全国書店新聞
             

令和2年1月15日号

キャッシュレス決済調査実施へ/組合加盟書店の導入状況把握/日書連12月理事会

19年10月の消費税増税に伴い、政府は19年10月~20年6月の9ヵ月間、中小・小規模事業者の店でキャッシュレス決済をした時、消費者にポイント還元する施策を進め、社会はキャッシュレス化へ大きく舵を切りつつある。12月19日、東京・千代田区の書店会館で開かれた日書連定例理事会で、矢幡秀治会長は「キャッシュレス化の流れにしっかりと対応しなければならない」として、組合加盟書店のキャッシュレス決済の導入状況を把握するため調査を行うことを決めた。
[政策委員会]
▽矢幡会長の提案で、全国組合加盟書店のキャッシュレス決済導入状況についてアンケート調査を実施することを決めた。調査項目や調査方法などは、矢幡会長を中心に関係委員会と相談しながら検討する。
▽台風15号・19号で被害を受けた8組合67書店に一律1万円の見舞金を支給することを承認した。内訳は、岩手5店、宮城17店、福島1店、茨城3店、群馬1店、千葉20店、静岡16店、長野4店。見舞金は日書連から8組合にまとめて振り込み、組合を通して各書店に配布する。
▽矢幡会長は、19年から日書連が事務局を務める「本の日」について報告。日本図書普及の協力で行った「図書カードプレゼントキャンペーン」への応募が昨年より若干増えるなど、「日書連が事務局を務めた初年度として、次回につながる成果を得ることができた」と手応えを語った。
▽定例理事会前に開かれた臨時総会で新たに理事に就任した2氏の所属委員会を決めた。大谷秀生氏(和歌山)は流通改善委員会と取引改善委員会、森忠延氏(兵庫)は読書推進委員会と書店再生委員会。
[読書推進委員会]
春井宏之委員長は、独自企画を提出した組合に補助金を支給する「令和1年度読書推進活動補助費」に、11月30日の締切までに7組合から応募があり、12月13日に選考会を行った結果、青森、山梨、愛知、富山、大阪、奈良、兵庫の7組合に各20万円、総額140万円を支給することを決めたと報告。「読書推進として将来につながっていく事業を積極的に行ってほしい」と求めた。
また、日書連が主催、日本出版取次協会と日本児童図書出版協会が協賛する業界3者による児童書増売運動「心にのこる子どもの本新学期・夏休みセール」について、「児童書コーナーの充実に活用していただきたい」と呼びかけた。※編集部=本紙2月1日号に各セットの書名、注文書を掲載します。奮ってお申し込みください。
[指導教育委員会]
鈴木喜重委員長は、11月から12月にかけてマガジンハウス、新潮社、講談社、KADOKAWAの出版社4社を訪問し、粗利益向上など書店環境改善の方策について意見交換を行ったと報告した。
[組織委員会]
中山寿賀雄委員長は、定款第56条に基づき委員会の組織および運営について必要な事項を定める「委員会規約」、併せて中小企業団体の組織に関する法律及び定款で定める電磁的記録等に関する手続きを行うために必要な事項を定める「電磁的記録等に関する規約」を作成していると報告。「次回の2月定例理事会で原案を示し、承認を得たい」と述べた。
各都道府県組合の加入・脱退状況は、10月期が加入0店・脱退15店で前月比15店純減、11月期が加入0店・脱退3店で同3店純減。日書連の推定所属員数は3040店になった。
[流通改善委員会]
藤原直委員長は、日本出版取次協会による2020年度「年間発売日カレンダー」の提示が例年より遅れていることについて、「ドライバーの労働に関する法令を遵守する必要性や、雑誌低迷による業量減少で、出版物輸送各社の経営は厳しい。そんな中、20年度は休配日を増やさざるを得ない状況にあり、関係者が協議を重ねているところ。20年1月中に発表されるだろう」との見通しを示した。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、返品現地処理問題について報告し、「関係者と意見交換を行う場として特別委員会を設置することが可能か検討したい」と述べた。
[広報委員会]
面屋龍延委員長は、2019年1月1日号から12月15日号まで1年間に発行した機関紙「全国書店新聞」の紙面を全ページ収録した「全国書店新聞合本2019年版」を80部作成し、各都道府県組合や関係先に送付すると報告した。
[書店再生委員会]
渡部満委員長は、2月19日に行われる再販ヒアリングで公正取引委員会を訪問すると報告した。

万引防止、粗利向上、キャッシュレス、組合一体で課題解決めざす/出版販売年末懇親会

日書連主催の第12回「出版販売年末懇親会」が12月18日、東京・千代田区の帝国ホテルで開かれ、書店、出版社、取次など約200名が出席。矢幡秀治会長は万引防止対策、粗利益向上、キャッシュレス化対応などの重点課題を説明し、理解と協力を求めた。
懇親会は渡部満副会長の司会で進行し、主催者を代表して矢幡会長があいさつ。はじめに会長就任から半年間を振り返り、「舩坂前会長から引き継いだ課題に着実に取り組んでいるところ」と話した。
万引防止対策については、「渋谷書店万引対策共同プロジェクトは非常に有効な手段ということが実証されつつある。ただ、顔認証システムの利用は個人情報保護など難しい問題が絡み、広げていくにはまだ壁がある。今やるべきことは原点に帰った地道な努力」との考えを示した。
書店環境改善の取り組みについては、「全国小売書店経営実態調査の分析結果に基づき、書店が経営を続けるためには粗利益向上が必要という考えを業界の皆さんに伝えている。会長就任前に実務者会議のメンバーとして業界3者で意見交換を重ねた。明確な成果は出なかったが、3者が『書店を減らしてはいけない』と真剣に考えるため集まったことに意義がある。現在は次へのステップとして各出版社を訪問して意見交換している」と説明した。
消費税増税に伴い実施された「キャッシュレス・ポイント還元事業」については、「キャッシュレス化を進めるのはいいが、決済手数料の負担が大きな問題。出版社や取次にも応分の負担を求めてはどうかという意見もいただいている。ただ、国が推進している施策なので、まず国に対して主張していかなければならない。日書連では各書店のキャッシュレス決済の導入状況を把握するため調査を実施することにした。出版社と取次に分析データを見ていただきたい」と述べた。
最後に「大切なのは実行。全国の組合加盟書店とともに1つひとつ課題を解決していきたい。業界の皆さんの協力をお願いする」と20年の抱負を語った。
このあと来賓の日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長があいさつし、日本出版取次協会・近藤敏貴会長の発声で乾杯した。

新理事に大谷秀生、森忠延の両氏を選任/日書連、小売公取協

日書連は12月19日、定例理事会に先立ち臨時総会を開催。役員補欠選挙を行い、退任した高市健次(和歌山・帯伊書店)、中島良太(兵庫・三和書房)の両理事に代わり、新理事に大谷秀生(和歌山・大谷書店)、森忠延(兵庫・井戸書店)の両氏を選任した。
また、出版物小売業公正取引協議会も同日、臨時総会を開催。役員補充選挙を行い、高市、中島両氏に代わり、新理事に大谷、森の両氏を選任した。

フローラル出版『史上最強のCEO』/仕入・実売に各100円の販促支援金/「街の本屋さん応援したい」日書連理事会で拡販要請

フローラル出版は12月11日、ジェームス・スキナー著『史上最強のCEO』(定価本体1800円)を、ビジネス書で初となる初版100万部で発行した。同社は「出版業界の活性化の実現」をミッションに掲げており、書店に仕入1部に対して100円、実売1部に対して100円の販促支援金を支払う。
スキナー氏は米国大使館、外務省、日本電気などのコンサルティングを手掛けた米国最大級の研修会社フランクリン・コヴィー社の日本支社長を務め、ベストセラー『7つの習慣』を日本に紹介して累計200万部突破のベストセラーに導いたことでも知られる。
12月19日の日書連定例理事会で企画説明を行ったフローラル出版の菊池大幹執行役員営業部長は「この過去に類を見ないチャレンジは、街の本屋さんへの応援施策として行うもの」と説明した。アマゾンジャパンには出荷しない。書店とは、発行日から3ヵ月間は重点販売することなどを条件とした覚書を締結した上で受注する。
『史上最強のCEO』は発売1週目で多くのチェーン書店の週間ビジネス書ランキング上位に入った。有隣堂チェーン、丸善名古屋本店で1位となるなど、「初速は非常に好調」と手応えを話した。
主な読者層は経営者とビジネスパーソンだが、今後は若者世代や女性にも広げたい考え。「長期的なスパンで戦略を立て、店頭の鮮度を保つため様々な提案をしていきたい」と今後の展開を説明した。
同社は年間を通した広告展開を予定しており、全国紙・地方紙・業界紙やJR東日本・東海・西日本・九州への広告掲載を行っている。1月8日の記者会見以降は、テレビ各局の情報番組などでの露出も増えそうだ。また、店頭でのPRを重視しており、POP、パネル、ポスターなど各種拡材を用意している。
一昨年10月に設立された同社は、これまで八乙女暁著『お金に困らない人の投資の考え方』、村井祥亮著『在宅で稼ぐ!SNS時代のMLM最新テクニック』、山内勇樹著『本当に必要な英会話フレーズだけを1冊にまとめました』を発行している。これら3点の既刊および今後発行予定の新刊についても販促支援金の対象にするという。
菊池氏は「店頭での訴求が売上を伸ばすための肝になる。新刊・話題書コーナー、ビジネス書コーナー、自己啓発書コーナーでの展開を検討していただきたい」と述べ、各都道府県組合に拡販を要請した。

「上野の森親子ブックフェスタ」出展者の募集開始

子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、出版文化産業振興財団(JPIC)主催の「上野の森親子ブックフェスタ2020」は5月3日(日・祝)~5日(火・祝)の3日間、東京・台東区の上野恩賜公園噴水広場周辺と周辺施設で開催。JPICホームページ「上野の森親子ブックフェスタ」ページで出展者の募集を開始した。2月14日午後5時に募集を締め切る。3月6日に出展者説明会を開催する予定。

児童養護施設等に図書寄贈/社会福祉に貢献、県知事から感謝状/埼玉組合

埼玉県書店商業組合の奈良俊一理事長と山口洋事務局長は12月5日、埼玉県福祉部こども安全課を訪問。「令和1年度寄贈本」について、岩﨑寿美子課長、服部孝副課長、中田晃史主幹、小濱千夏主任に趣旨を伝え、361冊の本を寄贈した。今回寄贈した本の内訳は、幼児用75冊、低学年用43冊、中学年用61冊、高学年用48冊、中・高・一般14冊、辞典120冊。
寄贈本は同課を通じて県内の児童養護施設、母子生活施設等に配本され、毎年各施設ならびに子供たちから心温まる多くの礼状が届いている。また、県知事より社会福祉の増進に貢献しているとして毎年感謝状を授与されており、本年度も授与された。
岩﨑課長は「昭和37年より57年にわたり、毎年多数の本を寄贈していただき、大変感謝している。施設の子供たちは毎年楽しみにしており喜んでいる。今、読解力の低下が問題となっている。読解力の向上には、子供の頃から読書に親しみ、多くの本に触れることが大切」とお礼の言葉を述べた。(山口洋事務局長)

春の書店くじ実施要項

▽実施期間令和2年4月20日(月)より30日(木)まで。書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数110万枚。書店には1束(500枚)3571円(税別)で頒布
▽申込方法と申込期限注文ハガキに必要事項を記入し、束単位で所属都道府県組合宛に申し込む。締切は2月20日(厳守)
▽配布と請求方法くじは取引取次経由で4月15日前後までに配布。代金は取引取次より請求
▽当せん発表5月27日(水)。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品総額682万円
当せん確率は23本に1本
1等賞=図書カード
又は図書購入時充当5000円
110本
2等賞=同1000円220本
3等賞=同500円3300本
4等賞=図書購入時に充当100円
44000本
▽賞品引き換え取り扱い書店で立て替え。図書カードの不扱い店または図書カードが品切れの場合は、お買い上げ金額に充当
▽引き換え期間読者は5月27日より6月30日まで。書店で立て替えた当せん券は7月31日までに「引換当せん券・清算用紙」(発表ポスターと同送)と一緒に日書連事務局に送付
▽無料配布店頭活性化活動の一環として、組合加盟書店全店に無料の書店くじ(50枚)を直送
▽PR活動全国書店新聞に実施要項を掲載。日書連ホームページで宣伝。「春の書店くじ」宣伝用ポスターは日書連ホームページよりダウンロード(郵送はしません)

「春夏秋冬本屋です」/「出版界の危機管理を考える」/兵庫・井戸書店代表取締役・森忠延

この1月17日で25年となる阪神・淡路大震災。もう四半世紀になるとは感慨深い。あれから日本は幾多の自然災害に見舞われています。兵庫県書店商業組合では、5年前に『阪神・淡路大震災20年の歩み』を編纂し、当時の経験、復興への道筋はホームページで閲覧できます。それを踏まえ、事業継続計画(BCP)状況表も用意し、不測の事態に対処しています。
「想定外」という言葉が独り歩きしている昨今、それをバッサリと両断する書に出会いました。『生き残った人の7つの習慣』(小西浩文著、山と渓谷社)では、危機管理に一番大切なことは「心」の問題で、気の緩みや焦りに対して、集中と平常心を優先すること、また、常に最悪を想定し、僅かな異変にも気づき、事前準備に9割の力を注ぐ大切さを痛いほど強調されています。危機管理から考察し、日常をいかに行動すべきか明解となりました。
現在の出版界の危機は、そのシステムそのものかもしれませんが、個人で思うことは、一極集中体制の恐ろしさです。東京直下型地震の到来は予測され、そうなったらと考えるだけで、日本全国の書店は震撼の事態に陥ると予想されます。これは想定内であり、最悪を念頭に置き、常に変革していくことが求められます。これは震災経験者としての年頭の言葉です。

わが社のイチ押し企画/文藝春秋・第二文藝部部長・吉田尚子

人の姿に転身する能力を持つ八咫烏(やたがらす)の一族。彼らが暮らす異世界・山内(やまうち)を舞台に描かれる和風ファンタジー、阿部智里さんの「八咫烏」シリーズは、現在累計130万部を突破し、大人気シリーズに成長しました。
2017年刊行の第6巻『弥栄の烏』で、第1部が完結となっていましたが、いよいよ今年、第2部が開幕します。
『弥栄の烏』では、一族を統べる若宮が、近習の青年・雪哉たちとともに、天敵である人喰い猿と熾烈な闘いを繰り広げ、「シリーズ全体を大きく覆す結末にしたいと考えていました」と阿部さんが語るように驚きのラストを迎えました。
そして、第2部のはじまりの巻『楽園の烏』は、そこからさらに時間を進めた世界となっています。八咫烏たちがどんな世界を生きているのか、ぜひとも実際に読んで、新たな驚きを体験してください。
阿部さんが必ず作品に盛り込んできた大きなテーマもさらに深まり、壮大な作品となっていること間違いなしの1冊です。
1月には、伊吹有喜さんの注目作『雲を紡ぐ』が刊行となります。いじめが原因で不登校になった女子高生の美緒は、ある日、母と口論になり、家を飛び出して盛岡の祖父のもとに逃げ込みます。祖父はホームスパンという毛織物の職人で、美緒は徐々にその仕事に惹かれていきます。親子のもつれた糸をほぐし、美しく暖かいホームスパンのような関係を織っていくことができるのか。現代の家族の再生の話です。
3月には、貴志祐介さんによる、2年半ぶりの単行本『罪人の選択』が刊行されます。
本格デビュー前に雑誌掲載された〝幻の短編〟や驚きのトリックが明かされるミステリーなど全4編を収録。著者のデビューからの20年が詰まった作品集です。濃厚なエッセンスをご堪能ください。

わが社のイチ押し企画/河出書房新社・営業第三部第一課・大沢直美

謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年もよろしくお願いいたします。
2014年より刊行を開始した「池澤夏樹=個人編集日本文学全集」(全30巻)は、本年2月25日搬入発売の『源氏物語 下』(角田光代訳)をもって完結いたします。全国の書店様には、事前予約活動の折から多大なるご協力を賜り長らくご拡販いただきましたこと、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。
本全集は、「池澤夏樹=個人編集世界文学全集」(全30巻)が2011年に完結した後、企画が立ち上がり、〝世界文学の中の日本文学〟と位置づけ、作家・池澤夏樹独自の視点で編まれた画期的な全集として、刊行時から大きな注目を集めました。全巻セット8万円を超える高額の全集ながら、4200セット以上の定期予約をいただいており、累計50万部を突破しております。
角田光代完全新訳の『源氏物語』(上、中巻刊行中)は、原文に忠実ながら読みやすく感情移入しやすい自然な言葉と、現代的で生き生きとした会話で、約千年前に書かれた超大作を鮮やかな訳文で現代に甦らせ、おかげさまで大好評をいただいております。最終巻となる『源氏物語下』は、四十二帖「匂宮」から五十四帖「夢浮橋」までを収録、光源氏亡きあとの宇治を舞台に源氏の息子・薫と孫・匂宮、姫君たちとの恋と性愛を描き、ドラマチックな宇治十帖が物語の最後を飾ります。作者である紫式部は、最後まで男と女のすれ違う心情を丹念に描き、この「宇治十帖」こそ、作者の思いが反映されているとも言われ、根強い支持を集める巻でもあります。
「もっとも読みやすく、美しい」と大好評の角田訳、いよいよ完結となります。ぜひご注目くださいますようお願いいたします。
また、全集完結を記念したフェア企画も多数ご用意しておりますので、引き続きご拡販下さいますよう重ねてお願い申し上げます。
本年も書店様と読者の方々にとって魅力的な諸施策を講じて参りたいと思いますので、皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/福音館書店・童話第1編集部・西裕子

「赤羽末吉」という名を知らない人でも、絵本『スーホの白い馬』と聞けば、そこに描かれた風景や少年と白馬の悲しい物語を思い出す人は少なくないでしょう。
長年読み継がれるこの作品の絵を描いた赤羽末吉は、1980年に日本人で初めて国際アンデルセン賞画家賞を受賞し、世界にその名を知られた絵本画家です。昔話絵本をはじめ、80冊を超える絵本を手がけました。
さて、今年2020年は、赤羽末吉の生誕110年、没後30年、そしてデビュー作『かさじぞう』(弊社刊)の発表から、もうじき60年という年に当たります。
そこで、わが社のイチ押し企画としてご紹介したいのが、4月に刊行予定の『絵本画家 赤羽末吉―スーホの草原にかける虹』(赤羽茂乃著)。本書では、絵本画家としての赤羽末吉の仕事を振り返るとともに、その生涯をたどる旅に皆さんをご案内します。
著者は赤羽末吉の三男研三氏の妻で、赤羽末吉研究の第一人者でもあります。
著者と画家の出会いを語るプロローグにはじまり、本編は六部構成。東京下町に育った画家の子ども時代から、青年期に渡った旧満州(中国東北部)での暮らしぶり、そして戦後日本への過酷な引き揚げによる数々の試練を経て、やがて絵本画家となり、亡くなるまで子ども達のために描き続けた画家の軌跡が綴られていきます。
時にユーモアを交えた著者の語り口はやわらかく、結婚後、義父母の家に頻繁に通い、画家と身近に接してきた著者だからこそのエピソードも盛りだくさんです。
その時代その場所の歴史的資料をひもときながら、画家赤羽自身の言葉やさまざまな出会いを広く取り上げ、徐々に〝絵本画家赤羽末吉〟の原点に迫ります。
戦中戦後をたくましく生き抜いた一人の人間の壮大なドラマとして、また一つの家族史としても興味深く読んでいただけることでしょう。
本文中モノクロとカラーで図版を豊富に紹介、巻末には画家の年譜及び作品リスト、参考文献リストを収録。

「輸送問題が大きなテーマに」相賀委員長/出版流通改善協議会・再販関連説明会

日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会の出版4団体で構成する出版流通改善協議会の「再販関連」説明会が12月13日、東京・千代田区の出版クラブビルで開かれ、約140名が出席。『2019年出版再販・流通白書№22』の概要等について説明が行われた。
冒頭であいさつした相賀昌宏委員長(小学館)は、再販のルールを守りながら、読者利益のため柔軟な発想で再販を運用していくことが協議会の眼目だと指摘。また、「輸送問題への取り組みこそ来年の大きなテーマ。輸送というよりむしろ出版の危機といってもいい。この課題にどう取り組んだかを『出版再販・流通白書』にまとめたいと思っている」と話した。
続いて原本茂委員(小学館)が『2019年出版再販・流通白書№22』について、これまで別冊にしていた「再販契約の手引き」を今号は巻末に掲載したことをはじめ、出版物流の安定維持をめざす動きや、業界で取り組む弾力運用の諸活動、出版社・取次・書店における流通改善の取り組みなど概要を説明した。
説明会には日本出版取次協会(取協)の森岡憲司常務理事(中央社)、田仲幹弘理事(トーハン)、酒井和彦理事(日販)が出席し、田仲理事が出版物流と輸送会社を取り巻く現況を説明した。
田仲理事は、輸送会社のの状況について、長時間労働が常態化している中で「働き方改革関連法」が順次施行され、時間外労働の条件規制、有給休暇の取得義務など、コンプライアンスが強く求められており、荷主側にも配慮義務が課されることになったと説明。また、慢性的なドライバー不足とともに、出版輸送では業量減少と配送先の増加による輸送効率の悪化が深刻で、輸送会社は経営的に窮地に立たされており、出版輸送から撤退する会社が今後増える恐れは充分あると訴えた。
田仲理事は「各団体それぞれの立場があると承知しているが、これまでの前提条件や慣習、既得権を捨てる覚悟でないと前に進まない。出版物流を維持するために業界を挙げて建設的な議論をしていきたい」と述べ、取協では、休配日を最終的に週休2日とすることを前提に日本雑誌協会と議論を進めており、業量平準化や発売日設定の緩和にも取り組んでいくと説明した。

11月期販売額は0・3%増/書籍は6・0%増、返品率が改善/出版科研調べ

出版科研調べの11月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比0・3%増となった。
書籍は同6・0%増、雑誌は同5・7%減だった。書籍は返品率が同3・0ポイント改善し、大きく盛り返した。雑誌の内訳は、月刊誌が同4・3%減、週刊誌が同12・4%減。週刊誌は、少年、青年コミック誌や総合週刊誌で搬入本数が少ない雑誌があったことなどから大幅減となった。
書店店頭の売上は、書籍は約5%減。雑誌は定期誌が前年並み、ムックが約8%減、コミックスが約9%増。コミックスは『鬼滅の刃』(集英社)の既刊が絶好調で2ヵ月連続増加した。

年末年始の店頭売上/トーハンは5・5%増、日販は6・0%増/コミック大幅増で前年実績上回る

年末年始(19年12月28日~20年1月3日)の書店店頭売上動向をトーハン、日販が発表した。これによると、トーハン調べが前年比5・5%増、日販調べが同6・0%増と、ともに前年実績を上回った。
トーハンの発表(1551店)によると、年末の売上は書籍3・2%増、雑誌1・8%減、コミック52・3%増、MM(マルチメディア商品)2・6%増、総合7・5%増。年始は書籍2・1%減、雑誌4・2%減、コミック27・1%増、MM0・3%増、総合1・8%増。期間計は書籍1・2%増、雑誌2・5%減、コミック42・2%増、MM1・8%増、総合5・5%増だった。
書籍は、ジャンル別ではゲーム攻略本、趣味・生活、書籍扱いコミック、コンピュータ、理工書、法経・ビジネス、日記・手帳、新書・選書が好調。ゲーム攻略本は、ポケモンシリーズの最新ゲームソフト攻略本である『ポケットモンスターソード・シールド最速ダイ攻略ガイド』(小学館)などがジャンル全体を牽引した。コミックは、『ONEPIECE95』や、テレビアニメ放映を機に人気が爆発中の『鬼滅の刃』シリーズ(ともに集英社)が上位に入り、前年を大きく上回る記録的な実績となった。
日販の発表(1717店)では、年末の売上は書籍0・8%増、雑誌3・4%減、コミック50・9%増、開発品1・9%減、合計8・2%増。年始は書籍4・1%減、雑誌5・7%減、コミック27・5%増、開発品1・0%増、合計2・2%増。期間計は書籍1・1%減、雑誌4・1%減、コミック41・6%増、開発品0・9%減、合計6・0%増だった。
書籍は、ジャンル別では総記、実用書、ビジネス、専門書、新書が前年比プラスに。実用書は、テレビで年末に紹介された『DVDでよくわかる!120歳まで生きるロングブレス』(幻冬舎)が売上を牽引。ビジネスでは『FACTFULNESS』(日経BP)が引き続き売行きを伸ばした。コミックは『ONEPIECE95』のほか『鬼滅の刃』の1~18巻が売れ続けており、対前年で記録的な大幅増となった。

出版情報をすべての書店へ/プロユースのポータルサイト「BooksPRO」3月10日開設/JPO

日本出版インフラセンター(JPO)は12月16日、東京・千代田区の出版クラブビルで出版社を対象に、出版情報登録センター(JPRO)説明会「BooksPRO『出版情報をすべての書店へ』」を開催。3月10日に開始する書店・図書館向け出版情報提供サイト「BooksPRO」について説明した。
JPROでは、一般読者向けに本の検索サイト「Books」(「PubDB」を1月6日より名称変更)を運営しているが、3月オープンする「BooksPRO」は、JPROに登録・蓄積された近刊・既刊の書誌データを書店、図書館、取次が閲覧できるプロユースのポータルサイト。説明会でJPRO管理委員会の柳本重民委員長(集英社)は、「これから出る本、近刊の書誌データが見られるのはBooksPROだけ」と重要性を強調。トーハンのTONETS‐V、日販のNOCS7との連携を進めるほか、出版社の発注サイトとの連携も視野に入れているとして、「アマゾンや特別な店だけに届いていた情報が、ウェブ上で全国の書店と共有できる。データを1つ作ってJPROやBooksPROに流せば、拡材もFAXやメールで流さなくてもこのサイトから受け取れる」と積極的な情報登録を呼びかけた。
JPRO管理委員会の田中敏隆委員長代理(小学館)は、情報登録のルールについて、1冊につき大中小の3ジャンルを登録できる「JPROジャンル」や、イメージ書影や目次・本文などの内容画像を表示できる「サンプル画像」登録などの新機能を説明。Books・BooksPRO推進会議販促WGの澤田剛リーダー(集英社)は、効果的な販促情報登録についてポイントを解説し、2月3日から情報を登録できるよう環境整備を進めていると述べた。
試し読み推進委員会の小見山康司委員長(白泉社)は、小学館が開発した試し読みシステムをJPOに運営移管し、1月からBooksでテスト稼働を開始してBooksPROでも実装すると説明。同システムはJPRO会員であることが利用条件だとして、JPROへの参加を求めた。ムック・雑誌登録推進PTの井上直リーダー(ダイヤモンド社)は、ムックの登録率が19年10月現在で36・9%と報告した。