全国書店新聞
             

令和5年7月15日号(前)

「収益改善」「読書推進」に注力/矢幡秀治会長を再任/日書連第35回通常総会

日書連は6月22日午後1時、東京・千代田区の書店会館で第35回通常総会を開催し、会員44名(本人28名、書面16名)が出席した。新年度の取り組みでは、粗利30%以上の獲得を目指す収益改善、本を読む人を増やすための読書推進を最優先課題に、書店議連と連携して不公正な競争環境の是正や書店と図書館の連携促進などにも注力する方針を承認した。任期満了に伴う役員改選では理事52名、監事3名を承認し、新理事による臨時理事会で会長、副会長を決定。矢幡秀治会長(東京)を再任し、新副会長に平井久朗氏(東京)を選任した。3期目となる矢幡会長は、書店存続のための活動を幅広く展開する考えを示した。
総会は石井和之理事・事務局長の司会で進行し、はじめに矢幡会長があいさつ。今年は昨年と比べて新型コロナウイルスの影響も落ち着きつつあるが、書店店頭の売上と来店客数の減少はむしろ深刻化していると指摘。本を読まない人が増えていることにも懸念を示し、読書人口増加につなげるための読書推進運動に力を入れて取り組まなければならないと強調した。
自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)については、入札時の値引きなど不公正な競争環境の是正、地元書店からの優先仕入の推奨など書店と図書館の連携促進、事業再構築補助金に書店枠を設けることなどを盛り込んだ提言を発表したことや、政府による経済財政運営の指針「骨太の方針」で、経済の底上げに向けて中堅・中小企業の活力を向上させることが盛り込まれ、その注記として「出版業及び書籍・雑誌小売業などの産業構造転換等も支援」と記載されたことを報告。「今後これを深堀りし、議連と話し合いをしながら、日書連として具体的な行動を検討していきたい」と述べた。
粗利30%以上の獲得を目指す経営環境改善運動は、担当委員会を変更し、再び運動を活性化させたいと意欲を示した。(矢幡会長あいさつ詳細は2面)
議案審議では森忠延理事(兵庫)を議長に選任。第1号議案の令和4年度事業報告書、第2号議案の令和4年度財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案、第3号議案の令和5年度事業計画案、第4号議案の令和5年度収支予算案、第5号議案の経費の賦課及び徴収方法、第6号議案の令和5年度借入金の最高限度額案、第7号議案の令和5年度役員の報酬額案のいずれの議案も原案通り承認可決した。
第8号議案の任期満了に伴う役員改選は、中山寿賀雄理事(長崎)、楠田哲久理事(鹿児島)を選考委員に指名推選で行い、理事候補52名、監事候補3名を承認。佐藤大介(福島)、小川頼之(東京)の両氏が新たに理事に就いた。
総会終了後、新理事による第1回臨時理事会を開き、矢幡会長を再任した。副会長は鈴木喜重(千葉)、藤原直(宮城)、柴﨑繁(東京)、春井宏之(愛知)、安永寛(福岡)、深田健治(大阪)の6氏を再任し、平井久朗氏(東京)を新たに副会長に選任した。渡部満副会長(東京)は退任し、監事に就いた。
委員会は従来通り政策、組織、指導教育、広報、流通改善、取引改善、読書推進、書店再生、図書館の9委員会体制で諸施策を推進する。政策は矢幡会長、組織は安永副会長、指導教育は鈴木副会長、流通改善は藤原副会長、取引改善は柴﨑副会長、読書推進は春井副会長、図書館は髙島瑞雄理事が引き続き委員長を務める。広報は深田副会長、書店再生は平井副会長が新たに委員長に就任した。
【新副会長の略歴】
平井久朗氏(ひらい・ひさお)
東京都北区・㈲ビーブックス代表取締役。1964年(昭和39年)4月3日生まれ、59歳。
81年東京都立小川高等学校卒業。同年富士通㈱入社。88年㈲ビーブックス設立。17年東京都書店商業組合理事、19年同副理事長。21年日書連理事、23年同副会長。
【各委員会からの主な報告】
[政策委員会]
「書店の存続のためには新たな収益構造の確立が不可欠」とする日書連の主張への理解が深まるにつれ、業界各社で「粗利30%以上」を意識した企画が目立つようになった。矢幡会長は「こうした個々の動きを全体に波及させるためにも出版社や取次との話し合いを続ける」として、今年度から粗利30%以上の獲得を目指す経営環境改善運動の担当委員会を政策委員会から広報委員会に移し、同委員長の深田副会長を中心に運動の再活性化を図る方針を示した。
書店議連は自民党の衆参両院議員150名超が参加し、今春、書店支援のための提言をまとめた。矢幡会長は「書店の代表として議連の会合に出席し、書店産業振興のための経済対策の実施、再販制を基盤とする公正な競争環境の整備を求めた。特に図書館納入時の競争入札による過度な値引きについては、書店と図書館が共存共栄していくためにも抑制するルールの導入が必要」と訴えた。
[組織委員会]
23年4月1日現在の全国組合加盟書店数は前年比138店(4・9%)減の2665店になった。
安永寛委員長は、組合員減少対策として、「書店組合加入のしおり」のひな型を作成したと報告。これに各組合独自の取り組み事例などを追記し、加入促進に活用してほしいと求めた。
また、各組合の運営状況を把握するために総会資料を収集し、他組合への水平展開が可能な優良事例の共有を目指す考えを示した。
[指導教育委員会]
今年度の研修会企画として、5月25日に書店会館で「BooksPRO」の最新機能と活用法を学ぶための研修会を開催した。
鈴木喜重委員長は「今後も経営合理化、自己啓発、業界最新動向などタイムリーな問題をテーマに研修会を開催していきたい」と意欲を示した。
万引防止対策では、全国万引犯罪防止機構と連携し、書店での効果的な防止策を研究するとした。
[広報委員会]
日書連及び各組合の活動や事業について、機関紙「全国書店新聞」とホームページ「本屋さんへ行こう!」で情報発信した。
22年は、「全国書店新聞」9月1日号を通巻2000号記念特集号として発行。また、全国広報委員会議を4年ぶりに開催し、各組合広報委員14名が出席した。
[流通改善委員会]
令和4年度も雑誌発売日励行本部委員会に9項目の要望書を提出した。今回は「新学期は休配日設定を避けるのが望ましい」とする項目を新たに追加した。藤原直委員長は「雑誌発売日問題は簡単に解決するものではないが、状況改善につなげる手段として、要望書は毎年出すことが重要」と述べた。
RFIDへの対応ではPubteXの動向を注視していくとした。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、令和4年度もトーハン、出版共同流通両社の返品入帳締切日の情報を集約したカレンダーを作成したと報告。自店の返品が締切日通りに処理されているか確認してほしいと求めた。
新年度は兼業事例や仲間卸の実態などの調査も行い、優良事例を書店存続のために役立てていきたいとの方針を示した。
[読書推進委員会]
「読者還元祭」は従来の「書店くじ」からQRコードを活用する形にリニューアルし、2年目を迎えた「秋の読者還元祭2022」は応募総数11万9938件と過去最多を記録した。春井宏之委員長は「ファーストステップはクリアした」と評価した。
3年目となる「秋の読者還元祭2023」は、出版文化産業振興財団(JPIC)が事務局を務める秋の読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」との連携を強化し、キャンペーンの認知度向上を目指すと説明した。
[書店再生委員会]
渡部満委員長は、各組合から報告される再販違反と思われる事例について、出版4団体で構成する出版再販研究委員会にその都度報告して対応を求めていることを説明した。
東京組合と大阪組合が小学館の協力で取り組んでいる「週刊ポスト」「女性セブン」定期販売協力金事業の他組合への拡大や、他業種への展開など収益改善につながった事例の収集にも取り組む方針を示した。
[図書館委員会]
髙島瑞雄委員長は、小学校で英語が必修化されたことに対応し、日書連MARCにも洋書データを搭載したいと述べた。
また、第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」を踏まえ、学校図書整備費などの予算化を各地の教育委員会に働きかけてほしいと求めた。
【矢幡会長総会あいさつ】
コロナもだいぶ落ち着いてきたが、皆さんのお店はいかがだろうか。良い店もあるようだが、コロナ前と同じように売上が下がっている店が多いと聞いている。とにかく客足が遠のいている。私の店の前も人通りは以前と変わらないが、店に入ってくる人は極端に減っている。
特に雑誌の不振が深刻で、週刊誌や月刊誌を購入するために毎週・毎月来店していたお客様が来店しなくなった。その分の売上がさらに減るという悪循環に陥り、なおいっそう売上を落としている。
書店に来なくなったお客様がネットで購入するようになったかというと、聞いてみるとそうでもなくて、ただ単に本を買わなくなった、読まなくなったという人が多いようだ。だから読書推進運動を十分にやっていかなければならないと考えている。
読書は大切だ。スマホだけに頼っていると社会はどうなるか分からない。チャットGPTが注目されているが、AIとコミュニケーションをとることに危険性はないのか。新しいものに飛びつく前に、効果は検証されているのか、法律は整備されているのか。今の状況に不安を感じる。
自民党の国会議員が「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)を立ち上げ、書店支援のために活動してくれている。入札時の値引きなど不公正な取引の是正や、地元書店からの優先仕入の推奨など書店と図書館の連携促進、事業再構築補助金に書店枠を設けることなどを盛り込んだ提言を発表し、6月16日に閣議決定された骨太の方針では、経済の底上げに向けて中堅・中小企業の活力を向上させるとする本文の注記として、「出版業及び書籍・雑誌小売業などの産業構造転換等も支援」と記載された。今後これを深堀りし、議連と話し合いをしながら、日書連として具体的な行動を検討していきたい。
出版社や取次が「やっぱり書店がなくなったら困る」と言っている。業界3者がすべてプラスになるような循環をともに考えていきたい。
粗利30%以上の獲得を目指す経営環境改善運動は、コロナ禍もあり進捗していない。これまで政策委員会が担当してきたが、今年度から違う委員会に移して運動を活性化させたいと考えている。
書店を取り巻く環境は厳しいが、皆さんとともに乗り越えていきたい。
【日書連役員体制】
▽会長=矢幡秀治(東京・真光書店)
▽副会長=鈴木喜重(千葉・ときわ書房)藤原直(宮城・金港堂)柴﨑繁(東京・王様書房)春井宏之(愛知・正文館書店)安永寛(福岡・金修堂書店)深田健治(大阪・ブックスふかだ)平井久朗(東京・ビーブックス)
▽理事=志賀健一(北海道・丸善ジュンク堂旭川店)成田耕造(青森・成田本店)加賀谷龍二(秋田・加賀谷書店)玉山哲(岩手・東山堂)五十嵐太右衞門(山形・八文字屋)佐藤大介(福島・郡山書店)青天目敦(茨城・ヤマサン)竹内靖博(群馬・シロキヤ書店)奈良俊一(埼玉・ならいち)松信裕(神奈川・有隣堂)小川頼之(東京・小川書店)大塚茂(山梨・柳正堂書店)吉見光太郎(静岡・吉見書店)木野村匡(岐阜・東文堂本店)別所信啓(三重・別府書店)西村行人(新潟・萬松堂)丸田茂(富山・清明堂書店)宮本秀夫(石川・ブック宮丸)栁澤輝久(長野・西沢書店)安部悟(福井・安部書店)平井浩(滋賀・文平堂)戸和繁晴(大阪・トーワブックス)犬石吉洋(京都・犬石書店)林田芳幸(奈良・啓林堂書店)大谷秀生(和歌山・大谷書店)森忠延(兵庫・井戸書店)古泉淳夫(鳥取・鳥取今井書店)武田徹(島根・今井書店)小野正道(岡山・小野書店)湊義彦(広島・中国堂書店)宮脇範次(香川・宮脇書店)平野惣吉(徳島・平惣)足立岳彦(愛媛・愛媛県官報販売所)五藤栄一郎(高知・冨士書房)森松正一(福岡・森松尚文堂)堤洋(佐賀・ブックスグリーンウッド)中山寿賀雄(長崎・好文堂書店)長﨑晴作(熊本・熊文社)二階堂衞司(大分・二海堂書店)岩切承自(宮崎・岩切書店)楠田哲久(鹿児島・楠田書店)小橋川篤夫(沖縄・いしだ文栄堂)髙島瑞雄(員外・高島書房)石井和之(員外・事務局)
▽監事=小泉忠男(東京・小泉書店)渡部満(東京・教文館)葛西文二(員外)
▽相談役=大橋信夫(元会長)舩坂良雄(前会長)
     *
[各委員会委員長]
□政策委員会=矢幡秀治(東京)
□組織委員会=安永寛(福岡)
□指導教育委員会=鈴木喜重(千葉)
□広報委員会=深田健治(大阪)
□流通改善委員会=藤原直(宮城)
□取引改善委員会=柴﨑繁(東京)
□読書推進委員会=春井宏之(愛知)
□書店再生委員会=平井久朗(東京)
□図書館委員会=髙島瑞雄(員外)

「総務・財務WG」設置/定例理事会年6回のうち2回をWebで/日書連6月理事会

日書連は6月22日午前10時半、東京・千代田区の書店会館で6月定例理事会を開催し、「総務・財務ワーキンググループ」(総務・財務WG)を立ち上げることを決めた。メンバーは矢幡秀治会長ら3名。厳しい財務状況下の組織運営と活動のあり方を話し合う。また、年6回開催している定例理事会のうち2回を、今後はWeb開催とする方向で検討する。
[政策委員会]
▽厳しい財務状況を踏まえ今後の組織運営や活動のあり方を検討するため、「総務・財務ワーキンググループ」を立ち上げることを決めた。矢幡会長と春井宏之副会長、深田健治副会長の3名で構成し、話し合いの進展を見ながらメンバーを拡げていく予定。
また、年6回(5月・6月・9月・10月・12月・2月)開催している定例理事会のうち2回をWeb開催とする方向で検討する。
▽矢幡会長は、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)の動きを報告。6月16日に閣議決定された政府による経済財政運営の指針「骨太の方針」で、経済の底上げに向けて中堅・中小企業の活力を向上させることが盛り込まれ、その注記として「出版業及び書籍・雑誌小売業などの産業構造転換等も支援」と記載されたこと、及び「文化芸術・スポーツの振興」の項目の本文で「書籍を含む文字・活字文化…等による新たな価値創造、社会全体で文化財を支える保存・活用の充実と官民連携等の推進を図る」と記載されたことを説明した。矢幡会長は「議連と話し、日書連として具体的に何ができるか検討したい」と述べた。
▽矢幡会長は、6月15日に開催された活字文化議員連盟と学校図書館議員連盟の合同総会で、公共図書館改革と学校図書館改革に関する決議が採択されたこと、及び公共図書館改革に関する決議で「公共図書館は、地域書店からの図書購入を優先し…」と記載されていることを報告した。
▽出版業界の発展に貢献した物故者をたたえる出版平和堂「第55回出版功労者顕彰会」の顕彰候補者として、日書連から元理事の田中隆次氏(宮崎県、2022年7月11日死去)を推薦することを承認した。
▽「絵本ワールドinひょうご2023」(主催=兵庫県書店商業組合、開催日時=10月1日午前10時~午後4時、会場=兵庫県西宮市・西宮市民会館)の後援名義使用許可申請を承認した。
[組織委員会]
5月期の全国45都道府県組合の加入・脱退状況は加入なし・脱退5店で5店純減となった。
安永寛委員長は「『書店組合加入のしおり』のひな型を作った。これに各組合で独自の取り組みを追記し、加入促進に役立ててほしい」と呼びかけた。
[指導教育委員会]
楠田哲久委員は、5月定例理事会当日に「BooksPRO研修会」を開催したと報告。今後もタイムリーな話題で研修会を行いたいと述べた。
[広報委員会]
森松正一委員は、3年目となる「読者還元祭」を活性化するため、全国書店新聞8月1日号に「我が店の『読者還元祭』活用事例」の特集記事を掲載すると報告した。加賀谷書店と谷島屋の取り組みを紹介する。
[流通改善委員会]
藤原直委員長は柴﨑繁取引改善委員長、髙島瑞雄図書館委員長と3名で6月21日にPubteXを訪問し、AI発行・配本最適化ソリューション事業とRFIDソリューション事業の進捗状況について説明を受けたと報告した。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、23年度の活動方針について「この委員会の役割の一つは取次との交渉。粗利30%以上実現のためにできることを検討し、取次に提案したい。支払いサイトの問題にも取り組みたい」と説明した。
[読書推進委員会]
春井宏之委員長は、今回の「秋の読者還元祭」から、応募後すぐに当選が分かるスピードくじ方式にリニューアルして実施すると報告。「1回当たった人はその後は当たらない、当たらなかった人は翌日また応募できる形とする。なるべくたくさんの人に当たりが出るようにしたい」と述べた。
[書店再生委員会]
平井久朗委員は、中小企業庁の事業再構築補助金と事業承継・引継ぎ補助金の概要を説明し、「次回公募に向けてチャレンジを検討してほしい」と述べた。
[図書館委員会]
髙島瑞雄委員長は、全国の公立小中学校図書館ではまだ蔵書のデータベース(DB)化が終わっていないところもあると報告。「日書連MARCでDB化の作業を進めれば書店と組合の収益になる。DB化が終わっていない地区は、早めに教育委員会と話を進めてほしい」と呼びかけた。

ひょうご本大賞に松宮宏氏『アンフォゲッタブル』/トーク&ジャズライブで受賞祝う

神戸新聞ブッククラブ(KBC)は6月10日、「2023ひょうご本大賞」を発表し、松宮宏氏の小説『アンフォゲッタブルはじまりの街・神戸で生まれる絆』(徳間文庫)が受賞した。
同作はジャズの街・神戸を舞台に、プロのジャズミュージシャンを目指す若い女性が繰り広げるストーリー。作品に登場するジャズの名曲とともに、神戸色の濃い人や街、産業も加味した娯楽小説。
6月24日には、小説にも登場したジャズ喫茶JamJam(神戸市中央区)で表彰式と、若手ジャズミュージシャンによる演奏をはさみ、松宮氏のトークショーが行われた。トークショーでは同店の池之上万里氏、KBC幹事で井戸書店(神戸市須磨区)の森忠延も交え、大いに盛り上がった。
今年は神戸ジャズ100周年にあたり、神戸ジャズ界にも良い風を流すことになるだろう。
(井戸書店・森忠延)

関西書店グループ開発の「楽樂ほんやさん」/書店業務負担軽減に威力/10年ぶり東京相談会・説明会でアピール

関西の書店グループ「本屋の村」は6月14日、東京・千代田区の書店会館で書店業務管理ソフト「楽樂ほんやさん」の相談会・説明会を開催した。東京での開催は10年ぶりとなる。参加書店は22名。首都圏だけでなく秋田、岩手、山形、新潟、長野、愛知と遠方からも参加していただき、本当にありがたかった。
従来の「楽樂ほんやさん」から昨年リリースの新ソフト「らくほんNext」への乗り換え方、この10月1日から導入されるインボイス制度への対応などについて、参加書店の皆さんは熱心に質問していた。また、1999年リリースの「ラクプロ2」が使えなくなることを心配して話を聞きに来た方も何名かいた。
思い起こせば、私が98年に全国書店新聞に「楽樂ほんやさん」の紹介記事を書いた後、かなりの書店から問い合わせがあった。その翌年にはさらに大々的に取り上げてもらい、このときも問い合わせが多数あったことを当時のメールのやり取りを見て思い出した。
当時、私の父が奈良県書店商業組合の理事長をしていたこともあり、日書連の会議で東京に行った際、書店会館を楽樂ほんやさんの説明会に使わせてほしいとお願いし、99年11月14日、近畿以外で初めてとなる説明会を開催したこともあった。
あれから24年。当時初めて会った人たちとまた会うことができ、同窓会のような気分も味わうことができた。あの頃は書店の数も今とは比べ物にならないほど多かった。雑誌の配達も多く、手書きで納品書を書くことなど考えられなかったから、楽樂ほんやさんのユーザー数も増え続けた。しかしその頃をピークに書店数が減少に転じ、寂しい思いでいっぱいだ。
インボイス制度の開始で書店の負担が増えることを危惧している。特に年配の書店主の中には、これを契機に商売をやめてしまう方もいるのではないか。店頭の売上げも下がる一方で、「教科書の手数料で何とかやっていけている感じです」と皆さんよく言われるが、店頭の売上減を雑誌の配達だけでは賄えなくなったということだろう。
新しいバージョンの「らくほんNext」はインボイスに対応しており、書店の負担を減らすことができる。われわれ「本屋の村」が開発した書店業務管理ソフトを是非多くの書店に使っていただき、もっともっと長く書店を続けていただきたいと願っている。
(たつみ書店・辰己信篤)

矢幡秀治会長と副会長3名を再任/出版物小売業公正取引協議会臨時総会

出版物小売業公正取引協議会(小売公取協)は6月22日、東京・千代田区の書店会館で臨時総会を開き、任期満了に伴う役員改選で理事50名と監事2名を承認した。臨時総会終了後に新理事による第1回臨時理事会を開き、矢幡秀治会長と副会長3名を再任した。
[小売公取協役員体制]
▽会長=矢幡秀治(東京)
▽副会長=鈴木喜重(千葉)藤原直(宮城)柴﨑繁(東京)
▽理事=志賀健一(北海道)成田耕造(青森)加賀谷龍二(秋田)玉山哲(岩手)五十嵐太右衞門(山形)佐藤大介(福島)青天目敦(茨城)竹内靖博(群馬)奈良俊一(埼玉)松信裕(神奈川)平井久朗(東京)小川頼之(東京)大塚茂(山梨)吉見光太郎(静岡)春井宏之(愛知)木野村匡(岐阜)別所信啓(三重)西村行人(新潟)丸田茂(富山)宮本秀夫(石川)栁澤輝久(長野)安部悟(福井)平井浩(滋賀)深田健治(大阪)戸和繁晴(大阪)犬石吉洋(京都)林田芳幸(奈良)大谷秀生(和歌山)森忠延(兵庫)古泉淳夫(鳥取)武田徹(島根)小野正道(岡山)湊義彦(広島)宮脇範次(香川)平野惣吉(徳島)足立岳彦(愛媛)五藤栄一郎(高知)安永寛(福岡)森松正一(福岡)堤洋(佐賀)中山寿賀雄(長崎)長﨑晴作(熊本)二階堂衞司(大分)岩切承自(宮崎)楠田哲久(鹿児島)小橋川篤夫(沖縄)
▽監事=小泉忠男(東京)井之上健浩(東京)

「春夏秋冬本屋です」/『「小さな本屋」の「大きな使命」』/沖縄・大城書店 代表取締役社長・大城洋太朗

去る6月23日は慰霊の日でした。
慰霊の日とはアメリカ軍と日本軍の組織的戦闘が終結した日であり、その主戦場となった沖縄本島で犠牲になった人々を弔う、沖縄県民が大切にしている日です。
6月に入ると県内の本屋は慰霊の日特設コーナーを作る店が増え、大城書店も6月の早い段階から設置いたしました。沖縄戦の書籍は多く出版されており、資料集のような難しい物から絵本や漫画など分かりやすい物まで様々で、来店されたお客様が足を止めていかれます。
沖縄戦経験者の方にお話を伺うと、思い出すと辛いのであまり話したくないが、この事を伝え平和の大切さを後世に残せるならと自分自身に言い聞かせ、取材などに応じているそうです。
沖縄戦経験者が高齢を迎え語り部が減っている昨今、書籍や絵本で戦争の悲惨さや平和の尊さを伝える事はとても重要な事であり、沖縄の本屋の使命の一部であると感じています。
7月に入り、慰霊の日特設コーナーは七夕飾りに変わり、お客様に願い事を書いた短冊を自由に飾っていただいておりますが、短冊には「戦争のない世界に」や「平和が続くように」という願い事が多く書かれております。
小さな街の小さな本屋ですが、小さな平和への思いが大きく世界へと広がると信じ、小さくなる売上に耐えつつ大きな使命を全うしようと改めて決心いたしました。

春井理事長を再選、5期目に/読者還元祭やSNSの活用呼びかけ/愛知組合総会

愛知県書店商業組合は6月14日、名古屋市千種区のルブラ王山で第40回通常総会を開き、組合員92名(委任状、書面議決書含む)が出席。春井宏之理事長(正文館書店)を再選し、春井体制5期目がスタートした。
総会は武藤哲哉理事(武藤清洲店)の司会で進行。冒頭あいさつした春井理事長は、4期8年間の活動について、「サン・ジョルディイベントは中止となっているが、『なごやっ子読書イベント』を開催するなど、今まで愛知組合が実施してきた事業を踏襲してやり続けることができている。予算的な部分についてもある程度余裕のある形に変えることができた」と総括。また、日書連のメンバーとして参加している出版文化産業振興財団(JPIC)による業界横断的な取り組みや書店議連への働きかけについて言及して、事態がようやく動き出し成果が上がりつつあると述べた。
続いて佐藤光弘氏(光書店)を議長に選出して議案審議を行い、令和4年度事業報告、収支決算報告並びに監査報告、令和5年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業報告は各部会の担当副理事長が説明。読書推進では、①第17回「中学生はこれを読め!」を7月16日~8月31日に15店で実施した、②第61回「青少年によい本をすすめる県民運動」に協賛し、出版社24社から寄贈された児童図書1740冊を69校に届けた、③「孫の日」キャンペーンは9月19日~11月9日に約20店で実施し、出版社12社のおすすめ本12点を拡販した、④「なごやっ子読書イベント」を10月9日に名古屋市公会堂で開催、孫の日推薦本の展示と販売を行った、⑤サン・ジョルディフェスティバル名古屋2022は中止した――との報告があった。
任期満了に伴う役員改選では、選考委員による指名推薦で理事24名、監事2名を選出、このあと新役員による理事会を開き、春井理事長を再選した。副理事長4名も全員留任した。
事業計画案の説明を兼ねて5期目の所信を述べた春井理事長は、「従来の事業については今まで通りきちんとやっていく方針だ。1つひとつ中身のバージョンアップも考えていきたい」と見通しを示した。自身が日書連の読書推進委員会委員長として取り組んでいる「読者還元祭」にも言及。外商比重の高い書店でも利用しやすい形で実施するほか、今後も制度設計の見直しを進めるとして、積極的な参加を呼びかけた。読書推進については、読者を育て本を購入してもらうには、SNSを利用して本屋や作家、出版社などが横の連携を作っていくことが重要ではないかと指摘。「デジタルが苦手な方は、自店の若い人たちに協力してもらってほしい」と求めた。
総会終了後、JPICの松木修一専務理事を講師に「JPICの目指す読書推進活動について」をテーマとする講演会を開催した。
[愛知組合役員体制]
▽理事長=春井宏之(正文館書店)
▽副理事長=谷口正和(ちくさ正文館)近藤五三六(近藤商店)小原永幸(かちがわ文昌堂)水野賢一(白沢書店)

組合の健全運営を推進/足立理事長が方針示す/愛媛総会

愛媛県書店商業組合(足立岳彦理事長)は6月13日、松山市のANAクラウンプラザホテル松山で第35回定時総会を開催し、組合員23名(委任状含む)が出席した。
総会は山本理事(山本貫一商店)の司会で進行。昨年12月逝去した松岡省自氏(アテネ書店)、今年1月逝去した光永和史前理事長(松山堂書店)に哀悼の意を表し黙祷が捧げられた。
総会では足立理事長を議長に議案審議を行い、事業報告・収支決算報告、事業計画案・収支予算案などを可決承認。足立理事長は、光永前理事長の路線を継承し、財政面を含め組合の健全運営を進めると表明した。また、副理事長に福岡敏弘氏(緑星堂書店)、専務理事に小笠原健吾氏(マスヤ書店)を選任した。
総会終了後は、愛媛新聞社読書感想文コンクールの説明会が、愛媛新聞社企画事業部、トーハン、日本出版販売、愛媛県教科図書により行われた。
この後、出版社や取次も参加して懇親会が和やかに開催された。
(山﨑由紀子広報委員)

大塚茂理事長が続投/読者還元祭の反響に手応え/山梨総会

山梨県書店商業組合は6月8日、甲府市の「やまなし地域づくり交流センター」で第35回通常総会を開き、組合員20名(委任状含む)が出席した。
総会は河野洋己専務理事(ブックスステーション)の司会で始まり、冒頭で大塚茂理事長(柳正堂書店)があいさつ。「コロナ禍ではない世の中になったが書店を取り巻く状況は楽観できない。今後、出版社・取次・書店という関係が少しずつ変化していくのではないかと感じる。多様化する取引形態は書店の独自色を出すチャンスなのかもしれない」と指摘。また、春の読者還元祭の応募状況を報告し、「お客様からの応募が増えている。秋の読書還元祭は内容がさらにパワーアップし、お客様に喜んでいただけると思う。多くの書店が積極的に取り組んでほしい」と述べた。
続いて、大塚理事長を議長に選出し議案審議を行いすべての議案を原案通り承認可決した。任期満了に伴う役員選任では理事6名、監事1名を承認。総会終了後、理事会を開き、選挙により大塚理事長を再選した。大塚理事長は「組合員の減少が続いている。これまで以上に有益な情報の発信を心掛け、組合加盟の意義を見出していただけるようにしたい。理事の皆さんには引き続きご協力をお願いする」と抱負を述べた。
[山梨組合役員体制]
▽理事長=大塚茂(柳正堂書店)
▽副理事長=渡辺卓史(卓示書店)
(萩原清仁広報委員)

西村行人理事長を再任/物流問題への対応進める/新潟総会

新潟県書店商業組合は6月16日、新潟市の萬松堂会議室で第39期通常総会を開催し、組合員47名(委任状含む)が出席した。本年はコロナ禍を経て4年ぶりの通常開催となった。
総会は、西村行人理事長(萬松堂)を議長に選任して議事を審議。西村理事長は、令和4年度事業報告の概況で出版物の推定販売金額について触れ、「4年ぶりの前年割れとなり、特に紙の出版物は6・5%と大幅に減少、雑誌に至っては9・1%の減少だった。これまで出版業界の売上をリードしてきた電子書籍も7・5%増と伸びを欠いた」と報告。続いて令和4年度収支決算の説明があり、承認された。
令和5年度事業計画は、出版流通問題への対応として、「物流業界の2024年問題が出版物流及び組合員の書店運営に与える影響について、日書連と連携して対応していく」との説明があり、収支予算とともに審議し、承認された。
最後に役員改選を行い、選考委員3名により15名の理事を選出して承認。総会終了後、新理事による理事会が開催され、西村行人理事長の再任を決めた。
(酒井久和広報委員)

宮本秀夫理事長の再任決める/書店活性化事業に注力/石川総会

石川県書店商業組合は5月30日、金沢市の金沢勤労者プラザで第35期通常総会を開催、組合員31名(委任状を含む)が出席した。
総会は事務局の司会で進行し、冒頭で宮本秀夫理事長があいさつ。始めに、5月5日の地震で被害を受けた珠洲市の3書店に対しお見舞いの言葉を述べた。続いて、厳しさを増している書店の経営環境について言及。「毎年数件ずつ廃業店が発生しており、組合員数は一時期に比べ半減している状況にある。リアル書店の強みを生かすべく、当組合では毎年『書店活性化事業』を実施している。昨年は書店のクリーンネスのためのハンディ掃除機を各組合員に配布、本年はお客様向けの粗品を店舗数にあわせて配布してきた。36期も実施していく予定で、各書店からアイディアをお寄せいただきたい」と述べた。
引き続き、宮本理事長を議長に議案審議を行い、第35期事業報告、収支決算報告・監査報告、第36期事業計画案、収支予算などすべての議案を原案通り承認可決した。任期満了に伴う役員改選では、選考委員による指名推薦で理事10名、監事2名を選出。全員が再任となった。
総会終了後、出席者により「書店活性化事業」の具体的な案について話し合った。(上村洋広報委員)

副理事長、常務理事を決定/大阪組合理事会

大阪府書店商業組合(深田健治理事長)は6月10日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
副理事長の選任では、戸和繁晴(トーワブックス)、堀博明(堀廣旭堂)、虎谷健司(虎谷誠々堂)の3氏を再任。常務理事は投票の結果、坂口昇(梁川書店)、二村知子(隆祥館書店)、家村英嗣(家村書店)、東正治(パルネット東文堂書店)、冨士原純一(富士原文信堂)、田上順一(田上書店)、松田知子(松田書店)の7氏を決定した。
定款・規約等改正委員会からは①総務・財務委員会にストップ・ザ・廃業委員会を吸収・統合する。②経営活性化委員会は事業増売委員会と統合し、経営活性化・事業増売委員会とする。③図書館・情報化委員会に共同受注委員会を吸収し、図書館・情報化委員会とする――との委員会再編案が提案されてこれを了承。委員会規定とすることを決めた。
読書推進委員会では、大阪読書推進会総会は6月21日に朝日新聞大阪本社で開催すると報告。また「本の帯創作コンクール」や「読書ノート」のスケジュールについて説明した。
(石尾義彦事務局長)

「本の日」記念ブックカバー大賞を実施/参加書店を募集先着500店舗に補助も/BOOKMEETSNEXT

BOOKMEETSNEXT実行委員会は、「本の日」を周知する企画として展開されていた「『本の日』ブックカバー大賞」を、「BOOKMEETSNEXT『本の日』記念ブックカバー大賞」として装いを新たに実施する。
「『本の日』記念ブックカバー大賞2023」は「本との新しい出会い」をテーマに文庫本のブックカバーのデザインを一般公募。募集締切後に、「本の日」実行委員会の矢幡秀治代表(日書連会長)や芸術雑誌編集長、企画参加書店全店で構成する審査員の投票で最終審査を行い入賞作品を決定。大賞作品はブックカバーにして、11月1日の「本の日」を皮切りに参加各店舗で配布する。
参加書店の申込受付は8月3日まで。料金プランや申込方法等の詳細は、「本の日」公式ホームページの参加書店募集ページ(https://honnohi.com/archives/768/)で確認を。申込先着5百店舗には、BOOKMEETSNEXT実行委員会が1店舗につき3千円を補助する。
ブックカバーデザイン募集は8月31日まで。9月下旬に参加書店での選出と審査員による審査会を開催し入賞作品を決定。10月下旬にブックカバーを印刷し、各店舗へ発送する。
問い合わせは、「本の日」記念ブックカバー大賞事務局までメールアドレスotoiawase@n-shoten.jp