全国書店新聞
             

平成28年1月15日号(後)

ラーメン店、世界初の一つ星に/ミシュランガイド東京2016

日本ミシュランタイヤは東京都の飲食店・レストランやホテルを格付けして紹介する『ミシュランガイド東京2016』の出版記念パーティーを12月1日、東京・港区の東京プリンスホテルで開き、掲載店を発表した。
今年掲載された飲食店、ホテルは599施設。三つ星13軒、二つ星51軒、一つ星153軒、星は付かないものの良質な食事を手頃な価格で提供するビブグルマン343軒が掲載された。
日本料理の「虎白」が二つ星から三つ星に昇格。「蔦」がビブグルマンから一つ星に評価を上げ、ラーメン店として世界で初めて星を獲得した。
同書は12月4日に発売。定価本体3000円。

埼玉組合、福祉施設に児童書など寄贈/児童養護施設等サポーターに登録

埼玉県書店商業組合は12月15日、吉田矩康理事長、山口洋事務局長が埼玉県福祉部こども安全課を訪問。榎本淳一課長、古川泰之主幹に平成27年度寄贈本について趣旨を伝え、児童書や辞典383冊を寄贈した。本は県内福祉施設などに贈られる。
今回寄贈した本の内訳は、幼児用23冊、低学年用82冊、中学年用52冊、高学年用54冊、中・高・一般12冊、辞典160冊。榎本課長は「長年にわたり毎年多くの本を寄贈していただき感謝している。子どもたちは行政の支援を受け支えられていることはもとより、本を寄贈いただくことで社会の周囲からも見守られていると励みになっている」とお礼の言葉を述べ、子どもたちには活字を通しての教育が必要だと指摘した。
寄贈本は、こども安全課より県内の児童養護施設、母子生活施設等に配本され、毎年各施設並びに子どもたちから心温まる多くの礼状が届いている。
また埼玉県では、企業、団体児童養護施設等、地域、行政が一体となって子どもたちを支援するという社会的気運を醸成することを目的に、平成27年10月に「埼玉県児童養護施設等サポーター制度」を創設。県組合もサポーターとして登録され、榎本課長より登録証を授与された。
(山口洋事務局長)

埼玉組合研修会/文化通信・星野渉編集長が講演

埼玉県書店商業組合(吉田矩康理事長)は11月20日、さいたま市浦和区の浦和ワシントンホテルで研修会を開き、文化通信社の星野渉常務取締役編集長が「取次システムの変貌―書店がこれから考えなければならないこと」と題して講演。ドイツの書店連合「tolino(トリノ)アライアンス」の試みなど欧米の事例をあげながら、日本の出版流通の今後の課題について語った。概要を紹介する。
【雑誌で利益あげる仕組み崩れる】
14年に取次3位の大阪屋、15年に4位の栗田が経営危機に陥った。取次が出版社から書籍・雑誌を仕入れ、書店に卸す出版流通のシステムが音を立てて崩れようとしている。
大きな改革が必要だが、そのためにはまず危機感を共有しなければならない。JPOでドイツを調査した。ドイツには危機感の共有があり、具体的な施策として、書店が連携して電子書籍配信事業を行う「tolino」という革新的で大胆な取り組みが始まった。ドイツはできたが、日本はどうか。日本の出版産業の問題点は、ドイツやアメリカなどと比べてみると分かりやすい。
日本の出版市場は、1997年から書籍・雑誌合計の販売額が減少し始めた。販売部数のピークは、書籍が1988年、雑誌が1995年。雑誌は20年で販売部数が半減以下になり、需要の減退が続いている。日本の取次および書店、特に小規模書店は、雑誌の売上比率が大きい。取次のビジネスモデルは、書籍は赤字でも雑誌が利益を生むという形でバランスをとってきた。だから雑誌が縮小することは死活問題になる。
堅調だったはずの書籍市場にも変調が起きている。14年4月の消費税引き上げで大きく落ち込んだが、その数年前からおかしくなり始めていた。11年あたりだが、これはスマホが急激に普及した時期と重なる。電車に乗ると、本を読んでいる人がいない。みんなスマホを持っている。いま売れないジャンルは文芸、文庫、エンターテインメント系。明らかに暇つぶしや娯楽の読書、特に移動中の読書がスマホに取られている。本当の意味の「本離れ」が始まっている。
電子書籍市場約1200億円のうち、1000億円はコミック。コミック市場は雑誌、単行本に電子を足すと、ここ2年ほどプラスになっている。雑誌が縮小した分を電子で取り返している。気になるのは14年から単行本の売れ行きが鈍っていること。映像化された時、単行本で読まず電子で読む人が増えたようだ。
雑誌市場が厳しい。書籍市場も変調を起こしている。コミック市場までおかしくなると、取次と書店は厳しい状況になる。中小書店は雑誌、コミック、文庫、新書とライトな商材で売上げを作ってきた。そこが影響を受けている。
雑誌の市場縮小で、大正以来の「雑誌で利益をあげる」ビジネスモデルは崩壊している。3位以下の取次は中央社を除き厳しい経営状態。トーハンも日販も構造は基本的に同じで、雑誌が売れなくなれば苦しい。そこで、トーハンは複合事業の拡大と物流部門の外部化を行い、日販も新規事業の取り組み、買切・時限再販に踏み込んでいる。今後も減収が続くことを前提にビジネスモデルを作っている。書籍・雑誌の市場が縮小する中、雑貨、文具、カフェなど第3商材への注目が高まっている。
日本に独立系の中小書店、独立系の小規模出版社が多いのは、取次という相対的に平等なシステムがあるおかげだ。取次システムがない海外では、物流、営業コストが大きいため出版社の集中度が上がり、巨大出版グループ化が進んでいる。商品調達力を確保するため書店の集中度が上がり、巨大チェーン化、スーパーなど他チャンネルの拡大も進んでいる。
日本の書籍・雑誌販売額は1兆6000億円。このうち、DNPグループ(丸善CHI+文教堂)は2000億円でシェア約12%。DNP+紀伊國屋書店で3000億円、シェア19%弱となる。アマゾンはおそらく10%以上のシェアを持つと思われる。TSUTAYAは7%のシェアだ。大手チェーンは集中度を高めている。トーハン、日販の取引書店のグループ化や、大田丸、NET21といった書店協業化も進むだろう。
【ドイツで中小書店が元気な理由】
ドイツの「トリノ」について話したい。タリア、フーゲンドゥーベル、ウィルトビルト、クラブ・ベルテルスマンの大手書店4社と欧州最大の通信会社ドイツテレコムが立ち上げた電子書籍プラットフォームで、13年3月にサービスを開始し、1年余りでキンドルのシェアを上回った。14年10月、取次のリブリが自社サービス「ホワイトラベル」に組み込み、取引先の中小書店にも提供を始めた。6か国、1500書店が導入、会員数350万人、端末販売150万台、毎月150万冊売れるようになった。成功していると言っていいが、それほど儲かっているとは思わない。
利益配分は出版社70%、書店30%、ドイツテレコムへの手数料は書店が負担する。「ホワイトラベル」では書店粗利は10%、決済とドイツテレコムへの手数料支払いはリブリが行う。端末の書店粗利は5%だが、価格拘束の対象ではないので利益ゼロで販売している。紙の本より儲からないが、それでも前向きに捉えている書店が多い。クルトハイマンブックセンターのクリスチャン・ハイマン社長は「電子書籍は儲からないが、お客さんを維持するためにどうしても必要。昔からのお客さんがアマゾンで買ってしまうのが一番恐ろしい。一度アマゾンに行ったら戻って来ない」と言っている。
当初6%だったブランド認知率が80%になったことと、中小書店も参加できるモデルを作ったことが、成功の要因だ。ドイツの書店は7割が常連客。いつも行く書店で電子書籍が買えるのであれば、わざわざキンドルを買うこともない。
ドイツでは中小書店が元気だ。ドイツの流通・販売は日本とまったく違う。書籍と雑誌は別の流通・小売。原則として買切取引。返品はあるが数パーセントで、返品金額は次回仕入に充当する。返品率が低いのは、買切前提なので、3ヵ月で売り切れる数だけしか発注しないから。新刊は事前注文制で、配本はない。書籍価格拘束法があり、電子書籍も対象になっている。書籍の価格は日本の2倍、書店マージンは30~40%、書店の在庫量は日本の半分。利益は日本の書店の約8倍になる。書籍だけで食えるシステムになっている。
リブリの「ホワイトラベル」は、取引書店にオンラインショップのインフラを提供するもの。ブランドは各書店で、商品マスタ、顧客管理、決済、発送などをリブリが代行する。受注書籍はリブリの流通センターから送料無料で利用者宅に宅配する。もともとリブリは受注した商品を全国の書店に翌朝届けてきた。価格拘束法があるため配送速度・コストが同等なら中小書店がアマゾンと同じサービスを提供できる。
「Anabel(アナベル)」は取次を利用して協同組合「eBuch」加盟書店からの注文を一括して出版社に発注するシステム。ドイツは出版社への直接注文が多く、大量発注できる大手書店と小ロット発注の小規模書店でマージンに差がある。出版社が最低発注金額を設定しているケースも多い。アナベルを利用すると、大手書店と同等の条件で仕入れることができ、最低発注金額がないため最低限の数を注文できる。
ドイツは、書籍を販売していれば書店経営を維持できるビジネスモデルがある。大型書店はアマゾンの影響を受けて苦しい。取次が、中小書店が大手やアマゾンに対抗するための支援をしている。だから元気な中小書店が多い。
欧米出版社のチャネル政策を見てみよう。ドイツのキャンパス社は、出版社にとって小さな書店は大事な存在なので、アマゾンの影響で潰れるのは困ると考えている。だからプロモーションの助言をしているし、割引率もメリットがあるよう優遇している。アマゾンには優遇していない。
世界最大の書籍出版社ランダムハウスの独立系書店担当部長にインタビューしたとき、「独立系書店はいい人だから付き合っているわけではなく、ビジネスとして重視している」と言う。アマゾンやバーンズ&ノーブルは自らベストセラーを作らない。一方、独立系書店は店主やスタッフが気に入った本なら新人作家のデビュー作でも一生懸命売る。売れ出すとアマゾンやバーンズ&ノーブルは仕入れるので放っておいてもいい。だからプロモーションコストのほとんどを独立系書店にかけている。
日本でも書店の集中化が進むだろう。買切できるところはマージンが高くなり、できないところは低くなる。だから中小書店は協業化を考える必要がある。また、ライトな商品が売れない以上、これまでの薄利多売モデルから脱却し、買切・高マージンの高付加価値モデルに移行しなければならない。出版社は部数を絞って価格を上げたほうがいいと思う。
現状は厳しいが、小さい書店を始めたい若者がどんどん出てきている。決して悲観的な将来ではないというのが最終的な結論だ。

小説部門は『朝が来る』/第4回静岡書店大賞授賞式

静岡県内の書店員・図書館員が県民に読んでもらいたい本を投票で選ぶ「第4回静岡書店大賞」(同実行委員会主催)が発表され、小説部門は辻村深月氏の『朝が来る』(文藝春秋)、児童書・新作部門はのぶみ氏の『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)、児童書・名作部門はエリック・カール氏の『はらぺこあおむし』(偕成社)、映像化したい文庫部門は北川恵海氏の『ちょっと今から仕事やめてくる』(KADOKAWA)がそれぞれ大賞に選ばれた。
12月3日、静岡市内で開かれた授賞式には出版関係者や作者ら142名が出席。児童書・新作部門大賞ののぶみ氏は「16年間、絵本作家をやって、一番良い賞をいただいた。自分1人の力ではなく、多くの人の支えで受賞できた」、映像化したい文庫部門大賞の北川氏は「新しい出会いをもたらしてくれる書店や図書館の方に評価していただいてうれしい」と、それぞれ喜びを語った。
県内約180書店と各図書館で受賞作のフェアを展開している。

理事3名の増員を決定/JPO

日本出版インフラセンター(JPO)は12月8日に東京・新宿区の日本出版クラブ会館で第4回理事会を開催し、理事の増員等の議題を承認した。
新しく理事に就任したのは、堀内丸恵(集英社代表取締役社長)、松井清人(文藝春秋代表取締役社長)、松原眞樹(KADOKAWA代表取締役社長)の3氏。いずれも任期は2017年6月までで、正式手続きは今年6月に開催予定の年次総会で決定する。
また定款についても、現在の活動状況を反映させ、業界インフラ整備の団体としてふさわしい組織体制へと見直す必要が生じたことから、6月の総会で変更することを決定。3月開催予定の次回理事会で改定案を出すことにした。
この他、「緊デジ」(経済産業省コンテンツ緊急電子化事業)で電子書籍の未配信について会計検査院から指摘を受けた件で、出版社アンケートを実施していたが、全出版社から得た回答の結果報告を承認した。
〔JPO理事会〕
▽代表理事=相賀昌宏(小学館)
▽専務理事=永井祥一(JPO)
▽理事=安西浩和(日本出版販売)川上浩明(トーハン)佐藤隆信(新潮社)野間省伸(講談社)藤原直(日本書店商業組合連合会・金港堂)堀内丸恵(集英社)松井清人(文藝春秋)松原眞樹(KADOKAWA)山本宏義(日本図書館協会)
▽監事=菊池明郎(筑摩書房)

登録点数50万件に/JPRO

日本出版インフラセンターは12月16日、出版情報登録センター(JPRO)の書誌情報登録件数が50万件を超えたと発表した。
JPROは紙と電子の書誌情報と、出版権情報を登録できる業界システムとして昨年7月に本稼働した。利用出版社数は同日現在で768社となっている。

わが社のイチ押し企画/KADOKAWA・宣伝局

あけましておめでとうございます。旧年中は格別なるご支援を賜り誠にありがとうございます。KADOKAWAは今年も皆様に楽しんでいただける作品をご用意しております。
まず最初に、昨年10月より発売中の角川文庫、夢枕獏『エヴェレスト神々の山嶺』。山に賭ける男たちを描いた山岳小説の金字塔が豪華キャスト陣で映像化、3月劇場公開されます。文芸書では、不可思議な塔が舞台の〝万城目学ワールド〟真骨頂作品『バベル九朔』が3月刊行。コミックエッセイ書では、シリーズ累計300万部突破の『ダーリンは外国人まるっとベルリン3年目』最新刊が1月下旬に発売されます。堀江貴文の『面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた→そしたら人生変わった』ではホリエモンが読んでおきたい数々のマンガをご紹介し、「必読の書」間違いなしです。
ライトノベルでは、MF文庫J『Re:ゼロから始める異世界生活』がTVアニメ化、ビーンズ文庫では、劇場アニメ化されるHoney Works「告白実行委員会」シリーズのひとつ『告白予行練習』が累計80万部を突破。コミックでも映像化が続きます。累計239万部突破の『僕だけがいない街』が1月にTVアニメ化、3月に実写映画化されます。文豪たちによる異能力バトル漫画『文豪ストレイドッグス』のTVアニメにもご注目ください。
雑誌・ムックは、№1総合ゲーム情報誌「週刊ファミ通」が6月に創刊30周年を迎えます。オトナの〝脳力〟を磨く、鍛える総合パズル誌「大人パズル」もお勧めです。業界初『You Tuberの本』もシリーズ刊行化、『疲れとり首ウォーマー』の新色2色が好評発売中です。
そして最後ですが国民的人気の『ラブライブ!』。紅白歌合戦出場を果たし、春に東京ドームでのファイナルライブが決定、原作ノベルやムック発売で盛り上げます。
今年も引き続き一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

わが社のイチ押し企画/マガジンハウス・ku:nel 編集長・淀川美代子

「クウネル」は1月20日の発売号から、リニューアルすることになりました。これまでの「クウネル」には根強い読者もおられて若干の戸惑いがあるかとも思われますが…。新生「クウネル」は50代~の大人の女性を対象にした、ライフスタイル雑誌に変わります。その世代の女性の生活のあれこれを、さまざまな角度から取材します。
インテリア、料理、ファッション、化粧、買い物などを「クウネル」ならではの目線で取り上げます。励みになるエッセイ(創刊号は吉本ばななさんからのメッセージです)や人気料理家のコウケンテツさんの料理、松浦弥太郎さんの連載なども用意しました。
いまの50代~の女性は世間が考えてるイメージとは全く違い、若々しいのは驚くばかりです。「歳は重ねても心は青春」と言う言葉がピッタリです。しかし年齢ならではの苦労や哀しみも抱えていることも事実です。
ある調査では60代~のフランス女性の80%は、いまの自分は幸せと感じていて、日本女性は30%しか幸せと感じてないとか。ちょっと寂しいです。そんな日本の女性が少しでも、トキメキやワクワクの時間を持てる、お手伝いができたらいいなと考えております。
リニューアル1号目は「フランス女性の生活の知恵」を特集。こんな時代でも自由に強く生きるフランス女性は、どんな生活、そして人生感覚なのだろうか?6人の女性にお金、インテリア、恋愛、料理、ファッションなどについて取材しました。我々日本人の生活に大きなヒントがありました。
アートディレクションは藤本やすし氏にお願いしました。藤本さんらしい品の良い「クウネル」になりました。
雑誌には厳しい時代と言われていますが、若き日に「オリーブ」や「アンアン」が好きだった世代に、もういちど雑誌の面白さを味わって頂きたい、そんな思いでスタッフ一同、頑張りたいと思っております。応援をどうぞ宜しくお願い致します。

わが社のイチ押し企画/河出書房新社・営業第二部第二課・大沢直美

謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。
今年、弊社は創業130周年を迎えます。この節目となる年を記念して昨年より「創業130周年記念出版」と銘打った企画を刊行しております。
2014年11月より刊行を開始した「池澤夏樹=個人編集日本文学全集全30巻」もその一つですが、お陰様で昨年11月に第1期12巻完結、累計22万部を突破いたしました。そして、今年1月より第2期がスタートいたします。第2期のスタートは、その新訳作家陣の豪華さから刊行が待望されていた第3巻『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』(森見登美彦/川上弘美/中島京子/堀江敏幸/江國香織訳)です。最古の物語「竹取物語」(森見登美彦訳)から「更級日記」(江國香織訳)まで、恋と冒険と人生を描く平安王朝文学を、人気作家たちによる全訳・新訳にてお送り致します。以降もほぼ毎月刊行いたしますが、完結までに3年を要する息の長い企画です。末永くご拡販下さいますようお願い申し上げます。
また「創業130周年記念出版」として今年前半には、藤沢周著『武蔵無常』、高嶋哲夫著『浮遊』(共に3月刊)、窪美澄著『アカガミ』(4月刊)、町田康著『ギケイキ』(5月刊)が予定されており、以降も人気作家の力作を刊行して参ります。
そして、昨年刊行10年目を迎えた〈大人の塗り絵シリーズ〉は、刊行アイテム数130点、累計部数は500万部を突破しました。毎年開催している〈大人の塗り絵コンテスト〉も第10回を迎え、年々応募数が増加、〈大人の塗り絵教室〉の開催も益々隆盛を極めております。今年も、昨年ブームとなったコロリアージュタイプの塗り絵をはじめ魅力的なラインナップを毎月刊行して参りますので、引き続きご愛顧くださいますようお願いいたします。
本年も書店様と読者の方々にとって魅力的な諸施策を講じて参りたいと思いますので、皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/文藝春秋・文藝出版局第二文藝部担当局次長・島田真

赤目小籐次は豊後森藩江戸下屋敷の厩番。矮躯の老侍で、なにより無類の酒好き。だが、ひとたび剣を抜けば来島水軍流の達人――。
書店に、出版社別でなく〈佐伯泰英〉の名前で棚ができてしまうほどの人気作家である佐伯さんですが、文春文庫では2014年から異形のヒーロー・赤目小籐次の活躍を描く痛快シリーズ〝新・酔いどれ小籐次〟を年2回のペースで刊行しています。
2016年は、文春文庫ではまずは2月に新刊『姉と弟』を刊行、3月からは、旧シリーズにあたる『酔いどれ小籐次決定版』を毎月一冊ずつ連続刊行していきます。全十九巻を佐伯さんが再読、文章に手を入れた決定版。巻末には作品にまつわる歴史コラムを収録予定で、作中の舞台の探訪記や、専門家による読み物など、多方面から作品世界に迫ります。
最初の刊が出る3月は、「品川の騒ぎ」「野鍛冶」の中編二篇からなる『小籐次青春抄』も同時刊行。似たり寄ったりの境遇の悪仲間が窮地に陥ったため、悪徳商人ややくざ者に真剣勝負を挑む、若き日の小籐次の活躍を描きます。毎月、新刊か旧シリーズ決定版が必ず出るというファンにとっては嬉しい〈小籐次祭り〉が続きます。豪華プレゼント企画も進行中です。
また、黒川博行さんの直木賞受賞後第一作『後妻業』は、「色で老人の金を喰う」裏稼業を赤裸々に描き、実際に似たような事件が起きたこともあって刊行当初から爆発的な話題になりました。映画化オファーが殺到したこの作品が、いよいよ8月に公開されるのに合わせて文庫化が予定されています。大竹しのぶさんがどんな悪女ぶりを見せてくれるか楽しみです。他にも横山秀夫さんの最高傑作と呼び声高い『64』が5月・7月に前後編で映画化、主演級の俳優がそろった大作です。同じく5月公開の『殿、利息でござる!』は将来を憂える貧しい宿場町の庶民たちが、お上に金を貸し付けその利息で町を救うという奇想天外な物語ですが、原作『無私の日本人』は、歴史家として信頼感のある磯田道史さんが古文書を読み解き〝誇るべき日本人〟の姿を現代に蘇らせた実話です。映画で大いに笑って、原作で泣いてください。

参考図書

〔マガジンデータ2016を発行/雑協〕
日本雑誌協会は、会員社が発行する雑誌のデータを収載した『マガジンデータ2016(2015年版)』を発行した。B5判、頒価2千円(税込)。
『マガジンデータ2016』では、79社605誌の全データを表紙写真付きで紹介。印刷証明付き発行部数公表は53社342誌となっている。各誌の版型・刊行形態・発売日・創刊日・定価等を掲載。デジタル版の有無も表記。雑誌の特徴や表情を簡潔に伝える各誌編集長のメッセージが付く。申込みは雑協ホームページまで。

トーハンのフェア2企画

〔NHK大河ドラマ真田丸フェア〕
2016年NHK大河ドラマ「真田丸」の放送開始に合わせ、全国約9百書店で関連書フェアを開催。
フェアは、脚本、ドラマガイド、戦国武将や合戦を解説した歴史読本など、「真田丸」をより深く楽しめる22銘柄23点を揃えて展開。開催書店には、トーハンオリジナルの真田丸主要人物相関図パネル、POP、ポスターを提供しコーナー展開をサポートしている。開催書店で対象商品を購入し、応募した読者の中から抽選で60名にオリジナル図書カードをプレゼントするキャンペーンも併せて実施する。
〔第8回MOE絵本屋さん大賞2015フェア〕
「MOE絵本屋さん大賞」は、白泉社が発行する絵本とキャラクターの特集誌「MOE」が全国の絵本専門店・書店の2700人にアンケート調査し、最も支持された絵本30冊と新人賞絵本5冊を決定するもの。12月29日発売の2月号誌上で発表、特集が組まれている。トーハンは全国約1200書店でフェアを展開。実施書店には上位11作品、新人賞1位と同誌2月号を送品、オリジナル拡材として「MOE」のロゴと表紙キャラクター入りの「フェアパネル」、「著者自画像・顔写真入りランキングPOP」を提供する。

栗田が大阪屋と経営統合へ/債権者集会で再生計画案が可決

栗田出版販売の債権者集会が12月24日に開催され、再生計画案が約9割の賛成を得て可決。東京地方裁判所から同日、認可決定を受けた。4月に大阪屋との経営統合を予定する。
再生計画案の成立には、「投票した債権者の頭数の過半数」と「議決権総額の2分の1以上」の賛成が必要で、債権者集会では851人が投票し、頭数で94・71%、議決権額で88・94%の支持を集めた。
再生案で示された弁済率は、第1回弁済で50万円以下は100%、50万円超の部分については13・2%を弁済。後者はその後第2回弁済として追加弁済率4・2%を予定し、合計17・4%を目指す。再生債権額は111億1600万円で、まず早期に確保可能な弁済原資が18億6100万円、追加弁済も含めた再生債権全体に対しては21・3%の弁済率となる。再生計画認可決定の確定は1月下旬、第1回弁済日は決定から3ヵ月後の4月末日、第2回弁済日は未定。
経営統合については、大阪屋は昨年10月に子会社「株式会社栗田」(新栗田)を設立。2月1日、新栗田が旧栗田の取次事業を吸収分割して「栗田出版販売株式会社」に社名変更。4月1日に大阪屋と新栗田が合併する予定。

催し

〔日販「親子でたのしむ絵本ワールドinおきなわ」〕
1月30日(土)と31日(日)、沖縄県浦添市のてだこホールで開催する。今年度の「絵本ワールド」の開催は、夏の山形会場・名古屋会場に続き3会場目。
沖縄会場では、「世代を超えて愛されてミリオンセラー絵本&読物」「いくつのえほん」「よい絵本」「心にのこる子どもの本」など様々なテーマのコーナーを設けて本や絵本を展示。絵本作家の長谷川義史さんや村上八千世さんによる講演会・サイン会や、読み聞かせ会、おりがみ教室などオリジナル企画のコーナーを展開するほか、地域の児童福祉施設などへの図書贈呈式も行う。
〔第52回「日販マネジメントセミナー」〕
2月18日(木)午後1時から、東京・千代田区のベルサール神保町アネックスで開催。講演テーマと講師は次の通り。第1講「ビジネスで培った人と組織を強くする逆転の方程式」青山学院大学陸上競技部監督・原晋氏/第2講「~明日からすぐできる~これからの書店のファンづくりのしかけ」いろは代表取締役経営コンサルタント・竹内謙礼氏/第3講「宗次流7つの経営術~経営改革はリーダーの行動改革から~」壱番屋創業者特別顧問・宗次德二氏
会費は1名税込2万5千円、日本出版共済会加入口数30口に付き1名2万5千円を補助。申込みは日販各支店・営業部、営業推進室書店サポートチームまで。

弾力運用推進に協力求める/出版流通改善協議会が再販関連説明会

日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の出版4団体で構成する出版流通改善協議会の「再販関連」会員説明会が12月18日、東京・新宿区の日本出版会館で開かれ、『2015年出版再販・流通白書№18』の概要や、再販制度弾力運用の取り組み事例等について説明が行われた。
冒頭であいさつした相賀昌宏委員長(小学館)は、「再販をどうやって販売促進に結び付けていくかが一番大事だ。販売を守るための再販であり、読者がより本を手にするための弾力運用だという形で進めていきたい」と方針を説明。また、与党税制改正大綱で、軽減税率の対象に書籍・雑誌を含めるかは引き続き検討するとしたことに言及して、課題とされる書籍と雑誌の定義明確化や「有害図書」の線引きについて検討していくと述べた。さらに、本への軽減税率を求める読者からの声を大きく巻き起こすことが重要だとして、全国で読書推進に取り組む人たちの名前を掲載した新聞広告を準備していると説明した。
原本茂委員(小学館)は『出版再販・流通白書№18』の概要を説明。公正取引委員会による著作物再販ヒアリングについて、公取は再販の弾力的運用でさらなる取り組みを求めていると報告したほか、白書については、出版情報登録センターの本稼働、ドイツ出版市場の調査、書店店頭での割引販売と時限再販の取り組み――などの特筆事項や、出版業界各社の事例等の概略を述べた。
続いて筑摩書房の小島秀人取締役が、自社がこれまで実施した謝恩価格全集セールや時限再販企画について説明。12月から開始した第4回の全集セールは、3月末までの期間限定で、50掛け、完全買切りの販売条件で実施中と報告した。
最後に斎藤健司委員(金の星社)が弾力的運用について『再販契約の手引き第5版』を基に説明。昨年6月にアマゾンが実施したバーゲンセールについて「弾力運用の観点から非常に問題のある出来事だった。再販制の重要性について誰もが理解していると思うが、その仕組みについて知ろうとする努力が足りていないのではないか」と危惧を示した。

「『脱再販に加担』は誤り」/筑摩書房、朝日新聞記事に抗議

筑摩書房は12月24日、朝日新聞が同日朝刊に掲載した記事「本の値引き仁義なき攻防」について、「事実が曲解され、誤解を招く恐れが強くあり、看過できない」とする山野浩一社長名による抗議文を、同社ホームページで公表した。
朝日の記事は、アマゾンが刊行から一定期間を過ぎた一部の本の値引き販売を開始したが、再販制度に基づく定価販売を揺さぶる「黒船」への警戒感から、参加は筑摩書房1社のみで、『フローベール全集』などを1月中旬頃まで定価の2割引きで販売すると報じている。
筑摩書房の抗議文によると、同社は15年12月~16年3月の期間限定で創業75周年記念企画「読者謝恩価格本セール」を約100書店で実施中であり、「アマゾンの値引き販売の企画に筑摩書房が参加した」のではなく、「筑摩書房の謝恩価格本セールにアマゾンジャパンも参加した」というのが事実と主張している。
このセールは業界紙などを通して全国の書店に告知して参加を募集。01年、02年、11年にも行っており、11年にもアマゾンジャパンは参加したという。
また、記事は「筑摩書房が率先して『脱再販』に加担しているような文脈として読めてしまう」が、この謝恩価格本セールは再販弾力運用の「時限再販」の一形態であり、「むしろ、再販を護持するための方策の1つ」と指摘。「当該記事の意図するところとはむしろ、正反対の理念と意志のもとに展開するものであることを、あらためて表明する」としいる。
同社は朝日新聞に「当社にきちんと取材をしたうえで、より正確な記事をなるべく早い段階で掲載する」ことを強く要請。朝日新聞から返答が届き次第、同社ホームページで報告するとしている。

日教販新社長に渡部正嗣氏

日教販は12月22日開催の定時株主総会並びに取締役会で、下記の役員選任と職制担当業務の一部変更を行った。◎昇任、○新任
代表取締役社長〔全体統括販売注文部・販売促進部・営業企画部・商品部・取引部担当〕○渡部正嗣
取締役専務執行役員〔経営企画部長・総務人事部長経営企画部・総務人事部・デジタル事業部・情報システム部担当関連会社所管〕◎宮下謙一
取締役常務執行役員〔教科書部長教科書部・仕入部・物流管理部担当〕
◎小野田裕
取締役(社外取締役)〔第一学習社代表取締役〕
松本洋介
取締役(社外取締役)〔日本出版販売専務取締役〕
加藤哲朗
監査役山田俊明
※河野隆史代表取締役社長は相談役に、増澤富男取締役副社長は顧問に就任。