全国書店新聞
             

平成17年6月1日号

新会長に丸岡義博東京組合理事長/面屋、大橋両氏は副会長

日書連は5月26日、台東区の池之端文化センターで通常総会を開き、萬田貴久会長が退任。新会長には24日に東京組合理事長に選出された丸岡義博副会長(千代田区・廣文館書店)が昇格した。副会長人事では今西副会長が退任し、新たに面屋龍延(大阪・清風堂書店)、大橋信夫(東京・東京堂書店)の両氏が副会長に選任された。白幡専務理事は勇退し、大川哲夫事務局長が昇格した。
井上俊夫常任委員(神奈川)の司会で午前11時に始まった通常総会は井門照雄副会長の開会宣言に続いて、萬田会長があいさつ。
萬田会長は「既に新聞で報道されているように16年度をもって辞任する。平成9年に小沢会長のあとを受けて8年間勤めた」として任期中を振り返り、会長に就任した平成9年が消費税5%アップ、就任直後に大津宣言を受けた再販百万署名、国会請願と書店の命運を左右する重大案件が続いたことに言及した。
また、会長報告の中で、再販問題は公取が公表文を発表した平成10年春、出版業界は6項目の改善事項を求められ、この中に読者サービスの一環としてポイント・カードの検討が入って
いたことを指摘。
昨年秋以降、公取委から日書連の版元訪問は行き過ぎと指摘があり、年が明けて2月には業界関係者が呼び出され、注意を受けた事情を明らかにした。
日書連が政策転換したという見方に対しては、これを退け、「この総会までに情報を共有するため、野口課長の発言も伝えた。各県に意見を出してもらい、方針を検討してもらおうと考えた」と述べた。
中村晃造京都組合理事長を議長に、平成16年度事業報告と17年度事業計画は各委員長が一括して報告提案。このうち、低率のポイントカードの問題では、岡嶋委員長が「読者サービスの観点から研究する必要がある。新年度執行部で検討して委員会を設けてほしい」と提案した。
組織強化対策では、鈴木委員長が「中小書店の廃業が増加している原因は支払い条件、請求サイトなどの取引条件に問題がある。現状の取引条件を把握するため、特別委員会を設置して7月にも実態調査を行なう。調査結果を踏まえたうえで、制度改善へ向けた提案をまとめたい」と新年度の取り組みを説明した。
事業報告、事業計画、決算、予算を原案通り承認したあと、役員改選を行い、理事53名を承認。初理事会で会長、副会長、専務理事、常任委員を了承した。総会終了後、今年度の日書連共済会加入優良地区を表彰した。

新役員略歴

丸岡義博氏
昭和20年9月28日生まれ、59歳。昭和39年慶応義塾高校卒業。41年廣文館書店代表取締役社長。43年慶応義塾大学経済学部卒業。61年東京都書店商業組合理事。平成4年常務理事、5年日書連常任委員、10年東京組合副理事長。15年日書連副会長、17年東京組合理事長就任。
面屋龍延氏
昭和18年1月30日生まれ、62歳。昭和36年大阪府立泉尾高校卒業。39年極東書店入社。40年清風堂書店入社。58年代表取締役社長。平成6年大阪府書店商業組合第2支部長。8年理事、9年常務理事、日書連常任委員、10年大阪組合副理事長、11年日書連理事、17年大阪組合理事長就任。
大橋信夫氏
昭和18年5月8日生まれ、62歳。昭和41年学習院大学理学部物理学科卒業。43年同大学院修士課程終了。同年東京堂出版入社。45年東京堂書店入社。54年取締役、59年常務取締役、62年社長に就任。平成15年から東京都書店商業組合理事、千代田支部長。17年東京組合副理事長就任。
大川哲夫氏
昭和22年10月2日生まれ、57歳。昭和41年埼玉県立松山高校卒業、同年山陽パルプ入社。43年退社。49年埼玉大学教養学部卒業。同年日書連入局。平成元年主任、2年総務部長、9年事務局次長、11年事務局長。

丸岡新会長あいさつ

私の店は神田神保町にあります。神保町には約2百軒の本屋があり、古本の街として有名ですが、私はその街で生まれ育ちました。古本屋は商品は買い取りですのでお店の規模は大きくありませんが、それぞれが個性的であり、全体として1つの市場を形成しています。近くには秋葉原の電気街があり、小川町近辺にはビクトリアをはじめとするスポーツ街が形成され、書店会館がある御茶ノ水近辺は楽器屋が多く集まり、それぞれ特色のある商売をしています。こうした特色は一晩でできるものではなく、1つひとつの地道な積み重ねがあってこそ、出来上がったものです。
社会の変化は著しく、ライフスタイルや本をめぐる環境は変化しています。少子高齢化による若年人口の減少、携帯電話やインターネットの普及、CVSや新古書店の増加、ネット書店の急激な拡大などにより街の小さな書店の逆風はやみません。16年版の取次経営実態調査によれば、既存書店の前年度比売上額はマイナス6・6%で、全体の約85%の書店が前年より売上げを減少させています。新刊が大型店出店に回り、中小書店の配本が減る中で取次店から厳しい支払いを迫られています。販売の最前線たる書店が営業していけるよう物流と金融の改善が必要です。
中小書店の急激な減少は再販制度の存立基盤である全国に張り巡らされた緻密な書店網を衰退させています。街に書店があることが文化です。出版不況の打開と再生を目指し、入金サイトの検討とスリップ報奨の見直し等、出版・流通・販売が一体となった新しい枠組みを構築していく必要に迫られています。今、書店は地域書店の役割を果たすため原点に立戻り、出版・取次・書店の三者が平等の立場で意思疎通を図り、新たな需要を開拓し、読者の期待に応えていかなければなりません。「新しい流通システムの構築」に挑戦しつつ、活字文化の再生、書物の復権を目指し、全力で書店の経営基盤を整備していきたいと考えています。
本年度は事業計画にあります通り、経営実態調査の実施による組合書店の現状の把握、再販制度下における書店の役割明確化、取引慣行の弊害是正と取引条件改善のための提言、そして読書推進と活字文化の振興を図っていきたいと考えております。

今夏に書店実態調査/取引条件見直しへ着手

4月1日現在の日書連傘下組合員数は7038店。ここ数年、書店の閉店・廃業が増加していることについて、鈴木組織強化委員長は「1年間かけて委員会で議論したところ、小規模店が求めているのは取引条件の改善。特別委員会を設置して7月にも書店実態調査を行い、調査結果を踏まえて取引制度の改善を図りたい」と提案した。
鈴木委員長が改善を図るべき課題としてあげたのは、支払いサイト、返品入帳、正味など。「書籍・雑誌の平均回転率が60日というなかで支払いが45日サイトでは、支払いできない」と矛盾を指摘し、青森組合からも支払いサイト90日を
求める決議が届いていることを紹介した。
質疑では「取引約定書が対等でない。返品入帳が遅い上に、100%入帳しないと品物を止めるとか、請求額を振り込むのは常識と取次に言われる。図書カードは組合員に限って手数料を減額してほしい」(神奈川・万納氏)という発言に鈴木委員長は「図書カードの書店への還元は考える」と説明。藤原流通改善委員長は「返品入帳は数年前に調査して取次に改善を申し入れた。取次の無伝返品も始まるので、再調査して改善を図りたい」と回答。また、万納氏から「書店と取次は平等である」という決議の採択が求められ、拍手でこれを確認した。

静山社と話し合い継続/2日目発売の実現目指す

流通改善問題は藤原委員長が静山社『ハリー・ポッター』第5巻と、発売日の改善について報告。「『ハリー・ポッター』については、4巻発売を踏まえ、春先より買切りでもいいから正味安をと求めたが、実現しないまま9月1日の発売日を迎えた。しかし、5月で発売後9カ月の返品期限が来るため、もう一度話し合いを申し入れる」と説明した。
発売日の問題は今年3月から鳥取、島根、山口の3県で2日目発売が実現したことから、残る3日目地区の北海道、九州についても2日目発売を目指したいと述べた。
この報告について、北海道組合から「ぜひ、発売日繰上げをお願いしたい。新聞広告を見て店頭に買いに来るお客さんを断るのが辛い」(松山氏)と現地書店の実情が訴えられた。

総会スローガン

◎法定再販制の下、出版文化の普及と読者の利益を守ろう!
◎取引慣行の弊害是正で中小書店の経営を守ろう!
◎情報・物流ネットワーク化による流通改善で業界三者の共生を図ろう!
◎書店の組合加入を促進し、組織強化と財政健全化を図ろう!
◎全国同時発売の実現で雑誌の増売を図ろう!
◎読書推進運動の輪を拡げ、活字文化の振興に努めよう!
◎4月23日「世界本の日=S・Jの日=こども読書の日」を広めよう!
◎全組合員の一口以上の加入促進で、日書連共済会の充実を図ろう!

新執行部の研究課題/低率のポイントカード

ポイント・カード問題について経過報告した岡嶋再販委員長は「昨年3月、再販研究委員会でポイントカードは再販違反の判断が出て、5月には期限を切った実行案もできた。6月の著作物流通協議会で共同行為の指摘があり、9月から3回ぐらい行った出版社訪問はやめるように指導があった。11月に野口課長のインタビューがあって、再販研究委員会と2回ほど話し合った。堂々巡りだから、もう話し合いをしないとされたことには疑念がある。質問状の回答もないまま話し合いを打ち切られたことは遺憾」と説明。
公取委から求められている低率のポイントカードについては、「がちがちな形で守っていこうとは思っていない。読者サービスの観点から研究する必要はある。新執行部で検討して研究する組織、委員会を作ってはどうか」と提案した。
しかし、再販研究委員会が今年1月までは低率のポイントカードを認めれば再販は崩れるという考えで一致していたことについて「2月以降は委員会も開かれず、日書連の出方待ち。低率のポイントカードを認めるなら、出版社に説明義務がある。書店のサービスとして解決するのでは再販は守れない」と批判。日書連の方針は今まで通り変わっていないと強調した。
質疑では万納氏から「公取の指導は公的利益と書店の利益をないがしろにしている」とする増本神奈川組合顧問弁護士の見解が紹介された。これに対し、岡嶋委員長は「増本弁護士の見解に同感だ。日書連顧問伊従弁護士の意見についても、公取委は見解の相違としている。最後は司法の判断に行きつくことになるのではないか」とする考えを述べた。

その他の報告事項

〔スタートアップ〕
バーコードに変わる在庫管理、万引き対策の切り札としてICタグの実験が倉庫、取次、書店などで始まっているが、1個百円していたICタグが5円で実用化されることになり、「この冬には見本品ができる」と、井門委員長が説明した。早ければ1、2年後にコミックから実用化される見通しだという。
本のデータベースに関しては、商品基本情報センターが発足し、秋から出版社が自社のデータベースを作成することになる。今年はデータベース元年になると井門委員長。
一方、書店データベースに関しては、共有書店マスターユーザー会のデータベースを7県でスクリーニング化の作業を終えており、他の都道府県でも年内にまとめてほしいとした。
〔読書推進〕
高須委員長から読書環境整備、書店店頭活性化のための取り組みとして①第4土曜日はこどもの本の日キャンペーン、②絵本ワールドへの参加、③学校図書館図書整備、④子どもの読書活動推進基本計画の策定について報告があった。
第4土曜日のキャンペーンは平成16年度で7年目。39都道府県、368店で実施済みで、今年の秋にも47都道府県を一巡したことになる。
文部科学省主催の「絵本ワールド」は昨年11会場で実施。今年度も13会場で予定しており、展示即売会への各県組合の協力を求めた。
このほか、神奈川、大阪の「読書ノート」運動、愛知の「孫の日」など、各県で特色ある読書推進活動が展開されており、引き続き読書推進の種まきをお願いしたいと呼びかけた。
〔増売運動〕
世界本の日=サン・ジョルディの日を冠した文化講演会は、昨年、盛岡、前橋、文京区、静岡、新潟、大阪、広島、高知の8地区で開催。今年も6会場で行われることが舩坂委員長から報告になった。
児童図書増売運動「心にのこる子どもの本」は夏休みセール、秋の新刊セールと年に2回実施しており、児童書増売の重要な柱として、全国に定着しているとされた。
青森組合から提唱された『今、読書が日本人を救う』(鈴木健二、グラフ社)の増売は全国から250店、3180冊の申し込みがあった。
〔共同購買〕
中山委員長から雑誌袋の廉価斡旋、オリジナル手帳「ポケッター」の製作について報告があり、「ポケッター」は昨年より1万2千部減らし、12万5千部製作の予定で9月にも全国の書店に案内するとした。
〔消費税〕
店頭でお客様の消費税に対する声をアンケートしてはどうかという松山氏の質問に、下向委員長は「税率引き上げが国民の暮らし、にどう影響するか。出版物にも大きく影響することは明らか」と述べ、柴崎専門委員長は主婦連和田元会長との意見交換を紹介して「国民運動として税率上げ反対運動を展開すべきだ」とした。

共済会給付

(17・4・21~17・5・24)
▼病気傷害・死亡弔慰名古屋市中区栄3―27―7二昌堂書店村上はな殿5口
▼死亡弔慰沼津市大手町5―3―13マルサン書店古澤徳三殿6口
新宿区下落合3―12―18桔梗屋書店秋山寿男殿3口
▼前名義人死亡前橋市本町1―2―13煥乎堂高橋元理殿5口

ポスター、Q&A配布/個人情報保護法の対応で

出版販売倫理の問題では丸岡委員長が、昨年3月に改訂された東京都青少年条例について報告。指定図書は書店が包装する、表示図書は出版社に包装義務が盛り込まれたとした。
これに対して、CVS業界は不健全図書はシール留めするよう出版社に求め、約130誌が自主規制を実施した。CVSは指定図書ならびにシール留めをしない雑誌は扱わないとしたため、書店向け成人誌が増える可能性もあり、今後の推移を注意深く見守っていく方針を示した。
万引き防止キャンペーンについては、東京都で万引き防止協議会が昨年8月から行動計画を実施。万引きしにくい店舗作り、教育・キャンペーンの強化、万引き発見の徹底などの取り組みが行われた。福岡県では7月に青少年非行防止月間の一環として、万引き防止街頭キャンペーンを実施。宮城、京都、静岡、栃木、兵庫県でポスターを製作して配布したと、全国的なキャンペーンの展開が報告された。
さらに東京組合の取り組みとして、万引き犯に損害賠償請求の訴訟を起こし、被害については損害賠償を求める流れを作った事例が紹介された。
本年4月1日から施行された個人情報保護法の対応では、出版業界各団体と連携をとりながら「書店向けQ&A」「店頭ポスター」の製作などで、トラブルを起こさないよう努めて行く。

京都市全小中校で採用/日書連マーク普及に弾み

図書館向けデータ「日書連マーク」の普及活動について志賀委員長が報告。図書館流通センター(TRC)に対抗していくには、教育委員会と密接に連携して、地元書店から図書を購入するよう働きかけていくことが必要だと強調した。
志賀委員長が紹介したのは京都組合で、京都市内の小中学校300校全校に日書連マークを入れる取り組みを進めている。京都ではいったんTRCマークに決まりかけたが、教育委員会などに働きかけて、日書連マークの採用が決まった。今年も50校の予算が付いている。このほか、福島でも44校が日書連マークを導入する予定。
情報化推進委員会は当初「SA委員会」として発足。バードネット・システムを発表して15年が過ぎた。志賀委員長は「バーコードの表示位置を検討するなど、地味な仕事も多かったが、業界の中で書店の立場を主張してきた。各県組合の情報化委員会も充実強化を図ってほしい」と呼びかけ、7月7日に全国情報化委員長会議を開催することを明らかにした。

沖縄が初の1位/共済会優秀地区表彰

日書連共済会は、5月26日の日書連通常総会終了後、平成16年度加入優良地区委員会を表彰。萬田会長から各地区委員会の代表者に表彰状と金一封が手渡された。
表彰されたのは加入人員比率50%以上、口数比率100%以上の地区で、上から順番に①沖縄、②長野、③香川、④滋賀、⑤茨城、⑥宮城、⑦愛媛、⑧岩手、⑨和歌山、⑩鳥取、⑪島根、⑫岐阜、⑬大分、⑭福島、⑮青森の15委員会。沖縄組合は人員比88・9%、口数比163・5%で初の1位になった。

日書連新役員一覧

会長=丸岡義博(東京・廣文館書店)
副会長=井門照雄(愛媛・丸三書店)、鈴木喜重(千葉・ときわ書房)、藤原直(宮城・金港堂)、志賀健一(北海道・旭川冨貴堂)、高須博久(愛知・豊川堂)、中山寿賀雄(長崎・好文堂書店)、面屋龍延(大阪・清風堂書店)、大橋信夫(東京・東京堂書店)
専務理事=大川哲夫(事務局)
理事=鶴谷禄郎(青森・鶴常書店)、川井寛(秋田・ブックス太郎と花子)、赤澤桂一郎(岩手・さわや書店)、五十嵐太右衛門(山形・八文字屋)、大野豊治(茨城・大野書店)、杉山和雄(栃木・杉山書店)、大澤孝輝(群馬・天華堂書店)、野澤恒雄(埼玉・三星社)、長谷川義剛(神奈川・長谷川書店)、山本裕一(同・信濃屋書店)、下向磐(東京・分梅書店)、青柳和人(山梨・こうべ書房)、古澤隆(静岡・マルサン書店)、斉藤行雄(同・谷島屋)、谷口正明(愛知・正文館書店)、木野村祐助(岐阜・東文堂本店)、作田幸久(三重・作田書店)、西村俊男(新潟・文信堂書店)、吉岡隆一郎(富山・文苑堂書店)、森井清城(石川・紀陽館森井書店)、赤羽好三(長野・凌雲堂書店)、安部悟(福井・安部書店)、西川忠夫(滋賀・文栄堂)、中村晃造(京都・桂書房)、西本功(奈良・ジャパンブックス)、宮井治夫(和歌山・宮井平安堂)、三上一充(兵庫・三上尚文堂)、田江泰彦(鳥取・今井書店)、今井直樹(島根・松江今井書店)、吉田達史(岡山・研文館吉田書店)、水川雅生(広島・広書房)、冨永信(山口・冨永書店)、西尾文士(香川・西尾誠文堂)、平野惣吉(徳島・平惣)、本久善一(高知・明文堂)、山口尚之(福岡・三山書店)、河合正行(同・宗文堂書店)、岩永藤房(佐賀・鹿島書房)、長崎晴作(熊本・熊文社)、大隈劭(大分・おおくま書店)、田中隆次(宮崎・田中書店)、坂口洋右(鹿児島・金海堂)、山田親夫(沖縄・球陽堂書房)
監事=久住邦晴(北海道・久住書房)、村田耕平(兵庫・三宮ブックス)
常任委員=伊澤崇(北海道・伊澤書店)、長谷川正夫(埼玉・文泉堂)、村田正喜(千葉・学友堂)、井上俊夫(神奈川・井上書房)、堀護(同・宮崎台書店)、柴崎繁(東京・王様書房)、岡嶋成夫(同・ブックロード)、小泉忠男(同・小泉書店)、舩坂良雄(同・大盛堂書店)、林茂夫(愛知・松清本店)、辻本和樹(京都・向島書店)、山根金造(兵庫・巌松堂)

規約見直し、6月末までに/新会長に井門照雄氏/小売公取協総会

出版物小売業公正取引協議会は5月25日、東京・千代田区の書店会館で2005年度総会を開催。萬田貴久会長に代わり井門照雄氏を新会長として承認した。
総会は伊澤崇氏の司会で進行。井門副会長の開会の辞で始まり、萬田会長があいさつ。「平成13年に公取委は再販を当面存置とし、翌年に公正競争規約の改定が行われた。『景品と値引き』について議論を集中的に行ううちに、公取委は低率ポイントカードは読者サービスの形でとらえざるを得ないという考えを前面に出してきた。低率ポイントカードが一般的に普及してきたこと、消費者団体の意見が背景にあったものと思われる。日書連としても無視できない環境変化が起きている。今年に入ってから、ポイントカードのあり方について日書連としてのスタンスを考えてみてはどうかと提案して、研究するためのきっかけを作ろうとした。出版物小売業公正競争規約の見直しは公取委と十分に議論した上で行い、書店としてロール(役割)とルール(規則)をしっかりと守っていきたい」と述べた。
続いて来賓の公正取引委員会消費者取引課の菅久修一課長が祝辞。「ルールは絶えず時代に合ったものへ見直しを行うことが大切。出版物公正競争規約はこれまで3回改定されているが、平成14年改定は激変緩和措置の延長として認定。現在、見直しの議論を行っていただいているが、公取委の考えを示した上で皆さんの意見をよくうかがい、いい結論を出せるようにしたい」として、一般ルールより制限的なルールを維持することには特段の根拠が求められると強調した。
萬田会長を議長に議案審議を行い、平成16年度事業報告、収支決算報告、平成17年度事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認した。
影山専務が事業報告を行い、出版物小売業における公正競争規約「解説・運用の手引き」の発行について「昨年の総会で年度内に改訂版を発行することを決め、12月理事会で発行配布した。発行部数は千部で、各都道府県支部役員のほか、出版社、取次各社には
関係団体を通じて送付した」とした。
出版物公正競争規約の見直しについては、「今年1月18日に公取委消費者取引課から呼び出しがあり、6月下旬までに①総付景品7%②期間制限年2回・60日の2点を一般ルール並に見直すよう要請された。1月理事会で規約改正小委員会の設置を決め、3月15日に第1回小委員会を開催、同30日に公取委を訪問し、現今の経済情勢や出版物の特殊性から現行規約の制限を当面維持することを伝えた。これに対して、公取委からは一般ルールにするようあらためて要請があり、現行のままというなら特段の根拠を示すよう求められた。小委員会では今後も協議、検討を続けることにした」と経過報告した。
また、事業計画として①公正競争規約の見直しについて6月末までに案をまとめる②公正競争規約に対する理解と正しい運用、普及のための活動、研修会等の開催③景品表示法をはじめ、関係法令の研究並びに規約違反の防止④一般消費者、消費者団体及び出版業界団体との連絡⑤関係官庁との連絡⑥広報活動――を決めた。
役員選任では古澤隆(静岡)、作田幸久(三重)の2氏を新理事に承認。その他議案では、萬田会長が井門照雄氏を新会長とする案を上程し、承認された。

萬田会長の総会あいさつ/ポイントカード問題、情報共有化し議論へ道筋つけた

〔不況、再販…問題山積のなか会長に〕
新聞報道されているように、この平成16年度をもって会長を辞任する。すでに所属する東京都書店商業組合では承認をいただいている。
平成9年、小澤前会長のあとを任期途中で受けてから8年間勤めさせていただいた。平成9年は消費税率が5%にアップされた年だった。この改定は外税の形で、平成元年に出版業界で決めた内税方式を大幅に変えざるをえなかった。書店現場でいろいろな問題も起きたが、各書店自らの手で解決して乗り越えていただいた部分が多々あった。また、当時は年金など社会保障費も引き上げられ、日本経済も急速にトーンダウンした。
同年10月に石川県山代温泉で開かれた日書連移動理事会で会長に選任された。そのあと10月中旬、アジア通貨危機で株価暴落が起き、11月には山一証券、三洋証券などの大型倒産が始まった。まさに不況が始まったのが平成9年という年であり、そういう中で会長職をスタートしたことになる。
当時、日書連は再販擁護運動を続けている最中で、会長に選ばれた移動理事会で百万人署名をもって国会請願することを決めた。署名は10月末に目標の百万人を突破し、12月初旬に国会請願を行った。日書連にとっても出版業界にとっても再販擁護運動は大変な盛り上がりを見せ、最高の沸点に達した年であった。
公取委は規制研を1年間に10回開いたが、そこに江藤先生、内橋先生、清水先生と新聞代表2名が委員に加わってまとめた報告書が10年1月に発表された。10回の論議のなかで、江藤先生には「文化の伝播者としての役割を競争政策と対峙させて考えるのではなく、文化の伝播者としての役割を十分評価した上で、今後の再販制度のあり方を考えてほしい」と頑張っていただいた。同時に、規制改革本部が官邸に出来て、規制緩和3ヵ年計画を打ち出した。両論併記の形で結論を出し、公取委に問題を委ねたというのが当時の状況である。
これを受けて公取委は3月31日に公表文を出し、「再販は競争政策の観点から廃止の方向で検討すべきだが、文化政策上、文化の伝播者としての役割も評価した上で3年後に存廃の結論を出したい。ただし、消費者利益の観点から6項目の是正措置を求める」との考えを発表した。6項目とは①時限再販・部分再販など運用の弾力化②各種割引制度導入等の価格設定の多様化③取引慣行上の弊害是正④サービス券の提供など小売業者の消費者に対する販売促進手段の確保――などで、今日問題となっているポイントカード問題も源泉をたどればここにある。「ポイントカード」と明記されていたわけではないが、ポイントカードも検討してほしいという話はそこからされてきた。
13年3月、公取委は「再販制度を当面存置する」との結論を示した。出版界、特に書店組合を中心とした百万人署名、意見書の収集、国会議員への働きかけが大きな力となった。国会議員の先生方を巻き込み、国会が沸き立つほどだった。議員会館で集会をやると、先生方が入れかわり立ちかわり顔を出して激励のあいさつをしてくださった。今をときめく中川昭一先生が公取委に対して私どもの代弁者となってくださり、その後も中川先生にはいろいろな形でご報告申し上げてきた。
しかし、いま実際に店頭で本をポイントカードで値引きするという事態も起きていて、全国から多くの報告を受けている。こうしたことは、これまで再販研究委員会で問題として取り上げて、ケースバイケースで対処してきた。しかし、公取委の指導で、再販研究委員会は研究調査に徹すべしということなので、昔のように再販制度を励行させるというわけにはいかない。出版社や取次を動かして是正させるというのが精一杯の働きである。
〔一部業界紙の日書連政策転換報道は誤り〕
昨年4月、公取委取引企画課長に野口課長が新しく就任し、野口課長は11月に業界紙のインタビューに答える形で考えを述べた。歴代課長とかなり異なる考え方で、そうしたことを再三指摘したが、野口課長は自分の考えは公取委の一貫して統一した見解であると、再販研究委員会だけでなく取協会員説明会でも意見表明した。
再販契約書は民民契約書で、適用除外であれば独禁法の不公正取引から外される。民民契約はもっと自主的で自由な契約であるべきだと私たちは考えている。もともと契約の考え方はルソーからきており、個々の契約の自由は長い間定着している。不公正な取引、独禁法違反との指摘はあたらない。適用除外という形で外され、「法定再販」と言われるまでになった慣行を不公正な取引方法にひっかけるのはおかしいと、強く申し上げた。
今年1月18日の野口課長の文書では「民民契約といえども独禁法違反であれば、指摘せざるをえない」という、拡大解釈というか都合のいい見解が述べられている。私たちは今後も議論したいと申し入れたが、公取委から「議論は尽くされた。声がかかっても出席しない」と返事があり、2回で打ち切られてしまった。
1月21日の日書連新年懇親会では皆さんから様々な意見が出され、新聞報道で知った公取委は大きな衝撃を受けたと思う。公取委の上のほうから部長、課長のところまで話が降りてきて、「書店組合がやっているポイントカード中止要請行動をやめさせろ」と。以降、取協関係者が呼び出しを受けることが続き、2月上旬には私が取引部長のところに行った。以来、再販研究委員会は今日まで開かれていない状況。公取委は「再販研究委員会を書店会館で開くのは間違っている。書店会館で開くことは出版社主導、調査研究の趣旨に反し、行き過ぎである」とまで忠告してきた。
私はこうしたことを皆さんに直接伝えたほうがいいと考え、全国書店新聞1月1日号の巻頭インタビュー
で経過報告し、その後も書店新聞紙上で野口課長の見解を発表するなどして、皆さんと情報を共有化すべく努力してきた。
こうした状況のなか、再販研究委員会、1月の日書連新年懇親会、2月の日書連および東京組合理事会で私が申し上げたことが、一部業界紙で「日書連の政策転換」と報道された。報道した新聞社には厳重に抗議した。「政策転換」ではなく、これまでの公取委とのやり取りを各県組合の皆さんにお伝えして情報共有化をした上で意見を出してもらい、日書連理事会で集約して、今日開かれている日書連総会で今後のポイントカードのあり方について検討しようではないか、と申し上げたつもりだった。そうした意味で今日の総会は重要な意味をもつものであり、ホットな議論をお願いしたい。
このほか12年、井門委員長をリーダーとして作った「書店21世紀ビジョン報告書」がある。日書連メンバー以外に出版業界関係有識者3人の知恵も借りて作った報告書である。たくさんの出版社が興味をもち、「是非見たい」とたいへん多くの問い合わせをいただいた。現在、日書連が取り組んでいる課題は、すでにここで指摘されている事柄が多い。ただ報告書を出してから5年たち、新たな問題も出てきている。こうした問題について忌憚のないご意見をうかがいたい。
8年という長い間、会長を勤めさせていただいた。「書店経営は私の天職である」と感じる機会を与えてくださった皆さんに心からお礼を申し上げたい。

高須博久理事長を再選/読書推進を柱に取り組む/愛知組合総会

愛知県書店商業組合は5月19日午後3時に名古屋市千種区の愛知厚生年金会館で第22回通常総会を開催、組合員207名(委任状含む)が出席した。
総会は大原鉦冶副理事長(押切堂書店)の司会で進行。高須博久理事長(豊川堂)は「この1年間は特に読書推進について積極的に取り組み、外部からも評価をいただいた。長年の懸案だった青少年条例について、古物商が引き取ってはならない古物から書籍・雑誌を除くという項目が、この7月から削除されることになった。長い間県や警察と折衝してきたがようやく実現した。これで万引き問題は1つのハードルを越せたかと思う。日書連でポイントカード問題に取り組んでいるが、現在公取とのやり取りは微妙なところにある。出版社、取次、書店それぞれの立場で意見のあるところだが、まだ解決に至っておらず、継続的に取り組んでいかなければならない課題だ。今日は慎重審議で実りある総会にしていただきたい」とあいさつした。
続いて加藤登志雄副理事長(安城日新堂)を議長に各議案を審議し、平成16年度事業報告、平成17年度事業計画案、収支決算・予算案などを可決承認した。
このうち平成16年度事業報告は各委員長から説明があり、①20回を迎えたサン・ジョルディフェスティバルは4月22日(金)・23日(土)の日程で開催、70万5千円を売上げる盛況だった。②組合ホームページは6月をめどにブログ形式を導入、加盟店一覧に自店のアピールポイントなどを盛り込む。③発売日違反は版元の措置の厳格化と取次の熱心な指導により、16年度は17件、今年に入ってからは1件と減少した――などの報告があった。また中小企業基本法の改訂に伴う見直しなどを盛り込んだ定款の変更を了承した。
役員改選では選考委員9名が理事35名、監事2名を選出したのち第1回理事会を開き、高須理事長を再選した。所信表明で高須理事長は「ご指名をいただき、気持ちを新たに取り組んでいこうと思っている。去年総会の場で『孫の日』をやると申し上げたが、愛知県組合の柱として今年も読書推進を大きな目玉として取り上げていきたい。愛知から発信する読書推進にご支援をお願いする。組合はたくさん課題を抱えている。皆様にご協力いただきながら活動を充実していきたい」と述べた。
引き続き午後5時から出版社、取次、業界関係者を交えて懇親会が行われた。

県青少年育成条例が改定へ/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(長谷川義剛理事長)の5月定例理事会が10日、神商連会館で行われた。主な審議事項は次の通り。
1、コンビニ店の雑誌早売りが目立つ。深夜なので大変だが、調査に協力をお願いする。
2、平塚市四の宮にタカヨシホームセンターが書籍のみ3百坪、駐車場百台にて4月開店。茅ヶ崎市にも3百坪の郊外書店が開店準備中との報告あり。
3、港北区の大型ショッピングセンターに出店計画中のくまざわ書店に対し、大店立地法の規定によって組合加盟を出店の条件とする意見書を提出した。同社からの返答はまだないとのこと。
4、神奈川新聞で4月より毎週日曜日に「書店員のすすめる本」として百字ほどの推薦文をつけた書評を載せることになった。書店員の皆様の投稿は神奈川新聞社文化部、服部氏へ。
5、神奈川県の青少年保護育成条例が大きく改定されることになり、今までは袋入れか区分陳列のどちらかにすれば良かったのが両方しなければならなくなった。アダルト関係が中小書店では大きな比重を占めることもあるので今後対策を検討したい。
6、ポイントカードが認められると、粗利の多い複合書店が有利で専業書店が不利となる。図書カード・図書券、消費税の問題等も書店が割を食っているようだとの発言があり、組合のあり方をめぐって活発な議論が行われた。
(平井弘一広報委員)

事業計画で活発な意見/石川総会

石川県書店商業組合(森井清城理事長)は、5月21日午前10時半より金沢勤労者プラザで第17期定時総会を開いた。
理事長あいさつの後、本年度事業計画の件では、組合員より、日書連主導の書店くじや児童図書増売はもちろんのこと、組合員減による収入減をふまえ、前年度よりシビアながら内容のある事業をやるべきだとの声や、経費の今一段の見直しを図るべき等々活発な意見があった。
理事改選の件では、永年同一の理事ではマンネリに陥りやすいので、今後は理事の何人かを組合員が交替制を取る制度にしたらどうか等、今までにない斬新な提案があり、これに対し理事長から、今後は意見を充分取り入れ、役員の若返りも検討していくと返答があった。(横野浩広報委員)

再販擁護に全力注ぐ/面屋新理事長が所信表明/大阪総代会

大阪府書店商業組合は5月20日午後1時半から大阪市北区のホテルモントレ・グラスミアハウスで第23回通常総代会を開き、組合員86名(委任状含む)が出席。今西英雄理事長(今西書店)に代わり面屋龍延氏(清風堂書店)を新理事長に選出した。所信表明のなかで面屋新理事長は「再販擁護」を最重要課題として掲げた。
総代会は冨士原純一氏(冨士原文信堂)の司会で始まり、今西理事長が「組合員のための組合作りを目指してやってきた。組合員が商売しやすい環境を作ることが最も大切」とあいさつ。続いて議長に虎谷健司(虎谷誠々堂書店)、副議長に深田健治(ブックスふかだ)、長谷川勝(長谷川書店)の各氏を選出し、平成16年度事業報告、同収支決算書、平成17年度事業計画案、同収支予算案などをいずれも原案通り承認可決した。
今西理事長は平成16年度事業を総括して「本が売れる仕掛け作りに取り組んだ」と報告。平成17年度事業計画については「戦後60年続いた出版業界のシステム改革が必要。支払いサイトが今のままでいいのかなど1つひとつ点検したい。改革の機運が全国の仲間の間で高まっている。『団結』と『闘争』を今期の旗印にしたい。組合員数は最盛期の半分に減少したが、商売が成り立つ形を作って組織強化を図る」と方向性を示した。
読書推進特別委員会からは、読書ノート1万6千冊を70小学校・490学級にに配布し、30冊以上の読了者総計903名の名前を朝日新聞紙上で発表したと報告。今年は連休明けに2万6千冊を配布し、10月27日と来年4月23日頃に50冊以上の読了者を対象に発表する予定。経営活性化・読書推進委員会からは雑誌6ヵ月定期読者獲得キャンペーンを昨年9月1日よりスタート、18出版社の19点が選ばれ、参加は140店、3280冊を超えたことが報告された。
役員改選では理事40名、監事3名の候補者を一括承認。総代会終了後に初理事会を開き、新理事長に面屋氏を選出した。面屋新理事長は「ポイントカード問題は難しいテーマ。再販が崩壊すると町の本屋は大打撃を受ける。再販擁護に全力を注ぎたい。昨年は読書推進事業を立ち上げた。今後も業界3者が同じテーブルについて売上を伸ばす方策を展開していく。廃業店が続出するなか、売上を伸ばしている町の本屋もある。そうした実績ある店の事例を参考にしたり研究会を作るなどして、個店の売上を伸ばす方法を考えていきたい。時代の環境変化に対応できるよう、理事長職に任期制を導入することも考えている。このほか発売日遵守、万引き防止など問題山積だが、いずれの問題にも全力で取り組みたい」と所信表明した。なお、副理事長、常務理事は6月定例理事会で決める。
このあと午後6時から同会場で優良従業員・家族従業員表彰式を開き、優良従業員3名、優良家族従業員1名に表彰状と記念品を贈呈した。
〈優良従業員〉
▽45年=宇多功(耕文堂書店)▽13年=羽田百合子(ブックスサトウ/パルネット大和田駅店)▽5年=山下亜希子(同)
〈優良家族従業員〉
▽21年=津田真理(津田書店)

低率ポイントカード研究、業界全体での議論必要/東京総代会

東京都書店商業組合は5月19日午後、千代田区・ホテルグランドパレスで第29回通常総代会を開催。鳥井組織委員長の司会、丸岡副理事長の開会あいさつで始まり、萬田理事長は次のようにあいさつした。
「日本経済は踊り場を脱しておらず、出版業界も8年ぶりに前年比プラスだったが、雑誌の業績が回復していない。組合員は700となり、最盛期、昭和59年と比べて47%減。とくにこの10年の減少が著しい。賦課金の減少と共同購買の減、青山ブックセンターの民事再生により、赤字決算となった。ポイントカード問題は大変時間がかかっている。1月末には公取委山木部長と会い、日書連総会までに方向性を出すことを約束した。私が方向転換したのではなく、公取委の考え方が変わった。先ほど行われたJPIC理事会で、業界をあげた低率のポイントカードを共同事業として取り上げてほしいと申し上げ、一応の道筋をつけたと考えている」
武田初男議長(芳進堂)、黒田忠弘副議長(黒田書店)で進められた議案審議は、丸岡、下向、舩坂、奥村の4副理事長が担当委員会ごとに事業報告を行った。
質疑応答では、「ポイントカード問題で出版業界の腰が引けているのではないか」という質問に、岡嶋再販委員長は「ポイントカードが値引きということは公取も一致している。しかし、低率のポイントカードを認めなければ消費者利益に反すると言い、再販契約と消費者利益の点では疑問が残る。低率ポイントカード研究は業界でどうできるか、再販と切り離して研究してもよいのではないか」とする考え方を説明した。
また、京王電鉄・浜田山駅構内の出店問題で中野杉並支部が裁判資金カンパの提案を行ったが、理事会に一任することになった。
決算報告では、青山ブックセンター民事再生法適用による袋代金など260万円の債権放棄、事業収入の減少などで424万円の経常損失が報告された。新年度予算は前年より1700万円、1割減の緊縮予算案が提案された。新年度事業計画では、安定財源確保のため、東京マガジンネットワークなど新規事業を模索していくことを決めた。
役員改選では新理事55名、監事3名の候補者を承認。新理事による理事長選挙が行われた結果、理事長辞任を表明していた萬田氏がトップに。萬田氏は固辞したが、最終的に理事長を受諾した後辞表を提出し、26日に理事長を再選挙することになった。
総会終了後、永年勤続従業員、組合功労者の表彰が行われ、版元、取次、業界関係者をまじえて懇親会が行われた。

ふるさとネットワーク/東海ブロック編

〔山梨〕
南アルプス市の西側に櫛形山という山がある。名前のとおり櫛のような形で、山の稜線は3キロ近くあるどっしりとした感じの山で、標高は約2千メートル。稜線が長い分登山道も多く、中腹まで車で乗り入れることができるので、中高年ハイカーに人気が高い山である。またこの山は、明治百年記念事業で「県民の森」に指定され、整備が進み、中腹の南、北伊奈ケ湖には白鳥が泳ぎ、そばにはグリーンロッジ、レストハウス、森林科学館が設けられている。7月中旬からは山頂近くのアヤメ平のアヤメが最盛期であり、その数3千万本ともいわれ、東洋一の大群落でまさに紫の絨毯である。この時期に合わせて、アヤメ平を中心に地元南アルプス市主催による「アヤメ祭」りが行われ、毎年県内外より大勢の参加者を集めています。
(上田久広報委員)
〔静岡〕
国内には100の空港がありますが成田、東京、中部、大阪、関西の国際空港以外は地方空港。昭和62年、静岡県ではお茶で有名な牧之原台地の一角461・1ヘクタールを静岡空港の建設予定地に決定。平成8年用地買収し、翌年工事を開始。平成20年開港を目指し1600億円の事業を継続中です。しかし地元では採算性・環境等の問題で反対意見が多いのも事実です。しかし長期的に絶対に赤字になると断言する事もできません。陸上交通では時間的に不可能な地域からの観光ルートも可能ですし、工業生産の盛んな当県では貨物空輸も考えられています。いずれにしても空港の経済的価値を高めるためのノウハウを継続的に創造していかなければ、物理的に空港があるというだけでは近隣の空港(成田、東京、中部)にお客が流れてしまうでしょう。(白松猛広報委員)
〔愛知〕
本年20周年を迎えたサン・ジョルディ・フェスティバル名古屋は、名古屋・栄のオアシス21で開催された。今回は組合書店紹介の各地図書ボランティアさんの参加をいただき、「お話ブース」を盛り上げていただいた。紙芝居、お手玉、バルーンアート、折り紙、落書きコーナーなど、終日、楽しいふれあいの輪ができ、来場される親子連れの方々に大好評をいただいた。また、絵本作家のしらたにゆき子氏(もぐもぐとんねるでデビュー)にも読み語りをしていただき、「絵本」を通したコラボレーションが実現した。そして、ステージでは大学生によるスペイン語、英語、韓国語で掛け合い読み語りが今年の目玉企画として登場し、会場から盛大な拍手をいただき、「愛・地球博」にふさわしいカラーが出せた祭典になった。
(榊原壮一広報委員)
〔岐阜〕
藤村が岐阜にやって来た。信州生まれの文豪、島崎藤村が、実は岐阜県生まれであった。と言っても藤村自身の生まれた所が代わった訳ではない。旧長野県山口村が、岐阜県中津川市に編入されたのだ。このところの平成市町村合併により、日本全国唯一合併した所である。山口村には旧中仙道馬篭宿があり、藤村はこの馬篭に生家があり、記念館(写真)もある。
この地は以前からいわく因縁があり、昭和30年代にあった市町村合併の折、山口村神坂地区が2つに割れ、一部が岐阜県になったが、その時小学校も2分割され、ほんの目と鼻の先に2小学校が出来る事態が起きた。住民・小学生が非常に悲しい思いをした経緯があった。長野県田中知事が反対したが、合併したいという住民の意思が大きく、藤村の馬篭が岐阜県になった。(司馬豪久広報委員)
〔三重〕
宝栄のおかげ参りから300年、いよいよお伊勢さんの遷宮が始まる!
江戸の頃、木々が芽吹き花咲く春に、これは不思議、伊勢のお札が降ったとか伊勢唄が聞こえてきたとか、全国各地から伊勢神宮を目指すお伊勢参りブームが起こった。お伊勢参りの名の下にするりと関所もフリーパス。声高らかに伊勢音頭など唄いながら、道中、名物餅を食べ、名所に立ち寄り、物見遊山の旅を楽しんだ。日本人の旅好きはお伊勢参りが原点らしい。おかげ参りは約60年周期で起こり、今年はちょうど300年目のおかげ年。伊勢の町は常にもまして浮き立っている。
今年こそ、おかげ参りの好タイミングだ。お伊勢さんの町を訪ねてみてはいかが。詳しくは三重の文化情報誌「伊勢人」の「おかげ参り300年と遷宮特集」をご覧ください。(藤田忠男広報委員)

受賞

◆横溝正史ミステリ大賞
新人ミステリ作家の登竜門、第25回横溝正史ミステリ大賞が伊岡瞬氏の『いつか、虹の向こうへ』に決まり、5月25日、丸の内の東京會舘で贈呈式が行われた。同作品はテレビ東京が映像化を前提とした作品に与える「テレビ東京賞」も同時受賞した。
贈呈式で主催者を代表して角川書店角川会長は「本賞とテレビ東京賞のダブル受賞は初めて。受賞作にはサムシング・エルスがある。角川はこれからも愚直に物語を大事にする出版社でありたい」と、あいさつ。テレビ東京菅谷社長は「4回前から参画しているが、過去3回は該当作がなかった。夏には放映したい」として、出演の顔ぶれを紹介した。
角川会長から賞状と賞金、横溝家から金田一耕助のブロンズ像が手渡され、選考委員の大沢在昌氏は「伊岡さんの作品は突き抜けてレベルの高いハードボイルド」と選評した。
◆講談社出版文化賞
平成17年度講談社出版文化賞の受賞者が決定し、5月24日午後6時からホテルニューオータニで贈呈式と披露祝賀会が開かれた。
贈呈式では講談社野間省伸副社長から各受賞者に賞状と記念品を授与。さしえ賞受賞の木内達朗氏はあいさつで「イラストの仕事の中で挿絵は一番楽しい仕事。評価をうれしく思う。賞を励みにこれからも精進したい」と述べた。
▽さしえ賞=木内達朗(小説すばる「月の光」「鋼鉄のウール」小説新潮「兎になった少年」)▽写真賞=長倉洋海(偕成社『サビット一家、家を建てる』)▽ブックデザイン賞=渡邊良重(リトルモア『ブローチ』)▽絵本賞=G・D・パヴリーシン絵、神沢利子作(福音館書店『鹿よおれの兄弟よ』)▽科学出版賞=桑村哲生(岩波書店『性転換する魚たち』)

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・足利みどり

◇2歳から/『こわくないこわくない』内田麟太郎=文/大島妙子=絵/童心社800円/2002・6
何にでも反対ばかり言うまーくん。夢でも反対を言います。お化けが「こわいだろう」と次々おどかしても「こわくないこわくない」と言いはります。でも体も声も小さくなっていく場面に、子ども達はハラハラドキドキしながら聞き入り、最後のかあさんの笑顔にほっとします。
◇4歳から/『ないた』中川ひろたか=作/長新太=絵/金の星社1300円/2004・9
ころんだり、けんかしたり、こわかったりで一日一回ぼくは泣く。どうしてだろう?お父さんが泣いたのを見たことがない。大人はなぜ泣かないんだろう。ぼくも大人になったら泣かなくなるんだろうか。そんな子どもの疑問に答え、泣くのはどんな時だろうかと考えさせられる本。
◇小学校低学年向き/『 いろはにほへと』今江祥智=文/長谷川義史=絵/BL出版1300円/2004・9
初めて「いろはにほへと」を習ったかっちゃんが、忘れないようにと唱えながら歩いていて、おさむらいにぶつかってしまったことから展開する愉快なお話。文字を覚えたてのかっちゃんの喜びが、御家老や殿様にも伝わってき、読み手も「のほほーん」とした気持ちにさせられる本。

SCM銘柄は実売80%弱/日販懇話会で鶴田社長が成果報告

2005年度日販懇話会が5月24日午後2時から東京ドームホテルで開かれ、書店131名、出版社133名、日販関係者と合わせて350名が出席した。
会の冒頭、あいさつした日販鶴田社長は「懇話会は日販の経営戦略を理解賜り、信頼を強固にする目的で開いた。ここ10年の出版界は1969年をピークにマイナス成長を続け、ピーク時から4千億円がなくなった。書籍新刊点数は増加の一途で需給バランスが狂ったまま。雑誌返品率は30%を超えた。日販の決算も今期は減少となった。個々の企業努力で改善するのは限界があり、出版業界の構造改革が必要だ。業界SCM、最適の流通システム構築の必要に迫られている」と、現状分析。日販のトリプル・ウイン・プロジェクト参加が書店863店、出版社178社の規模となり、情報インフラ、物流インフラ、マーケティングの各局面で成果を上げていることを強調した。
情報インフラでは、出版社向けオープンネットワークWINにおいて2200店の送品・売上げ・返品を単品別・リアルタイムで開示するほか、ゆるやかな責任販売制「SCM銘柄」は
平均実売率80%弱、返品率も4%強と、成果を強調。今後、新商材・新事業開発を1プロジェクト10億円規模で進め、「減少した売上げ確保を最重要課題とする」と述べた。
無伝返品システムの概要をビデオで紹介したあと、WWW推進部古幡係長が「日販のIT戦略のめざすもの」を説明。「トリプル・ウイン・プロジェクトはマーケット情報の業界標準に成長した」と述べ、今後、携帯電話を利用したNOCS9000のモバイル化などに取り組んでいると開発中の計画を報告した。
休憩をはさみ、石原東京都知事が「世界の中の日本」を記念講演した。

募集

☆第14期JPIC読書アドバイザー養成講座
スクーリング5回と通信教育の組み合わせで「生涯学習と読書」「読書活動の種類と技法」「出版文化産業論」など、読書や出版について体系的に学習する。7月15日開講、06年2月24日修了で受講費用は6万8千円(JPIC賛助会員6万3千円)。募集締切は6月10日。問い合わせは出版文化産業振興財団まで。℡03―5211―7282
☆JPIC読みきかせサポーター講習会
子どもの読書推進運動への理解促進と、「読みきかせ運動」の協力者育成を目的に開かれているもの。絵本作家・保育者などによる特別講演や、JPIC読書アドバイザーが「おはなし会」をするための実技やポイント解説を行う。今年度は全国22ヵ所で開催予定。日程・会場はホームページ(http://jpic.or.jp/)まで。

本屋のうちそと

大手書店の大型出店攻勢が凄まじい。取次最大手・トーハンがその株式を所有する㈱丸善は今後5年間、毎年千坪クラスの書店を出店し続けるという。
この春は栃木県宇都宮市でも喜久屋書店・新星堂と千坪クラス(一部複合店)の大型出店が相次いだ。宇都宮市のような地方の大都市ですら無い我が田舎町にも昨年春、200坪・300坪の大型書店が相次いで出店してきた。噂では300坪の店舗で、年商は1億円程だったという。300坪の店舗が年商1億円程では普通は経営が成り立つはずは無いと、知り合いの本屋は言う。弱小書店には窺い知る事の出来ない何かが多分有るのだろう。
売上減で大弱りの私を尻目に地元の消費者は大喜びである。田舎に居ても専門書が買える、新刊本も山のように積んである。「あの古い本屋サン、もう要らないわね」。アノ、私にも生活が…。しかし消費者は喜んでいいのである。なぜなら、採算分岐点が無いかのような大書店が、田舎でも成り立つのは消費者がずっと我慢している低金利のおかげだからである。
日銀の福井総裁は「家計が受け取るはずだった金利収入はこの10年間の低金利下で154兆円減収した」と言った。そのお金は銀行を助け、国債を助け、大企業を助け、高額所得者を助け、税収を助け、そして低金利の融資として大型書店にその姿を変えた。大型書店はこの国の消費者が本来自由に使えたかも知れないお金が、廻り廻ってその姿を変えただけだろう。
(海人)