全国書店新聞
             

令和4年6月15日号

5月定例理事会/「秋の読者還元祭」実施要項決定/図書カードネットギフト1万円など当たる

日書連は5月26日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催し、「読書週間×本の日秋の読者還元祭2022」の実施要項案を承認した。毎年春と秋に実施していた書店くじに替わる新事業として2021年春にスタートした読者還元祭は今回で3回目。1等賞を図書カードネットギフト1万円にすることで読者の応募意欲を高め、店頭活性化と販売促進につなげる。
5月定例理事会は新型コロナウイルスの感染状況を考慮してハイブリッド形式で行い、来場27名、Web5名、書面議決書20名、全理事52名が出席した。
各委員会の審議・報告事項は以下の通り。
[読書推進委員会]
「読書週間×本の日秋の読者還元祭2022」実施要項案を承認した。
前年同様、「本の日」図書カードプレゼントキャンペーン(主催=「本の日」実行委員会)と合同で実施する。10月27日(木)から11月11日(金)まで(11月18日(金)まで応募受付)の期間中、書店店頭に掲示されたキャンペーン「ポスター」または「しおり」のQRコードを読み取って応募すると、抽選で図書カードネットギフトが当たる。
賞品は、図書カードネットギフト1万円×200本、同3000円×500本、同1000円×1500本。前年の賞品は図書カードネットギフト1000円×5000本のみだったが、今回は同1万円、同3000円と高額賞品を加えた。
春井宏之委員長は「読者にとって魅力あるキャンペーンになるよう改善を図った」として賞品金額効果による応募数増加に期待を示し、「『本の日』のイベント助成金なども活用しながら店頭を盛り上げていただきたい」と積極的な参加を呼びかけた。
※実施要項は本紙7月1日号に掲載する。
[政策委員会]
▽4月14日、東京・千代田区の衆議院第2議員会館で開催された「全国の書店経営者を支える議員連盟」(書店議連)の総会の模様を矢幡秀治会長が報告した。
矢幡会長は「議連会長が塩谷立氏、書店事務局が出版文化産業振興財団(JPIC)に変わり、新体制になって初の総会。私は関係団体の代表として出席し、あいさつした。今後、会合には毎回出席するつもりだ。内容はその都度、理事会で報告する」と述べた。
▽日書連主催「出版販売年末懇親会」は12月14日(水)、都内で開催予定。開催可否の最終判断は、新型コロナの感染状況などを見ながら9月末までに行う。
▽第22回家の光読書エッセイ(主催=家の光協会、募集期間=7月1日~11月11日)の後援名義使用申請を承認した。
▽第19回家の光読書ボランティア養成講座(主催=家の光協会、実施期間=7月4日~19日)ならびに第16回家の光読書ボランティアスキルアップ講座(主催=家の光協会、実施期間=7月11日~25日)の後援名義使用申請を承認した。
▽第29期JPIC読書アドバイザー養成講座(主催=出版文化産業振興財団、実施期間=8月27日~2023年3月27日)の後援名義使用申請を承認した。
▽マンガ感想文コンクール(主催=出版文化産業振興財団、募集期間=7月1日~9月30日)の後援名義使用申請を承認した。
[流通改善委員会]
藤原直委員長は、講談社、小学館、集英社と丸紅グループが3月に設立した新会社「Pubtex(パブテックス)」について、人工知能(AI)とRFID(ICタグ)の活用を通じて出版流通改革をめざす事業に取り組んでいると説明。「ICタグ実用化は書店にとって喫緊の課題」として、同社が今夏に開設を予定するRFIDショールーム(ラボ)を委員会として見学する意向を示した。
[取引改善委員会]
日本雑誌協会(雑協)はこのほど、「雑誌作成上の留意事項2021年改訂版」を一部改訂し、付録の形式・材質で「店頭の陳列も阻害しないよう考慮すること」という文言を、「小売店において、陳列時そして雑誌(本誌)自体に支障が起きぬ様、事前確認等を適宜実施し、付録梱包形状を考慮すること」に変更した。
同留意事事項は昨年大幅改訂し、「付録のかさ高の合計は3㎝以内」という規定が撤廃されたことから、配達時にポストに入らないなどの支障が出ていることが、東京都書店商業組合との意見交換の際に報告されていた。
柴﨑繁委員長は「最近も雑協非加盟社が7㎝の付録を付ける事例が報告されており、書店現場は苦労している。付録の梱包形状へ配慮をお願いしたい」と一層の協力を求め、今年度の重要課題として付録問題に取り組みたいとした。
[図書館委員会]
2022年度からスタートした「第6次学校図書館図書整備等5か年計画」について、髙島瑞雄委員長は「学校図書館に関わる人たちに周知し、各自治体で確実に予算化されるよう呼びかけてほしい。その際、学校図書館整備推進会議などが作成したリーフレット『心と考える力を育むために―学校図書館の出番です―』を有効活用してほしい」と求めた。
また、図書更新予算が使われるよう、古くなった本を廃棄し新しい本に買い替える「蔵書の更新」が適切に行われなければならないと指摘した。
[組織委員会]
日書連所属員数の月次動向は、2月が加入5店・脱退4店で1店純増、3月が加入2店・脱退6店で4店純減、4月が加入なし・脱退12店で12店純減。
安永寛委員長は「組合加入メリットの追求に重点課題として取り組む」と強調。県教職員互助会の図書引換券が組合加盟書店のみで利用できる宮城組合や福岡組合の事例を紹介した。
[書店再生委員会]
「客注商品の着荷」について現状把握を行うため、委員の書店を対象にアンケートを実施した。渡部満委員長は「客注に確実に応えられていない状況がアンケート結果から見て取れた。取引取次に関わらず同じ条件でお客様に着荷日を答えられるシステムに平準化されることが必要ではないか」と述べた。
[広報委員会]
光永和史委員長は、10月19日開催を予定している全国広報委員会議の準備状況について、会場は出版クラブホールを予約したこと、読売新聞の記者に講演会の講師を依頼していることを報告した。

日書連近畿ブロック会、JPO、書協/「BooksPRO説明会」大阪で

日本書店商業組合連合会近畿ブロック会(深田健治会長=大阪府書店商業組合理事長)と日本出版インフラセンター(JPO)、日本書籍出版協会は「BooksPRO説明会」を開催する。
JPO・相賀昌宏代表理事あいさつ、JPRO/BooksPROについての概要説明、JPRO/BooksPROについての出版社・書店アンケートに対する説明、出版社・書店・取次における取組紹介、参加者との質疑応答などを行う。
開催日時は7月6日(水)午後2時から5時まで。会場は大阪市北区の大阪市中央公会堂。会費は無料。参加者は近畿圏の書店(組合未加盟店でも可)、近畿圏の書協会員出版社、取次各社。

「やま読ラリー」図書館も参加して開催/SNS活用した販売事例報告も/山梨総会

山梨県書店商業組合は5月17日、甲府市の山梨県中小企業会館で第34回通常総会を開き、組合員20名(委任状含む)が出席した。
総会で大塚茂理事長(柳正堂書店)は「コロナウイルスの終息が見通せない中巣ごもり需要の反動により売上は対前年比で厳しい数字となっている。だが出版社を中心に新しい動きが出始めており、アンテナを高くして知恵を出し合い、アフターコロナの時代が明るい未来となるよう皆で力を合わせ頑張っていこう」とあいさつ。続いて、大塚理事長を議長に選出して議案審議を行い、すべての議案を原案通り承認可決した。
事業報告に関連して、書店と図書館が連携し読者が知の回遊を行うスタンプラリー「やま読ラリー」について組合員から報告。日書連読書推進活動補助費を活用した事業として21年度は10月~11月に開催、前年はコロナ対策として図書館の参加が見送られたが、本来の趣旨通りに図書館の参加を得て実施した。11月1日の「本の日」に合わせて盛り上がりを見せた書店があった一方で、ラリーの認知度がさらにアップするような情報発信が必要だとする意見が出された。
販売事例の話題では、SNSで熱心に情報発信をしている組合員から報告。ある著者の新刊をSNSで強く推したところ著者の目にとまり、サイン本を用意するという厚意の申し出があったとのこと。店では通信販売を通常行っていないが、著者はメディア露出も多くファンが多いため、SNSで通販を告知。著者の積極的な協力も後押しとなって北海道から沖縄まで各地から申込みが相次ぎ、最終的には150冊を売上げる結果になったという。著者は書店の衰退を心配し、機会があれば小規模店の力になりたいと思っていたということで、この報告は大変参考になる事例として出席者から強い関心が寄せられ、質問が相次いだ。
(事務局・萩原清仁)

「春夏秋冬本屋です」/「支部での活動」/愛知・近藤商店代表取締役・近藤五三六

先日、在籍する書店組
合の支部総会が行われた。コロナ禍である程度の制限があったとはいえ、ここ2年間ほとんど活動が無く寂しい気持ちである。支部での活動が組合活動を身近に感じられるからだ。
かつては企画本や地元の歴史書を取り上げ増売したり、支部での「絵本まつり」を開催したり、雑誌の早売りがないか調査をする活動等があった。会合では諸先輩方の意見やアイデアを参考にしたり、体験談を聞き勇気づけられたりもした。いまだに書店業を続けているのは偶々、活発な支部に在籍していたからだと思っている。
自分が支部長だった頃、理事会で支部の活動や近況報告をする時、「何もありません」「何もしていません」と言うのが恥ずかしく、何かネタを探しては発表していたことを思い出す。ここ10年ほどの間に在籍支部員が半減してしまい、総会の出席者数は一ケタになってしまったが、皆が発言、発表し、「時間の掛かるシャンシャン総会」になったことは良かったと思う。
また、地元在住のJPIC読書アドバイザーさんに来ていただき、お勧めの児童書を紹介していただいたり、活動や商売のヒントになるお話をいただいた。
昼食も喫茶店で用意したものを皆でいただき、ここでも色々な話をしたが、他のお客様がいることと、アクリル板で間仕切りがあるので思ったように話せなかったが満足のいくものであった。

大好きな本絵画コンテスト/県組合賞など入賞作品を決定/神奈川組合

神奈川県書店商業組合(松信裕理事長)は4月26日、横浜市中区の神奈川新聞社本社で、絵本を題材に主人公などを描く「第17回大好きな本絵画コンテスト」(主催=神奈川県読書推進会)の審査を行った。
コンテストは県内の幼稚園や保育園の園児を対象に作品を募集するもので、応募総数は1019点と前年をやや下回った。審査は県組合から山本裕一副理事長はじめ3名と、県教育局生涯学習課・尾上夏子主幹の計4名が審査員となり、神奈川新聞社の社員が協力。テーマの理解、子どもらしい表現力、発想の豊かさを選考基準として、県読書推進会賞1作品、県書店商業組合賞2作品、神奈川新聞社賞2作品、全国共済賞5作品、ぺんてる賞20作品、優秀賞50作品を選出した。
コロナ禍の状況を鑑みて表彰式の開催は見送り、入賞作品を神奈川新聞紙上で6月に発表、全国共済ビルで1週間展示することとした。(山本雅之広報委員)

粗利改善、読書推進などに取り組む/深田理事長「より良い取引環境目指す」/大阪総会

大阪府書店商業組合は5月20日、大阪市北区の組合会議室で令和3年度通常総会を開き、組合員101名(委任状含む)が出席。深田健治理事長(ブックスふかだ)は、粗利改善や読書推進などの活動方針を説明。書店と取次のより良い取引環境構築を目指していくと述べた。
総会は、堀博明副理事長(堀廣旭堂)の司会で進行し、深田理事長が開会あいさつ。虎谷健司副理事長(虎谷誠々堂)を議長に議案審議を行い、令和3年度事業報告、収支決算書、令和4年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
令和3年度事業報告の総括を発表した深田理事長は、出版業界の大きな動きとして楽天ブックスネットワーク(RBN)の物流面における日本出版販売との協業拡大、図書館事業からの撤退について言及し、「RBN帳合書店にアンケート調査を実施して各取次に申し入れをし、問題点の改善へ協力を要請した」と報告。また、出版文化産業振興財団が特別委員会を組織して書店収益の改善など書店の経営課題解決に乗り出したことを説明し、日書連のメンバーとして同委員会に参加しており、街の書店の意見を反映させていきたいと述べた。
大阪組合が取り組む事業では、「大阪こども『本の帯創作コンクール』」(帯コン)はコロナ禍のため2020年は応募が大きく減少したが、21年は増加して1万件を超す応募があったと報告。小学館の協力のもと開始した週刊誌2誌の定期販売協力金事業については「ある程度の成果を出すことができた。今後も継続して取り組んでいきたい」と語った。
深田理事長は令和4年度事業計画で、RBNと日販との協業に関しては「まだ体制に未整備な点があるので、皆さんの意見を伺いながらより良い取引環境を目指していきたい」と方針を説明。また、日書連が推進する書店粗利30%獲得運動とともに、キャッシュレス決済手数料の軽減又は補填を提案していきたいと述べた。日本出版インフラセンター(JPO)の出版情報登録センターが運営する書誌情報サイト「BooksPRO」は、書店の活用を進めたいとして、7月6日に日書連近畿ブロック会とJPO、日本書籍出版協会が主催して開催する勉強会へ参加を呼びかけた。読書推進では、帯コンと読書ノート運動を引き続き積極的に進めていくと表明。公共図書館・学校図書館への図書納入に関しては、「第6次学校図書館図書整備等5か年計画」がスタートしており、各自治体へ図書整備費の予算化を働きかけていきたいと述べた。
最後に戸和繁晴副理事長(トーワブックス)のあいさつで閉会した。

日書連のうごき

5月10日日書連決算・業務監査会に矢幡会長、小泉、葛西両監事が出席。
5月11日読売出版懇親会に矢幡会長が出席。
5月13日全出版人大会に矢幡会長、藤原、渡部、安永各副会長が出席。
5月18日東京都書店商業組合総代会に事務局が出席。
5月19日読書推進運動協議会理事会に春井副会長が出席。JPO運営委員会に事務局が出席。
5月20日日本出版クラブ監査会に矢幡会長が出席。全国書店再生支援財団理事会に髙島、平井両理事が出席。
5月24日日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。
5月25日JPO運営幹事会に事務局が出席。読書推進委員会(Web併用)に春井副会長、成田、木野村、堤各理事が実出席。
5月26日出版物小売業公正取引協議会通常総会。5月定例理事会。
5月31日出版平和度委員会に事務局が出席。

JPIC「書店収益改善」へ実証実験/第1弾は小学館「BE-PAL」9月号/雑誌買切で正味引き下げ

出版文化産業振興財団(JPIC、近藤敏貴理事長=トーハン社長)は5月31日、「書店収益の改善」を目指して実証実験を行うと発表した。
JPICは、昨年設置した特別委員会(奥野康作委員長=ブックエース社長)で書店収益改善をテーマに検討を重ね、具現化に向けた取り組みとして「雑誌買切による正味引き下げ」を企画した。今回はその実証実験の第1弾を実施するもの。
リアル書店の店頭売上と粗利の増加を目的に、定期刊行誌を「通常版(委託)」と同時に、同じ内容のものを「雑誌10コード」を使用して「買切版」として別条件で刊行する。実証実験では部数の申し込みから陳列・販売など一連の取り組みを実績とともに検証する。
第1弾は小学館のアウトドア情報誌「BE-PAL」9月号で実施する。企画内容は次の通り。
▽対象誌=「BE-PAL」9月号(買切版)
▽雑誌コード=10097‐09
▽発売日=2022年8月9日(火)
▽価格=特別価格1100円(本体1000円+税)
▽付録=「ドラえもんミニ・シェラカップ」
※同付録前回実績(絵柄は異なる)「BE-PAL」2021年6月号(2021年5月7日発売・17631‐06)
▽対象店=「BE-PAL」2022年6月号(5月9日発売)配本実績のある「リアル書店」の店頭販売分のみ
▽条件=卸正味55%・買切※返品不可
▽注文方法=・「s‐book」のみで受付(新規登録可)・同一店舗にて「買切版」「通常版」両方の取扱い不可
▽注文締切=2022年6月30日(木)
▽問い合わせ=出版文化産業振興財団担当・金田氏電子メールkaneda@jpic.or.jp℡03(5211)7282

プレミアム商品券の相談事例目立つ/出版物小売公取協通常総会

出版物小売業公正取引協議会(小売公取協)は5月26日、東京・千代田区の書店会館で通常総会を開催し、理事50名(委任状含む)が出席した。
総会は石井和之事務局長の司会で進行。はじめにあいさつした矢幡秀治会長は、昨年度はコロナ禍の影響で各自治体等のプレミアム商品券に関する相談事例が目立ったと報告した。
続いて矢幡会長を議長に議案審議を行い、令和3年度事業報告、収支決算報告、令和4年度事業計画案、収支予算案を原案通り承認可決した。
事業報告では、規約の運用について小売公取協に寄せられた相談のうち代表事例4件を紹介し、回答内容を解説した。
事業計画については、①出版物小売業公正競争規約の普及と違反防止――「解説・運用の手引(三訂版)」「相談(Q&A)事例集」を増刷し、支部・会員への規約の普及と周知、正しく運用してもらうための研修会等の開催を推進する、②景品表示法をはじめとする関係法令の研究、③一般消費者、消費者団体並びに出版業界団体との連携、④関係省庁との連絡、⑤広報活動――の5項目を重点課題として取り組む方針を決めた。
書面であいさつを寄せた消費者庁表示対策課の南雅晴課長は、景品表示法の運用について、令和3年度は消費者庁は41件、都道府県は4件の措置命令を行い、消費者庁は総額4億円を超える課徴金納付命令を行ったことを報告。「各公取協による厳正な規約の運用は、景品表示法の効果的な施行や消費者による合理的な商品・サービス選択に不可欠。引き続き、公正競争規約の適正な運用を通じて、出版物小売業の健全な取引のために尽力されることを期待する」とした。
最後に柴﨑繁副会長のあいさつで閉会した。

新会長に近藤敏貴氏(トーハン)「持続可能な出版流通実現を」/取協総会

日本出版取次協会(取協)は4月20日、東京都千代田区の出版クラブで第70回定時総会を開催。任期満了に伴う役員改選を行い、新会長に近藤敏貴常務理事(トーハン)が就任した。平林彰会長(日本出版販売)は退任した。
総会であいさつした平林前会長は「皆さんにご協力いただき、2年間会長を務めさせていただいた。その中で、年間発売日カレンダーで週5日以内稼働が実現できた。出版業界は大きな変革の時期だが、課題解決のため、近藤新会長のもと流通改革をさらに推進していただきたい」述べた。
近藤新会長は「平林前会長は、大規模災害発生時の対応運用の決定、JPROデータ活用の推進などにも実績を残された。今後、物流のいわゆる2024年問題が視野に入るが、これまでの議論をさらに深め、的確に対応したい。持続可能な出版流通の実現には、取協単独でなく関係団体との連携が不可欠。自身に与えられた役割を果たし、各方面との連携を進め、皆さんとともに業界の課題解決のため力を尽くしたい」と所信表明した。
令和4年度事業計画における推進・重点テーマは、「持続可能な出版流通構造の推進」として、①他業界商材混送の取組、②雑協合同PTの取組強化、③持続的な出版物輸送の構築、④雑誌業量平準化の推進――を掲げた。
また、JPOやJPICなど出版関連団体との連携を強化。インボイス制度の23年10月導入に向け、日本書籍出版協会とも意見交換を進めながらシステム対応などを検討していく。
[取協新役員体制]
▽会長=近藤敏貴(トーハン)
▽常務理事=奥村景二(日本出版販売)、川村興市(楽天ブックスネットワーク)、森岡憲司(中央社)、渡部正嗣(日教販)、貝沼保則(協和出版販売)
▽理事=田仲幹弘(トーハン)、安西浩和(日本出版販売)
▽監事=岩田浩(共栄図書)、山本和夫(公認会計士)

4月期販売額は7・5%減/週刊誌、送品落込み2桁減/出版科研調べ

出版科学研究所調べの4月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比7・5%減となった。内訳は書籍が同5・9%減、雑誌は同9・5%減となった。書籍は送品の減少に加えて返品が増加し、マイナスに。4月期は20年、21年と2年連続で緊急事態宣言が発出され、特に書籍の実績は異常値(20年21・0%減、21年21・9%増)が続いていた。雑誌の内訳は月刊誌が同9・0%減、週刊誌が同12・2%減。週刊誌は発行金額が同12・3%減と送品ベースの落ち込みが大きく、2桁マイナスとなった。
書店店頭の売上げは、書籍が約8%減。文芸書が約16%減、ビジネス書が約10%減と落ち込む中、児童書は約2%減にとどまった。『名探偵コナンハロウィンの花嫁』(小学館ジュニア文庫)などの児童文庫やヨシタケシンスケの新作絵本『かみはこんなにくちゃくちゃだけど』(白泉社)など有力新刊が多かった。
雑誌の売上げは、定期誌が約6%減、ムックが約2%増、コミックスが約8%減。コミックスは、4月にアニメ放送が始まった『SPY×FAMILY』(集英社)が新刊・既刊ともに大きく売れ行きを伸ばした。

小学館新企画発表会/創立100周年記念企画4点刊行/紙と電子が連携『世界J文学館』など

小学館は5月18日、東京・千代田区の本社会場とオンライン参加を併用して新企画発表会を開催した。創立100周年記念企画として『小学館世界J文学館』『小学館版学習まんが日本の歴史』『100年大長編ドラえもん』『日本鉄道大地図館』の4企画に加え、文芸書、児童書など多彩なジャンルの今春~秋の出版企画を、担当編集者や著者がプレゼンテーションした。
冒頭あいさつした相賀昌宏社長(現会長)は、「1922年の創業以来100年目という一つの節目、通過点。皆様の支えによるものと感謝している。これからも感謝の気持ちを忘れずに、奢ることなく真摯に、失敗もあるだろうがそこから学んで進んでいきたい」として引き続きの支援を求め、「今年の新企画も盛りだくさん。編集者や登壇する執筆関係者の言葉から、自分の心に響くものを読者に伝えてほしい」と呼びかけた。
『小学館世界J文学館』は、紙の本を1冊購入すると、125冊の世界の名作の本文を電子書籍で読む権利が得られる、次世代型の児童文学全集。大きな本棚でスペースをとるイメージのある名作全集だが、本書は「かさばらない、軽い、手に取りやすい」形を実現した。
紙の本が「名作図鑑」(名作ガイド)の役割を担い、見開きで1作品のあらすじなどを紹介。子どもたちはこのページに掲載されたQRコードをスマートフォンなどで読み込み、作品紹介ページからダイレクトに電子書籍の本文にアクセスし、読むことができる。
収録作品は古典から21世紀の作品まで。ほとんどが新訳で、本邦初訳作品も多数収める。
第二児童学習局の塚原伸郎氏は「紙の本と電子書籍が連携した画期的な文学全集。子どもたちに本を好きになってもらいたいとの願いから生まれた。125冊、約4万ページの名作を楽しめる全集としてはリーズナブル。軽快に楽しく読んでいただきたい」とアピールした。11月22日発売予定。A4判、264ページ。価格本体5000円。
『小学館版学習まんが「日本の歴史」』(全20巻)は、1981年の発売から累計発行部数2090万部を超える学習まんがシリーズを全面リニューアルしたもの。来年度「日本史B」から「日本史探求」と名を変える日本史の教科書を意識した内容で、山川出版社が編集協力。11月24日頃全巻同時発売予定。A5判・並製、各巻224ページ。定価各968円(税込)、全20巻セット定価1万9360円(税込)。
『100年大長編ドラえもん』は、藤子・F・不二雄が、劇場版アニメ映画の原作として執筆した『ドラえもん』の長編作品を愛蔵版にした全17巻セット。装幀は前回に続き名久井直子氏が手掛けた。完全受注生産で12月1日発売。新書版・ハードカバー。セット売り商品で定価4万8000円(税込)。
『日本鉄道大地図館』は、明治から令和にかけて発行された約150点の鉄道地図を読み解き、日本の鉄道の歴史と暮らしの変遷をたどった労作。監修は地図研究家の今尾恵介氏。9月29日発売予定。A3判・上製ケース付、414ページ。定価3万9600円(税込)。
その他の新企画は次の通り。
▽寛仁親王『ひげの殿下日記』6月1日発売。四六判、618ページ。定価4400円(税込)▽町田そのこ『宙ごはん』5月27日発売。四六判、368ページ。定価1760円(税込)▽夏井いつき『瓢箪から人生』7月14日発売。四六判、224ページ。定価1980円(税込)▽桐島洋子・桐島かれん・桐島ノエル・桐島ローランド『ペガサスの記憶』6月15日発売。四六判、224ページ。定価1980円(税込)▽『小学館の図鑑NEO新版岩石・鉱物・化石DVDつき』6月22日頃発売。A4変形判、216ページ。定価2200円(税込)

マーケットイン型出版流通具現化へ/全国トーハン会代表者総会

トーハンは5月10日と17日、東京・新宿区の本社で、3年ぶりとなる全国トーハン会代表者総会を開催した。新型コロナ対策のため今回は出席者を書店に限定し、10日は東日本・首都圏エリアの書店39名とトーハン17名、17日は東海近畿・西日本エリアの書店29名とトーハン19名が出席した。近藤敏貴社長は丸紅グループと講談社、小学館、集英社が共同で設立した新会社「PubteX(パブテックス)」に言及し、「ライバルではなくパートナー」との認識を示した。
17日開催の総会の冒頭、あいさつした近藤社長は、メディアドゥとの提携による電子書籍販売事業や電子図書館事業、出版文化産業振興財団(JPIC)の理事長に就任して進めている出版界の全体最適化に向けた活動に触れ、「22年の出版業界は一時のコロナ特需が収束して、あらためて正念場に立たされている。日本の出版文化・書店文化の再活性化に向けて粉骨砕身、精一杯取り組んでいく」と決意表明した。
続いてトーハン会を代表して中部トーハン会・谷口正明会長(正文館書店)があいさつ。「今は検索すれば答が出る。これからの子どもたちは何も覚えなくていいと言う人もいる。自分で考えない人間が増えている」と危機感を示し、「出版業界がやらなければいけないことは、電子に乗って仕事をすることではなく、世の中の電子化の流れを少しでも遅くすること」と持論を展開した。
「全国トーハン会プレミアムセール2021」販売コンクールは、年間総合1位が岡山トーハン会、プレミアムプラス1位が鹿児島トーハン会。岡山トーハン会・片岡正樹会長(片岡書店)が表彰を受けた。
施策説明では、近藤社長が全社方針を説明。21年度実績について連結・単体ともに増収減益の見込みと報告し、「売上目標は達成し、利益も改善したが、取次事業はまだ赤字。マーケットイン型出版流通の具現化に取り組む」と述べ、そのための施策として「enCONTACT」と「マーケットイン型販売契約」を挙げた。
10月稼働予定の新仕入れプラットフォーム「enCONTACT」は、業界標準の書誌データベース「JPRO」を活用し、出版社向けウェブと書店向けウェブを提供する。書店向けウェブでは近刊商品の事前申込の機能を実現し、出版社向けウェブでは仕入受付から部決までウェブで完結できる。TONETSVと連携し、BooksPROとの連携、NetGalleyとのリンクも備える。「TONETSV非加盟店でも利用できる。幅広く利用してもらうことで、事実上の業界共通プラットフォームを目指す」と目標を語った。
「マーケットイン型販売契約」については、「適量仕入れで返品率を下げ、出版社コストも削減し、書店マージン改善の原資を確保する。新しい形の報奨契約」と説明し、21年度のグループ2法人(ブックファースト、八重洲ブックセンター)と出版社8社から、22年度は全グループ書店と出版社13社~19社に拡大、23年度は帳合書店に順次拡大し契約出版社も拡大する方針を話した。
メディアドゥとの協業では、「書店がデジタルビジネスへ参画できる仕組みをトータルで整える」として、「ブックファーストと八重洲ブックセンターの3店で店頭での電子書籍販売の実証実験を開始した。以前c‐shelfで失敗しているが、今は当時より電子書籍の普及率が高く、メディアドゥというパートナーもいる。実証実験では書店で電子書籍を買う行為へのアレルギーはなく、思ったよりいけそうだ」と自信を示した。
DNPとの協業については、DNPの書籍流通センター(赤羽SRC)をトーハンの桶川センターに移設することにより、「最短で受注翌日に店頭に届ける。取り寄せ品も1週間以内に届ける。在庫のない注文もPODで確実に届ける」と説明。「いつ入荷するか分からないという出版流通業の致命的課題を撲滅し、注文物流を次のステージへ進める」と語った。
また、PubteXに触れ、「フィジカルな流通は既存の取次を活用すると明言している。設立前から打ち合わせをしており、当社にとってライバルという関係ではなく、持続可能な出版流通という共通の目標を持つ協調可能なパートナーと考えている」と述べた。
このあと川上浩明副社長が各重点施策を詳しく説明した。

4月期は前年比8・2%減/コミック、前年割れも回復基調に/日販調査店頭売上

日本出版販売(日販)調べの4月期店頭売上は前年比8・2%減となった。雑誌は週刊誌の3ヵ月連続の前年超えがストップし、書籍はすべてのジャンルで前年を下回った。しかしコミックが6ヵ月連続の前年比80%割れを脱した影響もあり、全体では21年9月期以来7ヵ月ぶりの前年比90%以上になった。
雑誌は同4・6%減。ムックは「TYPE‐MOONエースVOL14」(KADOKAWA)などが売上を伸ばし、同1・1%増と好調だった。
書籍は同9・5%減。中でも総記、文芸書、学参、新書が2桁減と低調だった。
コミックは同8・1%減。雑誌扱いコミックは、「呪術廻戦19」(集英社)や「ONEPIECE102」(集英社)のほか、4月からTVアニメが放送開始となった「SPY×FAMILY」(集英社)の新刊・既刊が売上を伸ばした。

「本屋のあとがき」/「靴のなかの闖入者」/ときわ書房本店文芸書・文庫担当宇田川拓也

なにかいる!?
朝の出勤途中、横断歩道で信号待ちをしていると、靴のなかの右足の甲をモゾモゾと移動する感触にギョッとする。
この時間、周囲には駅を目指す大勢のひとがおり、ひとり取り乱すのもはばかられる。涼しい顔で平静を装っていると、靴のなかのなにものかは、つま先のわずかな隙間にたどり着き、ぴたりと動きを止めた。
このとき、私はこの靴のなかの闖入者の正体がわかったので、このまま電車を乗り継ぎ、勤務先まで向かうことにした。
うっかり潰さないよう右足に神経を集中しながら、ようやく事務所で靴を脱いで確認すると、なかにいたのはコクワガタのメス。どうやらわが家の虫めづる姫君(5歳)が、飼っているクワガタのケースのふたをしっかりとしていなかったため深夜に逃げ出し、よりにもよって私の仕事用の靴のなかに隠れていた――というわけである。
ようこそ船橋へ、と苦笑しつつ袋に入れ、勤務後に無事持ち帰って事なきを得たが、まったくとんだハプニングを巻き起こしてくれたものだと思いつつも、結果こうして本稿のネタになったのだから、このささやかな笑い話のプレゼントを子供に感謝しなければなるまい。まさかいないとは思うが、クワガタ入りの靴で出勤されたご経験のある方は、ぜひご一報を。