全国書店新聞
             

平成20年3月21日号

言葉の力で未来を拓く/文字・活字文化振興でシンポ

「活字離れ」が言われる中で、携帯電話やブログなど、新しいメディアを使った文字によるコミュニケーションが増加している。文字・活字文化推進機構と日本経済新聞社が主催するシンポジウム「言葉の力で未来を拓く」が3月13日午後1時半から大手町の日経ホールで開催され、IT社会が進展する中での文字・活字文化振興の方向性が話し合われた。
シンポジウムは出版文化産業振興財団・肥田美代子理事長の司会で進行。主催者を代表して日本経済新聞社・杉田亮毅社長が「言葉の力を高めることは国の百年の計と言える。我々はどう取り組むべきか、識者の意見を拝聴して考えていきたい」とあいさつした。
はじめに文字・活字文化推進機構の福原義春会長(資生堂名誉会長)が「創造的な国づくり―言葉の力で日本の未来を拓く」を講演した。福原会長は経済協力開発機構の調査で明らかになった日本の子どもの学力低下について触れ、「子どもの意欲が低下し、将来に自信が持てなくなっている。問題の背景には読書習慣の減少がある。国語は文化伝承の媒体であり、日本語の高度な表現や語彙の豊かさが日本人の感受性を育ててきた。機構の活動は、日本の将来のために文字・活字文化をもう一度力強いものにしようとするものだ」と述べた。
続いて、齋藤孝・明治大学教授が「IT社会と文字・活字文化」をテーマに講演した。齋藤氏は「小学生の国語教科書が貧弱なものになっている。名作の言葉が持つ威力は抜群で、小さいときにどんどん教えるべきだ。現代の子どもの言語能力は低くはないが、話す内容が乏しくなっている。我々は文字で思考しており、文字を使わなければ思考力は低下する。読むことはトレーニングとして重要だ。情報をセレクトし、再構築して提示するという知識の積極的利用は、紙媒体が圧倒的に有利。大人が責任を持って復興させることが必要だ」と述べた。
この後、パネルディスカッション「IT社会における文字・活字メディアの役割とその展望」を開催。パネリストとして、月尾嘉男・東京大学名誉教授、作家・石田衣良氏、松田哲夫・筑摩書房専務取締役、足立則夫・日本経済新聞社特別編集委員が出席した。
月尾氏は「人間は文字の発明により空間と時間を超えて情報を伝えることができるようになった。日本語をおろそかにすれば、蓄積した文化を世界や後世にきちんと伝えられない。人間の持つ物事を抽象化できる能力を大事にするには、文字という表現方法が重要。文化の多様性を維持し、人間本来の能力を磨くためにも文字文化をなんとしても維持すべきだ」と提言。
石田氏は「言葉を楽しむ気持ちは、人間の基本的な欲求としてあるはず。ケータイ小説や、佐伯泰英さんの時代小説がよく売れたのを見ると、新しい読者の掘り起こしを、もう少し作り手の側が手を広げてみる必要があるのではないか」とと指摘した。
松田氏は「ケータイ小説がベストセラーになったのは、本への期待がまだあるということ。ネットの発展で文章の読み書きが多くなり、若い人がこれほど文字を消費している時代はない。編集者として、良いと思うものを届けたいというメッセージをもっと出してもいいと思う」と述べた。
足立氏は「新聞の役割である役立つ情報の提供はIT時代になっても変わらない。大量の情報が駆け巡る中、生き残るためには〝より深い内容〟が求められる。掘り下げて正しく伝えることが大事で、それを可能にする取材体制が必要だ」と分析した。

特賞はタイ5日間の旅

23回目を迎える「世界本の日サン・ジョルディの日」キャンペーン。連動企画として、今年も「春の書店くじ」を4月20日から30日まで実施する。今回は特賞の海外旅行に「タイ5日間の旅ペアご招待」60本を用意。組合経由でくじを申込んだ書店の中から抽選で3店3名を無料随行員とする特典を設けている。

うみふみ書店日記/海文堂書店・平野義昌

「『関西**』という本ありますか?」と上品な年配男性。私の担当する本です。9千円近くする本です。(ありまんがな、よう尋ねてくれなはった)と心の中はニヤニヤ・揉み手、見た目は冷静、あって当然のような顔して棚までご案内いたします。
「はぁ、あるんですなあ。顔見知りの古本屋のオヤジにきいたら、並んでる言うてたさかい。私、著者です」
気ぃ抜けました。
「売れてますか?こんな本、あんまり売れませんやろ」
1冊買っていただきました。
「へぇ、売れましたか」
そんな不思議そうにおっしゃらんでも。
お客さんでないことには勿論落胆いたしましたが、著者ならそれなりに「もうしばらく置いてください」とか「宣伝しますからよろしく」とか一言欲しかったなあ、という不完全燃焼の日でした(ああ、9千円)。
イベントの話。うちの店長はウラ稼業で「古本一代」と名乗っております。最初彼女の名前かと思っておりましたら、「ふるほんいちだい」という屋号でした。「新刊より古本がエエ」と公言して憚らない不届き者です。彼とその野獣系古書業界人脈により、ゴールデンウイークぶち抜きでギャラリースペースに豪華古本市が開場いたします。一昨年のプロ・アマ合同1日限定「三箱古本市」が大好評でした。満を持しての大企画、詳細は月末更新のHPをご覧ください。この告知のため月刊PR紙「海会(カイエ)」からレギュラー執筆陣が追い出されるという乱暴狼藉です。誰も待っていないのかもしれませんが、普段は締切守れとうるさいのに、わがまま勝手なことです。書き手の不祥事みたいで悔しいのでHP版にはこってり嫌味を書いてやります。自己顕示欲丸出しです。
そのHPのあちこちに「Hさん」とか「H野」と表記されている人物がおります。言うに事欠いて「H師匠」とは言語道断、身も蓋もない表現です。私なりに推察するに、私のことらしいです。ご覧になった方には「海文堂にスケベのおっさんがおるのか」と顰蹙ものです。家族にも見せられん。「H氏」だと詩人みたいだし(誰もそうは思わんでしょうが)、普通に名前にしてもらいたい。そうかと思えば「仏のH野」というのもあります。お陀仏したみたいです。理由は「怒鳴らない」から。「何かい、海文堂には怒鳴る人間が多いのかい?それとも君は怒鳴られるようなことを何回もやらかしているのかい?」。私ばかり出てくると僻む人もいます。均等に扱ってあげましょう。ひょっとして、イジられてるだけ?

青少年健全育成法議員立法の動き/出倫協

懲役又は罰金の罰則規定を盛り込んだ「青少年の健全な育成を図るための図書類の販売等の規制に関する法律案」(仮称)を今通常国会に議員立法で提出し、成立を目指す動きがある。3月18日に開かれた出版倫理協議会で、同法案の内容について報告があった。
同法案骨子案は自民党青少年特別委員会の高市早苗委員長が作成し、昨年12月11日の同委員会で了承されたもの。骨子案では、内閣府に「青少年健全育成推進委員会」(仮称)を設置し、現在、各都道府県が行っている不健全指定図書、有害指定図書指定を一括して行うようにする。委員は出版、新聞、テレビ、行政、有識者で構成する。規制の対象となるのは①性的感情を刺激するもの②残虐性を助長するもの③自殺または犯罪を誘発するもの④心身の健康を害する行為を誘発するもの。該当する書籍、雑誌、DVDなどの青少年への販売禁止や一般図書との分別陳列、包装を販売業者に義務付けている。また、通信販売についても配達の際に指定図書類であることを表示することと、購入者の年齢確認を義務付けている。違反者には6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される。
出版業界からは、青少年の健全な育成を阻害する性表現についての定義が不明確、膨大な雑誌が指定される可能性がある、政府から指定された雑誌はコンビニで販売されなくなり雑誌および出版社の存亡に係わる、定着した自主規制が崩壊するなどの問題点を指摘する声が出ている。

17組合に24名の女性役員/日書連書店経営健全化委が調査

日書連書店経営健全化委員会(中山寿賀雄委員長)は全国47都道府県組合の役員構成状況を調査し、日書連2月定例理事会で調査結果を発表した。
この調査は各組合の今年2月現在の役員名簿を収集し、役員総数、代表理事数等を調べたもの。今回は人材の活用状況を知るため、特に女性役員について各組合の登用状況を調べた。
全国各組合の女性役員総数は24名で、17組合が女性を登用している。大阪が最も多く4名で、青森、群馬、東京、兵庫は各2名、北海道、秋田、宮城、茨城、埼玉、愛知、長野、和歌山、鳥取、山口、香川、長崎は各1名だった。
〔各組合女性役員〕カッコ内は書店名、役職名
▽北海道=浪花真理(なにわ書房、理事)
▽青森=田中麗子(木村書店、理事)、古山佳枝(好文堂書店、理事)
▽秋田=嶋田まさ(一長堂書店、理事)
▽宮城=守能房子(あおい書店、理事)
▽茨城=茂木芳子(はまや、理事)
▽群馬=大類房子(文開堂、理事)、石井恵美子(石井書店、理事)
▽埼玉=新井洋子(Meek、理事)
▽東京=丸野八重子(厳翠堂書店、理事)、加藤美子(ブックスタマ、理事)
▽愛知=片桐栄子(磨里書房、理事)
▽長野=大木貞子(大木書店、理事)
▽大阪=高松美佐子(高松書店、理事)、二村知子(隆祥館書店、理事)、青木久枝(青木書店、理事)、松田和子(松田書店、理事)
▽和歌山=増元孝子(赤善書店、理事)
▽兵庫=大橋洋子(流水書房、理事)、小林由美子(小林書店、理事)
▽鳥取=横山千代子(横山書店、理事)
▽山口=福嶋善子(福嶋書店、専務理事)
▽香川=宮脇富子(宮脇書店、代表理事・理事長)
▽長崎=吉田裕見子(紅屋書店、理事)

第15期98名が修了/JPIC読書アドバイザー養成講座

出版文化産業振興財団(JPIC)が主催する第15期読書アドバイザー養成講座の全課程が修了。3月8日、東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で修了式が開催され、今回は98名のJPIC読書アドバイザーが誕生した。
第15期は平成5年の開講以来、初のカリキュラム改定を実施。新カリキュラムでは読書や出版文化を取り巻く環境の急激な変化を反映させるため、改定作業の監修に書評家・ライターの永江朗氏を迎え、テキスト執筆・講師陣には各分野で活躍する第一人者を招いた。また、読書家として知られる俳優の児玉清氏が校長に就任し、講座の充実に一役買った。
修了式に先立って行われた修了記念講演では、児玉校長が「自らが良き読書人として」を講演。読書の魅力や自身の読者体験について語った。
修了式では主催者を代表してJPICの肥田美代子理事長があいさつ。「何十年も前から読書離れ、活字離れは深刻と言われ続けている。読書によって言語力を育てるという国の大きな決意はこれまで示されなかったが、先ごろの中教審の答申案では言語力は国語科だけでなく各教科で養っていくべきという意見が出された。読書は趣味ではなく生き方そのもの。皆さんからはたくさん夢をもらった。その夢を実現していくのが我々と皆さんの役割。手を携えていけば、国民的な読書運動を実現できる」と述べた。
続いて日書連の大橋信夫会長が来賓祝辞。「色々な事件が起こっている昨今、本を読むことが重要と言われている。まだ文字の読めない頃から子供たちには本に馴染んでほしい。皆さんには本と読者をつなげる役目がある。本の音読には脳を活性化させる効果があるという。これは皆さんにとって大きなプラス。本日の修了は一里塚で、これからの毎日がトレーニングになる。社会のため自身のため、頑張って鍛えていただきたい」と激励した。
講師を代表してあいさつした永江氏は「講師として貴重な体験ができた。皆さんは出版業界の宝であり大きな刺激。これからも一緒に頑張りましょう」とエールを送った。
修了証書授与と6名の成績優秀者の表彰の後、修了記念懇親茶話会に移り、修了生、聴講生、来賓、講師が和やかな雰囲気の中、懇談を楽しんだ。

28年間にミステリー1億冊/内田康夫氏にミステリー大賞

光文シエラザード文化財団が主催する第11回日本文学ミステリー大賞に内田康夫氏が選ばれた。日本ミステリー文学新人賞には緒川怜氏の『霧のソレア』、鶴屋南北戯曲賞に別役実氏の『やってきたゴドー』が選ばれ、3月12日夕、丸の内の東京会館で贈呈式が行われた。
贈呈式では、はじめに光文シエラザード文化財団並河良理事長がミステリー大賞の内田氏について「1980年のデビュー以来1億冊の発行は、百万部のベストセラー百冊分。審査委員の全員一致で受賞が決まった。池袋のミステリー文学資料館では内田康夫展を開催しており、足をお運びいただきたい」とあいさつ。3人の受賞者に賞状と正賞のシエラザード像、副賞が手渡された。
選評を行った逢坂剛氏は「ミステリー大賞には西村京太郎、夏樹静子と毎年大御所が受賞しており、トリを務めるのが内田さん。今後は、ぜひ2億冊を目指してほしい」とあいさつ。新人賞は有栖川有栖氏、戯曲賞は読売新聞川村常雄氏が選考経過を報告した。
受賞者あいさつでは、内田氏が「28年前、46歳でデビューと遅咲きだったが、コツコツ書いて去年1億冊を超えていることがわかった。赤川次郎、西村京太郎、森村誠一、司馬遼太郎の次らしい。背後で支えてくれた読者に改めてお礼を申し上げたい」とスピーチ。
共同通信社会部記者として第一線で取材活動を続けてきた新人賞の緒川氏は「第一線から離れるに従って書きたいという衝動が強くなった。書いた小説が結果を出せてうれしい。5年生存率は低いかもしれないが、今後も書いていきたい」と意欲を述べた。
戯曲賞の別役氏は「ベケットに刺激を受けて劇作家になったので、今回の受賞はうれしい。鶴屋南北は70歳で『四谷怪談』を書き、生涯137本の戯曲を書いた。南北に少しでも近づくのが私の目標。演劇は共同作業であり、これを舞台にしてくれたすべての人に感謝したい」とあいさつした。

移転

◆三笠書房
新築工事中だった飯田橋三笠ビルが竣工し、3月24日(月)より左記に移転、営業を開始する。新社屋は飯田橋駅東口徒歩4分。ホテルメトロポリタンエドモント向い。
新住所=〒102-0072千代田区飯田橋3―3―1飯田橋三笠ビル
電話=代表03・5226・5730、営業部5226・5734、受注センター5226・5733、営業部FAX=03・5226・5271

トップは『東京タワー』に/心が揺れた1冊の本集計

読者が選ぶ「心が揺れた1冊の本」で昨年最も票を集めたのはリリー・フランキーの『東京タワー』だった。サン・ジョルディの日を記念してサン・ジョルディ実行委員会は毎年、雑誌出版社と共同企画で「心が揺れた1冊の本」の募集を実施しているが、昨年応募のあった全国の読者1万8千通のアンケート結果がまとまり、パンフレットにまとめられた。
応募の内訳は、はがき1万1083通、インターネット5088通、携帯サイト1505通で、合計1万7676通。上位50位までを以下に示した。ベストスリーは映画、テレビ化された作品が占め、携帯小説も上位にランクイン。実行委員会では上位154点をリストアップしたチラシを製作して読者に配布する。
①東京タワー/リリー・フランキー/扶桑社②佐賀のがばいばあちゃん/島田洋七/徳間書店③手紙/東野圭吾/毎日新聞社、文藝春秋④バッテリー/あさのあつこ/角川書店、教育画劇⑤鈍感力/渡辺淳一/集英社⑥アルジャーノンに花束を/ダニエル・キース/早川書房⑦星の王子さま/サン・テグジュぺリ/講談社、新潮社ほか⑧こころ/夏目漱石/角川書店、新潮社ほか、⑨1リットルの涙/木藤亜也/エフエー出版、幻冬舎、⑩博士の愛した数式/小川洋子/新潮社
⑪恋空/美嘉/スターツ出版⑫塩狩峠/三浦綾子/新潮社ほか⑬ノルウェイの森/村上春樹/講談社⑭鏡の法則/野口嘉則/総合法令出版⑮氷点/三浦綾子/角川書店ほか⑯赤毛のアン/L・M・モンゴメリ/講談社、ポプラ社ほか⑯一瞬の風になれ/佐藤多佳子/講談社⑱五体不満足/乙武洋匡/講談社⑲ハッピーバースデー/青木和雄/金の星社⑳だから、あなたも生きぬいて/大平光代/講談社
21不動心/松井秀喜/新潮社22沈まぬ太陽/山崎豊子/新潮社23陰日向に咲く/劇団ひとり/幻冬舎24明日の記憶/荻原浩/光文社25ひとり日和/青山七恵/河出書房新社25白夜行/東野圭吾/集英社27世界の中心で、愛をさけぶ/片山恭一/小学館28秘密/東野圭吾/文藝春秋29いま、会いにゆきます/市川拓司/小学館30100万回生きたねこ/佐野洋子/講談社30わたしがあなたを選びました/鮫島浩二/主婦の友社32竜馬がゆく/司馬遼太郎/文藝春秋33国家の品格/藤原正彦/新潮社33千の風になって/新井満/講談社35子育てハッピーアドバイス/明橋大二/1万年堂出版35その日の前に/重松清/文藝春秋37天使の卵エンジェルス・エッグ/村山由佳/集英社38蝉しぐれ/藤沢周平/文藝春秋38大地の子/山崎豊子/新潮社、文藝春秋40窓ぎわのトットちゃん/黒柳徹子/講談社41アンネの日記/アンネ・フランク/文藝春秋42砂の器/松本清張/新潮社ほか43華麗なる一族/山崎豊子/新潮社43人間失格/太宰治/角川書店、新潮社ほか43夜のピクニック/恩田陸/新潮社46坂の上の雲/司馬遼太郎/文藝春秋46純愛/稲盛遥香/スターツ出版46西の魔女が死んだ/梨木香歩/小学館、新潮社49グッドラック/アレックス・ロビラほか/ポプラ社49不都合な真実/アル・ゴア/ランダムハウス講談社49鉄道員(ぽっぽや)/浅田次郎/集英社

新刊紹介

◆『週末は若女将』
江戸時代から続く島根県大田市「温泉津(ゆのつ)温泉」の旅館「吉田屋」の跡を継ぎ、24歳で女将となった山根多恵さんの奮闘記『週末は若女将~楽しいを仕事にする私たちの挑戦』がメディアパルから刊行された。山根多恵著、四六判192頁、定価本体1400円。
著者の山根さんは大学でコミュニティビジネスに関心を持ち、在学中から企業支援活動を行っていたが、大田地域雇用促進協議会に参加する中で後継者難で廃業の危機にあった吉田屋を継ぐ決意をする。
旅館を再生すると同時に、営業は週末3日だけとし、平日は若い旅館スタッフとともに、世界遺産「石見銀山」に連なる町おこしや地域貢献活動に元気に取組む姿が注目を集めている。

人事

■学習研究社
学習研究社は3月1日付で出版営業本部の組織変更と人事異動を行った。
組織変更では出版営業本部に置いていた出版営業部、出版サービス室、販売管理室の3部門を廃止し、新しく雑誌販売部、出版販売部、出版管理室を設置。雑誌販売部には雑誌販売課とムック販売課、出版販売部には書籍販売室と出版サービス室を、書籍販売室に児童書・図書館・MM販売課、学参・辞典販売課、一般書・実用書販売課、販売促進部に販売促進室を置き、第1課と第2課を設けた。出版管理室には物流・システム管理課、計数・取引管理課、海外版権課の3課を置いた。
人事異動では荒木勝彦取締役が出版営業本部長、広告・宣伝事業本部長を兼務。雑誌販売部長兼広告部長に山田耕嗣氏、出版販売部長兼出版管理室長に糸久哲郎氏、販売促進部長に島田省五氏、通販事業部長に黒崎輝雄氏がそれぞれ就任した。
■河出書房新社
2月26日開催の第51期定時株主総会と総会後の取締役会で以下の通り役員の業務分担を行った。○印は新任。
代表取締役社長
若森繁男
常務取締役(管理本部長)
吉田正夫
取締役(営業本部長)
野沢慎一郎
同(編集本部長)
○小野寺優
監査役(非常勤)
野村智夫
*山本濱賜取締役は退任して常勤編集顧問に就任した。

ポプラ社『諸国物語』/世界名作のアンソロジー

ポプラ社創業60周年企画として出版した世界文学のアンソロジー『諸国物語』(A5変形判1152頁・化粧箱入り・本体定価6600円)の売れ行きが好調で、同社は17日午後4時から報道関係者を集めて記者発表を行った。
『諸国物語』は二葉亭四迷訳のツルゲーネフ「片恋」、森鴎外訳のストリンドベルヒ「一人舞台」、山本有三訳のシュニッツラー『盲目のジェロニモとその兄』など世界の傑作小説21編を味わい深い名訳で収録。組版にあたっては大きな文字で行間を広くとり、日本語の豊かさ、美しさを満喫できるようすべての漢字にルビを振るなどの工夫をこらした。
記者会見には富山市・明文堂書店清水満社長が同席してあいさつ。「カタログを見た第一印象は売れないだろうと思ったが、坂井社長、野村編集長の話を聞き、実物を見て取り組む気持ちになった。1200部買い切る約束をしたが、2000部に上方修正する。
30年前、角川地名大辞典『富山』を千部売った。千部はいつでもやれる自信がある」と、同書拡売の意欲を述べた。
明文堂書店では社員、パート、アルバイト、従業員の家族にも呼びかけ『諸国物語』について「スタッフ読書感想コンクール」を実施するといい、優秀作には旅行券五万円などを贈る。
野村編集長は「19世紀から20世紀前半を中心とした500編の中・短編小説から世代を超えて楽しめる古典を選んだ。中高生から団塊世代まで読める内容」と編集方針を説明。ポプラ社ホールディングス坂井社長は「時代は軽薄短小から重厚なコンテンツを求める変化を感じている。11月頃に第2弾として日本版アンソロジーを考えている」と述べた。
2月20日に初版5千部でスタート、すぐに重版がかかり現在1万5千部。

「死神の精度」映画化で「伊坂幸太郎」フェア

日販は同社出資映画「SweetRain死神の精度」が3月22日(土)に全国公開されるのに合わせて、伊坂幸太郎の関連書籍を集めたオリジナルフェアを取引先書店千店で展開する。
配給元であるワーナー・ブラザース映画や各出版社の協力を得て実現したもので、映画スチール写真を使用した店頭陳列用オリジナルパネルやフェア対象銘柄の内容を紹介したオリジナルPOPを参加書店に送付し、販売を盛り上げる。
このフェアに当たってはディスプレイコンクールが行われ、伊坂幸太郎氏が選考。受賞作品は「日販速報」に店頭ディスプレイの好事例として掲載されるほか、直筆サイン入り色紙などが賞品。
映画「SweetRain死神の精度」は金城武、小西真奈美、富司純子が出演。原作は伊坂幸太郎の『死神の精度』(文藝春秋刊)。ワーナー・ブラザース映画配給。

日経ヘルスプルミエ創刊/日経BP、ホームと7月に統合

日経BP社は3月11日午後5時から目黒のウェスティンホテル東京で新企画発表と謝恩の夕べを開催。3月22日に創刊する女性のためのアンチエイジングマガジン『日経ヘルスプルミエ』を中心に上期の雑誌主要企画説明と、2007雑誌グランプリの表彰を行なった。
新企画発表会では、初めに日経BP出版センター岡部力也社長が「昨年の日経BPの売上げのうち、市販商品は4分の1強になった。本年は日経ホーム出版社と統合して、スタートキャンペーンを始める。これをきっかけに景気が好転することを願っている」とあいさつ。
続いて日経BP大輝精一社長は「日経BPは来年40周年を迎える。新聞系のジャーナリスト集団として先端性、開発力、国際感覚の3つを特色に例のない出版社を作ってきた。今後はクロスメディア・カンパニーとして出版を中心にインターネット、イベント、セミナーを組み合わせた会社を目指す。日経ホーム出版社とは7月1日の統合を前にすでに人事交流が始まっている。日経BPの健康誌と日経ホームの『ウーマン』を組み合わせたのが新しい『日経ヘルスプルミエ』だ。今後も次々に新しい雑誌を作っていく」と述べ、理解と協力を求めた。
日経ホーム出版社金子隆夫社長は日経BPとの統合について「日経BPは技術と経営が2本柱、われわれが加わることで今まで以上に生活情報が第3の柱になる。『日経ヘルス』の媒体力にホーム出版の女性力を加えて『プルミエ』に活かしたい。7月の統合は新しい日経BPの出発点」と強調した。
3月22日に創刊する『日経ヘルスプルミエ』については西沢邦浩編集長が企画説明を行った。同誌は、創刊10周年の『日経ヘルス』のお姉さん雑誌で、エイジングに伴う不調が気になり始める40代・50代の女性を対象に、いつまでも美しく、健康であり続ける最新情報を提供する。編集の柱は美容、健康、ライフスタイル。創刊号の特集は「アンチエイジングの基本ベスト6」。特別付録として「下腹・腰回りスッキリヨガ&呼吸法」DVDと、更年期の不安解消ブックが付く。A4変型判、中綴じ、定価650円、毎月23日発売。
『日経ウーマン』麓幸子編集長、『日経ビジネスアソシエ』村上広樹編集長が企画説明を行ったあと、2007年雑誌グランプリの表彰式を行い、別掲の販売優秀店を表彰した。
出席書店を代表して、丸善小城武彦社長は「昨年4月に丸善に来たが、来店客の多いことに驚いた。先ほど、創刊する『プルミエ』の読者プロファイルを詳しく説明いただいたが、書店の側もお客様をよく見て、きちんと売っていきたい」とあいさつ。日販古屋社長は同社の販売データをもとに「『日経ヘルス』を買う女性は44%が40代。『日経ウーマン』も一緒に買っていく。日経BP、日経ホーム社両社の統合によりますますの発展を」と祝辞を述べた。
【2007日経BP雑誌グランプリ】
〔単店の部最優秀賞〕
増加数部門=アバンティブックセンター京都店、三省堂書店大宮店、東武ブックス北千住店、有隣堂ヨドバシAKIBA店、有隣堂アトレ新浦安店
伸長率部門=ブックマンズアカデミー太田店、本の学校今井ブックセンター、あゆみブックス五反田店、三省堂書店品川駅店、NET21恭文堂書店学芸大学店
特別賞=ブックスキヨスク新大阪店
〔法人の部最優秀賞〕
明文堂書店、三洋堂書店、精文館書店
特別賞=くまざわブックチェーン協同組合

本屋のうちそと

2人の子供がやっと大学を卒業することになった。
4年前それぞれが希望の大学に無事入学できたことにほっとする暇もなく、授業料や下宿のための諸費用の手当て、税務申告などできりきり舞いをしたことは記憶の彼方に消えてしまっている。入学式は早朝の入荷のため、出席が出来なかった。また卒業式も同様の理由で出席は不可能だ。父親として、下宿の撤収と大家さんに礼を述べにだけは行くつもりだ。
今は便利になって、インターネットで調べれば、下宿の近くのレンタカーショップで希望車種を予約しておき、到着地のショップに乗り捨て料金を支払うオプションを選択すれば、労力も半減し、経費も節減できる。
従兄弟のお下がりの冷蔵庫、テレビやパソコンは、学生生協で後輩の利用を斡旋してくれるようだ。
就職先の独身寮へは会社から送られてくる段ボール箱の数だけの輸送を会社が負担するとのこと。
私が大学を卒業した際は、70年安保のバリケードの中からだったから、卒業証書は実家に送付されて、未だに卒業の実感がない。
けじめをつけられなかった青春のカタルシスに、30数年前と景色が変わらない鴨川沿いの川端通りを運転して来ようと思っている。
(井蛙堂)