全国書店新聞
             

平成20年2月1日号

メンテルス、2月末で解約へ

日書連共済会が契約していた会員制宿泊施設、豊友倶楽部「メンテルス」は、昨年の利用数が巣鴨、大塚の2カ所合わせて15室と減っていることから、共済会理事会は2月末で同社との契約を解除することを承認した。豊友倶楽部に対しては、これまで年間管理費として5口分35万円を支払っていた。

春の書店くじ実施要領

▽実施期間平成20年4月20日(日)より30日(水)まで。書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数600万枚。書店には1束(500枚)3750円(税込)で頒布
▽申込方法返信用申込書に必要事項を記入し、束単位で所属都道府県組合宛に申し込む。締切は2月20日
▽配布と請求方法くじは取次経由で4月18日前後までに配布。代金は取引取次より請求。
▽当選発表5月23日。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品総額8920万円、9・8本に1本
特等賞=タイ5日間の旅ペアご招待60本
1等賞=図書カード1万円600本
2等賞=図書カード又は図書購入時充当1千円1800本
3等賞=同5百円1万2000本
4等賞=図書購入時に充当百円60万本
ダブルチャンス賞=図書カード1万円100本
▽賞品引換え特等賞は当選券を読者より直接日書連に送付。1、2、3、4等賞は取扱書店で立替え。図書カード不扱い店または品切れの場合は、お買い上げ品代に充当。ダブルチャンス賞は7月5日(当日消印有効)までに読者が直接日書連にハズレ券10枚を送付
▽引換え期間読者は5月23日より6月30日(消印有効)まで。書店で立替えたくじは7月31日までに「引換当選券・清算用紙(発表ポスターと同送)」と一緒に日書連事務局に送付
▽申込み書店特典 組合経由の申込店から抽選で3店3名にタイ5日間の旅無料随行員。
▽無料配布店頭活性化の一環で組合加盟店全店に書店くじ50枚、ポスター1枚を無料配布

賦課金10月に見直し/組合員数減少に応じて/日書連

日書連は1月25日午前11時から箱根・湯本冨士屋ホテルで新年初理事会を開催した。理事会では、数年にわたって各県組合の組合員数が減少しており、4月1日現在の組合員数で賦課金が決まるのはおかしいという声に応えて、10月1日に組合員数を再調査し、これに応じて賦課金を減額する案が提示された。
〔賦課金徴収方法〕
従来、各都道府県組合の賦課金は4月1日現在の組合員数に応じて決まってきた。しかし、日書連の組合員総数は昭和61年の1万2935店をピークに減少が続き、期中に廃業・脱退する組合員が増加していることから、賦課金見直しを求める声が上がっていた。
この問題を検討してきた井門財務委員長は「日書連予算を組む必要から4月1日現在の組合員数を基準にせざるを得ない」としたが、①当初、4月1日現在の組合員数で賦課金の半額4千円を仮払いし、②10月1日に同日現在の組合員数を調べて賦課金を算出、仮払い分との差額を収めるという提案を行った。今年5月の日書連定時総会に「賦課金徴収方法」の変更案を提出し、成立を求める。
〔政策審議会〕
本年も組合活性化資金として1組合上限20万円まで補助金を拠出することが発表された。2月12日までに活性化の具体策を明示して日書連に申請する。総額350万円。
〔取引改善〕
日書連は昨年10月から12月までの3カ月間、新潮社、角川書店、文藝春秋、講談社、光文社の5社の文庫ランク配本について調査を行った。この結果、①初版部数10万部クラスの新潮社Aパターンは12月に1点、Bパターンも1点しか出版されていない、②L以下の配本パターンでは年間8百~千5百枚未満の書店ランクは配本がゼロになるなどがわかった。
柴﨑委員長は「文庫の初版部数が抑えられており、この辺のところを出版社に聞いていきたい」と、今後の方針を説明した。
草思社の倒産問題については、東京組合が応援フェアを企画してセット注文の申込書を流したが、その後出荷停止となり中断している。早い対応をとったTS流通組合だけは34店で応援フェアを展開していると報告した。
また、映画化が決まったなどで重版した本を取次が独自に見計らい配本した場合でも有事になれば返品を取らないケースがあり、この問題について、取次と話し合っていきたいとする考えを示した。
岡嶋理事は「注文していないのに送ってきて、有事だから請求するのはおかしい。エクスメディアの駆け込み注文も取次の負債を書店にかぶせるもの」と強く批判。越石常任委員は「取次は版元に30%ほど支払猶予している。その分を書店に還元すべきだ」と述べた。柴﨑委員長は「個別の対応でなく、業界のルールとしてきちんと処理するよう求めていきたい」と説明した。
〔書店経営健全化〕
都道府県組合の役員構成を調査した結果が中山委員長から報告になり、42組合からの報告を集計したところ、女性理事は全国で24名にのぼるが、九州では女性役員は1名しかいないと発表された。
12月末現在の組合員総数は前月比17店減って6079店となった。年度初めの昨年4月1日対比では251店のマイナス。
〔消費税〕
面屋委員長から消費税上げをめぐる最近の情勢として、朝日新聞が社説で消費税上げを示唆したこと、額賀財務相が1月18日、衆参両院の本会議で税制の抜本改革について「早期に実現を図る」と意欲を示したことを報告した。

公共図書館の業務委託/各県組合で意欲的に研究/1月理事会

〔情報化〕
書店データベースの各県組合による点検作業は宮崎、鹿児島、秋田の3組合が終了し、残りは福島、埼玉の2組合だけとなった。
ICタグについては23日に書店部会が開かれ、大手書店14法人で年間万引き被害額を集計して経済産業省に報告することになった。14法人で1500~2000店舗あり、年間2~3百億円の被害があると予想される。
図書館納入問題では青森組合鶴谷理事長から①三沢市立図書館が指定管理者制度を導入し、TRCが業務委託されたこと、②八戸市も地元書店を排除する動きがあり、八戸市教育長に陳情していることなどを報告した。
井門委員長は「各県組合が指定管理者に手をあげても図書館運営の実績がないことが問題になる。既存業者とジョイントすることも考えられるので、委員会で検討したい」と説明した。
近畿ブロックは1月24日、千代田区立図書館、ブックチェーンと、同社が指定管理者として運営している大田区立多摩川図書館、六郷図書館を見学したことが報告された。鹿児島組合は12月7日に指定管理者制度の勉強会を開催したのに続いて2月6日にはトーハン、日販の図書館システムについて勉強会を行う。
〔流通改善〕
女子栄養大学出版部は昨年12月19日付けで「売上カード郵送による報奨金のお支払いについて」を日書連に送付し、「平成20年2月末日到着分をもって売上げカード郵送による報奨金支払いを中止する」と通知してきたことを藤原委員長が報告した。
同文書では売上げカード郵送分の報奨支払いを中止する理由として、①POSレジによる売上データ伝送が増え、95%の書店からネット配信されている、②移行期間として5年以上、売上げカード郵送に対応してきたと説明。日書連から各書店組合へ通知することを求めている。
藤原委員長は「95%がネット配信というのは書店数なのかデータ量なのかわからないが、(POSレジを持たない書店を)切捨てることになる可能性があり、他の出版社の状況も調べてみたい」と述べた。木野村理事は「一括採用分の場合など、いちいちPOSレジを通していない。この分も報奨の対象にしないのか」と疑問を投げた。
〔再販問題〕
岡嶋委員長から「謝恩価格本出版社ネット販売フェア」について、1月8日、15日と委員会で検討を加えたことが報告された。この結果、①在庫僅少本の定義が不明確で、各社各様である、②一物二価を防ぐ対策が必要で、ネットで市場に出ることは読者の定価への信頼を失わせる、③出品図書は取次、日書連のホームページで公表すべき、④弾力運用は読者に対してのもので、時限再販、部分再販を活発化させるべき――などの考え方をまとめ、1月29日の出版再販研究員会に提起する。
愛知組合からは『週刊ダイヤモンド』『プレジデント』『東洋経済』などの経済誌が長期講読割引をうたい、書店の仕入値段より安く販売しているのは問題ではないかと疑問の声が上がった。
大橋会長からは「各県組合からの意見をどんどん出してもらえば、そういう意見が出ているということを出版社にも公取にも伝えていける」と述べたほか、西村理事は「長期講読割引自体は流れなので止むを得ないのではないか。むしろ書店の側からも取次のシステムを利用するなどして長期割引導入を考えるべきではないか」と問題提起した。
〔読書推進〕
中学生向け読書ガイド「中学生はこれを読め」の製作について、各県組合にアンケートをとったところ32組合から回答があり、現在「キャンペーンを実施している」が5組合、「今後やりたい」が21組合にのぼったと説明があった。
谷口委員長は、先行して取組んでいる北海道組合、熊本組合の予算を明らかにしてもらうとともに、内容の一部差し替えなどで経費をかけずに冊子ができる方法を提示したいと、今後の取組みを説明した。
また、NPO法人ブックスタートの図書納入問題について、秋田組合和泉理事は「出版社から原価納入といいながら、出版社65掛出しなら取次出しと変わらない。今後、通常ルートで流通させるべきではないか」と問題提起があった。
大橋会長は「当初、呼び水として特別条件で取組みがすすめられた経緯がある。ここまで自治体に拡大してくると、(今の条件で)適切かどうか疑問がある」として、2月委員会でブックスタートと話し合って問題点を詰めていく意向を示した。
〔増売〕
昨年実施した読書週間書店くじの特賞当選者は全国から17名(別掲)が名乗りをあげたと舩坂委員長が説明した。
4月の「春の書店くじ」は、443万枚販売を目標に実施する。実施要綱は1面掲載。
〔福利厚生〕
読書週間書店くじの特賞当選者とともに行く「台湾周遊4日間の旅」について、組合書店からも参加者を募集すると中山委員長が報告した。旅行期間は5月23日から26日の3泊4日で、台北2泊、高雄1泊。旅行費用10万1900円。〔定款改定〕
日書連定款の改訂は1月9日、経済産業省に変更届けを提出したことが鈴木委員長から報告された。変更届が了承されれば、5月の日書連定時総会に改訂案を提出する
〔指導教育〕
1月22日付けで雑協から「裁判員制度実施にともなう雑誌の事件報道に対する考え方」が発表された。来年に迫った裁判員制度実施を前に、新聞協会、民間放送連盟は実施に伴うガイドラインを公表したが、雑協は新たなルール作りが必要とは思わない。協会には雑誌編集倫理綱領があり、裁判員制度そのもののあり方を注視していくという。

平成19年秋の書店くじ特賞当選者

旭川市・村川久美子(アラモアナ)、旭川市・佐藤永一郎、会津若松市・安倍玲子(坂内書店)、柏市・清水孝昭(WINGBOOKCENTER)、柏市・染野翔(文教堂書店イトーヨーカドー柏店)、佐倉市・小熊明(学友堂)、南埼玉郡・倉持沙織、横浜市・篠田大助(有隣堂ルミネ店)、豊島区・那須江身子(ブックタウン)、西八代郡・進藤陽子、見附市・丸山奈穂(上野屋書店)、松本市・佐々木昌弘(紀伊國屋書店)、大阪市・大西直美(紀伊國屋書店梅田店)、貝塚市・井上章子(貝塚中野書店)、豊中市・元岡由紀子、福岡市・伊藤みどり、筑紫野市・関口紳二(紀伊國屋書店福岡本店)

12月期売上げ96.7%/12カ月通して前年割れ続く/日販調べ

日販経営相談センター調べの昨年12月期書店分類別売上げ調査は、平均96・7%となった。これで昨年は
1月から12月まで毎月前年の実績を下回ったことになる。
ジャンル別ではコミックが94・8%と不調で、10月以降3カ月連続して前年割れ。ビジネス書のみ前年を上回っているが、前年の数字は90・7%で、伸びているとは言えない。
文庫は『誰か』(文藝春秋)、『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)が好調だったが、わずかに前年を下回った。文庫は3月以降、10カ月連続の前年割れ。
実用書は『ミシュランガイド東京』(日販IPS)が好調だったが、前年のヒット『ポケットモンスターダイヤモンド・パール』シリーズの影響を受けてマイナスとなった。新書は『女性の品格』に続き『親の品格』が好調。
12月の客単価は平均1170・9円で前年並み。

業界内外呼応して読書推進/出版販売新年懇親会で大橋会長

日書連が主催する第54回出版販売新年懇親会が1月25日午後5時半から箱根の湯本富士屋ホテルで開催され、出版社、取次、書店など総勢135名が出席した。懇親会では日書連・大橋信夫会長、出版社を代表して書協・小峰紀雄理事長、取次を代表して取協・山﨑厚男会長が年頭あいさつ。雑協・村松邦彦理事長の発声で乾杯した。
〔音読の大切さ伝えよう/日本書店商業組合連合会会長・大橋信夫〕
第54回の出版販売新年懇親会は135名にお集まりいただいた。だが年々人数が減ってきており、この会を今後箱根でやるかどうか、今回参加されなかった方々も含めてアンケートを行うので、忌憚のないご意見をお願いする。
ここからが本来のご挨拶ですが、出版業界が厳しいのは言わずもがなだ。何度も顔を合わせるたびに厳しい、厳しいと言っていると本当にこの業界はだめになってしまう。私は新年を迎えてからこちら、明るいことを言い合えばやがては明るくなると言い続けてきた。
出版業界では、本をたくさん売るためには読書推進運動が必要だということで、多くの皆さんが読書の大切さを訴え、読者を拡げようと努めてきた。その結果がだんだん外側まで伝わってきたと思う。ブックスタートや朝の10分間読書などで幼い頃から読書の習慣をつけてもらおうとしてきたし、「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め!」も全国に拡がりだしている。そういった運動が、我々業界の人間だけでなく、周辺の人も巻き込んでやっていただくようになって来ている。
また、昨年は文字・活字文化推進機構が設立され、業界内外が呼応する形で読書運動をやっていこうという体制が整った。今後実際にどう活動していくかというところで、出版業界だけでなく周りを取り込んでの動きが始まっていると感じる。これはまさに我々に対して追い風が吹いているのだと思う。
文字・活字文化推進機構の設立総会で、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が、アルツハイマー病の治療に本の音読が効果があるのだという、印象に残る話をした。川島教授はアルツハイマー病でどういうことが起こるのか、直すにはどうしたらよいのかを研究している。一番大事なのは脳の前頭前野を活発に働かすことで、ここを訓練することがアルツハイマー病の進行を食い止め、やがて改善につながるのだという。今までアルツハイマー病を改善する方法はなかったが、本の音読が良いのだということを発表した。皆さんも会う人ごとに、本の音読はアルツハイマー病の改善につながるんだということを言っていただきたい。その人がまた別の人に伝えれば鼠算式に広がる。そういうことを声を大にして言っていくことで本の売上げ増大につなげていきたい。
〔知恵を集め共存共栄を/日本書籍出版協会理事長・小峰紀雄〕
今年は、元気が出る希望の年に一歩踏み出せるよう皆さんと一緒に頑張りたい。今日は新宿からロマンスカーでやってきたが、『雑草たちの陣取り合戦』という本を思い出しながら、雑草や樹木を眺めていた。多種多様な植物は生き残るためにいろいろな知恵を出し、陣取り合戦をしている。出版業界もやはり陣取り合戦をしているけれども、共存共栄を求めていく。本は多種多様に出版されて多種多様に届けられており、この状況をしっかり追求せねばならない。出版業界は苦しく、今までの矛盾が今年は一挙に出てくると思うが、知恵を集めて親和力を発揮することだ。しっかり話し合い、全体が繁栄するように向かっていく必要がある。
植物は光、水、養分がないと育たない。出版業界でいうならば、それに当たるのが読者と読書環境だ。これはだいぶ明るい方向に来ているのではないか。昨年設立された文字・活字文化推進機構は10年、15年の積み重ねでできたものだ。93年の全国学校読書調査によると、1993年は中学生の約60%が1カ月に全く本を読んでいなかったが、去年は40%に減っている。そういうことが本を支えていくだろう。
去年気が付いたのは、辞書や文学全集、歴史などベーシックになるような本が売れてきたことだ。少し違った状況が生まれてきているのではないかと思う。読書環境を作っていくために、文字・活字文化推進機構は今年はその具体的な課題に取り組んでいく。再販制度の維持や消費税対応、図書館の環境整備などに取り組んでぜひ成果を挙げたいと思っている。意見交換しながら課題に向かって進みたい。元気を出してやっていきたいと思う。
〔消費者志向で変革図る/日本出版取次協会会長・山﨑厚男〕
新年会のあいさつでは、もっと自信を持って良いコンテンツを作っていただきたい、取次としても、もっと地域の書店を応援していくと申し上げてきた。それに対し、業界の状況を乗り越えて共存共栄していくということに楽観的すぎないかというお叱りの言葉を頂戴したりしたが、私は必ずできるという確信に近いものをもっている。
昨今の消費者やマーケット、人口構成の変化にもっと対応していかなければいけない。消費者が望んでいることは何かを我々はもっときちんと受け止める必要がある。我々が自信を持って、読者に「こんな面白いものがありますよ」といろいろな提案をし、双方向でやり取りしていくべきだ。
地域の書店を応援するといっても書店が疲弊してしまってはだめだし、肝心の書店が読者から支持を受けられないということであれば応援できない状況になってしまう。だから書店も、取次も、出版社も変わらなければいけない。それは中身をもっと消費者志向に変えなければいけないということであって、決して今ある問題に単純に迎合していくことではない。
次の3つのことが大事だ。1つは読者を創造していくための読書運動の推進。2つ目は再販制度維持のために何をしなければならないかを明確にすること。出版物の多様性と流通販売の多岐に渡るネットワークは、再販制度がバックボーンになって支えている。我々はそれを強く再認識する必要がある。再販の崩壊につながるようなことは戒めていかねばならない。3つ目は地域に密着した書店。地域のお客様の支持を得る存在であり続けるために、書店が、取次が、出版社が何をすべきかをもう一度本気になって取り組む必要が出てくると思う。今それをやらなければ手遅れになってしまう。
読者に支持されるとはどういうことなのか、単純な経済合理性だけでなく、出版という奥の深い世界をもっと読者に提示して、クオリティが高く楽しいコンテンツを喜んで買ってもらえるように、もう一度再構築していく必要があると思うし、そこが我々の最後のチャンスだと思っている。
〔第54回出版販売新年懇親会出席者〕
〔出版社〕
あかね書房・岡本雅晴、秋田書店・村山光磨、岩波書店・後藤勝治、潮出版社・浮田信行、旺文社・加藤彰、オーム社・村上和夫、雄鷄社・五木田一太、角川グループパブリッシング・貴志学、角川SSコミュニケーションズ・大野隆弘、河出書房新社・岡垣重男、学習研究社・糸久哲郎、金の星社・斎藤健司、くもん出版・加藤康、グラフ社・三浦一馬、研究社・高野正範、講談社・浜田博信、光文社・前田正三、小峰書店・小峰紀雄、三省堂・中川裕二、サンマーク出版・竹下直光、同・木村欣悦、集英社・奥脇三雄、主婦と生活社・古川一夫、主婦の友社・村松邦彦、同・藤井孝行、小学館・大住哲也、小学館パブリッシング・サービス・加藤醇司、祥伝社・石原実、少年画報社・小川敬司、昭和図書・大竹靖夫、新潮社・木島秀夫、JTBパブリッシング・宮崎裕、聖教新聞社・高橋康隆、青春出版社・山口稔、誠文堂新光社・清水敏、世界文化社・佐藤秀人、大修館書店・高柳健治、第三文明社・大島光明、筑摩書房・菊池明郎、中央経済社・山本憲央、中央公論新社・吉村治、中経出版・小崎保行、東洋経済新報社・高畠好夫、徳間書店・岩渕徹、日本実業出版社・吉田啓二、日本文芸社・窪田寅男、農山漁村文化協会・阿部伸介、白泉社・菅原弘文、博文館新社・大橋一弘、評論社・竹下晴信、PHP研究所・仲野進、福音館書店・塚田和敏、双葉社・戸塚源久、ブティック社・楢原和人、文英堂・益井英博、文藝春秋・名女川勝彦、平凡社・土岐和義、ベストセラーズ・松村英彦、ベネッセコーポレーション・木幡延彦、法研・土居国明、芳文社・伊東朋視、マガジンハウス・稲垣学、リイド社・古屋義人、リクルート・平田直大
〔取次会社〕
トーハン・山﨑厚男、同・風間賢一郎、日販・古屋文明、同・橋昌利、大阪屋・西洋一郎、栗田出版販売・郷田照雄、中央社・外山義朗、日教販・河野隆史、協和出版販売・雨谷正己
〔業界関係〕
日本図書普及・倉園夏樹、出版輸送・手島寛、AIU保険会社・佐藤護、出版ニュース社・清田義昭、新聞之新聞社・片山昂士、文化通信社・近藤勲、新文化通信社・丸島基和

店頭売上アップで業界盛り上げよう/宮城合同新年懇親会

宮城県書店商業組合と出版みちのく会は1月7日、仙台市青葉区のホテルメトロポリタン仙台で合同新年懇親会を開き、書店20名、出版社27名、取次10名、運輸会社3名が出席した。
新年会はベネッセコーポレーション・富山純一氏の司会で進行し、宮城組合・藤原直理事長が新年あいさつ。「年頭のこの会のあいさつで、毎年、今年こそ業界全体が盛り上がるようにと言ってきたが、なかなか思うようにならなかった。今年こそ鼠年の好調期に乗って、書店、取次、出版社が協力して店頭売上アップを図りたい」と述べた。
続いてトーハン東部支社執行役員の藤原敏晴氏が、昨年完全稼働を果たした桶川物流センターについて説明、書籍販売で書店を強力に支援していくと語った。
乾杯の発声は日販の高瀬伸英氏。宮城県書店業界の隆盛と出席各社の発展を祈念して乾杯した。しばし歓談の後、出席各社が檀上で自己紹介・自社PRを行い今年の抱負を語った。中央運輸・都築俊雄氏が中締めを行い、出席者それぞれが2008年の書店業界への期待を胸に解散した。
(佐々木栄之広報委員)

長谷川理事長が辞意表明/読書推進等で一定の成果/神奈川

神奈川県書店商業組合は1月22日に横浜市中華街の華正楼で新年理事会と9支部合同新年懇親会を開催。長谷川義剛理事長が「3月末をもって理事長職を辞任する」と表明した。
理事会の席上、長谷川理事長は「健康上等の理由で自らの出処進退について以前から考えていた。最重要課題として取り組んできた読書推進運動と青少年健全育成について一定の方向性が見えたこと、組合組織および事務局体制の整備についても概ね目途がたったことから、このほど理事長職から退くことを決意した。辞任の時期については、神奈川組合は県行政とのつながりを重んじており、県に迷惑をかけないため、また組合諸事業の混乱と停滞を避けるため、県の年度末である3月末とさせていただきたい」と辞意表明に至った経緯を説明した。
読書推進への取り組みについては「神奈川組合は早くから活字文化振興に熱心に取り組んできた。子ども読書推進フォーラム、ブックスタート事業、大好きな本絵画コンクールなどに継続して取り組み、県の読書人口は着実に増加。東京に次ぐマーケットへと成長している」、青少年健全育成については「神奈川県は青少年健全育成条例を全国に先駆けて作り、組合と県民部青少年課の結びつきが強い。区分陳列では書店の自覚と責任ある行動が求められている」と述べ、今後も県当局と連携して諸課題に取り組むべきと指摘した。
議案審議では、第2回「大好きな本絵画コンテスト」について報告。県内在住、在園の保育園・幼稚園児に好きな本をテーマに絵を描いて送ってもらおうというもので、受賞者には表彰状や図書カードを贈呈する。応募期間は4月15日まで。入賞者は4月下旬に神奈川新聞紙上で発表する。筒井正博増売委員長は「地元の保育園・幼稚園にチラシを配布してほしい」と支部単位での協力を求めた。清水屋情報化推進委員長は県組合ホームページ(http://books.honkana.net/)を開設したと報告した。コンテンツは組合事業のPR、組合加入書店名簿、各書店からのお知らせ、地域イベント情報など。
午後5時からの懇親会には書店、出版社、取次など総勢114名が出席。あいさつに立った長谷川理事長は3月末に辞任することをあらためて報告し、「今後も組合に多大なご支援を」と述べた。
来賓の岩波書店・宮本清実氏は「広辞苑は好調なスタートをきることができた。最近は他の専門書も好調に推移しているようだ。これも書店皆さんの支援あってこそ。今後もご協力をお願いしたい」とあいさつ。トーハン神奈川支店・木下雅浩支店長の発声で乾杯した。

『塩の街』など5作品/大学読書人大賞の候補作決まる

全国の大学文芸サークルに所属する学生たちが、大学生に読んでほしい本を投票と評論と議論によって選ぶ「大学読書人大賞」を設立。全国の約170大学・250の文芸サークルに投票を呼びかけたところ29の文芸サークルから投票があり、『塩の街』(有川浩著、メディアワークス)、『人類は衰退しました』(田口ロミオ著、小学館)、『青年のための読書クラブ』(桜庭一樹著、新潮社)、『1000の小説とバックベアード』(佐藤友哉、新潮社)、『幼年期の終わり』(A・C・クラーク、光文社)の得票上位5作品を大賞候補作品に決定した。
この賞は、若者の活字離れが進む中、多くの学生が面白い本と出会うきっかけを作りたいという趣旨で設立されたもの。主催は同賞実行委員会と出版文化産業振興財団(JPIC)。実行委員会は法政大学文学研究会の鈴本万有理さんを委員長に6大学の文芸部員で構成。JPICは同大賞の実施をサポートする。
今後は全国の文芸サークルに再度呼びかけ、5作品の中から最も大学生に薦めたいと思う1作品を1600字以内の推薦文をつけて選んでもらう。送ってもらった推薦文を「大学読書人大賞」のサイトに掲出。参加サークルは推薦文を読んで、5作品それぞれに最もいいと思う推薦文を1つずつ選んで投票。投票の結果、最も票の集まった推薦文を書いた5つのサークルの代表者が東京の会場に集まり、5月連休期間中に公開討論会を開いて大賞を決定する。6月に大賞受賞作家を招いて授賞式を行い、作家と文芸サークル員の交流の場とすることを計画。また、書店等での店頭イベントも予定している。
1月18日の記者会見で、鈴本実行委員長は「大学生による大学生のための賞。候補作品選定では当初想定した以上の応募があり、第1回目としては順調なスタートをきることができたと思う」と話した。

副理事長を4名に増員/読書推進事業拡大に対応/大阪

大阪府書店商業組合は1月19日午後2時から組合会議室で定例理事会を開催した。主な審議事項および報告事項は以下の通り。
〔定款規約等改定委員会〕
昨年は税務手続き見直しの一環として会計年度の締め日を2月末に変更して、その条文のみ定款を変更登記した。新年度は中小企業協同組合法の改定に合わせた定款変更登記をする。主な改定点は、読書推進等の組合業務が増えたので、副理事長を4名に増員する。組合員が減少したので、総代定数を見直す。「役員選挙・選任規約」では、理事を選挙で選出する場合の投票方法を「定数制限不完全連記方式」に変更する。
〔広報委員会〕
「組合だより」新年号の巻頭記事「『女性力』で新しい波を!」が好評だった。引き続き斬新な企画を提供していきたい。
〔経営活性化・書店環境改善委員会〕
日本雑誌協会発行『これで雑誌が売れる』を作成した同・販売委員会「雑誌名人発掘」プロジェクトの名女川勝彦座長らを招いて、大阪トーハン会が2月25日に雑誌販売研修会を開催する。日販、栗田も漸次開催予定。これらに参加できない人のために組合でも開催を検討する。
〔学校図書館・IT関連委員会〕
中高一貫校の大阪市立咲くやこの花中・高校新設にあたり、図書室用の図書を「図書マーク」付での入札があった。組合は加盟書店の商業環境を守る観点から、「日書連マーク」添付を条件に応札した。
〔中央図書館等納品委員会〕
12月から1月にかけて複数回、大阪市立中央図書館を訪問、意見交換した。今後、教育委員会発注の案件は入札制、合い見積もり制に大幅移行するので、入札参加希望者は「入札参加資格審査」を受ける必要があると説明を受けた。登録を希望する業者は「大阪市電子調達システム」ホームページから申し込むこと。受付期間は2月1日から29日まで。(中島俊彦広報委員)

JPIC読書アドバイザー・小谷松恵理子

◇2歳から/『ばいばい またね』/さとうわきこ=作・絵/金の星社893円/2007・7
おはよう、こんにちは、いただきます、ごちそうさま、おやすみなさい、そして「ばいばいまたね」。子どもたちが出会う「あいさつことば」が楽しく散りばめられています。絵本を読んだあと、お子さんとも挨拶をどうぞ。一日の始まりは挨拶から、そして言葉の始まりも挨拶からです。
◇4歳から/『うみのおふろやさん』/とよたかずひこ=作・絵/
ひさかたチャイルド 1575円/2007・6
ひろーい海のどこかにおふろやさんが出来た、らしいです。さかなやイルカたちも泳ぎ疲れたらおふろに入ってほっこりしている、らしいです。とよた氏のやさしい色合いで、海のおふろの楽しさが伝わってきます。うわさによると「やまのおふろやさん」もどこかにある、らしいです。
◇小学校低学年向き/『いつまでも』/アンナ・ピンヤタロ=作/
たわらまち=訳/主婦の友社1365円/2007・10
こぐまのオリは「おかあさんは、いつまでぼくのおかあさんなの?」と尋ねます。私も(いつまでなんだろう)と、ドキッとしました。おかあさんは優しく答えます。「いつまでもよ」って。オリとおかあさんの会話に引き込まれた私も、親としてほっと安心、心の中が温かくなりました。

北から南から

◇絵本ワールドinながの2008
長野県書店商業組合(赤羽好三理事長)は組合創立百周年記念の一環として2月16日、17日の両日、長野市・もんぜんぷら座で「絵本ワールドinながの2008」を開催する。絵本作家の竹内通雅、きむらゆういち両氏が講演。また、小林いせ子、稲垣勇一両氏が読み聞かせ体験教室を行う。(高嶋雄一広報委員)

三者が協力して夢と希望提供を/北海道新年合同懇親会

北海道書店商業組合・在札取協・在札出版社新年合同懇親会が1月15日午後6時から札幌市中央区のホテル札幌ガーデンパレスで開かれ、60名が出席した。
懇親会では道取次協会の栗田北海道支店・常田克徳支店長があいさつし、「年末年始は当社も売上ダウン。コミック誌の売上不振や灯油等の価格高騰が影響している」と話した。
続いて道組合・久住邦晴理事長は「今、町の本屋は疲れ切っている。どんなに努力しても売上が伸びず無力感に陥っている。このような時にこそ必要なのは夢と希望である。取次、出版社、日書連が協力して全国の書店に夢と希望を提供していくことが求められている」とあいさつした。
乾杯の発声は小学館PS・加藤達美支社長が行い、1時間半ほど談笑。中締めのあいさつは道組合・村上正人副理事長。「広辞苑で国際交流を」をテーマに、海外で日本語を勉強している学生、日本で頑張っている留学生に広辞苑をプレゼントしようと、旧版の広辞苑を組合員書店で集め、北海道組合で責任をもって届ける活動を行っていると報告、乾杯して終了した。(村上正人広報委員)

私の履歴書、書店経営60年/さいたま市・須原屋・高野嗣男会長

明治9年創業のさいたま市・須原屋は今年で創業132年の老舗。高野嗣男会長は戦時中閉めていた店を昭和22年に再開し、以来60年にわたって須原屋を陣頭指揮してきた。子どもの頃から音楽と数字が好きだったという高野会長が1月8日に須原屋研修生OB会で行った講演「私の履歴書、書店経営60年」を抄録する。
〔戦争で閉店、戦後の再開〕
私は1924年、大正13年の生まれです。この2月でちょうど84歳になります。実は五男で、一番上に姉がおり、そのあと男が4人。私が6番目です。ところが不幸なことに、生まれると皆、次から次へと亡くなってしまいました。一番長生きしたのが3歳6カ月。とくに長男の死去に続いて、その3日後に次男も肺炎に侵され続いて死亡する。父は2人の幼児が眠る棺の中にわら人形を入れて、一緒に送り出したそうです。そのあとも三男、四男、皆、生まれて間もなく亡くなる。私が生まれたときに、親は店を継がせるより、高野家を継がせたいと、「嗣男」という名前を付けました。
私自身も大変弱く、小学校3年、4年ぐらいまでは、ほとんど学校へ行けなかった。ところが小学校4年の時に、健康を取り戻した。一人前に動けるようになったのは小学校4年からです。義務教育を終えて、父親が年を取っておりますので、大学までは上がらせられない。せめて中等学校だけは上げようと、実業学校である浦和商業へ入学をしました。学業は正直なところできる方ではなかった。しかし、できる方ではなかったけれども、できない方でもない。(笑)大体普通に卒業した。
小学校入学の翌年、昭和6年に満州事変が勃発し、商業学校へ入ったのが昭和11年。その翌年、12年には日支事変が起きました。商業学校を卒業した昭和16年に大学へ入り、その年の12月に太平洋戦争が始まった。小学校から大学を卒業するまで、ほとんど戦争中です。言うならば軍国主義的な学校教育。学校においても、軍事教練が大変重きをなしていました。
私は、子どものころから音楽を趣味としています。健康になって小学校5年、6年、学芸会・音楽会というと独唱したり、浦和商業へ入ってからはブラスバンド。トランペットを吹きました。戦争を鼓舞するには、ブラスバンドは欠かせない。全国的にブラスバンドのはしりで、埼玉県では浦和商業学校よりほかになかった。コンクールにも出たし、戦地へ行った留守家族の方々をお招きして演奏会を開いたり、浦和商業音楽学校のようでした。
大学でもブラスバンドへ入りました。当時のことですから、なかなか指導者がいないので、私のような者でも学校、工場にできたブラスバンドの指導に当たっていた。
小学校を終えて商業学校へ入ってから、とにかく皆、兵隊へ行かなくてはなりません。「鉄砲を撃つのはいやだから、軍楽隊に行きたいな」と考えていました。当時、大学を卒業しても年齢的には軍楽隊に志願ができるので、早稲田の専門部に入った。
早稲田大学で1学年は無事に終わったのですが、2学年の昭和17年7月20日、突然血痰を吐きました。肺浸潤で休学しなければならん。もう音楽どころではない。父、母にしてみれば、せっかくここまで育て上げた。あとはもう妹一人きりですから、何とか生かしたい。今思い出しますと、本当に心配をかけた。そのお陰でともかく84歳まで来たわけですから、常に父、母の顔が頭に浮かんでならないわけです。
戦争はますます激しくなりました。須原屋の方はといえば、男の店員は軍隊、工場へ徴用される。女子までも徴用される。店を開いても売る人がいない。昭和19年6月、終戦の1年前、ついに須原屋の店を閉じることになりました。
私は2年間休学したあと復学しましたが、今後、どうするかで随分悩みました。復学しても、昭和19年は大学は1学期だけで休み。皆、軍需工場へ動員される。早稲田の学生は大崎にある明治ゴムへ徴用されました。私は病気上がりでしたので、無理だろうと工場への徴用代わりに浦和の藤倉ゴムにできた青年学校でブラスバンドの指導をすることになりました。
ところが、青年学校でブラスバンドの指導といっても、週に2回か3回夜間にやる。それが大学に分かりまして、「そんなことじゃ駄目だ。1日働くところへ転職しろ。元の明治ゴムへ行け」というわけです。それはできないので、大学と関係のあった浦和の安田銀行へ勤めることになった。
その安田銀行のお得意先に私立の浦和商業女学校がありました。こちらも戦争で先生がどんどんいなくなる。そこで校長が銀行にそろばんの先生を派遣してくれと頼んで来られた。この結果、銀行へ勤めながら、週に2、3回女学校へそろばんを教えに行きました。
昭和20年8月に終戦になり大学へ戻ったら、大学で勉強したのは1年半くらいですが、卒業ということになった。卒業しても須原屋は休業中です。銀行は徴用で行ったので、もう縁がない。それでそのまま、銀行から派遣された商業女学校で先生を勤めました。
ところが、大学で1年半ぐらいしか勉強していないので、教えられるわけがない。これはもう一度大学へ戻ってしっかり勉強しなければいけないと、翌年の昭和21年4月に編入試験を受け、大学の商学部に戻りました。女学校はそこで縁が切れると思ったら、校長が大変理解がありまして、「君、週に2回でもいいから学校へ来てくれ」と。教員免状は早稲田の専門部を卒業したときもらっていますから問題ない。店はやっていない。収入の道も、預金の利息と家作から上がってくる家賃、その程度ですから、いくらかでも頂戴できればありがたい。苦学生みたいなものです。
しかし、大学を卒業したらどうするか。店は閉まっている。どうしようと悩みました。主任教授に相談すると、専門部時代に会計学会に入っておりましたので、「計理士になったらどうか」と言われた。戦後は公認会計士制度、税理士制度ができましたが、そういった制度がまだできていない。大学から履修科目の証明をもらえば大蔵省に登録してくれるというので、昭和21年9月、大蔵省に計理士の登録をしました。当時は、計理士を登録すると、税務代理士も付いてきて、税務の代行ができる。卒業したらその道に行こうと思っていた。
戦後、店を再開することは考えていなかったのですが、昔の店員、番頭が軍隊から復員してくると、店は閉まっている。そこで「もう一度再開してほしい」と頼んできたわけです。父も悪い気はしない。また番頭は「若旦那は店なんかやらないでいいですよ。夜、帳面だけ付けてくれればいい」という。そのようなことで、店を再開したのが昭和22年1月5日でした。そのときは、父も白内障で目が悪かったり、年を取っておりましたので、全責任は私の手になったわけです。
〔父の教えは商人の心構え〕
今日の自分の人間性を作る上で一番教えられたのはなんといっても父母であったと思います。両親は大変やかましくて、昔は食事というと畳の上ですから、足を崩すと怒られる。食べ物を粗末にすると怒られる。そういうところから厳しく育てられました。
商売の面では、書店人の前提は商人(あきんど)、商人の前提は人であると随分言われました。本屋がどうのこうのという前に商人というものをしっかり身につけなければいけない。そして、知・徳・体・志が人間を作っていく。志は高く、頭は低くということも商人の道として言われました。そして自立の精神、人に頼らない、謙虚な気持ちが大切であると、厳しい教育でした。
教科書は戦後、昭和23年に検定制度になりましたが、戦前は国定制度で、出版社も東京書籍、大阪書籍、日本書籍の3社が地域を分担していた。埼玉県は東京書籍の管轄で、そこからだけ仕入れた。ところが戦後は一般の出版社が検定出願して、教科書として許可される。最初は大体13社か14社ぐらいだったと思います。埼玉県の国定時代の特約は、私の父親が社長で、ちょうどこの場所にありました。家作と倉庫が15坪ぐらい。事務室などはせいぜい10坪でした。
それが検定になり、そういう手狭な建物ではできない。昭和25年に父の許しを受けて古い建物を壊し、社屋を作りました。そのとき私は専務でしたが、社長室と名付けて、実際は私の利用する部屋を作った。そうしたら父から烈火のごとく怒られました。「商人が自分の部屋を持つとは一体何だ。どうして社員と一緒に仕事をやれぬか。須原屋の店を見てみろ。店員は1日に何十人というお客様を相手にして、一生懸命商売している。トップに立つ者が一体何のために自分の部屋を作るのか」。それは大変怒られたわけです。
私としますと、大学のときに「経営者というものは自分の時間と部屋を持たなくてはいけない。そこで自分の考えをまとめていく。それが本当の経営者だ」と教わった。建て替えるにあたって、マイ・ルーム、マイ・タイムがほしい。そこでマイ・オピニオンをまとめようというつもりでしたが、現場育ちの父親にしてみると「自分一人で考えて何ができるんだ。みんなで一緒にやらなきゃ駄目じゃないか」と言う。では、いつ考えればいいのか聞くと、「自分のことは床の中で考えろ」と言われました。
それで、部屋はできましたが、応接室にして、お客様がみえたとき通す。
今では自分の部屋はありますが、須原屋でも、教科書会社でも、皆と同じところで仕事している。自分の部屋は時間外、あるいは整理した書類を保管しておく場所。商売は常に社員とともにやらなければならないということです。
〔音楽と教育から学んだもの〕
音楽から得たものですが、音楽は曲に対して忠実でなくてはならない。音符をご覧になると、各小節の中に全音符、二分音符、四分音符といろいろな長さがあり、休止符もある。各小節が一つの箱のようなもので、それをていねいに演奏しなければならない。その上にリズム感、ハーモニー感が出てくるわけで、きちんと割り振られている音符通りに演奏しなければならない。それと、聞く人が良いと評価しなくては意味がない。自分でいくら良いと思っても駄目。それには良い耳が必要です。
銀行から教わったことで一番ためになったのも几帳面ということです。仕事の上では特にそうです。一つひとつ仕事を固めていく。一遍に二つを机の上に出さない。一つひとつ整理していく。そういうことは銀行から学んだことです。
学校の教員としては、最初に校長から「子どもを叱っちゃいけないよ。選んで来てもらっている子どもたちを叱っちゃ駄目だ。叱る前に、自分の教え方が悪いのではないかと考えなさい。公立と違って、生徒が来てくれなくては学校は成立しないのだ」と言われました。
その校長は、王子にある西福寺の住職で、後には真言宗豊山派の管長になられた方です。お坊さんだけれども頭が低い。「人の前で小言を言ってはいけない。職員も、大勢の職員の前で言ってはいけない」とよく言っておられました。
私立学校経営の要諦は、校舎、施設が充実していることが第一条件。2番目は子どもたちを多く入学させ規模を大きくする。そうすると自然に学校の名が出てくる。優れた子どもを育てるだけでは学校は発展しない。子どもは大勢いないと、月謝の上がりが違い、校舎も施設もできない。3番目は、優れた教員を採用する。その三つが今日の須原屋の書店経営の原則、支えを成している。
学校の校舎、施設と同じで店は明るく、美しく、立派でなくては駄目です。2番目は、商品がたくさんあること。3番目のよい教員を採るということは、よい店員を育てることに他ならないわけです。
〔会計学が教えてくれたこと〕
私は大学で会計学会へ入っておりまして、商業学校のときから数学と会計学は好きだった。その会計学から学んだことで一番基本的なのは企業会計原則です。企業会計原則は別に法律ではありませんが、実際の実務の中から一つの慣習を基にして、それを理論化したものです。一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則と三つの構成になっている。その根底を成すのが一般原則です。
①真実性の原則うそ偽りがあっては駄目です。ありのまま。商売の面でも私は大切にしています。真実とは何かというと難しい話になりますが、今日真実であっても、翌日真実でない場合もある。むしろ誠実性の原則と言ったほうが分かりやすい。物事を誠実に見るということです。
②正規の簿記の原則正規の簿記の原則は、決まり通りにしっかりやりなさいということです。結論的に言えば、財務諸表の中心である貸借対照表と損益計算書を作り上げることです。作る手順がしっかりしていなければいけない。商売の道でも結果オーライでは駄目だという例です。
③明瞭性の原則3番目は、資本取引と損益取引区分の原則ですが、あまり商売には関連がありませんので、それを抜かすと、明瞭性の原則です。すべて一目瞭然。はっきりしていなくては駄目だ。お店の対応でも、お客様にぐずぐずしてはいけない。
④継続性の原則一度決めたら、その方式によって継続する。継続しないと対比ができない。仕事の場合でも、こっちをやってみたり、あっちをやってみたり、いろいろな方法でやってはいけない。一つの方法を決めたら、その方法でやらないといけない。
⑤保守主義の原則これは安全性の原則とも言えるわけです。人間はどちらかというと、楽観的にできているが、会計原則では楽観主義は駄目で、「これで大丈夫か。これで大丈夫か」と、安全性を確かめながら用心主義でやらなければいけない。
⑥単一性の原則どこに出しても同じだという原則です。税務署に出す財務諸表も、株主へ出す財務諸表も単一でなければいけない。会計学から学んだそういうことも、商売の面では大変勉強になりました。
〔信念と社会的使命の自覚〕
日本の出版業界で基本になるのは再販制度と委託制度です。そして今日発展してきたのは取次機能があったからです。委託制度があるから再販制度が成り立つし、再販制度があるから委託制度が成り立つ。そして取次機能の下で再販制度も維持できるし、委託制度も生きてくる。では取次機能とは何かというと、簡単に言えば配本と代金回収です。これがきちんとできているから、出版社も安心していられる。取次は商売気がない。また、取次に商売気が出たら、果たして再販制度、委託制度が維持できるかどうか。そういう中において、委託商品であっても商品構成などのアドバイスができるのではないかと思うわけです。取次にはもっと商売気を出してもらいたいと思う気持ちと、商売気を出されちゃ困る。この辺が取次に対する希望です。やはり商売だからお互いにもうけなくてはいけないが、委託制度の中においても、返品を少なくする努力は必要です。
書店としては取次、出版社に気に入られるには、販売力がなければ駄目です。それから、返品が少ないこと。たくさん売れて返品が全くないのが理想である。加えて支払いが良いことです。須原屋は販売力、返品はともかく、支払いは最初からずっと100%です。それは財務管理で、損益計算ではない。財務会計が分からなければ駄目で、逆コースですが、100%支払うから返品が少ない。その上に立って売れる。この逆に、たくさん売れなければ支払いも悪い。返品が多いようなら資金も苦しい。常に損益計算より財務管理を基にした考え方が、大切ではないかと思います。
書店経営においては常に自分の店をどうするか考えていなければいけない。人のまねをしては駄目。須原屋の場合には、出店は埼玉県内だけにとどめています。自分の力を考えなくてはいけない。どこでもいいというのは駄目だ。
2番目に書店経営はしっかりした信念を持たなくてはいけない。3番目に社会的使命を果たす。これは景気動向と地域の社会変化の二つを乗り越える。社会的な使命を果たすことによって、出版社、取次、読者の信頼が得られる。地域社会において教育・文化に貢献できることで、「ああ、あの店があればこそ」と言われたい。
4番目に営利欲を出すこと。どん欲に儲けたいという気持ちがないと、ふわふわとやっていては駄目。この「儲けたい」というのは盲目的です。いくらあれば良いというものではない。盲目的な富の蓄積です。しかし、人様に迷惑をかけてではない。人様に喜ばれなければ駄目です。
5番目、私はいろいろなことをやってきましたけれども、仕事だけが趣味です。仕事を離れて自分がない。6番目、自己流にならないこと。とかく自己流になってしまうということです。
7番目、自分の経験から言うことですけれども、数学と心理学に強くなくては駄目です。人の気持ちが分からなければいけない。私はちょっとお目に掛かると「今、この方はどういうことを考えていらっしゃるかな」と自然に思います。
8番目、精選された情報を常に受け入れる素直な気持ちがなくてはいけない。9番目、運が強いこと。それには、運が強いとき運に乗ってこなくては駄目です。運が回ってくるときに準備ができていなければ何の意味もない。運に強いというのはそういう人。あてがわれるものではない。
10番目、私もお陰様で60年、書店経営をやってまいりました。そして業界の発展の中に自分の店の繁栄を考え、あるいは業界の繁栄の中に自分の店の発展を考えてきました。
教科書供給協会、日書連、その他いろいろな団体の役員もさせていただきました。そして業界が良くなる中で、自分の店をどうするか考えてきました。
私の父は80歳と15日を生き、私は2月22日が参りますと84歳になり、高野家で一番長寿を見ることになります。
お陰様で国から藍綬褒章も叙勲も頂だいしました。あまりいさかいなどもなかったし、皆さんにかわいがられて来て今日があると思います。
そういう意味で皆さんに感謝して、私からの遺言と思って素っ裸になり、「私の履歴書」を聞いていただいたわけです。
本日はありがとうございました。