誌は置かない、⑤18歳未満の閲覧・販売はお断りする――という厳しい内容。これにより成人誌は書店にシフトする傾向がうかがえるという。
出店問題では、自民党議員の「中小企業と地域再生議員連盟」が発足し、会長に中川秀直、幹事長に塩谷立各氏が就任。まちづくり3法を見直していくことが報告された。
〔公取協〕
出版物小売業公正競争規約「解説・運用の手引き」改訂版が出来上がり、各県組合、関係諸団体に配布されることになった。
ブックサービスが全国の小・中・高校に書籍のフィルムコーティング無料サービスを行っている問題では、「景品」とする公取協と、「アフターサービスで適用除外」とする公取委で隔たりがあり、同社のサービス内容について詳しく実態を把握した上で検討していく方針。

DVD「ポプラディア」日書連に報奨金1本100円

〔読書推進〕
調べ学習をサポートする百科事典『ポプラディア』は3万8千部を販売したが、今度はデジタル版『ポプラディア2005』(価格2万790円)が発売されることになった。日書連では5万本販売を目標に掲げ、目標を達成すればポプラ社が日書連に1本100円の販売促進費を支払う。
16日の理事会にはポプラ社坂井社長、小沼専務、飯田編集部長が訪れ、デジタル版『ポプラディア』をPR。坂井社長は「小学校は全国に3万5千校あり、10万セットの需要がある。多彩なマルチメディア機能で調べ学習をサポートする。量販店、電気店では販売せず、書店の専売商品」と説明した。
高須委員長は、「ポプラディア」の報奨金は各県組合に還元する方針を明らかにした。
〔スタートアップ〕
小学館の関連会社、ネットアドバンスによる会員制検索サイト「ジャパンナレッジ」無料体験は、16日までに23組合、198店から申し込みがあり、ID、パスワードを送ったと紹介された。無料体験の申込み受付は12月中。
貸与権問題では、著作権料1冊400円を求める著作権者と70円とするレンタル業者で開きがあり、来年1月からは暫定的金額でスタート。話し合いを継続する方針という。
書店データベース整備の件では、各県組合にリストを渡し、点検作業中で、これが終了した宮城、愛媛では配本先の2割が営業していなかった。今後、1県ずつ順に消しこみを行って、整備していく。
〔増売〕
読書週間書店くじ特賞で実施する「フランス8日の旅」は来年5月、赤澤桂一郎理事を団長に実施することが報告された。
世界本の日記念文化講演会は、来年は札幌、仙台、宇都宮、東京、四日市、倉敷、佐世保など各都市で計画している。
〔消費税〕
政府税調が11月末に2005年度の税制改正案を答申。この中で消費税率の引き上げと、税率が欧州なみの2ケタになれば食料品などの軽減税率採用を検討すると答申したことが報告された。来年2月には主婦連・和田氏を講師に研修会を計画している。テーマは読者から見た消費税。
〔共済会〕
12月の給付28件487万6千円を承認。今年は台風、水害などの自然災害が多く発生したため、単年度では給付額が収入を上回ることになった。
木野村委員長は新潟中越地震の申請が来ていないが、対象地区36店のうち8点しか加盟していないとして、加入を呼びかけた。
◇新理事
三重県書店商業組合は11月21日の総会で高村理事長が退任し、新理事長に作田幸久氏(志摩市・作田書店)が就任した。日書連12月理事会は作田氏の理事就任を承認し、指導教育委員会委員に委嘱した。

ラッピング講習会開く/京都組合

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は、ポプラ社の協力により12月2日午後2時半から組合会議室に全日本ラッピングコーディネーターの田中雅恵さんを招き、ラッピング講習会を開催、18名が参加した。
野村忠弘情報化推進委員長(宮脇書店京都店)が「年末年始、クリスマスの贈答用と需要の多い時期。お客様に喜んでいただけるラッピングの習得を目的に企画した」とあいさつ。田中講師の指導で、いろいろな包装や、リボンのかけ方を指導いただき、熱心に取り組んだ。委員会では今後も役に立つ講習会を開催する。(棚橋良和広報委員)

共済会給付

(16・11・18~16・12・15)▼病気傷害世田谷区砧5―23―8板倉書店板倉清治殿
北九州市八幡東区春の町5丁目うらべ書店占部壽美雄殿5口
阿倍野区阿倍野元町3―21今西書店今西英雄殿2口
▼死亡弔意中央区銀座4―5―1教文館中村義治殿10口
江戸川区上篠崎2―7―18藤書店佐藤有弘殿2口
文京区大塚4―52―5
誠信堂書店河名米吉殿
2口
具志川市安慶名216―1真栄平書店真榮平繁殿
山形県東田川郡余目町字沢田161水戸久書店
水戸久三郎殿1口
▼配偶者死亡(多屋孝子)田辺市南新町119多屋孫書店多屋睦男殿6口
▼前名義人死亡(倉野たみ)長野県木曽郡木曽福島町5137やま路書店倉野広殿
▼水害高松市西の丸町2―17宮脇書店駅前店
宮脇富子殿1口7万5千円
山口市道場門前1―3―11文栄堂菅原公夫殿
5口28万4千円
▼水害(倉庫)塩尻市広丘野村1710―7神田堂大塚三千雄殿1口5万円
▼漏水加賀市大聖寺弓町3たにさく谷勇治殿7口10万6千円
▼床上浸水豊岡市中央町15―2ハヤカワ書店
早川隆殿1口40万円
▼一部焼失(倉庫)玉野市八浜町八浜968山田快進堂山田次郎殿3口19万5千円
▼風害下妻市下妻丁155大塚屋書店塚越義郎殿5口9万円
▼風害(倉庫)広島市中区紙屋町2―3―26広島積善館岡原秀登殿5口25万円
甘木市大字甘木808―1積屋書店藤永信也殿1口5万円
飯塚市菰田西1―2―34伊藤書店伊藤宏殿2口10万円
▼風害(住居)北九州市門司区栄町6―5宗文堂河合正行殿8口40万円
佐世保市上京町6―25博文堂辻田信殿6口18万6千円
▼風水害(住居)津久見市中央町8―23宗書店宗聡史殿5口25万円
▼その他被災福岡県浮羽郡田主丸町大字田主丸395―26たけふじ文泉堂大塚豊殿5口25万円
熊本県菊池郡大津町大津1229文洋堂書店大塚博爾殿2口10万円
鹿児島市紫原4―20―10甲南書店新添重利殿
1口4万円
光市室積3―3―17七福新田秀生殿1口2万円

鶴岡支部、新潟地震にカンパ

山形組合鶴岡支部は11月20日から23日まで、鶴岡市・こぴあ2階展示ホールで「歳末チャリティ没後30周年いわさきちひろ展」を開催。リトグラフ、印刷の絵・色紙・その他グッズを展示即売した。
遠く山形市、酒田市から訪れた方もいて、入場者は約400名。福祉施設を指定されない協力金は、新潟中越地震にカンパすることになり、2万5千円を日書連を通じてカンパした。(佐藤一雄)

3ヵ月ぶりにマイナス/11月期は0.2%の減少

日販経営相談センター調べの11月期書店売上は前年同月比0・2%減とわずかながら下げ、3ヵ月ぶりのマイナスとなった。
規模別では81~120坪店が1・3%増と唯一のプラス。40坪以下店は0・1%減とほぼ変わらず、121坪以上店が1・0%減、41~80坪店が1・3%減だった。
ジャンル別に見ると、文芸書、専門書、コミック、児童書、実用書の5ジャンルが前年をクリア。文芸書は『いま、会いにゆきます』(小学館)の百万部突破など好調が続き、11ヵ月連続のプラスとなった。実用書は「ドラゴンクエスト8」攻略本(集英社)の貢献があってか、9ヵ月連続のマイナスを免れた。児童書はアニメの原作『魔法使いハウルと火の悪魔』(徳間書店)が健闘した。
客単価は2・0%減の1056・0円。

思い出に残る旅/イラン、ヨーロッパ一人旅/横須賀市・信濃屋書店・山本裕一

今から27年前、義兄が単身赴任でイランにいて、陣中見舞いという名目でイラン経由スイス、フランスへの一人旅に出かけることになりました。
7月末の暑い羽田空港から、パンナム航空の世界一周便に乗って、香港、パキスタン経由でイランの首都テヘランへ到着しました。テヘランは大変暑い所と聞いていましたが、空気が乾燥しているため思ったより過ごし易く、口の中がカラカラになることを除けばとても快適です。
義兄と会ってイスラム教寺院のモスクを見学し、内部の青いタイル張りの素晴らしさに感激したり、バザールに行ってペルシャ絨毯屋を言葉も良くわからないのにひやかしたり、パーレビ国王の王宮を見たり、まさに異文化との触れ合いを体験しました。夜は義兄の友人たちと食事を一緒にし、外国駐在員の生活の一端も見ることができました。翌日義兄と別れてまさに一人になったとたん食あたりになり、ダウンしてしまいイランでの予定はすべてキャンセルになってしまいました。そして体調がすぐれないまま、スイスへ向かう飛行機に乗りジュネーブで降りました。
ヨーロッパでは、日本で買っていたユーレイルパスという鉄道乗り放題の切符を利用して、ジュネーブを拠点にして各地をめぐりました。日本では経験できない、列車による国境越えも、簡単にできるのには驚きでした。パリに行き凱旋門、エッフェル塔、ルーブル美術館などを見学。またジュネーブに戻り今度はスイスアルプスの代表的なマッターホルンや、アイガー北壁を見物し、氷河でスキーをしたり真夏とは思えない風景を楽しみました。一人の気楽さからついでにローマへも行ってみようと思い、バチカン、コロッセウムなどに行き、トレビの泉ではコインを投げ入れたのに、今日まで再訪できていません。
言葉もよく分からず不安でいっぱいでしたが、この旅行を終えて自分のなかで、何かが変わった気がしました。

主体性もって雑誌増売図る/東京マガジンネットワーク、順調な滑り出し

東京都書店商業組合の事業委員会(湯本光尚委員長)が昨年6月に設立した雑誌増売のためのグループ「東京マガジンネットワーク(TMN)」。組合書店の中から雑誌増売に意欲的な書店を募り組織化し、有利な条件で雑誌増売企画を獲得することを目指している。湯本委員長は「雑誌を取り扱うチェーン店という位置づけ。出版社に対して指定配本やインセンティブの権利を主張するとともに、義務もしっかりと果たす。責任を明確にした販売集団と考えてほしい」と話す。
TMNは昨年6月17日、東京・九段下の九段会館で設立説明会を開いて発足。現在207書店が参加している。創刊誌、リニューアル誌を中心に中小書店にとって取り組みやすいことを基準に銘柄を選定し、月1、2誌の増売に取り組む。採用誌は取次から指定配本してもらい、書店は完売を目指して目標を設定。多面、レジ前、一等地に陳列し、POP等各店に合った方策で増売に取り組む。また、書店は1~3回の売上報告書の提出義務を負う。「締切日までの提出を怠れば退会していただくこともある」(湯本委員長)という。TMNは各店の売上報告書を元に販売実績をまとめ、出版社に提出。インセンティブは本部で管理し、原則的に2月末、8月末に実績に応じて各店に支払う。
書店は「出版社から依頼を受けた雑誌に対し、依頼事項に基づき積極的な販売努力を行う」との誓約書にサインした上でTMNに参加する。「名ばかりの参加は許されない」と湯本委員長は強調する。指定配本、インセンティブの「権利」を享受するだけでなく、増売のための工夫、売上報告書の提出など「義務」を遂行しなければならないことが会則で定められている。
湯本委員長は「出版社から提示された仮配本部数に対して、採用銘柄がその書店に合っていれば仮配以上申し込んでもいいし、合っていなければ少なくてもかまわない。何よりも完売を目指してほしい」として、責任をもって積極的に増売に取り組んでほしいと呼びかける。
これまでアシェット婦人画報社など出版社6社の増売に取り組み、2社と交渉中。リクルートからはすでに約212万円のインセンティブが支払われており、滑り出しは上々だ。湯本委員長のもとには興味を持った出版社が週に3、4社、話を聞きに来るという。
着実な広がりを見せるTMN。将来は文庫への取り組みや、web―POSによりリアルタイムで情報のやり取りを行えるようにする計画もある。「成果をあげ、出版社に頼られる存在になりたい」と湯本委員長。長期化する雑誌低迷の中、出版社、取次、そして雑誌への依存度が高い中小書店にとってTMNがもたらすメリットは大きい。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・永瀬哲子

◇2歳から『もりのパンやさん』松谷みよ子=文/ひらやまえいぞう=絵/童心社800円/2004・10
「うあーいい匂い!」子ども達は思わず声を上げて大喜び。キツネが焼いたふくふくしっぽのフランスパン。タヌキがつくったおへそつきのあんパン…リクエストに答え何回も読みました。五感を通して読んだ楽しさが忘れられない1冊となるでしょう。それは愛らしい絵と文体が奏でます。
◇4歳から『あなたのことがだーいすき』ヒド・ファン・ヘネヒテン=作・絵/フレーベル館1500円/2003・10
ページをめくる度にシロクマくんをなでたくなる本。絵も文も単純明解。白とブルーの清楚な世界。母グマと子グマの姿や会話に真綿の様な温もりを感じます。“かあさんは、あなたのことがだいだいだーいすき”子グマは前から知っています。優しい肉声で、子どもの心の扉を開きます。
◇小学校低学年向き『あいつもともだち』内田麟太郎=作/降矢なな=絵/偕成社1000円/2004・10
子どもたちの大好きなシリーズ。続最新刊!ぼくはさびしんぼうのキツネだったけど、また友達が増えたよ。でもぼくのにがてなヘビ。ぼく声もかけず気にしていたんだ。春が来てヘビのあいつと仲良くなって上きげん。その方法とはめずらしいんだ?本を読んでなぞを解いてね。

地域から広がる読書推進/子ども達に本の楽しさ伝え続ける/福井市・じっぷじっぷ・清水祥三

今回は珍しく開始予定の午前11時には10人以上の子どもたち。親子合わせて20人近くが集まった。昨年12月12日(日)に5回目を数える種池店「じっぷじっぷのクリスマス会」、今年の目玉はハープの生演奏。
遡ること数ヵ月。初老の男性が絵本売場「本のしっぽ」で絵本を見ていた。当店で毎月第2・4土曜日に開催している絵本のお話し会のポスターを目にしたその男性は「ハープで伴奏をしてみたいのですが」と提案、これを受けて今回のプログラムになった。
有線を切った店内に、静かに心地良く広がるハープの音色。「いつでも何度でも」「きよしこのよる」など数曲をじっと聞き入る。気がついたら40人を超えていた。そして絵本の読み聞かせは『まどからのおくりもの』など3冊。最後は子どもたちの「もっと!」の声に答えて『おおきなかぶ』を。大きな子も小さな子も声を合わせて「うんこらしょ!どっこいしょ!」大いに盛り上がったところでプレゼント。最後に再々アンコールでハープの演奏が終わったときには、大人も子どももとっても満ち足りた表情。これこそ店のスタッフにとって至福の時である。
子どもたちに本の面白さを伝えたい、手渡したいとの思いを中心に27年間。予算は無いなりに何とかできるもので、出版社の力を借りてのパネル展開催。新進絵本作家の場合は原画は額装していないので、画用紙をマットにして余白に絵の中の人のモデルだとかエピソードだとかを書き込んでもらって、ちょっと楽しい原画展にしてみたり。
10何号続いた季刊誌「本のしっぽ」は不定期になりホームページ(http://www.jipjip.net/)に移行。お勧め本や各種イベントなどのお知らせや報告も写真付で。そして現在はより楽しいHPへとバージョンアップ中。公共図書館や地域文庫には情報の提供や本のイベントの提案を。機会があれば幼稚園、保育園の保護者へ絵本と読み聞かせの楽しさを伝えている。
県内では絵本の在庫量で一番を自負する本店と各種イベントでアピールする種池店が両輪となって、子どもたちに本の楽しさを伝え続けていきたいと思っている。子どもがしあわせなときは大人もしあわせなんだから。

2005年わが社のイチ押し企画・マガジンハウス・販売企画部部長・稲垣学

韓流ブームはまだまだ続きそうです。それに合わせたように弊社もチョナンカン『チョンマルブック2&2・5』を昨年末刊行しました。お陰様でチョンマルブック1のほうも触発されたように売れています。新刊と併売してくださる書店様が多いことが引き金のようです。チョナンカンこと草彅剛クンもTV番組の中でこの先も宣伝してくれますので、さらにお客様は増えるかと思っています。チョンマルブック、宜しくお願いします。
実は「我社のイチ押し企画」もちろんチョンマルブックもそうなんですが、もっと頑張りたい作品をご案内させて頂きます。
江國香織著『東京タワー』。この作品、もちろん既刊本ですが、これを今年年頭のイチ押しに、と考えております。内容はもうご存知かとは思いますが、「恋はするものじゃなく、おちるものだ。」をキーワードに、ふたりの少年と年上の恋人の、恋の極みを描く長編恋愛小説となっています。
直木賞作家の江國さんの作品ですから、動きに不足はなかったのですが、映画化決定と同時にグンと売り上げのグラフが立ち上がり、30万部になんなんとする勢いです。一気呵成と言いますか、東宝系ロードショー公開が1月15日。この上映期間中を頂点と考え、販売促進に力を注ごうと、勢い込んでおります。
でも、先日、とある書店さんに伺い東京タワーの話をいたしましたら、お店の方の記憶から抜けておられました。あるいはこれが現実かもしれません。早速ロードショー公開の話や、現在の売れ行き状況など、お話申し上げたのですが、我々販促部員の活動力の弱さを思い知らされた気がしました。
なんとかしなければ。販売会社様を通じて新たな告知活動。ピンポイントでの集中販促。POP攻勢。いま可能な限りの拡大販促に力を注いでいます。それでも限界があります。なにかもっと出来ないか。そうだ新聞を作ろう。東京タワーのいろんな話題を入れた『東京タワー通信』。単なるリリースではない書店スタッフの皆さんに楽しんでいただけるミニ新聞を作って配布しよう。本来の仕事の合間を縫っての作業ですからどうにか隔週ペースで作っております。学級新聞だねと、冷やかす人もいますが、少しでも東京タワーに興味を持って書店様にお売りいただきたい、その望みを持って作っています。ご希望の書店様はご連絡下さい。郵送させていただきます。イチ押し『東京タワー』宜しくお願いします。

2005年わが社のイチ押し企画/講談社・雑誌販売局長・持田克己

05年2月、3月と、分冊百科の新シリーズを2本立て続けに創刊することになりましたので、ご案内させていただきます。
まず、2月17日創刊の『四国遍路の旅』。これは、従来の“旅の分冊百科”とは、一味も二味も違う内容です。
弘法大師(空海)の足跡を辿る八十八ヶ所の札所巡りが、いま密かなブームとなっていて、老若男女を問わず年間約15万人を超える人々が訪れています。国内外の豪華なショッピング&グルメツアーが大流行している一方で、こんな、昔ながらの“抹香くさい”(?)旅が人気になっているのは何故なんだろう……『四国遍路の旅』は、そんな疑問に対する答えがギッシリ詰まったシリーズです。単なる「旅ガイドブック」とはちょっと異なった趣、と御承知ください。
物の豊かさに囲まれながら、同時にさまざまな迷いを抱えて暮らす現代人だからこそ、時には、単なる物見遊山ではない「心の旅」をしたいのだと思います。それが、「遍路」。そんな読者の“心”を、『四国遍路の旅』は、しっかりとナビゲートして、安らかな旅路へと誘(いざな)います。
週刊で全30巻。もちろん、八十八の札所の案内だけでなく、周辺の旅ガイドも詳しく網羅いたします。どうぞご期待ください。
次に、3月1日に創刊になるのが『ROCKINGOLDENAGE(ロック栄光の50年)』。これも、『遍路』に勝るとも劣らない、ユニークなシリーズだと自負しております。
『遍路』が「心の旅」ならば、『ロック』はさしずめ「時の旅(タイムトリップ)」がコンセプト、と言えるでしょうか。
60~70年代に燦然と輝いていたロックスターたち、たとえばプレスリー、ビートルズ、ローリングストーンズなどを、当時の世相や風俗を織り交ぜて、全30巻で紹介していきます。
想定中心読者は、いわゆる「団塊の世代」。まだまだビジネスの最前線にいながら、ふと、懐かしい青春時代を回顧したくなっている……そんな読者に、「音楽(ロック)」が大きな“事件”であったあの時代に“タイムトリップ”してもらおう、というわけです。ラジオの深夜放送にかじりつき、女の子にモテたくてギターを習い覚えた、あの時代へのタイムトリップ……1日と15日の月2回刊でお届けします。
オリジナリティーで勝負!の、この2つの分冊百科に、どうぞ御支援をよろしくお願いいたします。

2005年わが社のイチ押し企画/主婦の友社・販売部部長・藤井孝行

あけましておめでとうございます。
旧年中は格別なるご支援・ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。また年末年始『主婦の友新年特大号』には多大なるお力添え、本当にありがとうございました。
新春企画として、初荷で創価学会池田名誉会長夫人・池田香峯子氏の半生を綴った『香峯子抄』を刊行いたします。5章からなる内容は読み応えもあり、未発表の秘蔵写真も多数公開されます。加えて香峯子夫人ご本人が書き綴る家計簿・日記帳も紹介し、非常に興味深い内容となっています。苦難の歴史を辿ったひとりの女性の生き方本として、広くお勧めいただきますようお願いいたします。
また昨年12月に第1巻を好評発売した、大人も楽しめる傑作ファンタジー『マーリン』は、本年も3ヶ月に1冊のペースで続巻を刊行し、12月までに、全5巻完結させてまいります。ハリウッドにて映画化も決定し、日本封切にはまだ多少時間を要しますが、今後大いに期待が持てる企画と確信しております。是非ともファンタジーコーナーの中心に、また話題書や児童書のコーナーへと多面展示をお願いいたします。
店頭商品としてすっかり定着してまいりました実用書の原点『新実用BOOKS』は販売部数に関係なく1部60円の書店様報奨を今年も続けてまいります。
「事実上5%ほど正味がやすくなったと同じだ…!」と書店様から高く評価をいただいております。本年も多ジャンルの新刊を多数刊行いたします。店頭にて、季節感を出せる商品は実用書をおいて他にございません。平積みを徹底して展開していただき、実入りの多い売り上げアップに繋げていただけましたらと思います。
また創業88周年企画として、昨年9月に刊行したムック『新版・家庭の医学』と『365日きょうのおかず大百科』も、お陰さまで各販売会社販売コンクール銘柄に選定いただき、好調に販売実績を重ねております。また発売当初より、記念品等の一括採用が多く、この種の話がお客様からございましたら、一番にお勧めくださいませ。この2点のムックには、1部100円の書店様報奨が、本年3月末売上スリップ到着分まで付いております。スリップの送りモレのないよう、お早めにお送りいただきますよう、お願いいたします。
今年も読者に喜んでいただき、書店様に納得いただける新刊やさまざまな販売企画を展開してまいります。倍旧のお力添えを何卒よろしくお願い申し上げます。

2005年わが社のイチ押し企画・文藝春秋・第1文藝部部長・西山嘉樹

「短編小説を書くというのは、空気を絞って水を滴らすほどのエネルギーがいる」――和田宏著『司馬遼太郎という人』(文春新書)で紹介されている司馬さんの言葉です。
いきなり話がわき道に入りますが、同書は司馬さんの資料としては第一級資料です。著者は社の大先輩ですが、掛け値なしに一読をおすすめします。
さて、『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』などの大長篇で知られ、大長篇作家としての業績が圧倒的な司馬さんですが、生涯に約160篇あまりの短篇をのこしています。
1950年に本名・福田定一名で発表された「わが生涯は夜光貝の光と共に」(未刊行)から、1976年の最後の短篇「木曜島の夜会」まで、いずれの作品にもさまざまな趣向がこらされ、そこからはまぎれもない司馬さんの豊かな声が聞こえてきます。
かつて海音寺潮五郎氏が司馬さんの作品を評して「ひとを酔わせるものがある」といったそれが、どの作品にもたしかに感じられるのです。
たとえば、誠実な生き方への共感と応援は司馬文学に一貫して変わらないものですが、短篇小説において、より明瞭に読み取れます。さらには、読むものを楽しませようという姿勢も終始変わりません。
2005年4月刊行開始予定の『司馬遼太郎短篇全集』はそれらを発表順に、新書判10巻で構成します。とりわけ初期の未刊行作品が40作近く収録され、注目を集めることと思います。
あえて新書判を採用し、表紙を薄くして、やわらかい印象の造本を心がけたのは、司馬さんの短篇のもつ親しみやすさを損なわないためです。活字は目にやさしい9・5ポイント。
巻を追うごとに、作家として大きな仕事に取り組むようになり、短篇を書く筆にも自信が充ちてきます。さらには、長篇と短篇の相互関係にも目をやると、司馬文学をいっそう豊かに味わうことができるはずです。
毎月1巻、魅力的な小さな峠から、かなたの巨峰の数々を見渡す楽しみをお届けします。ご期待ください。

ふるさとネットワーク/近畿ブロック編

〔滋賀〕
ウィリアム・メリル・ヴォーリズをご存じですか。ヴォーリズを知らない方もメンソレータムなら耳にしたことがあるでしょう。ヴォーリズは近江基督教伝導団(後の近江兄弟社)を設立してメンソレータムの製造販売を手がけ、さらに建築設計、学校経営等、多彩な事業活動の功績で、1958年に近江八幡第1号の名誉市民に推挙されました。05年に滋賀県立商業学校(現・滋賀県立八幡商業高校)の英語教師として来日し、41年に日本に帰化、64年に83歳で生涯を終えるまで近江八幡市に留まりました。来県してから今年でちょうど百年になります。
大阪心斎橋大丸もヴォーリズの設計ですが、近江八幡市内にも何棟か残存しております。堀と近江商人屋敷と洋風建築の町近江八幡へどうぞお越しを。
(石岡英明広報委員)
〔大阪〕
街の中(大阪市中央区)を配達していてとても不思議な玉を見つけました。ビルの前に置かれた台の上を大きな石の玉が、いつ見てもくるくると回っているのです。
気になってそのビルの会社に直接聞いてみることにしました。会社名は「㈱山善」。同社経営企画部広報室室長菊野龍一氏がわざわざ出てきてくださり、会社概要パンフレットをいただきました。様々な機械、機器の部品を造る東京・大阪株式市場第一部上場の大きな会社です。以前、関西テレビで放送されたドラマ「どてらい男」は同社の創業者山本猛夫氏がモデルだったそうです。
「どんな仕掛けであの玉は回っているのですか」と言う私の問いに、菊野氏はにっこり笑い「それは秘密です」と言って、玉の写真撮影を快諾してくれました。
(坂口昇広報委員)

〔京都〕
京都市の北に位置する上賀茂では、この時期、名物の「すぐき漬」をつくる樽をよく見かける。桃山時代に当地の社家邸内で栽培されたのが始まりとされるすぐき菜は、周辺農家でも作られるようになったが、苗一本たりとも他地域に持ち出しを禁じられ、明治末期に一般販売されるまで公家などの上流階級に出回るだけの幻の品だった。秘伝の技が生み出す味はかすかな発酵臭と独特の酸味があり、京漬物の中でも「通好み」の味とされ、べっこう色に輝く逸品と名高い。
昨年は京都にも多くの台風が襲来し、作物の生育は例年より悪いとのことだが、何とか例年並の出来栄えとのこと。新漬が出来る11月下旬を待ちわびる人や近くの世界遺産上賀茂神社を訪れる観光客でにぎわっている。
(棚橋良和広報委員)
〔奈良〕
奈良市にある若草山の山焼きが1月9日、成人の日の前日に今年も行われます。山焼きの行事は、山に火を入れ、山全体を燃やしてしまう古都奈良の、新年の炎の祭典です。山焼きの当日は県新公会堂東にある水谷橋のたもとで春日大社の神官と興福寺、東大寺の僧侶たちが松明に火を移し、山麓の中央まで火を運びます。午後6時、号砲とラッパの合図で打ち上げ花火の後、各持ち場から一斉に点火です。山一面が炎のじゅうたんのように広がり、バチバチと草が燃える音がどこの場所からも聞こえてくるようです。山を見ていた観客も燃えさかる炎も時間がたつにつれだんだんと消えていき、点火から約1時間後程で消化が始まり、終了となります。若草山山焼きを見て、厳しい時代の商いを、炎の燃え上がるような気持ちでいきたいものです。(森谷勝則広報委員)
〔和歌山〕
「食育」という言葉をご存知ですか。明治の頃に作られた言葉で、「知育・体育・徳育」と並ぶものらしい。「食」の安全性をめぐる問題が世界のいたるところで噴出している現在、子供達に食生活、それに関連した農漁業、環境問題等に対する理解を深めていこうとする教育のことである。
農文協主催の第1回食育総合展で、わが町の有機農業実践グループが優秀賞を受賞したのは、1年前のことである。このグループでは、土や肥料の安全性の研究工夫はもちろんのこと、直売所を運営したり、小学校との連携で、米やとうもろこし等の成長を通して、子供達に生命の強さ素晴らしさを体験してもらおうと出前授業をしている。また、地元の学校給食センターにも安全な有機の野菜を提供している。この取り組みについては、新潮社の『子供を救う給食革命』に詳しいので、ご一読下さい。(堀康雄広報委員)
〔兵庫〕
日本書記や古事記で知られる国生みの舞台、伊耶那岐尊が天の浮橋の上に立ち、矛で青海原をかき混ぜ、矛から滴った海水の塩が固まって出来たと言われるオノコロ島。
日本のはじまりと言われる現在の淡路島には、歴史のロマンを秘めた数多くの史跡や文化遺産があり、400余りの古刹が島中に点在している。なかでも幸福を招く七福神に篤い信仰を集めており、お祭りする寺院は恵美酒神(万福寺)、大黒天(八浄寺)、毘沙門天(覚住寺)、弁財天(智禅寺)、福禄寿(長林寺)、寿老人(宝生寺)、布袋尊(護国寺)と全島にまたがり、淡路島そのものが七福神乗合の宝船に見立てられている。
七福神巡りは、七寺のうち最初に訪れた寺で1400円の奉納金を納めれば、各寺でご本尊の拝観や法話が受けられる。
(中島良太広報委員)

トーハン従業員組合、学校・養護施設に児童書プレゼント

トーハンの従業員組合は児童書16冊と児童向けビデオ2本を1セットにして、クリスマスプレゼントとして全国25ヵ所の学校・養護施設等に寄贈した。
同社の従業員組合では、平成5年に北海道南西沖地震で被災した子どもたちに本を贈ったのを機に、毎年全国の学校や施設等へ児童書をクリスマスプレゼントとして贈る活動を続けており、今年で12回目。同組合の本・支部ではクリスマスを前に、代表者が各地域の学校や施設を訪問して子どもたちに本を寄贈した。
12月11日には、同組合本部の代表4名が杉並区の児童養護施設・杉並学園を訪れ、子どもたちに児童書とビデオを手渡した。

前期比1.4%増の588億円/栗田決算

栗田出版販売は12月24日、第67期定時株主総会を開き、第67期(15年10月~16年9月)の決算諸案を承認した。今期の売上高は588億円で、前期比1・4%増となった。返品率は雑誌34・8%、書籍39・6%、合計37・0%で前期より0・7%改善した。
営業費は全費目で削減に努め、前期比3・7%の減少。経常利益は1億5千万円を確保(前期は1億6千万円)したが、不良債権処理のため多額の特別損失を計上したため、最終当期損失になった。栗田では「損失は一過性で、今期は売上高594億円、経常利益3億円をめざす」という。
期中の新規・増床は75店、5707坪、中止・廃業は138店、5581坪。中止・廃業には青山ブックセンターの7店舗、約1200坪を含む。
取締役改選では、遠藤永七郎取締役、雪下伸松、小林清男両監査役が退任、新たに米沢明男、坂本幸嗣の両氏が監査役に就任した。役員管掌では林妙蔵取締役に営業第1部と第3部管掌が加わる。

催し

◇新春「新風」ギャラリー
書店新風会は会員の作品展を1月12日から14日まで、千代田区の中央経済社6階ホールで開催する。展示作品は、高岡市文苑堂・吉岡隆一郎社長の写真24点、松本市鶴林堂・小林宏江社長の絵本原画他30点、会員店各社のブックカバー・しおり、機関誌「新風」バックナンバーなど。

参考図書

☆『書籍雑誌商資料―内地・植民地/1937~41』(全2巻)
金沢文圃閣が刊行する戦時占領期出版関係史料集の4。①1930年代後半の書籍業の経済的な状況を鳥瞰する新聞体裁資料『書店文化』、②戦前の書籍業がほぼピークに達した1938年の業態・地域を網羅した『全国書籍業組合員名簿昭和十三年一月現在』という、大学・公共図書館にも所蔵がない2つの貴重な資料を集成、さらに解題・総目次を付した。

平成17年神奈川県書店商業組合理事会日程(9月まで)

1月14日(金)新年会
2月休会
3月4日(金)
4月休会
5月10日(火)
6月休会
7月5日(火)
8月4日(木)
8月19日(金)〔総会〕
9月6日(火)

人事

★岩崎書店
(11月26日付)
代表取締役社長〔編集担当〕岩崎弘明
常務取締役〔総務担当〕
黒田丈二
取締役〔営業担当〕
中根馨
監査役村上学
★世界文化社
(12月10日付、○新任)
代表取締役鈴木勤
専務取締役〔営業・総務担当〕大塚茂
同〔社長補佐〕鈴木美奈子
常務取締役〔広告本部本部長〕小林公成
同〔通販事業本部担当〕
内田吉昭
同〔ワンダー事業本部本部長〕川面重雄
取締役〔通販事業本部本部長〕加治陽
同〔ワンダー事業本部副本部長〕金子正和
同〔編集総務〕○江川桂子
同〔製作部部長〕
○金治正憲
監査役中島正紘
役員待遇〔広告本部副本部長〕○駒田浩一
★マガジンハウス
(12月15日付、○新任)
代表取締役社長石﨑孟
取締役〔第一編集局・ギンザ、ボアオ編集部、第二編集局・アンアン、ダカーポ、ハナコ編集部、ハナコ別冊編集室、雑誌開発室担当〕淀川美代子
同〔第三編集局・ポパイ、ブルータス、リラックス、カーサブルータス編集部、第四編集局・クロワッサン編集部、クロワッサン別冊編集室、ターザン、クウネル編集部、書籍出版局、雑誌開発室担当〕秦義一郎
同〔営業局、大阪支社、ハナコウエスト編集部担当〕
吉田高
同〔広告局、企画制作局担当〕片桐隆雄
同〔総務局担当〕
○伊東秀雄
同〔経理局担当〕○南昌伸
取締役最高顧問木滑良久
監査役畑尾和成

経営革新テーマにセミナー開催/日販

日販は2月16日、17日に東京江東区のホテルイースト21東京で第41回「日販マネジメントセミナー」を開催する。
このセミナーは書店経営者・幹部社員を対象に、業界を超えた勝ち組企業の経営者や著名人を迎えて行っているもので、今回は「未来を切り拓く経営イノベーション」をメインテーマとした。会費は2日受講宿泊が5万5千円、同宿泊なし4万5千円、1日受講2万5千円(日本出版共済会加盟店には後日補助金を支払う)。締切は2月8日、申込みは日販各営業部・支店及び経営相談室まで。〈講演テーマ・講師〉
2月16日=第1講「『小』が『大』に勝つ~ビッグよりもベスト~」㈱ナルミヤ・インターナショナル代表取締役社長・成宮雄三氏、第2講「発想の転換が成功を呼ぶ」㈱健康プラザコーワ代表取締役・臼井由妃氏、第3講「『売り上げ』を創るワクワク系マーケティング」オラクルひと・しくみ研究所代表・小阪裕司氏
2月17日=第4講「女性パワーが日本経済を立て直す」㈱菊水堂代表取締役社長、NPO法人全国商店街おかみさん会会長・冨永照子氏、第5講「企業存亡をかけた『再生』プログラム」㈱ドラッグイレブン代表取締役社長・大久保恒夫氏、第6講「これからの勝ち組企業の条件」㈱プレジデント社常務取締役『プレジデント』編集長・藤原昭広氏

本屋のうちそと

田中編集長から「今月で首!」と、何時言われるものかと怯えつつの一年が無事過ぎた。私の拙文を我慢して読んで頂いた皆様、本当に感謝しております。
イエ、私とて努力はしている。「読ませる技術」ちくま文庫/山口文憲著をちゃんと買って読んだ(昔、毎日新聞社出版局でお見かけした美しき檀ふみ様の解説の方が面白かったが)。いいかげんネタ切れかとの声もあるのだが、才能のない私は一年前のネタを平気で再び使う。「筋子/キンシ」オニギリに続く「日本語力」第二弾!
OECDの国際学習到達度調査のニュースが12月の新聞に載っていたが、11月の産経新聞にも『大学生の「日本語力」が低下し、国立大でも中学生レベルの国語力しかない学生が6%、私立大では20%、短大では35%にも』と載っていた。
「憂える」の意味が「喜ぶ」で、「懐柔する」の意味が「賄賂を貰う」だとー?それは政治家用語だろうが。『留学生よりも日本語のできない大学生が多数いる』って、本が売れない訳だわな。日本人なのに自国語の文章が理解できないのだから。本を読んでいても誤読の可能性の方が高いとしたら、それは多分「文盲そのⅡ」。
更にその後日の同新聞『生まれてから一度も「日の出」「日の入り」を見たことがないと答えた小中学生が約半数もいる』。日常体験の伴わない「言葉」に、子供達は一体何を心に思い描いてその「言葉」を読んでいるのか。メールの絵文字に負けるな。言葉は力ぞ!
(海人)

辻井喬氏『父の肖像』に野間文芸賞

第57回野間文芸賞に辻井喬氏『父の肖像』(新潮社)、第26回野間文芸新人賞に中村航氏『ぐるぐるまわるすべり台』(文藝春秋)、中村文則氏『遮光』(新潮社)、第42回野間児童文芸賞に上橋菜穂子氏『狐笛のかなた』(理論社)が決まり、12月17日に帝国ホテルで贈呈式が行われた。
贈呈式では、野間児童文芸賞は角野栄子氏、野間文芸新人賞は佐伯一麦氏、野間文芸賞は川村二郎氏が選評。このうち川村氏は辻井氏の受賞作について「事業家、政治家として成功した父と、その父の姿を検証する息子との関わりが重要なモチーフになっている。家族の歴史と同時に、戦中から戦後の日本人の歴史を描くことに見事に成功した」と評した。
受賞者あいさつで辻井氏は「かつて妹や母をモデルにした小説を書き、17年経った今年『父の肖像』を出版した。その間母も妹も他界し、私一人が残された格好になった。私自身もビジネスの世界から離れたが、そうした状態の変化がこの作品を書くきっかけになったと思う」と述べた。