全国書店新聞
             

平成28年12月15日号(後)

本と地域の20年後を創る/図書館総合展フォーラム

図書館総合展のフォーラム「本と地域の20年後を創る」が11月10日、横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれ、東京都世田谷区・保坂展人区長、日本図書館協会・森茜理事長、日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長(小学館)が講師として出席。出版界と図書館界の連携、地域の読書文化を守るためにそれぞれがどのような役割を担うべきかを議論した。司会は日本書籍出版協会・成瀬雅人図書館委員会副委員長(原書房)。
【公立図書館資料購入費増額に向け、出版社と図書館が連携して行動】
成瀬日本図書館協会(JLA)と日本書籍出版協会(書協)が共同で、文部科学省や総務省に向けて公共図書館図書資料購入費や図書館整備充実に関わる経費の予算の増額を求めている。図書館界と出版界が協力して一緒に動くのは初めてのことではないか。
相賀書協には図書館委員会がある。委員の多くは人文系の出版社だ。人文系出版社が刊行する専門書は、かつて6000部出ていた時代もあったが、最近は3000部出ればいいぐらいになってしまった。蔭で図書館が買い支えてくれたので助かっていた。
専門書は図書館で読んだ読者の口コミで動くこともあるので、宣伝費をかけられない人文系出版社と図書館の間には良い関係ができていた。今、それも段々と厳しくなってきた。
平成12年度、公共図書館の数が2639館のとき、資料購入費総額は346億円あった。それが、平成26年度に公共図書館の数は3246館に増えたにもかかわらず、資料購入費総額は285億円まで急速に減少した。1館当たりの平均額では1311万円から878万円と少なくなった。
専門書は少部数だから価格が高く、どうしても必要とする人しか買って読むことができない。しかし、専門書の中には専門家以外の読者が読むべき本もたくさんある。専門書との出会いの場になっている図書館の資料購入費が減り、そうした本を買えなくなっているのは由々しき問題だ。この状況に危機感を持ち、一昨年から書協図書館委員会の持谷さん(みすず書房)をはじめ数名で文科省を訪ねるなど行動を始めた。
JLAの森さんとも一緒にやろうと話をして、昨年は当時の馳文科相のもとを訪れた。学校図書館議員連盟の会長、子どもの未来を考える議員連盟の会長を務める河村建夫議員にも力を借りたいとお願いした。また、高市早苗総務相などいろいろな方に応援を求めて動いた。
問題は、中央官庁の動きというよりも、地方自治体の議員や首長の意識が変わらない限り、地方交付税を図書資料購入費に回すことは難しい。これが簡単ではないことが分かったので、今は森さんと一緒に地方の議員に対しての働きかけをゆっくりと始めているところ。いろいろな文書を作って、連携をとりながら進めている。
森21世紀は箱物の時代ではなくて、その中に詰め込まれた内容の時代。貸出冊数や来館者数だけではなく、市民が本を媒介として新しい情報を得るとともに、コミュニケーションによって考えを高め、視野を広げる――そのような場としての機能が、図書館に求められるようになった。
その役割を果たすためには、皆さんの税金で図書館にたくさんの本を買わなければならない。同時に、座右の銘にしたいと思った本は、自分のお金で買うことも大切。そういう考えなら一緒に運動しましょうという話を相賀さんからいただいて、新しい運動に発展させていきたいと思い、相談しているところだ。
市区町村長に本と図書館の重要性を認識してもらい、地方交付税で本の予算を増やしてもらうための運動をしている。街をどう作っていくのか、人々が図書に直接接することができる環境をどう作っていくのか、地方自治体の長に理解していただくのが一番重要だと思う。今までは行政や政治のトップにお願いに行っていたが、これからは全国1700自治体の長に対して「図書に関する環境を充実してください」という運動を展開していきたい。
成瀬世田谷区は人口89万人。知へのアクセスをどう保証するかという観点から具体的に取り組んでいることは。
保坂人口が多いと支出も多く、財政が豊かとはならない。学校を建て替えると25億円~40億円かかる。そのときに作るプレハブの仮校舎は2億5千万円~5億円。これを最小限にする、あるいは作らないということでやってきて、20億円の財源が生まれた。この財源を学校に戻し、司書の全校配置、図書室の図書充実などに取り組んでいる。これからは財源の使い方を工夫することまでやっていかねばならない。
予算の使い方の比重として学校図書館の図書を充実させようという声が各地方議会で出るかどうかだ。そういう声が出れば行政は考える。自治体の長がやるぞと思っても、1人ではできない。議会なり市民なりが声をあげることが大事かなと思う。
相賀学校図書館の充実は子供の未来を考えると喫緊の課題。しかし、今すぐに予算を増やせない現実もある。先生が子供のために読ませたい本があるときに、学校図書館にその本がなくても、近くの公共図書館に行けば読むことができる。そういう連携をすることが大事だと思う。
森学校は生まれてから死ぬまでのうち20年近く過ごす大切な場所。だから学校図書館と公共図書館、大学図書館が連携して、市民の協力を得ながら、地域全体で幅広い知の環境作りを行っていきたい。
【図書納入、地域の中小書店にも利益を/書店組合と図書館の話し合いで】
成瀬本が売れない。図書館に買い支えてほしい。そのために図書資料購入費の予算を増やしてほしい――という方向に進みがちだが、それだけではなかなか受け入れられない。障害者の知へのアクセスの保障や1億総活躍社会など、もっと国の政策や方針を意識すべき。その実現のために本が必要で、図書館を充実させなければならないという文脈でなければ伝わらないのではないか。
相賀まったくその通り。ただ、現実に我々は営利事業を行っている。図書館が本を買う時、色々な買い方がある。競争入札も地域によっては1つの正しい政策だ。本来、本は値引きして売る商品ではないが、入札では値引きしたり装備品をサービスする。これは小さな書店ではできない。どうしても大資本に決まる。大資本が悪いというわけではないが、入札をやるときに別の道はないのかそろそろ考えてもらいたい。
例えば各都道府県組合には書店商業組合がある。入札ではなく、各県の書店商業組合と地域の図書館が話し合って、小さな書店にもうまく利益を分散することはできないか。今までのやり方も1つのやり方だが、別のやり方を考えることも大事だ。
いま書店が本当に苦労している中で、このやり方が必ずしもすべての書店の救いになるとは限らないだろう。でも、最寄りの書店があることは地域の人たちにとって便利で楽しいことだということを考えて、地域の課題の1つにしていただきたい。今日は全国から図書館関係者の皆さんなどがたくさん集まっているので、考えを述べさせていただいた。
成瀬最後に言いたいことがあれば。
保坂SNSの炎上問題はネットに関する基礎的な知識の欠如から起きる場合が多い。子供たちと話をすると、ネットがすべてで、分からないことがあると検索する。その情報の中には、質の高いものもあれば、どうしようもない嘘もある。そういうことを知らないと、社会はどんどんおかしくなる。図書館は、ネットリテラシーを学ぶ空間としても適しているのではないか。
高齢化社会における65歳以上1人暮らし男性の問題もある。国立人口問題研究所の調査で、まったく会話をしていない人が16・7%いる。6人に1人は誰とも口をきかず、もしかしたら図書館にいるのではないか。男性は会社や組織から離れると弱い。仕事の中で知識や技能を身につけているのに、仕事以外の付き合い方が分からない。
こうした65歳以上1人暮らし男性が、郷土史や時事問題などをテーマに一緒に議論したり、中高生などと世代を超えて話し合ったりすれば、素晴らしい能力を発揮できるのではないか。図書館という空間は、そのいい舞台になると思う。
森地域社会の中に知へのアクセスが満ちた状況を作ることが一番大切。そうすれば一人暮らしで会話のできない老人も少なくなる。日本図書館協会の政策としては、書協や書店組合との関係をどうするかが問題となる。図書館が単独で本を集めて来館者に貸しているだけでは、地域の中に読書文化を育てることはできない。地域の書店や出版社と組んで、地域全体で知へのアクセスのできる社会を作らなければならない。
相賀団塊の世代の人たちが図書館に行った時、昔聞いた本を読みたいと思っても、ひどく傷んでいたり、30年以上前の本だと文字が小さかったり、ルビが読みにくかったりという経験があると思う。そこで、元の本と同じ体裁は無理だけれども、プリントオンデマンドでもう一度作るということを、出版デジタル機構でやろうと思っている。
過去の本のリバイバルではなく、まったく手に入らなかった本が出てくる可能性もあるし、1つの図書館でうまくいったデータを他の図書館に流すこともできる。そのような形で動き出すのではないか。過去に出た読むべき本をもう一度掘り起こすことは図書館の重要な仕事。出版社もお手伝いしたい。

蔵書数、不十分な状況/学校図書館の現状に関する調査/文科省

文部科学省が10月13日に公表した2016年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果によると、同省が学校規模に応じて定めた蔵書数である学校図書館図書標準を昨年度末に達成している学校の割合は、小学校が66・4%(14年度調査60・3%)、中学校が55・3%(同50・0%)にとどまった。前回より増加しているものの、その割合はまだ十分でないことが明らかになった。
この調査は、学校図書館への司書教諭や学校司書の配置状況、図書の整備状況、読書活動の状況等を調査。08年度以降は隔年で実施している。調査対象は、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、義務教育学校および中等教育学校。
今年4月1日現在、学校司書を配置している学校の割合は、小学校が59・2%(同54・4%)、中学校が58・2%(同53・1%)、高校が66・6%(同64・4%)と、小・中・高校すべてで前回より増加した。
図書の整備状況では、百科事典や図鑑などをセット配備している学校のうち、小学校の55・3%、中学校の62・6%、高校の86・6%が、刊行後10年以上経過したものを使用していることが分かった。蔵書をデータベース化している学校の割合は、小学校が73・9%(同71・6%)、中学校が72・7%(同69・9%)、高校が91・3%(同90・5%)。学校図書館に新聞を配備している学校の割合は、小学校が41・4%(同36・7%)、中学校が37・7%(同31・8%)、高校が91・0%(同90・0%)と増加した。
全校一斉の読書活動の実施状況は、小学校が97・1%(同96・8%)、中学校が88・5%(同88・5%)、高校が42・7%(同42・9%)とほぼ横ばい。
公共図書館との連携を実施している学校は、小学校が82・2%、中学校が57・5%、高校が51・1%だった。

マガジントップが破産

マガジントップ(東京都渋谷区、坂本文雄社長)は11月2日、東京地裁から破産開始決定を受けた。破産管財人には安藤信彦弁護士(安藤総合法律事務所、千代田区永田町2―14―3、電話03―3597―7700)が選任された。負債総額は1億9527万円。
東京商工リサーチによると、同社は昭和52年設立の老舗の出版、雑誌企画編集業者。旅行とグルメ分野を得意とし、これまでに自社出版雑誌として「露天風呂・貸切風呂の宿」「一万円以下の宿」などの発刊実績があった。近年は他社発行の旅行、グルメ、インテリア関連雑誌、ムック等の企画制作、請負が中心で、平成27年11月期には売上高約1億2500万円をあげていた。
しかし、28年9月に坂本社長が急逝する事態が発生。借入金の返済負担も重荷となっていたなかで実質的に今後の事業継続が困難となり、役員申し立てによる準自己破産を申請し今回の措置となった。

4店が10年連続三つ星獲得/ミシュランガイド東京2017

日本ミシュランタイヤは11月29日、東京・港区のグランドプリンスホテル新高輪で、飲食店を星の数で評価する『ミシュランガイド東京2017』の出版記念パーティを開き、掲載店を発表した。2007年にアジア初のミシュランガイドとなる東京版が発行されて今年で10年目を迎え、10年連続で最高評価の三つ星を獲得した4店を表彰した。
今年掲載された飲食店は計542店。三つ星は12店、二つ星は54店、一つ星は161店が獲得した。星は付かないもののコストパフォーマンスが高く良質な料理を提供するビブグルマンは315店。
10年連続で三つ星を獲得したのは、日本料理店の「かんだ」、フランス料理店の「カンテサンス」と「ジョエル・ロブション」、寿司店の「すきやばし次郎本店」。ラーメン店では「鳴龍」がビブグルマンから一つ星に評価を上げた。
パーティでポール・ペリニオ社長は「東京は1つの都市としては最も多くの星が輝く街として脚光を浴び、ミシュランガイドのコレクションの中でも注目されている1冊。東京の食の素晴らしさを世界に発信するお手伝いができていれば幸い」とあいさつした。
ガイドは12月2日に発売された。本体3000円。

高齢者向けの読書活動学ぶ/家の光読書ボランティアスキルアップ講座

家の光協会は10月5日、東京・新宿区の飯田橋レインボービルで第11回家の光読書ボランティアスキルアップ講座を開き、60名が受講した。日書連など後援。
児童文学作家・正岡慧子氏が「はじめましょう!読書ボランティアお年寄りといっしょに読書を楽しむ」と題して講演。「高齢者の読書活動では、読んであげるだけではやる気を奪うことがある。読み合って楽しむこと、読んでもらって聞くこと、先輩の尊厳を大切にしながらうまく読めるように指導することが大切」として、お年寄りが読むのに適したお話、読み方、具体的な準備の方法と会の進め方などを説明した。
このあと、幼年童話作家・すとうあさえ氏が「『行事とあそびのえほん』を使って、楽しもう!」と題して講義・実演を行い、端午の節句、七夕、お月見・中秋の名月、冬至など季節の行事を中心にした読み聞かせ会の構成について説明した。
正岡氏、すとう氏、児童文学作家・光丘真理氏が講師を務めたワークショップ「お年寄りに読んでもらうための実践と場づくり」では、ギタリストの原荘介氏も参加し、お話と音楽のコラボレーションを楽しみながら、グループ別に実践を行った。
受講者からは「主体的に取り組むことの楽しさをあらためて認識した」「何回参加しても新しい発見がある」などの声が聞かれ、好評のうちに終了した。

羽田圭介芥川賞受賞後第1作などをアピール/講談社2016年秋冬新刊説明会

講談社は11月22日、東京・文京区の本社で「2016年秋・冬新刊説明会」を開催した。
冒頭、野間省伸社長は「5月の説明会で紹介した塩田武士さんの『罪の声』は山田風太郎賞を受賞し、崔実さんの『ジニのパズル』は芥川賞の候補になった。今回のプログラムもバラエティに富んだ充実したものになっている。今年は映像化作品が国内外で好調に推移し、ノンフィクションのベストセラーが数多く生まれた。コミックも順調で、特に電子書籍は9月の販売金額が対前年同月比168%。こうした1つひとつのヒットが積み重なり、今期の業績は前期を上回るのではないか」と話した。
説明会では各事業局や関連会社の著者・担当編集者が登壇し、新刊書籍のプレゼンテーションを行った。
第5事業局は、羽田圭介がビデオ出演で登場し、芥川賞受賞後第1作『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』について自ら紹介。「これが本当に書きたかった作品。新しいゾンビ小説として楽しめる」と話した。このほか、上田秀人『竜は動かず奥羽越列藩同盟顛末(上・下)』、柚月裕子『合理的にあり得ない上水流涼子の解明』、木内一裕『バードドッグ』を紹介した。
第3・第4事業局は、連載開始20周年を機にスタートした『カードキャプターさくらクリアカード編1巻』と同・特装版、藤島康介『トップナウGP1巻』、『雲田はるこ原画集』をアピールした。また、来年1月17日創刊のDVD付き英語教材『週刊おもてなし純ジャパENGLISH』を説明した。
第1事業局は、来年1月に『日本列島100万年史』で通巻2000番を迎える新書「ブルーバックス」について、27年ぶりに装幀をリニューアルすることや、著者や各界著名人からの記念エッセイをまとめた無料小冊子を配布することなどを説明した。
第2事業局は料理研究家・村上祥子の『魔法の粉「れんこんパウダー」健康法』、第6事業局は『テレビマガジン創刊45周年特別編集本郷猛/仮面ライダー1号』、芸人・松元ヒロが演じ続ける1人芝居を絵本にした『憲法くん』をアピールした。
関連会社の講談社エディトリアルからは、DVD付き『AYAボディメソッドBASICパーツ集中1日10分1週間!』(仮)の内容を、著者AYA氏が身振り手振りで説明。講談社ビーシーは、北海道にのみ生息する小鳥シマエナガを撮り下ろした動物写真家・小原玲の写真集『シマエナガちゃん』を紹介した。

米マーベル作品題材にマンガ賞を新設/週刊少年マガジン

講談社の週刊少年マガジン編集部は、ウォルト・ディズニー・ジャパンの協力の下、新しいマンガ賞「マガジン『マーベル』マンガ賞」を創設し、作品の募集をスタートした。米ニューヨークに本社を置く大手アメリカンコミック出版社「マーベル」のキャラクターを題材としたマンガ作品のネームを募集し、特選受賞作は連載・単行本化が確約されるほか、賞金300万円が贈られる。
同賞は、プロアマ問わず誰でも応募可能。題材は「アイアンマン」「キャプテン・アメリカ」「スパイダーマン」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の4タイトルから選び、ジャンル・内容は自由。特別選考委員としてマンガ家の真島ヒロ氏、マーベル副社長のC・B・セブルスキー氏、チーフ・クリエイティブ・オフィサーのジョー・ケサダ氏らが参加。応募締切は17年2月28日。発表は「週刊少年マガジン」17年5月中旬発売号等を予定している。
特選を受賞した作品は「別冊少年マガジン」「マガジンポケット」「マンガボックス」いずれかで連載し、単行本化する。また、マーベル本社見学と賞金300万円が贈られる。入選は賞金50万円、佳作は賞金10万円が贈られる。
詳細は同誌の公式サイト「マガメガ」に掲載。

夢枕獏さんら3人に児童出版文化賞/小学館

第65回小学館児童出版文化賞は、にしがきようこ氏の『川床にえくぼが三つ』(小学館)、夢枕獏氏・作、山村浩二氏・絵の『ちいさなおおきなき』(小学館)に決まり、11月10日に東京都千代田区の如水会館で贈呈式が行われた。
贈呈式では、小学館・相賀昌宏社長のあいさつ、審査委員の伊藤秀男氏による選評の後、受賞者に賞が贈呈された。
にしがき氏は受賞作について、インドネシアで暮らしたとき見聞きした体験をもとに書いたと説明し、「物語を書き始めた頃から、いつかお話にできないかと夢見てきた。試行錯誤、七転八倒を繰り返して形になり、このような大きな賞をいただいてうれしい」と述べた。
夢枕氏は「最初に原画を見せていただき、これが素晴らしかった。今回賞をいただけたのも山村さんのおかげ。またもう1冊やりましょう」と呼びかけ、山村氏は「不思議な巡り合わせで獏さんの文章を絵本にする機会を得て、まさか賞をいただけるとは想像だにしなかった。僕が最初に買った本は、小学館から出た赤塚不二夫先生の『まんが入門』で、最初は漫画家になりたくて絵を描き始めた。小学館の伝統ある賞をいただけたことを光栄に思う」と話した。

万引き防止を訴える/啓発キャンペーンに参加/福岡組合

福岡県書店商業組合(安永寛理事長)は11月16日、福岡市博多区のJR博多駅前広場で、福岡県警・福岡県万引防止連絡協議会主催の「万引き防止啓発キャンペーン」に参加した。
組合として参加するのは今回で6回目。なお、組合独自としては、福岡市の天神地区で恒例の万引防止キャンペーンを毎年7月の「海の日」に実施しており、13回目となっている。
今回のキャンペーンには組合役員5人が参加し、組合が提供した「万引きは犯罪です。全国の書店は万引0を目指します」と印刷したチラシとシャープペンシルのセット1000組を道行く人に手渡し、万引き防止を訴えた。
福岡県警によると、青少年の万引き比率は減少したものの、高齢者の比率が増加傾向にあるという。
安永理事長は「青少年の健全育成と社会秩序を守るために万引き防止を訴えている。今後も積極的に参加、協力していく」と話した。(加来晋也広報委員)

書店実務手帳を発売/トーハン

トーハンはこのほど「書店実務手帳2017年版」を発売した。
出版市場の概況等の各種データ、売場別年間スケジュール、主な雑誌の発売日(約380誌掲載)、出版社名簿(約1000社掲載)、展示冊数算出表、資格試験一覧など、日々の業務に役立つ資料をコンパクトにまとめた、業界人必携の専門手帳。150×85㍉、本体759円。
同手帳の取り扱いおよび入手については、トーハン複合第二事業部まで。℡03(3266)9541

連結、単体ともに減収増益/トーハン中間決算

トーハンは11月28日、第70期中間決算(平成28年4月1日~9月30日)を発表、単体の上半期売上高は2153億3200万円で前年比1・3%減少した。
売上高の内訳は、書籍800億3800万円(前年比0・2%増)、雑誌788億6500万円(同3・1%減)、コミック269億4900万円(同6・4%減)、MM(マルチメディア)商品294億7900万円(同4・6%増)。書籍とMM商品は前年をクリアしたが、雑誌とコミックは前年割れし、売上減少の要因となった。
売上総利益は同0・7%減の247億5800万円。全社的なコスト削減で販売費及び一般管理費は売上総利益の伸びを2・2ポイント下回り、営業利益は同16・7%増の32億8800万円。経常利益は同11・1%増の20億100万円、中間純利益は同0・4%増の12億9400万円と減収増益の決算になった。
返品率は、書籍が同0・3ポイント増の45・9%、雑誌が同0・3ポイント減の48・2%、コミックが同1・4ポイント増の30・4%、MM商品が同1・6ポイント増の13・4%で、総合では同0・1ポイント増の42・3%。
書籍は、児童書と学習参考書が好調だったほか『天才』(幻冬舎)や『おやすみ、ロジャー』(飛鳥新社)などが売上に貢献。MM商品は「&Partners」の売場を積極的に拡大、トーハンオリジナル商材の製造・販売に取り組み、前年を超える実績を上げた。雑誌は書店部門・CVS部門ともに仕入配本改革を推進。「前号併売施策」「時限再販キャンペーン」なども実施し、前年度上期より売上の減少幅を縮小、返品率も改善した。コミックは送品が前年より4・4%悪化。前年ヒットした『キングダム』(集英社)の反動や、電子コミック拡大の影響とみられる既刊本の不振が響いた。
施策面では、①TONETSVとスコアVを活用した売場改善②店頭客注増加③店頭活性化プロジェクト――の営業重点3施策を継続して推進。3施策全てに取り組んだ書店のPOS前年比は99・9%で、全国平均を3・1ポイント上回った。雑誌対策では、雑誌の銘柄単位ごとに過去実績と商品特性を加味した「仕入プラン」を策定、1誌ごとに目標設定と仕入進捗検証を行い実売率をアップさせた。複合売場開発では、全支店での文具研修を実施するなどフォローアップ体制を確立、この2年間で「add文具」の導入は約3百軒、大型文具売場「notanova」の導入は15軒となった。
連結対象子会社15社を含む連結決算は、売上高は前年比1・4%減の2227億1000万円、経常利益は同52・4%増の20億6300万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同77・6%増の12億9000万円で、単体と同様に減収増益の決算となった。

児童養護施設に図書70冊を寄贈/静岡日販会

静岡日販会はこのほど、児童養護施設協議会を通じて、児童図書70冊を県内の児童養護施設4カ所に寄贈した。
今年で3回目の取り組みとなる。児童図書は、事前に養護施設から希望を聞き、幼児向けの絵本や小中校生向けの小説などを用意した。
11月25日、県庁で行った図書贈呈式で、斉藤行雄会長(谷島屋)が図書寄贈の主旨を説明した後、県健康福祉部・山口重則部長に目録を贈呈。川勝平太県知事によるお礼状を山口部長から手渡された。
斉藤会長は「家庭を離れて暮らす子供たちの支えになればいい」と話し、山口部長は「子供にとって本の力は大きく、心の栄養になる。有効に使いたい」とお礼の言葉を述べた。

注文品物流拠点1月に統合移転/大阪屋栗田

大阪屋栗田はOKC(埼玉県戸田市氷川町)とOKC第二(埼玉県戸田市美女木)物流センターを統合移転する。
移転先は埼玉県川口市で、名称を「大阪屋栗田関東流通センター」に変更する。書店注文品や倉庫補充品など、現在OKCとOKC第二で受品しているすべての注文品が対象となる。
OKCとOKC第二の荷受最終日は12月27日。新センターの荷受け開始日は来年1月5日で、荷受曜日は月曜~金曜、荷受時間は午前8時~午後5時。なお、移転作業に伴い、12月28日と29日はOKC、新センターともに注文品の荷受けはできない。
移転先は以下の通り。
〒334―0076埼玉県川口市本蓮1―14―1(日の出運輸倉庫内1F、3F)電話048(233)9387(来年1月5日から開通)

売上高2970億円、2・7%減/日販中間決算

日本出版販売(日販)は11月22日、第69期中間決算(2016年4月1日~9月30日)を発表。雑誌の落ち込み、書店店頭の売上減少、輸配送効率の悪化、書店子会社の不採算店舗撤退や新規出店にかかるコスト増、円高の影響で、連結は減収減益となった。単体は高利益率商材・企画の拡大や返品率の改善により減収ながら増益となった。
日販グループ(連結子会社27社)の連結売上高は前年比2・7%減の2970億3600万円と、6期連続の減収となった。
損益面では、営業利益は同33・6%減の7億6100万円、経常利益は同30・2%減の9億6400万円、中間純利益は過去10年間で最も低い水準となる同73・2%減の7500万円で、減収減益の決算となった。
単体の売上高は同1・9%減の2432億5800万円。商品別内訳は、書籍が同1・1%増の1135億4700万円、雑誌が同5・5%減の1138億4000万円、開発商品が同4・0%増の158億7000万円。書籍と開発商品は増収となったが、雑誌の落ち込みに歯止めがかからなかった。
返品率は同0・7ポイント減の37・4%。商品別内訳を見ると、書籍が同0・5ポイント減の33・7%、雑誌が同1・4ポイント減の40・6%で、ともに改善した。一方、開発商品は同6・3ポイント増の38・9%と悪化した。
損益面では、営業利益は同127・5%増の6億5100万円、経常利益は同45・0%増の10億8800万円、中間純利益は同426・8%増の8億4900万円で、減収増益だった。
商品別店頭売上の概況は、雑誌は定期誌・ムックともに落ち込みが続いている。定期誌は同4・8%減と苦戦しているが、女性ファッション誌は宝島社の好調な実績を受けて同3・1%増。女性ファッション誌が対前年プラスになったのは11年以来5年ぶりとなる。一方、総合誌は昨年芥川賞受賞作「火花」を掲載した「文藝春秋」が好調だった反動によって同12・1%減。ムックは同3・5%減となった。
書籍は児童書と学参が前期から好調を維持している。一方、文芸書は昨年の大ヒット作『火花』(文藝春秋)の反動で同10・3%減と苦戦した。
コミックスは『アオハライド』『オオカミ少女と黒王子』(ともに集英社)などの大型タイトルの完結の影響で同4・8%減となった。
施策では、PARTNERS契約店132法人の書籍返品率は同0・6ポイント改善して37・7%、雑誌返品率は同0・8ポイント改善して36・2%となり、返品率30%未満は22法人だった。4%を目指す書籍収益改善率は0・3%にとどまった。
出版社34社と雑協の協力のもと雑誌80誌・延べ136点の規模で書店388店で実施した定期誌時限再販企画「雑誌夏トクキャンペーン」は、実施店の実売率が60・9%で未実施店との差が5・5ポイント、実売伸長率が109・4%で未実施店との差が3・4ポイントと、ともに未実施店を上回った。
記者会見で酒井和彦常務は、通期の見通しについて「上期と下期と傾向が大きく変わるとは思えない。書籍は大きく下がることはないが、雑誌は想定以上にマイナストレンドが強くなっている。開発商品は書籍と親和性の高い商材に取り組み、対前年プラスになると見ている。書店子会社のスクラップアンドビルドは継続して行う」と述べた。