全国書店新聞
             

平成13年3月7日号

再販維持の決議採択

自民、民主、公明、共産など各党に所属する衆・参両院の超党派議員約九十名で結成している活字文化議員懇談会は二月二十七日午前十時から衆議院第二議員会館で議員総会を開き、「著作物再販制度が廃止されれば国民が等しく文化を享受する権利を損なう。
再販制度維持に向け立法府の役割を果たす」とする緊急決議を採択した。
活字懇は肥田美代子事務局長(民主、比例近畿)の司会で始まり、最初に各党代表幹事があいさつ。
自民党・中川昭一(北海道11区)氏は「公取が三月に判断を出すことを踏まえ緊急に議連の総会を開いた。
我々は憲法に保証された『健康で文化的な生活を営む権利を国民に保証する』観点から、この議連を推進していきたい」とあいさつ。
民主党・中野寛成氏(大阪8区)は「情報は民主主義の原点、文化は精神的な食べ物。
これを今日まで平等に与えていたのが再販制度だ。
いよいよ大詰めを迎えたが、再販制度の維持発展のため力を合わせたい」。
公明党・冬柴鐵三(兵庫8区)氏は「日本全国どんな田舎でもベートーベンのレコードが手に入る。
規制緩和で大事なものを失ってはいけない。
公取は広く国民の利益を守る立場で、賢明なる結論を」。
保守党・二階俊博(和歌山3区)氏は「大事なところにさしかかっているが、党派を越えて議員が集まっている。
必ずや期待に応えられる結論になる」と述べた。
著作者の立場から日本ペンクラブ言論表現委員長・猪瀬直樹氏は「できるだけ多くの種類が書店に並ぶことが重要で、再販がなくなれば書店はコンビニと同じになる」とペンクラブの考えを説明。
作家・森村誠一氏も「再販がなくなれば売れ筋だけが書店に並び、文芸が衰退するのではないか」と、文化的な影響を指摘した。
日本音楽著作権協会の遠藤実会長は「POPから演歌、歌謡曲、雅楽、童謡といろいろな音楽が揃っていることが重要。
儲かるものだけでは心の豊かさを失う」と、実作者の立場から再販の重要性を強調した。
公正取引委員会からは楢崎憲安取引部長が出席。
再販見直しの検討状況として「競争政策の観点だけでなく文化普及・振興面もあり、廃止の場合の影響について論点を公開してパブリック・コメントを求めたところ、三万弱寄せられ、文化・公共面を懸念する意見が多かった。
同時に著作権団体、消費者団体からも意見聴取を進めている。
意見については結論を出す前に公表したい。
各省庁の意見も踏まえ三月末までに再販制度の存廃について結論を得る」と報告。
文化庁の遠藤啓文化部長は「文化の振興・普及に極めて大きな役割がある、引き続き著作物の再販制度は維持が必要」と、再販存続の考えを改めて明確にした。
関係団体からは日本新聞協会滝鼻卓雄新聞再販プロジェクト座長、日本新聞販売協会山畑儀雄会長、書協渡邊隆男理事長、日書連萬田貴久会長、日本レコード協会寺島昭彦再販担当理事の各氏が再販制存続を主張した。
このうち日書連萬田会長は「再販を廃止すれば中小書店の転廃業が進む。
効率だけを追及するCVSでは三百誌しか扱わないが、中小書店は七百から千の雑誌を販売している。
最寄り書店を失えば児童、高齢者のアクセスの手段が奪われる」と、書店の果たしてきた役割を強調した。
最後に坂井隆憲事務局長(自民、佐賀1区)が別掲のアピール文を朗読、拍手で採択して決議文とした。

−無題−

緊急決議公正取引委員会は、著作物の再販売価格意地制度の存廃について、この三月末までに結論を出すとしている。
再販制度は書籍、雑誌、音楽用CD、新聞などの振興と普及に大きく貢献している。
再販制度が廃止されると、著作物の全国同一価格制や新聞の個別配達制度は崩壊し、国民が等しく文化を享受する権利を損なうことになろう。
われわれ活字文化議員懇談会は、国民の豊かな創造性と質の高い文化・芸術の限りない発展のために、党派を越えて結束し、再販制度維持に向けて立法府としての役割を果たすことにする。
平成一三年二月二七日活字文化議員懇談会

中小書店への配慮望む

東京都青少年健全育成条例の改正問題で、東京組合は二日に開かれた理事会で「厳しい警告・処罰を前提とする有害図書の区分陳列義務化には疑問と不安がある。
条例改正について公平で慎重な審議を望む」とする要望書を都議会に提出することを決めた。
都条例改正案の主な点は、■有害図書指定の判断基準として「性的感情を刺激し、残虐性を助長するおそれがあるもの」に加え、「自殺もしくは犯罪を誘発」するものを追加した、■青少年有害指定図書などを販売する場合の区分陳列の義務付け、■違反者への警告と罰則として三十万円以下の罰金、■自動販売機管理者の設置義務化−−など。
東京組合では、指定図書の販売状況、区分陳列の実施について二月末に緊急に組合員アンケートを実施しており、大橋信夫販売倫理委員長から中間集計が報告された。
これによると回答店二百五十五店のうち、指定図書類を販売しているとしたのは九十八店で約四割。
このうち区分陳列を「している」としたのは八十店、「していない」としたのは十八店で、区分陳列しない理由として「店舗が狭く区分できない」「陳列場所が容易に監視できる」「ビニール袋に入れている」などの理由があげられた。
大橋委員長は「回答数が少ないので、販売店はもう少し多いだろう。
区分陳列の対象になる指定図書類の意味も正しく伝わっているかどうか。
指定図書が紛れ込む場合もある」などと指摘して、さらにアンケートの回収を進め、分析を急ぐ方針。
下向副理事長は「東京都の調査では区分陳列をしていない店が半数以上ということでアンケート結果とギャップがある。
区分陳列を強要することは、書棚の新設、改造などの費用がかかり、零細書店は廃業に追い込まれかねない」として、中小書店への配慮を求め、都議会に要望書を提出することを提案、拍手で可決した。

田辺聰氏を講師に学習会を開催

京都府書店商業組合は二月十七日午後二時から京都商工会議所で田辺聰氏(田辺企画代表、日本書店大学学長)を講師に第11回学習会を開催し、四十三名が参加した。
学習会のテーマは「21世紀へ勝ち残る書店の課題」。
田辺氏は「四年連続のマイナス成長の中、書店業界人のトップは今年の抱負として一つは改革の年、もう一つは原点に帰ることを挙げ、今年でマイナスを止めねばならないとしている。
出版界の最前線にいるのはお客さんと接する書店人。
欲しい本がすぐに手に入るか、わかりやすい売場、催事、また知識豊富なスタッフが相談に応じているかなど、読者が書店に何を求めているのかを常に考えていなければならない。
書店人はもっと勉強して相談に応えられるように、また各書店が情報の発信基地として各個人に合ったテーマの情報を発信し紹介することが必要だ」と述べた。
また田辺氏は、大は大なり、小は小なりに書店はやり方があり、各店に合った方法で顧客を増やすことを考えるのが重要と述べ、最後に一言「聞いたことはやったことにはならない」という言葉で締められ、考えさせられる勉強会となった。
(中西裕広報委員)

「本屋のメルマガ」配信へ

近畿ブロック情報化推進委員会(SIT)は二月十五日、大阪組合会議室で定例委員会を開催。
ブロック各府県より委員九名と近畿ブロック今西会長が出席した。
SITでは、書店のIT及び書店周辺の話題を語り合うメーリングリスト「hon−kinki」を主催しているが、この日の会議では、当初はこのメーリングリスト受信者を対象として「メーリングマガジン」を発行し、IT関連の情報を発信していくことが決定された。
このメーリングマガジンは、「本屋のメルマガKinky−Press」と名付けられ、二月末にも第一号が配信される予定。
また、京都組合からは小学館によるパソコン廉価リース斡旋が具体的に動き出したことが紹介された。
これによると、府内三カ所での説明会を終えて現在リース希望者を募集中で、三月中には希望店全てにセッティング済みのパソコンが設置される見込み。
奈良組合では、政府のIT関連予算を利用したパソコン講習会を、雇用・能力開発機構の協力を得て年間で実施することが決まっており、その具体的カリキュラムや募集要綱が提示された。
なお、奈良組合ではこの講習会で利用するためにノート型パソコン十五台を購入済みで、講習会終了後は組合員の中から希望者に廉価で斡旋される予定。
SIT会議は三月を休会とし、次回は四月十三日、場所を京都組合会議室に移して開催する予定である。
(川辺佳展広報委員)

京都出版三者交流会に114名

京都出版三者交流会が二月十四日午後六時半より京都駅前タワーホテル八閣の間で開催された。
この会は、地元出版社の編集・営業担当者、取次営業担当者、書店主並びに営業担当者等々、現場で仕事をしている者同志の情報交換の場を設ける目的で企画されたもの。
出版社五十二名、取次十二名、書店五十名の総勢百十四名の参加を得て大盛会となった。
京都組合片山理事長は開会のあいさつで、「書店の発案で三者の交流の場を設けるのに際し、版元、取次の賛同を得て多数の参加者を迎えられたことは非常に喜ばしい。
出版発祥の地、京都での新しい試みに期待している」と述べた。
また京都書協中西会長は、「再販は弾力運用等の展開で存続を求めていきたい。
また個々の書店としては大型店、CVSとの差別化を図ることが今後の発展に不可欠ではないか。
交流会内で販売・IT委員会等を設け、京都関係書の売り出し方の研究会を考えてはどうだろうか」とあいさつした。
取次代表のトーハン下村京都支店長は「『売れた』ではなく『売る』という熱意を持って版元と書店との間の情報をスムーズに伝達していきたい」とあいさつ。
乾杯あいさつで京都組合大垣副理事長は「日本文化発祥の地として、また出版文化の中心、新たなる発信の場としてこの会を続けていきたい」。
また、辻本指導教育委員長は「小学館からのパソコン導入もあり、今後インターネット利用による宣伝活動等に幅広く使用できるのではないか」と述べた。
会場には参加出版社による展示コーナーを設置し、交流が盛んに行われた。
会は人文書院影山氏の中締めで散会となった。
(中西裕広報委員)

1月は5・9%減

日販経営相談センター調べの一月期書店売上げは、十二月の二・七%減を三・二ポイント下回って平均五・九%減となった。
売場規模別では40坪以下店が奮わず七・三%減。
この他も41〜80坪店が五・四%減、81〜◆坪店が五・九%減、◆坪以上店が五・七%減といずれも五%以上下落した。
ジャンル別で前年を上回ったのは、◆坪以上店のみマイナスだった学参書(〇・八%増)と、40坪以下店と◆坪以上店で二桁伸びた「その他」(二・〇%増)のみ。
コミックは三・〇%減で、前月まで三カ月連続したプラス伸長がストップ。
一二・九%減少した実用書は各規模で落ち込みが激しく、特に40坪以下店では一八・三%減と二割近いマイナスだった。
客単価は平均一〇〇七・五円で一・八%増。
◆坪以上店は前年割れだったが、40坪以下店が一・六%、41〜80坪店が五・〇%、81〜◆坪店が二・四%それぞれ増加した。

「声」

書店新聞二月七日号の「本屋のうちそと」をひどく同情しながら読みました。
うちでも似たようなケースはこれまで何度も経験しています。
如意さんのような例は恐らくどこの書店も経験していることなのでしょう。
大抵の場合版元は問い合わせFAXに「品切れ」などのハンコを押して返送するだけの対応をしてきますが、せめてそれを混乱させないようホワイトボードや短冊管理箱の改善など、簡単で物理的に目立つ情報管理方法に早急に着手していただきたいと強く思います。
大型ネット書店での情報量は取次を上回るほど凄まじいものです。
現状ではネット非利用客との情報格差は大きく広がるばかりで、そこに拍車をかけているのが版元からの回答の遅さです。
せっかくの来店客に良いサービスが提供しにくい環境にあります。
多くの版元が東京にあることに対し、多くの書店は地方にあります。
最近は取次を通さずに直接版元にFAXや電話で連絡を入れる書店も多いでしょう。
多くのコストをかけた中小書店の努力を無駄にするようなことは極力避けていただきたいと、強く思います。
在庫状況の返信くらいは、問い合わせ後三〜五日以内にしていただきたいものです。
取次に対しては「梱包の簡略化」と「縦割り配送管理の撤廃、一括化」によって、一日も早い客注品納入システムの改善に早急に着手していただきたいと強く思います。
なお、インターネットが進化するにつれ、電話代を安くする方法が幾つも現れてきました。
ネットサーフィンをしないまでも、プロバイダを使ってのインターネット電話も簡単にできるようになってきました。
中にはパソコンがなくても普通の電話機があればつかえるサービスも幾つかあるようです。
遠距離通話のコストが高い方は、一度使ってみるとよいかもしれません。
参考までに(http://www.adpweb.com/net/index.htmlアド・フォーン)ところで書店人メーリングリストは現在、http://page.freett.com/aishodo/shoten_ML.htmのアドレスでiモードでの案内を行っています。
ぜひどうぞ。

「声」

書店新聞二月二十一日号「声」の文進堂書店・河合様、当店も駅商店街にある駐車場もない小さな本屋です。
同じように雑誌が複数でなくたった一冊しか入荷せず、それが折れていたり破れていたりして、定期購読分だったということはあります。
安い雑誌だったときはお客様はある程度、仕方がないと思ってくれていますが、少し値段が張る本ですと、「他店できれいなものを買う」とキャンセルされる場合もあります。
中には、版元から取り寄せまで待ってくださる方もいらっしゃいますが……。
私は次のことを提案したいと思います。
本より少し大きめの段ボールを本の下に入れるか、あるいは上と下にのせてから紐かけ(テープかけ)する。
そして、その段ボールは返品時に利用する。
少しコストはかかるかもしれませんが、破損品として売り損ね、返品するよりはよいのではないでしょうか。

人事

★講談社二月二十一日開催の定時株主総会及び取締役会で、役員と担当を決定した。
◎昇任、〇新任。
〔〕内担当局。
代表取締役社長野間佐和子代表取締役副社長(社業全般)〔広報室〕◎浜田博信専務取締役(総務・経理・関連会社担当)〔社長室・総務局〕◎文入秀敏同(編集担当)〔編集総務局・校閲局・資料センター・2002ワールドカップ編集部〕◎田代忠之常務取締役(業務・流通・国際部門担当)〔国際室・業務局・流通業務局〕近藤親司同(書籍出版部門担当)〔生活文化局・児童局・総合編纂局・辞典局〕畑野文夫同(雑誌編集部門担当)〔第四、第六編集局・ディズニー出版事業局・新雑誌開発部・新事業開発部〕山野勝同(販売促進・雑誌販売・広告部門担当)〔販売促進局・雑誌販売局・コミック販売局〕◎保月滋取締役〔第三、第五、第七編集局・キャラクター事業局〕五十嵐隆夫同〔文芸局・文庫出版局〕中沢義彦同〔企画室・第一編集局〕杉本暁也同(IT企画推進担当)〔デジタル事業局・情報システム室・IT企画推進部〕野間省伸同〔第二、第八編集局〕伊原道紀同〔営業企画室・宣伝局・書籍販売局〕〇浜村修同〔広告局〕〇大塚徹哉同〔学芸局・学術局〕〇鷲尾賢也同〔経理局〕〇横山至孝取締役(非常勤)佐藤寿一同鈴木俊男同松岡直昭同幸脇一英同小池武久同関根正之同笠倉弘道監査役楢原泰信同〇稲垣文美同秋山昭八顧問天野敬子同渋谷裕久〈機構改変〉2月21日付一、社屋建設準備室を解消し、その業務の一部を総務局庶務部に移管する。
二、IT企画推進部を新設し、担当役員直轄とする。
三、第四編集局Web1週間研究部をWeb1週間編集部と改称する。
★日本ヴォーグ社(2月1日付)ゼネラルディビジョンリーダー葛生寛販売部部長雨宮吉雄販売部販売一課課長長谷川紀子同販売二課課長荻原正江同販売三課課長和田琢哉★主婦と生活社◎昇任、〇新任(3月29日付)専務取締役総務部長◎富樫志浩常務取締役編集管掌・編集第一部長◎廣井尊士取締役経理部長・商品管理部担当〇村山秀夫監査役〇遠藤大介編集第二部長・役員待遇阿蘇品修編集第三部長・役員待遇江原礼子取締役・生産部担当山西邦夫なお、松野猛専務取締役、大坂雄生取締役、中野嘉雄監査役は退任した。

「声」

二月二十一日に日書連で公取委の課長、課長補佐とポイントカードについての質疑応答があった。
続く二十二日に衆議院第一議員会館で日書連全国代表、出版業界各代表、超党派国会議員四十数名の参加の下に「出版物再販制度存続を求める集会」が開催された。
この両会議に参加してみて次のようなことを考えた。
この四年間出版業界はマイナス成長を繰り返し、ついに一九九二年の水準に戻ったことは周知のことである。
今年に入ってそれは加速度を増し、出口は未だ見出せていない。
これは全国を覆っている不況と同次元で見られているが、本当にそうなのか。
不況に強いと言われた出版界はまやかしであったのか。
真の原因は不況だけではない。
それは、中小書店の想像を絶する廃業である。
この五年間で約五千軒にも達するのではなかろうか。
全国に書店は二万五千軒と言われていたので二割にもなる。
この間、大書店の出店やコンビニへの販路拡大などで、売場面積そのものは、逆に三〜四割も増床しているのだ。
一体中小書店はどんな役割を果たしてしてきたのか。
元々文化とは、地味に長い年月をかけて地中深く耕し、その結果として時々に美しい花を咲かせるものではないか。
十年位前までは正に戦後最大の出版文化百花繚乱の観を呈していた。
その時気づかなかったが、その花は、長い間数多くの中小書店が、店頭や配達先で、読者とフェイス・トゥ・フェイスで一冊の本を巡って楽しい談議を重ねながら咲かせてきたものではなかったのか。
集会に参加された国会議員の方々の発言を聞いていても、書物や活字に対する熱い思いを感じた。
教育や文化は元々手づくりなのだ。
本を著し、商品をつくる時もそうだが、普及の現場も同じだ。
出版は商品そのものが文化であるがゆえにそういう性質をもっている。
アメリカや英語圏では出版マーケットは膨大なものであり、書店の店頭はスーパー形式をとっても問題ないのかもしれない。
だが、北欧や人口の少ない国々では、その国の言語を守るために、出版に際して国から補助していると聞く。
人口一億二千万人のわが国はどうなのか。
世界に冠たる出版王国であった事は間違いない。
しかし、日本語の読書人口はこれのみであり、総売上が年二兆三千億円でしかない脆弱な産業なのだ。
日書連なる業界組織が他業界と比べて、週刊の機関紙をもち団結がことのほか固いのも、文化への「誇り」と、この「脆弱」さゆえではないか。
今、書店業界では、これまで中小書店が営々と耕してきた花=売れ筋を、巨大書店が「全点展示」で、コンビニが二十四時間営業で持っていってしまった。
これではまるで「さるかに合戦」ではないか。
出版社も取次もそうだ。
今まで中小書店と一緒に育ってきたのではなかったのか。
それを全国で数百の店舗でいいのだ、雑誌はコンビニ・駅売店でいいのだ、経営効率がいいのだと言ってはばからない。
ITが、巨大書店での店頭のわずかな読書相談員が、出版文化を耕し切れるのか。
文化の掘り起しなどというものは、全国で万単位の人々が、泥臭い人と人とのやり取りを長い時間をゆったりと掛けないと出来ないのではないか。
ここ数年公取委は出版物の「弾力化運用」、「部分再販」を迫り景表法の適用を業界に指導してきた。
そしてポイントカードだ。
その結果は、連綿と続くマイナス成長であった。
中小書店は、高齢化した「頑迷」な口やかましい店主で、時代遅れで舞台から消え去るのを待つのみなのか。
そうではない。
店舗の運営は経費がかからず、生活費もぎりぎりで、これまでの知恵がいっぱい詰まっていて、読者も抱えており、考えてみれば出版界の救世主ではないか。
今業界を救えるのは、公取委の言うように、中小書店を価格競争による弱肉強食の世界に晒して淘汰することではない。
大書店も必要だろうが、現在の状況でも既に危うい。
この脆弱でナイーブな業界を救う道は、取引条件を公正にし、皆が耕してきた美しい出版文化の花を売れ筋も含めて配本する。
中小の近代化に手を添える。
この三点を実施し中小書店に光を当て、蘇らせることではないか。
そして今や皆無になってしまった、個店としての中小書店への新規参入を容易にし、若い力を入れて業界を活性化することが求められている。
地域文化の耕し手を失い、砂漠化してしまってからでは遅い。

オリーブ6月に復刊

マガジンハウスは三月一日午後三時からウエスティンホテル東京で「第12回雑誌と本のグランプリ」を開催した。
第一部表彰式ではマガジンハウス赤木洋一社長が「昨年は大ベストセラー、華々しい企画を提供できなかったが、エネルギーを貯めた一年。
出版業界のパイが縮んだというが、パイを奪い合うのでなく、ユニークな企画で読者を創出していくのが本来。
商売の原点に戻り、新商品の開発、三次元的ネットワークで化学変化を起こしたい。
ポジティブに明るい未来、若さを信じているのが当社のDNA。
ご期待いただきたい」とあいさつした。
第12回グランプリの経過報告を行った吉田高営業担当取締役は、昨年の業績について「雑誌、書籍は実売が前年を下回ったが、雑誌返品率は三%強改善し、粗利益で八億円増加した。
クロワッサン、GINZA、ブルータスが好調で、昨年リニューアル復刊したリラックス、カーサ・ブルータスも良化して一年で黒字の目途がついた。
書籍は『美女入門パート2』など五〜二十万部の中ヒットが出て、雑誌連載とリンクした企画が好調だった」と報告。
十二回のグランプリで入賞書店は延べ二千五百八十店を数えるが、十二回を一区切りに新しいマガジンハウスの会に衣替えすること、六月十八日リニューアル復刊する「オリーブ」の目標達成を期待しているなどと述べた。
表彰式では入賞書店を代表して平安堂平野稔会長と、特別賞として雑誌部門anan賞、MUTTS賞、書籍部門「20世紀のビッグスタア・美空ひばり」、ムック部門「広末涼子写真集」、店頭ディスプレイ協力賞、同コンテスト最優秀賞の各書店を表彰。
入賞書店を代表して平安堂平野会長は「マガジンハウスはこれまで知的でおしゃれな若者文化をリードしてきた。
明るく伸び伸びした社風のもと、時代を作る企画に期待している」とあいさつ。
日販菅社長は「デジタル化、ネットワーク化が予想を越えて進展し、かつてない変革期。
混迷の時代だからこそマガジンハウスへの期待は大きい。
書店は読者にアピールする陳列の工夫を」と呼びかけた。
このあと、ドクターコパ、小林祥晃氏が「書店が儲かる風水術」を講演した。

創刊一年で230万部

昨年一月に創刊した三笠書房「王様文庫」は、創刊一年で七十二点、二百三十万部を発行。
当初計画していた二百万部を突破し、文庫戦争の中でまずまずの成績をあげていることが明らかになった。
二月二十八日に行われた記者会見で発表されたもので、昨年一月から十二月までに発行した七十二点のうち、最も売れたのは『朝だけダイエット』の三十三万部で、現在二十六刷。
これに『お金ウラの裏の世界』(14万部)、『乗れるクルマ乗ってはいけないクルマ』(11万部)が続く。
十万部突破は十点。
返品率は二〇%台半ば。
押鐘太陽社長室長は「エンターテイメントに特価した内容より、実用に近いものが売れている。
都市部に強い文庫」とし、「一年間トータルでは堅調な動き」と報告。
押鐘富士雄社長は「ぎりぎりで合格点ではないか」と評価した。
同文庫は発刊記念としてスリップ一枚二十円の特別報償を付けたが、特別取組店として二十位以内は六十円、千五百部以上五十円、千部以上四十円、グループ店三十円を出した。
一般報償は今年一月から五円に改定した。
年間販売順位のベストスリーは、一位ブックガーデン東京駅南口店、二位は同東京駅北口店、三位に紀伊國屋新宿本店。
ブックガーデンは上野、品川、秋葉原も含め、上位二十位以内に五店入っている。

少年部門に『コナン』

第46回小学館漫画賞の贈呈式が二日午後四時から、千代田区丸の内のパレスホテルで開催された。
受賞作は児童向け部門に島袋光年氏『世紀末リーダー伝たけし!』、少年向け部門に青山剛昌氏『名探偵コナン』、西森博之氏『天使な小生意気』、少女向け部門に篠原千絵氏『天は赤い河のほとり』、一般向け部門に浦沢直樹氏『MONSTER』。
贈呈式では、小学館相賀昌宏社長から受賞者に正賞ブロンズ像と副賞百万円を授与。
審査委員の弘兼憲史氏が審査経過を報告し、花束贈呈のあと受賞者が喜びの言葉を述べた。
最後に相賀社長が「今回から内規を変更し同一部門でも複数受賞できるようにした。
新古書店の影響などでコミックは厳しいものがあるが皆様のお力添えをいただきたい」とあいさつした。

大藪春彦賞に五條氏

第3回大藪春彦賞の受賞作は五條瑛氏『スリー・アゲーツ三つの瑪瑙』(集英社)、第21回日本SF大賞は巽孝之氏『日本SF論争史』(勁草書房)、第2回日本SF新人賞は谷口裕貴氏『ドッグファイト』、吉川良太郎氏『ペロー・ザ・キャット全仕事』に決まり、二日午後六時より千代田区の東京会館で贈賞式が行われた。
授賞式では選考委員の北方謙三氏が「五條さんの作品は全会一致で決まった。
大規模な国際謀略小説だが、描写力がしっかりしている。
五百万円の賞金は時間をプレゼントされたと思い、次もいい作品を」と選評。
初の女性受賞者五條氏にトロフィーと賞状が手渡された。
今年から大藪賞の審査委員長になった徳間書店松下武義社長は「徳間文芸三賞のうち大藪賞は徳間書店前社長が思いをこめて作った賞。
大藪家とともに全社をあげて守り育てたい。
SF大賞もお役に立てるよう努力していく」とあいさつした。

五月に『日経IT21』

日経BPは『日経IT21』創刊、『55歳からのパソコン』『感動の旅』ムックシリーズ発刊、『日経モバイル』新創刊の発表を兼ねた「謝恩の夕べ」を、二月二十七日午後五時から赤坂プリンスホテルで開催した。
新企画発表会で日経BP出版センター高橋文夫社長は、「五月の『IT21』で市販誌は十五誌になった。
『ベストPC』『PC21』などの好調を受けて、雑誌販売部数は五%伸びている。
書籍も『アマゾンドットコム』などのヒットで一四%増。
矢沢永吉『アー・ユー・ハッピー?』の出足も好調だ。
今年は二百五十点を上回る新刊を計画している」とあいさつ。
続いて日経BP吉村久夫社長は「技術と経営の情報はIT、バイオ、環境と大変な勢いで変わりつつあり、ビジネスマンの読書意欲も衰えていない。
しかし、アメリカの景気後退で環境悪化も予想される。
携帯の普及で若い人の読書離れもあり、情報収集のツールが増えて金と時間のぶんどりが始まる。
IT社会は便利だが危険もはらんでいる。
これに対応するには体系的知識が必要だ。
五月に創刊する『IT21』は五百万中小企業IT化のお手伝いをしていく狙い。
『55歳からのパソコン』シリーズもシニア層に対応した企画」と述べた。
『IT21』の桔梗原編集長は「メール、iモード、POSレジ活用など、ビジネスの現場で使いこなせる情報と事例をわかりやすく提供し、中堅中小企業が元気になるよう応援していく」と編集方針を説明した。
このあと、「二〇〇〇年日経BP雑誌グランプリ」の表彰式に移り、増加数、伸張率両部門の上位二十店に感謝状と副賞を贈った。
増加数部門一位はブックガーデン東京駅南口店、伸張率一位はブックマンズアカデミー前橋店。
二〇〇一年グランプリでは二十店を「ニューヨーク書店・ブックエクスポアメリカ視察の旅」に招待するほか、新たに全国を八ブロックに分けナンバーワン書店を表彰する。
入賞店を代表して文教堂書店島崎社長は「昨年来、雑誌売上げが落ち込み、深刻な状態。
消費低迷もあるが販売会社の返品削減とのミスマッチが多少あるのではないか。
日経BPは部数を絞り込んだ専門雑誌が多いため、どうやって適正部数を仕入れるかが重要になる。
『IT21』『55歳からのパソコン』シリーズは時宜を得た企画。
売れる企画を出す日経BPに感謝したい」とあいさつ。
トーハン金田社長は「日経BPは毎年三、四点の創刊誌を出し、多くの書店の売上げを伸ばしている。
新企画は読者の顔が見えているし、時代の波に乗っている。
四誌を成功させ、低迷する雑誌販売に活を入れてほしい」と祝辞を述べた。

−無題−

本屋のうちそと好みかどうかは別として、モーニング娘が時代に受け入れられていることは、誰でも認めないわけには行かないだろう。
その誕生のいきさつをたどると、成功のポイントは多様性にあったように思える。
大きい、小さい、リズム感がある、声がいい、明るい…。
いろんな個性を集めて、それぞれの出番を作った。
それが、ひとりでは生まれない、同じような個性ばかりのユニットでは作れない魅力を引き出すことになったのではないか。
これは出版業界にもあてはまると思う。
さまざまなスタンスや規模の出版社や書店が、それぞれに個性を発揮してはじめて、全体として活力が湧き魅力が出る。
経済効率だけからみると、小さい出版社や書店を相手にするのは確かに手間がかかって儲けが少ない。
淘汰されて当然だと考える人もいるだろう。
しかし、それを決めるのは、読者という消費者である。
手間暇かかる何かを求めている人がいることも否定しきれないのではないか。
人はパンのみにて生きるにあらず。
人間という生きものは、底の底まで経済にひれ伏してしまうわけではない。
向かう所敵なしといった勢いだったダイエーの例ひとつ見てもわかるように、それだけでは満足できない何かを内に秘めている。
だから、大出版社、大規模書店とコンビニさえあればいいということには決してならないと私は見る。
読者の顔を思い浮かべながら、大も小も硬も軟も包み込んだネットワークとして出版業界を捉える。
大きく柔軟な視点にこそ活路があると思う。
(如意)