全国書店新聞
             

平成19年3月11日号

優秀作30作品を選出/SJ実行委「本のある風景」

サン・ジョルディの日実行委員会が2月27日、書店会館で開かれ、第22回「世界本の日サン・ジョルディの日」キャンペーンの企画等について討議した。
委員会の冒頭、丸岡義博実行委員長は「いたましい事件が頻発している。活字離れを言われるようになって久しいが、読書をすることで思いやり、いたわりの気持ちが育まれる」として、読書推進の果たす役割と同キャンペーの意義を強調した。
続いてキャンペーン企画進行状況の報告。「本」をテーマとする写真や絵などビジュアル作品を募集する「本のある風景」には178点の応募があり、優秀作品20点を選出した。このうち2作品をキャンペーンポスター(写真)およびオリジナル図書カードのビジュアル素材として使用する。作品は日書連ホームページで3月中旬から公開する予定。雑誌出版社特別共同企画「心が揺れた1冊の本」は現在580名の応募があり、昨年同時期の7倍に達している。4月23日の締切までにさらなる上積みが期待されている。協賛出版社は現在、48社・101誌。「本の川柳」は現在160名・300作品と、昨年同時期比3倍の応募状況。
地区イベントについては、愛知で4月21日、22日の両日、サン・ジョルディ・フェスティバルを開催、北海道で「中学生はこれを読め」キャンペーンの一環として講演会を実施するなど、全国で多彩なイベントが行なわれる。日書連は地方独自のイベントを盛り上げるため、サン・ジョルディの日PR企画推進費を総額300万円、1組合当たり20万円を上限に拠出することを決めており、10組合が申し込んでいる。
日本縦断記念文化講演会は山形県(講師=渡辺えり子氏、協賛=小学館)、愛知県(あさのあつこ氏、角川書店)、奈良県(講師未定、文藝春秋)、熊本県(山本一力氏、講談社)の4ヶ所での開催が決まっている。

経営取引問題を討議/経営実態調査結果受け/東京組合

東京都書店商業組合は3月2日、書店会館で定例理事会を開き、ワーキンググループを設置することを決めた。経営・取引問題を中心に特に議題を定めずに議論する機関で、書店の経営環境改善を図ることが目的。日書連が一昨年末に実施した全国小売書店経営実態調査で、85・6%の書店が「経営が悪化した」などの結果が出たことを受けて設置することを決めた。
出店問題では、今後の出店予定としてブックファースト八王子店(205坪、3月16日オープン)、住吉書房ポポ小岩店(50坪、3月23日オープン)、有隣堂小岩ポポ店(48坪、3月23日オープン)、ブックセンター麹町本店(32坪、4月3日オープン)が報告された。このうち住吉書房と有隣堂は組合加入の意思表示をしている。
本年度の永年勤続従業員表彰該当者は10年者40名、5年者13名。昨年同様、式典は行なわず、表彰状及び記念品を5月末までに事業主宛に送付する。また、組合功労者表彰の該当者は、30年が下向副理事長、萬田理事、10年が大橋副理事長、柴崎副理事長、岡嶋副理事長、湯本常務理事、梅木常務理事、福田理事の計8名。
また、東京都書店組合互助会が原則として改正保険業法の適用対象となることを、東京財務事務所を訪ねて確認したと報告があった。今後は「全ての給付対象金額を10万円以下にする」と互助会規約の変更を行い、適用除外団体として存続を目指す方向で意見集約。5月の総代会に諮る。
TS流通協同組合の2月期売上は1011万4137円(前年比106・4%)で、発注件数は9303件(112・1%)、書店数は80書店(92・0%)と報告があった。

通常月通りの入帳を/3月末の返品入帳、トーハン、日販に要請/日書連

3月末の返品入帳問題で日書連丸岡会長と環境改善ワーキング機関鈴木喜重機関長、井上俊夫委員の3名は2月28日にトーハン、日販の両社を訪問して、年度末にあたる3月の返品入帳にあたっても通常月通り入帳するよう理解と協力を求めた。
トーハンでは上瀧博正会長、山﨑厚男社長と面会。日販では古屋文明社長、橋昌利専務と面会した。
日書連の考え方の説明に対して、トーハンでは「地方書店、中規模以下の書店をサポートするため1月から入帳日を5日短縮した。当社も厳しいものがあるが、今後も例外なく続けていく」と、同社の方針を説明した。
昨年は3月24日まで返品入帳した日販では「本年も同じように考えており、後戻りすることはない。今年は3月25日が日曜なので、昨年より延ばすとなれば26日にしなければならない。返品は業界全体でコストがかかっており、できるだけ無伝店になってほしい」と述べた。
〔トーハン、返品入帳を5営業日前に変更〕
桶川SCMセンターの本格稼働を前に、トーハンは得意先書店への還元として1月期より返品入帳締切り日の変更を実施した。
書籍、雑誌ともに一定の返品処理ルールに則って返品処理を行っている書店に対し、入帳締切り日を従来の「10営業日前」から「5営業日前」に変更した。書店からは資金面のメリットを実感しているという反響が寄せられている。
また、桶川SCMセンターでの返品処理については「処理票のナンバーさえ控えていれば計算書との照合を行なわなくて済むようになった」「作業効率が格段に上がり販売に力を入れることができる」等の声も届いているという。

日書連近畿ブロック会/丸島・石尾両氏が講演

日書連近畿ブロック会(面屋龍延会長)の講演会が2月24日にホテルモントレラ・スール大阪で開催され、60名が参加した。
講演会は中村晃造副会長(京都組合理事長)の司会で進行、面屋会長(大阪組合理事長)が「本日は新文化通信社の丸島基和社長をお招きし、『書店サービスの現状と行方』という演題で、売上げを伸ばしている小書店の実例などを述べていただこうと思う。大阪組合の石尾義彦常務理事からは、どのような取り組み方で自店の売上げを伸ばしているかを報告していただく」とあいさつした。
講演で丸島氏は、商売の基本は集客だとして、「雨の日に子供たちに飴をあげる」「画用紙を提供して店内で絵を描かせる」など様々な工夫を紹介。品揃えは売りたい本を徹底することが大事だと指摘し、近隣に競合店を多くもつ店の例を挙げて、「学参を一通り置くだけでは対抗できないので、社会科関係のドリルや学参を徹底的に揃えたところ、他店で買った本の袋を持った人が、その店に社会科の本を買いに寄ってくれているそうだ」と述べた。
また取次の配本に苦言を呈し、「主婦の友社、小学館などは雑誌拡売のために中小書店が大事と言う認識は一致しているが、取次の配本はそのようになっていない。コンビニに6割、書店には4割だ。コンビニの返品率がどうなっているのか、情報開示がない。取次は書店を入金率や返品率で評価しており、返品率を下げる努力が必要。定期改正では、必要のない売れない雑誌の減数改正が重要だ」と述べた。
続いて講演した石尾氏は「商売は損益分岐点を知ることから始まる。固定費が月額百万円の店なら、平均仕入掛け率23%とすれば月商430万円以上が必要。現在議論されている責任販売制は掛け率を余り言わず、販売責任だけを書店に押し付けている。売上げは来店客数、売上げ冊数、客単価が関わっており、客単価を上げるために、既成概念にこだわらず関連商品を並列陳列するなど工夫している。客数を上げるため、お金を持ち合わせていないお客様に買っていただくようクレジットカードを積極的に採用している。新刊配本のない物については発行日の朝9時に出版社に電話して商品確保の努力をしている。そうすることで担当者とのコネクションもできる」と取り組みを説明した。(中島俊彦広報委員)

生活実用書/注目的新刊

2007年問題と言われてきた、大量な数の定年退職者が、いよいよ4月からのその時を迎えようとしている。この団塊世代は幼い頃から消費ターゲットにされてきた。そのために何かというと一括りで捉えられがちだったが、果たしてそんなに簡単に世代の全体像をつかめるだろうか。
学生運動の主役と思われながら、当時の大学進学率は十数パーセントにすぎないし、中学新卒の金の卵と呼ばれたのも、同じ世代の人だった。歩調を同じくしているのは皆60歳になること位だろう。
和田秀樹著『「現役年齢」をのばす技術』(PHP新書445700円)は団塊世代より一回り年下の高齢者専門の精神科医が語る現役考である。「このまま現役を退くのは医学的にも、心理的にも損なことだ」ということを、やがてやって来る自分たちの現役年齢も考えながら、論を進めていく。
冒頭は「サザエさんの波平をめざすか、島耕作をめざすか?」。まず、波平が52~53歳、島耕作は59歳の設定であることに驚かされる。それはそれぞれのコミックが誕生した時代背景を示している。40年の間隔は、50代のイメージをすっかり変えてしまったのだ。現役年齢を伸ばすためには、「自分はもう若くないという発想をやめること」と「衰えと上手につき合っていくこと」が大切という。健康、労働、遊び、学ぶことなどについてその方法を探っていく。
東畑朝子著『「70歳生涯現役」私の習慣』(講談社+α新書337―1―A800円)は、最早現役を伸ばそうなどという時点を越えている。なにしろ70代の今なお現役のフードドクターなのである。
「我が身で実証、若い体と脳を守る〈食〉」、「新発見!の〈色〉に含まれる若返り物質」の章では、著者の食事の量と摂取カロリーが具体的に紹介される。野菜は一日300グラム取るのが良いが、これも目安なので、あまり神経質にならずに「なるべく毎日同じものばかり食べない」ことを心がければいいのだ。
スポーツに散歩、音楽、学習、ひとり旅と元気に楽しんでいる姿が活写されている。そうやって語られる人生に、「現役」の幸福と楽しい日々が十分に伝わってくる。
いきいきと暮らすことが、すなわち「現役」ということなのであろう。
(遊友出版・斎藤一郎)

日書連のうごき

2月2日「サン・ジョルディの日PR企画推進」審査会。
2月6日全国万引犯罪防止機構役員会に丸岡会長が出席。
2月7日全国公取協セミナーに柴崎出版小売公取協副会長ほか役員が出席。NHK出版・平成19年度春の販売促進会に丸岡会長ほか役員多数が出席。
2月9日青少年育成国民会議中央大会に大橋副会長が出席。青少年読書感想文全国コンクール表彰式に丸岡会長が出席。中小企業等組合法改正の説明会に大川専務理事が出席。
2月14日活字文化振興シンポジウム「言葉の力、図書館を考える集い」に丸岡会長と高須副会長が出席。第9回JPO運営委員会に志賀副会長が出席。第49回こどもの読書週間標語選定委員会に石井総務部長が出席。
2月15日平成18年度全国団体事務局代表者会議に大川専務理事が出席。
2月16日学校図書館整備推進会議広報委員会並びに同運営委員会に石井総務部長が出席。
2月20日各種委員会(書店業界環境改善政策、書店経営実態調査、増売、読書推進、共同購買・福利厚生、消費税問題、組織強化、環境改善検討ワーキング、流通改善、取引改善、指導教育)。日書連共済会運営委員会。小売公取協専門委員会。児童図書増売・夏休みセール三者会談。組合活性化資金審査会。日本図書コード第1回マネジメント委員会に井門副会長が出席。21世紀出版研究会に高須副会長が講師として出席。
2月21日日書連2月定例理事会。「読書週間書店くじ」Wチャンス賞抽選会。業界紙対象記者会見。
2月22日第11回全国中小小売商サミット(第1日目)に丸岡会長ほか役員が出席。全国中小企業団体連絡会業界懇談会に石井総務部長が出席。
2月23日第11回全国中小小売商サミット(第2日目)に大川専務理事が出席。読書感想画中央コンクール表彰式に大橋副会長が出席。第136回芥川賞・直木賞贈呈式に丸岡会長が出席。
2月26日図書館サポート準備会。
2月27日読進協全体事業委員会に石井総務部長が出席。SJ「本のある風景」審査会。SJの日実行委員会。
2月28日第2回新販売システム実施に向けて、講談社、小学館など版元6社を藤原副会長が訪問。返品入帳改善御礼として、丸岡会長ほか役員が、トーハン、日販を訪問。

県高校司書研修会で日書連マークを説明/福岡情報化委員会

福岡県書店商業組合(山口尚之理事長)の情報化委員会は、2月26日に北九州市戸畑区のひびき高校視聴覚室で行われた北九州・遠賀・京築地区の県立高校司書研修会で、日書連マークと図書館ソフト「図書館ナノ」について説明した。
これは研修の依頼を受けて行なったもので、当日は県立高校27校から35名の参加者があり、図書館のコンピュータ化に地元書店が協力できる体制ができていること、すでに京築地区では全ての県立高校に導入されている実績を報告。その後の質疑応答も関心が高く、時間をオーバーして盛況のうちに終了した。
(中尾隆一)

受賞

◇徳間文芸賞
第9回大藪春彦賞に北重人氏『蒼火』(文藝春秋)と柴田哲孝氏『TENGU』(祥伝社)、第27回日本SF大賞に萩尾望都氏『バルバラ異界』(小学館)、第8回日本SF新人賞に樺山三英氏『ジャン=ジャックの自意識の場合』、同佳作に木立嶺氏『戦域軍ケージュン部隊』が決まり、2日午後6時から丸の内の東京會舘で贈賞式が行われた。
大藪賞の選考経過を報告した西木正明氏は「北さんの『蒼火』は初の時代小説の受賞で映像が浮かぶ面白い作品。柴田さんの『TENGU』は正攻法のミステリーで大藪氏の遺志を継いだ立派な作品を得た」と選評。大藪家からブックエンド型のトロフィー、徳間書店松下武義社長から賞状が授与された。

新・アジア書店紀行/ノセ事務所代表取締役・能勢仁

〔第11回マレーシア(2)〕
クアラルンプール
〈MPH書店・ミッドヴァレー店〉
MPH書店は地元書店であり、マレーシアを代表するチェーン店である。5州に24店の店を持つ。この店はその中でも旗艦店である。KLモノレールの終点KLセントラル駅でマレー鉄道に乗り換え一つ目で下車する。駅名はミッドヴァレーで、SCミッドヴァレーがそのまま駅名になったのである。KLの三大SCKLCC、TIMESSqSCに並ぶSCであるキイテナントにジャスコが入っていた。その1階にMPHがワンフロア350坪で出店している。ボーダーズ、紀伊国屋書店についで、KLで三番目の大型書店である。MPH書店の店長(名前は聞かなかった)は誇らしげに語ってくれた。それは我々の店はKLでナンバー2の売場面積だという。紀伊国屋書店を意識しているなと筆者は感じたが…ボーダーズを忘れている。とにかく繁盛店である。ボーダーズより人の入りは良いように思えた。特にこどもの本売場のステージには親子20人以上が楽しみながら本を見ていた。
店の中央部分にレストスクェア(25坪)がある。その中心に噴水がある。噴水を囲むようにしてソファーが置かれてある。本好きな人達が図書館のようにしてMPHを利用している。
この店の特色は売場がゾーニング形式になっていることである。法経ゾーン、コンピュータゾーン、理工ゾーン、こどもゾーン等々である。中でも力が入っているのはレファレンスゾーンである。このゾーンだけは別室形式になっていて、カウンターを挟んで読者と担当者が応対する。
〈MPH書店・金河廣場店〉
KL中心地の繁華街にあるスンガイ・ヴァン・プラザの店である。数あるKLのSCの中でも人気度の高いSCの1階に位置する。間口8間×奥行15間=120坪、書籍、雑誌、文具、万年筆、カード類と楽しみの多い店である。扱い書籍は次の通り。
ハイライツ、ホット&ニュー、オペレーティングシステム、デザイン/グラフィックス、プログラミング、データベース、コンピュータサティフィケーション、サイエンス、インターナショナルエディション、エンジニアリング、アーキテクチャ&デザイン、ビルディング&コンストラクション、ギフトブック、ホームインテリア、リバレージ、クッカリー、アニマル&ペット、ガーデニング&プラント、ライフスタイル、クラフト&コレクティブル、コミック、ジュニアレファレンス、ファバリットシリーズ、ベストセラー、ニューアライバル、フィクションA―Z、ファンタジー、SF、マレーノベル、ロマンス、バイオグラフィー/プロファイル、ファイナンス、スタチュト、HR&トレーニング、アカウンティング&エコノミック、マーケティング、ビジネス、ディクショナリー、マネージメント、ラングェージ、セルフヘルプ、ローカルインタレスト、リリジョン&フィロソフィー、ジェネラルインタレスト、スポーツ&ホビーズ、ジェネラルヘルス、ファミリー&リレーションシップ、ペアレンティング、チルドレン、ファンタイム、ティーンリーダーズ、ジュニアリーダーズ、クラシックス。店の入り口からベストセラー、ビジネス、文芸書、中程は文具と雑誌売場、奧は実用書と児童、参考書である。コミックの扱いは低い。
〈大衆書局・金河廣場店〉
スンガイ・ヴァン・プラザの2階にある。通路に面して20間の横長の店である。その20間が全部総ガラスであるから、店の中が丸見え、水族館を覗いているようである。奥行7間であるから140坪の中規模店であるが、繁盛SCの中にあることと、中文書に特化していることから独特の商売をしている。扱いは次の通り。
音楽/電影、休間生活、資訊電脳、烹調飲食、医薬保健、女性百科、撮影/美術手藝、自然科学、人文科学、宗教、思想学説、人物伝記、馬華文学、教育、漫画古典文学、武侠小説、科幻小説、港台文学、言情小説、世界文学、風水命理、書信/語言、旅遊、商管、心理輔導、修養励志、推介書、新書推薦。
大衆書局のメンバーには新刊は15%割引の特典がある。レコメンドコーナー20点の中にトヨタの本が入っていた。コミックの扱いは少なく、教育的な書店であった。修養励志の棚の本の多いのに驚いた。
〈紀伊国屋書店・クアラルンプール店〉
クアラルンプール最大といわれるKLCCの2階と4階に紀伊国屋書店は出店している。このSCはKLの名物であり、KLを訪れる人は大抵やってくるという。プトラLRトレインの
KLCC駅で降りれば、地下通路はそのままKLCCに繋がっている。その一角をしめるのが伊勢丹であり、その2階に和書売場50坪、4階に洋書売場350坪がある。秋山店長が出張中であったので、お会い出来なかったのは残念だった。メインは4階売場である。昇りエスカレーターを降りると正面に紀伊国屋書店の入り口がある。日本語の出来る現地女性が話してくれたところでは、一番忙しいのは土日であり、人気のあるジャンルは英文の文芸書だという。小生が見た感じで特色は4階の中2階?にあるアート・デザイン・建築コーナーであった。専門性が感じられKL一番だと思った。広さの点ではボーダーズに譲るが、商品構成の内容、質の点では決してひけはとっていない。量的に差をつけられているのはペーパーバックスのSF、ホラー、ロマンスである。しかしハードカバーの文学、文芸、評論の充実はさすが紀伊国屋書店である。この売場はステージ状の所に陳列されているので、ここにいると店全体が見渡せて、気持ちよい。
〈ミネルヴァ書店本店(120坪)と支店(80坪)〉
SOGO近くにトゥンク・アブドゥル・ラーマン通りがある。インド系マレーシア人が多く居住し、イスラム教徒の町である。コーランをはじめイスラム書ばかりで、彼ら専用の書店といってよい。通りに向かい合ってミネルヴァ書店本支店とムクミン書店本支店がある。本・支店間の距離は100㍍位と近い。本店の特色はコーランの豊富な在庫と、地下売場の専門書の充実していることである。支店の特色は圧倒的な量の学参、問題集の売場である。
〈ムクミン書店・本店(100坪)と支店(70坪)〉
本支店共にミネルヴァ書店の真ん前にある。日本にはみられない風景である。
イスラム色が極めて強い書店である。売る人も買う人もイスラム系の人ばかりである。
彼らにしてみれば都合の良い書店の集合といえる。本店では教典の種類の多さに驚いた。金箔に輝くコーランに畏敬の念をもった。教典の読書台も売られていた。小生も読書台を購入した。750円であった。立派な読書台は更に高価である。本店はイスラム文化、政治、経済の本が多く、支店は文芸書、参考書が多かった。文具も売っていた。

人事

〔新社長に神田氏/主婦の友社〕
主婦の友社は2月20日の取締役会で、4月1日から事業部制へ移行し、雑誌と書籍が一体となったコンテンツ開発、デジタルマガジン拡充、海外出版事業拡大、その他関連事業進出を目指すことを決めた。役員人事では村松邦彦社長が代表取締役会長に、神田高志専務が代表取締役社長に就任するなどを内定した。
主婦の友社役員人事
代表取締役会長村松邦彦
代表取締役社長(制作部担当)神田高志
常務取締役(管理部担当)塚本俊雄
取締役(第1事業部事業部長)村田耕一
同(国際・ブランド事業推進部担当)矢萩哲
同(第2事業部事業部長)荻野善之
同(第1事業部副事業部長)駒由美子
関連会社役員人事
主婦の友図書専務取締役
斎藤民樹
ブックメイト代表取締役社長依田俊之
〔JPOセンター長に大江氏〕
日本出版インフラセンター(JPO)は、4月1日付で名称変更と事務局人事を発令。カッコ内現職。
〈名称変更〉
日本図書コード管理センター事務局長を同センター長と名称変更する。
〈人事〉
日本出版インフラセンター常務理事兼事務局長兼商品基本情報センター長(JPO事務局次長)大江治一郎
日本出版インフラセンター事務局長代理兼日本図書コード管理センター長(JPO事務局長代理兼日本図書コード管理センター事務局長兼商品基本情報センター長)田宮修
*本間広政JPO常務理事兼事務局長、関口巌夫日本図書コード管理センター事務局顧問は、3月31日付で退任する。

参加出版社222社に/当面、業界シェア25%目指す/日販www

日販wwwカンファレンス2007が3月5日夕、港区海岸のホテルインターコンチネンタル東京ベイで開かれ、出版社222名が出席した。
第1部プレゼンテーションであいさつした日販古屋社長は「トリプルウインは01年5月の日販懇話会で菅社長がSCMとして単品管理の仕組みを説明したのが最初。03年4月にオープンネットワーク・ウインを発表し、現在、出版社222社、書店1357店の参加で三者がデータを共有している。HONYAクラブは販売情報と顧客情報を掛け合わせて、より有効な販売促進を目指すもので、会員は40万人になった。王子NEXTは7月に主要な仕組みがスタートし、書店の強力な武器になる。出版社にはデータ公開、SCM契約と進んでいただきたい」とあいさつした。
このあと、「wwwプロジェクトの現状と今後」を鈴木敏夫www推進部長、「王子NEXT」を安西浩和王子流通センター所長、「HONYAクラブ」を富樫建www推進部係長が報告。鈴木部長は「トリプルウインの業界シェアは14・9%であり、25%を目指したい。SCM運用実績は一般店を大きく凌駕し、適時適量の商品供給とオペレーションで売り伸ばしを図っている。HONYAクラブの顧客データにより優良顧客と固定客づくり、客層にあった品揃え、販売促進が実現できる」と強調。
昨年5月発表から9カ月が経過したHONYAクラブの実績は、2月現在、43法人101店舗が加盟、会員数は40万人。書店別では最高3万人、平均6579人。会員購入単価は全国平均より3百円高いという。
最後にwwwアワード受賞書店が発表され、ベストセラー発掘部門で『誕生日大全』(主婦の友社)を588冊販売した滋賀・がんこ堂、HONYAクラブ会員獲得では新規店部門で広島・啓文社、既存店部門で福島・中央図書が事例発表を行った。
このほか、メニュー徹底部門で精文館書店、SCM売上拡大部門で明屋書店、SCM管理徹底部門は住吉書房が受賞し、引き続き行なわれた懇親会の席で表彰された。

松島でオートマ研修会/安定した実用書の販売展開/日販

第42回日販オートマチックセール記念研修会が2月27日、28日の両日、宮城県松島町「一の坊」で開かれ書店120名、協賛出版社31名、日販から鶴田会長、古屋社長など、合計209名が出席して開催された。
第1部懇親会であいさつした日販古屋社長は「オートマチックセールは昭和39年、日販の15周年記念事業として始まった実用書セール。昨年、実用書は103・4%増と文庫、新書に次ぐ伸び率だった。シェアも11・2%で安定した実績を上げている。送品・返品データがリアルタイムでわかるので、効率販売を続けていきたい。今年7月には王子流通センターをリニューアルし、書店、出版社の役に立つ施策を展開していきたい」と述べた。
書店を代表して紀伊国屋書店松原治CEOは「わが国経済は消費が振るわず出版もマイナスだ。10年前の売上げ2兆6463億円に比べ昨年は5037億円、19%少なくなっている。この中で実用書は前年比3・4%伸びている。読んで楽しく役に立つのが実用書。これからも版元の英知を結集して内容の濃い本を出してもらい、セールを成功させたい」とあいさつした。
販売コンクール表彰式では、A、B両セットの実売賞、実売率賞、増加率賞上位3書店を表彰。池田書店池田豊社長の発声で乾杯して懇親会に入った。
翌28日午前は元NHKワシントン特派員・手嶋龍一氏が「戦略的インテリジェンスとは何か」のテーマで記念講演を行った。

本屋のうちそと

3月11日、石井桃子さんが百歳の誕生日をお迎えになる。これは大変なことだ。ご存知のとおり石井さんは約2百点に及ぶ翻訳・著作を手がけられた。いまだに作家活動を続けておられるとは、本当に驚きである。
このたび岩波書店と福音館は、品切れになっていた全集・翻訳・著作を復刊しフェアを企画した。多くの書店がこれに積極的に取り組み、売行きは好調と聞いている。
国民のほとんどが、なんらかのかたちで石井さんの作品に触れてきたのではないだろうか。読んであげたり、読んでもらったり、また、それを孫にプレゼントしたり…。石井さんの作品は世代を超えて読み継がれているのだろうと思う。だから、このフェアは絶対に成功すると信じている。
石井さんの作品の何が子どもたちを、まわりの大人たちを魅了するのだろう。多くの方が石井さんの日本語による表現の美しさを指摘される。子どもを心底愛されるがゆえの作品は、まさしくことばの芸術品ともいえる。
ところで、わが業界…。今年も例年どおりブックフェアが開催される。「多くの読者の方に絵本の素晴らしさを知って欲しい」と願って各版元はワゴンやブースを出店する。それはそれで意義のあるイベントだと思う。しかし、そこで買っていかれる方々にこの石井さんの子どもに注がれる愛情は伝わっているだろうか。作家が心血を注いだ素晴らしい作品たちが、バナナの叩き売りの如く値引き販売されるのは、とても辛く、悲しく、寂しい想いがする。
(注文の多い本屋)

中学生以上を対象にミステリーシリーズ/理論社

理論社から中学生以上を対象にした「ミステリーYA!」シリーズが創刊される。9日創刊の第1弾は折原一『タイムカプセル』(本体定価1400円)、山田正紀『雨の恐竜』(同)、篠田真由美『王国は星空の下』(同1300円)の3点で初版各3万部。
すでに20数名の著者に執筆を依頼しており、今月は5点、以後、毎月1、2点ずつ刊行していく。シリーズ全体をソフトカバー、仮フランス装で統一。黒猫をロゴマークに使う。平均3~4百頁、定価は本体価格千三~四百円に抑える。
6日に行われた記者発表で理論社下向社長は「一昨年スタートしたヤングアダルト向け『よりみちパンセ』シリーズは累計80万部になった。朝の読書の広がりの中で中高生の読む本が不足し、ミステリはほとんどない。ルビも振り読みやすく工夫した」と趣旨説明。小宮山編集部長は「ミステリーはじめホラー、SF、ファンタジー、恋愛小説まで含めた活気あるジャンルに挑戦する」と意欲を示し、山田正紀、芦辺拓、田中芳樹の執筆人が自作を語り、金原瑞人法政大学教授が応援演説を行った。