全国書店新聞
             

平成29年3月15日号

小売10団体が中小企業庁長官と懇談/日書連、書店経営改善に向けた取組み報告/中小小売商サミット

日書連など小売10団体で構成する全国中小小売商団体連絡会は、2月28日に東京都千代田区の経済産業省別館で第16回全国中小小売商サミットを開き、宮本聡中小企業庁長官と懇談。日書連の舩坂良雄会長は、書店の粗利益30%実現、出版物への消費税軽減税率適用、地元書店による図書館納入など、日書連が書店の経営改善に向け取り組んでいる活動について報告した。
会議の冒頭、主催者代表あいさつで全国商店街振興組合連合会の坪井明治理事長は「今回の中小小売商サミットは、各団体が置かれている現在の厳しい状況を理解いただきたいという趣旨で開催した。日本経済はアベノミクスの効果で緩やかな回復基調にあると言われるが、地方を中心に中小小売商は消費の低迷から回復の実感が得られていないのが現状だ。さらに平成31年10月から消費税率引上げが予定され、環境は厳しさが続くと考えている。中小小売商は厳しい経営環境の中にあっても地域コミュニティーの担い手として、地域のイベントや伝統文化の継承など公共的な役割を果たしていく所存だ」と述べた。
続いて、各団体が近況報告を行った。日書連の舩坂会長は、最盛期に1万2千店あった全国の組合加入書店が4千店を割り込んでいると現状を報告。「20~22%の低い粗利では店をやっていけず、新刊書店がない市町村は約350と全自治体の約25%に及ぶ。書店の粗利30%の実現について出版社、取次と話し合いを持ちたいと考えている。地域に根差した書店の存在は、文字・活字文化の発展や、子どもの読書力に大きな影響を及ぼすという観点で活動を進めていきたい」と述べた。
消費税増税については、10%引上げ時の軽減税率適用運動を推進、新聞は適用が決まったが書籍・雑誌は見送られ、有害図書の線引きを出版業界で自主的に行うよう求められている問題があると説明。話し合いで問題を解決しながら、書籍・雑誌への適用を求め運動を続けていくと述べた。
また、活字文化議員連盟が設置した「全国書誌情報の利活用に関する勉強会」が昨年4月に出した答申で、図書納入における地域書店の優先や、競争入札範囲の見直しなどの施策案を提示したことに言及。地域文化の活性化のためにも、この提言が速やかに法制化されるよう活動していきたいと述べた。
この他、雑誌の定額読み放題サービスが書店店頭に与える影響や、万引防止対策について触れて、「地元に密着した書店が健全に経営していけるよう、問題を1つずつ解決していきたい」と結んだ。
宮本長官は「皆さんの意見をしっかり受け止め、政策に役立てていく。日本全体の経済は数年前に比べると明らかに好転しているが地域や事業、規模によって影響はさまざまで、全国の小売の方が経済の好循環を実感していただけるように我々もいろいろな施策を組んでいきたい」と述べた。

書店くじ立替金振り込みました

昨年秋実施した「2016読書週間書店くじ」で各書店にお立て替えいただきました1等1万円、2等千円、3等5百円、4等百円の清算業務は終了いたしました。入金をご確認くださいますようお願いします。
書店くじ係

BOOKEXPO、11月7日開催

「BOOKEXPO2017」実行委員会(洞本昌哉実行委員長=ふたば書房)は、「BOOKEXPO2017秋の陣~響け!書店心~」を11月7日(火)に大阪市のグランフロント大阪地下2階「コングレコンベンションセンター」で開催する。
「BOOKEXPO」は2011年にスタート、6回目の開催となった昨年は1043人の書店人が来場し、全国で最大規模の商談会となった。今年は実行委員の「いつも店頭で接している書店人の心遣いが、お客様に響いている」の一言から、『響け!書店心』をテーマに開催する。

東京国際BF、今年は休止に/18年9月開催へ準備進める

東京国際ブックフェア(TIBF)を主催する東京国際ブックフェア実行委員会とリードエグジビションジャパンは、今年のTIBF開催を休止し、2018年9月の開催をめざして準備を進めると発表した。
TIBFは第23回を迎えた昨年、会期を7月から9月に変更し、仕入・著作権取引など商談に重点を置いた展示会から、読書推進や読者謝恩に特化した展示会に衣替えして開催していた。今回の決定について、読者向けの展示会は一定の成果を上げたが、より多くの出版社に出展を促し、魅力ある展示会にするために準備期間が必要と判断したとしている。

『黒島の女たち』『黒島を忘れない』ノンフィクション2点を増売/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は3月2日に東京都千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。各委員会の主な報告・審議事項は次の通り。
〔組織委員会〕
平成29年度は改選期にあたるため、役員候補者の選出についてエリア会の開催を要請しており、3月理事会当日まで3エリアが開催したと報告。残るエリアにも開催を要請した。
〔再販・発売日・倫理委員会〕
土曜休配日が年13日となる2017年度「年間発売日カレンダー」が決定したことを報告。カレンダーの設定に当たっては、事前に意見交換の場を持つことを日書連として日本出版取次協会に申し入れたと舩坂理事長が説明した。
公正取引委員会が2月27日に行った平成28年度著作物再販ヒアリングの模様にについて、日書連書店再生委員長として出席した本間副理事長が報告した。
〔事業・読書推進委員会〕
増売企画の紹介で、文藝春秋『黒島の女たち特攻隊を語り継ぐこと』(城戸久枝著)、西日本出版社『黒島を忘れない』(小林広司著、東良美季・小林ちえみ構成)のノンフィクション2点について、城戸久枝氏、小林ちえみ氏、西日本出版社・内山正之社長、文藝春秋・山田憲和文藝出版局第一文藝部副部長、同・柳太呂央書籍営業部副部長が出席。城戸氏と小林氏が、自著に込めた思いや執筆の背景などを説明した。
また、ウェッジ『東京・鎌倉仏像めぐり』の組合員限定報奨金付き増売企画や、レジ回り商品として神宮館「水琴鈴」について企画説明があった。

九州選書市は9月20日開催/水俣市で日書連九州ブロック会

日書連九州ブロック会(中山寿賀雄会長)が2月2日に熊本県水俣市の「湯の児海と夕やけ」で開催され、各県組合理事長と九州雑誌センター役員、輸送会社役員が出席した。
会議の前に、中尾隆一氏(日書連図書サポート部会専門委員)から、日書連マークの学校図書館への導入について説明があった。
中山会長を議長に行った議案審議では、第1号議案の平成28年決算報告、監査報告、平成29年予算案を一括して諮り、原案通り承認可決した。
第2号議案の平成28年事業報告、平成29年事業計画では、教科書の電子化問題について質疑応答があった。また、今年の九州商談会(九州選書市)は9月20日(水)に九電未来館で開催することを決定した。第3号議案では、来年の九州ブロック会開催地を鹿児島県奄美市にすることを決めた。
九州雑誌センターからは、「処理冊数は86・7%、約2百万冊の減少で、各県への戻し金はやや減額せざるを得ない」と報告があった。
テジマからは、「物量が減り、売上減が続いているが、コンビニを中心に配送する店舗が増え、人的なやり繰りが大変になっている」と報告。天龍運輸からは「コンビニ等の配送先の時間指定があり、労働条件が厳しくなっている」と報告があった。

新連載

4月1日号から新連載「春夏秋冬本屋です」が始まります。街の本屋が日々の仕事を通じた喜びと手応えを綴ります。執筆陣は以下の4氏です。ご期待ください。
福島・高島書房 高島瑞雄氏
神奈川・長谷川書店 長谷川静子氏
滋賀・ますや書店 岩根秀樹氏
大分・おおくま書店 大隈智昭氏

戦争の記憶、次代に語り継ぐ/『黒島の女たち』城戸久枝さん、『黒島を忘れない』小林ちえみさん

ノンフィクション作家の城戸久枝さんは、太平洋戦争末期に鹿児島県沖の黒島に不時着した特攻隊員と島民との交流を題材にした『黒島の女たち特攻隊を語り継ぐこと』(文藝春秋)を出版した。
黒島は本土の基地から出撃した特攻機が沖縄へと進路を変える地点で、不時着して瀕死の重傷を負った隊員を、島民が乏しい食糧を集めて懸命に看護したという。命を救われた元隊員が島に平和観音像を建立し、島の人々との交流が現在も続いている。
城戸さんは、中国残留孤児だった父親の半生を追った『あの戦争から遠く離れて』で大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。黒島の話を知ったのは、映画監督の小林広司さん(故人)が2004年に手がけたドキュメンタリーと、小林さんが遺した原稿を妻のちえみさんが引き継いで書き上げた『黒島を忘れない』(西日本出版社)に出会ったからだった。
広司さんはドキュメンタリー放映後、黒島の記録を執筆し続けたが、がんに侵され08年に死去。翌年黒島を訪れたちえみさんは、「この島のことをもっと多くの人に知ってほしい」と考え、何度も黒島を訪ねて島の人々と交流を深めながら原稿を完成させた。『黒島を忘れない』は14年にクラウドファンディングで出版、インターネットで販売されたが、西日本出版社の内山正之社長が「この本が本屋に並んでいないのは悲しい」と出版を快諾。東京の目黒区八雲出身のちえみさんは、地元の八雲堂書店や沿線の町の本屋に飛び込みで営業した。
城戸さんは、黒島を取材し、ちえみさんから話を聞く中で、特攻隊員を懸命に介抱した島の女性たちと、広司さんを自宅で看取り、苦労しながらも黒島の記録を出版したちえみさんの姿が重なって見えたと語る。また、島のお年寄りたちが戦争の時代を昨日のことのように語り、青春を振り返るような生き生きとした表情を見せることに驚きを感じ、戦争の悲惨な体験ばかりではなく、日常の記憶もまた歴史を紡ぐ大切な一部になるのだということに気が付いたという。
城戸さんは「特攻隊員の話は封印されかけていた記憶だったが、それを広司さんが取り戻し、ちえみさんが受け継いだ。『黒島の女たち』を通じて、戦争を体験していない方々が、戦争を語り継いでいくことを考えるきっかけになれば」と話した。(土屋和彦)

図書館納入問題等の議論進める/大阪理事会

大阪府書店商業組合(面屋龍延理事長)は2月4日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催した。
庶務報告では、2月1日に行われた日書連近畿ブロック会による日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長の講演会、「まちライブラリーブックフェスタ」、「東淀川えほんまつり」について説明があった。
面屋理事長は、書協・相賀理事長の講演会について、公共図書館の入札や、消費税軽減税率の問題で説明があり、関連事項は各委員会を開催の上検討したいと述べた。
各委員会からの主な報告事項は以下の通り。
〔読書推進委員会〕
2月9日開催予定の読書推進実行委員会には、大阪府立図書館からPOPと展示会について説明があるため出席予定と説明。「本の帯創作コンクール」課題図書最終選考会は4月4日に決定したと説明した。
〔出版販売倫理委員会〕
大阪府警本部で2月28日開催される「大阪府万引き総合対策協議会」設立総会に出席予定と報告した。
〔図書館・情報化委員会〕
書協・相賀理事長の講演を受けて問題を議論する図書館委員会を4月以降に開催する予定と説明した。
(石尾義彦事務局長)

読み聞かせや、わらべうたを楽しむ/東淀川えほんまつり

「第4回東淀川えほんまつり」が2月12日、大阪市東淀川区の東淀川区民ホールで開催された。
この催しは、大阪府書店商業組合と出版文化産業振興財団(JPIC)、東淀川おはなしボランティア「とことこ」、JRAC(JPIC読書アドバイザークラブ)関西支部が共同して東淀川区から受託した「平成28年度絵本読み聞かせ事業」の年度末最大のイベントとして行われたもの。
開会にあたり、金谷一郎東淀川区長が「4年間続けてきた幼児の読み聞かせを、来年も続ける予算化が出来た」とあいさつした。
イベントでは、愛知県西尾市の実家が書店を営業している絵本作家・三浦太郎さんによる読み聞かせとワークショップと、大阪のわらべうたの普及活動をしている岩出景子さん(野の花文庫主宰)によるわらべうた講座が、それぞれ午前と午後の2回行われた。
三浦さんの読み聞かせは『くっついた』(こぐま社)と『でんしゃがきました』(童心社)の2冊で、子どもたちは目を輝かせて聞き入った。切り絵のワークショップは、11枚の色紙を丸・三角・四角に切り取っていき、小鳥を描くというもの。子どもが切り紙で作った絵を、籠の図柄が印刷されたビニール袋に三浦さんが入れて手渡すと、子どもたちは歓声を上げて受け取っていた。
岩出さんは、今は歌われる機会が少なくなったわらべうたを幼児に楽しく身振り手振りで歌いかけた。
「えほんまつり」にはこのほか絵本展と工作コーナーを設置、昨年より多い約500人の参加があった。
(石尾義彦事務局長)

河出書房新社・日本ハム栗山監督の自叙伝を推薦本に/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は2月21日午後2時から、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催した。
理事会では、河出書房新社から依頼のあった、3月発売予定の北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督の自叙伝『栗山魂』について、北海道組合の推薦本とし、拡材等を組合員に発送することを承認した。
また、2017年度「年間発売日カレンダー」について説明。事務局から中間決算や書店くじの受注枚数について報告した。
(事務局・髙橋牧子)

本が大好きなまちに!/作家・書店・編集者がトークイベント/神奈川県茅ケ崎市

昨年6月に始動した「本がだいすきプロジェクトちがさき」の一環として、トークイベント「一冊の本が届くまで」が2月4日、神奈川県茅ヶ崎市の茅ヶ崎市立図書館で開かれ、同市出身の絵本作家・加藤晶子、JR茅ヶ崎駅前で営業する長谷川書店ネスパ店店長・長谷川静子、講談社の編集者・長岡香織の3氏が参加。本を作ることや販売することの喜びを語り合った。
このプロジェクトは、「すべての市民が本を好きになってほしい」という思いを形にするため、茅ヶ崎市立図書館が地元書店やNPO団体とともに協力しながら啓発事業を行うために立ち上げたもの。本にまつわる様々なイベントにプロジェクトの目印となるロゴをつけたり、本に携わる関係者がオリジナル缶バッジをつけるなどして、茅ヶ崎市が「本がだいすきなまち」になるよう取り組みを進めている。
トークイベントでは、加藤氏が講談社絵本新人賞を受賞したデビュー作『てがみぼうやのゆくところ』(講談社刊)を自ら読み聞かせしたあと、応募作が1冊の書籍になるまでについて「作品はそのまま世に出せるわけではない。担当編集者の長岡さんと共同作業でブラッシュアップした。良い編集者との出会いは大切」と語り、長岡氏は「原稿がもう一度生まれ変わるためのお手伝いをすることが編集者の役割」と応えた。
長谷川氏は、昨年、自店の恒例イベント「絵本とおはなしの会」の特別ゲストに加藤氏を招いたことに触れ、「茅ヶ崎で生まれ育ち、茅ヶ崎で本屋の仕事をしている私がやるべきことは、地元作家のデビューを市民にアピールして盛り上げること。その事例を作りたかった」と話した。
会場を訪れた約40人の市民は3氏の話に熱心に耳を傾けていた。

近畿ブロック会講演会/地域書店にもっと利益を/日本書籍出版協会理事長・相賀昌宏氏

日書連近畿ブロック会(面屋龍延会長=大阪府書店商業組合理事長)は2月1日、大阪市北区の大阪駅前第3ビルで、日本書籍出版協会・相賀昌宏理事長(小学館社長)の講演会「出版業界の状況と問題点」を開き、会員書店や取次ら計83名が聴講した。講演の概要を紹介する。
【図書館・関係各社と協力体制必要/地元書店の図書納入参入/各県書店組合窓口に】
直近の大阪府書店商業組合の理事会で議論された内容のポイントを事前に教えていただいた。今日はそれをもとに出版業界の諸問題について話をしたい。
まず、公共図書館への図書納入における地元書店参入の問題だが、総務省のホームページに入札・契約制度について考え方が詳しく説明されているので、全文を読み上げる。
「地方公共団体における調達は、その財源が税金によって賄われるものであるため、より良いもの、より安いものを調達しなければなりません。
そのため、地方公共団体が発注を行う場合には、不特定多数の参加者を募る調達方法である『一般競争入札』が原則とされています。
一方、この原則を貫くと調達の準備に多くの作業や時間が必要となり、結果として当初の目的が達成できなくなるなどの弊害が生じることがあり得ます。このため、『指名競争入札』や『随意契約』による調達が例外的な取り扱いとして認められています。
さらに地域活性化の観点からは、地元企業が受注し地域経済に貢献することも求められており、この点も踏まえ調達がなされる必要があります。
以上について制度面からまとめると、地方公共団体の調達について定める地方自治法では、最も競争性、透明性、経済性等に優れた一般競争入札を原則として掲げつつ、一定の場合には、指名競争入札、随意契約による方法により契約を締結することが認められています。
また、地方自治法施行令では、入札に参加する者の資格要件について、事業所所在地を要件(いわゆる地域要件)として定めることを認めるとともに、総合評価方式による入札では、一定の地域貢献の実績等を評価項目に設定し、評価の対象とすることが許容されており、これらをもって地元企業の受注機会の確保を図ることが可能となっています。
さらに、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律において、地方公共団体は、国の施策に準じて、中小企業者の受注の機会を確保するために必要な施策を講ずるように努めなければならないとされています。
各地方公共団体においては、これらの規定を適切に活用していくことが求められています」
この入札・契約制度の考え方に基づいて、あくまでも法律の範囲内で地元の中小書店が利益を受けられる方法を考えたい。入札では本の値引きがあるので、地元書店が大資本に勝つことは実際問題として難しい。地域の公共図書館が求めるきめ細かなサービスを地元書店でも提供できる仕組みを検討するべきだ。各都道府県の書店商業組合を窓口として、地元書店と公共図書館、関係会社・団体等が話し合って協力関係を構築することが、現実的な解決策と考えている。書協は図書館問題で地元書店との結びつきの強化に努めており、問題点を洗い出しながら進めていきたい。
昨年12月31日大晦日を特別発売日として雑誌の特別号、書籍の特別仕立ての新刊を一斉発売した日本雑誌協会(雑協)の取り組みは、数字の詳細はまだ出ていないが、年末年始の取次などからの報告を見ると良い結果を出せたのではないかと思っている。書店の皆さんの協力にこの場を借りて感謝申し上げる。
反省点は準備不足だったこと。何人かの書店さんから「拙速だった」と言われたし、「パートを出さなければならなかったので人件費を考えると損失になった」など批判的な意見もいただいている。
雑協の次世代雑誌販売戦略会議が手掛ける新しいビジネスはあまり時間をかけてやることができないので賛否両論あるが、若い人たちを中心に「えいやっ」とやることは、それはそれでいいのではないかと私は思っている。ただ、反省すべきところは客観的かつ冷静に反省しようと次世代雑誌販売戦略会議の井上直議長に言っている。雑協の鹿谷史明理事長も同じ考えだ。売上や返品などのデータを分析して、今後のことを考えていきたい。
出版業界の今年最大の問題は「輸送問題」。日本出版取次協会(取協)は17年度「年間発売日カレンダー」で土曜休配日を前年度から大幅に増やすことを提案している(※編集部注=日書連、雑協、取協は土曜休配日を前年度から8日増の13日とすることを2月開催の理事会でそれぞれ承認した)。
運送会社は非常に厳しい状況にある。出版物の売上が低迷し、業量が減少している。社員の給与水準は低く、深夜型の労働のため健康面で問題がある。若い人が入ってこない。女性も働きにくい。ドライバー不足と高齢化が進んでいる。
取次を中心に出版業界でこの問題の実態を知っている人たちは、長年にわたり何とかしなければと努力してきた。雑誌出版社でも今では相当理解が深まっている。出版輸送の様々な問題が表面化してきたことで、多くの人たちがまずいぞという感覚になってきた。危機感を持っている出版社は非常に前向きに対応しようとしている。今年一番の大きな問題だが、今年だけでは解決できない問題だ。
【求められる「囲い込み」/「顧客管理システム作りたい」】
書店に足りないのは「会員制」。異業種では会員にメールで情報をお知らせするなど、様々な形で囲い込みが行われている。ポイントカードはポイントを付けるというより、むしろ一種の顧客管理システムと考えたい。ポイントカードという名前が悪ければ、「顧客管理カード」という新しいネーミングのカードのシステムを一緒に作れればと考えている。
既存のポイントカードだけではなく、書店だけで使える顧客管理カードを作り、「最寄の書店にあなたの気になっているジャンルの本が入荷しました」とお客様に伝えられるようなシステムが必要ではないか。書店とお客様の間にこのようなつながりがあれば、そこから新しいビジネスが生まれる。ポイントカードに反対する理由は十分理解しているが、顧客管理の面で可能性を探ることはできないかと考えている。
取次は1日でも早くお客様の注文に対応するため大変な努力をしている。客注を巡っては、出版社、取次、書店、そしてお客様の4者の間で長年にわたって不信の構図のようなものがあったが、これから時間をかけて信頼関係の実績を作っていかなければならない。そして、それがきちんとできれば、今度は顧客管理システムが生きてくる。お客様が最寄の書店で色々な商品を引き取ることができるようになる。「顧客とのつながり」がこれからの大きな課題になる。
万引きについては、新古書店に盗品が持ち込まれることはほとんどなくなったが、その代わりネットオークションに出品されるようになった。ここを抑えれば被害をかなり減らせる。ネット上に出回っている万引きの本を抑え、書店での万引きを減らすため、プラットフォーマーたちは意識を高め、明らかに万引きと分かる本は排除するなどの対応をしてほしい。
出版物への消費税軽減税率適用については、出版4団体が窓口を一本化してロビー活動を行っているところだ。議員立法の形で法制化することを求めている。良い結論が出ることを期待している。
本を買うとき税率10%は高いと感じる人が多いと思う。文庫をはじめ価格も上昇傾向にある。消費者はいざとなったら本を買わなくなる。それは、将来的に日本の教育にとって大きなマイナスなので、できる限り買いやすい価格で本を提供できるよう、経済的にきちんとした論理を構築して軽減税率を求めていきたい。軽減税率適用が決まった場合の複数税率への対応などについても、専門家の意見を聞きながら業界全体で議論しておく必要がある。
電子書籍・雑誌の定額読み放題サービスの書店店頭への影響が懸念されている。出版社にとって新しい収益源だが、紙の部数が下がって中長期的に見てマイナスということにもなりかねない。紙と電子のバランスに十分気をつけて、出来るだけ店頭に影響が出ないような対応を考えたい。電子の読者を店頭に呼び込むための有効な施策を、業界全体で真剣に検討する必要がある。
今、日本の社会では「そういう手があったのか」と驚くぐらい、いろいろなビジネスが動いている。我々はそうしたものを冷静に見て、自らの内に取り込み、次のビジネスに活かすことを考えていかなければならない。昔ながらのやり方で保守的にやっていてはもう通用しない。老舗ほど新しいものを取り込んでいく意識をもってやっていかないといけない。
書店のメリットも考えながら新しい施策に取り組んでいる。不満を感じることもあるかもしれないが、将来なんらかの形で書店の皆さんに還元できることを確信して進めていることをご理解いただきたい。
本日、このように日書連近畿ブロック会の書店の皆さんを前にお話しする機会を与えてくださったことに感謝する。

日書連のうごき

2月7日子どもの読書推進会議総会に西村副会長が出席。
2月9日東京都書店商業組合青年部新春懇親会に事務局が出席。
2月10日潮出版社ノンフィクション賞贈呈式に舩坂会長が出席。
2月13日日本出版インフラセンター運営幹事会に事務局が出席。
2月14日「出版業界をめぐる改正個人情報保護法」セミナーに舩坂会長が出席。
2月15日各種常設委員会、部会を開催。
2月16日2月定例理事会を開催。図書コード管理委員会に藤原副会長が出席。
2月17日全国中小小売商連絡会に事務局が出席。全国万引犯罪防止機構理事会に事務局が出席。
2月22日学校図書館整備推進会議幹事会に事務局が出席。
2月23日芥川賞・直木賞贈呈式に事務局が出席。
2月27日公正取引委員会「出版再販ヒアリング」に本間副会長が出席。
2月28日第16回全国中小小売商サミットに舩坂会長が出席。読書推進運動協議会理事会に舩坂会長が出席。

講談社第78期決算/3年ぶりの増収増益/デジタル・版権事業が伸長

講談社は2月21日、東京・文京区の本社で第78期(2015年12月1日~16年11月30日)定時株主総会及び役員会を開催し、決算と役員人事を発表した。
売上高は1172億8800万円(前年比0・4%増)、税引前当期純利益は46億8600万円(同35・3%増)、当期純利益は27億1400万円(同86・7%増)。書籍・雑誌売上の落ち込みをデジタル事業と版権事業の伸長で補い、3年ぶりの増収増益を達成する好決算となった。役員人事では森武文専務取締役が取締役副社長、金丸徳雄取締役が常務取締役に昇任した。
売上高の内訳は、雑誌(コミックを含む)627億6800万円(同7・4%減)、書籍173億6700万円(同1・1%減)、広告収入46億6900万円(同3・0%減)、事業収入283億5300万円(同29・7%増)、その他9億9600万円(同38・1%減)、不動産収入31億3300万円(同0・6%減)。
事業収入のうち、デジタル関連は175億円(同44・5%増)、国内版権は70億円(同6・3%増)、海外版権は36億円(同16・0%増)だった。
雑誌は週刊誌、美容誌、幼児誌が健闘して微増収。コミックは大幅減となった。書籍は文庫市場の縮小が響いて苦戦した。
電子書籍はコミック、テキストともに売上の伸長が続く。会員制ウェブサービスに移行した「クーリエジャポン」が順調なスタートを切り、デジタル雑誌「フォルツァスタイル」「ミモレ」が広告収入を伸ばしている。
版権ビジネスは映像化やイベントの積極展開でビジネス規模を拡大。アニメ化・実写化作品のヒットが出版物や電子書籍のヒットに寄与した。海外では米国で展開するコミックの電子配信が売上を伸ばした。中国では「ViVi」の提携先変更で、出版以外の商品化などの展開を開始した。
第79期の計画は、売上高1214億円、税引前当期純利益73億円と増収増益を見込んでいる。
同日行われた決算報告会で、野間社長は「メガヒットやミリオンセラーに恵まれなかったにも関わらず本業で増収増益を達成することができたのは、長年取り組んできたデジタル戦略や版権ビジネスの拡大による事業収入の伸びが大きな要因」と前期決算を振り返り、「収益構造の転換、体質の改善は着実に実を結んでいる。これからも改革を継続する」と強調した。
一方、紙媒体の売上減少に歯止めがかからないことに強い危機感を示し、「紙媒体の市場縮小によって取次や書店の体力が失われている。世界に通用するエンターテイメントコンテンツを数多く送り出し、紙の市場を活性化することが喫緊の課題」と述べた。
【森専務が副社長に昇任/講談社新役員体制】◎は昇任、○は新任
代表取締役社長
野間省伸
取締役副社長(広報室)
◎森武文
常務取締役(第二事業局)
鈴木哲
同(社長室、総務局、編集総務局)◎金丸徳雄
取締役(販売局)
峰岸延也
同(ライツ・メディアビジネス局)古川公平
同(第五事業局)
渡瀬昌彦
同(第三事業局、第四事業局)森田浩章
同(第六事業局)
○清田則子
同(第一事業局)
○鈴木章一
同(経理局)○吉富伸享
同(非常勤)重村博文
同(非常勤)大竹深夫
常任監査役白石光行
監査役足立直樹
※退任役員は顧問に就任
顧問山根隆
同清水保雅
同入江祥雄

1月販売額7・3%の大幅減/文芸書、児童書、学参は好調/出版科研調べ

出版科学研究所調べの1月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比7・3%減となり、2017年は大幅なマイナスでのスタートとなった。
16年12月期は31日に特別発売日が設定され、書籍・雑誌ともに1月発売のものが前倒しで搬入され数値が底上げされたため、1月期はその影響を受けた。
部門別では、書籍が同6・0%減、雑誌は同8・7%減。雑誌の内訳は、月刊誌が同11・2%減、週刊誌が同1・4%増。月刊誌の2桁減は1月発売予定のジャンプコミックス(集英社)の主要タイトルが大晦日発売で前倒し発売され、コミックスが大幅減となった影響が大きい。一方、週刊誌のプラスは、コミック誌や総合誌で発行本数が前年同月より1本多かったことによる。
返品率は、書籍が同0・9ポイント増の36・4%、雑誌が同1・3ポイント増の45・3%と、いずれも悪化した。
書店店頭の売上は、書籍が約2%減。佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(小学館)が伸び続け、直木賞を受賞した恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)が27万部に達するなど好調要因が多く、文芸書は約15%伸長した。児童書は約5%増、学習参考書は約9%増と、ともに好調を持続。児童書ではヨシタケシンスケの絵本の伸びが目立った。文庫本は約8%減と厳しい状況が続く。
雑誌は、定期誌が約4%減、ムックが約5%減、コミックスが約11%減。定期誌では豪華付録の添付を継続している宝島社の雑誌が伸びている。コミックスは当月も2桁減で、ここ半年は毎月10%程度のマイナスが続いている。

吉川英作副社長に代表権/酒井和彦常務が専務に/日販新役員

日販は2月20日開催の定例取締役会で、4月1日以降の第70期(17年4月1日~18年3月31日)の役員体制を決議した。
吉川英作取締役副社長が代表取締役副社長に就任するほか、酒井和彦常務取締役が専務取締役に昇任する。
[日販新役員体制]
代表取締役社長
平林彰
代表取締役副社長(営業部門総括、商品開発部担当、営業推進室長)吉川英作
専務取締役(仕入部門総括、取協、協業事業担当、広報室長、輸配送改革推進室長)安西浩和
同(管理部門、物流部門総括、システム部担当、経営戦略室長、秘書室長)
酒井和彦
常務取締役(ネット営業部、図書館営業部担当)
大河内充
同(特販支社、東部支社担当)髙瀬伸英
同(首都圏支社、CVS部担当)清地泰宏
取締役(㈱MPD代表取締役社長)奥村景二
同(関西支社長)
竹山隆也
同(中四国・九州支社長)
横山淳
同(特販支社長、特販第一部長)逸見剛
同(管理部長、ビジネスサポート事業部担当)
西堀新二
同(物流部門担当、流通計画室長、王子流通センター所長)北林誉
社外取締役(カルチュア・コンビニエンス・クラブ㈱代表取締役社長兼CEO)
増田宗昭
同(㈱講談社代表取締役社長)野間省伸
常勤監査役久保朗
同宮路敬久
社外監査役(相原法律事務所弁護士)相原亮介
同(税理士法人髙野総合会計事務所シニアパートナー公認会計士税理士)
真鍋朝彦
役員待遇(中部支社長)
金田徴
同(図書館営業部長)
野口瑞穂
同(日販コンピュータテクノロジイ㈱代表取締役社長、㈱ファンギルド代表取締役社長)藤澤徹
同(㈱ダルトン代表取締役社長)佐藤弘志
同(㈱リブロ代表取締役社長)大久保元博同(出版共同流通㈱代表取締役社長)髙田誠
同(日販アイ・ピー・エス㈱代表取締役社長)
牛山修一
同(㈱いまじん白揚代表取締役社長、㈱Y・space代表取締役会長)
露木洋一
広報室、輸配送改革推進室は4月1日付の新組織。