全国書店新聞
             

平成30年9月1日号

紙の出版販売額、今年上期は8・0%減/雑誌のマイナス幅拡がる/出版科研調べ

出版科学研究所は2018年上半期(1~6月)の書籍・雑誌分野別動向をまとめた。これによると紙の出版物の販売金額は6702億円で、前年同期比8・0%減と大きく落ち込んだ。書籍は同3・6%減の3810億円。雑誌は同13・1%減の2892億円で前年の8・5%減より下落幅が拡大した。
〔主要ジャンルが減少、児童書は健闘/書籍〕
書籍の販売金額は3810億円で前年同期比3・6%減。文芸、文庫、新書、ビジネス、実用、学参など主要ジャンルが軒並み不振で、前年よりマイナス幅が拡大した。特に文芸や学参など前年大きく伸びていたジャンルの落ち込みが目立った。一方、児童書は前年並みの水準を持続し、一般・教養書は好調に推移した。販売部数は、同4・7%減の3億710万冊。
新刊平均価格は、同0・4%減の1177円、出回り平均価格は同1・3%増の1176円。廉価な文庫本の不振で、出回り平均価格が大幅に上昇した。金額返品率は34・6%で同0・4ポイント悪化した。
新刊点数は同1・2%(435点)減の3万6276点で、このうち取次仕入窓口経由が同1・5%(400点)減の2万5566点、注文扱いが同0・3%(35点)減の1万710点といずれも減少した。取次仕入窓口経由は6年連続のマイナス。
18年上半期は、『漫画君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が202万部に達し、前年に続いて売行きを牽引した。文芸書は、前年の村上春樹や又吉直樹の新刊のような大物タイトルが不足しマイナスに。その中で健闘したのが芥川賞受賞の若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)で、50万部を超えるヒットになった。辻村深月『かがみの孤城』(ポプラ社)は本屋大賞を受賞した4月以降じわじわと伸長した。
児童書は、「ざんねんないきもの事典」(高橋書店)や「おしりたんてい」(ポプラ社)などシリーズものでヒットした書籍が多く前年並みをキープした。学参は、「うんこ漢字ドリル」(文響社)など前年大ブレークしたシリーズの反動で大きく落ち込んだ。
文庫本は約7%減と厳しい販売状況は変わらず。売行き上位は映像化作品と人気作家の新刊という傾向が続いている。
〔ムック、コミックスの落込み際立つ/雑誌〕
雑誌の販売金額は2892億円で前年同期比13・1%減となり、前年同期の8・5%減を超える大幅な落ち込みを記録した。内訳は、月刊誌が同13・6%減の2341億円、週刊誌が同10・7%減の550億円。月刊誌は、定期誌が約11%減、ムックが約16%減、コミックスが約15%減で、ムック、コミックスと不定期誌の落ち込みが特に目立った。
推定発行部数は同11・7%減。内訳は、月刊誌が同12・5%減、週刊誌が同9・4%減。推定発行金額は同11・0%減で、月刊誌は同11・6%減、週刊誌は同8・2%減。平均価格は同0・9%増の569円で、月刊誌が同1・1%増の645円、週刊誌が同1・4%増の366円。部数の減少を価格上昇によって補おうとする動きが活発になっている。
金額返品率は同1・3ポイント増の45・3%で、月刊誌が同1・3ポイント増の46・3%、週刊誌が同1・7ポイント増の40・8%。特にコミックスの返品率上昇が顕著だった。
創・復刊点数は同8点減の35点。休刊点数は同16点増の81点で、『ARiA』(講談社)、『別冊花とゆめ』(白泉社)など大手出版社の主要コミック誌が休刊し、連載媒体をWebに移行する動きが目立った。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が同94点減の1610点、ムックは同275点減の4025点。1号を1点とした付録添付誌数は、同459点減の5439点だった。
雑誌は、女性誌・美容誌を中心とした豪華なグッズ付録つき雑誌や、人気アイドルを起用した号などは好調な売行き。特集や付録で単発的に売れる傾向に変化はなく、前年を上回った主要ジャンルはなかった。
〔紙+電子の出版販売額は5・8%減〕
18年上半期の電子出版の市場規模は1125億円で前年同期比9・3%増、金額で96億円増加したが、2桁の伸びとはならなかった。内訳は、電子コミックが同11・2%増の864億円、電子書籍が同9・3%増の153億円、電子雑誌が同3・6%減の108億円で、雑誌がマイナスになったのは今回が初めて。
コミックは、値引キャンペーンなどが引き続き盛んで成長を続けているものの、違法海賊版サイトの影響もあって伸び率は緩やかになった。書籍は、ビジネス書や自己啓発書、ライトノベルなどが引き続き好調。雑誌は、売上占有の高いNTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数が、キャリアショップの契約手続きの見直しで17年4月以降減少傾向にあることが影響した。
上半期の紙と電子の市場を合わせると7827億円、同5・8%減。市場全体における電子出版の占有率は14・4%で、同2・0ポイント増加した。

読書週間標語「ホッと一息本と一息」

読書推進運動協議会(野間省伸会長)の主催により文化の日を挟んで10月27日から11月9日まで実施される第72回読書週間の標語が「ホッと一息本と一息」に決まった。野間読書推進賞、全国優良読書グループ表彰などの行事が行われる。

「納入での地域書店最優先を」/堤理事長、組合の団結訴える/佐賀総会

佐賀県書店商業組合は6月30日、佐賀市の佐賀ワシントンホテルプラザで第36回通常総会を開催し、組合員23名(委任状含む)が出席した。
総会は吉武康志理事(油屋書店)の司会で進行。堤洋理事長(ブックスグリーンウッド)は「今や個々の書店の努力だけでは、1人当たり売上が全国46位の佐賀県の経営環境下では生き残りが難しい。執行部は、公共機関や教科書配給所に、図書納入・教科書納入に際しては地域書店からの納入を最優先としていただくよう最善の運動をしていくので今以上に組合への協力をお願いしたい。団結が無ければ粗利30%以上の獲得、軽減税率の実現も不可能。佐賀県は全国で唯一組合員が増えた。組合加入に利がある組合になるよう努める」とあいさつした。
続いて堤理事長を議長に、全ての議案を原案通り承認可決。5年連続黒字化と、組合賦課金の2割を販促費とすること、また昨年に続き理事に役員報酬を支給することとした。最後に教科書配給所に、教科書取り扱い書店の選定について、公明正大で透明性のある選定がされるよう要望することを決議した。
総会終了後、ナノビットの高崎洋司代表を講師に、書店による公共図書館・学校図書館の電算化(システム化)の取り組みについて研修会を開催。佐賀県内で初の日書連マークの活用を目指すべく今後の支援について説明するなど、有意義な研修会となった。
この後、輸送会社、中央会、岩田和親代議士を交えて懇親会を行い親睦を深めた。(佐賀県組合事務局)

レディースランチを旧桜宮公会堂で開催/大阪組合

大阪府書店商業組合は、7月18日正午より大阪市北区の旧桜宮公会堂で「レディースランチ」を開き、35名が出席した。
開会にあたり、深田健治副理事長が「17回を迎えるレディースランチの会は大阪組合の元気の源」とあいさつ。続いてあいさつした面屋龍延理事長は、日書連が進める書店の粗利益30%以上実現の活動を報告したほか、本屋が出版文化を担っているエピソードとして、盛岡市・さわや書店の松本大介氏が、1986年に文庫化された『思考の整理学』(外山滋比古著)を2007年に読み、「若い時に読んでいれば…」とPOPを付けたところ、225万部のベストセラーになった事例を紹介した。
レディース委員会の松田和子委員長は「大阪組合理事会で熱のある発言をするのはいつも二村知子さん」と紹介し、二村氏が委員長を務める経営活性化委員会は、10月開催の近畿ブロック会の講師に北海道のいわた書店・岩田氏を推薦し、決定したと報告。閉会あいさつは二村常務理事が行った。
会場の旧桜宮公会堂は国指定の重要文化財で、隣接する泉布観とともに、現存する日本で最古の近代建築物。重厚感ある品格と洗練をまとった会場でビュッフェ料理を賞味した。
(石尾義彦事務局長)

「春夏秋冬本屋です」/「学校図書館の電算化」/大阪・ブックスふかだ代表取締役・深田健治

小中学校では読書教育や図書館の重要性がよく認識されていて、その一環として図書館の電算化の希望は多い。地元の小中学校図書館では、6年前に初めてパソコンが導入されてからこの夏までに半数以上の12校で図書館の電算化が実現している。
市が推進してくれているわけでは無いので、初期導入やサポート費用などはPTAの協力を得てそちらの予算から捻出されているケースが多い。その代わりにパソコンは中古ではあるがこちらで用意して無料で貸出という形を取っている。もし故障した場合も無償で交換している。
実際に導入された学校では、初めのころは頻繁にサポートが必要だが、半年もするとほとんど問い合わせもなく快適に運用されている。3年前から中学校区に1人配置されている司書さんもとても熱心で、ソフトの使い方もしっかりマスターしてくれているので非常に助かっている。ライン友だちになっている司書さんも多い。
パソコンを入れたら図書館が活性化するというわけではないが、子どもたちには非常に受けがいい。スキャナーでピッとすることが楽しく図書館に来る子が増え、貸し出し数が飛躍的に増えたという話も聞く。蓄積される読書履歴などのデータも、うまく子どもたちの読書意欲の向上に役立ててもらえてこそ価値がある。楽しい図書館をきっかけに本好きの子どもたちが増えてくれることを願っている。

総会に向け決算報告書、収支予算案を審議/神奈川理事会

神奈川県書店商業組合(井上俊夫理事長)は7月24日、横浜市中区のかながわ労働プラザ会議室で定例理事会を開催した。
報告事項では、6月17日開催の「大好きな本絵画コンテスト」表彰式が盛況だったと報告。また、関東ブロック会が7月22日に行われ、組合員の減少と後継者不足が深刻であること、県立高校の図書館書籍納入問題の在り方等で意見が交わされたことを報告した。
議事では、8月28日開催の総会に向け、第41期の決算報告書に基づき財産目録・貸借対照表・損益計算書・収支決算書・剰余金処分案が読み上げられた。続いて平成30年度収支予算案も読み上げられ、理事会としていずれも承認した。このほか、4店舗から閉店に伴う脱会届けが提出され、これも承認された。
(山本雅之広報委員)

中山寿賀雄理事長を再選/組合未加入店の加入促進/長崎総会

長崎県書店商業組合(中山寿賀雄理事長)は、7月30日に諫早市の「水月楼」で第31期通常総会を開催し、組合員27名(委任状含む)が出席した。
総会は草野専務理事の進行で始まり、中山理事長があいさつ。書店業界の状態について報告が行われ、書店の減少、売上の減少など非常に厳しい状況との説明があった。
議長に尾崎副理事長を選任して議案審議に入り、中山理事長が事業報告。29年度の出版販売金額は6・9%減、13年連続マイナスと危機的状況で、長崎県でも3店の脱会があり組合の存続自体が危ぶまれる状況になってきていると説明があった。決算報告は草野専務理事が説明、山本監事が監査の結果適正であった旨報告し、ともに異議なく承認された。事業計画案は中山理事長が説明。30年度事業計画については、未加入書店の加入促進と、九州一円の雑誌発売日を2日目地区にするよう要望する案を盛り込んだ。収支予算案は草野専務理事より説明があり、ともに異議なく承認された。役員改選では、選考委員から理事の発表があり、全員承認。中山理事長を再選した。
総会終了後、来賓の中央会・上岡氏があいさつし、長崎県の中央会の現状などについて説明した。懇親会では、テジマ運送の手島社長があいさつした。
[長崎組合役員体制]
▽理事長=中山寿賀雄▽副理事長=辻田信、尾崎嘉生、古瀬寛二▽専務理事=草野義広
(古瀬寛二広報委員)

「認知症県民週間」に協力しフェア開催/鹿児島組合

鹿児島県書店商業組合(楠田哲久理事長)は、鹿児島県くらし保健福祉部から依頼を受け、「認知症を理解し一緒に歩む県民週間」に合わせて書店店頭に特設コーナーの設置を推進することを決めた。
鹿児島県は6月定例会で、9月21日の世界アルツハイマーデーを含む9月16日から22日までを、認知症の正しい理解の更なる普及啓発や認知症高齢者等にやさしい地域づくり向けた気運の醸成を図ることを目的とする県民週間に設定することを決め、鹿児島組合に協力を依頼した。
鹿児島組合は認知症関連本10冊を選定し、鹿児島書籍の協力を得て希望する書店に配本。店頭の在庫と合わせてフェアを実施し、県民週間に協力するとともに店頭の活性化を図ることとした。(和田豊広報委員)

中央経済社『小売業のロス対策入門』発売/万防機構、学ぶ会を開催

中央経済社はこのほど米国ロスプリベンション関係者必携の書、リチャード・ヘイズ氏の『ロスプリベンションで未然に防ぐ小売業のロス対策入門』の日本語版を刊行した。訳者は近江元、阿部孔孝の両氏。近江氏は全国万引犯罪防止機構(万防機構)の理事を務めている。A5判、336ページ、定価本体3200円。
管理ミス、社内不正、万引・窃盗などの商品ロスを予防し、利益拡大に結びつける小売業のリスクマネジメントを解説した、ロス対策の教科書。
著者のヘイズ氏は、米国のフロリダ大学、英国のレスター大学で犯罪学を学び、米国の小売業でセキュリティ業務を経験後、30年以上にわたってウォルマート、ホームデポ、ロウズ、ターゲット、ベストバイ、ウォルグリーン、メイシーズなど多くの大手小売企業の店舗現場で犯罪やロス削減活動にコンサルタントとして関わってきた。また、フロリダ大学の犯罪予防リサーチチームを指揮し、犯罪やロス管理手法の研究を行っている。
本書を含む4冊の著書のほか、150回以上の雑誌寄稿に加え、研究論文も多数ある。また、17年3月に東京で開催された万引対策強化国際会議では「万引犯罪の損失をいかに予防するのか。過去・現在・共に築く明日へ」と題した基調講演を行っている。
なお、万防機構は5月~20年3月頃まで、毎月第3水曜日の午後6時半~8時に「ヘイズ博士の教科書でロスプリベンション(LP)を学ぶ会」を開催し、1章ずつ学んでいる。新日本スーパーマーケット協会の増井副会長など小売関係者、防犯機器メーカー、警備業、警察関係者、日本リテイリングセンターの渥美六雄氏がアドバイザーとして参加している。問い合わせは万防機構まで。℡03(3355)2322

街の本屋の可能性を語る/『「本を売る」という仕事』著者・長岡義幸氏が講演/東京トーハン会研修会

東京トーハン会(武田初男会長=芳進堂)は7月12日、東京・新宿区のトーハンセミナーハウスで研修会を開き、『「本を売る」という仕事書店を歩く』(潮出版社)の著者、長岡義幸氏が講演。取材で訪れた北海道から九州まで全国およそ100書店の中から印象的だった書店を紹介しながら、街の本屋の現状と今後のあり方を語った。
同書は、月刊「潮」2015年6月号から17年7月号まで26回にわたって連載した「書店を歩く」をまとめたもの。今年1月5日に刊行した。
長岡氏の講演に先立ち、書店取材の多くに同行した潮出版社・月刊「潮」編集部の堀田知己副部長は「長岡さんから、今、街の本屋が大変だという話を聞いた。『潮』は定期購読の読者が多く、街の本屋で購入していただく形をとっている。街の本屋がなくなっていくことは当社にとっても他人事ではない重大な問題。街の本屋は地域の大切なインフラ。少しでも応援できる記事を作りたいと考えた」と連載を始めたいきさつを話した。
長岡氏は、はじめに福島県小高町(現・南相馬市)出身であることなど自身のプロフィールを語り、「2011年3月11日の東日本大震災が出版業界のことを考え直す契機になり、今回の企画につながった」と説明。「海沿いの実家は原発20キロ圏内だったため避難区域に指定された。しばらくは故郷を失った喪失感があったが、長く出版界を取材してきた人間として地元の書店の写真を撮影したり被災地を取材したりしていた。人がいなくなった街に建物だけ残った書店を見て、もっとしっかりと取材し、書店が地域の中でどういう役割を果たしているのかについてもう一度考え直してみたかった」と述べ、東北や熊本の「震災」が同書の大きな柱になっていることを語った。
また、大型書店やチェーン書店ではなく、「街の本屋が地域とどう関わっているか」がもう1つの大きなテーマであるとして、地域住民とのコミュニケーションを密にしながら店作りをしている書店、震災後に創業した書店、女性経営者の書店、中小書店協業会社「NET21」、山陰で出版人を育てる取り組みを続ける「本の学校」などを取材し、「全体的に今の書店の姿を見渡せる内容にまとめた」と説明した。
取材を通じて再認識したこととして、大型書店にない街の本屋の強みは「客とリアルに会話することにある」と指摘。「その結果、地元の需要を把握し、本以外の商品にも手を広げていく書店もあって、その広がり方に面白さを感じた。書籍・雑誌の粗利益率の低さを改善するためのマルチメディア商品であり第3商材だと思うが、取材した書店は客から何を欲しいかを聞きながら新たな商品を見つけていた」として、「『棚で会話する』大型書店に対して、『リアルで会話する』ことが街の本屋の真骨頂であり、生き残るための道」と提言した。
「地域のよろず屋」として存在する書店の具体的な例として、神奈川県横浜市青葉区の昭和堂書店、広島県庄原市のウィー東城店を紹介。昭和堂書店については「ラジオ体操とともに早朝6時には開店する。ラジオ体操の前後に客が来て、会話したり買物したりする。子どもたちのためにおもちゃを置き、近所の農家から仕入れたタケノコを売ることもある。本屋には何でも置けると考え、扱い商品を広げていった」、ウィー東城店については「本を中心にあらゆるモノを扱っている。名刺や年賀状の印刷をやったり、カフェや美容室を併設したり、最近はエステも始めた。コインランドリーもある。周りの商店が次々と閉店していく中、街からなくなりつつある商売をどんどん取り入れている」と話した。
このほか、趣味性・専門性の高い出版社のフェアを積極的に行う東京都杉並区のブックス浜田山、1万円選書が全国的に注目される北海道砂川市のいわた書店、読み聞かせ会を売上に結びつける東京都練馬区の文化堂書店、読書会の開催やミニコミ誌の出版で客と濃密な関係を築いている鳥取県鳥取市の定有堂書店などの事例を紹介した。
次に福島、宮城、岩手の被災地の書店を紹介。「被災地で一番早く営業を再開したのは書店だった。書店の灯りに引き寄せられるように人が集まって来たという話をどこに行っても聞いた。客も書店を再発見したのではないか。書店の復活を喜ぶ人たちがたくさんいた」と述べた。
最後に、「昔、取材した書店で、POSデータを見ると児童書が売れていなかったので児童書売場をほとんどなくした書店があったが、そこはしばらくすると閉店してしまった。子どもが行けないような店は続かない。売れる売れないはあっても、児童書が置いてあることで客がつくということはある。結局、本にこだわって、客に本を伝えていくんだという強い意思を持った書店が生き残っている」と結んだ。

電子出版市場は12・2%増の2556億円/コミック続伸、1845億円と8割占める/インプレス総研調査

インプレスのシンクタンクであるインプレス総合研究所は、電子書籍市場の動向を調査し、調査結果を発表。調査結果の詳細を新産業調査レポート『電子書籍ビジネス調査報告書2018』にまとめ、7月30日に発売した。
これによると、17年度の電子書籍市場は前年比13・4%増の2241億円となった。また、電子雑誌市場は同4・3%増の315億円と推計され、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は同12・2%増の2556億円になった。18年度以降もゆるやかな拡大基調をたどり、22年度には17年度の1・4倍の3500億円規模になると推測している。
17年度の電子書籍市場規模のうち、コミックは同14・1%増の1845億円で、市場シェア82・3%。文字もの等(文芸、実用書、写真集等)は同10・3%増の396億円で市場シェア17・7%。電子書籍市場にコミックが占める比率は依然大きい。
モバイルユーザーに対して電子書籍の利用率を調査したところ、有料の電子書籍利用率は17・7%と昨年から横ばい。一方、無料の電子書籍のみを利用しているユーザーは23・3%と同0・5ポイント増加した。
有料電子書籍の利用率が高いのは男性30代の22・9%、女性30代の22・6%、男性20代の21・7%、男性40代の20・2%で、男女とも30代が最も高い。最も低いのは女性60代以上の7・9%、次いで女性10代の9・6%で、高齢者ほどデジタルコンテンツ全般に詳しくないこと、自由に使えるお金が限られている若年層での利用率が低いことが分かった。
無料マンガアプリの利用率は同0・8ポイント増の28・4%で、広告市場規模は100億円になった。18年度は120億円程度になると予測している。無料マンガアプリの利用頻度は「1日に1回以上」が36・1%、「週に1回以上」利用するユーザーは合計で69・1%と、高い結果を示した。

トーハンが筆頭株主に/山洋堂HD

三洋堂ホールディングスは8月14日、トーハンと資本業務提携を行うことと、トーハンに対する第三者割当増資による新株式発行を行うことを決議した。これによりトーハンが三洋堂HDの筆頭株主となり、次回定時株主総会でトーハンは取締役2名を派遣する。
資本提携は、第三者割当増資によりトーハンに三洋堂HDの普通株式140万株を割り当てるとともに、トーハンは10万株を既存株主から取得する。トーハンの所有議決権割合は19・69%から36・50%となり、筆頭株主となる。
三洋堂HDは13億7660万円(手取額)を資金調達し、このうち12億4100万円をフィットネス事業導入、1億3500万円を物販セルフレジ開発及び導入の費用として充当する。
三洋堂HDは市場縮小が続く雑誌やCD・DVDの販売・レンタルに依存しない新たな収益構造を確立するため、新規事業として15年にコインランドリー事業、16年に教育事業、17年にフィットネス事業に参入。特にフィットネス事業は好調な業績が続き、中長期的に店舗の収益性を支える事業と判断。また、抜本的な店舗コストの見直しでは、昨年度にレンタル専用セルフレジを自社開発し、8店舗に導入。今後は物販も同時対応可能なセルフレジを開発し、各店舗への導入を検討している。
こうした中、フィットネス事業導入及び物販セルフレジ開発・導入を実現させるための設備投資資金の調達方法を検討。大株主で人的関係も深いトーハンと意見交換を進め、第三者割当増資にとどまらずトーハンおよび同社グループ書店との緊密な関係を築くことが、店舗数などのスケールメリットを生かした効果を期待できることから、今後の成長戦略を描く上で有効と判断した。

出版梓会設立70周年を祝う/感謝の会に業界関係者200名参加

出版梓会は7月27日、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で「業界・会員社懇親の集い設立70周年感謝の会」を開催し、書店、取次、業界団体、会員社など約200名が参加した。
はじめに今村正樹理事長(偕成社)があいさつし、同会の名前の由来について「諸説あるが、伝統的な出版の版木としての『梓』だと思う」と説明。「1948年の戦後の混乱期に、書協よりも一足早く、出版業界を考える団体として出発した。戦後の厳しい時期を乗り切ろうと作られた会の精神を受け継いで、現在の厳しい時代に頑張ってやっていきたい」と述べた。
来賓を代表してあいさつしたトーハン・川上浩明副社長は「書店に客を呼び込むには良書の出版が大事だが、その先陣を切っているのが出版梓会の会員各社。現在、出版界は終戦直後と同じぐらい大変な状況にある。この難局を出版梓会や書店と手を取り合って乗り切っていきたい」と述べ、設立70周年を祝った。
日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長(小学館)は「将来の高齢化社会で図書館との連携は重要。『図書館界と出版界』を大きなテーマに、今年は皆で考えていきたい」とあいさつし、乾杯した。

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・斎藤一郎

松原英多著『人の名前が出てこなくなったときに読む本』(KKロングセラーズ1000円)は度忘れや老化もあるが実は体の大警告だと、医学博士が警鐘を鳴らす。
名前記憶の低下は何より認知症の注意信号なのである。日本人は認知症に対して無警戒だし、改善の努力をしない。名前が出てこなくなると、社会性をも失い、孤独感がが増して苛々しその疲労が全脳に広がる悪循環。
そこでまず脳細胞を活性化させる。深呼吸は脳の酸欠を防ぐし、軽度の運動は毛細血管を増やしてくれる。バランスの良い食事も大切なのだが、緑茶の多飲も効果が高く緑茶を全く飲まない人に比べ、週に1~6回飲む人とでは認知機能の低下に著しい差のあることがわかってきている。
認知症を防ぐためのアドバイスたっぷりの本。
蓮村誠著『図解もの忘れの9割は食事で治せる』(PHP研究所680円)は、インドの伝統的医学であるアーユルベーダを基本に、医学博士が説く脳を若返らすための食べ物と食べ方である。夕食の時間が遅く、夕食後に甘いものを食べ続けると、未消化物が増え毒素化し、細い脳の血管を詰まらせてしまう。
黄金の特効薬は蜂蜜でそのまま舐めるのが効果的。食を考える1冊。

読進協「敬老の日読書のすすめ」推薦図書24点

読書推進運動協議会(野間省伸会長)は2018年「敬老の日読書のすすめ」のリーフレットを作成し、全国の公共図書館や書店に配布した。各都道府県の読進協から寄せられた「敬老の日(高齢者)にすすめる本」の推薦書目をもとに、読進協事業委員会で選定したもの。推薦図書は以下の24点。
▽『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子、河出書房新社▽『銀河鉄道の父』門井慶喜、講談社▽『読むパンダ』黒柳徹子(選)、日本ペンクラブ(編)、白水社▽『鬼才伝説』加藤一二三、中央公論新社▽『いずれの日にか国に帰らん』安野光雅、山川出版社▽『おかげさまで、注文の多い笹餅屋です』桑田ミサオ、小学館▽『すごいトシヨリBOOK』池内紀、毎日新聞出版▽『やばい老人になろう』さだまさし、PHP研究所▽『恨みっこなしの老後』橋田壽賀子、新潮社▽『若者がうらやましがる老人になってやろう』帯津良一、海竜社▽『科学者が解く「老人」のウソ』武田邦彦、産経新聞出版▽『はじめての八十歳』山藤章二、岩波書店▽『最後まで、あるがまま行く』日野原重明、朝日新聞出版▽『百歳人生を生きるヒント』五木寛之、日本経済新聞出版社▽『おちゃめに100歳!寂聴さん』瀬尾まなほ、光文社▽『相沢英之と司葉子人生100歳「一日生涯」』相沢英之、双葉社▽『きのう、きょう、あした。』つばた英子、つばたしゅういち、主婦と生活社▽『桃紅一〇五歳好きなものと生きる』篠田桃紅、世界文化社▽『オンナの奥義』阿川佐和子、大石静、文藝春秋▽『ほどほど快適生活百科』群ようこ、集英社▽『わたしの主人公はわたし』細川貂々、平凡社▽『bonとponふたりの暮らし』bonpon、主婦の友社▽『定年が楽しみになる!オヤジの地域デビュー』清水孝幸(著)、佐藤正明(絵)、東京新聞▽『夫の定年「人生の長い午後」を夫婦でどう生きる?』グループわいふ、佐藤ゆかり、ミネルヴァ書房