全国書店新聞
             

令和5年9月15日号

日本ど真ん中書店会議、愛知・岐阜・三重組合が共催/書店238名来場、商談活発に/「ど真ん中書店大賞」井原忠政さんが受賞、「三河雑兵心得」シリーズ(双葉社)

東海3県の書店商談会「日本ど真ん中書店会議2023」が8月29日、名古屋市千種区の名古屋中小企業振興会館(吹上ホール)で開催された。同実行委員会が主催、愛知県書店商業組合、岐阜県書店商業組合、三重県書店商業組合が共催、日書連、東海日販会、中部トーハン会、東海中央会、書店楽結会が後援。コロナ禍のため4年ぶりの開催となった今回は、出版社や第3商材メーカーなど137社が出展、書店238名が訪れ、商談や情報交換を行った。また、東海3県の書店員と図書館員が読者に本当に届けたい本を選ぶ「日本ど真ん中書店大賞2023」が発表され、井原忠政さんの歴史時代小説「三河雑兵心得」シリーズ(双葉社)が選ばれた。
日本ど真ん中書店会議は、愛知、岐阜、三重の書店員と出版社、取次が年に一度集まり、商談、交流、情報交換を行う場。ここでの仕入れや情報交換から店頭を活性化し、出版文化の発展に貢献することを目的としている。
開会にあたり主催者を代表してあいさつした春井宏之実行委員長(愛知県書店商業組合理事長)は「本が売れず、皆さん苦労していると思う。ただ、本を読む人はいなくならない。今は苦しいが、人々が本に戻ってくる感触はある。学校で朝の読書を体験した世代が育っているし、ハリー・ポッターのような分厚い本を読みこなした世代もある。そういう流れの中で必ず波は来る」と力説。「書店も出版社も経済活動として本を売っていかなければならないのは事実だが、一方で世の中に本を読む人たちを増やす取り組みも絶対に必要。情報がないとついてこない子供たちが増え、なかなか読書に来てもらえない。書店と出版社、そして作家がSNSで横につながり、情報発信する努力をもっとしていきたい」と訴えた。
また、商談会に合わせて実施する「推し本を購入して、図書カードNEXTギフト500円をGETしよう」キャンペーンを紹介。同キャンペーンは、中日新聞掲載の「日本ど真ん中書店会議2023推し本」を購入した人を対象に、図書カードNEXTネットギフト500円が抽選で300名に当たるプレゼント企画。商談会で配布した冊子に記載したQRコードから応募フォームにアクセスし、必要事項を入力して送信する。応募期間は8月30日~10月10日。春井実行委員長は読者サービスに役立ててほしいと求めた。
続いて日本ど真ん中書店大賞の表彰式を行い、井原忠政さんに賞状と記念品を贈呈した。受賞した井原さんの「三河雑兵心得」シリーズは、戦国時代の三河を舞台に徳川家康の天下取りを雑兵の視点で描いた足軽出世物語。大賞は愛知・岐阜・三重3県の書店員と図書館員308名の投票で決定した。
井原さんは「東海3県から表彰されたのはこの作品の作家としてお墨付きをいただいたようでうれしい。これからも頑張って書いていく」と喜びを語った。
表彰式終了後、商談会がスタート。会場のいたるところで活発に商談が行われ、新刊やフェア商品の話に花が咲いた。また、井原さんと名古屋在住の作家・吉川トリコさんがサイン会を行い、来場した書店員と談笑するなど交流した。

奈良組合総会/「書店は止めてはいけない仕事」/林田芳幸理事長を再選

奈良県書店商業組合は8月3日、橿原市の橿原オークホテルで第39回通常総会を開いた。任期満了に伴う役員改選で理事9名、監事1名を再任し、総会後の理事会で林田芳幸理事長(啓林堂書店)を再選した。
組合員21名(委任状含む)が出席した総会は、川岸泰子理事(ベニヤ書店)の司会で進行し、林田理事長があいさつ。荒井裕事務局長(ディーズブック)を議長に議案審議を行い、第38期(令和4年度)事業報告、決算報告、第39期(令和5年度)事業計画案、予算案を原案通り承認可決した。
林田理事長は事業報告で、年末年始のスタンプラリーで参加図書館が増えて異なるスタンプ4つを集めた人も増加したと報告。「大変うれしく、ありがたく感じている」と述べた。また、「大切な本を提供する書店は止めてはいけない仕事」と強調。「世の中の変化に合わせて様々な工夫を凝らし、何としても続けていこう」と呼びかけた。
引き続き『浄瑠璃寺の365日』(西日本出版社)の著者・佐伯功勝浄瑠璃寺住職が講演。このあと版元、取次、輸送関係者ら21名を交え懇親会を開催。和やかに、賑やかに親交を深めた。(靏井忠義広報委員)

山形組合総会で五十嵐理事長/「2023年は潮目変わる年」/組合が変化の受け皿に

山形県書店商業組合は7月19日、山形市の山形県教科書供給所で第36期通常総会を開き、組合員23名(委任状含む)が出席した。
総会は五十嵐勇大専務理事(山形県教科書供給所)の司会で進行し、はじめに五十嵐太右衞門理事長(八文字屋)があいさつ。「ここ数年のコロナ禍が明け、様々な社会活動が通常に戻りつつあるが、変化も求められている。書店業界は潮目が変わる年を迎えているのかもしれない。組合加盟書店が直面する変化の受け皿となるよう、組合活動を継続していく」と話した。
五十嵐理事長を議長に選出して議案審議を行い、令和4年度事業報告、決算報告、監査報告、令和5年度事業計画案、収支予算案を原案通り承認可決した。
事業計画では、組合加入促進、図書館から組合加盟書店に対する図書受注の拡大、読書推進活動――などに取り組むことを決めた。
(五十嵐勇大広報委員)

読書週間標語/「私のペースで しおりは進む」

読書推進運動協議会(野間省伸会長)の主催により文化の日を挟んで10月27日から11月9日まで実施される第77回読書週間の標語が「私のペースでしおりは進む」に決まった。野間読書推進賞、全国優良読書グループ表彰などの行事が行われる。

岩手組合総会/大リーガーが読書感想文コンクール特別賞選ぶ/「菊池雄星文化プロジェクト」に今年も協力

岩手県書店商業組合(玉山哲理事長)は7月31日、矢巾町のIwakyoで第34回通常総会を開催し、組合員34名(委任状含む)が出席した。今年も新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、議決書提出の書面総会とした。総会では令和4年度事業報告、決算報告並びに監査報告、令和5年度事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業計画では、「菊池雄星文化プロジェクト岩手読書感想文コンクール」(主催=岩手日報社、日報岩手書店会)に今年も協力することを決めた。このプロジェクトは、球界随一の読書家として知られる岩手県出身のメジャーリーガー、トロント・ブルージェイズで活躍する菊池投手が「1人でも多くの子どもたちに1冊でも多くの本を読んでほしい」との思いから3年続けて協力しているもの。菊池投手が一次審査通過作すべてに目を通し、特別賞を選定する。
このほか、地域密着型の図書館整備促進事業の取り組みや親子を対象としたイベントなどを実施する予定であることが報告された。
(小原玉義広報委員)

福岡組合理事会/「万引防止街頭キャンペーン」継続へ

福岡県書店商業組合(安永寛理事長)は8月18日に定例理事会を開き、「万引き防止街頭キャンペーン」を今後も継続する方向で検討することを決めた。
毎年「海の日」の7月第3月曜日、福岡市中央区天神の西日本新聞社前とPARCO前の2ヵ所で実施してきた同キャンペーン。今年はコロナが終息に向かい4年ぶりに実施する予定だったが、経費削減などのため、やむを得ず中止とした。このため今回の理事会では、同キャンペーンの存続について検討した。
直近で同キャンペーンを実施した4年前と比べ、組合員数減少などの影響で組合財政は悪化している。さらに、同キャンペーンで配布する「万引きは犯罪です」の文字入りチラシとボールペンを製作するための費用や参加者の交通費などの諸経費も委員会費として計上している。
組合主催のキャンペーンとは別に、県警本部と県万引防止連絡協議会(万防連)主催の「万引き防止啓発キャンペーン」が毎年11月に博多駅周辺で開催されているため、両キャンペーンを統合する案もある。
出席理事からは「ここ数年の猛暑で天神界隈の人の流れが地下街に移り、地上の人通りが減少。以前と比べて広く告知しにくくなった」「遠慮なのかチラシをなかなか受け取ってくれない。街頭キャンペーンとしての効果が薄れている」と懐疑的な意見が出た。
一方、「予算が厳しいなら県などの補助金を活用することはできないか」「キャンペーン自体をもっと広く周知できるような形に変えたい」「キャンペーンは組合の年間活動の中の大きな柱の一つ。万防連設立当初から県警生活安全課を含め組合として万引撲滅に向けて行動してきた。県警は今後も万引防止に取り組むし、組合も引き続き行うべき」「街頭でキャンペーンを行うことでテレビ・ラジオ・新聞で取り上げられ、多くの人に万引防止を訴えられることを重視すべき」と継続を望む意見も出た。
賛否両論の意見を踏まえながら、長く続いている活動を簡単に終わらせず、形を変えてでも存続する方向で検討していくこととした。(加来晋也広報委員)

兵庫組合「絵本ワールド」/10月1日、西宮で開催

兵庫県書店商業組合(森忠延理事長)主催の「絵本ワールドinひょうご2023」が10月1日午前10時~午後4時、西宮市の西宮市民会館で開催される。
当日は、西宮市観光キャラクター「みやたん」を手掛けた絵本作家・たかいよしかず氏と兵庫県在住の絵本作家・森くま堂氏のサイン会、絵本原画展・パネル展、塗り絵や工作などのワークショップ、絵本キャラクターなどのフォトスポット、紙芝居や絵本の読み聞かせなど、様々な企画を用意している。入場無料。
日書連、子供の読書推進会議、日本児童図書出版協会、西宮市、西宮市教育委員会が後援。

日書連のうごき

 8月1日 本の日実行委員会(Web)に矢幡会長、春井副会長が出席。
 8月3日 書店大商談会実行委員会に事務局(Web)が出席。
 8月8日 学校図書館法公布70周年記念式典に事務局が出席。
 8月22日 全国中小企業団体中央会商業・サービス合同委員会に矢幡会長(Web)が出席。
 8月23日 文化産業信用組合理事会に矢幡会長が出席。『出版再販・流通白書』事務局打合せに事務局が出席。
 8月28日 全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。野間読書推進賞一次選考に事務局が出席。
 8月30日 全国万引犯罪防止機構理事会に矢幡会長が出席。
 8月31日 経済産業省、中小企業庁との意見交換に矢幡会長、春井、平井両副会長が出席。

日販調査店頭売上/6月期は前年比8.1%減/学参2年ぶり前年超えも、コミックが不振

日本出版販売(日販)調べの6月期店頭売上は前年比8・1%減だった。雑誌は同7・0%減、書籍は同5・3%減、コミックは同13・1%減、開発品は同5・1%減と全ジャンルで前年割れとなった。
書籍では、学参が21年7月以来、約2年ぶりの前年超え。『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』が売上を牽引した。コミックは、前年同月に「東京卍リベンジャーズ28」「キングダム65」が発売された影響などで、前年を大きく下回った。

「春夏秋冬本屋です」/この「沖縄本」がスゴい!/沖縄・大城書店代表取締役社長・大城洋太朗

沖縄県は本土に比べ読書人口が少ないと言われております。その上ネットやスマホ等の普及により読書離れに拍車がかかり、そのためか、アルバイト面接で「好きな本はありますか?」と聞いても「読書はしません」との答えが返ってきます。
そのような現状を打開するため、沖縄県内の本屋、取次、出版関係者が垣根を超えて協力し、「ゲキ推しの1冊!この『沖縄本』がスゴい!」という企画を行っております。
この企画は、実行委員会が県内出版社発行のお薦め本を1冊選び、県内本屋で大々的に販売するもの。受賞作をマスコミ各社に取り上げていただき、普段本屋にご来店にならないお客様に来店を促し、沖縄本の良さを伝えることができればとの思いで行っております。今年で5回目を迎え、発表のたびに毎回大きな反響をいただき、受賞作の売上げは上々です。
この企画の発案者はジュンク堂書店那覇店エグゼクティブプロデューサーの森本浩平さんですが、僕が実行委員長を務めさせていただいております。頼まれごとは断れない性格が仇となりましたが、毎回楽しく実行しております。
良い本との出会いは夜凪の帆風のようです。その出会いの羅針盤になれればと思いますが、実は僕は読書が苦手ということは秘密でお願いいたします。

出版科研調べ、紙の出版販売金額/今年上期は8.0%減/巣ごもり終息、物価高が影響

日本出版販売(日販)調べの6月期店頭売上は前年比8・1%減だった。雑誌は同7・0%減、書籍は同5・3%減、コミックは同13・1%減、開発品は同5・1%減と全ジャンルで前年割れとなった。
書籍では、学参が21年7月以来、約2年ぶりの前年超え。『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』が売上を牽引した。コミックは、前年同月に「東京卍リベンジャーズ28」「キングダム65」が発売された影響などで、前年を大きく下回った。
[文芸書、ゲーム攻略本などがプラス/書籍]
紙の出版物の動向をみると、書籍の販売金額は3284億円、前年同期比6・9%減。書籍は出版物の買い控えが顕著に表れ、四半期別の販売金額では1~3月期は同5・5%減、4~6月期は同9・0%減と、月を追うごとに減少幅が拡大した。リアル書店店頭の売行きは毎月5%以上の減少が続くなど厳しい状況。Amazonなどネット書店の販売も伸び悩んだ。文芸書は村上春樹の長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)の発売もあって健闘。「ポケモン」関連が売れたゲーム攻略本や、国内ガイド本の需要が高まった旅行ガイドがプラスになったが、その他の主要ジャンルは全て大きく落ち込んだ。
推定販売部数は、同8・5%減の2億4639万冊。新刊平均価格は同4・9%(62円)増の1315円、出回り平均価格は同1・8%(23円)増の1285円だった。特に新刊平均価格の上昇が大きく、21年は2・8%増、22年は2・2%増と2%程度の増加で推移していたが、22年に値上げを検討していた出版社が今年一気に定価改定する動きがみられた。金額返品率は同1・9ポイント増の32・8%。返品率は15年から21年にかけて毎年減少を続け、22年は0・1ポイントの微増と、長らく改善傾向にあったが、23年は販売不振で返品が急激に増加。1~6月でみると全ての月が前年より増加した。
新刊点数は同2・8%(933点)減の3万2007点で、このうち取次仕入窓口経由が同1・1%減の2万3139点、注文扱いが同7・1%減の8868点。新刊推定発行部数は同3・6%減、推定発行金額は同1・2%増で、平均価格が同4・9%上昇したことにより発行金額は前年を上回った。発行部数ベースでみると、文庫本は同6・0%減、新書本は同5・9%減といずれも初版を大きく抑えている。一方、絵本は同3・6%増。ヨシタケシンスケ、柴田ケイコなど人気作家の新刊や、ほるぷ出版のしかけ絵本が大部数で刊行され、プラスになった。
23年上半期のジャンル別動向をみると、文芸書は微増。4月に初版30万部で発行された村上春樹の『街とその不確かな壁』は、3刷38万部に。本屋大賞受賞の凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)は40万部を突破。書店員の後押しやプロモーション効果で、宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)は新人作家の作品ながら累計7万5千部と注目された。ビジネス書は約10%減。『人は話し方が9割』(すばる舎、19年刊)や『運動脳』(サンマーク出版、22年刊)などが前年に続いて売れたが、新たに牽引するタイトルが少なかった。文庫本は約5%減。東野圭吾『クスノキの番人』(実業之日本社文庫)、湊かなえ『カケラ』(集英社文庫)など定番人気作家の作品が売れたが低調だった。新書は約8%減で、前年に好調だったシニア向け生き方本の勢いが落ち着いた。児童書は約5%減。鈴木のりたけの絵本『大ピンチずかん』(小学館)が34万部とヒットしたが、読み物などその他の分野が苦戦した。
[週刊誌返品率は過去最高の46.0%]
雑誌の推定販売金額は2197億円で前年同期比9・7%減。内訳は、月刊誌が同9・6%減の1839億円、週刊誌が同10・6%減の358億円。月刊誌の内訳は、定期誌が約8%減、ムックが約9%減、コミックス(単行本)が約12%減。コミックスは約26%もの減少を記録した前年同期からさらに1割以上落ち込んだ。
推定販売部数は同14・2%減の3億3915万冊。内訳は、月刊誌が同13・9%減の2億5260万冊、週刊誌が同15・0%減の8655万冊。一方、平均価格は同4・8%(30円)増の651円。内訳は、月刊誌が同5・0%(35円)増の733円、週刊誌が同5・2%(21円)増の425円。原材料や流通コストの増加、付録のリッチ化もあって平均価格が大幅に上昇しているため、推定販売部数の減少幅は推定販売金額より大きくなっている。定期誌は好調なジャンルはなく、特定のアイドルや付録など、熱心なファンやお得感に反応した読者が購読するという形で、単発で売れる傾向がますます強まっている。コミックスは『ブルーロック』(講談社)や『【推しの子】』(集英社)などアニメ化でブレイクした作品は登場したが前年には及ばず。
金額返品率は同1・4ポイント増の42・7%で、内訳は月刊誌が同1・1ポイント増の42・0%、週刊誌が同2・7ポイント増の46・0%。月刊誌はコミックスの好調で20年に40%を切るなど減少傾向にあったが、21年以降は再び増加に転じ、19年並みに戻った。週刊誌は過去最高の返品率を記録した。
創復刊誌点数は同8点減の14点。休刊誌点数は同14点減の41点だった。『週刊ザテレビジョン』(KADOKAWA)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などが休刊した。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が同1・9%(27点)減の1358点、ムックは同7・4%(214点)減の2668点。1号を1点とした付録つき雑誌の点数は同2・2%(103点)減の4613点。雑誌扱いコミックスの新刊点数は同1・0%(46点)増の4580点。
[電子出版は7.1%増と堅調に推移]
電子出版の市場規模は2542億円で前年同期比7・1%増となった。内訳は、電子コミック(電子コミック誌含む)が同8・3%増の2271億円、電子書籍が同0・4%減の229億円、電子雑誌が同8・7%減の42億円。市場全体における電子出版の占有率は31・7%。
20年から21年にかけての巣ごもり特需は完全に終息し、コミックは1桁後半の成長、書籍は前年並み、雑誌は漸減という傾向が22年から続いている。コミックは、各ストアの販売施策やオリジナル作品の強化、縦スクロールコミックの伸長などで成長が続く。書籍は、写真集やライトノベルが好調だった一方、文芸、自己啓発、新書、ビジネス書等は伸び悩んだ。雑誌は、定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員減少がゆるやかになり、マイナス幅は1桁に収まって若干落ち着きを見せた。

中央社/22年度決算は減収減益/返品率0.2ポイントの改善

中央社は8月17日、東京・板橋区の本社で定時株主総会と取締役会を開き、2022年度(22年6月1日~23年5月31日)決算と役員人事を決定した。総売上高は前期比2・8%減の202億5447万円、営業利益は同10・6%減の3億1894万円、経常利益は同16・0%減の1億3884万円、当期純利益は同17・2%減の7645万円と減収減益の決算だった。
部門別の売上高は、雑誌が同6・3%減の113億8316万円、書籍が同6・3%増の76億629万円、特品等が同20・4%減の10億4057万円。
雑誌部門のうち、コミックスを除く雑誌は同3・3%減、雑誌扱いコミックスは同7・6%減。コミックスは巣ごもり需要の反動が影響、コミックスを除く雑誌は生活必需品の高騰が響きマイナス成長となった。書籍部門は、送品改善施策で返品率が着実に減少しており、前期は雑誌同様に巣ごもり需要の反動で売上が極端に低下していたが、前期に出版が滞っていた書籍扱いコミック新刊の刊行が再開して回復基調にある。
返品率は雑誌が同0・2ポイント増の28・0%、書籍が同1・2ポイント減の29・2%、特品等が同1・1ポイント減の9・8%。総合で同0・2ポイント減の27・7%と改善した。経費面では、全部門での利益創出と経費削減の取り組み「ハイ・パフォーマンス・プロジェクト」の効果で販売費及び一般管理費の合計は同1・0%減少した。
23年度は売上高同3・1%増の206億5540万円、返品率同1・8ポイント減の25・9%を目指す。
役員人事では取締役、執行役員全員が重任された。
 [役員体制]
代表取締役社長 経営計画本部長    森岡 憲司
専務取締役 営業本部長兼経営計画本部副本部長兼市場開発室担当兼仕入部担当兼仕入部長  山本 章雄
同 管理本部長兼経営計画本部副本部長兼総務部担当兼人事部担当兼取引経理部担当兼物流管理部担当兼総務部長    片山 秀樹
取締役 営業本部副本部長(営業部門)兼第一営業部担当兼第二営業部担当兼第三営業部担当兼市場開発室長      竹内 純一
同 情報システム部担当兼人事部長兼経営計画推進部部長兼人事課長
       早川 和邦
監査役    岡田 益男
執行役員 物流管理部長
       木山 良樹
同 第二営業部長兼市場開発室部長兼配本課長
       足立 良二

トーハンとNebraskaが資本業務提携/「MUJIN書店」導入を拡大

トーハンは8月31日、Nebraskaと資本業務提携契約を締結したと発表した。トーハンは今年3月から7月に山下書店世田谷店(東京・世田谷区)で、Nebraskaが開発した無人営業化ソリューション「MUJIN書店」の実証実験を実施。結果が順調に推移したことから、両社は「MUJIN書店」の導入店舗拡大や新業態開発に向けて取り組みを継続することで一致した。
また、「MUJIN書店」のメディアライン曙橋店(東京・新宿区)への導入を決定した。山下書店世田谷店に続く2店舗目で、導入時期は23年11月を予定。店舗運営はいずれもトーハングループのスーパーブックスが行っている。
山下書店世田谷店での「MUJIN書店」実証実験は、3月20日~7月31日実施。午前10時~午後7時は有人、午後7時~翌日午前10時は無人で営業という、有人・無人をハイブリッドに組み合わせた24時間営業モデルの実験を行った。「MUJIN書店」の利用方法は、まず山下書店世田谷店のLINE公式アカウントを友だちに追加し、店頭の入店用QRコードをスマートフォンで読み取る。すると自動ドアが解錠され、いつでも入店できる。会計は完全セルフかつキャッシュレス。退店時は作業不要で、店を出ると自動でロックされる。
実証実験対象期間の売上前年比は6・6%増で、全国実勢値を12・1ポイント上回る結果になった。また、販売管理費は対前年同時期で7・9%減、売上高対営業利益率は同4・2ポイント増と、収益面でも大きな改善効果があった。防犯・セキュリティ面では、顕著な万引き被害増加は観測されず、店内における事件、事故、迷惑行為などのインシデントの発生もなかった。同店は8月1日以降、「MUJIN書店」の正式運用へ移行済みで、午後7時~翌日午前10時の無人営業を継続している。
「MUJIN書店」は、山下書店世田谷店、メディアライン曙橋店に続き、年度内に複数店舗への導入を予定。24年度以降は、トーハングループにとどまらず広く一般書店への導入提案を計画している。

「NOCS0」9月7日から提供開始/日販の書店向け新発注プラットフォーム

日本出版販売(日販)は、〝誰でも・どこでも・無料で〟利用できる書店向け新発注プラットフォーム「NOCS0(ノックスゼロ)」の提供を9月7日から開始した。日販取引口座を持つ書店は、Web上で利用登録するだけで利用が可能となる(ログインページ=https://nocs0.nippan.co.jp/)。また、利用登録手順を動画で確認できる(https://www.youtube.com/watch?v=oFPGDZe8Dtc)。
「NOCS0」は、書店の経営環境が一層厳しさを増す中で、書店の運営コストの負荷を軽減することを目的に、新たな書店支援サービスとして提供を始めたもの。NOCS0をフリーの業界共通オープンプラットフォームとすることで、出版業界全体の情報流通の最適化も図っていく方針。
NOCS0は、誰でも簡単に操作できるシンプルで直感的な使用感に加え、タブレットやスマートフォンにも対応し売場や商談先で即座に発注可能。月額利用料は無料で、ユーザーIDも無料で複数作成可能となっている。
今回は、特にユーザーニーズの大きい商品検索・発注機能のみ搭載した形でサービスを開始。今後の搭載機能は下記の①~⑤を予定しており、いずれも無料で利用可能とすることを想定している。23年9月以降順次開発を進め、約2年をかけて完了させる予定。
①情報配信機能=商品情報や販促情報をNOCS0を通じて届ける。②新刊申込機能=新刊の申込(店頭分・客注分)がNOCS0で行える。③企画申込機能=日販や出版社のMD企画等の確認、申込がNOCS0で行える。④問い合わせ機能=日販の各部署への問い合わせがNOCS0で完結するようになる。⑤在庫連携=日販の在庫管理システム「サポートC」(有料)との連携を行う。
なお、現行サービスの「NOCS7」も継続して利用可能。NOCS0のサービス開始に合わせ、23年10月利用分より1IDあたりの月額利用料金を5千円にディスカウントする。

「本屋のあとがき」/京極夏彦最新作が登場!/ときわ書房文芸書・文庫担当・宇田川拓也

2023年9月、文芸シーン最大のトピックスといえば、14日にノベルス・単行本同時発売となる、京極夏彦『鵼の碑』(講談社)だろう。
昭和20年代、古本屋「京極堂」を営む中禅寺秋彦が、タイトルに冠された妖怪にまつわる不可解な事件や謎を「憑物落とし」の形で解き明かす一連の作品は、シリーズ累計1000万部を超える絶大な人気を誇る。
『鵼の碑』は、長編作品としては『邪魅の雫』以来、じつに17年ぶりとなる新作で、刊行予告が発表されるやネット上で驚きと歓喜の声が大いに沸いた。私もそんな声を上げたひとりであるわけだが、ふと30年近く前の記憶が甦ってきた。シリーズ第1弾、著者デビュー作でもある『姑獲鳥の夏』が書店に並んだ、まだ高校生だった頃の記憶だ。
不思議なタイトル、端正な印象の筆名、ミステリとも伝奇小説とも思える内容紹介、綾辻行人・法月綸太郎・竹本健治による絶賛コメント、そして謎めいた著者近影。とにかくこれは読まねばならない。そう突き動かされ、すぐに読了したのだが、白状すると、じつはこのとき、あまりピンと来なかった。雰囲気は好みだが、仕掛けで読ませる話ではないのだな、くらいの感想だった。ところが第2弾『魍魎の匣』で仰天、心を鷲掴みにされてしまった。あの衝撃は、いまなお色褪せることはない。
本稿執筆時、まだ『鵼の碑』は発売されていないが、版元のご厚意でひと足先に拝読した。期待は裏切られないとだけ、お伝えしておこう。