全国書店新聞
             

平成17年3月11日号

SJ委が初会合

サン・ジョルディの日実行委員会が2月25日に書店会館で開かれ、今年のキャンペーン進行状況などを舩坂事務局長らが報告した。①「本のある風景」は415点の応募作品から入賞20点を選考、図書カードとポスターに使用する2点を決定、②雑誌出版社共同企画は54社・115誌の協賛を得た、③東京国際ブックフェアの出展・販売は開催が7月6日~10日に移ったことから、規模の縮小も含めて検討中。④愛知、十勝支部は本年も独自展開する。

ポイントサービスについて/公取委1・18

1、ポイントサービス
公正取引委員会は、平成11年12月に公表した「著作物再販制度下における流通・取引慣行改善等の取組状況等について」の中で、「書店の自主的な判断によりポイントカード制等を用いて、長期にわたり反復して来店する顧客に対してサービスを行うことは、消費者利益に資するものと考えられる。」としているところである。
2、書店の団体によるポイントサービス禁止要請
公正取引委員会は、前記公表文の中で、「書店団体等が、ポイントカード制等を実施している書店や出版社にこれを取りやめるよう圧力をかけるような行為があれば、独占禁止法上問題を生ずるものである。」としている。
大脇雅子参議院議員提出の質問に対する内閣総理大臣の答弁書(平成13年7月)の中で「お尋ねの割引制度やいわゆるポイントカードの提供が、再販売価格維持行為について定めた事業者間の契約に反するかどうかについては、当該事業者間において判断されるべき問題である。」としているところ、これは、契約違反かどうかについては契約当事者間で判断されるべきということを述べたものであって、当然のことながら、独占禁止法上問題がある場合に公正取引委員会が関与しない旨を述べたものではない。
ある書店等が当事者となっている契約について、他の書店又はこれらの団体は契約当事者ではない。書店の団体が、出版社、取次ぎ等に働きかけてポイントサービスを禁止させるようにすれば、独占禁止法上問題となる(独占禁止法8条)。
3、出版社の意を受けない取次ぎの行為
再販契約の適用除外を定めた独占禁止法23条では、卸売業者(取次ぎ)が生産者(出版社)の意に反してする行為については、「この限りでない。」としている。
ポイントサービスは、通常の意味では「値引き」そのものとはいえないが(例えば、「10%値引き」と称して、実際には「10%のポイントが付く」ということであれば不当表示のおそれ)、その態様によっては、繰り返し来店する顧客にとって実質的に値引きと同等の効果があり、広い意味では値引きに該当する場合があるものと考えられる。
しかし、現在の再販契約上は、ポイントサービスについての取り扱いは必ずしも明確となっておらず、このような中で、取次ぎが、書店に対しポイントサービスを止めるよう働きかけたり、出版社にポイントサービスを禁止するよう働きかけることは、独占禁止法上問題となる(独占禁止法19条)。
4、出版社の行為
出版社が共同して、ポイントサービスの中止を働きかけることは、前記公表文においても述べているが、独占禁止法上問題となる(独占禁止法3条、8条)。個別に行う場合であっても、他社商品についてのポイントサービスは制限できない。
ポイントの提供は広い意味で値引きに該当すると考えられるが、蓄積ポイントの利用は、ポイントという債権を支払いに充てたに過ぎず(図書券の利用と同様。)、再販売価格の維持に反する値引きとは言えず、これを制限することはできない。
クレジット会社が広くクレジットの利用者を対象に行うポイントサービスについては、通常、書店が値引きしたものとは言えず、制限できない。
また、再販契約の適用除外を定めた独占禁止法23条では、「ただし、一般消費者の利益を不当に害することとなる場合は…この限りでない。」としている。
公正取引委員会は、前記公表文の中で「書店等によるこれらのポイントカード制等の実施において、出版社が自社の出版物を除外させるなどの行為は、…その制限等の態様によっては、一般消費者の利益を不当に害することとなり、独占禁止法上問題となり得る場合もあると考えられる。」としているところであるが、現在、多くの商品について広く行われているようなごく低率のポイントサービスまで禁止する場合には、この点に抵触するおそれがある。

義援金402万円に

新潟県中越地震被災書店に対する日書連の義援金は2月28日の締め切りまでに56件、総額で402万5377円が寄せられた。第1次分として1月21日に330万円が新潟県書店組合西村理事長に渡され、追加の72万円強は3月1日に同組合に振り込まれた。追加到着分は以下の通り。
秋田県書店組合、愛媛県書店組合、東京組合・日書連職員互助会

組合員減少問題などを討議/長野理事会

長野県書店商業組合(赤羽好三理事長)は2月11日午後4時より上山田温泉・ホテル晴山で理事会を開催、理事14人が集まって以下の諸問題を議論した。
①現在117名となっている組合員の減少問題について。②新潟県中越地震災害見舞金を22万6千円送金したことを報告。③春の書店くじについて。組合として唯一の読者サービスである。④クロネコヤマト、セブンイレブン、インターネット書店の運賃無料問題や、クロネコヤマトの5%引き問題について。⑤消費税増税問題。⑥図書券廃止と図書カード一本化について。⑦日書連共済会について、大町市塩原書店全焼の件。⑧県組合創立百周年(平成20年)に向けての準備問題。⑨ポイント問題について、公取との折衝過程の報告。⑩第21回通常総会を6月下旬に行う。
理事会終了後、信濃毎日新聞社、郷土出版社、ほおずき書籍の3社による新企画販売促進説明が行われた。
(高嶋雄一広報委員)

低率の範囲どこまで?/ポイント率、原資で議論/東京理事会

東京都書店組合は3月2日の理事会で萬田理事長からの経過報告を受けてポイントカード問題を議論した。この日の理事会では、「何パーセントまで低率といえるのか」「率の競争になれば泥沼」「システムを作るなら、出版社に原資を出してもらいたい」などの発言が相次いだ。
ポイントカードをめぐる動きについて経過報告を行った萬田理事長は、2月10日に公取委取引部に山木部長、野口課長を訪ねて意見交換を行ったことを報告。
この席で、公取委は1月18日に野口課長が出版再販研究委員会に示した「ポイントサービスについて」(別掲)は、公取委の正式見解であることを強調。日書連の行動は共同行為に近いこと、低率のポイントサービスを研究してほしいことが伝えられた。
同文書では①書店団体によるポイント禁止要請は独禁法上問題を生ずる、②再販契約上はポイントサービスの取り扱いは明確でない、③クレジット会社の行なうポイントサービスは書店が値引きしたとは言えず、制限できない、④ごく低率のポイントサービスまで禁止する場合は一般消費者の利益を不当に害することになる――などを明確にしている。
これを受けて、2月17日の日書連理事会では事態を打開するため、①新たな出版社訪問はしない、②業界カード、銀行カードも視野に低率のポイントカードの仕組みを検討することが提案され、各県での検討を求めた。
東京組合理事会では、各理事から「ごく低率のポイントは何パーセントまでか」「パーセントのサービス競争になれば、書店は倒れる」「低率のポイントカードの仕組みは書協、雑協で作ってほしい」「原資は書店が負担するのか、出版社か」などの発言が相次ぎ、岡嶋委員長は「東京再販委員会で引き続き検討したい」と、まとめた。

ブックスタートをテーマに研修会

埼玉県書店商業組合(野澤恒雄理事長)は2月9日、さいたま市の浦和ワシントンホテルで、昨今全国的広がりを見せている「ブックスタート」運動をテーマに書店研修会を行い、組合員40名が出席した。
研修会は根岸秀夫指導教育委員長の司会で進行し、野澤理事長があいさつ。ブックスタートからは白井哲事務局長と佐藤いづみ氏を招き、佐藤氏を講師に「ブックスタートの広がりと深まり」について、スライドを用いて1時間強にわたり講演を頂いた。書店業界を取り巻く厳しい環境の中で、大変有意義な研修会となった。今後の課題として、より広がりをみせるためにも書店・取次・出版社の共同歩調が大切であり、その上で自治体への働きかけが行われれば、市民にも理解が深まり、さらなる成果が期待できると思われる。
講演終了後、午後4時から懇親会に移り、和やかな雰囲気のなか午後5時半閉会した。
(長谷川正夫広報委員)

TRC対策で5月に研修会予定/鹿児島組合

鹿児島県書店商業組合(坂口洋右理事長)は2月16日、本年度第1回理事会を開催した。
理事会では坂口理事長より日書連の取り組み・対応として①ポイントカード、②ポケッター完売、③消費税アップ反対、④全国的に組合員が減少、⑤図書カード化完全実施――の説明があった。
次に本年度行事日程を計画。①6月9・10日婦人研修旅行、②10月12日ソフトボール大会、③12月8日総会。他に年5回理事会を開催。また、市町村合併を機としたTRCの公立図書館進出に対し、組合で5月に研修会を開くことも予定した。(濱田晴樹広報委員)

生活実用書・注目的新刊

「書皮友好協会」という、愛知県岡崎市に本拠を置く同好会がある。書皮というのは書店でかけてくれるブックカバーを指す。本に初めからかけられたのもブックカバーだから、それと区別した用語。
この会は『書皮報』という会報を出し、年一度、会員による大賞も選出している。本好きなうえに、買った書店のカバーにまで愛着を抱いている。そのコレクションが、ついに一冊の本になった。
出版ニュース社編『カバー、おかけしますか?本屋さんのブックカバー集』(出版ニュース社2500円)は、全国の書店カバー191点がカラーで紹介されている。
大賞の第1回、あるご書店は、新刊書店を退職し開店した古書店で、彼の新刊書店時代から営業活動でつきあいがあったM氏経営の店である。最新の20回は京都の文祥堂書店。勤めていた出版社の本のジャンルによって、訪問したり、通り過ぎたりだった。
カバーを見ていると、自分の永い出版営業の歴史までも垣間見えるようである。すでに廃業した書店もいくつかあって、それがとても悲しい。
ご当地モノ、木版画、子ども、動物、植物、文様など34分類されるが、たとえば地図のジャンルにはミヤケ書店。日本橋の古地図が濃紺の地に白抜きで描かれ、彦根市のCBワールドフジノでは近江名所図絵シリーズという具合。
本好きには様々な角度から楽しめるし、書店の人の本に対する情熱も伝わってくる。インターネットやオンデマンド出版が盛んになっても、こうした書店カバーの文化がなくなることはないだろう。
本好きな人に読んでもらいたい本をついでにもう一冊。齋藤一郎著『本屋でコーヒーブレーク』(遊友出版1200円)。何を隠そう、って別に隠していないのだが、本欄の最近3年半分のコラムも収録している。どこの書店にでもありがちな、ヘンな客、クイズみたいな問い合わせなどの面白話と、ユニーク書店探訪は『日刊ゲンダイ』連載。
酔っぱらいオヤジが店に入ってきて、斜めに傾いたまま腰を落とし、うろうろしていた。やがて、立ち読み中のOLの背後に回り、スカートを覗こうとした。あわてた店長はレジから飛び出て言った。「お客さん、ウチは本屋なんだから。本以外のものは勝手に見ないでください」…。
(遊友出版・齋藤一郎)

小学館の2企画拡販に取り組む/兵庫理事会

兵庫県書店商業組合(三上一充理事長)は、2月8日神戸シーガル会館において定例理事会を開催した。
理事会の冒頭、今秋の完全図書カード化について日本図書普及の平井氏による説明会が実施された。
また、昨年は『名城をゆく』(小学館)を取り上げ、拡販したところ予想以上に実績があったことから、今年度も『クラシック・イン』『日本列島鉄道の旅』(共に小学館)の拡販に取り組むことになった。
事務局からは、「朝の読書」が神戸新聞2月4日付1面で読書タイムとして取り上げられるなど、県下の小・中学校でも週に3回の朝読タイムが実施されており、朝の読書推進運動は確実に広がりを見せていると報告があった。
兵庫県で開催されることが決まった「日本縦断文化講演会」は5月21日(土)、講師に柳田邦男氏を予定している。会場は未定。
(中島良太広報委員)

中学生はこれを読めフェア/今夏に全道規模で展開図る/北海道組合

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は2月22日に組合事務所で2月定例理事会を開催。冒頭に日書連理事会の報告として、消費税引き上げ問題で主婦連との学習交流や、ポイントカード問題などの説明があった。討議は報告に沿って行われ、消費税は反対の立場から「世論の喚起」の必要性が強調された。またポイントカード問題について活発な意見交換が行われた。
今年の「世界本の日・サン・ジョルディの日」日本縦断記念文化講演会は5月28日、道新ホールで講師に三浦雄一郎氏を迎え、道組合・札幌支部の主管で開催することを決定した。
札幌支部から、昨秋より実施された“本屋のオヤジのおせっかい「中学生はこれを読め!」”フェアが実売で2500冊を販売し、スタンププレゼントは41人になったことが報告された。また、マスコミに話題を提供し書店の社会的存在をアピールする役割を果たしたとして、次回は夏休みに全道規模で展開することを確認した。
広報委員会の提案で「30歳代の書店人による書店業界の将来展望」(仮)の懇談会を開くことを決め、次回理事会で具体化を図ることになった。また、FAX通信を道組合が発行し、理事会報告と書店現場でのさまざまな意見を反映し組合の活性化を進めることにした。(村上正人広報委員)

「揺れ動く教育事情と書店」/安田教育研究所・安田氏が講演/辞典・学参勉強会

辞典協会と学習書協会の共催による「2005年新学期辞典・学参勉強会」が2月18日午後1時半から東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で開かれ、出版関係者130名が出席。安田教育研究所の安田理代表が「揺れ動く教育事情、書店はどう影響を受けるのか」をテーマに販売のポイントを講演した。
〈ゆとりから学力重視へ〉
国の教育行政は大きく揺れ動いており、書店への影響も大きい。明治以来、全国一律だった教育のあり方が、ここにきて非常に多様化している。中央集権から地方分権化し、地方の実情に合った教育内容に変えていく方向に向かっている。規制から市場原理へ、これは学校も企業と同じように競争させることで中身を良くしていこうということ。特別な学校には予算づけして一種のエリートを作り、グローバル社会に対応できる人材を養成していく方向にシフトしている。
教育の中身も“詰め込み”から“ゆとり”へ、そして再び“学力重視”へとシフトしている。昨年12月に公表された経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査で、日本の学力は著しく低下しているという結果が出た。この秋には中教審の最初の答申が出るが、総合学習の時間や生活科、中学の選択教科の時間を減らして、いわゆる5教科の時間を増やしていく。さらに土曜日授業、夏休み短縮の方向に行きそうだ。家庭の意識が勉強する方向に向かうことは、書店にとって追い風になるのではないか。
自治体による教育改革も進んでいる。東京では大田、中野、世田谷以外、学校選択制の導入を検討している。選んでもらうために特色をアピールしなければならないから、ホームページを作る学校が増えている。店の周辺の学校がどういう特色を持っているかホームページで知り、品揃えの参考にしたい。
公立でも小中一貫校が増えている。地元の公立中学が荒れているために私立中学を目指す“消極的中学受験”が、これで減少する。
公立学校の市場競争の1つに学区の撤廃がある。学区が撤廃されると多数の学校の中から選択されるので、学校間の競争が激しくなる。東京では進学指導重点校、チャレンジスクール(高校中退者などのための単位制高校)など学校の特色づけが始まっており、同じ都立高校でも勉強する中身が違う。公立の一貫校はどんどん増えており、受験者のための出版物販売は書店にとって大きなビジネスチャンスである。
教育特区では何でもありになる。学校は国、自治体、学校法人しか運営できなかったが、これからは株式会社立、NPO立、公設民営型の学校もありである。こうした中では、大手チェーン書店は本店一括ではなく、支店ごとに地域の実情に合った品揃えをしなければ勝負にならない。そのためには店長への権限委譲が必要である。
〈大きく広がる教育格差〉
長期化する不況の影響で私立小学校の新設は長いことなかったが、ここ2年間で首都圏でいくつかの私立小学校が出来、関西でも07年までにいくつかの有力私立大学が小学校を設立する計画を持っている。日本社会は子供を小学校から私立に通わせることができる家庭、金持ち世帯と年収300万円世帯に大きく分かれる方向に向かっている。
公立高校入試すら全国一律ではなくなった。大学も今後、選抜できる大学と全入の大学の両極端に分かれていく。子供の数は減っているのに、学校の数はむしろ増えている。今は学校側が選ばれる“逆受験戦争時代”。特定の学校に入るのは大変だが、それ以外の学校ならほとんど勉強しなくても簡単に入れるということが、生徒たちがあまり勉強しなくなった背景としてある。
中学受験にものすごく熱心な親たちがいる。極端な例として入試直前に塾、家庭教師費用に月百万円使った親を知っている。信じがたいことだが、教科ごとに違う家庭教師を使っている。その一方で、教育に関心がない、責任をもたない親たちもいる。そういう意味で階層の再生産が進んでいる。
〈教育機会均等に役割〉
もはや“マス”は存在しない。同じ学校の中でも生徒間に学力差が出ている。親の意識も違う。しかも制度として飛び級、飛び入学があり、年齢、学年、学校という単位で括れなくなってきている。マスが存在しないとビジネスとして難しい。多品種少量生産になって、書店店頭でも種類ばかり増える。1点当たりの売上は伸びず、効率が年々悪くなっている。限定された売場面積の中で売らなければならないので、売れ筋と売れないものを見分ける目を持ちたい。全国一律とされてきたコンビニですら地域ごとに個性を出し始めている。書店も支店に裁量を任せないと危ない。子供の学習意欲が低下している。勉強したところで将来どうなるかわからないと潜在的に感じている。辞書・学参を実際に買うのは親である。店頭におけるPOPやチラシも親向けに作らなければ販売に結びつかない。
直近で考えられる具体例としては、まず私立小学校が次々と生まれている状況から「お受験もの」が動くのではないかということ。また、今の文部科学大臣の考えからいくと「教科学習もの」の比重が再び増え、「総合学習もの」の売上は後退する。2学期制と3学期制が混在している地域の書店は、両方に対応した商品を置かねばならない。高校受験は目指す学校によって入試問題が違うので、地域によってどのレベルの高校を受験する生徒が多いかが品揃えに影響してくる。情報収集が必要だ。大学入試は06年から新課程になるが、難関大学の個別試験では旧課程からも出題するので、旧課程の参考書も依然有効と考えられる。また、国立後期日程は廃止の可能性があり、そうなると小論文をはじめとする今の大学入試環境は変化するだろう。さらに、今後まちがいなく増えるフリーターやニート、団塊の世代が大量に定年を迎えることから大人向け勉強もののニーズが生まれるだろう。
辞書の専門家で、高校でも教えている人に聞いたのだが、その高校では電子辞書は持ち込み禁止、紙の辞書を使わせているという。
理由はまず書体の問題。電子辞書はドットの問題で画数が省力されているが、紙の辞書は正確な書体で表記されている。また電子辞書はいきなりディテールに到達するが、紙の辞書は引く過程で言葉の豊かな意味、ニュアンスが読まなくても視野に入ってくるので、長い目で見れば有益である。紙の辞書は引くことに慣れると言語センスに磨きがかかるので、長文読解に役立つ。勉強の基本として紙の辞書を使うほうがいいと、その先生は言っていた。
塾、家庭教師、通信添削、ネット学習など子供の勉強に猛烈に金をかける家庭がある。学参は一番安い学習材料であり、それを提供しているのは書店である。その意味は非常に大きい。所得格差が拡大している中で、低所得家庭にも学習材料を提供するという書店の機能がなくなったら、金持ちだけに勉強する機会が与えられ、貧しい家庭はその機会を失ってしまうことになる。実際、難関校に合格する子どもは特定の塾や予備校に行っていることが多く、そこで学習材料を与えられている。一方、わが子の教育に責任を持たない親たちは子供を塾にも予備校にも通わせず、また書店にも足を運ばない。書店に足を運ぶのは中間層といえる。所得格差が開いている時代だからこそ書店には頑張ってほしい。
〈データもとに品揃えを〉
前年のデータをもとに品揃えをしているだろうか。辞書・学参はいつ、どういう商品が動いたかというデータが特に有効なジャンル。特定の商品が売れ出したらお客さんに理由を聞きたい。「予備校の先生にすすめられた」とか必ず理由がある。理由がわかったらすぐ手立てを講じたい。
辞書の特色を把握しているだろうか。高校生だからこの辞書、中学生だからこの辞書というのではなく、お客さんの学力などを知った上で勧めなければこれからは難しい。いま不登校がすごく増えている。不登校関係の本は教育書の売場にあることが多いが、不登校の子供を受け入れるサポート校や通信制学校のガイドなどは学参売場にあり、同じコーナーに並んでいない。顧客第1主義で、お客さんが便利なように売場を構成することが重要だ。

訃報

濱田智美氏(元日書連副会長・鹿児島県書店商業組合理事長、薩摩川内市・金海堂代表取締役会長)
3月1日、多臓器不全で死去した。83歳。通夜は1日、告別式は2日午後、薩摩川内市中郷町2340のハートフル紫雲閣で営まれた。喪主は妻の淑(スミ)子さん。平成5年から10年まで日書連副会長。

ゴールデンアロー賞

日本雑誌協会雑誌芸能記者クラブが選ぶ第42回ゴールデン・アロー賞の授賞式が3月8日、東京プリンスホテルで行われ、各賞が以下の通り決まった。
▽映画賞=長澤まさみ▽演劇賞=中村獅童▽音楽賞=松平健▽放送賞(ドラマ部門)米倉涼子、(バラエティー部門)くりぃむしちゅー▽スポーツ賞=古田敦也▽新人賞=波田陽区、青木さやか、綾瀬はるか▽話題賞=堀江貴文▽芸能功労
賞=いかりや長介▽グラフ賞=岩佐真悠子

催し

◇野間コレクションの名品展講談社野間記念館は開館5周年企画として3月19日から5月22日まで名品展を開催する。これまで企画展を通して紹介してきた収蔵作品の中から、横山大観「月明」、速水御舟「梅花馥郁」はじめ、選りすぐりの名品を展示。休館日は月・火曜日、入館料一般5百円、中高大学生3百円、小学生以下無料。

『抗癌剤』など重版/祥伝社新書

2月25日に創刊した「祥伝社新書」は、2月27日の紀伊国屋ベストセラー一般新書部門で『抗癌剤』が11位、28日には『模倣される日本』が7位に入り、この2点の重版が決まった。『「震度7」を生き抜く』『ガンダム・モデル進化論』も重版有望で「大きく育てていく手応えを感じる」と鈴木道雄販売部長。
次回は4月25日に『医療ミス』押田茂美、『都立高校の挑戦』殿前康雄、『役に立つ!金融』岩崎日出俊、『手塚治虫で読む日本人』中野晴行、『水族館の謎』中村元、『マザコン男は買いである』和田秀樹の6点を搬入予定。

人事

◇角川HD社長に本間氏
角川ホールディングスは、2月24日開催の取締役会で本間明生専務を持株会社専任の代表取締役社長兼COOに任命、4月1日付で異動する。
同社はこれまで主な事業会社の代表者が取締役を兼務してきたが、グループ全体の企業力をより引き出すための異動。現角川歴彦社長は、代表取締役会長兼CEOとして、引き続きグループ経営全般を統括。福田峰夫専務取締役は持株会社のCOOを離れ、角川書店ならびにアスキーの代表取締役社長を兼務する。
◇工学書協会
(2月15日、○新任)
▽幹事長=○共立出版・南條光章
▽副幹事長=○産業図書・飯塚尚彦
▽幹事=○オーム社・櫛田義則(第1販売委員長)、
○近代科学社・吉原寿和(同副委員長)、共立出版・岩下孝男(第2販売委員長)、産業図書・米川慎一(第3販売委員長)、丸善出版事業部・山本幸夫(第4販売委員長)、彰国社・望月達夫(目録・広報委員長)、○東大出版会・高橋朋彦(同副委員長)、工業調査会・斉藤亮(総務委員長)
▽会計監事=アグネ承風社・渡辺武彦、○彰国社・後藤武
▽相談役=○オーム社・佐藤政次
◇主婦と生活社
販売本部販売営業部販売営業課長○山田智久
同○岡毅幸
宣伝部課長代理
○三村恵介
販売営業部販売営業課係長○近藤冨美夫
販売促進課長河野通彦
生産部課長山田智久
販売営業課課長代理
大宅俊幸
商品管理課課長代理
太田等

台北図書展の商談倍増

第13回台北国際図書展が2月15日から20日まで台北世界貿易センターで開催され、32万人が訪れた。
トーハンが主催する日本事務局経由の出展は16ブース、出店社は77社。会期中の商談も56社、555件と前回に比べて倍増した。

徳間文芸3賞

徳間文芸3賞の贈賞式が4日午後6時より丸の内の東京會舘で開かれ、第7回大藪春彦賞に雫井脩介『犯人に告ぐ』(双葉社)、第25回日本SF大賞に押井守監督『イノセンス』、特別賞に矢野徹、第6回日本SF新人賞に照下土竜『ゴーディーサンディー』の各氏が選ばれた。
大藪賞の選評で大沢在昌氏は受賞作『犯人に告ぐ』について「追う側、追われる側の心理を描き、優れた警察小説になっている」と述べ、大藪家からブックエンド型トロフィー、徳間書店松下社長から賞状と賞金5百万円が手渡された。
松下社長は「徳間は創業50年を迎える。51年目からは装いを変え新生徳間書店として21世紀に向かい、より一層文芸路線を遵守していく意気込みだ。応援いただきたい」と出席者にお礼
を述べた。

実用書2ケタ成長期す/40回迎えたオートマセール/日販

昭和39年にスタートして今年で40回目を迎えた日販オートマチックセール記念研修会が3月3日、4日の両日、びわ湖温泉「旅亭紅葉」で開かれ、218名が出席した。
3日午後6時から行われた懇親会であいさつした日販鶴田社長は「ライフスタイルや世相がうかがえるのが実用書の世界。昨年の実用書売行きトップは『いきなり黄金伝説』。細木数子の六星占術も3点入った。今年の研修会の展示は趣を新たにして、今年話題になる各社の実用書を揃えた。昨年、文芸ではSCM銘柄として『ダビンチコード』『セブン』『1リットルの涙』と、出版社、日販、書店が一体となってベストセラーを出した。今年は一番安定的に売れる実用書に陽をあて、三者で育てたい。ぜひ実用書の2桁成長を実現し、その勢いを借りて店頭を活性化したい」とあいさつ。
書店を代表して三省堂亀井社長は「40年前の書店は学参、専門書、文芸が売れていて、実用書といえば式辞、名前、ペン習字という品揃えだった。飽食の時代を経て実用書は生活者に新しい生き方を提案するジャンルになった。従来のジャンル別棚でなく、もう少しメリハリのある展示でトレンディに展開していきたい」と、実用書の役割を強調。
協賛出版社30社を代表してNHK出版松尾社長は「実用書はノウハウだけを売るのでなく、生活を豊かにするのが目的だが、ジャンルが細分化し、複雑になっている。内容的にも一歩か二歩前に出た本作りが必要。努力してより売れる本を店頭にお届けしたい」と述べた。
40周年を記念して日販はオートマチックセール販売コンクール開催。A、B各セットとも売上冊数上位5店と各地区1位にエリア賞を進呈する。また、これまで実用書販売に功績があったとして、紀伊国屋書店新宿南店=牛込由貴絵、足立・小泉書店=小泉若江、盛岡・エムズ書店=鈴木賢治の3氏に特別貢献賞を贈った。このあと、丸善村田社長の発声で乾杯、懇親会に入った。
翌4日は午前中、竹村健一氏の記念講演「これからの日本」が行われた。

放送1周年リクエスト

日販が東海ラジオで提供している「絵本の時間おはなしマラソン」が3月3日の放送で1周年を迎えたのを記念して、1年間に紹介された絵本の中から、もう一度聞いてみたい絵本のリクエストを募集。上位3点を5月第1週に放送する。
放送は同局の蟹江篤子アナを読み手に、毎週水・木・金の午前10時40分から毎回1冊、絵本を読み聞かせ。1年間で紹介された絵本は160冊。東海地区の215書店には、番組で紹介される絵本が放送日の1週間前までに送品され、放送と書店店頭の連動を図っている。

本屋のうちそと

わたし生まれも育ちも東京です。むかし、おばさんが文京区で「青森県上北郡町村会事務所」といって八戸市、三沢市、田子町などの東京連絡事務所と言う宿泊所をやっていた。おばあちゃんもいたので遊びに行ったが、青森弁と言う聞きなれない言葉で話されるから、ちんぷんかんぷん。横でおばさんが標準語で話してくれるとわかる。集まっていた人たちは青森から来た人ばかり。青森の標準語でしゃべっていたのでしょう。
従兄弟に聞くと青森は青森市を挟んで左側(中心は弘前市)を「津軽地方」、右側(中心は八戸市)を「南部地方」と呼び、江戸時代から藩(お殿様)の仲が悪かったことで有名だった。
いまなぜだか、この青森弁を聞くと懐かしさを感ずるのは歳のせいだろうか。お袋は津軽三味線の音色が嫌いだとよく言っていた。故郷を思い出す時、辛い事もあったのでしょう。寂しさを感じていたらしい。お袋を思い出してはそんな事を感じている。
津軽弁と南部弁とは若干違うが、現在の青森は青森弁として一緒になったようです。芸能人なんかはわざと面白がって津軽弁で話している。
義兄が転勤で大阪に行っていた頃、たまに甥が遊びに来ると、今度は関西弁が聞きにくい。関西だって、奈良と京都では方言は少しばかり違う。
方言は、地元の語り部と同じようにいつまでも残しておきたい日本の財産かもしれない。活字には出来ないイントネーションの世界。故郷に帰るとお国言葉が出るのは自然だろう。(とんぼ)