全国書店新聞
             

平成23年11月15日号

創元社に第27回梓会出版文化賞

出版梓会が主催する「第27回梓会出版文化賞」は創元社に決定、同特別賞に亜紀書房と化学同人の2社が選ばれた。また、新聞社・通信社の文化部記者が選考する「第8回出版梓会新聞社学芸文化賞」は仙台の出版社、荒蝦夷に決まった。贈呈式は平成24年1月17日に新宿区の日本出版クラブ会館で行われる。

双葉社「つぐもも」を増売/Booker’sの店頭連動企画/東京組合

東京都書店商業組合は12月2日、書店会館3階会議室で定例理事会を開催した。
ケータイ書店Booker’sは店頭連動企画として、双葉社のコミック「つぐもも」の増売に取り組む。来年1月12日に発売予定の7巻と、1~6巻各3冊セットのフェア展開を行う。Booker’sのサイトに特設ページを設け、お薦めポイント紹介や先行配信などを行っていく。フェア商品にはQRコードが印刷された専用帯とPOPが付き、購入した読者には、特設ページで待ち受け画像を特典としてプレゼントする。
東日本大震災の被災地に本を贈る「東京の本屋さんからの贈り物」事業は、残った本を神保町ブックフェスティバルで販売した売上金約23万円に、青年部からの寄付7万円を加え、東京組合に感謝の寄せ書きを贈ってくれた東松島市立赤井南小学校に図書カードを贈ると報告があった。全児童に図書カード1千円を、残りのお金は同校の図書館に寄贈する。
TS流通協同組合の11月期発注件数は7247件(前年同月比91・1%)、売上金額は783万5442円(同82・9%)、書店数は61書店(同93・8%)だった。
事業・読書推進委員会からは、第5回読者謝恩図書カードの第2次販売を開始すること、旬報社の「金環日食観測ノート」の企画紹介などの報告があった。理事会終了後には、ぴあから「ウレぴあ」他の増売依頼が、また徳間書店から「ロングブレスダイエット」他の増売依頼がそれぞれ行われた。

海外の再販・流通事情を報告/流通改善協議会が再販説明会

出版4団体で構成する出版流通改善協議会の「再販関連」会員説明会が12月8日午前11時から日本出版会館で開かれた。説明会では『2011年出版再販・流通白書№14』の概要が説明されたほか、ドイツ・フランスの出版物価格拘束法や、ドイツの出版流通の現状について報告が行われた。
開会にあたって出版流通改善協議会・相賀昌宏委員長(小学館)は「日本の出版物再販は独占禁止法の適用除外となっているが、ドイツやフランスは文化的な意味から書籍の価格拘束を別の法律で定めている。諸外国の状況も研究しながら、デジタル化が進展する中で、全体的なバランスとして価格はどうあるべきかといったことも考えていきたい」とあいさつした。
出版流通改善協議会・早川三雄委員(小学館)が出版再販・流通白書について、東日本大震災に対する出版業界各団体の取り組みや、電子書籍をめぐる状況、公正取引委員会が実施した著作物再販ヒアリングや出版業界各社・団体による流通改善事例などの概要を説明。「震災復興は長い取り組みが必要。震災への対応で学んだことを次に生かすことが最も必要だ」と述べるとともに、大震災出版対策本部が募集する「大震災出版復興基金」への協力を呼びかけた。
次に、ドイツ・フランスの出版物価格拘束法について、書協・樋口清一事務局長が説明。「フランスでは今年5月に電子書籍価格拘束法が成立した。再販によって文化的多様性が確保できているとの観点からこの法を制定したものだが、EU委員会は、文化的多様性は諸国間の自由な流通を規制する理由にはならないとする、かなり否定的な見解を出している。フランスの出版協会は、EU委員会が危惧するような国境を越える取引についてはこの法律の対象外なので問題ないだろうとする一方、先行きについては予断を許さないとも話していた。ドイツでは、現行の価格拘束法で電子書籍も対象に含むと判断されている」と述べ、最近の情報として、紙の書籍を価格拘束しているオランダが、電子書籍は再販の対象外とする方針を発表したことなどを報告した。
続いて、経済産業省委託事業「フューチャー・ブックストア・フォーラム」の海外調査でドイツを視察した文化通信社・星野渉取締役編集長が、同国の出版流通の現状を報告した。星野氏はドイツの書籍流通について、書店と出版社の直接取引が多く、新刊や大量に発注する品は出版社に、補充や客注は取次に発注するのが基本で、マージンは書店が約35~40%、取次が約15%、原則買切りで返品率は約8%だと説明。夕方発注で翌朝到着という取次の迅速な流通は、流通マージンが大きく、返品も少ないことから実現していると指摘した。また書店の特色について、「返品しないように仕入れるため、坪当たり在庫は30万円ほどと日本に比べ非常に少ない。書店マージンが大きいということがあるので、ある独立系書店では75坪の店で社員15人と学生アルバイトを雇用していた。書店学校等で研修を受けた有資格の社員で、各々ジャンルを持ち仕入れから店頭陳列まで行っていた」と紹介した。
最後に書協・菊池明郎副理事長(筑摩書房)は「昨年暮れに日書連大橋会長から『売れ残った本の最終処分権を書店に』という提言があったが、書店がよりマージンを確保するためには、責任販売制にもっと多くの出版社が取り組むべきだ。最終処分権の問題については、再販弾力運用の1つとして時限再販もある。書店から提起されている問題に出版社が主体的に取り組み、現在の厳しい状況を突破していくことが必要だ」と述べた。

提案型事業の活性化進める/TS協同組合総会

TS流通協同組合は11月25日午後4時から書店会館で第12回通常総会を開き、組合員82名(委任状含む)が出席した。
総会の冒頭、片岡隆理事長は「東日本大震災で取引先出版社の倉庫が被災した影響もあり、売上・収益とも厳しい数字が出た。また、流通経費がかなり重い負担になっている。TSはローコストで運営しており、流通経費の削減とともに、客注システム以外の事業を活発にし、売上を伸ばすことが求められている」とあいさつした。
議案審議では平成22年度事業報告、決算報告、平成23年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
平成22年度の売上は9726万円で前年比9・1%減と目標の1億円には届かなかった。発注店数は月平均64店と前年より4店減少。1店当たりの月売上は13万37円で前年より9644円減少した。出版社別取引額ベスト5は講談社、新潮社、小学館、角川グループ、文藝春秋。また、共同購買事業として、講談社『麒麟の翼』、小学館『下町ロケット』などの共同仕入れを行った。
平成23年度は、共同仕入等事業の一層の拡大、取引出版社の拡大、組合員の加入促進などに取り組む。片岡理事長は、「役員を主要取引出版社約20社の担当に付け、組合員に提案できる商品を発掘していく。しっかり販売することで出版社と信頼関係を結んでいきたい。今年は、組合からの提案型事業の活性化に主眼を置いて進めていく」と述べた。
審議終了後、来賓の東京組合・大橋信夫理事長が祝辞。柴﨑繁副理事長が「今期は取協への加入を実現したい。そうすれば『S―BOOK.NET』や共同ネットが利用でき、取引出版社の拡大にもつながる。各役員の出版社担当についても、いい商品を発掘して組合員に提案したい」と述べて閉会した。

出版業界の新春行事

【書店関係】
〔北海道〕
◇新年合同懇親会=1月17日(火)午後6時から札幌市中央区のホテル札幌ガーデンパレスで開催。
〔宮城〕
◇合同新年懇親会=1月10日(火)午後5時から、仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で開催。
〔神奈川〕
◇新年懇親会=1月18日(水)午後6時から、横浜市西区のホテルキャメロットジャパンで開催。
〔東京〕
◇新年懇親会=1月17日(火)午後5時半から、東京・文京区の東京ドームホテル地下1階「天空」で開催。
〔静岡〕
◇第44回静岡県書店商業組合新年総会=1月10日(火)午後3時半から、伊東市の伊東温泉「青山やまと」で開催。午後6時から懇親会。
〔愛知〕
◇平成24年新春賀詞交歓会=1月13日(金)午後5時半から、名古屋市千種区の「ルブラ王山」地下1階「弥生の間」で開催。
〔大阪〕
◇平成24年大阪出版・販売業界新年互礼会=1月11日(水)午後4時から、大阪市北区のウェスティンホテル大阪で開催。
〔京都〕
◇京都出版業界新年互礼会=1月6日(金)午後4時半から、京都市東山区のウェスティン都ホテル京都4階「葵殿」で開催。
〔福岡〕
◇平成24年福岡県出版業界新年の会=1月6日(金)午後4時から、福岡市中央区の福新楼で開催。
【取次関係】
◇日教販第61回春季大市会=1月6日(金)午前10時から東京・千代田区のスクワール麹町3階で開催。セレモニーは午後1時から。
◇トーハン新春の会=1月6日(金)午前10時半から東京・文京区の椿山荘プラザ棟5階オリオンで開催。社長あいさつは午前10時半、鏡開きは午前11時05分。近畿会場は1月11日(水)にトーハン大阪支店で開催。
◇日販新春を祝う会=1月6日(金)午前10時から東京・港区のザ・プリンスパークタワー東京地下2階「ボールルーム」で開催。午前10時から社長あいさつ・鏡開き。
◇大阪屋新春おでんの会=1月10日(火)正午から、東大阪市の関西ブックシティ1階特設会場で開催。社長あいさつは正午から。
◇栗田新春あいさつの会=1月7日(土)午後1時から、東京・板橋区の本社新物流センターで開催。社長あいさつ・鏡開きは午後1時から。
◇中央社新春の会=1月10日(火)午前9時半から、東京・板橋区の本社3階ホールで開催。
【関係団体】
◇日本出版クラブ新年名刺交換会=1月6日(金)正午から、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で開催。
◇全国医書同業会新年互礼会=1月5日(木)正午から、東京・千代田区の帝国ホテルで開催。
◇書店新風会新年懇親会=1月6日(金)午後5時から、東京・新宿区のハイアットリージェンシー東京地下1階「センチュリールーム」で開催。
◇出版梓会第27回梓会出版文化賞贈呈式=1月17日(火)午後6時から東京・新宿区の日本出版クラブ会館で開催。

高効率輸送実現へ意見交換/出版物輸送懇

東京都トラック協会の出版・印刷・製本・取次専門部会は11月17日午後4時から、東京・四谷の主婦会館プラザエフで第33回出版物関係輸送懇談会を開催。トラック、出版、印刷、製本、書店各業界の代表者ら約60名が出席し、出版物輸送の現状と課題について話し合った。
懇談会の冒頭で、雑協震災対策特別委員会の早川三雄委員長(小学館常務取締役)が「東日本大震災の教訓雑誌業界の対応と課題」をテーマに講演。雑誌の制作・流通・販売が震災にどう対応したかを説明し、今後の中・長期的課題として、①震災後の対応の検証②業量の平準化③生産、流通拠点の分散化――の3点を挙げた。
懇談では、瀧澤賢司部会長(ライオン運輸)が「平成19年を境に輸送事業者数、営業用車両台数が減少しているほか、燃料価格の高止まり、運転手の高齢化が懸念される」とトラック運送業界の状況を報告。出版物輸送の現状について、輸送量が減少し1車両当たりの積載効率が悪化する一方、輸送コストが高騰しており、営業収支の悪化が深刻になっていると説明。高効率輸送の実現に向け、業量の平準化に期待したいと述べた。
このあと印刷、製本、出版社、取次、書店の代表者がそれぞれの業界動向を説明した。東京都書店商業組合の梅木秀孝常務理事は、日書連が募集した東日本大震災の義援金に対する協力に感謝を述べたほか、東京組合で被災地へ本を贈る運動を実施したことを報告。業量平準化の観点から、「創刊誌は発売点数の少ない日にしてほしい」と提案した。

被災地支援で「読書復興新聞」を発行/大震災出版対策本部

書協、雑協、出版クラブの3団体で構成する大震災出版対策本部は、地方新聞社東京支社員で構成する「出版広告研究会」と、スポーツを通じた社会問題の解決を行う任意団体「GLOBEPROJECT」と共同で、被災地の復興と読書環境の回復を支援するフリーペーパー「読書復興新聞」を発行した。
本とスポーツをテーマに被災地の人々にエールを送ろうと企画されたもので、内容は、サッカー日本代表前監督の岡田武史氏と、漫画「キャプテン翼」の作者高橋陽一氏による特別対談「今、私たちにできること」、スポーツ選手や著名人からの応援メッセージ、47都道府県の書店スタッフによる「勇気をくれた一冊」紹介など。
「読書復興新聞」はタブロイド版8頁フルカラーで4万部制作。12月3日に仙台で行われたJリーグのベガルタ仙台対ヴィッセル神戸の試合と、横浜で行われた横浜Fマリノス対鹿島アントラーズの試合の両会場で配布したほか、被災県及び協賛書店で配布している。

組合書店の利益向上に努める/福岡県組合総会で長谷川理事長

福岡県書店商業組合は11月25日、福岡市のセントラルホテルフクオカで第33期通常総会を開催した。
総会は安徳副理事長の開会の言葉で始まり、森松理事が司会進行。長谷川理事長のあいさつに続き、宇畑常務理事を議長に選出して議案審議に入り、第33期事業報告、収支決算報告、第34期事業計画案、収支予算案など、すべての議案を承認可決した。
第34期事業計画案に関して長谷川理事長は、以下の提案を行った。①大商談会を組合主催で行いたい。②組織拡大策として、新規出店・未加入店に組合のメリットを説明し入会を促進する。③読書推進運動を行う。④組合の利益向上を図る。⑤自費出版の取扱いを、地元版元と勉強会を行い実施したい。⑥オリジナル図書カード作成の促進を図る。⑦図書館情報化の勉強会を行う。そして長谷川理事長は、「厳しい経営環境の中でも、努力とアイデアで右肩上がりの経営の店もある。読書週間、雑誌月間、サン・ジョルディ等の全国的イベントを上手に利用し組合各書店の利益を上げるよう努めたい」と抱負を語った。
閉会の言葉で大石副理事長は、「理事長の事業案に大いに期待し、組合員全員で目標達成に向け努力していきたい」と締めくくった。この後、同ホテルのダイヤモンドホールにて「福岡県出版業界懇親会」が加来理事の司会で行われ、和気あいあいの中、盃を重ねるたびに来年への期待と希望の話題が出席者の顔を明るくしていた。
(西村勝広報委員)

「声」/『女性セブン』九州地区発売日繰上に感謝/霧島市・ブックス大和・井之上博忠

11月7日、雑誌発売日委員会の梅木秀孝氏より、『女性セブン』の九州地区の発売日が、次週より土曜日から金曜日に変更になる旨のうれしい電話をいただいた。
最初、9月中旬に梅木氏より携帯に電話があった。てっきり『女性セブン』の発売日変更の知らせかと思ったら、「実は10月10日に目黒世田谷支部の研修旅行で鹿児島に行く」とのことだった。10ヵ月ぶりで再会できることをうれしく思った。彼には『女性セブン』の土曜日発売を『週刊文春』『週刊新潮』と同じ金曜日発売に変更するにあたり、小学館さんとの交渉の窓口を2年にわたり担っていただいていた。これで金曜日、土曜日と2日間の配達が1日で済むことになる。鹿児島の書店にとっては人件費や労力の削減につながり、誠に喜ばしい限りです。

「声」/「本屋の社会貢献」世の中に発信しては/東久留米市・ブックセンター滝山・野崎陽一

忘年会や新年会で旧来の友人と会うのが楽しみである。そこで知人や友人から頼まれることがある。〝娘(息子)を本屋でアルバイトさせてくれないか〟というものである。ここまでは皆さまも経験がおありだろう。しかし、ここ数年〝失恋して〟とか〝就職に夢破れて引きこもりになってしまったので〟とか、親として何とか社会へ引き戻そうという悲願を込めたものが増えてきている。
事情を察して、できるだけ雇うことにしているので、今までに3名の方に働いてもらった。彼ら、彼女らは本と本屋が好きなので嫌がらずに通ってくる。働き出して数ヵ月もすると、うつむき加減だった姿勢も変わり、背筋が伸びてくる。知人である親からは、アルバイト代はいらないと言われるがそうもいかない。働いている本人たちのプライドもあるだろうから普通に払っている。そうこうしていくうちに2~3年経つと若者たちは自信を取り戻し書店を去っていく。
本屋のアルバイトは相変わらず学生に人気だが、こんな頼まれ事もあった。定年後にご主人がアルコール依存症になってしまった。家にいるとついお酒に手を出すので本屋で働かせてもらえないかという近所の奥さんからの話であった。本屋が更生のお役にたてればと思い仕事を作った。万引き抑止と返品の力仕事である。そのため酒量が減ったと奥さんに喜ばれ、大した仕事をしていないのでアルバイト代を半額にしてくれないかと言われたが、これも普通に支払った。
地域の人に頼りにされる書店には、こんな役割もあったのである。しかし、赤字経営は如何ともしがたい。社会から弾き飛ばされかかった人たちの社会参加の機会を増やすためにも、最低賃金の適用除外を考えられないものかと思う時がある。彼らに一人前の仕事を求めるのは酷である。ゆったりとマイペースで心を壊さないように働いているのだ。たまには事情を知らないお客様から、店員の対応の拙さを叱られる。わかってくれる人も多いのだが仕方がない。
世の中に書店の存在が必要とされる場面は多い。私の体験を書いたが、書店人はこうした事柄を遠慮せずにもっと社会に発信されたらいかがだろうか。

書店における電子書籍販売/東京組合経営研修会

東京組合は11月14日、書店経営研修会「書店における電子書籍の販売について」を開催。ウェイズジャパンが提案し、日書連が協力して取り組みを進めている電子書籍サービスについて、同社の小橋琢己執行役員が概要を説明した。
〔コンテンツ販売を中心に取り組む〕
読者が電子書籍を購入する主な理由には、①場所をとらない、持ち運びしやすい。②思い立ったらすぐに買えてすぐに読める。書店に行く必要がない。③書店で買う紙の書籍よりも安い場合がある――といったことがあると考えられる。
一方、書店側としては、SDカード等でパッケージ化した電子書籍の販売、あるいはいま日書連で進めている「ためほんくん」といった、デジタルによる新しい取り組みを行っており、書店に足を運んでほしいというのが前提だろう。
今回提案するサービスは、この両方の要望を両立させることを目的とし、書店組合加盟書店とウェイズジャパンの運営する電子書籍プラットフォーム「雑誌オンライン+BOOKS」をつないで、読者にとっても出版社にとっても魅力的でユニークなサービスを構築しようというものだ。
このサービスの基本スタンスは、「『コンテンツの販売』を中心に据えて取り組む」ということ。そのためのツールとして、ウェイズジャパンが提案する専用電子書籍端末を店頭で販売していただくという方式をとる。来店したお客様が端末を購入し、ウェイズジャパンが運営しているサイト「雑誌オンライン+BOOKS」で、お客様が電子書籍を購入すると、その売上げに応じてロイヤリティを書店にお支払いするというのが大まかな仕組みだ。電子書籍端末は、ウェイズジャパンから各書店に85掛けで卸す形になる。
この端末には1台1台にユニークIDが振られており、どこの書店にどの端末が卸されているかを全部把握している。端末を購入した読者が「雑誌オンライン+BOOKS」で登録すると、読者がその書店のお客様であると認識する。以後、読者がサイトから電子書籍を購入するたびに、その金額に応じて端末を販売した書店にロイヤリティを支払う。ロイヤリティは売上げの約10%とし、各都道府県の書店商業組合にまとめてお支払いするので、明細に基づいて書店組合の事務局から各書店に配分される流れになる。
端末単体ではなかなか商品として販売しづらいと思うので、例えばコミックの全巻セットを購入したら端末を無料で付ける、あるいは何千円引きで購入できるというようなセット企画ものを作っていきたい。
サイトの中にはリーディングルームというのがあって、実際の書棚と同じようにお客様が購入したコンテンツがここに並び、閲覧できる仕組みになっている。コンテンツは、その専用電子書籍端末だけでなく、PCやiPhone、iPadなどでも読める。お客様が持っている端末に合わせて閲覧できるのが、我々のシステムの大きな特色だ。
電子書籍端末の名称は「ISTORIA(イストリア)」に決まった。ギリシャ語で物語という意味だ。店頭での販売イメージとしては、デモ機を電子書籍コーナーの一角に置き、パンフレットが置けるスペースを設け、サービス内容の案内パネルを掲示して、電子書籍セット商品やコンテンツ商品のタグをぶら下げるようなラックを設けようと考えている。
端末は、解像度800×600ドットの16階調グレースケールの電子ペーパーディスプレイと、Wi―Fi対応の無線LANを搭載する。microSDカードが使用でき、パソコンからUSB経由でデータを移動することも可能だ。希望小売価格は1万9800円に設定しているが、先ほど言ったようなセット企画商品を出版社と取り組んでいきながら、販売を促進していきたい。
〔紙と電子の両方で店頭活性化を図る〕
今回の枠組みの中で一番大切なのは、日書連や各都道府県組合と取り組む事業であるということだ。書店組合という組織を最大限活用しながら、書店店頭の活性化につなげたい。
日書連とウェイズジャパンの間では、取組みの決定・承認や、枠組みの決定、後援契約をする。日書連は各組合にコーディネーションや後援活動などを行う。ウェイズジャパンと各組合とは、ロイヤリティの支払いについて契約する。
各組合は、サービス開始までは、参加書店の募集や取りまとめを行う。サービス開始後は、各組合には書店へのロイヤリティの分配、プロモーション企画協力、販売促進で一緒にがんばっていただきたいと考えている。ウェイズジャパンと書店との間では、専用端末の販売に関する契約を結ぶことになる。イストリアの端末を付けた什器セットは初期費用約2万円を予定している。
取り組みの一番のポイントになるのは、書店店頭の活性化、店頭におけるリアル書籍と電子書籍の同時プロモーションの実現だ。電子書店は数多くあるが、そのほとんどが書店を飛び越えて、読者にダイレクトでコンテンツが行くような状況だ。我々のサービスは、「雑誌オンライン+BOOKS」を背景にして、店頭に集まってくる読者に電子書籍のコンテンツを紹介する。書店が情報発信や、コンテンツの取り扱いの中心になるというものだ。
今多くの出版社が書籍のデジタル化を進めているが、なかなか売れていないのが実情だ。出版社には、我々の仕組みを使うことで、紙の本もデジタルの本も両方合わせて店頭で販売促進することができますよという提案をしている。これに対して出版社も大変興味と関心を持っている。
しかし、紙の書籍の方がまだ売上げの圧倒的な部分を占めており、多くのタイトルの電子書籍が読者に届くというところまでは、まだ時間がかかるだろう。全国の書店の店頭がその役割を担うことができれば、デジタルコンテンツを書店の新しい商材としても扱っていけるし、読者にとっても選択肢が広がる。紙もデジタルも書店店頭で購入できるという環境が作れれば、読者サービスという点でも一番いい形になるのではないかと思っている。
【電子書籍サービスの最新情報】
電子書籍サービスの検討を進めている日書連電子書籍対応部会は、12月1日に会合を開き、「コンテンツ販売」を中心に据えた取り組みを一層明確に打ち出すため、サービスをモデルチェンジすることを決めた。
従来のモデルでは、サービススタートの段階で電子書籍端末の購入者のみが販売書店のロイヤリティの対象となる方式をとっていたが、これに加えて、「雑誌オンライン+BOOKS」でコンテンツを購入するのに使用するプリペイドカードを新たに開発し、書店店頭で販売することにした。
カードを買った読者は「雑誌オンライン+BOOKS」に登録し、カードに記載されたコードを入力することでコンテンツを購入できる。これにより端末を販売した場合と同様に、読者がその書店のお客様であると認識する。カードは数種類の金額のものを用意し、若干のプレミアムの付加も検討している。

日書連のうごき

11月1日日本医書出版協会創立50周年記念祝賀会に大橋会長が出席。
11月2日㈱九州雑誌センター取締役会に大橋会長ほか役員が出席。
11月4日全国万引犯罪防止機構処分市場小委員会に小泉理事が出席。
11月9日第41回野間読書推進賞贈呈式に石井事務局長が出席。文字・活字文化推進機構理事会に大橋会長が出席。第37回販売労務担当者全国会議に鶴谷理事が講師として出席。四団体代表による出版サロン会に大橋会長が出席。
11月10日取協雑誌研究委員会との「L表示問題」意見交換会並びに「書店データベース」運営委員会に藤原副会長ほか役員が出席。
11月11日日本出版インフラセンター運営委員会に小沢総務部長が出席。
11月13日宮城組合「ためほんくん」研修会に田江理事が出席。
11月15日第20回山本七平賞贈呈式に大橋会長が出席。「同日精算」問題でトーハンと日販を大橋会長と柴﨑副会長が訪問。出版倫理協議会に片岡理事が出席。
11月16日各種委員会(指導教育、取引改善、流通改善、書店再生、政策、地震対策、組織)。読書週間書店くじ抽せん会。
11月17日定例理事会。第33回出版物関係輸送懇談会に梅木委員が出席。
11月18日「ためほんくん」部会。同全体会。国立国会図書館との意見交換会。第7回書店注文環境整備研究WGに鈴木委員と山辺委員が出席。
11月24日「子どもの読書推進会議」運営幹事会と出版平和堂委員会に大川専務理事が出席。朝日新聞社「出版懇親の夕べ」に大橋会長が出席。
11月25日文化産業信用組合理事会に大橋会長が出席。日本出版クラブ事業運営委員会に大川専務理事が出席。
11月26日三重組合「ためほんくん」研修会に田江理事が出席。
11月29日日本図書普及㈱役員会に大橋会長ほか役員が出席。雑誌発売日本部委員会に藤原副会長ほか役員が出席。
11月30日平成21年度政府予算に関する各界連絡会に大橋会長が出席。公取協11月度月例会員懇談会に影山専務理事が出席。

学校図書館図書整備5か年計画継続を/文活機構など要望

子どもの未来を考える議員連盟と文字・活字文化推進機構は11月30日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で「平成24年度政府予算に関する緊急各界連絡会」を開催。「子どもの読書活動推進法」制定10年を迎えるに当たり、平成24年度政府予算における新学校図書館図書整備5か年計画の継続、学校図書館への新聞配備、学校司書の配備充実に必要な財政措置を講ずること――を関係省庁に求めるアピールを満場一致で採択した。
学校図書館図書整備5か年計画は本年度末で終わることから、文科省は新しい学校図書館図書整備5か年計画として、24年度からの5年間で学校図書館図書標準の達成を目指すため約200億円(5か年計1千億円)、学校図書館への新聞配備で約15億円(同約75億円)、学校司書の配置で約64億円、計279億円の地方財政措置を総務省に要望しているとしている。
国会議員、新聞、出版、図書館、教育関係者ら総勢200名が出席した連絡会の席上、子どもの未来を考える議員連盟の河村建夫会長(衆議院議員、元文部科学大臣)は「新学校図書館図書整備5か年計画の継続、学校図書館への新聞配備、学校司書配置は緊急の課題。必要な予算措置が講じられるよう、政官民が一体となって運動を進めたい」とあいさつ。文字・活字文化推進機構の肥田美代子理事長は「要望が実現するよう、関係省庁へ強く働きかけていく」と述べた。

亀岡で読書イベント/地元書店と行政が協力

京都府亀岡市の総合複合施設「ガレリアかめおか」で10月8日、9日の両日、「かめおかっこ夢・未来読書フェスティバル」が開催され、2日間で延べ450名が来場した。
このイベントは、同市が今年度から5年間推進する読書活動推進計画「かめおかっこ夢・未来読書プラン」の具体化政策として、同市教育委員会所管の実行委員会が主催したもの。亀岡市立図書館を中心に、京都府書店商業組合に加盟する地元5書店(大垣書店亀岡店、さわだ書店、ブックスはあぶ、宮脇書店亀岡店、やまざき商店)のほか、地元の読書ボランティア団体などが参加。5書店は京都組合をはじめ出版各社にも協力を依頼した。
8日は、絵本作家の宮西達也氏の講演会とサイン会を実施し、参加5書店は合同で書籍販売を担当した。また、市立図書館に所蔵される図書を市民自らが投票して選ぶ「親子で選ぶ選書会」を開催。児童図書十社の会に協力を依頼して、取り揃えた絵本と児童書の図書見本約600冊を陳列し選書会を行った。このほか、「亀岡の本屋さんから絵本のプレゼント」を実施。予め選定した絵本15点から選んで応募すれば、参加5書店から希望の絵本1冊を30名にプレゼントするもの。来場者に応募券を配布したところ、165通の応募があった。また、京都組合のマスコットキャラクター「ブックン」のクリアホルダーと風船を来場者に配布して会場を賑わせた。
翌9日は、市内在住の児童作家・北川チハル氏の講演会などを行った。。
(澤田直哉広報委員)

「被災商品返品入帳のお願い」取次各社に「撤回」通知/優越的地位の濫用に該当の恐れ/取協

日本出版取次協会(取協)は11月14日、7月に取次各社から各出版社に送った「東日本大震災による被災商品の返品入帳のお願い」と題する文書を一旦撤回するよう取次各社に通知したと発表した。
この文書は、東日本大震災による各被災書店の被災商品に係る返品入帳処理のお願いをしたものだが、その中での「通常正味での返品入帳」をお願いした点について、公正取引委員会(公取委)から独占禁止法(独禁法)の優越的地位の濫用に該当する恐れがあると指摘された。取協はこれを重く受け止め、返品入帳のお願いを一旦撤回するよう取次各社に通知した。
取次各社は内容を改め、公取委からの指導に従って、平時にあって生じたであろう返品額の範囲で再度要請する。取次各社はすでに再度依頼しており、現在、各出版社から回答を受けているところ。
また、被災商品に係る入帳はあくまで各出版社の自主的判断に委ねられるべき事項で、返品入帳処理の可否・金額を含め、取次各社として何ら特定の意向を示すものでないことに理解を求めている。取次各社に対しては、この件に対する対応いかんで通常の取引関係に影響が生じるようなことが決してないよう指導しているとしている。
また、取次各社の倉庫で被災した商品についても返品入帳を要請した社があったが、この点について公取委から独禁法上問題となる恐れがあるとの指摘を受けており、当該取次に対して要請を撤回し、要請に係る金銭の受領を辞退するよう指導しているとしている。
取協は「今後とも会員各社に対し、研修会の開催や標準的なコンプライアンスマニュアルの提供などを実施し、独禁法遵守体制の整備に資する取組みを継続する」としている。

電子書籍ブースを出展/ICTクラウドフェスタで/青森組合

青森県民にICT(情報通信技術)をより身近に感じてもらうためのイベント「あおもりICTクラウドフェスタ」(同実行委員会主催、会長=三村申吾県知事)が10月22日、23日の両日、青森市の新青森総合公園「マエダアリーナ」で開かれ、青森県書店商業組合(鶴谷祿郎理事長)はウェイズジャパン電子書籍ブースを出展。青森組合員とウェイズ社員が商品の紹介やチラシの配布を行った。同ブースは書店が売り出す電子書籍ということで大きな注目を集め、興味を示した来場者が次々と立ち寄り、専用電子書籍端末「イストリア」の実物を見ながら熱心に説明を聞いていた。
また、このイベントに合わせて22日午後6時から青森市のアラスカで組合員を対象に電子書籍研修会が開かれ、ウェイズジャパンの小橋琢己執行役員が①電子書籍の基礎知識と可能性②販売の仕組みと収益③店頭および外販における販売促進方法――について講演した。(伊藤篤広報委員)

「採用品の注文、書店で」高校校長会に要望へ/大分組合

大分県書店商業組合(福田健太郎理事長)は11月6日、別府市・別府温泉の杉の井ホテルで理事会を開き、学校より出版社直接注文が多い高校採用品について、書店を通じて注文するよう高校校長会に要望書を提出することを決めた。
このあと電子書籍研修会を開き、組合員33名が出席。ウェイズジャパンの菊池、中川両氏が書店店頭での電子書籍端末販売、ダウンロードシステムについて講演、質疑応答を行った。出席者は専用電子書籍端末「イストリア」のデモ機を実際に操作し、操作性などを確認した。
研修会終了後、14年間にわたり大分組合の維持発展に尽力した大隈前理事長に感謝状を授与した。大隈氏は「子供の頃から人の世話をよくする親の後ろ姿を見て育った私は、世話がよくできて当たり前と思っていたので、感謝状までいただき恐縮です」と謝辞を述べた。
(金光直明広報委員)

ワクワクする理事会目指す/開会時間早め勉強会開催/兵庫組合

兵庫県書店商業組合(山根金造理事長)は11月8日午後1時半から神戸市のエスカル神戸で理事会を開催した。
10月18日の総会で承認された山根理事長のもと初めての理事会となる今回から、従来より開会時間を30分早め、理事会の前に勉強会を行うことになった。山根理事長は「ワクワクする理事会」を運営のテーマに掲げており、勉強会は出席理事の役に立てればとの考えから実施することにしたもの。今回は、市民まちづくり研究所の松本誠所長が「まちの本屋から始める町づくり」を講演した。
勉強会終了後に行われた理事会では、新しい委員会の構成を発表。続いて支部長報告、委員長報告が行われ、12月3日、4日の両日、神戸海星女子学院で開かれる「絵本ワールドinひょうご2011」の準備、実行の役割分担を話し合い、決定した。最後に年間スケジュールと12月理事会兼忘年会の日程調整を行い、閉会した。引き続き兵庫県雑誌発売励行委員会が開かれた。
(安井唯善広報委員)

児童書販売研究会を始動/理想の売場作りで情報交換/北海道組合加盟書店と出版社

北海道書店商業組合(久住邦晴理事長)は11月8日、札幌市内で第1回「児童書販売研究会」を開催。久住理事長、浪花剛理事のほか、書店11名、出版社6名が出席した。
この研究会は、長期化する出版不況の中で児童書の可能性に着目。組合加盟書店と出版社の児童書担当者が協力して理想の児童書売場作りを研修するために立ち上げたもの。研究結果は、同組合が実施している小中高生向けのフェアなどで活かしていく。
今回は「まずは児童書売上げ2割アップを目指そう」をテーマに、「品揃え」「売場作り」「集客アピール」の項目別に研修。クリスマス~年末年始の事例を中心に、実際に使用しているチラシ、POP、商品などを紹介しながら情報交換を行った。
出版社は自社および他社のオススメ本、全国の書店の飾り付けについて発表。一方、書店は自店のロングセラーや成功したPOP、過去に反響の大きかった飾り付けやイベント、独自に発行している通信やチラシについて発表した。
研究会終了後、出席者から「児童書展開で有益な情報交換の場になった」と評価する意見が多数聞かれた。また、今回の研究会で紹介されたロングセラーは計50点以上におよび、「これらをすべて揃えるだけでも相当の売上げが期待できる」との声も聞かれた。
出席者は、書店が紀伊國屋書店札幌本店、丸善札幌アリオ店、久住書房大谷地店、TSUTAYA篠路店、ザ・本屋さん、図書館ネットワークサービス、ジュンク堂書店旭川店、マルイゲタ、日進堂、マル五中尾書店、アイブック・イトーヨーカ堂屯田店。出版社が偕成社、小学館パブリッシング・サービス北海道支社、ポプラ社、森の会(アリス館、ひさかたチャイルド、文渓社、クレヨンハウス、絵本塾)、金の星社、福音館書店。
なお、次回は来年2月開催を予定。新学期に向けて情報交換を行う。作家との交流などの企画も予定している。
(北海道組合事務局・蓼内英江)

神田村活用で説明会開催へ/北海道組合

北海道書店商業組合(久住邦晴理事長)は11月8日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催した。
日書連報告のあと、道組合活動について審議。久住理事長が10月27日~11月30日実施の「本屋のオヤジのおせっかい小学生はこれを読め!」フェアについて、おすすめ本のリスト、参加書店、全国書店新聞10月15日付1面の記事掲載、その他マスコミ対応について報告した。書店と出版社が協力して理想の児童書売場を作ることを目的とする「児童書販売研究会」については、第1回を11月8日に開催したあと、今後は来年2月、8月に開催を予定しているとした。
また、来年1月17日の新年合同懇親会の前に実施する研修会の内容について、久住理事長より神田村取次の活用について説明会を開催したいとの提案があり、満場一致で承認した。
このほか、2012年理事会日程について、1月は休会として懇親会を開催、2月は14日に開催、3月は休会とすることを決めた。4月以降の日程は次回理事会で決める予定。
(北海道組合事務局・蓼内英江)

『謎解きは…』が総合1位/タニタのレシピ本も上位に/2011年年間ベストセラー

トーハンと日販は12月2日、2011年の年間ベストセラーを発表した。1位は両社とも東川篤哉氏のミステリー小説『謎解きはディナーのあとで』(小学館)だった。
同書は今年4月に書店員が選ぶ「本屋大賞」を受賞し、テレビドラマも高視聴率を記録している。発行部数は11月末時点で1巻が180万部、2巻が82万部。
計量機器ーカー、タニタの社員食堂のレシピをまとめた『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房)が、読者の健康志向とあいまって、両社とも2位に入った。また、サッカー日本代表、長谷部誠選手が自身のメンタル術を紹介した『心を整える。』(幻冬舎)がトーハンで4位、日販で3位、同じく代表の長友佑都選手の『日本男児』(ポプラ社)もトーハンで19位、日販で16位に入った。
岩崎夏海氏の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)はトーハンで5位、日販で4位、柴田トヨ氏の『くじけないで』(飛鳥新社)はトーハンで8位、日販で6位と、いずれも2年連続で上位をキープした。

うみふみ書店日記

東北から嬉しいニュースが届きました。仙台の出版社「荒蝦夷」が出版梓会新聞社学芸文化賞を受賞しました。3・11以降の出版活動が評価されたのでしょう。本屋との直接取引ですので、なじみのない方々も多いかもしれません。東北に根ざしながら、「地方出版」という枠を越えた活動をしています。ぜひ全国の皆さんに扱っていただきたい出版物です。
いつものようにエラソーに発言してしまいます。今回の賞は、一出版社だけではなく被災地の出版関係者全員に贈られたものだと勝手に思います。彼らの懸命さを感じることができるからです。
震災以来、ブックフェアやら原稿依頼で、東北に多くの友人ができました。それから、被災地を応援している、また応援しようという人たちとも繋がりができました。お会いしたこともない、電話やメールのやりとりだけで、こんなことを書くのは、軽率かもしれません。でもね、皆、私の無理難題を受け入れてくれました。彼らに対して、私は一言のお見舞いも激励も申していません。当欄で何度も書いたように、私の言葉など何の役にも立たないからです。私にできることは、東北の出版物を神戸で紹介して、売ることだけと承知しています。
福島の書店員さんが書いた文章を紹介します。「首から線量計を下げている子どもが店に来るというシチュエーションは想像したことがなかった。体操着に線量計という姿を見たときはそれなりにショックだった」【註1】
想像したこともない光景が、今現実にあるのです。そのことを私は今も想像することしかできないのです。大地震を堪え、大津波に耐え、放射能に脅えて……、外部の者には実感できない現実を彼の地の子どもたちは生きています。
神戸では例年どおり、鎮魂のイベント「ルミナリエ」に多くの人が集まっています。それぞれの思いを胸に光の芸術をご覧になっていることでしょう。「観光イベント」になっているのは事実です。この一時だけでも、かつての震災や、3・11のことを想像してくださればと願います。
文化人類学者・今福龍太さんがトークイベントに来てくださいました。自然災害、戦争、テロ……、人間は瓦礫と死骸の中を生きてきました。合理的な知識だけではなく、深い人間の知恵、即興的な知性・気転、あいまいで漠然としているけれども、人間が本来持っている叡智とともに、新しい創世に踏み出そうと語られました。書物とともに連帯しようと、ブックフェア「瓦礫と書物」の選書もしてくださっています。「書物が瓦礫のなかに消えた。瓦礫のなかから書物がよみがえった。……滅びない本はない。だが同時に、本はつねに自らの灰燼のなかから再生する。……」【註2】
閑話休題。恒例の地元出版社の懇親会に参加しました。各店の経営者・重役が集まる会なのに、慣れました。以前全国規模の会に参加したことがあります。有名経営者が勢揃いで辛かったものです。神戸の支店に勤務経験のある方が話かけてくださいました。ありがたいことでした。
で、地元の会です。当欄を愛読していると、皆さんおっしゃいます。感謝いたします。注意と警戒。「あいつの前でイランこと言いなや、すぐ書きよるで」
【註1】NR出版会新刊情報430「お客様とのなにげないやりとりのなかで」菅原聡子(くまざわ書店須賀川店)全文はこちらで。http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_17.html
【註2】ブックリスト「瓦礫と書物」今福龍太作成

「小学三、四年生」休刊へ/残る学年誌、2誌に/小学館

小学館は12月1日、学習雑誌「小学三年生」「小学四年生」を2012年2月3日発売の3月号で休刊すると発表した。
「小学三年生」は1924年12月、「小学四年生」は23年12月に創刊。73年に各102万部、82万部を発行していたが、近年は3万~5万部まで落ち込んでいた。「小学五年生」「小学六年生」も09年に休刊しており、創業以来の基幹雑誌がまた姿を消す。
今後は中高学年向けに「学習ムックシリーズ」を立ち上げることを計画している。残る「小学一年生」「小学二年生」は今後も刊行を続けるとしている。
同日、東京・千代田区のホテルグランドパレスで開いた「2012年上期雑誌新企画発表会」で、小学館の早川三雄常務は「趣味や価値観の多様化、情報の細分化が子供の世界にも広がり、男女共通の学年別総合学習雑誌という形では読者のニーズに応えられなくなった」と休刊の理由を説明。「残る『小学一年生』『小学二年生』を頑張って増売する」と述べた。
「小学一年生」の松井聡編集長は、2011年は各号とも前年比130%と好調に推移したと報告。12年は①表紙モデル、芦田愛菜の露出②楽しく豪華な付録③学習への内容シフト――をさらに強化するとともに、「絆」をテーマに紙面と付録を展開したいとした。
入学直前号(1月14日頃発売)は定価840円(税込)、4月号(3月1日頃発売)は同780円、5月号(3月31日頃発売)は同750円。各号に「ポケモンピアノふでばこ」などの付録が付く。販売施策として、店頭陳列コンクール、増売コンクール、定期購読獲得コンクールを全国5000店で実施する。

新刊紹介

◇『こどもの行事しぜんと生活』(全12巻)
小峰書店は、絵本作家かこさとし氏の新シリーズ『こどもの行事しぜんと生活』(全12巻)の刊行を12月からスタートした。A4変形、36ページ、定価本体1400円(税込)。毎月1冊ずつ刊行する。
全国で数多くつたわる習わしや祭りを中心に、12ヵ月の行事を紹介する絵本シリーズ。12月刊行の第1弾は「1月のまき」として正月、お年玉、七草がゆ、初夢などを紹介。1月上旬刊行の「2月のまき」は節分、バレンタインデーなどをとりあげる。

「電子市場、3年後25%に」/角川会長が予測/図書館総合展

第13回図書館総合展(同運営委員会主催)が11月9日~11日、横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれ、約2万5千名が来場した。
同展は、図書館利用者や図書館で働く人が図書館の未来像などを考えることを目的に、1999年より毎年開かれている。
今回は110社・団体が参加し、最新の技術や動向がわかるブース出展や、図書館に関連する様々なフォーラムやプレゼンテーションが行われた。
10日には図書館政策フォーラム「電子書籍時代の図書館―次世代の文化創造に向けて」が開かれ、国立国会図書館の長尾真館長(ビデオ出演)、同電子情報企画課の田中久徳課長、文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室の山中弘美室長、総務省情報流通行政局情報流通振興課の松田昇剛統括補佐、慶應義塾大学メディアセンター本部電子情報担当課の入江伸課長、札幌市立中央図書館業務課情報化推進担当係の淺野隆夫係長、角川グループホールディングスの角川歴彦会長が電子書籍の取り組みについて講演した。
角川会長は「iPadは500年ぶりに生まれたグーテンベルク以来の発明。印刷物をそのまま電子書籍に置き換えるのではなく、新しい出版物を創造できる可能性を秘めている」として、「3年後に出版業界の売上げの25%を電子書籍が占める」と予測した。
角川グループのデジタル戦略については「アップルやアマゾンにコンテンツのの付加価値を一方的に奪われては未来はない」として、コンテンツプロバイダーにとどまるのではなく「プラットフォーマーを目指す」との考えを示した。
このあと「図書館における実践的電子書籍活用法」と題してパネルディスカッションを行い、立命館大学文学部の湯浅俊彦准教授をコーディネーターに電子書籍時代の図書館の役割や出版界における電子書籍ビジネスについて議論した。

3年ぶりの減収減益/雑誌売上げの減少響く/トーハン中間決算

トーハンは11月29日、平成23年度中間決算を発表した。上半期の売上高は書籍920億7900万円(前年比1・0%減)、雑誌1325億700万円(同6・2%減)、MM商品139億9800万円(同3・4%減)。合計は2385億8600万円(同4・1%減)で、雑誌売上の減少が響き、中間決算では3年ぶりの減収減益となった。
売上高は前年比99億9400万円減少したが、このうち約21億円が震災関連によるもの。返品率は、書籍が同1・0ポイント減の42・5%、雑誌が同0・8ポイント増の38・3%、MM商品が同1・7ポイント増の19・6%で、総合では39・2%と同0・1ポイント上昇した。
売上総利益は前年比5・3%減の275億9300万円。販売費及び一般管理費は「TONETSV」への投資などで機械消耗費や減価償却費が増加したが、オリコン送品の拡大等により同2・5%減。営業利益は同26・5%減の25億1000万円となった。営業外収益は受取利息や株式配当金の増加などで同8・5%増、営業外費用は売上割引の減少で同14・2%減となり、この結果、経常利益は同12・2%減の15億7300万円になった。
特別損益は、前期末に計上した震災債権に係る貸倒引当金戻入益2億4500万円を計上、特別損失は震災関連の応援交通費で1700万円を計上した。これで税引前中間純利益は前年比10・5%減の18億円、中間純利益は12億2400万円となり、同3・5%減の減収減益決算となった。
書籍は需要予測配本の精度向上と「TONETSV」を用いた書店支援施策「適在適書」が奏功し、上半期の売上目標を達成。雑誌は震災の影響もあり、期初から返品が増加したが、6月以降に1221店の棚診断を実施、さらに7~9月に2355店に銘柄別定期改正を実施した。これにより9月以降は返品が減少、売上げの減少傾向にも歯止めがかかってきている。
子会社12社との連結決算は、売上高が前年比3・7%減の2439億4300万円、経常利益が同15・5%減の17億3000万円、中間純利益は同9・4%減の12億6300万円と、単体同様に減収減益だった。

東北6県5・1%増加/震災後の書籍販売好調/東北日販会

東北日販会は11月24日、宮城県仙台市の秋保温泉・佐勘で第6回総会を開き、会員書店、出版社、日販から柴田克己会長、古屋文明社長ら総勢250名が出席した。
藤原直会長(金港堂)は「東日本大震災で全国から見舞金や激励をもらい感謝しているが、被災書店の返品をすべて入帳するという英断には特に勇気づけられた。震災後、仙台では様々な特需があり、出版業界では活字の意義が認められた。東北地方の書店は数字が上向いているが、他の地域は伸びていない。何が足りないのか。心を打つものが読者に受け入れられている。出版社は良い企画を考えてほしい。日販のPARTNERS契約など新しいシステムを導入し、右肩上がりに転じるよう努力したい」とあいさつした。
来賓を代表して日販の古屋社長は、東北地方の店頭の数字が好調として、「4月から10月の書籍売上は、全国平均が1・5%減に対し、東北6県は5・1%増、岩手・宮城・福島3県に限定すると6・1%増とさらに高い」と報告した。また、震災直後の流通の混乱を陳謝し、「現在リスク管理の見直しを行っている」と述べた。
総会に先立って行われた商談会では、出版社64社のブースを書店担当者が訪れた。講演会では、岩手県大船渡市の地域新聞社、東海新報社の鈴木英彦代表取締役が「復興に向けて」と題して、東日本大震災当日やその後の状況を話した。

「活字は軽減税率を」/読売新聞グループ渡辺会長が主張/読売中公会

第27回書店読売中公会が11月16日、東京・千代田区の東京會館で開かれ、会員書店、読売新聞社、中央公論新社、取次など約150名が出席した。
元副会長の故・吉村浩二氏(金高堂書店)に黙祷を捧げ、役員改選で高須博久氏(豊川堂)の副会長新任などを承認した。
あいさつに立った亀井忠雄会長(三省堂書店)は「昨年4月から今年3月までの会員書店における書籍の販売実績は前年比2・8%増、今年4月以降の上半期は11・4%増と好調。しかし雑誌は厳しい」と報告。「3ヵ月で多くの出版物が書店の棚から消えてしまう。既刊本を見直して大切に販売するべき」と述べた。
中央公論新社の小林敬和社長は2010年度の決算について「売上高は前年比2・4%減の63億2千万円、このうち取次経由は前年比1・7%減の50億9600万円。書籍は好調だったが、雑誌と広告が低迷した。しかし、経費削減などで、営業利益は2億2400万円、当期利益は1億2100万円だった」と報告した。
来賓を代表してトーハンの近藤敏貴社長は「中公選書の巻末の言葉に『混沌とした世界で確かな知の営みを進める』とある。書店と力を合わせて1冊1冊の本を大切に売っていきたい」とあいさつした。
懇親会では読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長・主筆が登壇。消費税問題に言及し、「欧州では新聞や書籍は軽減税率か非課税。優遇措置で活字文化を大事にしている。私は消費税を10%~15%に上げなければ日本の財政再建はできないと思っているが、新聞や書籍など活字文化は食糧などの生活必需品と同じく5%で止めるべきと主張している。中曽根内閣が売上税を提案したとき、読売以外の新聞は反対したが、読売は賛成した。当時の大蔵省と密かに、活字は非課税にするとの確約をとっていたからだ。あの時に他の新聞社が欧州の税制をよく勉強していれば活字は非課税になっていたと思うと残念だ。税制に対する政治的関心をもって活字文化を守るため努力したい」と話した。

中間連結は減収増益に/書籍売上高は2・3%増/日販決算