全国書店新聞
             

令和2年5月1日号

児童生徒に図書カード配布を/東京組合、要望書を都に提出

東京都書店商業組合(矢幡秀治理事長)は4月23日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休校が続く子どもたちの家庭学習を支援するため、すべての児童生徒に図書カードを配布することを求める要望書を小池百合子・東京都知事、藤田裕司・東京都教育長に提出した。
東京組合は矢幡理事長と小野傳事務局長の2名で都庁を訪問。都側は小池潔・教育庁次長、新田智哉・教育庁総務部総務課長が応対した。都議会公明党政調会長の高倉良生都議が同席した。
矢幡理事長は「新型コロナウイルスの感染防止のため自宅待機を余儀なくされている児童生徒のために何かできないか考えていた。4月15日に正副理事長で協議し、都に図書カードの配布を検討するようお願いすることを決めた」と経緯を説明。「オンライン授業を推進している自治体や学校もあるが、これを機会に、児童生徒たちには児童書や絵本、学参などを手に取り、紙の本の大切さと素晴らしさについても再度認識してもらえれば」と述べた。
また、書店が都の休業要請の対象外となったことに触れ、「本は生活必需品に匹敵する存在。書店が社会生活を維持する上で必要な業種と認めていただいたことはうれしい」と評価。「図書カードの配布が実現した時は、外出自粛要請の趣旨を守り、『密閉』『密集』『密接』の3つの密を避けた上で、ぜひ地元の書店で本を買っていただきたい。適切な感染防止対策を講じてお客様をお待ちしている」と理解を求めた。
これに対し小池次長は「書店の皆さんの熱い思いは伝わった。都としてもできるだけのことはしたい」と話した。
要望書の全文は以下の通り。
【要望書】
要望内容
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休校が続く、子どもたちの家庭学習を支援することを目的に、すべての児童や生徒に対して図書カードの配布について検討をお願いいたします。
要望の理由
新型コロナウイルス感染拡大が日々激しさを増しております。東京都内の小中学校、高等学校及び特別支援学級は、一時授業の再開を予定していましたが、現在に至ってもコロナウイルスが猛威を振るっており、休校が継続となっています。そのため、児童や生徒は自宅での生活を余儀なくされており、このような状況下では学習面での遅れが懸念されます。また、休校が更に長引けば、学力に支障をきたすケースが生じてくることも考えられます。児童や生徒に対しては学習面での支援が急務であると考え、その一助として図書カードを配布し、参考書や書籍等を購入してもらい、家庭学習に役立ててもらえればと考えます。戦後最大の危機の時ではありますが、明日を担う児童や生徒の学びに絶大な支援を切にお願いいたします。

第59回「全出版人大会」中止を決定/日本出版クラブ

日本出版クラブは4月6日、新型コロナウイルスの感染状況に鑑み、5月8日に開催を予定していた第59回「全出版人大会」を中止すると発表した。
長寿祝賀(70歳以上の役員対象)・永年勤続表彰者(勤続15年以上の従業員対象)は「出版クラブだより」に名前を掲載し、表彰状・記念品を贈呈する。また、次年度以降に開催された際、参加をお願いする。

長引く休校で家庭学習支援/大阪府など図書カード配布/新型コロナ対応で

■大阪府
大阪府の吉村洋文知事は4月15日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛要請の緊急支援として計25億9400万円の補正予算を同14日に専決処分で決め、この中で休校が続く子どもたちの学習を支援するため、図書カード2000円分を配布すると発表した。府内の幼稚園、小中学校、高校などに通う児童生徒およそ100万人が対象。学習用教材や書籍の購入に充ててもらう。
大阪府書店商業組合の面屋龍延理事長は「大変けっこうな施策。府の決断に感謝したい。多くの子どもたちが地域書店に足を運ぶきっかけになることを願っている。書店組合は、大阪子ども『本の帯創作コンクール』(帯コン)を2005年から続けてきた。児童書の表紙に巻く『帯』を小学生にデザインしてもらうもので、子どもたちに読書の喜びや表現の楽しさ、大切さを知ってもらうことが目的。今年の帯コンでは、今回配布される図書カードを使って地域書店で課題図書を購入していただければうれしい。地域書店は子どもたちとともにあることを強調したい」と語り、府の姿勢を評価した。
■静岡県沼津市
沼津市は4月14日、市内の小中学校に通う児童生徒およそ1万3000人を対象に図書カード3000円分を配布すると発表した。新型コロナウイルスの感染防止のため、自宅待機を余儀なくされている市内小中学校の児童生徒の学習を支援し、読書を奨励する。5月中旬頃、保護者または児童生徒に配布する。補正予算に関連費用約4000万円を計上し、頼重秀一市長が専決処分した。
また、「命、健康、安全」をテーマとした感想文・画コンクールを実施する。
■滋賀県高島市
高島市は4月17日、市内の0歳児から高校生までの全員に図書カード3000円分を配布すると発表した。休園や休校が続く中、自宅で過ごす時間が長くなっている子どもたちへの絵本や学習支援としての参考図書購入に充ててもらう。5月中にも各家庭に届けられるよう手配する。このほか、地域通貨「アイカ」1万円分を全市民に支給する。必要な経費約5億2000万円は財政調整基金を取り崩す。24日の臨時市議会に補正予算案を提出する。

「日本ど真ん中書店会議」中止を決定

日本ど真ん中書店会議実行委員会が主催し、愛知・岐阜・三重の東海3県の書店組合が共催する「日本ど真ん中書店会議2020」は、8月26日に名古屋市内で開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止を決定した。同時開催の「日本ど真ん中書店大賞」も中止する。

東京都の休業要請、本屋は対象外

東京都は4月13日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため休業を要請した業種や施設について一覧表を「東京都防災ホームページ」に公開した。問い合わせが多かった業種や施設をまとめたもの。①基本的に休止を要請する施設、②施設の種別によっては休業を要請する施設、③社会生活を維持するうえで必要な施設――に分類し、要請対象を明示している。
本屋は社会生活を維持するうえで必要だとして休業対象には含まれず、適切な感染防止対策をとるよう協力を要請するとしている。雑貨屋、文房具屋、喫茶店も要請対象から外れた。
一方、古本屋やDVD/ビデオショップ、DVD/ビデオレンタルは休業要請の対象となった。

全国の組合加入書店数、3000店の大台割る/126店減の2986店に

4月1日現在で日書連会員の45都道府県書店商業組合に加入する書店は、1年前と比べて126店(4・0%)減の2986店となり3千店の大台を割ったことが組織委員会(中山寿賀雄委員長)の調査で分かった。各都道府県書店商業組合に加盟する組合員総数は、1986年の1万2935店から4分の1弱まで縮小した。
この1年間の新規加入は28店、脱退は154店。
組合員が増加した組合は、宮城(12店)、島根(2店)、岐阜(1店)の3組合。前年と同数は、岩手、新潟、徳島、愛媛、大分の5組合。残る37組合は組合員が減少した。
加入が多かった組合は、①宮城(14店)、②東京、島根、福岡(2店)、⑤福島、静岡、岐阜、大阪、兵庫、大分、宮崎、沖縄(1店)。宮城組合は、19年度上半期に未来屋書店が12店加入して組合員を大きく増やした。藤原直理事長は「宮城県の教職員互助会と職員互助会の独自図書券は組合加盟店でのみ利用できるため、お客様からの要望が強かったようだ。図書券利用の条件として、(未来屋書店)12店全部に加入していただいた」と説明。県組合独自の取り組みを加入メリットとして組合員数増加につなげた、注目すべき成功事例となった。
一方、脱退が多かった組合は、①東京(19店)、②大阪(12店)、③愛知、福岡(11店)、⑤京都(9店)、⑥兵庫、広島(8店)、⑧北海道、埼玉、長野(5店)、⑪福島、神奈川、静岡、福井、沖縄(4店)の順。
脱退数から加入数を差し引いた純粋な減少数は、①東京(17店減)、②愛知、大阪(11店減)、④京都、福岡(9店減)、⑥広島(8店減)、⑦兵庫(7店減)、⑧北海道、埼玉、長野(5店減)、⑪神奈川、福井(4店減)。減少率でみると、①広島(14・5%減)、②福井(11・4%減)、③秋田(10・7%減)、④沖縄(10・0%減)、⑤愛知(7・3%減)、⑥長野(7・1%減)、⑦京都、長崎(7・0%減)の順。
組合員が多い組合は、①東京(307店)、②大阪(203店)、③福岡(185店)、④愛知(140店)、⑤兵庫(126店)、⑥京都(120店)、⑦静岡(119店)、⑧埼玉(116店)、⑨宮城(105店)、⑩千葉(93店)。一方、組合員数が少ない組合は、①高知(20店)、②青森、島根、徳島(23店)、⑤秋田(25店)、⑥宮崎(26店)、⑦鳥取、沖縄(27店)、⑨富山、愛媛(29店)の順だった。

大賞は『風が強く吹いている』/読売中高生新聞・第6回「君に贈る本大賞」

読売新聞が発行する10代向け総合紙「読売中高生新聞」は、第6回「君に贈る本大賞(キミ本大賞)」の結果を発表。大賞には、『風が強く吹いている』(三浦しをん著、新潮社)が選ばれた。
読売中高生新聞は2014年11月に創刊され、15年には、世界新聞・ニュース発行者協会の世界青少年読者賞(編集部門)の最高賞を受賞している。
キミ本大賞は、「何を読んだらいいのか分からない」という10代の若者に向けて、「生涯の1冊」と出会ってもらいたいとの願いを込めて14年に創設されたもの。日頃から10代と向き合う全国の中学・高校の先生たちが賞の審査員を務め、今の中高生にぜひ読んでほしい名作1冊をアンケート形式で選定する。
第6回のテーマは「スポーツの力を感じさせてくれる本」。全国218校の先生から700以上の回答が寄せられ、箱根駅伝に挑む学生たちの青春を描いた小説『風が強く吹いている』が大賞に決まった。2位は『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子)、3位は『バッテリー』(あさのあつこ)、4位は『あと少し、もう少し』(瀬尾まいこ)、5位は『心を整える。』(長谷部誠)だった。

「春夏秋冬本屋です」/「絵本のもつ力」/鳥取・今井書店経営企画本部広報グループ長・津田千鶴佳

今月よりこのリレーエッセイに参加させていただきます。拙文にて恥ずかしく存じますがよろしくお願いいたします。
さて、当社では今年「本のほいくえん」という企業主導型保育所を開所いたしました。その名の通り、絵本を2000冊以上蔵書しているところが一番の特徴で、廊下の壁が全面本棚になっています。これらは、保育士の保育理念・保育目標などに沿って、長く読みつがれている名作や、眺めているだけでもわくわくするような子どもの興味を育む成長過程に必要な本を、書店の児童書スタッフが選びました。
現在お預かりしているお子さんの中に外国人の園児がいます。彼は日本語がほぼ話せないまま入園しました。言葉も文化も異なり、当初は彼も保育士も意思疎通がなかなか難しく大変だったようです。毎日の園での生活の中に、読み聞かせの時間があります。読む本は日本語の本です。保育士の読む内容に合わせ体を動かし、声を上げて喜ぶ園児たちの中に彼の姿もありました。物語の展開に楽しそうに笑ったり驚いたり、くるくると表情を変える様子に、言葉の壁を超えた「絵本のもつ力」を感じた瞬間でした。
書店での業務の中では「本の力」を感じられる様々なシーンがあります。この1年、そのような場面を少しでも多く綴ることができればと思います。

書店組合総会スケジュール

◆青森県書店商業組合「第33回通常総会」
5月7日(木)午後3時、青森市・成田本店で開催。
◆東京都書店商業組合「第44回通常総代会」
5月20日(水)午後2時、千代田区・ホテルメトロポリタンエドモントで開催。
◆愛知県書店商業組合「第37回通常総会」
5月28日(木)午後4時、名古屋市千種区・ホテルルブラ王山で開催。

『僕らのネクロマンシー』が銅賞/世界で最も美しい本コンクールで

2019年・第53回造本装幀コンクール(日本書籍出版協会・日本印刷産業連合会主催)で文部科学大臣賞を受賞した『僕らのネクロマンシー』(NUMABOOKS刊、装幀=藤田裕美、著=佐々木大輔)が2月に開催された「世界で最も美しい本コンクール2020」(ドイツ・エディトリアルデザイン財団主催)で銅賞を獲得した。
「世界で最も美しい本コンクール」は、世界で最も権威のあるブックデザインコンクールとして1962年より毎年開催され、世界中の書籍がエントリーする。審査員は毎年各国のデザイナーや専門家が交代で務める。
今回は30ヵ国以上から約700点の書籍が出品され、2月6日~8日の3日間、ライプツィヒにあるドイツ国立図書館で審査会が行われ、金の活字賞1点、金賞1点、銀賞2点、銅賞5点、栄誉賞5点の受賞を決定した。造本装幀コンクールの受賞作品は、唯一日本を代表して「美しい本コンクール」に出品され、今回で日本からのエントリー作品の受賞は4年連続となった。

2月期販売額は4・0%減/学校一斉休校で学参、児童書が伸長/出版科研調べ

出版科学研究所調べの2月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比4・0%減となった。
書籍は同3・2%減、雑誌は同5・2%減。今年は閏年のため稼働日が前年より1日多く、底上げが期待されたが、書籍・雑誌ともに送品金額が落ち込んだ。雑誌の内訳は月刊誌が同4・6%減、週刊誌が同8・2%減。
返品率は書籍が同1・4ポイント改善し31・8%。書籍は取次が送品の適正化を推進していることもあって返品減少が続いている。雑誌は前年と同率の41・5%。このうち、月刊誌は同0・4ポイント改善し41・2%。コミックスが絶好調で売上げに寄与した。週刊誌は同1・9ポイント増の42・9%だった。
書店店頭の売上げは、書籍が約2%減。2月27日に政府が小中高校の一斉休校を要請したことで自宅学習へのニーズが高まり、月末に学参、児童書の売上げが急激な伸びを示した。小学ドリルが好調だった学参は約12%増、学習漫画や児童文庫が伸びた児童書は約5%増となった。
雑誌の売上げは、定期誌が約2%、ムックが約10%縮小した。コミックスは約30%増加。2月4日に『鬼滅の刃』(集英社)の新刊19巻が初版150万部で発行されたほか、既刊の売行きも非常に好調だった。

商業界が破産開始決定

東京商工リサーチによると、商業界(東京都港区)は4月2日、東京地裁より破産開始決定を受けた。破産管財人には高橋順一弁護士(磯邊・高橋・八木法律事務所)が選任された。負債総額は約8億8千万円。
1948年創刊の老舗経済誌『商業界』をはじめ、『販売革新』、『食品商業』などの月刊誌を刊行。特に小売、流通業界に精通し、定期刊行物のほか業界セミナーも数多く開催していた。ピーク時の96年6月期には売上高約21億円を計上していたが、その後は刊行物の部数低迷により売上が減少。近年は事業のリストラを進めていたが、2020年3月31日に従業員を解雇し、ホームページで休業を告知していた。

新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた組合総(代)会の対応について/全国中小企業団体中央会

全国中小企業団体中央会は3月27日、「新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた中小企業組合の総(代)会の対応について」と題した文書を、全国組合(連合会)に向けて発表した。
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、総(代)会の開催方法や定款で規定する時期に通常総会を開催できない場合についての相談が多数寄せられていることから、対応について答えたもの。
[新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた中小企業組合の総(代)会の対応について]
中小企業組合の通常総(代)会については、中小企業等協同組合法第46条(総会の招集)及び中小企業団体の組織に関する法律第47条(準用)において「通常総会は、定款の定めるところにより、毎事業年度1回招集しなければならない。」と規定されていますが、今般の新型コロナウイルス感染の発生状況を踏まえ、感染拡大を防止するという観点から、総(代)会の開催方法及び定款で規定する時期に通常総会を開催できない場合についての相談が、本会に対して多く寄せられています。
つきましては、各組合等におかれましては、以下の点を踏まえてご対応頂きますようお願いいたします。
〇書面、電磁的方法又は代理人をもって議決権を行使できる旨を定款で定めている組合等においては、これらを活用して開催することにより、当日会場に参集する本人出席者数を少なくすることが可能になります。
〇多数の組合員(会員)がいる組合等では、開催することにより感染リスクが高くなると考えられる場合であって、書面等での議決権の行使を定款で定めていないなどやむを得ず延期を検討する場合には、所管行政庁に確認のうえ、開催が可能な時点で直ちに実施してください。
〇組合等の規模、組合員の分布状況(地区)、定款規定などにより対応が異なりますので、ご不明な点は、巡回担当者にご相談ください。
なお、通常総(代)会の延期をしたことにより法人税等の申告及び納付期限の問題が発生するおそれがある場合は、申告期限延長の特例申請等の取り扱いについて、事前に、所轄税務署までご相談ください。

JRAC・第1回「親子で読んでほしい絵本大賞」/小学館『字のないはがき』が受賞

出版文化産業振興財団(JPIC)が開設する「JPIC読書アドバイザー養成講座」の修了生有志による自主運営組織「JPIC読書アドバイザークラブ」(JRAC)は、第1回「親子で読んでほしい絵本大賞」の受賞作を『字のないはがき』(原作=向田邦子、文=角田光代、絵=西加奈子、小学館)に決定。3月16日に東京・千代田区の出版クラブホールで贈賞式を行った。
この賞は、司書や読みきかせボランティアなど、子どもに絵本を手渡す経験が豊富なJRAC会員が、JPIC発行の絵本と読みきかせの情報誌『この本読んで!』で紹介した過去1年間の新刊絵本400冊の中から、「親子で読んでほしい絵本」を投票で選考し、表彰するもので、「親子でもっと絵本を楽しんでほしい」「いい絵本を親子に届けたい」との思いをこめて創設された。
選考は、JRAC会員40名からなる選考委員が、「この本読んで!」2019年春号から冬号で紹介された新刊絵本400冊(18年9月~19年8月に刊行されたもの)の中から入賞作品12冊を選出。その12冊をJRAC会員が読んで、「親子で読んでほしい絵本」1位から3位を選んで投票。1年をかけて選考した投票結果を集計して大賞作品を決定した。今回、最終選考の投票に参加した会員は123名。
贈賞式には、大賞受賞作の作者の1人である作家・角田光代氏が出席。JRAC代表幹事の洞本昌哉氏(ふたば書房)から賞を贈呈、JRAC会員による作品朗読が行われた。角田氏は、「もし、これが向田邦子さんのエッセイに収まったままだったら、多分お子さんは読む機会がなかったんじゃないかなと思うので、本当にふさわしい賞をいただいたと思う。この本を書き終えたとき私は丁度51歳で、向田さんが亡くなられた年齢だったことにも意味があると思った。向田さんの仕事を残せたことをうれしく思う」と述べた。
入賞12作品の2位は『なまえのないねこ』(文=竹下文子、絵=町田尚子、小峰書店)、3位は『このほんよんでくれ!』(文=ベネディクト・カルボネリ、絵=ミカエル・ドゥリュリュー、訳=ほむらひろし、クレヨンハウス)だった。

3月期は前年比0・8%増/初の4ヵ月連続前年超え/日販調査店頭売上

日販調べの3月期店頭売上は前年比0・8%増で、4ヵ月連続で対前年プラスとなった。4ヵ月連続で前年を上回るのは、2008年7月の集計開始以来初めてとなる。
書籍は1・2%減。ビジネス書、学参、児童書の3ジャンルで前年を上回った。ビジネス書は、『FACTFULNESS』(日経BP)や『話すチカラ』(ダイヤモンド社)が売上を牽引し、3ヵ月続けての前年超え。学参、児童書は、2月末に新型コロナウイルス感染症対策として、小中学校の一斉休校要請が出た影響で学習ドリルの売上が拡大し、2ヵ月連続プラスになった。
雑誌は11・5%減。週刊誌は、3月4日発売の『anan』(マガジンハウス)が完売、重版するなど話題を集めたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で分冊百科などに発売延期となるタイトルが多く、売上が落ち込んだ。
コミックは19・6%増で6ヵ月連続前年超え。雑誌扱いコミックの新刊では、『キングダム57』、『僕のヒーローアカデミア26』(ともに集英社)が売上を伸ばした。『鬼滅の刃』(集英社)は既刊でも売上を伸ばし続けている。

凪良ゆう氏『流浪の月』が受賞/第17回2020年本屋大賞

全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ第17回「2020年本屋大賞」が4月7日に発表され、凪良ゆう氏の『流浪の月』(東京創元社)が大賞に輝いた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため発表会を行わず、事前録画による動画配信で発表を行った。
今回の本屋大賞は、18年12月1日から19年11月30日に刊行された日本の小説が対象。1次投票には477書店586人が参加、1人3作品を選んで投票し、上位10作品をノミネート。2次投票では300書店358人が全ノミネート作品を読んだ上で、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票し大賞作品を決定した。
受賞作は、誘拐事件の被害者と加害者とみなされた少女と大学生が後に再会し、恋愛でも友情でもない新たな関係を築いていく物語。凪良氏はビデオメッセージで、「ずっと女性向けのジャンルやライトノベルで書いていて、『流浪の月』は一般文芸での初めての単行本。ノミネートされただけでも奇跡のようで、大賞受賞のお知らせをいただいたときは驚きで声が出なかった。書店は出版業界の最前線であり、常に読者と接して言葉を交わす機会の多い書店員の皆さんからご支持をいただけたことはとてもうれしい。読者に一番近い賞でもあり、期待にしっかり応えていきたい。最近は心配なニュースが多くて家で過ごされている方も多いと思う。そんなときはぜひ本を読んでください。面白い本がたくさんあります」と話した。
本屋大賞の発表では、主催者を代表して本屋大賞実行委員会・浜本茂理事長が「あいにく外出もままならない状況下だが、こういう中でこそ本は最大の娯楽になる。1冊の本には、全国あるいは世界の果て、ときには宇宙の果てまで連れて行ってくれる力があるし、また絶世の美男美女と恋に落ちることもほんの少し想像力を働かせるだけで自由にできる。そういう本の力を再認識していただくために本屋大賞はあると思っている」とあいさつ。
協賛社の日本能率協会マネジメントセンター・張士洛社長は「この苦しい時を多くの人が乗り越えていくためには、自分を勇気づけ、夢や希望を抱かせてくれる、そんな1冊の本がそばに寄り添ってくれることが大切ではないか。そういう1冊の本を全国の方々にお届けできるのは、書店員である皆さんだ。いつの日かこの哀しい出来事を振り返るときに、人々を支えてくれた1冊の本は、リアルな書店で見つけたリアルな本でなければならないと私は考えている。絶対に負けない気持ちでこの危機を乗り越え、来年のこの日に明るい笑顔で皆様と再会できるように戦ってまいりましょう」とあいさつした。
翻訳小説部門は、『アーモンド』(ソン・ウォンピョン著、矢島暁子訳、祥伝社)が選ばれた。既刊本の掘り起こしを目的に、ジャンルを問わず18年11月30日までに刊行された作品を対象に投票する「発掘部門」の中から、本屋大賞実行委員会が選出した「超発掘本」として『無理難題が多すぎる』(土屋賢二著、文春文庫)が紹介された。
本屋大賞の2位以下は次の通り。②『ライオンのおやつ』小川糸(ポプラ社)③『線は、僕を描く』砥上裕將(講談社)④『ノースライト』横山秀夫(新潮社)⑤『熱源』川越宗一(文藝春秋)⑥『medium霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼(講談社)⑦『夏物語』川上未映子(文藝春秋)⑧『ムゲンのi』知念実希人(双葉社)⑨『店長がバカすぎて』早見和真(角川春樹事務所)⑩『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人(双葉社)

生活実用書・注目的新刊/遊友出版・斎藤一郎

多摩川沿いの土手は、毎日ジョギングや散歩する人でいっぱいである。
佐藤徹也著『東京発半日徒歩旅行調子に乗ってもう一周!』(ヤマケイ新書1000円)は、1年半前に上梓された同名の本の第2弾。
今回も、朝寝した日でも出かけられるコースを48紹介する。江戸川に浮かぶ妙見島や、越中島支線と亀戸天満宮など東京もあるが、関東近県から山梨、静岡県にまで足を伸ばす。歴史と遊ぶ、唯一の村を歩く、里山を徘徊する、などの全7章。
水辺に沿っての章では大貫と東京湾観音。千葉は内房線の大貫駅を下車する。著者が小学生の林海学校で行った場所。しかし、かつての砂浜は消えていた。聞けばどうやらアクアラインの建設で潮の流れが変わり、地形も変わってしまったらしい。砂浜でなく今度は山超えで観音様を目指す。
全ての行程に歩行距離や時間、立ち寄りスポットなどのデータがつく。
岩槻秀明著『子どもに教えてあげられる散歩の草花図鑑』(ビジュアルダイワ文庫800円)は、散歩のお供に最適なハンデイタイプ。13刷りのロングセラーである。
春の中ではシロツメクサ。クローバーだ。赤いアカツメクサもある。野の花748種が全カラーで紹介されている。[

一般部門3作、こども部門19作が受賞/角川つばさ文庫小説賞

KADOKAWAは、児童・生徒のための小説賞「第8回角川つばさ文庫小説賞」の受賞作を発表した。同賞は、小中学生のこどもたちに読書を楽しんでもらいたいとの願いから、2011年に創設。今回は19年7月1日から8月末まで作品を募集し、「一般部門」3作品(大賞は該当作なし、金賞2作品、銀賞1作品)、「こども部門」19作品(グランプリ1作品、準グランプリ1作品、特別賞5作品、入賞12作品)の受賞を決定した。
「一般部門」金賞は、七海まちさんの『デスコレ!―運命は、変えられる―』、やまもとふみさんの『リケジョとオカシな実験室』、銀賞は夏美さんの『パートナー』、「こども部門」グランプリは宮下ぴかりさん(小学3年)の『真の王』、準グランプリは和花さん(中学1年)の『カメからのバトン』が受賞した。「一般部門」金賞の2作品は、角川つばさ文庫で20年秋に発売予定。