全国書店新聞
             

平成30年6月15日号

トーハン新社長に近藤敏貴氏/「街の書店やっていける体制つくることが私の使命」

トーハンは6月5日、近藤敏貴副社長を社長とする人事を発表した。5月31日開催の決算取締役会で内定し、6月28日開催予定の第71回定時株主総会を経て就任する。近藤氏は平成22年~24年に社長を務めており、6年ぶりの復帰となる。藤井武彦社長は退任して顧問に就く。
川上浩明専務は代表権を持つ副社長、田仲幹弘専務は副社長、小野晴輝常務と松本俊之常務は専務、高見真一取締役と大西良文取締役は常務に昇任する。青木亮二情報システム部長、山下康治書籍部長兼外販営業部長、小寺勉経理部長は執行役員に新任する。中村勉上席執行役員は退任する。
本社で開いた記者会見の席上、藤井社長は「社長に就任してから6年間、意識改革を含めた企業の再構築に取り組み、引き継げる体制が整ったと判断し、近藤副社長に後事を託すことを決めた」と述べ、近藤氏について「6年間、私と苦楽を共にし、辛い思いもしながら新しい仕事に取り組んできた。『社長復帰』と報道されているが、私の意識では『ニュー近藤』。6年前の彼と今の彼は大きく違う。経験を積み、トーハンの社長に相応しい存在になった」と評価した。
そして、常勤役員15名の平均年齢が54・8歳となる新体制について「清新にして気鋭の布陣」と表現。「困難な局面だが、若い活力で業界の構造変化に対応し、新しい道を切り開いてもらいたい」と期待を寄せ、「今後、経営には一切口を出さない」と話した。
近藤氏は「今回の役員人事は挙国一致で難局を乗り越えていくための体制と理解していただきたい。これまで営業畑に長くいた。物流部門の改革を成し遂げ、街の書店、地方の書店がやっていける体制を作ることが私の使命だと思っている」と決意を語った。
〈近藤敏貴氏プロフィール〉
昭和36年5月12日生まれ、57歳。東京都出身。同61年明治大学文学部卒業、東京出版販売(現・トーハン)入社。平成18年取締役近畿営業部長、同19年常務取締役近畿営業部長、同20年常務取締役営業本部副本部長、同21年専務取締役営業企画部長、仕入・渉外・広報部門担当、同22年代表取締役社長、同24年代表取締役副社長営業統括本部長

トーハン、減収減益の決算/単体売上高7%減、純利益40%減/輸送運賃値上げ分約6億円など重く

トーハンが6月5日発表した第71期(平成29年4月1日~同30年3月31日)単体決算は、当期純利益が前年比40・3%減の18億1800万円だった。書籍は前年割れながらも比較的健闘し、MM商品は前年を上回ったが、雑誌とコミックの大幅な落ち込みを補うことはできなかった。
売上高は同7・4%減の4274億6400万円。内訳は、書籍が同3・9%減の1740億5800万円、雑誌が同11・9%減の1437億1400万円、コミックが同15・6%減の439億7600万円、MM商品が同0・5%増の657億1400万円。雑誌とコミックは2ケタ減とマイナス幅が大きい。
返品率は同1・1ポイント増の40・9%。内訳は、書籍が同0・2ポイント減の41・2%、雑誌が同2・5ポイント増の49・5%、コミックが同3・1ポイント増の33・2%、MM商品が同1・2ポイント増の14・8%だった。
売上総利益は同7・8%減の462億7700万円。販売費及び一般管理費は同5・4%減の412億4400万円で、売上総利益の伸長率を2・4ポイント上回った。決算における貸倒引当金の処理で戻入があったが、一方で輸送運賃値上げ分約6億円や最低賃金上昇による業務委託料の増加が影響し、営業利益は同23・2%減の50億3200万円、経常利益は同28・7%減の30億1000万円となった。特別利益に遊休資産売却による固定資産売却益及び投資有価証券売却益で3億2100万円、特別損失に投資有価証券評価損や固定資産除去損等で5億7400万円を計上し、税引前当期純利益は同37・9%減の27億5700万円、当期純利益は同40・3%減の18億1800万円となり、減収減益の決算となった。
連結子会社16社を含む連結決算は、売上高が同6・8%減の4437億5100万円、営業利益は同29・4%減の44億5200万円、経常利益は同42・9%減の24億1300万円、税金等調整前当期純利益は同55・3%減の19億1900万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同73・3%減の7億5800万円で、単体と同様に減収減益の決算となった。

日販連結決算、グループ会社貢献で増益確保/取次事業、創業以来初の営業赤字に/雑誌・コミックの落ち込み、運賃値上げが影響

日販は5月30日、第70期(17年4月1日~18年3月31日)の決算を発表。日販グループ(連結子会社28社)の連結売上高は、前年比7・3%減の5790億9400万円となった。雑誌やコミックスの落ち込みに加え、運賃の単価値上げや最低賃金上昇による荷造費増加などの影響で、出版流通業(取次事業)が創業以来初の営業赤字に。一方、小売業は本部経費の圧縮で大幅な経費削減を実現し、営業黒字に転換した。これにより、営業利益は同7・2%増の23億6600万円、経常利益は同5・9%増の25億5000万円。親会社株主に帰属する当期純利益は同75・1%増の7億2100万円と減収増益の決算になった。
日販単体の売上高は同8・0%減の4623億5400万円、営業利益は同69・7%減の5億100万円、経常利益は同54・5%減の10億1600万円、当期純利益は同24・9%増の8億6900万円。減益の要因は、本業である出版流通業の損益が営業赤字へ転じたことによるもので、不動産事業は堅調に推移し、単体の損益を支えた。
商品別の売上高は、書籍が4・9%減、雑誌が10・0%減、コミックスが11・8%減、開発品が12・8%減。書籍部門の赤字構造が続いている中で、特に利益の大部分を占める雑誌部門の売上減が損益に大きく影響した。販売ルート別では、CVSルートは1軒当たりの送品冊数が減少、輸配送効率の悪化が顕著となり、同ルートの赤字拡大が大きな経営課題となっている。書店ルートも、返品率の下げ止まり、雑誌やコミックスの売上減による粗利益の喪失、運賃・荷造費の悪化により大幅減益となった。
単体の商品別返品率は、書籍が同0・9ポイント増の31・3%、雑誌が同2・2ポイント増の45・5%、コミックスが同4・0ポイント増の33・0%、開発品が同3・4ポイント増の45・0%、合計では同1・9ポイント増の37・6%。
連結の事業別業績をみると、日販と㈱MPDが中心となる出版流通業の売上高は5462億円(同7・7%減)、経常利益14億円(同49・8%減)、13億円の大幅減益となった。㈱MPDは、文具・雑貨は拡大したが、レンタル市場の落ち込みが響き売上高が大幅に減少した。また、今年度清算結了した㈱日販図書館サービスと㈱OKCは、前年度に損失を計上しており、前年差異では増益要因となった。
小売業は、売上高635億円(同5・4%減)、経常利益1億円、9億円の増益となった。17年10月にグループ書店を統括するNICリテールズ㈱を設け、グループ書店の収益力強化と本部機能の効率化に取り組んだ結果、営業赤字から黒字に転換した。
不動産事業は、売上高24億円(同6・0%増)、経常利益10億円、2億3700万円の増益。その他事業は、売上高55億円(同6・5%減)、経常利益は6億円、2億円の増益。
同日行われた記者会見では、荷造運送費の動向について、輸配送効率の大幅な悪化が運送会社の経営にも大きな影響を及ぼしており、昨年1年間で取引輸送会社からの返上や値上げの申し入れは、約半数の16社にのぼると説明。また、出版社に対する取引条件の改定については、書籍と雑誌それぞれ100社ずつに交渉を行っており、上半期が終了した段階で状況を説明するとした。

粗利30%以上の確保めざす/「全員参加型の増売運動」推進/東京組合総代会

東京都書店商業組合は5月22日、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモントで第42回通常総代会を開き、総代44名(委任状含む)が出席。舩坂良雄理事長(大盛堂書店)は、書店経営を存続させるためには「粗利益率30%以上の確保が必要」として、出版社や取次の実務者と近く協議を始めると報告。また、重要施策として「全員参加型の増売運動」「エリア活動の充実」などを掲げた。
総代会は矢幡秀治組織委員長(真光書店)の司会、柴﨑繁副理事長(王様書房)の開会の辞で始まり、舩坂理事長があいさつ。
舩坂理事長は「インターネットやスマートフォンの普及で書籍・雑誌の売上が大きく落ち込み、経営者の高齢化と後継者難で全国の書店数は約1万2000店まで減少した。出版物の販売金額は1996年の2兆6500億円から昨年は1兆3700億円となり、雑誌は半減以下まで落ち込んだ。日本には再販制度があり、委託制度が基本となっている。それにより販売リスクが少なく済む一方、粗利益率は他業種と比べて低い。かつては書籍・雑誌が売れて、支払い率も70%でよかったが、現在は100%。家賃や人件費も上昇。出版市場は縮小し、従来のビジネスモデルが成立しなくなっている」と厳しい現状を指摘した。
これを打開するための施策について、「日書連は全国小売書店経営実態調査の結果をもとに、粗利益率30%以上を確保するにはどうすればいいか、出版社や取次の実務者と近く協議を開始する」と説明。「早く方向性を示したい。全国の書店がこれならばやっていけると思ってくれれば大きな前進」と述べ、「今後も書店が経営できるよう頑張る」と意気込みを示した。
議長に武田初男氏(芳進堂)を選任して議案審議を行い、すべての議案を原案通り承認可決。平成29年度事業報告は各副理事長・委員長が担当委員会の取り組みを説明した。
指導・調査委員会では、小林洋副理事長(烏山書房)が休眠状態だった東京組合ホームページをリニューアルし、6月以降にスタートすると発表した。また、平成29年度書店経営研修会は丸善ジュンク堂書店・工藤恭孝会長を講師に迎えて「丸善ジュンク堂書店の化石店舗対策」をテーマに開催したと報告。万引問題では「第4回万引防止シンポジウム」「第13回東京万引き防止官民合同会議」の模様を報告した。
組織委員会からは、矢幡委員長が「各支部の支部員が減少し、支部単位での活動が困難になりつつある現状を踏まえ、エリアでの活動をさらに広げていく必要がある」と提案した。
事業・増売委員会では、井之上健浩委員長(久美堂)が「読者謝恩図書カード」を出版社等17社の協賛で1万7000枚販売したこと、出版社からの依頼による企画商品の増売協力を行ったことを報告した。
再販・発売日・取引改善委員会の報告で、柴﨑副理事長は雑誌付録問題について「日書連も東京組合も一貫して完成品での送品を目指している」と述べた。また、デジタル委員会では、総合電子書籍サービス「BOOKSMART」事業の継続が厳しくなっていることを報告した。
平成30年度事業計画は小林副理事長が説明。重点施策として「休業店を除いた全員参加型の増売運動」の新しい取り組みをあげた。東京組合ホームページのリニューアルでは、同青年部ホームページとリンクすることで、読者を書店に誘導するシステムの構築を目指す方針を示した。また、現在の19支部体制の維持が困難になる中、支部間の垣根、利害の壁を乗り越えてエリア活動を進める重要性を指摘した。
議事終了後、支部功労者表彰で目黒・世田谷支部の越石武史氏(世田谷区・甲文堂書店)を表彰した。

新社長に平林彰氏/九州雑誌センター

九州雑誌センターは5月17日の定時株主総会と取締役会で、日販・平林彰社長を代表取締役とする以下の役員体制を決定した。
代表取締役平林彰
取締役藤井武彦
同大竹深夫
同舩坂良雄
同中山寿賀雄
同大嶋俊明
同石橋武
監査役髙田聡
同安永寛

「相談事例集」の活用呼びかけ/公正競争規約の啓蒙・普及で/小売公取協通常総会

出版物小売業公正取引協議会(小売公取協、舩坂良雄会長)は5月17日、東京・千代田区の書店会館で平成30年度通常総会を開催し、来賓として消費者庁表示対策課・猪又健夫課長補佐、同・荻野舞規約第一係長が出席した。舩坂会長は「出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」(規約)への理解を深めるため、今年4月に刊行した「相談(Q&A)事例集」を活用するよう呼びかけた。
理事34名(委任状含む)が出席した総会は、本間守世理事の司会で進行し、鈴木喜重副会長の開会の辞に続いて、猪又課長補佐があいさつ。平成29年度の景品表示法(景表法)の運用状況について、違反を公表する措置命令が50件と同庁設立以来最高件数になったと報告し、「今後も厳正運用に努める」と述べた。
続いて、舩坂会長を議長に選任。舩坂会長は審議に先立ちあいさつし、「出版物の景品付き販売は多種多様な形で実施されているが、依然として景品と値引きの判断を混同しているケースが見受けられる。こうした中、協議会では規約への理解を深めてもらおうと、昨年は『解説・運用の手引き』の改訂版を作成。今年4月は『相談(Q&A)事例集』を発行した。平成21年4月から平成29年10月まで8年半に事務局に寄せられた200事例を項目別に分類し読みやすく再構成した内容で、必要と思われる部分を解説した」と述べ、活用を呼びかけた。
また、出版物の売上が低迷する中、消費者の購買意欲を喚起しようと景品付き販売が増加している状況に触れ、「次々と新しい企画が考案されているが、粗利益率が低く、平均定価の低い出版物を扱う書店にとって、景品の原資を捻出することは容易ではない。出版物は内容で勝負する商品。景品付き販売はなじみにくい」との考えを示した。
このあと議案審議を行い、平成29年度事業報告、収支決算報告、平成30年度事業計画案、収支予算案を原案通り承認した。
事業報告では、「相談(Q&A)事例集」を刊行したことを報告。規約の運用については、公取協に寄せられた相談事例のうち代表事例3件を説明し、回答内容を解説した。
平成30年度事業計画については、①出版物小売業の「公正競争規約」に対する理解と検討。「規約」を更に普及し、正しく運用してもらうための活動(研修会等)の開催、②景品表示法をはじめ、関係法令の研究並びに規約違反の防止、③一般消費者、消費者団体及び出版業界団体との連絡、④関係官庁との連絡、⑤広報活動、⑥出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約の相談事例集の有効活用――の活動方針を決定した。

3月期販売額8・0%減/雑誌は2ヵ月連続の大幅減/出版科研調べ

出版科学研究所調べの3月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比8・0%減となった。
部門別では、書籍が同3・2%減、雑誌が同15・0%減。雑誌は2ヵ月連続で大幅減となった。書籍はヒット作がコンスタントに出ていることと返品抑制が進んだことで、雑誌よりマイナス幅が小さい。
雑誌の内訳は月刊誌が同15・9%減、週刊誌が同10・2%減。月刊誌は不定期誌(コミックス、ムック)の送品が大幅に減少した等のため、当月は大きく落ち込んだ。
書店店頭の売上げは、書籍が同約1%減。一般・教養書ジャンルは『漫画君たちはどう生きるか』が200万部を突破し、約17%増と大きく伸長した。雑誌は、定期誌が約10%減、ムックが約11%減、コミックスが約6%減と厳しい状況が続いている。

図書カード「ネットギフト」の仕様変更/受取りの手間なくし使いやすく/日本図書普及

日本図書普及は5月23日、1月から発行を開始したインターネット配布型の図書カード「ネットギフト」の仕様を変更したと発表。ネットギフトを受け取る際の情報入力の手間を完全に省き、簡単に受け取ることができる方式を採用。同時に、当初設けられていた受取期限をなくした。
これまでのネットギフトは「お受け取りURL」と「認証コード」の2通のメールを送信し、URLアクセス後にメールアドレスと認証コードを入力していた。変更後は1通のメールだけとなり、URLにアクセスするだけでネットギフトが表示。受け取りの際の手間がなくなった。
また、これまでは90日の表示期限があり、期限内にPDFをダウンロードするなどしてユーザー自身で別途保存する必要があった。変更後は表示したネットギフトのページをブックマークしておけば有効期限までの間はいつでもアクセスできるようになり、うっかり失効する心配がほとんどなくなった。
さらに、ユーザーがネットギフトを受け取った後に使用を忘れることのないよう、ネットギフトのURLにアクセスしていないユーザーに対し、1ヵ月後と3ヵ月後に再度メールを送信するサービスを開始した。
ネットギフトはメールで送ることができる図書カード。ユーザーが店頭のQRコードリーダーにスマートフォンをかざして利用する。企業・団体からの発注を受け、日本図書普及がユーザーへ直接送信する。送料がかからず、封入費や製作費などをコストダウンできる。額面金額を100円から1万円まで1円刻みで設定することができ、PRしたいキャンペーンや商品を印象づける任意の数字を使った金額設定が可能。表示画面や出力用PDFに無料のPR欄が付き、ユーザーにメッセージ広告を送ることができる。

「春夏秋冬本屋です」/「まだまだ」/福井・じっぷじっぷ代表取締役社長・清水祥三

「6月いっぱいで店を閉めることにしたよ」30年来の仲の良い同業者からの電話。衝撃だった。そして、頭に浮かんだのは「先を越された…」。
6月4日に放映された、追悼番組ではないというテロップで始まったNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」は、最後まで絵本作家として生きたかこさとしさんの、一人のプロフェッショナルとしての記録だった。絵本を子どもたちに贈りたいという熱意と創作意欲。そこには妥協もない、甘えもない、命を削るような絵本作りの姿勢があった。
40年近く前に、かこさんとご一緒したことがあった。2日間の同行だった。緊張している私に、たくさんのお話をしてくださった。福井県武生町(現・越前市)での幼年時代のこと、科学のこと、そして絵本の話など。その当時すでに緑内障で、片方が失明寸前だけれども、作りたい絵本のアイデアがたくさんありすぎて、時間がないのですとおっしゃっていた。
でもその後、毎年新しい絵本が何冊も出版されることに驚かされながらも、店頭のコーナーに並べながらとてもうれしかった。
やがて古希を迎える私は、ものを描いたり作ったりはできないけれど、書店人として子どもたちのために本を選びたい。まだまだ。休むのはそれからか…

消費税軽減税率制度のポイント(下)/出版物を適用対象とする判断基準/財務省主税局税制第二課課長補佐・加藤博之氏

※本稿は、平成30年4月19日に開催された日本書店商業組合連合会における財務省主税局・加藤博之課長補佐の「軽減税率制度説明会」の内容をもとに作成したもの(消費税「軽減税率制度」の基本的な内容は平成30年5月15日号参照)。
1軽減税率の適用対象品目の考え方について
軽減税率の適用対象品目については、制度の趣旨(消費税率10%への引上げに伴う低所得者への配慮)を踏まえ、日常生活の中での消費等の状況、消費税の逆進性(消費税は、消費水準に対応した負担となるが、収入に占める消費税の負担割合は低所得者ほど高いとされている)の緩和、合理的かつ明確な線引き、社会保障財源である消費税収への影響、等の諸点を総合勘案し、「(外食・酒類を除く)飲食料品の譲渡」及び「一定の要件を満たす新聞」とされたところである。
例えば、他の日用品について軽減税率の適用対象とすることについては、特定の物品やサービスのみを対象とすると代替品との間で歪みが生じうること、さらに、そうした歪みを回避しようとすれば、際限なく対象が広がり、社会保障財源となっている消費税収を減少させるおそれがあること、等の問題があることを十分考慮して慎重に考える必要がある。
2「書籍・雑誌」を軽減税率の適用対象とすることについて
(1)現行制度における考え方等について
現状、「書籍・雑誌」については、対象範囲の外縁の定義付けが困難であること、有害図書を適切に排除する仕組みが存在しないこと、その購入に係る消費税負担は逆進的とはいえないこと、などの事情を総合勘案し、軽減税率の適用対象品目とはされていない。
他方、平成28年度与党税制改正大綱において「その日常生活における意義、有害図書排除の仕組みの構築状況等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討する」とされており、引き続き、検討が進められていくものと考えられる。
(2)軽減税率の適用対象品目の「線引き」について
一般論として、軽減税率の適用対象品目については、租税法律主義の観点から、法令において明確に定義する必要があると考えられる。税率や特例措置については、その適用要件を法令にて明確に定義等しつつ、個別品目への適用にあたっては、個別具体の取引内容やサービスの態様を踏まえ、法令に沿って、一義的には納税義務者が判断することとなる。
そのような事情を前提に考えれば、「有害図書」についても、例えば税法以外の法令において明確に定義等されることが求められることとなり、そうした法令の整備状況等を踏まえ、軽減税率の適用対象とするか否かについて判断されていく事柄ではないかと考えられる。

書店組合総会スケジュール

◆佐賀県書店商業組合「第36回通常総会」
6月23日(土)午後3時、佐賀市の佐賀ワシントンホテルプラザで開催。