全国書店新聞
             

令和3年12月15日号

中小小売商サミット/事業継続支援・消費喚起策の実施求める/日書連など小売8団体、岸田首相を表敬訪問

日書連など小売8団体で構成する全国中小小売商団体連絡会(小売連絡会)は11月29日に東京・千代田区の経済産業省本館で第20回全国中小小売商サミットを開き、角野然生中小企業庁長官と懇談。事業継続支援や消費喚起策の実施など中小小売商業者への支援を求める宣言文を手渡した。また、小売連絡会一行は翌30日、首相官邸に岸田文雄首相を表敬訪問して宣言文の主旨を説明。岸田首相は「中小小売商が希望を持って仕事に取り組める環境整備に努める」と応えた。
サミットでは、サミット実行委員長の全国商店街振興組合連合会・阿部眞一理事長があいさつ。阿部理事長は、令和1年の消費税率引上げに加え、新型コロナウイルス感染症による消費の大幅な落ち込みで国内経済が未曽有の難局に直面している中、中小事業者へ向け各種支援策が講じられたことに謝意を表明。コロナ禍の長期化を視野に入れた各種支援策の継続・拡充と思い切った個人消費喚起策の早期実施を要望した。
中小企業庁の角野然生長官は、中小事業者支援策として、事業復活支援金の新設や、資金繰り支援、事業再構築補助金の積み増しなどの施策を実施すると説明し、「各団体の皆様と連携して支援策を全国の中小企業にお届けできるようにしたい」とあいさつ。続いて阿部理事長から角野長官にサミット宣言文を手渡した。
各団体からの報告で日書連の矢幡秀治会長は、コロナの影響による巣ごもり需要で売上が伸び、大変な時には紙の本が求められているのだと実感したが、また以前のような厳しい売上に戻ってきていると書店の状況を説明し、出版物への軽減税率の適用、キャッシュレス決済手数料の軽減、学校教育のデジタル化への慎重な対応を要望。さらに、「大型書店を含めた優良経営店でも経常利益率が1%しかなく、また定価販売のため自分たちでは利益を調整できない。日本全国どこでも一定の価格で本を入手できることには賛成だが、その価格のうち23%程度しか利益をもらえていないのが現状だ。書店が存続していくためには適正な利益の再配分が必要で、出版業界の中にその動きはあるものの実現されていない。国からも実現へ指導をお願いしたい」と述べた。
翌30日は、8団体の首脳が首相官邸に岸田文雄首相を表敬訪問し、サミット宣言文を手渡した。岸田首相は、「地域の経済、雇用、文化を支える中小小売業の皆さんが希望を持って仕事に取り組んでいただけるよう環境整備に努める」と応えた。
〈第20回全国中小小売商サミット宣言〉
「全国中小小売商団体連絡会」は、全国各地域において地域住民の生活を支え、また地域コミュニティの一員として、地域社会への貢献や地域経済の発展に資するため活動している8つの中小小売商業者団体で構成する組織である。
現在、中小小売商業者は、令和1年10月に実施された消費税率引上げによる消費購買意欲の減退、相次ぐ自然災害や新型コロナウイルス感染症による消費の大幅な落ち込み等の影響を受け、過去に経験のない難局に直面している。
このため、政府においては新型コロナウイルス感染症の早期収束に引き続き取り組むと共に、苦境にある中小小売商業者に対し短期的・長期的の両面において、以下の措置を講ずるよう強く要望する。
1.中小小売商業者への事業継続支援と消費喚起策の実施
(1)厳しい状況にある中小小売商業者に対し、新型コロナウイルス感染症の影響長期化を踏まえた資金供給支援拡充、売上減少要件等を緩和した形での持続化給付金、家賃支援給付金等の実施と手続き簡素化、雇用調整助成金の特例措置延長、国税・地方税等の納税猶予、減免措置拡充等を図ること。
(2)新型コロナウイルス感染予防と経済の両立を進めるため、ワクチン接種の加速化等を進めるとともに、個人消費を喚起するために、GoTo商店街等のキャンペーン事業の複数年にわたる実施・拡充及び最大規模となるプレミアム商品券事業の実施を検討すること。
2.地域住民の生活を支え地域の社会経済に貢献する中小小売商業者への支援
(1)地域の持続的発展に向けて中小小売商業者等が行う街の環境・施設整備、賑わい創出等、多様性のあるまちづくり創出への支援策を講じること。
(2)新しい生活様式に対応するためのデジタル化、キャッシュレス化等を推進するための地域基盤整備支援と人材育成、専門家派遣等のソフト支援を講じること。
3.中小小売商業者に対する各種優遇税制の維持と拡充
(1)消費税関連について
①インボイス制度は、中小小売商業者に過度な事務負担、免税事業者の取引からの排除の可能性が高いことから、十分な検証を行い、実施の是非は慎重に検討すること。
②小規模・零細事業者の事務負担を軽減するため、簡易課税制度及び事業者免税点制度を維持するとともに、適用事業者の範囲拡大、免税点の引き上げを図ること。
(2)法人事業税外形標準課税の中小企業への適用について
外形標準課税を資本金1億円以下の中小企業には適用しないこと。
(3)中小企業関係税制の特例措置の延長等について
少額減価償却資産の取得価格損金算入特例措置、欠損金繰戻還付制度、交際費の損金算入特例措置の着実な延長と事業承継税制、デジタル化関連税制の拡充を図ること。
令和3年11月29日
第20回全国中小小売商サミット

「新年名刺交換会」を中止/出版クラブ

日本出版クラブ(野間省伸会長=講談社)は、来年1月に開催を予定していた「2022年出版関係新年名刺交換会」を中止すると発表した。
出版関係者が集う新春の恒例行事として開かれているが、昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から今回の開催も見送ることとした。

藤原直理事長を再選/粗利30%獲得運動を第一に取組む/宮城総会

宮城県書店商業組合は11月16日、仙台市青葉区の江陽グランドホテルで第40回通常総会を開き、組合員63名(委任状含む)が出席した。
照井貴広理事の開会宣言のあと、藤原直理事長があいさつ。「本年度もコロナ禍の影響で、組合活動が十分にできなかった。日書連ではここ数年、粗利30%獲得を目指し活動をしてきたが、やはりコロナ禍で話し合いは停滞せざるをえなかった。しかし今後ともこの活動を『一丁目一番地』として組合で取り組んでいきたい」と述べた。
引き続き、藤原理事長を議長に議案審議を行い、令和3年度事業報告、決算報告、令和4年度事業計画、収支予算案、役員改選など全ての議案を原案通り承認した。役員改選では、選考委員12名による指名推薦を総会で諮り、全員を承認。藤原理事長を再選し、新理事に笹沼悠司氏(アイエ書店)、石原聖氏(丸善仙台アエル店)を選出した。
永年勤続表彰は、田高佳枝(金港堂)、菅井友紀子(朝野堂)、芳賀史典、氏家友紀(ともにアイエ書店)の4氏。新型コロナウイルスの影響もあり、本年度も本人の出席は見合わせた。
(照井貴広広報委員)

別所理事長「厳しい1年に」/デジタル化、活字文化に影響/三重総会

三重県書店商業組合は11月27日、津市の三重県教科書特約供給所で第36回通常総会を開催し、組合員43名(委任状含む)が出席した。新型コロナウイルス感染予防の観点から委任状での参加を呼びかけ、本人出席は最少人数とした。
総会は石垣副理事長(北洞書店)の司会で進行。冒頭、別所信啓理事長(別所書店)は「長期化するコロナ禍も、ワクチン接種の拡大で感染者数が抑制され、行動や経済活動の制限緩和もあって、日常生活が徐々に回復しつつある。次年度もコロナ問題、デジタル化の活字文化への影響などで厳しい1年になると思うが、コロナ禍で感じた人と人とが接することの大切さ、健全な地域社会の重要性を組合員各位が再認識し、活動していただきたい」とあいさつした。
引き続き石井理事(石井書店)を議長に議案審議を行い、令和2年度事業報告、収支決算書、監査報告、令和3年度事業計画案、少子予算案などすべての議案を承認可決した。
総会開催後の懇親会は、昨年同様、新型コロナウイルス感染症対策のため取り止めた。
(冨森康宏広報委員)

新年合同懇親会中止を決定/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は11月2日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催。2022年北海道取協・出版社・書店組合新年合同懇親会は、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み中止することを決定した。(事務局・髙橋牧子)

年末年始にスタンプラリーキャンペーン/奈良組合

奈良県書店商業組合(林田芳幸理事長)は11月15日、大和郡山市のディーズブックスで令和3年度第2回理事会を開いた。
開会にあたり、林田理事長は「コロナは収まってきたが、業界には困難な問題が数多くある。一つずつ解決し、前進しよう」とあいさつした。
年末から年始にかけて読書推進のスタンプラリーキャンペーンを例年通り実施するが、今回は10館近い公立図書館が参加する見通しと報告された。書店と図書館のスタンプを4つ集めれば、抽選で図書カードなどが当たる。また、障碍者作業所への図書装備依頼を本格化する方針も示された。
次回理事会は来年2月3日。(靏井忠義広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「熱意のつながり」/千葉・ときわ書房本店文芸書・文庫担当・宇田川拓也

11月17日に発売された、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作、逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)の売れ行きが好調だ。
1942年のロシア。ドイツ軍の急襲により村人ともども殺された母親の敵を討つため、主人公セラフィマが女性狙撃兵として厳しい訓練と実戦を経て身を立てていく物語は、同賞史上初めて選考委員全員が満点をつけたことで早くから注目を集めていた。
私も版元のご厚意で発売前に拝読したところ、10年に1作級といっても過言ではない出来栄えに大いに唸った。そして、すぐに営業担当氏に連絡し、「この素晴らしい作品を最初に3桁売った店になりたいんです」と懇願し、サイン本百冊の確約を得る。ところが、あっという間に予約が80件を超えてしまい、「当店なら絶対に2百冊売り切りますから」とさらにお願いを重ね、サイン本2百冊という非常識な数をご用意していただけることに。
結果は、発売から10日ほどで完売と相成った。たったひとりの店員の「売りたい!」という気持ちを、無謀だと一蹴することなく応えてくださった版元関係者のみなさまと著者・逢坂冬馬氏にこの場をお借りして心より感謝を申し上げたい。
熱を伝え、熱に応える。その先で、読むひとの胸に熱を生むことができたなら、本を扱う者としてこれ以上の喜びはない。

コロナ不況打開、書店の底力で/万引撲滅へ県警との連携継続/福岡組合総会

福岡県書店商業組合は11月24日、福岡市中央区の福岡県教科図書会議室で第43期通常総会を開催し、組合員133名(委任状、書面議決書含む)が出席した。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から昨年同様、本人出席は少人数に絞っての開催とし、総会後の懇親会は中止した。
総会は加来晋也理事(朝日屋書店)の司会で進行し、森松正一副理事長(森松尚文堂)の開会のことばに続き、安永寛理事長(金修堂書店)があいさつ。「まだコロナ禍で心配は尽きない。第6波もどこまで広がるか分からないが、引き続き用心し、少なくとも2月くらいまでは書面議決やリモート会議を行っていく。協力をお願いしたい」と述べた。
続いて大塚常務理事(たけふじ文泉堂)を議長に選出して議案審議を行い、第43期事業報告・委員会報告、収支決算報告、監査報告、第44期事業計画案・収支予算案、組織案のすべての議案を原案通り全会一致で承認可決した。
第44期事業計画について安永理事長は、「今期もまだまだコロナ不況は続くと思うが、書店の底力で乗り越えていく」と述べ、①福岡県書店商業組合の組織・運営の強化②再販制度下における書店の役割の明確化③取引慣行の弊害是正④ネットワーク化による情報・物流の改善⑤読書推進と文字活字文化の振興⑥万引き防止・青少年健全育成の周辺整備――の6項目の達成に向けて、引き続き尽力すると宣言。「万引き問題については、福岡組合は県警と連携しながら地道に活動を行ってきた。昨今の少年法の改正による刑事処分可能年齢の引き下げや、被害届の手続き簡略化による摘発の強化により、最近は徐々に被害が減ってきているように思える。引き続き万引き撲滅に向けてコツコツと活動を行っていく」と表明した。
最後に白石隆之氏(白石書店)の閉会のことばで総会を終了した。
(加来晋也広報委員)

コロナ前より売上げ減少/物価高消費意欲減退を懸念/秋田総会

秋田県書店商業組合は11月7日、秋田市の加賀谷書店本社会議室で第35回通常総会を開催した。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から書面議決による出席を要請し、本人出席を限定して出席組合員17名(委任状含む)で行った。
総会は平野左近専務理事(ひらのや書店)の司会で進行し、はじめに加賀谷龍二理事長(加賀谷書店)があいさつ。新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、「コロナ禍で営業時間短縮や休業措置など重大な決断を迫られ、現在はコロナ禍の前よりも売上が減少している。夏以降は原油高でガソリン価格の値上がりが止まらず、配達を含む経費の掛かり増しが気がかり。色々なものが値上がりし、消費意欲が減退するのではないか」と危惧した。
また、人々の生活や働き方の変化にどのように対応
していくかが問われているとして、レジ袋が有料化されマイバッグを持ち歩く人が増えたことで万引が増えていることを懸念し、早急な対策が必要と訴えた。また、コロナ禍でキャッシュレス決済の利用が増え、決済手数料が重くのしかかっている状況を憂慮した。
引き続き加賀谷理事長を議長に選任して議事を行い、第1号議案から第7号議案まですべての議案を原案通り可決決定した。
(石川信広報委員)

組合の新春行事

◆愛知県書店商業組合「令和4年新春賀詞交歓会」
1月12日(火)午後5時より名古屋市中村区の四川菜館名駅店で開催する。

年間ベストセラー/コロナ禍の不安映す作品ランクイン/『人は話し方が9割』『スマホ脳』に共感の声

日本出版販売(日販)とトーハンは12月1日、2021年の年間ベストセラーを発表した。1位は、日販が永松茂久『人は話し方が9割』(すばる舎)、トーハンが大川隆法『秘密の法人生を変える新しい世界観』(幸福の科学出版)。2位は両社ともアンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮社)、3位は宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)だった。コロナ禍の社会環境の変化で、不安や問題への対応を連想させる作品が上位にランクインした。集計期間はいずれも2020年11月24日~2021年11月21日。
『人は話し方が9割』は2019年9月に発行し、初年度35万部、本年度50万部で累計85万部と順調に売上を伸ばした。コロナ禍で職場・友人・家族とのコミュニケーション不足が不安視される中、解決に向けての行動に注目が高まった。
スマホがもたらす人間の脳への影響を説いた『スマホ脳』は、2020年11月に刊行後、部数を伸ばし続け、累計60万部を突破している。自粛期間のスマホとの接触時間の増加や社会のデジタル化で、デジタルツールとの付き合い方に関心が集まったようだ。
アイドルを「推す」ことが生きがいの女子高生が主人公の小説『推し、燃ゆ』は、累計52万部を超え、作者の宇佐見りん氏が史上3番目の若さで芥川賞を受賞したことも大きな話題になった。
[トーハン調べ]
①『秘密の法人生を変える新しい世界観』大川隆法、幸福の科学出版②『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン、新潮社③『推し、燃ゆ』宇佐見りん、河出書房新社④『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ、中央公論新社⑤『人は話し方が9割』永松茂久、すばる舎⑥『星ひとみの天星術』星ひとみ、幻冬舎⑦『本当の自由を手に入れるお金の大学』両@リベ大学長、朝日新聞出版⑧『鬼滅の刃塗絵帳―蒼―、―紅―、―橙―、―藍―』吾峠呼世晴、集英社⑨『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』大野萌子、サンマーク出版⑩『呪術廻戦逝く夏と還る秋・夜明けのいばら道』芥見下々、北國ばらっど、集英社[日販調べ]
①『人は話し方が9割』永松茂久、すばる舎②『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン、新潮社③『推し、燃ゆ』宇佐見りん、河出書房新社④『星ひとみの天星術』星ひとみ、幻冬舎⑤『本当の自由を手に入れるお金の大学』両@リベ大学長、朝日新聞出版⑥『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ、中央公論新社⑦『鬼滅の刃塗絵帳―蒼―』『鬼滅の刃塗絵帳―紅―』
吾峠呼世晴、集英社⑧『秘密の法』大川隆法、幸福の科学出版⑨『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』大野萌子、サンマーク出版⑩『呪術廻戦逝く夏と還る秋』芥見下々、北國ばらっど、集英社

新刊紹介/『一万円選書』岩田徹著/本屋の仕事の楽しさ取り戻す一助に

「一万円選書」を手掛ける北海道砂川市「いわた書店」店主の岩田徹氏が12月6日、ポプラ社から『一万円選書北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』を上梓した。
一万円選書は、「選書カルテ」と称するアンケートに個人情報や読書歴などを記入してもらい、岩田氏が一つひとつに目を通して、それぞれの読者に合った本を一万円分選書して発送するというもの。
2007年に始めたこの独自の選書サービスは、さまざまなメディアでも取り上げられるようになり、いまや全国から注文が殺到、常時3000人待ちという大人気だ。この7年間で選書をした人は1万人を超えるという。
同書では、選書カルテの実物を掲載した上、一万円選書誕生の経緯、選書カルテが果たす役割、運命の1冊の見つけ方などを解説。経営危機を乗り越え、自分が売りたい本を売る「やりたかった本屋」を実現した仕事術を、岩田氏の体験をもとに詳細に書いた。
第3章「僕はこうやって本を選ぶ――いわた書店の珠玉のブックリスト」では、岩田氏が「選書カルテ」を読んでどんなふうにして本を選んでいくか、疑似体験することができる。
実際のお客さんとのやりとりも公開している。やりとりは選書して本を発送して終わりではない。選んだすべての本を読了したお客さんからの「どうして、これらの本を、わたしにと、お考えになったのでしょうか」という質問に、岩田氏は丁寧に答える。「コミュニケーション選書」とも言われる人気の秘密の一端を知ることができる。
多くの書店に一万円選書に取り組んでみてほしいと岩田氏は語る。そのためにこの本にノウハウをすべて書き込んだ。いわた書店の選書カルテを参考にしながら、各店の得意分野と個性に沿った形でやってもらえればと提案する。
一万円選書の実施店は全国に広がりつつある。岩田氏が理事を務める北海道書店商業組合の加盟書店でも、旭川の「こども冨貴堂」や帯広の「ザ・本屋さん」が展開している。選書を始めた書店はみんな「本屋の楽しさが蘇ってきた」と言ってくれるそうだ。いわた書店も一万円選書が軌道に乗ると、配本された本を店頭で換金する商売から抜け出し、自分が気に入って仕入れた本を読者に届けることを積み上げていくやり方に変えて、利益率が大きく改善したという。
「全国の独立系書店で取り組んでもらい、その数が百店にもなればこの業界は確実に変わります。町の本屋がよみがえり、読者が増えて、おもしろい本を出す編集者が増えるはずです」という。一万円選書を始めたいけれど自分にはちょっと無理、と躊躇っている書店に薦めたい一冊だ。
(ポプラ新書900円)

大阪府青少年健全育成優良店/家村書店・家村英嗣氏を表彰

令和3年度「大阪府青少年健全育成優良店表彰式」が11月25日、大阪市中央区のホテルプリムローズ大阪で開催され、大阪市中央区「家村書店」の家村英嗣氏を表彰。大阪府青少年健全育成条例の実効性を高め、青少年にとって良好な社会環境作りを進めるため、他の模範となる優良店として大阪府から顕彰された。
家村氏は、大阪府書店商業組合の出版販売倫理委員長として大阪少年補導協会の活動に参加し、少年更生福祉施設のレポートを大阪組合機関紙「組合だより」に長年にわたり寄稿。組合員に少年補導の活動に対する理解を深めた業績と、地域子ども会の副会長としての活動が評価された。
(石尾義彦事務局長)

10月期は前年比11・7%減/前年絶好調の反動で/日販調査店頭売上

日本出版販売調べの10月期店頭売上は前年比11・7%減。前年同月に2008年の集計開始以来の最高値を記録した影響もあり、2桁のマイナスになった。
雑誌は9・8%減。週刊誌は、「ジャンプGIGA2021AUTUMN」(集英社)や11月1日で解散したV6が表紙を飾った10月26日発売「anan」(マガジンハウス)などが売上を伸ばしたが、6ヵ月連続の前年超えがストップした。
書籍は7・0%減。全ジャンルでマイナスとなり、中でも新書が19・7%減と大きく落ち込んだ。児童書は、柴田ケイコ『パンどろぼう』(KADOKAWA)、廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋銭天堂16』(偕成社)などが牽引したが、0・2%減と惜しくも前年超えはならなかった。
コミックは20・1%減。前年同月に「鬼滅の刃」最新刊の発売や同時期に公開された映画が大ヒットした影響で前年を大きく下回ったが、2019年と比較すると18・1%増となっている。雑誌扱いコミックは、「呪術廻戦17」(集英社)、「名探偵コナン100」(小学館)などが大きく売上を伸ばした。書籍扱いコミックは、『ファイブスター物語16』(KADOKAWA)、『ヲタクに恋は難しい11』などが牽引し、前年を超えた。

大阪こども「本の帯創作コンクール」/受賞作品115点を表彰/今年も「朝日新聞紙上表彰式」で

大阪府書店商業組合、大阪出版協会、大阪取次懇和会などで構成する大阪読書推進会と朝日新聞大阪本社が主催する第17回2021大阪こども「本の帯創作コンクール」(帯コン)の表彰式と展示会は、コロナ禍で今年も中止となったが、朝日新聞大阪本社管内版(富山以南の北陸、近畿、山口を除く中四国)の11月17日朝刊で「紙上表彰式」として、大阪読書推進会・宮川健郎会長のあいさつ、大阪府知事賞・朝日新聞社賞の受賞者インタビューと作品、全受賞者の氏名を掲載した。
帯コンは、児童書の表紙に巻く帯を小学生にデザインしてもらい、子どもたちに読書の喜びや表現の楽しさと大切さを知ってもらおうと2005年にスタート。大阪府と大阪市の学校図書館協議会が選定する課題図書部門と自由図書部門を設け、課題図書部門の大阪府知事賞、朝日新聞社賞、大阪国際児童文学振興財団賞を受賞した9点の帯は、製品化されて本に巻かれ、大阪府書店商業組合加盟書店の店頭に11月15日から並んでいる。
昨年はコロナ禍で夏休みが短縮された影響で応募数が6296点と一昨年から半減したが、今年は299校から1万30点の応募があった。他都道府県からは、今年も鹿児島県奄美市を含め11都府県15都市から応募があった。
1次審査会は読書推進実行委員の取次・書店組合員のメンバーで9月21日、22日、24日の3日間実施。最終審査会は10月8日に大阪市北区の組合会議室で、宮川会長を迎え、朝日新聞社の立ち会いのもと実施した。宮川会長は1次選考を通過した作品を手に取り、課題図書に当てて選考。115作品の受賞が決まった。賞状と副賞は各受賞者へ郵送した。なお、東京・埼玉・鹿児島の各総局長賞については、各都県版に受賞作品と受賞者の記事が掲載された。
巡回展示会は、11月26日~2022年1月末まで阪急電鉄茨木市駅2Fロサビア、12月11日~12日に堺市立中央図書館で開催。また、春休み期間中に大阪府立中央図書館、夏休み期間中に大阪市立中央図書館で開催を予定している。
(石尾義彦事務局長)

ABC雑誌発行社レポート2021年上半期雑誌販売部数

日本ABC協会は2021年上半期(1~6月)雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載したのは35社116誌。各雑誌部数の前年同期比の平均(既存誌ベース)は、週刊誌88・88%、月刊誌89・01%、合計88・98%となった。報告誌の状況は、光文社『JJ』、集英社『Marisol』、日経BP『日経ヘルス』は報告を中止。また同協会を退会したCQ出版の『Interface』『CQhamradio』『トランジスタ技術』の報告を中止した。『ポップティーン』は、角川春樹事務所からポップティーンに発行元を移管した。
一般週刊誌のトップは『週刊文春』の25万6836部で前年同期比14・7%減となった。2位の『週刊現代』は同3・1%減の19万3914部、3位の『週刊新潮』は同13・7%減の14万5687部、4位の『週刊ポスト』は同14・9%減の13万6093部だった。また、新聞社系では『週刊朝日』が同15・5%減の5万797部、『サンデー毎日』が同12・0%減の2万7738部となるなど、いずれも部数を落とした。
ビジネス・マネー誌は、『週刊ダイヤモンド』が同4・5%減の5万9506部、『週刊東洋経済』が同5・3%減の4万4699部、『日経ビジネス』が同3・2%減の14万8603部と後退したが、『プレジデント』は同0・3%増の11万7360万部とわずかながら増加した。
女性週刊誌は、『女性セブン』が同9・8%減の16万779部、『女性自身』が同9・8%減の14万8125部、『週刊女性』が同12・2%減の7万8003部と減少傾向が続く。
女性月刊誌は、ミドルエイジ誌『GLOW』が同25・8%増の23万7600部と大きく盛り返した。シニア誌の『ハルメク』は同20・1%増の38万5250部と好調を続け、17年上期から8期連続伸長を記録している。

第2回「TSUTAYAえほん大賞」/『パンどろぼう』シリーズが2年連続受賞

カルチュア・コンビニエンス・クラブ蔦屋書店カンパニーは10月29日、東京・渋谷区の渋谷ガーデンタワーで第2回「TSUTAYAえほん大賞」の授賞式を開催。大賞は柴田ケイコ氏『パンどろぼうvsにせパンどろぼう』(KADOKAWA)、新人賞は大桃洋祐氏『ぼくらのまちにおいでよ』(小学館)に決定した。
この賞は、全国のTSUTAYA・蔦屋書店の児童書担当者が「自分の子どもに読み継ぎたい、語り継いでいきたい」「50年後も読まれている作品をTSUTAYAで育てていきたい」という願いを込めて、直近1年間に出版された絵本の中から選出するもの。
当日は、保育士など育児に関する資格を多数取得しているお笑いタレント・タケトさんが司会、「イクメンオブザイヤー2019」を受賞し、3人の娘さんの父親であるお笑い芸人・NONSTYLEの石田明さんをゲストに迎えて受賞上位10作品と新人賞を発表した。
石田さんとタケトさんは、各作品を読んだ感想や、絵本をどのように我が子に読んであげているかなどの話を交えながら、会場を盛り上げた。昨年の『パンどろぼう』(KADOKAWA)に続き大賞を受賞した柴田氏は「昨年に続いてシリーズで賞をいただけるとは思ってもみなかった。一生懸命何かをやるけど失敗しちゃう、ちょっとドジなキャラクター設定を大切にしている。大人でも子どもでも、そういうところがあって良いのではという思いで作った。これからも長く読み継がれるような心に残る絵本を作っていきたい」、また新人賞の大桃氏は「普段はアニメーションを作る仕事をしていて、絵本をいつか作ってみたいという長年の夢がかなったのがこの作品」と話した。
第2回「TSUTAYAえほん大賞」の2位以下の作品は次の通り。2位=しおたにまみこ『たまごのはなし』(ブロンズ新社)、3位=いわいとしお『もりの100かいだてのいえ』(偕成社)、4位=前田海音『二平方メートルの世界で』(小学館)、5位=大塚健太『うごきません。』(パイインターナショナル)、6位=玉置永吉『あなたのすてきなところはね』(KADOKAWA)、7位=高橋和枝『うちのねこ』(アリス館)、8位=ソ・ヨン『おじいちゃんのたびじたく』(小峰書店)、9位=鈴木のりたけ『ぼくのがっこう』(PHP研究所)、10位=オリヴァー・ジェファーズ『きみとぼくがつくるものいっしょにみらいをいきていくためのけいかく』(ほるぷ出版)

単体売上高10・1%増の1994億円/出版流通事業が黒字に/トーハン中間決算

トーハンは11月24日、2021年度中間決算(21年4月1日~9月30日)を発表した。単体売上高は前年比10・1%増の1994億9800万円、経常利益は同77・2%増の9億5200万円。中間純利益は特別損失(固定資産除却損)を計上したため同70・6%減の2億7100万円と増収減益になった。
単体売上高の内訳は、書籍が同18・0%増の862億3200万円と好調。雑誌が同1・3%減の570億6700万円、コミックが同2・6%減の281億400万円、マルチメディア商品が同0・6%増の219億7000万円。
今期から収益認識基準が変更となった影響があり営業利益は5億200万円、同73・7%減となった。経常利益は同77・2%増の9億5200万円。中間純利益は同70・6%減の2億7100万円。丸善ジュンク堂書店の新規取引が売上を押し上げたほか、人件費を中心とした管理費の削減、出版社からの運賃協力金の増加により、経常利益ベースでは増益に。旧本社と旧大阪支店の固定資産除却損による特別損失を計上したことで、中間純利益は大幅な減益となった。
単体の事業別経常損益では、出版流通事業(取次事業)が前年同期の1億8500万円の経常損失から今期は5800万円の経常利益を計上した。
出版社に協力を要請している運賃協力金では、雑誌の超過運賃負担金の制度改定は、9月末現在で704社中344社、書籍の物流・運賃協力金については1580社中960社から協力するとの回答を得た。
返品率は、前年比0・3ポイント減の38・1%。内訳は、書籍が同3・6ポイント減の37・2%、雑誌が同1・8ポイント増の48・5%、コミックが同1・7ポイント増の22・9%、マルチメディア商品が同4・6ポイント増の21・6%。
子会社27社を含む連結決算は、売上高は同9・6%増の2130億4100万円、営業利益は同43・7%減の11億2600万円、経常利益は同2・1%減の11億1900万円、親会社株主に帰属する中間純利益は同52・8%減の4億7800万円。書店事業は、8法人合計の売上前年比は9・2%減となった。
同日の記者会見で小野晴輝専務は「売上増と管理費の圧縮、多くの出版社から運賃協力金でご支援いただいたことにより取次事業が黒字化できた。まだ途上だが回復の兆しが明確になりつつある。書店店頭は5月から厳しい状況が続いており、メディアドゥと取り組むNFTデジタル商材などで回復を図り、通期で黒字を維持したい」と語った。

オンライン施策説明会「TOHANCOMPASS」/「マーケットイン型出版流通」具現化の第2段階へ/近藤社長が中期経営計画の進捗を報告

トーハンはオンライン施策説明会「TOHANCOMPASS2021」の動画を11月26日から12月10日まで配信し、近藤敏貴社長が全社方針、川上浩明副社長が主要施策を説明した。今秋、全国各エリア別に開かれたトーハン会代表者会議で書店に経営方針を説明しており、今回出版社を対象に説明を行った。
近藤社長は、19年度に始まる5ヵ年中期経営計画「REBORN」について、21年度より「マーケットイン型出版流通」の具現化を進める第2ステップへ移行しているとして、「デジタル領域の取り組み」「マーケットイン型販売契約」「新仕入プラットフォーム」の3施策を推進していくと説明した。
3月にメディアドゥと資本業務提携して本格参入したデジタル領域の取り組みでは、出版社と3者でNFTデジタル特典付き新商品を開発し、書店店頭で販売。10月に発売した扶桑社『SPA!10月19・26日合併号特装版』は発売後20日間で前号の2倍以上の売上、主婦の友社『岡崎紗絵1st写真集すがお。特装版』はほぼ完売で、価格が高いNFT特典付き特装版の方が売れているという。12月8日発売の講談社『心霊探偵八雲INITIALFILE魂の素数』(神永学著)では文芸分野で初めてNFT特典付き特装版を刊行した。
近藤社長は、NFT特典で商品の付加価値を高め、書店の実売・集客アップにつなげることが目的として、今後も書店にとり利益貢献度の高い新商品の開発を目指していくと述べた。
また、リアル書店での電子書籍販売について、21年度内にグループ書店のブックファーストと八重洲ブックセンターの数店舗で実証実験を始めると説明した。
マーケットイン型販売契約については、SBクリエイティブ、学研プラス、PHP研究所、双葉社、ポプラ社、三笠書房の6社とブックファースト、八重洲ブックセンターとの実証実験を順次開始し、10月期までのPOS販売実績は前年比4・5%増、実売率は同9・5ポイント増の74・7%、返品率は同16・4ポイント減の21・1%だったと成果を報告。近藤社長は、本施策は規模感が重要であり、単品単位でなく出版社単位で契約し、特定書店ではなく広く展開することを前提にスキームやオペレーションを構築しているとして、「書店が主体となって仕入れ、販売することが中心となっており、書店の個性を活かし、熱意を販売につなげるサポートをしていく」と語った。
川上副社長は「enCONTACT(エン・コンタクト)」と名付けた新仕入プラットフォームについて説明した。出版情報登録センター(JPRO)のデータを活用し、書店店頭での事前予約などのマーケット情報を仕入配本システムに組み込んでいくもので、出版社向け、書店向けにそれぞれWebシステムを開発し、AI(人口知能)を活用したプラットフォームを構築する。22年10月の稼働を目指す。書店向けWebシステムは、JPROの書誌情報サイト「BooksPRO」や、TONETSV、メディアドゥの出版マーケティングサービス「NetGalley」とシームレスに連携し、高い利便性を実現する。

10月期販売額は8・7%減/雑誌は2ヵ月連続の大幅マイナス/出版科研調べ

出版科研調べの10月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比8・7%減だった。内訳をみると、書籍は同4・1%減、雑誌は同14・0%減。雑誌は2ヵ月連続で大幅なマイナスとなり、1月からの累計でもマイナスに転じた。書籍は、コロナ禍での巣ごもり需要が高まった前年に比べ売行きに勢いがなく、7月以降減少傾向が続く。雑誌の内訳は、月刊誌が同13・1%減、週刊誌が同18・2%減。月刊誌は、前年同月に映画が公開された『鬼滅の刃』(集英社)全巻の売行きが爆発的に伸びていた反動で、コミックスのマイナスが大きかった。週刊誌は、コミック誌やテレビ情報誌の発行部数の減少が響き、返品も増加したことで2割近い落ち込みとなった。
書店店頭の売上は、書籍が約6%減。春先までの好調から一転し、復調が見えない状況で、特にビジネス書が約12%減と大きく落ち込んだ。一般・教養書は約3%増で、飛鳥新社の『私が見た未来完全版』が40万部の大ヒット、『変な家』もロングで売行きを伸ばし、売上を牽引した。
雑誌の売上は、定期誌が約9%減、ムックが約10%減、コミックスが約17%減。コミックスは、「鬼滅」の反動はあったものの、『呪術廻戦』17巻(集英社)が初版215万部で刊行されたほか、『名探偵コナン』100巻(小学館)が発売され店頭で大々的にフェアが組まれるなど、有力新刊の売行きは良好だった。

書店員必携の手帳2022年版

■トーハン「書店実務手帳」
トーハングループのメディアパルは11月22日、書店での販売・営業に役立つ資料満載の手帳「書店実務手帳」2022年版を発売した。150×85㍉、260ページ、頒価税込950円。
売場別年間スケジュールなど各種スケジュールや、出版物及び出版販売の基礎知識と各種データ、主要出版社及び各種団体名簿を掲載。新版では、コロナ後の訪日客回復を見据えた「英会話」、店頭実務に即した「万引き対策」のコンテンツを盛り込み、利便性をアップした。
■日本出版販売「書店手帳」
日本出版販売は11月25日、書店で働くスタッフや出版社の営業活動に役立つ出版業界情報を満載した手帳「書店手帳2022年版」を発行した。142×85㍉、256ページ、頒価税込650円。
年間販売計画表、資格試験・検定一覧などの「販売サポート情報」、「各種店舗チェックシート」、Cコード表、書籍36分類コード表などの「本の分類」、芥川賞・直木賞受賞者一覧、書籍・雑誌の判型、出版社名簿などの「各賞・資料」を掲載する。

「本屋続けて良かったなぁ通信」NET21-協業化の現場から

【横のつながりで創造性を生み出したい/往来堂代表取締役・笈入建志】
NET21の可能性は「横のつながり」にあると思います。
本や雑誌を置けば売れた時代は遠い昔になり、売れないからと言って取次や出版社へ「売れる本を送れ」と言っても始まらない現在、売れる本は店が見つけ、掘り起こしてくる必要があります。
その際、似たような環境にいる別の書店の試みは参考になりますし、共同して取り組む意義もあります。
本部やシステムはそのような現場発の販売促進策を可能にするために準備されていますが、それがうまく機能するためには一つの条件があると考えます。それは参加店の自主性です。
自分の店で売れそうな本、有効と思われる販売法を常に追求し、その知見を他の参加者が各々の環境に合わせて活用することで売上アップを図ることができますが、それはあくまで各店の自主性が前提となると思います。
主な仕入れ先である取次との一対一の縦の関係だけでは、書店は孤立し、創意工夫にも限界があり、生き残っていくことは難しいと思います。
以上が、私がNET21の可能性は「横のつながり」にあると考える理由です。

日書連・矢幡会長が地元・調布の文化振興に一役/小説公募事業「深大寺恋物語」第17回受賞作品を発表

縁結びの寺として知られる東京・調布市「深大寺」の周辺地域を舞台にした短編恋愛小説「深大寺恋物語」の公募事業(主催・深大寺短編恋愛小説実行委員会)が、今年で第17回を迎えた。調布で真光書店を経営する日書連の矢幡秀治会長は、「この地で営業する書店として地元文化振興の一翼を担えれば」と設立当初から関わり、5年前からは実行委員会事務局長を務めている。
この小説公募事業は、2003年に行われた深大寺地域を盛り上げるイベント「じんだいフェスタ」をきっかけにして、調布青年会議所の有志や真光書店、深大寺そば組合など地域団体・企業が協力して企画し、2005年にスタート。深大寺という歴史ある寺、門前に位置する多くのそば屋や土産屋、都立神代植物公園などの豊かな自然や花と緑を盛り込んだ恋愛小説を毎年募集している。
今回も日本全国から387作品の応募があり、19作品が事前審査を通過。この中から最優秀賞の酒井博子さんの「ハイコントラスト・ガーデン」をはじめ、審査員特別賞2作品、深大寺特別賞1作品、深大寺そば組合賞1作品、調布市長賞1作品を選んだ。最終審査は、直木賞作家の村松友視氏、調布市出身で直木賞作家の井上荒野氏、文芸評論家の清原康正氏の3人が行った。
受賞した6作品は冊子「深大寺恋物語17集」(定価1000円)に掲載し、来春、公式オンラインショップ、真光書店、深大寺境内授与所で販売する。

種田山頭火賞、夏井いつき氏が受賞/俳句の裾野広げた功績を評価

春陽堂書店は、信念を貫く生き方で多くの人々に感動を与えた文化人・表現者を顕彰する「種田山頭火賞」の第4回受賞者に、俳人の夏井いつき氏を選んだ。10月27日にオンライン授賞式を開催し、春陽堂書店第一編集部の永安浩美部長から夏井氏に、山頭火の句の書と「新山頭火全集」などを贈った。
登壇した夏井氏は「俳句のまち・松山(愛媛県)で俳句の種まき運動を30年続けてきた。俳句を生業として生活できたのは松山のおかげ。やっと松山に恩返しができるかなと思う」と受賞の喜びを語った。
夏井氏は、TBS系のテレビ番組『プレバト』の俳句コーナーに出演、芸能人への歯に衣着せぬ講評で話題になり、若者のために「俳句甲子園」の創設に携わるなど、幅広く活動している。選考委員の林望氏は「夏井さんは俳句の裾野を広げた」、嵐山光三郎氏は「多くの人が俳句の本を読むようになったのは夏井さんの功績」と評価した。