全国書店新聞
             

平成21年3月11日号

「ブックン」に決定/マスコットキャラの名前/京都組合

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は2月17日、京都市中京区の書店会館で定例理事会を開催し、京都組合マスコットキャラクターの名前を「ブックン」とすることを決定した。
京都組合では今年度、組合事業のPRと加盟店への啓蒙活動を主たる目的として、独自のマスコットキャラクターを設けることを策定。すでに昨秋公募で決定していたイラスト画に続いて、今回は名称募集のキャンペーンを展開した。同組合では消費者に来店を促すため、毎年11月の読書週間の時期前後、独自に「本屋さんへ行こうキャンペーン」を企画展開しているが、今回はキャラクター名称募集をキャンペーンとして取り組んだ。
期間中はキャンペーンチラシ約6万枚を組合加盟店で来店者に配布し回収。その結果、昨年12月末日の応募締切までのおよそ2カ月間に応募総数約700通が集まった。名前の決定については、当キャンペーン管轄の委員会である活性化委員会の委員と組合理事で集計し選考した上で、理事会であらためて審議した結果、名前を正式に「ブックン」とした。
選考のポイントとなったのは、「ブックン」と書かれたものが全応募中最多で、次点の候補名にも大差をつけたこと。また、英語で本を意味する「ブック」と、親しみを感じさせる敬称である「君(クン)」を掛け合わせているところが、書店が所属する組合のキャラクター名として相応しく、明快で愛着が持てるものであることなどが、その理由。
名前が採用された応募者1名に用意した図書カード2万円分については、該当者が複数だったことから抽選を行い、当選した1名を対象者とした。また、副賞としてラッキー賞には「ブックン」と書きながら抽選から外れた該当者を対象としたほか、全応募者から抽選を行い、合計100名に図書カード2千円分を進呈した。
京都組合では今後、マスコットキャラクターを描いたステッカーやポスター、チラシなどを作成し、組合加盟書店に掲示することで、組合が行うキャンペーンなどの企画展開や販売促進に利用していくほか、地元行政と連携し、学校の「朝の読書」をはじめとした読書推進活動の貢献の証などとしても活用していきたいとしている。
(澤田直哉広報委員)

春の書店くじ申し込みは大至急

4月23日の「世界本の日サン・ジョルディの日」「子ども読書の日」をはさんで4月20日から30日まで実施する「春の書店くじ」の申し込みがお済みでない書店は、大至急、所属都道府県組合までお申し込み下さい。頒価は1束5百枚単位で3750円(税込)。読者謝恩、販売促進にお役立て下さい。

書店売上高3.6%減/昨年の分類別売上調査/日販調べ

日販経営相談センター調べによる2008年の年間書店分類別売上調査が発表された。これによると08年の売上は前年比3・6%減と、4年連続前年を下回った。『ハリー・ポッター』シリーズ最終巻や10年ぶりに改訂された『広辞苑』、出版業界で初めてRFIDタグを導入した『ホームメディカ』など話題作が発売されたが、前年を上回るには至らなかった。調査期間は08年1月~12月。調査店は291店。
売上高前年比を規模別にみると、すべての規模で前年割れ。50坪以下4・2%減、51~100坪4・0%減、101~150坪3・5%減、151~200坪3・4%減、201坪以上1・5%減と、規模が大きいほど下げ幅が少なかった。この傾向はここ3年続いていたが、08年は比較的下げ幅の少なかった201坪以上でも9月以降は平均を下回ることがあり、規模の優位性だけでは売上の確保が難しくなっている。立地別でもすべての立地で前年を下回り、中でもSC内が5・4%減と落ち込みが目立った。ガソリンや食料品の値上がりにより消費者の節約志向が高まったため、施設そのものの利用が低下したものとみられる。
ジャンル別では、前年を上回ったのは文庫0・2%増、文芸5・8%増、辞典22・4%増の3ジャンル。文庫は前年の2・6%減から一転し、ここ数年続いていたプラス成長に戻った。『容疑者Xの献身』など映像化作品を中心に売上を伸ばした。文芸は「ハリー・ポッター」シリーズの最終巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』が年間ベストセラー1位となった。同シリーズが発売される年は必ず前年を上回っている。辞典は10年ぶりの大改訂となった『広辞苑』が貢献し、前年を大きく上回った。
客単価は1・4%増の1128・9円。客数は減少しているが、商品単価が上昇傾向にあるため前年を上回った。しかし、12月期には14カ月ぶりに前年を下回り、客数だけでなく1人当たりの買上冊数も減少しており、買い控えの状況が進んでいるとみられる。

ヤングアダルト図書2009年版総目録を刊行

25の出版社で構成するヤングアダルト図書総目録刊行会はこのほど『ヤングアダルト図書総目録2009年版』(掲載社数105社、約3100点)を発行した。A5判318頁、頒価税込300円。
ヤングアダルト(YA)は13歳から19歳までの世代を言うが、同書は日本で唯一のYA向け図書目録。目録には「YA向けの本」と、「YA世代にぜひとも読んでほしい本」を収録。13の大分類をさらに「心のなぞをたずねる」「歴史のすすめ」「ことばの世界」など60に分類している。また、巻頭カラーページでは掲載出版社による「YAおすすめの1冊」を紹介。あさのあつこ氏のエッセイほか、学校現場での『朝の読書』実践の取り組みも紹介する。
同会では、毎年新年度を間近に控えたこの時期に目録を発行。選書に役立ててもらおうと、『朝の読書』実践校など全国約9800校の中学校・高校に無償で配布している。YA図書は児童と一般の区分にまぎれ、読者に情報が伝わりにくいという一面があり、同会では、何を読んだらいいかわからないという声の多いYA世代に向けた本目録を、『朝の読書』や『うちどく(家読)』のための選書ツールとして活用してもらうよう、今後も積極的に配布する予定。

生活実用書/注目的新刊

中小書店の実用書分類にも必ず「園芸」がある。しかしたいてい盆栽も、花の育て方もガーデニングも、どれもが一緒くたになっている。読者にとても不親切である。同じ人がバラを育てたくて、野菜も植えたいかもしれないが、本を探す大半の人の意志は明確に違うのではあるまいか。
そこで今回は野菜に絞る。木嶋利男著『伝承農法を活かす家庭菜園の科学自然のしくみを利用した栽培術』(講談社ブルーバックスB1630940円)は安全で新鮮な野菜を作ろうとする人のための技術を教えている。
農薬や化学肥料に頼らない安心な野菜を作るには、過去に開発された自然農法、有機農法、伝承農法を知りたい。なぜなら、農薬や化学肥料を駆使した農法は、土壌や気候条件を無視しても生産可能だからだ。古来からの農法に学ぶのは、農薬も化学肥料もない時代の方法だからである。
そのためには土作り、作物固有の性質、土壌微生物の役割などが欠かせない。病害虫からも野菜を守らなければならない。たとえば苺と長ネギを混植すると、苺の萎黄病を防除できる。ニラとトマトも同じである。このように互いに好い影響を与える植物をコンパニオンプランツという。
苗を買うのではなく、自家採種の方法もイラストで紹介される。ナスやニンジンからも種が取れることに驚く。家庭菜園を始めたい読者には必携のハウツー本である。
エコ楽編集部編『初めてでもカンタン、すぐおいしい!ベランダ野菜育て方&料理レシピ』(徳間書店1200円)は、家庭菜園の中でもさらに手軽なベランダ菜園。
道具、土、肥料、タネなどを揃える準備編から始まって初心者から上級までの実践編がすべてカラーで解説されている。初級でも小松菜、ほうれん草、こかぶ、ミニ大根など10種類。それぞれの野菜を食べる料理のレシピもついている。ミニ大根はごま油と豆板醤を使ったタレがおいしそうな大根ステーキ。ほうれん草はチーズとのコラボレーションでマフィンに変身だ。
鉢やコンテナの大きさから生育するまでのプロセスも、それぞれの野菜別に解説。カラー写真が多いので、タネを蒔く時の土の深さなども良くわかる。すぐにベランダで試してみたくなる本である。
(遊友出版・斎藤一郎)

大河ドラマで連動企画/NHK出版とBooker’s/東京組合

東京都書店商業組合は3月3日午後2時から、書店会館で定例理事会を開催した。主な審議事項は以下の通り。
〔電子サイト運営推進委員会〕
携帯電話用電子書籍サイト「Booker’s」は、NHK出版とタイアップし、大河ドラマ「天地人」との連動企画を展開すると報告された。サイトの特集ページで原作とドラマストーリーブックの冒頭部分を試し読みでき、続きは書店で本を購入してもらうよう仕掛けて店頭の活性化を図る。オリジナルクリアファイルとしおりを組合加盟書店に配布し、対象商品購入者にプレゼントする。
また、コンテンツの提供要請で出版社9社を訪問したと報告。今後の展開については、夏の文庫フェアとの連動企画を検討中であるとしたほか、コミックのダウンロード販売を4月後半頃に開始できるよう、コミック出版社に働きかけていくと報告があった。
〔経営・取引委員会〕
雑誌増刊・別冊などL表示の商品の期限切れ問題について、返品交渉して断られた出版社の情報を提供してほしいと呼びかけがあった。
〔流通改善委員会〕
TS流通協同組合の1月期の売上げは921万4505円(前年比97・3%)、発注件数8842件(100・5%)、書店数は69書店(90・8%)と報告された。

日書連のうごき

2月5日全国中小小売商団体連絡会に大川専務理事が出席。
2月6日毎日新聞社青少年読書感想文全国コンクール表彰式に大橋会長が出席。
2月9日流対協との意見交換会に柴﨑副会長ほか役員が出席。
2月10日経済産業省メディアコンテンツ課との意見交換会に大川専務理事が出席。
2月12日JPO第6回運営委員会に柴﨑副会長が出席。
2月13日近畿ブロック会経営活性化・書店環境改善講演会に柴﨑副会長が講師として出席。「第51回こどもの読書週間」標語選定委員会に石井総務部長が出席。埼玉県組合ICタグ研修会に大川専務理事が出席。
2月17日業種別物流ユーザー交流セミナーに藤原副会長が講師として出席。出版物小売公取協規約問題で井門副会長ほか役員が公取委・消費者取引課を訪問。
2月18日日書連共済会会計監査。児童図書増売三者会談。各種委員会(指導教育、増売、共同購買、福利厚生、取引改善、流通改善、再販研究、広報、消費税問題、情報化推進、読書推進、環境改善)。日書連共済会運営委員会。小売公取協専門委員会。
2月19日日書連2月定例理事会。ISBNマネジメント委員会に柴﨑副会長が出席。
2月20日芥川賞・直木賞贈呈式に大橋会長が出席。再販問題意見交換会に面屋副会長ほか役員が出席。
2月23日読進協全体事業委員会に舩坂常任委員が出席。活字文化振興出版会議に大川専務理事が出席。
2月25日学校図書館整備推進会議新5カ年計画PT会議に石井総務部長が出席。サロン会に大橋会長が出席。
2月26日「ためほん」実験店情報交換会。
2月27日毎日新聞社読書感想画中央コンクール表彰式に大橋会長が出席。第一期RFタグ導入反省会に大川専務理事、同懇談会に大橋会長が出席。
2月28日第12回図書館を使った〝調べる〟学習賞コンクール表彰式に大橋会長が出席。

緊急特別寄稿「すぐそこにある危機」/高岡氏・文苑堂書店・吉岡隆一郎

書店存亡の危機が近づいている。
アマゾンが早稲田大学5万人の学生と教職員3000人に対して8%の割引をする。学生協が10%割引をしているので問題はないといっているが、学生協は再販適用除外になっているので今までもやってきていたことだが、アマゾンが同じ人を対象にすると言っても、本来全然違う話で容認できるものではない。
もっと問題なのは、卒業生に対しても早稲田カードを利用すれば8%引になるということだ。大学カードは今までほとんど加入にもメリットがなかったので入る人は少なかったが、本が8%引で買えるとなればどんどん加入するだろう。
大学の方も、1名カードに入れば1000円以上の報奨金が入るので、数十万人の卒業生のうち十万人が入れば1億以上の収入になるし、カードで購入した金額のいくばくかが収入になるので、DMなどでどんどん会員の拡大をやる。早稲田がやれば慶応もやる。カード会員が増えれば大学の収入になるので全国の大学がやる。卒業生も対象なので1千万人単位になるのではなかろうか。
アマゾンジャパンは「早稲田大学さんという民間企業との個々の取引であり、実施できる範囲のサービスだと思う」と説明しているが、この言い方であれば大学のカードに限定されることは何もなくて、JCBだろうがVISAだろうが、そこの会員なら本は割引になるということになる。そこまでいかなくても全ての会社と契約すれば、そこの従業員は8%割引で買えることになる。8%は10%になるだろう。日販が本を卸しているが、その掛率は72%以下だと思われる。アマゾンは出版社に6掛で出さないかと言っているようで、協力する出版社はWeb上有利になるらしい。10%割引なんて簡単である。
本がインターネットで買えば10%引ということになれば、誰も書店で本を買う人はいなくなる。韓国がそういう状態になっている。再販があるけれどもインターネットで買えば10%引ということで一般書店はどんどんつぶれてしまった。書店がつぶれるだけの問題ではない。アマゾンに誰も対抗できないことになる。書店も他のインターネット書店もアマゾンには対抗できない。規模も格段の差がついてゆくだろう。出版社も全てアマゾンの言うままにならざるを得なくなる。
アマゾンは公正取引委員会におうかがいをたてて、特に問題はないということで今回の実施に入っていると思う。公正取引委員会は独占禁止法の番人のはずだが、やっていることは独占を助長するものばかりである。アマゾンは独占になる。全国の書店はつぶれる。出版界も非常に困った状態に陥るであろう。アメリカの資本が日本の出版界全体を牛耳るというのは大変な問題ではないか。言論の自由、資本の独立とかはどこかへ行ってしまう。書店側としては日書連が頼みの綱だが、日書連が中止を求めればそれは独禁法違反になる可能性が強く、できないのだと言う。
ここで日書連が動かなければ、もうその存在意義はない。また書店が片っ端からつぶれてゆけば日書連自体が存続し得ない。確かに日書連が動けばすぐに公正取引委員会は独禁法違反のおそれがあると言ってくる。恐れがあると言うのであって独禁法違反として正式に書面が出るかどうかは疑わしいと思う。もしそうなったとしても裁判で戦う必要があるのではないか。全国の書店の存亡がかかっているのだから。
今ここで対応を誤ると再販制は崩れる。再販が崩壊するだけならまだ生き残れる道もあるが、アマゾンの独占が進めば書店の生き残る道はない。
公正取引委員会がアマゾンの独占を許し、全国の中小書店を廃業に追いやるというのはどう考えても道理に合わない。本来独占禁止法というのは独占を禁止するための法律ではないのか。地方自治体が行なう税金を使う工事で談合などが行なわれれば、税金の無駄遣いになるので独禁法違反で逮捕者が出ることはあるが、全国の中小書店を守ろうという運動で逮捕されるのは有り得ない。
読者の立場に立てば、一時的に本を安く買えるようになるが、長い目で見ればアマゾンの独占の方がはるかに有害である。だから独占禁止法があるのだから。日書連はその命運をかけて立ち向かうべきだと思う。共済会の資金はそのために使ったらどうだろう。
書店の存亡がかかっているとしたら、その為にこそ共済会の資金は使われるべきだと思う。一刻の猶予もないのではないか。アマゾンが日本の出版業界を川上から川下まで全て牛耳ることだけは防がねばならない。これが私の杞憂であればよいのだが。

WIN+を活用した販促/扶桑社執行役員・福原知晃

新刊1点当たりの売上げは年々低下傾向にあり、1997年を100とすると2007年は71になる。販売部数の減少をカバーするため点数だけが増加しているからだ。書籍返品率も、マーケットの50%以上のPOSデータが可視化されているにもかかわらず、高止まりの状況だ。
日販が進めてきたwwwプロジェクトのインフラともいえるWINによって店頭の状況が見えるようになってきた。ただ、ここで見える数値、POSデータは過去のもの。なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのかは教えてくれない。本当に取り組むべきテーマはどのような商品を作り、どのようにお客様に認知されるかということで、それを可能にするツールがWIN+ではないかと思う。
立川談春の書いたエッセー『赤めだか』は2008年4月に発売、累計12万部のロングセラーとなっている。WIN+の購入者特性を見ると男性60、女性40となっている。併売ランクの最上位は小学館の『落語昭和名人』シリーズだ。この
併売は相性がよく、多くの書店で売上げを伸ばしているが、さらに部数を伸ばすには女性読者の取り込みが必要だ。そこで『赤めだか』の購入クラスターを検証し、40~50代女性に買わせる戦略を練った。この年代の女性に厚い読者層を持つ雑誌として見つけたのがNHK出版の『きょうの料理』だった。いくつかの書店で併売を実施した。
『きょうの料理』を毎号70冊前後売る千葉の書店では、併売初日に『赤めだか』が2冊売れた。商品単価の低い雑誌コーナーで4ケタの価格帯の商品が売れた事実に驚いた。
雑誌は人々の生活のインデックスであり、読みたい、知りたいという人々の趣味趣向を表現している。読者クラスターがはっきりしたメディアだ。雑誌を通して読者に近づき、もう1冊買ってもらう。商品陳列に際して既存の概念にとらわれず、雑誌をキイとした売り場作りを提案したい。
月刊誌『ESSE』の購買データを串刺しにして、読者層をあぶりだしてみた。編集、販売とも『ESSE』の読者は20代後半から30代半ばがボリュームゾーンだと思っていた。しかし、実際はもう少し上の世代、35歳から45歳がボリュームゾーンだとわかった。
昨年5月号の客層データは30代後半にピークが移り、40代後半の読者の支持率が大きく下がった。この号は実売22万部、返品率も32・8%で、大変残念な結果となった。巻頭特集がボリュームゾーンの読者に刺さらなかった結果だ。
翌月の6月号は実売が31万を超え、返品率も21・2%に収まった。30代前半から40代後半までの読者をしっかり取り込むことができた結果だ。巻頭特集がうまく刺さったケースだ。
『ESSE』が確実に実売を確保するには、30代前半から40代後半の幅広いお客様に支持される特集が必要である。理想は富士山型の読者層をカバーするコンテンツ。このバランスが非常に重要で、はずしてしまうとお客様からそっぽを向かれる。
売れる商品を作るには顧客データとPOSデータの連動分析が必要だ。われわれはWINおよびWIN+を編集と営業の共通資料として活用し、毎回仮説を立てて読者に喜ばれる商品を目指し日夜努力している。
お客様の嗜好と属性を通して、どんな雑誌を読んでいるか、どのようなライフスタイルか探っている。そのデータを販促戦略、商品開発につなげ、店頭ではどのような商品と併売するのがよいか、売場提案を書店に伝える。広告媒体は何が適切か模索し、販売戦略を練る。カテゴリー・マーケティングのツールとして大変有効に活用させてもらっている。
書店は顧客データを活用しない手はない。一人のお客様にできるだけ多くの商品を買ってもらうため、顧客リストの作成をぜひお願いする。ともに読者を理解した売場つくりを目指していきたい。
(2月27日開催の日販wwwカンファレンス2009で行われた報告から)

3年後には半数を責販制に/wwwカンファレンスで言及

日販は2月27日、六本木アカデミーヒルズで「wwwカンファレンス2009」を開催。プロジェクトの現状を報告するとともに、wwwアワードの表彰を行った。
会議の冒頭、日販古屋社長は「wwwプロジェクトは、欲しい時に欲しいだけ供給してという書店の声に応えようとスタートした。現在、出版社にデータ活用いただいているし、HonyaClubも派生した。業界は今閉塞感にとらわれているが、もう少し仕組みを見直して、三者が儲かるよう考えていきたい。返品問題をクリアして、サイトをもう少し後ろにできないかなど、仕組みを変えていくには返品ルールをきちんと作って効率良くすることが必要だ。2月にはwwwのバックヤード、王子流通センターも整備した。何でもありの委託制の仕組みを変えるには大変な労力がいるが、業界の将来を見据えて着実に進んでいきたい」とあいさつした。
「wwwプロジェクトの現状と今後」は安西浩和取締役が「共通の市場データを見ながら検討できる仕組みを目指してきた」として、①契約出版社は257社、データ開示書店は2200店、その他分析対象店を含めると2800店弱、26%の店舗データが見える、②加盟店の売上前年比は100・6%と平均を上回り、返品率は36・8%と低い、③SCM銘柄は書籍79銘柄、コミック101銘柄を数え、実売率80・7%などの数字を紹介。「3年後には取引の5割ぐらいが責任販売制となることをめざしたい」と述べた。
「HonyaClubの現状」については鈴木敏夫www推進部長が報告。開始3年で86法人281店舗、会員252万人に達し、加盟店の売上は平均を1、2%上回っているなどと報告した。
扶桑社福原知晃執行役員「WIN+の活用事例」の報告に続き、wwwアワードの表彰。出版社SCM貢献部門で講談社と文芸社、ベストセラー発掘部門で双葉社『告白』を表彰。書店は次の各社を表彰した。
▽メニュー徹底部門=王文社小山田書店、すばる書店、住吉書房、精文館書店、ダイハン書房、高桑書店、多摩興産天一書房、デンコードー、▽SCM貢献部門=明屋書店、▽HonyaClub会員獲得部門=啓文社、住吉書房

中経出版を子会社化/角川GH

角川グループホールディングス(佐藤辰男社長、略称=角川GHD)は2月26日、中経出版(杉本惇社長)の全株式を取得し子会社化すると発表した。
中経出版は1968年創立。従業員数80名、資本金4060万円。連結売上高40億円。ビジネス書・実用書・学習参考書・語学書の出版を得意とし、子会社の新人物往来社は雑誌『歴史読本』や歴史関連書のコンテンツを多数持つ。中経出版が角川グループに入ることで編集・営業面でのノウハウ共有、コンテンツ交流、マルチ活用、資材調達、営業力強化などのメリットが考えられるという。

月刊少年サンデー創刊/『和楽』4月から市販誌に

小学館は5月12日に少年漫画誌『月刊少年サンデー(ゲッサン)』を創刊する。毎月12日発売、B5判無線とじ、予価税込500円。
2月25日の企画発表会で大住常務は「出版業界低迷の流れを絶ち切り上昇気流に乗せたいと、1月、2月『NHK世界遺産100』など3種類のウィークリー・マガジンを出し、想定以上の結果が出ている。今年はいいスタートを切ることができた。5月に創刊する『ゲッサン』は久し振りの月刊少年漫画誌。業界活性化につながると確信している」とあいさつした。
『ゲッサン』林編集長は「週刊少年サンデー創刊50周年の今年は攻めの姿勢で月刊誌を創刊する。ベテランから若手まで起用し、読み応えのある作品を送りだしたい」と創刊理由を説明。編集方針について市原編集長代理は「キーワードは『愛と勇気』。コアターゲットは中・高校生だが、中学生以上の全日本国民をターゲットにする。大人や女性が読んでも面白い、最強の月刊少年漫画雑誌を作る。①すべての連載作品を毎号読切にして、いつ読んでも楽しめる、②若い読者が食傷気味の異世界ファンタジーバトルではなく、新しい切り口の作品、③面白い漫画を何より重視し、記事ページも漫画家や作品に関する情報を集中的に掲載する」と話した。
また、定期購読者を対象とした月刊誌『和樂』は4月11日発売から市販誌にリニューアル、書店店頭販売を開始する。以降毎月12日発売。A4変形無線綴じ。定価1300円。
花塚編集長は「完全定期購読で創刊して7年半。月刊ライフスタイル総合誌として30代から80代まで2万8千人の固定読者がいる。今後は50代をコアとした誌面にシフトする。誌名ロゴは横書き、表紙モデルに檀れいさんを起用するなど表紙デザインも変更する。ファッションとビューティの頁数を増やし、実用性も出していく。『家庭画報』『婦人画報』読者の併読誌を想定している」と、市販化の意欲を述べた。

小学館相賀相談役お別れの会に3200人

昨年12月21日に逝去した小学館相賀徹夫相談役のお別れの会が3月5日午前11時から帝国ホテルで営まれ、業界関係者3200人が参列。遺影を飾った祭檀に白いカーネーションを献花した。
当日配布された冊子『相賀徹夫追想録』には相賀昌宏社長はじめ瀬戸内寂聴、丸谷才一、沢木耕太郎、田中健五各氏らが故人の思い出を語り、アルバムと年譜、語録で業績と小学館の歩みを振り返っている。

日本から76社出展/台北図書展

第17回台北国際図書展示会が2月4日から9日まで、台北世界貿易センターで開かれ、台湾328社、41の国と地域から578社、計906社、1741のブースが出展した。入場者数は、昨年を9万人上回る50万人。
トーハンが主宰する日本事務局経由で18ブース・73社、独自に5ブース・3社が出展、総計23ブース・76社となり、海外出展としては最大規模となった。日本ブースでは初めての試みとしてビジネス書著者兼経営者の会による『版権商談会』を実施。日本のビジネス書、版権ビジネスを大いにアピール。会期中の商談は昨年より増えた。

皇后美智子様の『橋をかける』を文庫化/文藝春秋

文藝春秋は文庫35周年の記念出版として、皇后美智子様が1998年に出版された『橋をかける子供時代の思い出』を文庫版として4月上旬に刊行する。ハードカバー装、定価税込980円。
ご自身の子供時代の読書の思い出を通じて本を読むことの大切さ、本がもたらす豊かな世界について語られたインド・ニューデリーの講演を収録した特装版。

本屋のうちそと

岩波文庫の『最暗黒の東京』や『日本の下層社会』の現代語訳が出たら売れそうな今の日本。経団連の御手洗会長は株価の下落に対して税金による株価買い支えを政府に訴えた。「落ちていく者は自業自得」の「市場原理主義」はどうした。
取次は開店在庫の支払先払いの大型店を多数抱える大手チェーン書店に対して巨額の金融支援を行っている。本来ならその売上げからすれば採算が合わずに閉店すべき大型書店が取次の手厚い支援によって生き延びれば、代わりに中小書店の閉店・廃業が進む。閉店・廃業した書店に対して取次は精算金を支払わなくてはならなくなる。ではそのお金はどこから?大型書店の売れない売り場にお金が消えてゆく。
国の来年度予算が決まるが税収減が酷いので新規国債33兆円では足りないだろう。特殊な例だが愛知県豊田市の法人市民税は昨年の96・3%の減。20~30兆円規模の補正予算を編成する話がすでに出ているが財源は国債発行しかない。政治家も経済学者もやけくそなのか「政府紙幣」に「無利子国債」まで言い出した。いずれも国債発行増・金利上昇となる。与謝野氏の「公務員給与3割減での消費税増税」策も、もうすぐか。
ウォール街という欲望通りにある『欲望という名の銀行』が次々に倒れて行く。架空の需要を作り過ぎて潰れた銀行救済の為の政策で米国債金利も上がりだした。政治家の顔が皆、歪んで崩れて見える。暗い春の始まりか。「花の顔崩れしままよ恋の貌」
(海人)