全国書店新聞
             

平成20年8月21日号

読書週間標語「おもわぬ出会いがありました。」

読書推進運動協議会(野間佐和子会長)の主催により文化の日をはさんで10月27日から11月9日まで実施される第62回読書週間の標語が「おもわぬ出会いがありました。」に決まった。野間読書推進賞、全国優良読書グループ表彰などの行事が行われる。

日販、トーハン、栗田と懇談/返品・請求の同時精算/大橋会長らで各社を訪問

日書連大橋会長、面屋、柴﨑両副会長は8月7日午後、日販、トーハン、栗田出版販売を訪問し、返品入帳と月末請求について日書連の考え方を説明。理解と協力を求めた。各取次は小売書店の置かれている窮状には理解を示したものの、請求を返品入帳に合わせるのはシステム的に難しいし、出版社の協力も欠かせないとし、話し合いは平行線をたどった。9月10日までに文書で回答する。
最初に訪れた日販では応対に出た古屋社長、橋専務に対し、日書連大橋会長が「6月20日に出した文書に対しては取次各社からよい返事がいただけなかった。返品入帳を月末までお願いしたいが、輸送時間の問題もあることはわかる。月末までの入帳が困難なら、返品入帳と請求を一緒にしてほしい」と日書連の考え方を説明した。
面屋副会長は5月の大阪組合総代会で出された議論を紹介し、「返品入帳と請求のタイムラグを解消するには、同日精算がわかりやすいのではないか」と指摘。柴崎副会長は日書連の経営実態調査を受けて、月末までの返品入帳を求める中小書店の声が多かったことを説明した。
これに対し、日販橋専務は同社の返品入帳処理について、「従来の10日を3年前に7日まで縮めた。昨年3月時点では5日前。返品が到着してから読むのに1日、データを持ってきて計算するまで1・5日、そこから送品と返品を合わせる作業がある。さらに短縮する努力はしているが、キャッシュフローの問題もあり、一挙にはいかない。覚書上は返品到着日から書籍12日以内、雑誌10日以内の入帳が取り決めで、これには歴史的な経緯がある」と説明した。
請求を返品入帳に合わせてはどうかという提案に対しては「お話の趣旨は分かったが、請求の締めを前にしろというのは技術的に難しい。個々にやれというのも大変だ」(古屋社長)とし、とりあえず検討することを約束した。
続いて訪問したトーハンでは山﨑社長、風間副社長と懇談。「返品締め切り後に大量の送品があり、支払いのために即返品せざるを得ない現状だ。書店は疲弊している」という訴えに、風間副社長は「中小書店を活性化するのはトーハンの最大の課題で、施策に少しずつ芽が出てきたところ。桶川センターを作って業務の最適化を図り、返品入帳処理も5日前まで伸ばした。版元別に振り分けて処理するため最低5日は必要だ」と同社の現状と対応を説明した。
また、「請求を返品入帳に合わせられないか」という日書連の提案に対しては、「書店請求を25日で締めるなら、出版社の請求も繰り上げないと、取次だけに皺寄せが来る」(風間副社長)。「計算すると同日精算は大変な金額になる。トーハンの資産はほとんどふっ飛ぶ」(山﨑社長)と難色を示した。
今後の問題解決に当たっては、月末に商品を大量に送り込む版元の業量平準化問題はじめ、版元も交えた話し合いによる解決が必要という認識を示した。
この日、最後に訪れた栗田出版販売は郷田社長、林取締役、塩沢営業第2部長が一行を出迎えた。
大橋会長が月末29日まで返品入帳している同社の対応に感謝を述べたあと、訪問の趣旨を説明して書店の窮状打破に理解と協力を求めた。
これに対し、栗田郷田社長は「以前、決算時によい数字を出そうと返品入帳を2、3日操作することはあった」と率直に認め、「蓮田の出版共同流通を利用するようになってからは、月末まできちんと入帳している。場合によっては30日まで入帳しているが、作業量や着荷時間でも(入帳が)違ってくる場合がある」と現状認識を述べた。
しかし、請求締め日を返品に揃えられないかという申し入れに対して、郷田社長は「技術的に煩雑だし、システム化しにくい。現実的にはむずかしいのではないか」とする考えを述べ、「(書店の疲弊は理解しているので)、何ができるか、よく話し合っていきたい」と今後の同社の対応を述べた。

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

8月5日神戸新聞ブッククラブ(新聞社と取次3社、県下17書店)の読者招待「お話と映画の会」に参加し、作家の玉岡かおるさんの講演を拝聴しました。関西を離れない理由を、「この地方の言葉とか、風景、風土を誰より知っている。私にしか書けない関西の小説を書く。大阪、阪神、播磨、歴史と独自の文化があり、書くネタは尽きない」と答えておられます(朝日新聞6月23日朝刊)。地元書店としてたいへん心強い作家のおひとりです。海文堂でサイン会をしてくださったのは5年前『天涯の船』(新潮社)刊行時、私、その後の入社で、お会いできず、誠に残念です。
テーマは「女流作家というお仕事」。上映する映画の女性主人公が対人恐怖症の作家で、その見所も交えての文学論です。世界史における女流作家という壮大な内容、古代ギリシアのサッフォーに始まり、紫式部、ブロンテ姉妹、『赤毛のアン』のモンゴメリ、『風と共に去りぬ』のミッチェル、『ハリー・ポッター』のJ・K・ローリングまで。男性中心社会の中で活躍した女性ならではの細やかな感性・表現力を力説されます。なかでも、今年千年紀を迎える『源氏物語』の話は圧巻でした。実名も残っていない女性が、雅な恋愛小説を書き、しかも「もののあはれ」を表現していること、さらに、平仮名という日本独自の文字文化の功績にも言及されました。当初、自作の話かと思っておりましたが、『お家さん』の話は少しだけです。謙虚な方です。
営業K氏、今春異動と、何度お別れ会をしたことか。これで最後、ほんまに終わりと、ズルズル7月末まで毎月付き合いました。やっと後任が決まったとか、何か、すぐ戻ってきそう。
仕事とは別に神戸の本屋の歴史を調べています。図書館に行ったり、長老・先輩方にお話を訊いたりですが、私、れっきとした勤め人ゆえ(フリーやろ、の声あり)、なかなか時間の都合がつかず進みません。海文堂については、小出しにPR紙に書いております。海文堂の出版物で笑い話を一席します。1914年(大正3)淡路出身の賀集喜一郎が海事図書出版と一般書販売「賀集書店」を始めました。戦前の出版記録は敗戦前の神戸大空襲で焼失して、残っている目録や古い本の巻末にある発行書目リストに頼るしかないそうです。確認できる最古の本は16年発行の『摘要産婆学』だとか。もちろん海事書を出版しているはずなのですが、現物・証拠がないのです。このままでは海文堂の出版は「出産」から始まった、ということになってしまいます。出産で始まる人生です。「海」と「産み」で、オチがつきました。

ポケッター、店名シール斡旋

日書連共同購買・福利厚生委員会は年末年始の贈答・販売用に「ポケッター09年版」、名入れ印刷の代用に便利な「店名刷り込みシール」を斡旋します。どうぞご利用ください。頒価すべて税込み。
◇ポケッター09(78×127×3㍉、のし袋付、送料込み)
①店名なし=1セット(百部)7800円②店名入り=5百部以上(印刷場所は後ろ見返し。のし袋への印刷は不可)。5百部以上・1セット(百部)当たり9400円、1千部以上・1セット当たり8700円、3千部以上・1セット当たり8300円
◇店名刷込みシール(55×25㍉、5百枚以上・百枚単位)
5百枚以上・百枚当たり1050円、1千枚以上・百枚当たり900円、3千枚以上・百枚当たり630円
※「ポケッター店名入り」「店名刷込みシール」の書体は細ゴシック体または明朝体に限る。
ご注文は所定の申込用紙に必要事項を記入の上、所属都道府県組合へ。8月25日締切。11月上旬に取引取次店より配送。

大学図書館の図書整備事業に参入/滋賀総会

滋賀県書店商業組合(平柿宗敏理事長)は7月29日午後4時から近江八幡市のホテルニューオウミで第25回通常総会を開催し、組合員49名(委任状含む)が出席した。
総会は岩根秀樹理事(ますや書店)の司会で進行。冒頭あいさつした平柿理事長は「中小書店が厳しい中、日書連も書店経営実態調査を行い問題対策に取り組んでいる。組合員は昨年から2名減少した。組合として納品している図書館でも、今年度は予算減少になるところが多く、たいへん厳しい状況。また、今まで支部として納入していた公共図書館では、随意契約を結ぶに当たり地方税の納税証明を求めるところが出てきた。これに対応するため、一昨年度から支部登記を行っている。学校図書館への日書連マークの採用促進のほか、組合事業として大学図書館の図書データ整備事業に参入し、日本語はもとより韓国語、中国語、ロシア語に対応するまで技能を向上させている。店売プラス外売の確保が重要であり、組合でサポートしたい」と述べた。
滋賀県中小企業団体中央会・城山事務局次長が祝辞を述べたあと、西川忠夫理事(文栄堂)を議長に選出して議案審議に入り、平成19年度事業報告・収支決算報告、定款の一部変更、平成20年度事業計画案・収支予算案などを原案通り承認可決した。続いて欠員になっている理事の補欠選任を行い、西谷健氏(西谷書店)が承認された。
総会終了後、京都新聞社「お話を絵にするスリップコンクール」表彰を行い、このあと取次や出版社など関係者を交えて懇親会を催した。
(岩根秀樹広報委員)

組合加入促進に取り組む/中山寿賀雄理事長を再選/長崎総会

長崎県書店商業組合(中山寿賀雄理事長)は7月29日午前10時半から諫早市「水月楼」で第21期通常総会を開催し、組合員56名(委任状含む)が出席した。
総会は草野専務理事の司会で始まり、中山理事長があいさつ。「脱会が4件あり、組合員数の減少に歯止めがかからない状態が続いている」と述べ、日書連が作成した「書店商業組合加入のご案内」と長崎組合が作成した「組合加入の具体的メリット」のパンフレットを各支部長に配布。組合加入促進を図るよう要請した。
辻田副理事長を議長に選出して議案審議を行い、事業報告、決算報告、事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認した。このうち、事業報告については中山理事長が「今年9月から文春、新潮の2誌が土曜日発売から金曜日発売になる。一歩前進した」と報告した。任期満了に伴う役員改選では、中山理事長を再選した。
このあと来賓の長崎県中小企業団体中央会の堀脇氏があいさつし、「地域力連携拠点事業」について説明があった。総会終了後、懇親会を行った。
〔長崎組合役員〕
▽理事長=中山寿賀雄(好文堂書店)
▽副理事長=尾崎嘉生(長崎書店)山内俊雄(山内書店)辻田信(博文堂)
▽専務理事=草野義広(くさの書店)
(古瀬寛二広報委員)

日書連のうごき

7月2日情報化推進図書館対応鹿児島県種子島研修会に湯本サポート委員が講師として出席。「子ども読書推進会議」平成20年度総会に大川専務理事が出席。
7月3日「敬老の日読書のすすめ」書目選定委員会に石井総務部長が出席。出版倉庫流通協議会6月定例会に大川専務理事が出席。
7月4日第113回出版今昔会に大橋会長が講師として出席。
7月8日第60回書店東北ブロック大会に大橋会長が出席。再販研究委員会に岡嶋理事ほか役員が出席。
7月9日出版ゾーニング委員会に小澤事務局員が出席。第3回JPO運営委員会に柴﨑副会長が出席。
7月10日第15回東京国際ブックフェアのオープニングセレモニーに大橋会長が出席。情報化推進全国委員長会議。
7月13日関東ブロック会に大橋会長が出席。
7月14日出版サロン会に大橋会長が出席。
7月15日出版倫理協議会に高岡委員が出席。第9回「読売・吉野作造賞」贈呈式に大橋会長が出席。
7月17日「第62回読書週間」標語選定委員会に石井総務部長が出席。
7月22日万引防止実践講座に山口理事が出席。
7月23日各種委員会(指導教育、書店経営健全化、増売、取引改善、流通改善、広報、消費税問題、再販研究、情報化推進、環境改善政策、出版販売年末懇親会実行)。児童書増売「新刊セール」三者会談。日書連共済会運営委員会。
7月24日日書連7月定例理事会。大橋会長ほか役員で公正取引委員会取引企画課並びに消費者指導課を表敬訪問。
7月25日文化産業信用組合理事会並びにJPIC読書アドバイザー講座開校式に大橋会長が出席。
7月28日公取協7月度月例懇談会に柴﨑副会長と影山専務理事が出席。雑誌発売日励行本部・実行合同委員会に長﨑理事と梅木常任委員が出席。
7月29日平成20年度第2回出版平和堂委員会に大川専務理事が出席。
7月30日読進協常務理事会に大橋会長が出席。
7月31日文字・活字文化推進機構肥田理事長を大橋会長が訪問。

営業利益率0・08%に/売上前年割れ11年連続/日販『書店経営指標』

日販は全国108企業510店舗の経営資料を収集分析した2008年版『書店経営指標』(B5判71頁、頒価1575円)を発行した。これによると、売上高前年比は3・89%減と11年連続の前年割れ。損益面では、売上総利益率は0・38ポイント増の24・63%と改善したものの、販売費・一般管理費の増加により営業利益率は0・58ポイント減少して0・08%となった。
調査店510店の売上高前年比は3・89%減と11年連続のマイナス。マイナス幅は前年の1・11%減から2・78ポイント拡大した。立地別に見ると全立地で前年割れに。駅ビルは0・92%減とわずかな下げにとどまったが、駅前は4・54%減と大きく落ち込んだ。このほか、SC内4・83%減、住宅地4・71%減、郊外3・84%減、商店街2・21%減だった。
地域別では、首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏が前年を0・40ポイント下回る1・27%減、地方は3・22ポイント下回り4・45%減となった。業態別では専業が4・46%減に対し複合は3・60%減でともにマイナス。格差は1・34ポイントとなっている。売上増加率別の店舗数構成比をみると、増加率がプラスの店舗は23・6%で、前年より20ポイントも減少した。
損益面では、売上総利益率(粗利益率)は24・63%となり、前年より0・38ポイント増加した。しかしこの改善幅を経費が圧迫したため、営業利益率は0・58ポイント減少し0・08%となった。経常利益率も0・37ポイント減の0・45%で、依然厳しい収益状況となっている。
販売費及び一般管理費は前年より0・96ポイント増加し24・55%だった。販売費は0・31ポイント減少したが、その他の経費が全て増加しており、特に人件費が0・53ポイント増加したのが営業利益率の悪化に大きく影響している。
財務体質の健全性を示す自己資本比率は高いほうがよいとされる。前年の11・54%に対し、今回は0・15ポイント減少して11・39%になった。業態別では専業店が前年より1・69ポイント増加したのに対し、複合店は3・04ポイント減少している。
支払い能力の目安となる流動比率は、前年より2・93ポイント下がって117・92%。業態別では複合店が8・03ポイント減の117・0%で、専業店の118・55%(4・26ポイント増)を下回った。設備投資等の固定資産をどれだけ自己資本で賄っているかをみる固定比率は低いほうがよく100%以下が望ましいが、前年より25・59ポイント悪化して373・26%になった。
正規従業員の年間勤務日数は270日で、前年より1日増加した。業態別では専業が3日減少したのに対し、複合は3日増加している。また、三大都市圏では12日減少したが、地方は7日増加した。
正規従業員の年間総労働時間は2198時間と前年比89時間減少した。一方、パート・アルバイトは20時間増加して1204時間となった。業態別にみると、専業では正規従業員が216時間減少したのに対してパート・アルバイトは30時間増。複合では正規従業員は5時間減少してパート・アルバイトは21時間増加している。
従業員1人当たりの年間粗利益額を示す労働生産性は594万9千円で、前年を22万7千円下回った。地域別では三大都市圏、地方とも前年より減少し、特に三大都市圏は65万円の大幅減だった。業態別でも、専業、複合ともに前年を下回った。
従業員1人1時間粗利益額を示す人時生産性は前年を13円下回る3003円となった。地域別では三大都市圏が前年を464円下回り、地方は147円上昇した。業態別では専業が前年を405円下回ったのに対し、複合は222円上回った。粗利益額に占める人件費の割合を見る労働分配率は48・05%と前年より1・42ポイント上昇したが、4年続けて50%台を下回った。専業と複合の格差は広がり、10・46ポイントとなっている。
年間の売場1坪当たり店売売上高は190万5千円で、前年を23万7千円下回った。13年連続の減少で、ピーク時の333万6千円(1994年)の約6割となっている。業態別では専業が前年より25万円減の208万7千円に対し、複合は4千円減の186万1千円で、両者の格差は前年の47万2千円から大きく縮まり22万6千円となった。

【調査店の内訳】
〈地域別〉
三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)
44企業204店舗
地方64企業306店舗
〈業態別〉
専業(BOOK売上占有比80%以上)
55企業336店舗
複合(同80%未満)
53企業174店舗
〈売上規模別(年商)〉
(%)
1億円未満12・1
1億~3億円未満13・8
3億~5億円未満6・9
5億~10臆円未満13・8
10億円以上53・4
〈収益別〉(%)
経常利益率3%以上
8・2
同1%~3%未満19・7
同0%~1%未満41・0
同0%未満31・1

横書きで読む名作/ゴマブックス

ゴマブックスはケータイ世代に向けた「ケータイ名作文学」シリーズ第1弾として夏目漱石『こころ』(上下巻、定価各735円)、太宰治『人間失格』(定価840円)の2点3冊を発売した。
同社の運営するケータイサイト「おりおん☆」にはケータイユーザーが名作文学に出会う「ケータイ文学」コンテンツを提供しており、今回刊行する2点はランキング上位の作品。
体裁は四六判変形で、本文組版は横組み。ヨコガキなら読む、ケータイでなら読めるという若い世代が手を伸ばすように斬新なレイアウトになった。表紙カバーには映画&ドラマ「赤い糸」の主演で人気を集める南沢奈央を起用。8月20日には第2弾として、夏目漱石『坊ちゃん』、太宰治『斜陽』、芥川龍之介『蜘蛛の糸』の3点を発売する。

2008敬老の日読書のすすめ

読書推進運動協議会は「敬老の日読書のすすめ」として以下の推薦図書をまとめ、リーフレットを作成した。
▽城山三郎『そうか、もう君はいないのか』新潮社▽井形慶子『日本人の背中』サンマーク出版▽渡辺淳一『熟年革命』講談社▽佐藤雅彦『教科書に載った小説』ポプラ社▽新藤兼人『生きているかぎり』日本経済新聞出版社▽松原泰道・石井好子『老いのレッスン』佼成出版社▽NHKにっぽんこころの仏像プロジェクト『にっぽん心の仏像100選(上・下)』NHK出版▽岡田喜一郎『淀川長治の映画人生』中央公論新社▽長岡美代『60代からの住み替えを考える本』実務教育出版▽山田風太郎『昭和前期の青春』筑摩書房▽安保徹『老けない人の免疫力』青春出版社▽垰野尭『われら老人、勝手に生きる心得』ロングセラーズ▽青江美智子『お寺に嫁いでしまった。』扶桑社▽佐藤愛子『わが孫育て』文藝春秋▽瀬戸内寂聴『老いを照らす』朝日新聞出版▽森まゆみ『カラー版「懐かしの昭和」を食べ歩く』PHP研究所▽鷲田小弥太『男の老後力』海竜社▽泥谷玄生・疋田勝也『笑いを届けにどこまでも』家の光協会▽加島祥造『求めない』小学館▽竹西寛子『言葉を恃む』岩波書店▽畠中恵『つくもがみ貸します』角川書店▽林望『ついこの間あった昔』弘文堂▽本田桂子『その死に方は、迷惑です』集英社▽三浦雄一郎・三浦豪太『生きがい。』山と渓谷社▽円満字二郎『昭和を騒がせた漢字たち』吉川弘文館▽上野千鶴子『おひとりさまの老後』法研

「声」/弊店で映画のロケ/草津市・宇野書店・宇野壽晃

夏日の続く暑い中、12坪しかない小さな店に人があふれる一日がありました。
それというのは、漫画家、イラストレーター、作家などとして活躍されている、みうらじゅんさんの自伝的小説「色即ぜねれいしょん」(光文社刊)の映画のロケがあったのです。70年代の本屋の店内風景が必要だったということで当店を選ばれたようです。監督は俳優、ナレーターとしても活躍されている田口トモロヲさん。来夏、「色即ぜねれいしょん」として劇場公開されるようです。
撮影当日は30人位の関係者の方々とトラック3台、大型ワゴン車3台という感じで店の中も外もいっぱいになりました。さらに、ご近所の方々やロケがあるということを知って車で見に来られたお客さんもありました。
映画になったらほんの数十秒のシーンを撮るのにカメラや照明機材の設置のため、また店内の模様替えのためにスタッフの方々は大忙し。扇風機しかないエアコンのない店内はサウナ状態でした。
私も撮影直前にエキストラ出演を求められ、客の後ろ姿で数秒ほど出演。カットされているかも知れませんが。
そのため、2時間位は開店休業状態、でも目の前で撮影現場を見られたので、たまにはこういうのもいいかな。それよりも何よりも、毎日これくらいお客さんであふれる店であったらいいのですが。それを願う毎日です。

市場の伸び悩み続く/2007年度卸売業調査/日経流通

日経流通新聞は7月30日号で2007年度「第37回卸売業調査」を発表したが、全業種合計の経常利益は前年比5・0%減で3年ぶりに減益するなど、消費マインドの後退と原油高による物流コスト上昇の板挟みで苦戦していると分析している。
同紙では「書籍・CD・ビデオ・楽器」をひとくくりの業種に分類し、「市場の伸び悩みが続き、業界全体の売上高は0・3%増。返品増や設備投資の負担などが響き、経常利益は18・2%減と落ち込んだ」と分析している。このうち出版卸売業だけをまとめたのが別表。日販、トーハン、日教販は連結決算。
出版取次で売上げトップの日販は単体売上げは減収だったが、CCCと設立したMPDが業績を伸ばし、連結売上げを押し上げた。また、売上げ3位の大阪屋と4位の栗田出版販売が物流相互利用を柱とした包括的業務提携を結んだことについて「互いの強みを生かし、書店向けサービスの強化と経営効率化につなげる狙い。市場の低迷が続く中で出版取次の再編が進む可能性もある」と分析している。
売上高販売管理費率は大阪屋が7・9%でトップ。以下、太洋社とトーハンが10・4%、日販、日教販が11・0%。一人当たり売上高も大阪屋が302百万円でトップ。以下、トーハン247百万円、中央社162百万円、太洋社120百万円、日教販119百万円、日本地図教販92百万円。

本屋のうちそと

お盆の休配日を利用して、夫婦で有馬温泉へ一泊旅行に出かけた。秋に予定していた銀婚旅行を繰り上げたもので、高校野球と五輪で売上が期待できないお盆に営業していても仕方がないかと判断したもの。
私自身、29歳で始めた本屋稼業も60歳を過ぎても続けているとは当初は考えてもみなかった。新婚旅行から帰って以来、正月の元旦だけを休業する毎日によく付いてきてくれたと感謝すると共に、子供達の就職までの長きに渡った戦友と行く末を語り合う機会を持ちたいと考えたからだ。
本屋の売上が毎年低下していく中、成長路線として出店を繰り返してきたナショナルチェーンでは、拡張が見込めなくなるとたちまち経営が行き詰まり、本社社屋の売却や店舗規模の3分の1への縮小などと伝えられている。その中で、取次は生き残りを賭けて帳合替え競争に血道を上げている。巷間伝えられている市場規模は、出版社出庫総計だろう。実需は、大規模店の出店在庫を差し引くとかなり寒々しい数字となるはずだ。ナショナルチェーンの出店が鈍化することが見込まれるこれからは、統計上のマイナス成長は加速度的になるだろう。
当店も後継者がない以上、せいぜいあと15年ほどで手仕舞いをせざるを得ない。29歳からの本屋稼業に未練はない。滔々とした淘汰の社会摂理に身を任せる覚悟を夫婦で確認できた温泉行となった。(井蛙堂)

話題の本

◆『イタリアの図書館』
奈良県立医科大学、鳥取大学医学部図書館を経て鳥取短期大学で図書館情報学、図書館利用教育を教える宍道勉氏の著書。トリノ国立大学図書館、ミラノ市立中央図書館の機構、サービスを詳しく紹介するとともに、イタリアの図書館法を取り上げる。画一的な日本の図書館と異なり、歴史や地域に対応して個性的な表情を持つのがイタリアの図書館の特徴。翻ってわが国の図書館の運営、役割、思想を問い直す。四六判上製266頁、定価本体1800円、今井書店刊。