全国書店新聞
             

令和5年1月1日号

書店の存続へ先頭に立つ/「街の本屋」の声、国の政策へ反映目指す/日書連の課題矢幡秀治会長に聞く

コロナ禍の巣ごもり消費で本と書店の価値が再認識された「特需」が終息し、大きく落ち込んだ昨年の出版界。ネット書店との競争や電子書籍の伸長も影響し、書店店頭は厳しい状況が続く。日書連は書店が経営を続けられるよう収益性改善を目指す取り組みを進め、街の書店の声を政策に反映するため自民党の国会議員が作る書店議連への働きかけを強めている。山積する課題にどう立ち向かうか。矢幡秀治会長に話を聞いた。(聞き手=本紙編集長・白石隆史)
〔コロナ特需終息で大苦戦/物価高騰で本の買い控えも〕
――コロナ禍も3年目になりましたが、書店への影響をどのように捉えていますか。
矢幡20年、21年はコロナ禍の巣ごもり需要で児童書や学参などの好調が続き、コミックでは『鬼滅の刃』『呪術廻戦』といったメガヒット作品が相次ぎました。しかしコロナ特需も一服し、21年の後半から売上は以前の右肩下がりに戻りました。コロナ前より厳しいぐらいです。22年5月の大型連休以降は不振に拍車がかかっています。
ウィズコロナの時代に入り、アフターコロナを見据えた動きが社会の色々なところで出ています。長く続いた移動制限や自粛要請が解け、休止されていたイベントやレジャーが再開されてきています。入国制限の大幅緩和や全国旅行支援の開始を受け、観光客も増えつつあります。街中に人が戻ってきた様子がうかがえますが、書店にはなかなか入ってもらえません。来店客数の減少は本当に深刻です。他の娯楽に人々の目が向き、本にはお金と時間を使ってもらえない。書店を取り巻く環境は悪化の一途を辿っています。
――ロシアのウクライナ侵攻に端を発した原油・物価の高騰、歴史的な円安でインフレが加速しています。出版物への影響はいかがでしょうか。
矢幡食品など様々な生活用品が値上げして、人々の家計防衛意識が高まっています。紙の価格高騰で出版物にも値上げの動きが見られます。本を手に取ることを控える人が増えれば書店には大きな打撃です。
〔「読者還元祭」盛り上がる/イベント渇望する読者が店頭に〕
――人々の目を本と読書に向けるためには何をすればいいでしょうか。
矢幡読書推進運動への取り組みをもっと強化する必要があります。昨年は確かに厳しい1年でしたが、11月に少しだけ明るい兆しも見えました。売上は右肩下がりが続いているとはいえ、マイナス幅が縮小したのです。要因はいろいろ考えられますが、出版業界が一丸となって取り組んだ一連の秋の読書推進キャンペーンが売上に貢献したのは間違いないでしょう。
10月27日から11月23日までの28日間、全国一斉に新たな読書推進キャンペーン、秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」を始めました。10月27日は文字・活字文化の日。11月3日は文化の日。この日をはさんで前後1週間は第76回読書週間。11月1日は日書連が事務局を務める「本の日」です。日書連が「本の日」実行委員会とコラボした「秋の読者還元祭」も「BOOKMEETSNEXT」と同じ期間に開催されるなど、「読書の秋」を盛り上げるイベントが全国で多数行われました。業界や団体の枠を超えた読書推進の動きがこれほど大きな規模で展開されたのは初めてのことだと思います。コロナの落ち着きもありイベントに飢えたお客様が書店に足を運んでくださるようになり、本の売上にも結びついたのは大きな収穫でした。
1書店や1組合だけでは厳しいけれども、全国の書店が一丸となって取り組んでいることをうまく情報発信すれば、お客様が店頭に足を運んでくださるという感触はつかめました。「本屋に行ったら面白いことをやっている」と思っていただけるよう、イベントによる集客については積極的に考えていきたいです。
――書店くじに代わる日書連の新しい読書推進事業としてスタートした読者還元祭は2年目を迎えました。21年の春と秋、22年の春と秋と計4回実施した手応えをお聞かせください。
矢幡読者還元祭では、従来の書店くじから、応募サイトにつながるQRコードを印刷したしおりを配布する形に改めました。賞品提供も、書店店頭で立て替える方法から、図書カードネットギフトを当選者に直接送信する方法に変更しました。デジタル化を一気に進めたこともあり立ち上がりは苦労しました。
秋については本の日の図書カードキャンペーンと応募から賞品発送まで一体化したことが力になって、応募件数は21年の6万7313件から22年は11万9938件へと大幅に増加しました。22年は「BOOKMEETSNEXT」をはじめ出版業界全体が一体となって読書推進に取り組んだことも功を奏して、読者還元祭も大きく伸びたのだと思います。
――今後の展開は。
矢幡店頭活性化で成果をあげることはもちろんですが、図書カードネットギフトの認知度向上も重要なミッションと考えています。読者や書店の意見を聞きながら企画内容を改善し、定着と発展を図っていきたいと思います。2年やって実感したのは、業界3者が力を合わせると大きな力になるということです。もっとまとまることができるように努力します。
〔「入ってよかった」と思われる組合作る/加入メリット追及に注力〕
――書店の閉店に歯止めがかかりません。全国の組合加盟書店数も1986年の1万2953店をピークに、22年は2803店まで減少しました。組織強化対策について考えをお聞かせください。
矢幡組合に入っていない書店に声掛けして組合員数を爆発的に増やすことは現実的には難しく、組合員数をこれ以上減らさないことにも同時に注力しなければなりません。そのためには「組合に入っていてよかった」と思ってもらえるような組合加入メリットが必要です。
日書連の会員である45都道府県組合はそれぞれ特色ある活動をしていますが、その活動内容を把握するために総会資料を収集しています。事業報告や事業計画案などを見れば、その組合が組合員の利益のためにどのような活動をしているかが分かります。たとえば、宮城県では教職員互助会の図書引換券を使えるのは宮城県書店商業組合の加盟書店だけですが、これは書店にとって大きな加入メリットになります。このような事例を参考に、各組合が独自の加入メリットを追求してもらえればと考えています。そして現在の組織規模を維持し、できれば組合員数を増やしてほしい。
書店組合がなくなり、店舗単位でしか発言や行動ができなくなれば、力の弱い街の書店の声は社会に届きにくくなります。業界団体として多くの書店が加盟し、一つの方向を向いていることが大事です。
日書連は長い歴史のある国内唯一の法人格を持った新刊書店の全国連合会です。日書連があるからこそ、私も書店議連のようなところに出て行って発言することができます。私たちの意見を国の機関や公共団体に届けるためにも、日書連の名のもとに全国の書店が一致団結する必要があります。
〔書店議連、春頃目途に最終報告/不公正な競争環境の是正求める/入札時の値引き抑制、軽減税率適用など〕
――書店議連ですが、昨年11月に「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」と名称を改め、メンバーも自民党の衆参両院議員約150名まで拡大しました。今年5月頃までに最終報告をとりまとめ、政策の具体化に取り組むスケジュールとなっています。矢幡会長も書店の代表として議連の会合に出席していますが、日書連として何を実現したいですか。
矢幡書店業界からは、書店産業振興のための経済対策の実施、再販制度を基盤とした公正な競争環境の整備、書店と図書館の共存・共栄のための環境整備、出版物への消費税軽減税率適用を求めていますが、具体的に最も重視しているのは、官公庁や図書館への納入時の入札による過度な値引きを抑制することです。
出版物は定価として価格拘束が認められ、決定権は出版社が有しています。さらに書店の利益率は約20%しかなく、その上で競争入札となると本当に厳しい。競争入札を行うのは主に図書館納入ですが、書店が売っている本を図書館は無償で提供しています。図書館の文化的な役割と存在意義は十分認識していますが、入札して安く仕入れることには疑問を感じます。書店と図書館が共存・共栄するためには、ベストセラーや新刊の過度な複数蔵書についても一定のルールを導入する必要があります。
ネット書店による送料無料化や過剰なポイント付与という実質的な値引き販売について制限を設けることも必要です。消費税軽減税率適用も是非実現したい。
諸外国に比べて日本の書店は不公正な競争にさらされています。文化向上の視点から書店を保護する政策も存在しません。これからも書店が日本の文化を支えていくことができるよう、国の政策として不公正な環境を是正していただきたいということです。
〔「粗利30%以上実現」の訴え続ける/出版社、取次数社が書店収益改善の施策〕
――議連は書店が存続するためには新たな収益構造の確立が必要と提起しています。日書連が進めている粗利30%以上の実現を目指す経営環境改善運動の現状をお聞かせください。
矢幡コロナ禍の3年間、出版社や取次と話し合いの場を持てず、目立った進展はありません。ただ、いくつかの会社が粗利30%を意識した企画や施策を実施しており、私たちの主張に対する理解が着実に深まっていることを感じます。今後も「粗利30%以上」の旗を降ろすつもりはありません。個別の動きが全体に波及するよう、出版社や取次への訴えを続けます。
――万引被害も収益を圧迫する大きな要因になっています。どのような対策を考えていますか。
矢幡全国万引犯罪防止機構(万防機構)と連携し、効果的な防止策を研究しています。万引や内引だけでなく検品や手続き上のミスあるいは不正で発生する損失(ロス)の原因を調査追究し、予防や再発防止の施策を講じるロスプリベンションは書店にとっても重要な概念です。万防機構が21年に始めたロス対策士検定試験を1人でも多くの書店関係者に受験してもらえるよう促進に力を入れているところです。
――今年の抱負をお聞かせください。
矢幡書店が存続していけるよう先頭に立って行動します。経営が成り立つ利益を得るため経営環境改善運動にしっかり取り組み、本を読む人を増やすための読書推進運動にも力を入れたいと思います。昨年から書店議連が力強く動き始めたので、日書連も積極的に発言し、街の書店の声を政策に反映できるよう全力を尽くします。

「若い人に贈る読書のすすめ」/推薦図書24点掲載したリーフレット作成/読進協

読書推進運動協議会(読進協、野間省伸会長=講談社)はこのほど、「2023若い人に贈る読書のすすめ」のリーフレットを作成した。各都道府県の読進協から寄せられた「若い人に是非読んでもらいたい本」の推薦書目をもとに、読進協事業委員会で選定したもの。
掲載図書は以下の24点。
▽『香君(上・下)』上橋菜穂子、文藝春秋▽『その本は』又吉直樹/ヨシタケシンスケ、ポプラ社▽『掬えば手には』瀬尾まいこ、講談社▽『空をこえて七星のかなた』加納朋子、集英社▽『目で見ることばで話をさせて』アン・クレア・レゾット/横山和江(訳)、岩波書店▽『ぼく』谷川俊太郎(作)/合田里美(絵)、岩崎書店▽『やらかした時にどうするか』畑村洋太郎、筑摩書房▽『やりたいことが見つからない君へ』坪田信貴、小学館▽『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン/高橋璃子(訳)、かんき出版▽『大人になるってどういうこと?』神内聡、くもん出版▽『知識ゼロからわかる!そもそも民主主義ってなんですか?』宇野重規、東京新聞▽『ぼくらの戦争なんだぜ』高橋源一郎、朝日新聞出版▽『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由』大空幸星、河出書房新社▽『誰にも嫌われずに同調圧力をサラリとかわす方法』大嶋信頼、祥伝社▽『「コミュ障」のための社会学』岩本茂樹、中央公論新社▽『世界はさわらないとわからない』広瀬浩二郎、平凡社▽『いつか、未来で白血病ユーチューバーが伝えたいこと』にゅーいん、主婦と生活社▽『最後の一年緊急事態宣言―学生アスリートたちの闘い』毎日新聞運動部、毎日新聞出版▽『運動脳』アンデシュ・ハンセン/御舩由美子(訳)、サンマーク出版▽『大人になる前に知ってほしい生きるために必要な「法律」のはなし』木村真実、高橋麻理、志賀野歩人、青木美佳(監修)、ナツメ社▽『オトナ女子のすてきな語彙力帳』吉井奈々、ダイヤモンド社▽『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』一田憲子、扶桑社▽『いままでとこれから』堀米雄斗、KADOKAWA▽『みやぎから、』佐藤健/神木隆之介、NHK出版

「春夏秋冬本屋です」/「人を想い、本を選ぶ」/兵庫・オクショウ代表・田村恵子

ここ数年、地元新聞社主催のお客様が記入されたアンケートを参考にその方への本を選ぶという、所謂〝一万円選書〟に取り組んでいる。新聞購読家庭で本が好きな方がお申込みなだけあって、とにかく読書量が多い方ばかり。基本的に人気作品は既読のものが多く、所謂「ランクの高い」ものは結構な割合で既読とのお返事をいただく。
お客様には好きそうなジャンルだけど既読でなさそうなもの/あまり手を出していなさそうなジャンルなどを考えながらも「これは読んでもらいたい」と考え選書リストを提示してみるも、実際のところは既読となる事も多々ある。この場合、既読本を提示するのは「好みがわかっている」のか「意外性がなく普遍的なものしか提示できない」のかと毎回悩むが、悩んでも答えが出るわけでもないので角度を変えて違うものを提示する。またこの取組を数年続けていると、同じお客様から二度目の選書をご依頼いただくこともあり、前回の選書企画を楽しんで貰えたのだと嬉しくなる。
アンケートにはお客様のお身体や人間関係などのお悩みが記入されており、人生経験が少ない私には受け止めきれない事もあるけれど、本が届きそれに対して嬉しいとのお声や御礼のメールを頂戴するのは、日ごろ本を販売している際には感じることの出来ない喜びだ。

インボイス制度研修会に組合員31名出席/埼玉組合

埼玉県書店商業組合は11月16日、さいたま市の埼玉書籍会議室でインボイス制度の研修会を開催し、組合員31名が出席した。
研修会は植村能久教育指導委員長の司会で進行し、奈良俊一理事長、埼玉県中小企業団体中央会の矢口加奈子氏があいさつ。講師の公認会計士・川口宏之氏がインボイス制度のポイントと対応策について講演した。
川口氏の講演の趣旨は、インボイス制度の最も不可欠な方法は、登録番号を取得し、課税事業者となり、得意先には適格請求書発行で対応することで、一方、仕入先と外注先から受け取る請求書も課税事業者との取引に限定し、消費税納税時に不利益を受けないようにすることがベストとのことだった。
10月1日からのスタートに向けて様々な書類や用具を準備するために、大きな力をもらうことのできた研修会となった。
(水野兼太郎広報委員)

研修会など活動再開に意欲/楠田理事長を再選/鹿児島総会

鹿児島県書店商業組合(楠田哲久理事長)は12月6日、鹿児島市の鹿児島書籍会議室で第37回定時総会を開催し、組合員60名(委任状含む)が出席した。
総会は石井専務理事の司会で進行。最初に楠田理事長があいさつし、書店業界の厳しい現状を説明した。また、コロナの状況を見ながら研修会や奥様会の開催といった具体的な活動の再開に意欲を示した。
瀬川副理事長を議長に選出して議案を審議し、第37期事業報告、収支決算報告、監査報告、第38期事業計画案、収支予算案を原案通り可決承認した。
任期満了に伴う役員改選では楠田理事長(楠田書店)、椨崇副理事長(ブックスめいわ)、石井専務理事(石井書店)が選出された。
総会終了後、鹿児島県中小企業団体中央会の派遣事業で、塩倉宏税理士を講師に招いて研修会「インボイス制度について」を実施した。組合員から多くの質問が出て、有意義な研修会となった。(和田豊広報委員)

大阪府青少年健全育成優良店/隆祥館書店・二村知子氏を表彰

令和4年度「大阪府青少年健全育成優良店表彰式」が11月24日、大阪市中央区のホテルプリムローズ大阪で開催され、大阪市中央区・隆祥館書店の二村知子氏が表彰された。大阪府青少年健全育成条例の実効性を高め、青少年にとって良好な社会環境作りを進めるため、他の模範となる優良店として大阪府から顕彰された。海老原諭副知事から賞状が授与された。
二村氏は、地域の子どもたちのため「辞書引き体験講座」や「動く図鑑moveびっくりクイズ大会」を継続。2016年から「母親と赤ちゃんのための集い場」、臨床心理士が選んだ絵本の読み聞かせを続け、作家を招いて地元の人との交流を図るイベントを2011年から約300回実施している。また、朝日放送ラジオ「道上洋三の健康道場」で隔月土曜日に「今週の1冊」を紹介している。
今回の表彰はこれらの活動が評価された。
(石尾義彦事務局長)

「紙の本に対する需要まだある」/絵本ワールドが盛況森理事長、自信示す/兵庫組合総会

兵庫県書店商業組合は10月26日、神戸市中央区の神戸市立婦人会館で第34回通常総会を開催し、組合員73名(委任状含む)が出席した。昨年同様、新型コロナウイルス感染症対策を施し、例年ホテルで開催していたところ婦人会館の一室での開催とした。
総会は中島良太副理事長(三和書房)の司会で進行し、はじめに森忠延理事長(井戸書店)があいさつ。「書店業界は厳しい状況が続く中、自民党衆参両院議員による『全国の書店経営者を支える議員連盟』のメンバーは約130名になり、会合を重ねている」と報告し、「苦しい中でも知恵を出し、利益を出していくことが大事だ」と述べた。また、10月8日に神戸市須磨区の須磨寺青葉殿で3年ぶりに開催した「絵本ワールドinひょうご」が盛況だったことを振り返り、「まだまだ紙の本に対する需要はあると感じた」と手応えを語った。そして、「待つのではなく、イベントなどを積極的に仕掛けていくことが大事。地域に愛される書店作りを組合員書店とともに進めていきたい」と述べた。
引き続き山根金造理事(巌松堂書店)を議長に選出して議事を行い、各委員会報告、各支部報告、収支決算報告、監査報告などすべての議案を原案通り可決した。
令和4年度事業計画を説明した森理事長は、「コロナの感染状況を見て判断しつつ、絵本ワールドの開催を継続していく。中高生向け読書推進事業『どっぷりつかるなら読書がいいね!』も継続していく」と表明した。また、コロナ後の大きな変化を踏まえた組織作りや組合活動の方策を、執行部が中心となって検討するとした。
(安東興広報委員)

「本の価値、読者、そして地域とは」テーマに/本の学校ブレストミーティング

本の学校は11月20日、東京・中央区の日本印刷会館で、毎秋行ってきたシンポジウムを「ブレストミーティング」として開催した。日書連など後援。
当日は「本の価値、読者、そして地域とは」をテーマに3つの分科会を行った後、柴野京子理事長をコーディネーターにした全体会で課題を共有し、参加者全員で討議した。
第2分科会では、ブックスキューブリック代表で本の学校理事の大井実氏がコーディネーターを務め、ひばりブックス代表の太田原由明氏、日本出版販売西日本支社エリアマーケティング課の谷川太郎氏、経済産業省中国経済産業局の伊東直人氏が、「今、書店を開くには~新規書店開業の条件および持続方法を探る~」と題して語り合った。
近年、書店の閉店・廃業が止まらない中、一方で、新規に小さな書店を開業する事例も増えている。その背景には何があり、どのようなパターンで開業に至っているか、新規書店開業者、取次、行政担当者の3人がそれぞれの立場から実情を話した。
太田原氏は、静岡市中心部で書店の閉店が相次ぐ中、長く勤務した戸田書店本店も閉店したため、「街の本屋の灯を消してはいけない」との思いから、2020年9月に自分の店「ひばりブックス」を開いた。ギャラリーとカフェを併設し、約18坪のスペースに自身がセレクトした1万2千冊の本を置く。
同書店の開業までの流れ、資金計画、開業後2年間の売上高、成果と反省点について数字を持ち出して説明した太田原氏は、継続するために必要なことは「街の書店として地域のニーズに応えること」だという。客注と定期購読については特に重要な業務として取り組んでいると話した。
2年間続けて経営者として実感するのは「本の売上げだけで利益を出していくのは本当に難しい」ということ。イベントで収益をあげるためにネット配信、ネット販売を強化し、週末は他の場所に出店して販売を行っているという。「本のニーズは必ずある。それを取りこぼさないよう応えていきたい」と述べた。
谷川氏は日販による独立系書店の新規開業事例、伊東氏は行政の支援施策を紹介。また、大井氏は「まちづくりと書店は相性がいい」として、まちづくりグループと連携して開業に至った書店を数店紹介した。
大井氏は「書店は初期投資が必要な事業。利益率が低く、光熱費・人件費も上がっている。経営していくのはとても厳しい。それでもやるのは地域に求められているから」と強調し、行政の補助金、取次の施策、事業承継М&A、クラウドファンディングなど、様々な手段を用いて持続可能性を探っていくことが重要と訴えた。

わが社のイチ押し企画/小学館PS・出版営業部・松本大介

明けましておめでとうございます。
昨年、小学館は創業100周年を迎え、記念出版企画として「古寺行こう」「世界J文学館」「学習まんが日本の歴史」などを刊行致しました。ご助力いただいた皆様に、この場を借りて感謝を申し上げます。
そして、今年2月6日に100周年に連なるイチ押し企画として「図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画」(定価2970円、税込み)を発売します。
本書の魅力は大きく分けて5つ。①日本と世界の名画を350点以上も掲載し紹介②図鑑ならではの切り口で、子どもが興味を持つテーマを提示③作品の鑑賞ポイントを分かりやすく解説④世界トップ水準の印刷による美しい作品図版⑤これからの時代に必要な思考力や表現力を育む、ことに重点を置いています。
これらの魅力に加え、「何が」「どのように」描かれているのかを探る作品鑑賞ページを中心に、絵具の原材料や絵画技法、美術館の役割なども紹介。2ページ見開きで1テーマを基本に、お子さんのみならず、大人も楽しめる様々な仕掛けを用意し、絵画の魅力を存分に伝える1冊に仕上がっています。
また、店売用拡材セットには、読者ノベルティとして、図鑑NEOアートオリジナル「クロッキー帳」をお付けします。本書を読んで、美術に目覚めるかもしれないお子さんに、ぜひ手渡してあげて下さい。
さらに今回、発売を迎えるにあたって、書店店頭が楽しくなる2つの拡販施策を実施。まずは、ご来店のお客様向けに、本書の内容を用いたクイズパネルを複数枚ご用意し、解答を動画でみることができる「NEOアート展覧会」。次に、書店のご担当者様に本書の売り場をアートなPOPで彩って、SNSに投稿していただくと、抽選で豪華景品が当たる店頭陳列コンクール、名付けて「ワールドポップカップ(WPC)」を開催します。
ご興味がありましたら、弊社営業担当まで、お問い合わせください。奮ってのご参加をお待ちしております。

わが社のイチ押し企画/文藝春秋・第二文藝部部長・武田昇

今年で作家デビュー30年を迎える村山由佳さんの短編集『ある愛の寓話』が1月に出ます。
4歳の頃に父親に買ってもらい半世紀以上一緒に過ごしてきたカエルのぬいぐるみ、バンドマンの恋人との交わりをじっと見つめるオスの黒い雑種犬、取材先の動物病院で出会って引き取った灰色の捨て猫など。言葉を発しない異質な存在と人間の女性との交歓が描かれ、見事なカタルシスを得られる、著者の原点回帰にして到達点。恋愛文学の第一人者による、長編とはまた違うエロティシズムを感じさせる作品集です。
2月には住野よるさんの『恋とそれとあと全部』を刊行します。
同じ下宿で暮らす高校生の男子めえめえ(瀬戸洋平)と女子のサブレ(鳩代司)。夏休みにサブレがある〝不謹慎な〟目的のために遠方に住むじいちゃんの家を訪ねることになり、誘われためえめえは部活が休みだったこともあって同行します。2人で夜行バスに乗るなど、夏の特別な数日間を一緒に過ごした二人の行方は――。とにかく筆者と編集者の「きゅんきゅんする小説を」という希望が合致し、これでもかと読者の心に訴えかけてくる青春恋愛長編です。
同じく2月刊予定で、エグザイルの中でも読書家で知られる橘ケンチさんによる初小説『パーマネント・ブルー』もお勧め。横須賀でダンスチームを結成した大学生が、やがて東京に進出する軌跡を描く一冊。セリフのリズム、ユーモアも見どころで、何と言っても素晴らしいのは身体感覚を言語化していることです。
そのほか奥田英朗さんのトンデモ精神科医「伊良部」シリーズの最新作が実に17年ぶりにお目見え。『空中ブランコ』で直木賞を受賞して後、引きこもってしまっていた彼の強烈なキャラクターは健在。創立100周年を迎えた文藝春秋の創設者でもある菊池寛を描いた門井慶喜さんの小説、山本一力さんによる人気時代小説「損料屋喜八郎」シリーズの新刊も刊行予定ですので、お楽しみに。

わが社のイチ押し企画/Gakken・K12事業部図鑑・科学編集課・牧野嘉文

あけましておめでとうございます。新年早々とて、「虫屋」と呼ばれる昆虫ファンにとっては、冬休みも大忙しです。南国で採集するもよし、枯木に穿孔する幼虫を探すもよし、そんなとき彼ら彼女らがひもとくのは今も昔も昆虫図鑑です。
昆虫図鑑といえば、古今東西、死んで標本にされた昆虫を真上から撮影して並べたものでした。しかし近年、バッタやイモムシなどを生きたまま撮影した図鑑が多く見られるようになってきたのをご存じでしょうか。昆虫には死んでしまうと、色や姿勢が変わってしまうものがあります。子どもたちがそのような虫を図鑑とつきあわせてみても、絵合わせしにくいことがあったのです。また、野外での生態写真では、その生物の輪郭や形態を近縁種と比較しながら一望することが困難でした。
「使いづらいけど、仕方ない」――そんな常識を一変したのが『学研の図鑑LIVE昆虫新版』(2022年6月刊行)です。生きた昆虫を撮影したこれまでの図鑑は、限られたグループの昆虫を扱ったものばかりでしたが、本書は2800種以上の日本産昆虫の全分類群とクモやダニなどの陸生節足動物すべてを生きたまま撮影した挑戦的な学習図鑑なのです。
この図鑑を実現するため、丸山宗利博士の総監修のもと総勢40名以上の撮影隊が組まれ、約1年かけて約7000種もの昆虫を撮影しました(一部、幼虫や雌雄も含みます)。その一部始終については丸山氏の『昆虫学者、奇跡の図鑑を作る』(2022年9月刊行・幻冬舎新書)もご覧いただくとして、子どものみならず、シニア層まで広く好評を得ていて、半年たたずに重版となりました。
学研の図鑑LIVEシリーズからは「昆虫」のほか、「恐竜」「危険生物」の計3巻が「新版」としてリリースされました。2022年は数多くのメディアで紹介され、ご好評の声が多く寄せられています。2023年も、目玉となる図鑑を予定しておりますのでぜひご期待ください。

わが社のイチ押し企画/KADOKAWA・宣伝局

あけましておめでとうございます。旧年中は格別なるご支援を賜り厚く御礼申し上げます。KADOKAWAは、今年も皆様に楽しんでいただける作品を多数ご用意いたしております。
まずは文芸書。冲方丁が満を持して挑んだ初の長編ホラー作品『骨灰』。進化し続ける異才が放つ新時代のホラーエンタメ超大作です。
ライトノベルからは、累計25万部超の人気作『春夏秋冬代行者』の外伝が1月7日発売。現人神たちの美しくも切ない物語をお楽しみください。
児童書の人気作『パンどろぼう』シリーズは、絵本に加えてレシピ本、付録つきMOOKを発売中。このほか、親子モニター調査で支持率№1を獲得した角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』も絶賛発売中です。
また、株式会社KADOKAWAGameLinkageからは『スプラトゥーン3ザ・コンプリートガイド』を発売中。『スプラ3』のあらゆる情報を集約した完全攻略本は、初心者にも上級者にも満足いただける1冊となっております。
メディアミックス作品は今年も期待作が目白押し。まずは、長編ファンタジーの傑作『火狩りの王』。3巻発売と同時にアニメ放映がスタートします。昨年ドラマ化された『作りたい女と食べたい女』は、「#物語のままで終わらせない」というプロジェクトでも話題を呼んだ人気コミックです。同じく昨年ドラマ化された『メンタル強め美女白川さん』の最新4巻は1月発売。Twitterで大反響の痛快コミックは、読めばデトックス間違いなしです。
さらに、アニメ化も決定している『わたしの幸せな結婚』が目黒蓮(SnowMan)主演で実写映画化。小説とコミック、累計550万部を超える原作シリーズは好評発売中です。
そして、人気ライトノベル『スパイ教室』、『魔王学院の不適合者』、『人間不信の冒険者たちが世界を救うようです』が1月よりアニメ放送開始。完結から8年を経てアニメ化が決定した『シュガーアップル・フェアリーテイル』も1月より放送開始です。
今年も多種多様なKADOKAWAのコンテンツにぜひご期待ください。

わが社のイチ押し企画/新潮社・出版部・川上祥子

永井紗耶子著『木挽町のあだ討ち』
2022年上半期の直木賞選考会で非常に高い評価を得たことが記憶に新しい『女人入眼』は史実に基づく歴史小説ですが、最新長篇『木挽町のあだ討ち』は架空の登場人物たちによる時代小説。永井紗耶子さんの着眼点のおもしろさや創造性が存分に発揮された、スリリングな小説です。
2022年秋、ゲラを読んだ弊社営業部、プロモーション部の社員が、「登場人物たちの切実な身の上や葛藤が現代人にも通じるものがある。時代小説のコアな読者以外にもぜひ読んでもらいたい」と盛り上がり、その後、社内一丸となって、発売前にも『木挽町のあだ討ち』のおもしろさを知っていただく努力を重ねてきました。
すでにバンドプルーフを読んでくださった書店員の皆様から、「ラストにあっと驚いた」「ミステリのようにドキドキした」「あだ討ちの真相は、令和の若者の心にも響くと思う」など、とてもありがたいご感想をいただいております。
全六話構成の本作の舞台は、江戸の芝居小屋です。ある雪の降る夜、芝居小屋のすぐそばで、美少年・菊之助が成し遂げた、父親を殺した下男の首を取るという仇討ち。二年後、江戸の語り草となった大事件の真相を知りたいと、ひとりの若侍が芝居小屋を訪ねます。若侍に請われ、木戸芸者(呼び込み)、殺陣師、衣装係、小道具係の妻、筋書き(脚本家)、芝居小屋の裏方たち五人が、ことの顛末を語ります。本当に語り手の声が聞こえてくるかのような文体は、怪談が大好きという永井さんの真骨頂。第六話、仇討ちを成し遂げた菊之助当人が語る真相には、驚きと感動がないまぜになって押し寄せてきます。
多様性の本質とは何か、また社会が個人に要求する「正義」と人間として生きていく上で忘れてはならない「本当に正しいこと」のギャップなど、現代を生きる我々が立ち止まって考えるべき大きなテーマが描かれています。1月18日発売の永井さんの渾身の作『木挽町のあだ討ち』、ぜひご注目ください。

わが社のイチ押し企画/金の星社・編集部・野村茂樹

『日本の怪異・妖怪大事典』
日本には古くから怪異や妖怪にまつわる伝説・伝承が残されています。また、現代で生まれた噂話や恐怖体験も、インターネットを通じてあちこちで報告されています。それらを集めて、知り、くらべてみると、「怪しいもの」の正体がわかるかもしれない……そんな思いから本企画はスタートしました。
怪異や妖怪と聞くと、学校の怪談に登場するトイレの花子さんや、口さけ女などが頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。ほかにも人面犬や首なしライダーなど、時代とともに語りつがれてきたものがたくさんいるので、それぞれに怯えた記憶がよみがえるかもしれません。でも、それらがどんなふうに知れ渡るようになったのかなど、詳しいことまでは知らない方が多いはず。本書では、60以上の怪異や妖怪を、4つの章に分けて紹介しています。「うわさの怪」「人型の怪」「動物の怪」「物・場所・現象の怪」で分類して、それぞれを恐怖のビジュアルとエピソードで解説しました。各エピソードはストーリー仕立てにし、怪異・妖怪の出没場所や目撃情報、噂が広まった当時の社会背景などを加えて、たっぷりと恐怖体験ができる構成です。
怖い本をつくりながら思わず笑ってしまったのは、ババアやジジイの名を持つ怪異がたくさん存在すること。スケボーにのって車と並走する「スケボーババア」、便所に潜み、子どもを便器に引きずりこむ「ムラサキジジイ」、ジェットエンジン並みの速さで走る「ジェットババア」など、怖さよりおもしろさが先行しそうなものばかりですが、実際に遭遇したら恐怖そのもの。そんな怪異を集めたコラム「爺・婆系の怪異一気見せ!」は必見です。
最後に、本書をご覧いただく際の注意を一つ。おもしろ半分で不吉な場所に行ったり、不吉なものを集めたり、不吉なことをあえて行うようなことは、絶対に控えてください。度をこえた興味は身を滅ぼしますから……。B5変型判、144ページ、定価4400円。

10月期販売額は7・5%減/店頭売上は児童書がプラスに/出版科研調べ

出版科研調べの10月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比7・5%減だった。
内訳は、書籍が同5・9%減。店頭販売の不振・返品増が続き、低調だった。雑誌は同9・7%減。内訳は、月刊誌が同10・8%減、週刊誌が同4・3%減。月刊誌は前年に『東京卍リベンジャーズ』(講談社)の既刊や『呪術廻戦』(集英社)がヒットしていたコミックスの反動が大きく、2桁減に。週刊誌は比較的小幅な減少となった。『週刊少年ジャンプ』(集英社)の本数が1本多かったほか、返品も改善した。
書店店頭の売上は、書籍が約5%減。夏場まで落ち込んでいた児童書が約1%増と回復に向かっている。中でも書店キャンペーン「ニコニコカドカワ祭り」によってKADOKAWAの作品が大きく伸びており、特に絵本「パンどろぼう」シリーズが人気で売上を牽引した。
雑誌の売上は、定期誌が約5%減、ムックが約5%減、コミックスが約12%減で、雑誌も先月に比べ回復基調。コミックスは、コロナ禍以前の2018年、19年と比較するとプラスで、長期的な視点で見ると健闘を続けている。

第57回新風賞に『80歳の壁』/書店新風会

書店新風会(大垣守弘会長)は12月15日、和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎)を第57回新風賞に決定したと発表した。今回は、会員書店の書店員578名が1人3冊ずつ推薦する本を投票。11月17日の役員会で投票数上位10点を審議して賞を決定した。同書は、80歳を超えた人を「幸齢者」と呼び、老いを受け入れ我慢をしない生き方を提唱。トーハン、日本出版販売の2022年年間ベストセラーでともに総合1位となった。
同日に行ったオンライン記者会見で、大垣会長は「本年の上位には、絵本やコミックなどのシリーズや、既に他の賞を受賞している作品、最近人気の投資や節約などお金に関する書籍がランクインしたが、得票数が圧倒的に多かった同書に決定した。この本は、人生100年時代と言われる昨今、元気な高齢者や、その子ども、孫の世代が手に取っていることが書店員の推薦コメントから伺える。誰もが『幸齢者』に、そして前向きな幸せな世の中を目指して、書店新風会はこれからも同書を積極的にお客様にご提案していきたい」と述べた。
幻冬舎の出版物の新風賞受賞は、第33回の五木寛之『大河の一滴』、第46回の長谷部誠『心を整える。』に次いで3回目。
贈賞は、1月11日開催の書店新風会新年懇親会で行う予定。

世界文化社『王さまのお菓子』を増売/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は12月6日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
事業・増売委員会では、NHK出版から、2月7日にオンライン開催する「春の企画説明会」(詳細は6面掲載)と、1月8日より放送開始の大河ドラマ「どうする家康」の店頭PRについて説明があった。また、世界文化社から絵本『王さまのお菓子』のフェアについて説明があり、増売企画商品として取り組むことを承認した。同書は第55回造本装幀コンクールで出版文化産業振興財団賞を受賞。フェアでは、拡材のポスターやPOPに掲載された2次元バーコードから「BOOKMEETSNEXT」ホームページのNFTデジタル特典取得ページにアクセスし、AR機能で着せ替え写真を撮って遊べる「王冠と衣装」のデジタルアイテムを先着3000名がもらえる企画を実施する。
「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクト特別委員会では、プロジェクトの進捗状況について報告。また、のぼりの製作・郵送費用を読書推進費として支出することについて諮り、これを承認した。
指導・調査委員会からは、11月30日に開催された東京万引き防止官民合同会議について報告。全刑法犯の認知件数が減少する中で、万引はやや減少から直近では増加となり、認知件数の中に占める割合は増加傾向にあること、高齢者と小学生くらいの若年層による万引が増えていることなどを説明した。

NHK出版春の企画説明会をオンラインで開催/テキストや書籍の注目企画を紹介

NHK出版(土井成紀社長)は「2023年NHK出版春の企画説明会」をオンラインで開催することを決め、全国の書店に配信動画の視聴を呼びかけている。
配信は2月7日(火)午後2時半から(40分予定)。土井社長あいさつの後、新年度のNHKテキストや注目の書籍を紹介する。企画説明会終了後、オンラインで質疑応答の場を設ける。また同日午後4時より3月31日(金)までアーカイブでも視聴することができる。
視聴方法は、1月5日(木)より、パソコン、タブレット、スマートフォンで下記URLまたはQRコードから初期登録フォームにアクセスして必要事項を入力すると、登録したメールアドレスに視聴するための案内が送られる。日書連HPにも初期登録フォームのリンクを設ける予定。
同社では「経営者だけでなく現場の担当者の方々にも販売強化の参考にしていただきたい」と、広く書店関係者に視聴を呼びかけている。
問い合わせは同社セールス・プロモーション部(担当=俵氏、森氏)まで。℡03(3780)3543
初期登録フォームURL=https://shoten.nhk-book.co.jp/entry/

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・齋藤一郎

年初めに健康を願うとそこに江戸から300年読み継がれた本がある。
帯津良一/鳴海修平著『1分間養生訓』(ワニプラス新書900円)は、『養生訓』の教えをわかりやすく、30項目に要点をまとめている。第一は、なにごともほどほどがよい。空腹は避けるが食べ過ぎもよくない。衣服、住居などにも完璧を求めない方が気持ちも楽でいられる。第二に、人生は楽しい!後半は特に楽しい!!「老後一日も楽しまずして、空しく過ごすはおしむべし。老後の一日、千金にあたるべし」というのである。
わけもなく薬を服用してはいけないとも語り、江戸の医者にも上・中・下があり、上医とは薬をたくさん出さず、自然治癒力に重きを置き、思いやりのある医者を指す。
時間を超え、現代にも通用する教えである。そこで元の本にあたるのも面白い。59刷を数える。
貝原益軒著/石川謙校訂『養生訓・和俗童子訓』(岩波文庫900円)は、人の身は父母を本とし、天地を初とす、と始まる江戸時代に84歳まで存命した貝原益軒の健康法。食に限らずあらゆる場面に節度を持って対処する人生論でもある。本書は和俗童子訓という日本初の教育論が併載されている。二作とも80歳を越えて書かれた作品である。

訂正

12月15日号5面に掲載したトーハン中間決算の記事で、トーハンの小野専務取締役の名前が「清輝」とあるのは「晴輝」の誤りです。お詫びして訂正します。

「木曜日は本曜日」プロジェクト/協力求め出版社、書店に説明会/東京組合

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は、本屋へ足を運ぶ習慣づくりを目指して昨年10月にスタートした「木曜日は本曜日」プロジェクトについて、実施内容とこれまでの成果を報告し、今後の協力を呼びかける説明会を11月29日に東京・千代田区の書店会館で開催。出版社、書店の代表者ら48名が出席した。
説明会では初めに、矢幡理事長があいさつ。「日頃より街の本屋の存続に多大な協力をいただき感謝申し上げる。我々も自分たちから発信しなければいけないという思いで『木曜日は本曜日』プロジェクトを開始し、成果が見えてきたので説明する機会を設けた。皆様の意見をいただきながら今後のことを考えていきたい」と述べた。
続いて、「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクト特別委員会の小川頼之委員長が、プロジェクトのこれまでの経緯や概要を説明した。東京組合は2021年度に、東京都中小企業団体中央会の特別支援「新しい日常対応型業界活性化プロジェクト」を活用し、YouTubeチャンネル「東京の本屋さん~街に本屋があるということ~」を立ち上げた。この中で、組合員書店72店舗の書店紹介動画を公開。また、著名人が本と本屋について語るPR動画や、映画監督の篠原哲雄氏が制作を担当したドラマ「本を贈る」の配信を行った。
22年度も、都中央会の特別支援「デジタル技術活用による業界活性化プロジェクト」の委託を受け、「木曜日は本曜日」習慣化プロジェクトを展開。本屋を愛する著名人・作家・インフルエンサーら20名に選書してもらった「人生を変えた10冊の本」を組合員書店約170店舗に配本、毎週陳列販売している。
プロジェクトのコンセプトや具体的な内容については、企画の立案・実施を担う㈱GOの三浦崇宏代表が説明した。プロジェクトは、「お客様が継続的・習慣的に本屋に訪れたくなるきっかけをつくる」ことを目的に企画。本屋は「人生の可能性を広げる役割」があり、「人生を変えるきっかけ」が見つかる場所であるとして、「人生を変えるかもしれない偶発的な本との出会い」「わかりやすく限定的な人が動く仕掛け」「デジタルとリアル書店を組み合わせた仕組み」を軸に考案した。
そこで、週に1回本屋に足を運んでもらう日として木曜日を「本曜日」に設定。本屋を愛する著名人や作家、インフルエンサーら20名が応援し、本と本屋を紹介する動画を特設サイトで公開。彼らが選んだ「人生を変えた10冊の本」が書店店頭に並ぶという、デジタルと書店が連動したアクションを今年2月まで毎週展開する。特製のぼり・ポスター・POPとプレゼント用の限定しおりを用意し、各書店で販売と来店客数増加に取り組む。お客様にとっては毎週木曜に本屋が気になるという行動習慣になり、書店と出版社にとっては販促のきっかけとなることを意図した。
プロジェクトの第1弾には俳優・歌手の上白石萌音さんが登場。東京・中央区の八重洲ブックセンター本店でプロジェクト発表会を行い、テレビ9件、紙媒体9件、WEB媒体346件で取り上げられた。著名人らのインタビュー動画は、11月28日時点で第8弾まで公開され、トータル再生回数は76・5万回。また公式Twitterと公式TikTokも開設し、「木曜日は本曜日」ハッシュタグ合計投稿数は1万5480件。これらメディア露出量の広告換算額は約4億円と分析する。
三浦氏は、「出版社は知性や創造性を生み出す『知の発電所』、書店はそれを届ける『知のインフラ』だ。今回のプロジェクトは、この国の未来を守る『知の防衛線』と考えている。来年度以降も続けていけるように出版社、書店の皆さんと一緒に頑張りたい」と結んだ。
このあと小川委員長が、プロジェクトの開始後、著名人らが選書した本がどのくらい売れているか実績を説明。また、特設サイトには選書リストやプロジェクトのロゴを公開しており、全国の書店に対しプロジェクトの選書販売に相乗りをお願いしたいと述べた。最後に、「来年度以降も東京都から予算が出るかわからない。業界横断の実行委員会を立ち上げ、今後の活動を検討したいと考えている」と方針を示し、協力を呼びかけた。