全国書店新聞
             

平成29年5月1日号

万引防止で先頭に立つ/万防機構内への対策本部設置、承認/日書連理事会

日書連(舩坂良雄会長)は4月20日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催。全国万引犯罪防止機構(万防機構)内に出版業界で万引防止出版対策本部(仮称)を設置する計画を承認した。日書連が中心となって出版業界全体で万引防止に取り組む。舩坂会長は「日書連が先頭に立つ」と意気込みを語った。
[万引問題]
万防機構の竹花豊理事長は、3月9日~10日に都内で開催された万引強化対策国際会議の席上、万引防止のための情報共有システムを書店業界から始めたいとの意向を示した。竹花理事長は東京都副知事を務めていた2003年に東京都書店商業組合から万引防止対策への協力要請を受けて以来、書店における万引問題に深い理解を示している。
今、万防機構内に万引防止出版対策本部を設置する計画が検討されている。舩坂会長は「日書連が先頭に立ち、他の出版業界団体と協力して万引防止に取り組みたい」と述べ、書店がすべて負担している万引ロスを出版業界全体で負担する方策についても話し合っていきたいとした。
また、自店の大盛堂書店が営業する東京・渋谷地区で、書店7店などが被害情報を共有することで万引抑止を図るネットワークを構築する準備を進めていることを紹介。区と警察署も協力する意向を示しているという。舩坂会長は「渋谷の取り組みが全国のモデルケースになれば」と話した。
[指導教育委員会]
「全国小売書店経営実態調査報告書」の分析結果をもとに、「粗利益の拡大」「客注品の迅速・確実化」「取次システム利用料の負担軽減」「配本の適正化」の早期実現を求める要望書を6月の日書連通常総会までに作成。舩坂良雄会長、鈴木喜重委員長、理事数名で大手取次や主要出版社を訪問し、要望書を手渡す意向を鈴木委員長が示した。その後、各社の担当者に対し、要望事項について個別に実現をお願いする。
[組織委員会]
平成29年4月1日現在の日書連所属員数は前年比5・1%減(190店減)の3504店になったと中山寿賀雄委員長が報告した(関連記事2面)。
また、日書連のオリジナル手帳「ポケッター」について、受注を増やすため積極的にキャンペーンを展開していく方針を示した。
[取引改善委員会]
「トーハン週報」3月20号と「日販速報」3月20日号をもとに、平成29年度(平成29年4月~30年3月)の「返品入帳締切日カレンダー」を独自に作成した。柴﨑繁委員長は「カレンダー通り入帳されているかどうか各店で調べてほしい」と求めた。
[流通改善委員会]
日本経済新聞は4月18日付1面で、大手コンビニエンスストア5社がセルフレジを2025年までに国内全店舗に導入すると報道した。すべての商品にICタグを貼り付け、販売状況をメーカーや物流事業者と共有するという。
出版業界でも約10年前、ICタグを活用しようと実証実験を行った。業界3者にメリットがあり、書店にとっては万引防止のためのシステムへの期待が大きかったものの、ICタグの生産コストがネックとなって普及しなかった。
藤原直委員長は「コンビニのセルフレジ導入の動きは追い風。記事によると経済産業省がバックアップしているようなので、他の業種にも活用が広がるだろう。我々の業界も参加したい」と意欲を示した。
[消費税問題]
「全国小売書店経営実態調査報告書」によると、POSレジを導入していない書店は62・4%を占め、導入している書店(34・8%)を大きく上回ることが分かった。
面屋龍延担当副会長は、出版物への軽減税率適用が実現した場合、複数税率がPOSレジ未導入店の実務に及ぼす影響を研究する必要があるとして、特に小規模零細書店が軽減税率で不安に思っていることについて意見を集めてほしいと各県組合に求めた。
[広報委員会]
全国書店新聞は4月1日号から書店リレーエッセイ「春夏秋冬本屋です」、能勢仁氏「能勢仁が語る書店史道を拓いてくれた人」の2本の連載がスタートした。面屋委員長は「出版業界が苦しい中、経営の参考にしてほしい」と述べた。
また、日書連ホームページ「本屋さんへ行こう!」は、これまで通り「書店くじ告知と当選番号掲載」「全国書店新聞の記事掲載」「サン・ジョルディの日などイベントの告知」「各都道府県組合リンク」をメインコンテンツに運営すると報告した。
[書店再生委員会]
本間守世委員長が、再販相談事例を1件報告した。[政策委員会]
第12回「大人の塗り絵コンテスト」(河出書房新社主催)の協力、第17回「家の光読書エッセイ」(家の光協会主催)の後援について、日書連名義使用をそれぞれ承認した。
[読書推進委員会]
日書連主催の増売運動「2016年心にのこる子どもの本秋・冬セール」(協賛=日本出版取次協会、日本児童図書出版協会)の店頭陳列飾り付けコンクールは、加賀谷書店東通店(秋田)が最優秀賞に選ばれた。同店は2年連続の受賞となる。
優秀賞はあおい書店富士店(静岡)、宝屋書店(愛知)、B・PASS年輪(滋賀)。アイデア賞は加賀谷書店茨島店(秋田)、松田書店大鐘店(岩手)、宮脇書店天童店(山形)、冠文堂書店(宮城)、プー横丁(富山)、サン書房(奈良)にそれぞれ決まった。最優秀賞には3万円、優秀賞には1万円、アイデア賞には5千円が贈られる。
独自企画を提出した組合に補助金を支給する「読書推進活動補助費」募集事業について、これまで企画の募集、採用、送金、実施、報告書の提出を2期にまたがって行ってきたが、2018年度からすべて単年度内で行い、6月の日書連通常総会で承認を受けた予算に基づき募集、各県組合から受け付けた実施報告書の内容に基づき支給額を審査する方式に変更すると西村俊男委員長が報告した。18年度のスケジュールは次の通り。
18年4月=理事会で補助費の総額案・1組合上限額案・送金時期を発表、6月下旬=総会で予算案の承認、7月上旬=各県組合より実施報告書募集開始、11月下旬=実施報告書締切、12月上旬=補助金の審査会、同中旬=理事会で承認、19年2月=各県組合に補助金を送金
【別所信啓(三重)、津田成生(和歌山)両氏を新理事に選出】
日書連は4月20日、定例理事会に先立ち臨時総会を開催。岡森泰造(三重・岡森書店)、宇治三郎(和歌山・宇治書店)の両理事の退任に伴う理事補欠選挙を行い、別所信啓(三重・別所書店)、津田成生(和歌山・津田書店)の両氏を新理事に選出した。
別所理事は「理事会に積極的に出席する」、津田理事は「皆様とともに頑張りたい」とあいさつした。

「全出版人大会」5月11日に開催

日本出版クラブは5月11日午後3時、東京・千代田区のホテルニューオータニで「第56回全出版人大会」を開催する。
文藝春秋・松井清人社長が大会委員長を務め、例年通り古希を迎えた長寿者の祝賀、永年勤続者の表彰を行う。日書連からは柴﨑繁副会長が長寿者に推薦されている。式典終了後、ノンフィクション作家の石井妙子氏が講演を行う。

学校図書館整備費予算化を/小冊子「学校図書館の出番です」発行

文字・活字文化推進機構、全国学校図書館協議会、日本新聞協会、学校図書館整備推進会議の4団体は、このほど共同でパンフレット「学校図書館の出番ですアクティブ・ラーニングの視点に立った学びに向けて」(A4判・カラー、10ページ、無料、初版4万部)を発行した。
第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」で2017年度から地方交付税措置が5か年計2350億円に拡充されたことを受け、学校図書館の蔵書充実などを求め、「なぜ学校図書館が重要なのか」「予算化のためには何をすればよいか」などを紹介している。
同措置の財源は使途を特定しない一般財源のため、本を買ってもらうためには、学校図書館の整備・充実に使う費用として各市区町村で予算化しなければならない。予算化を促すためには住民が行政や議会に請願書を提出し、働きかけることが重要になる。このパンフレットには請願書のひな形が掲載されており、これを参考に取り組んでほしいとしている。
日書連は4月20日の定例理事会で、このパンフレットを活用して地元の市区町村議員や文教委員らに働きかけてほしいと各都道府県組合に対して求めた。
問い合わせは学校図書館整備推進会議まで。℡03―3267―3791

「春夏秋冬本屋です」/地元の本に特化した店/滋賀・ますや書店代表取締役社長・岩根秀樹

郊外型書店が生まれた
70年代、仲間の書店と東名高速を飛ばして静岡県まで視察と称して半分遊び心で出かけた。あの頃は、町の本屋がテナント・共同店舗としての出店や幹線道路沿いに出店する店が出始めた時分だった。いずれはうちもと思っていた。最初は隣町にできた食品スーパーの駐車場に面したガレージを大きくしたような店だった。その数年後、スーパーが国道沿いにできることになり、その中のテナントとすぐ隣にレコードとビデオレンタルと書店をほぼ同時に出店した。
今思うと無茶なことをしたものだが、テナントは数年後、最初の店も20年目に閉めた。レンタル店も周囲に同業が増えたことから書店専業にしたが、引き際が肝心と8年前に閉めることにした。
さてこれからどうしよう。以前の店はすでに自宅に改装している。いまさら元に戻してもたいして売り上げも望めない。それでも少しだけと玄関のわずかなスペースを店にした。その後、市の伝統的街並み景観形成補助金を利用して外観を改装し、街道・観音様や地元の本に絞った店とした。二代目として本屋を継いで45年になる。これまでやってこられたのは、先輩や仲間の書店から教わったことが大きい。生涯ずっととは思わないが、この先もう少し、この業界がどうなっていくのか、中から見ていたい。

5月18日から3日間、書店人教育講座を開催/NPO本の学校

NPO本の学校は5月18日~20日の3日間、鳥取県米子市の本の学校今井ブックセンターで「2017年度出版業界人研修書店人教育講座」を開催する。
今年で23年目を迎える同講座は、ミシマ社・三島邦弘氏、久禮書店・久禮亮太氏、元「考える人」編集長・河野通和氏ら、書店人、編集者、研究者などを講師に招き、本をめぐる様々な最新情報を伝える。また、例年よりワークショップの本数を増やした。
受講料は3日間セット1万8000円(税込、テキスト代+19・20日の昼食代含む。宿泊費・交通費別)、単講座は1講座につき2000円。
申し込み・問い合わせはNPO法人本の学校(担当=井澤、山本)まで。
℡0859―31―5001、メール