全国書店新聞
             

平成18年6月11日号

JPIC新理事長に肥田氏/活字振興法の具体化に意欲

出版文化産業振興財団(JPIC)は6月1日、日本出版クラブ会館で定例評議員会、理事会を開き、任期満了に伴う役員改選で理事長に前衆議院議員の肥田美代子氏を選任した。
理事長はこれまで慣例でトーハン、日販の社長が2年おきに交代してきたが、昨年、施行された文字活字文化振興法を具体化させるには政界に太いパイプのある肥田氏が適任の声が上がり、就任を要請していた。
2日、出版クラブで行われた記者会見で肥田氏は「文字・活字文化振興法ができて、これから具体的な施策が展開される。最近、子どもたちのコミュニケーションの力が無くなっており、言葉の力を回復させるには読書が一番。全国民的な読書運動を起こしたい」と、就任にあたっての意欲を示した。
このほかのJPIC役員人事では、新副理事長に小峰紀雄(書協理事長)、村松邦彦(雑協理事長)、小林辰三郎(取協会長)の3氏が就任。新常務理事に相賀昌宏(小学館)、濱田博信(講談社)の両氏が就任した。日書連からは丸岡会長が副理事長、井門、藤原、高須副会長が理事に就任している。
肥田美代子氏略歴
昭和16年、大阪府生まれ。大阪薬科大学卒業。薬剤師、日本児童文学者協会会員。昭和54年『先生しごいたる』(偕成社)を初出版。平成元年参議院議員当選1期6年、8年衆議院議員当選3期9年。この間、「子どもの読書活動推進法」「文字・活字文化振興法」など議員立法の制定に活躍。17年に政界引退。

懸賞論文「私の書店論」募集

〔目的〕
出版業界はこの10年間、売上げを減らし続け、2005年の出版販売額は2兆1964億円となりました。これは、15年前、1990年の売上げ水準です。業界の冷え込みは町の小売書店を休廃業に追い込む一方、各地にメディアミックスの複合書店や、8百坪、千坪のメガ書店が出現しています。しかし、そのような大規模書店ですら出版物の販売では十分な利益をあげていないのが現状です。こうした出版業界の長期低迷、書店業界の沈滞を打ち破り、町の本屋を再生するにはどうすればよいのか、広く現場からの書店活性化論を募集します。
〔テーマ〕
「私の書店論」「書棚の個性化、語りかける書棚」「こうすれば書店は再生する」「書店にとっての生産性向上、効率販売」「私のプロ書店員、カリスマ書店員」「書店と地域との連携」など
〔字数〕
4百字詰め原稿用紙20枚以内、1枚から応募できます
〔応募資格〕
書店経営者、従業員、業界関係者、研究者、学生、読者を問いません
〔募集期間〕
平成18年7月1日~8月31日まで2カ月間
〔応募先〕
〒101-0062千代田区神田駿河台1―2書店会館内日本書店商業組合連合会「懸賞論文」係メール宛先info@n-shoten.jp
応募原稿には論文のタイトルと住所、氏名、書店名(勤務先)、年齢を添えてください。インターネットで応募する場合、A4判横書き、1行40字、36行詰めでご応募ください。
〔審査委員〕
日書連正副会長、指導教育委員会委員、広報委員会委員長、特別委員
〔表彰〕
特選1名(賞金20万円)入選3名(賞金各5万円)
〔入選発表〕
10月27日(金)文字・活字文化の日

新聞業の特殊指定は存続/教科書は9月から廃止/公取委

公正取引委員会は6月2日、昨年11月から見直しを進めてきた特殊指定について、新聞業については今回の結論は見送るとしたものの、教科書は6日の官報で廃止を告示し、9月1日から施行すると発表した。
2日に発表された公取委の「特殊指定の見直しについて」は、制定後長期間を経過し、近年運用実績のない特殊指定として5つをあげ、昨年11月から見直しを行ってきた結果、4つの特殊指定は廃止することとしたと結論している。
廃止することになった特殊指定は①食品缶詰・びん詰め業(平成18年2月1日廃止)、②海運業(同4月13日廃止)、③オープン懸賞(同4月27日廃止)、④教科書業(同6月6日廃止、施行9月1日予定)。
しかし、新聞業については「新聞業界等との間で鋭意議論を進めてきたところであるが、その取扱いについて、今回の見直しでは結論を出すことを見合わせることとした」と発表した。
特殊指定見直しの公取委の方針について、新聞業界は「著作物再販制度と新聞特殊指定が補完して同一紙同一価格、戸別配達が支えられている」「単に競争政策や経済原理で判断されるべきでなく、文字・活字文化振興の文化政策の観点からの議論も必要」と廃止に反対し、各政党からも反対意見が相次いでいた。
一方、教科書業の見直しは今春、廃止案に対する意見を募集したところ4618件の提出があった。このうち97%は廃止に反対の意見だったが、読売新聞では「公取委の判断で廃止に踏み切った」と、この間の経過を伝えている。

文字・活字振興法協議会を設置/大阪

社団法人全国出版協会(田中健五会長、上瀧博正理事長)は6月2日、文字・活字文化振興法の具体化を目的に「文字・活字文化振興法協議会」を発足させた。事務局長には衆議院議員肥田美代子氏の政策秘書を務めていた渡辺鋭氣氏が就任した。活字議員連盟との連携を図るとともに、各界各層の代表を発起人とする活字文化・読書活動推進全国センターの創設に取組む。
また、新たに「高橋松之助出版文化助成基金」を創設し出版文化の発展に寄与した個人・団体を表彰する。第1回目は平成19年秋に授賞式を行う予定。基金は元トーハン社長、故高橋
松之助氏夫人が協会に預けたトーハン株式配当金を運用する。

SJの日記念2006「本の川柳」入選作

本を借り返さないまま妻となり(東京・千田喜咲子)
どの文が気に入ったのか線だらけ(青森・高田芙由子)
人生論読んだが人生ままならず(愛知・武川文典)
古本の折り目が伝える祖母の癖(茨城・ちー)
かわやなぎ?つぶやく弟に辞書あげる(岡山・ノブオ)

書店経営環境改善に全力/日書連マークの活用討議/京都総代会

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は5月29日、京都市の京都ホテルオークラで第22回通常総代会を開催し、総代33名が出席した。今回は定款の一部変更を主な議案としたほか、平成17年度の各種事業経過と収支会計、今年度の事業活動計画案と収支予算案などを審議し、すべての議案を全会一致で承認した。
学校図書館のIT化について日書連MARCを使用した情報BOXの導入状況と、今後の取り組みについて報告されたほか、雑誌発売日違反の店舗が近年多くなってきていることが取り上げられたのを受け、励行厳守を目指した指導と対処を徹底することが確認されるなど、激しく変動する出版業界の現状が顕著に表れた報告が目立った。書店を取り巻く厳しい状況を改善するための試みについて、組合が組合員とともに全力で取り組む姿勢で臨むことを確認し閉会した。
総代会終了後に行われた表彰式では、小学館と京都新聞社から各種コンクールの入賞店の表彰が行われたほか、組合から役員や各店舗従業員の勤労表彰が行なわれた。
(澤田直哉・京都組合広報副委員長)

生活実用書/注目的新刊

『クロワッサン特別編集版体のツボの大地図帖』(マガジンハウス933円)は本紙連載の特集企画を再編集してまとめられたムック。
全身のツボ、足のツボ、手のツボのほか、15の特効ツボなどが詳しく解説される。手元の本は14刷だから、かなりのロングセラーである。今はそれだけ健康や美容への関心が高いと言えるのだろう。
たとえば、頭のてっぺんにあるのが「百会(ひゃくえ)」。「体の左右中央線と両耳の先端を結んだ交点」と言葉ではややわかりにくいものの、写真やイラストでも説明されるから一目瞭然。頭痛のツボだが、自律神経とも直結していて「気」の流れも司る場所。
「痛み」の項の筆頭は何といっても腰痛である。まず、中指で叩いてみるといいのが左手首にある「外関」というツボ。「手首を後ろに反らすと出る、しわの中央から上に2寸」のところ。いきなり尺貫法で驚くが、1寸は3・03センチだから約6センチ。痛い部分に直接触れずに、腰から遠いツボを押すのがコツのようである。痛みや不調を感じている人には何とも頼りになる本である。
このムックを単独に販売するだけでは、インパクトに欠
けるというので、もう一冊、別の本を並べている書店があ
る。この書店チェーンでは、この本に限らず、実に様々な
工夫が凝らしてあり、職人芸ともいうべき技を見ることが
できる。漫然と売れ筋だけを追う書店とは何から何までが
違っている。その別の本とはジュリアーノ・フォルナーリ
作/加藤季子訳『人体絵本―めくってわかるからだのしく
み』(ポプラ社2000円)で、本来は児童書の分類。
①からだのなかをみてみよう②骨格と脳と神経③筋肉の
働き④血液と呼吸と生殖⑤消化器と泌尿器、これが全てだ
が、各ページのたとえば筋肉や脳などの細部をめくると、さらに詳しい図版が現れる仕組みになっている。
子供に人体の内部を教えるための解剖学の絵本なので、
初めは児童書コーナーに置いたところが「気持ち悪い」と
いう子供の声が聞こえた。それで、体のツボの本の横に持
ってきたら売れ始めたのだという。手元にあるのが16刷り
だから、本書もロングセラーの一つである。コーナー作り
とは実際奥深い世界である。
(遊友出版・斎藤一郎)

藤原正彦氏が「国家の品格」語る/東京組合文化講演会

東京組合は5月26日午後6時から江東区・ティアラこうとうで「世界本の日=サン・ジョルディの日記念文化講演会」を開催。お茶の水女子大学理学部数学科教授の藤原正彦氏が「『国家の品格』を語る」をテーマに講演した。同氏の著書『国家の品格』(新潮新書)は昨年11月に刊行され、200万部を超えるベストセラーになっている。話題の本の著者による講演会とあって、会場は約800名の聴衆で満員になった。
藤原氏は「社会の荒廃が止まらない。『改革』『国際化』に踊らされるのではなく、日本は誇るべき国柄を思い出すべき」として、「いま日本に必要なのは論理よりも情緒・道徳、英語よりも国語・算数、民主主義よりも武士道精神。国家の品格を取り戻さなければならない」と話した。
また、規制緩和について「規制緩和は強者と弱者が同じ土俵で戦うケダモノの世界。規制は弱者を守るためにある。市場原理は弱者切り捨て。官僚がいて、規制で弱者を守る大きな政府が望ましい。市場原理で経済が良くなったと言われても、地方では誰も肯定しない」と述べ、規制強化を支持する立場を鮮明にした。

取引条件改善めざす/丸岡理事長が運動方針説明/東京都理事会

東京都書店商業組合は6月2日、書店会館で定例理事会を開き、丸岡理事長が日書連の今後の運動方針を説明。「全国小売書店経営実態調査」の結果をもとに①書店マージンの拡大②客注品の迅速確実化③出版物再販制の擁護④適正配本⑤支払いサイトの延長――を重点目標に取引条件改善を目指すとして、理解と協力を求めた。
万引・出店問題委員会の小林委員長は、福岡組合が万引き防止のため組合加入書店で購入した本に「販売証明シール」を貼る施策を始めたことを紹介。東京組合からも踏み込んだアイデアを出してほしいと求めた。また、5月18日の総代会で明らかになった「複数の女性雑誌へのピンクビラ挿入」問題については、複数の書店で同様の被害が出ていることが判明。被害の拡大が懸念されることから、都青少年・治安対策本部総合対策部健全育成課に再発防止へ指導を求める文書を提出したと報告した。出店については、ブックスキディランド亀有店(葛飾区)が2月に402坪、オークスブックセンター錦糸町店(墨田区)が4月に50坪でオープンしたと報告した。ともにトーハン帳合。
このほか、大橋副理事長から6月1日に施行された「改正道路交通法」について説明があり、「違法駐車の取り締まりが強化されている。東京都トラック協会から、駐車・荷捌きスペースの確保等に協力を求める文書が届いている。外商をやっている書店も他人事ではない。高い反則金は大きなコスト負担になる」として注意を促した。また、事務局人事で北住課長を次長とすること、平成19年度新年会を来年1月17日に東京ドームホテル、同総代会を来年5月17日に出版クラブで開催することを承認した。

人事

(◎昇任、○新任)
☆人文会
5月19日開催の総会で新役員並びに各担当委員長を決定した。
▽代表幹事=佐藤英明(白水社)
▽会計幹事=平石修(御茶の水書房)
▽書記幹事=新保卓夫(誠信書房)
▽販売委員会委員長=浴野英生(草思社)同副委員長=段塚省吾(紀伊國屋書店)持谷寿夫(みすず書房)
▽弘報委員会委員長=鎌内宣行(春秋社)同副委員長=平川恵一(筑摩書房)
☆フレーベル館
(5月17日付)
代表取締役社長
北林衞
常務取締役小宮髙
同◎中野浩
同◎後藤明敏
取締役鈴木晴夫
同石井美行
同〔非常勤〕大湊満
監査役〔非常勤〕
副島豪
退任した重野邦雄常務取締役は顧問〔非常勤〕に就任。
☆小学館パブリッシング・サービス
5月26日開催の株主総会及び取締役会で下記の役員人事を決定した。
代表取締役社長営業本部本部長加藤醇司
代表取締役相賀昌宏
取締役CSC本部・総務本部本部長今津貞彦
同大住哲也
同早川三雄
監査役大木武志
役員待遇関西支社長
寺西洋
同九州支社長石井伸二
同首都圏支社長
福井雄治
国近紘一顧問は退任。
☆文藝春秋
5月30日の決算役員会で以下の人事を内定。6月16日開催の株主総会、取締役会で正式決定する。
取締役会長白石勝
代表取締役社長編集委員室、企画出版編集室、社史編纂室統括上野徹
常務取締役総務、月刊文藝春秋、第一編集、情報事業、社長室統括(情報事業、社長室担当)
笹本弘一
同経理、管理統括(経理、管理担当)斎藤宏
同第二編集、ナンバー、文藝、第三編集、広告統括(第二編集、ナンバー、文藝、第三編集担当)
◎鈴木文彦
同出版、営業、宣伝、資材製作統括(出版、資材製作担当)◎平尾隆弘
取締役(営業担当)
名女川勝彦
同(月刊文藝春秋、第一編集担当)立林昭彦
同(宣伝、広告担当)
丹羽不律
同(総務担当)寺田英視
同(編集委員室、企画出版編集室担当)○浅見雅男
常任監査役石橋達恭同○斎藤禎
同○白川浩司監査役加藤靖彦浅井淳監査役は辞任。
☆太洋社(7月1日付)
〈機構改革〉
1、経営戦略室を新設する(社長室直轄)。
2、管理本部経営企画課を廃止し、その機能を人事課に移管する。
3、管理本部情報システム部ネットワーク課をネットワークデータ課に改称。
4、仕入本部に雑誌仕入部・書籍仕入部・商品部を新設し、仕入企画部・仕入部・商品管理部を廃止。
5、雑誌仕入部に統括課・仕入調整課・コミック開発課を新設する。
6、書籍仕入部に統括課・仕入調整一課・仕入調整二課・児童書学参課を新設する。
7、商品部にMD課・商品管理課・関口センターを新設する。
〈人事異動〉
経営戦略室担当兼各本部統括
常務取締役沢野豊
仕入本部長
取締役牧野伸一
営業本部長
取締役土屋正三
物流本部長兼管理副本部長兼取引管理部長
取締役永澤克彦
仕入副本部長兼雑誌仕入部長(仕入企画部長代理)小林利夫
物流副本部長兼業務部長(業務部長代理)
別所隆史
商品部長代理(商品管理部長代理)佐藤修
経営戦略室長兼情報システム部次長(情報システム部次長)村上直人
書籍仕入部次長(仕入部次長)田中保秀
業務部次長(業務部注文課長)八重田勉

「声」/利幅大きい商品開拓し売上げアップを/結城市・ブックスナカザト・中里雅之

サン・ジョルディの日「本の川柳」には1万通を超える応募があったという。グランプリは「絶滅が心配される本の虫」だった。ベストセラー以外に本を読まない人が増えている時代を反映した川柳だ。
しかし、本屋の実感としては、「絶滅が心配される本屋さん」もしくは、「絶望で心配される書店主」ではなかろうか。
そんな中、日書連では「私の書店論」という、元気が出る本屋さんの論文を募集するそうだ。もはや、POPや陳列を変えることで小さな書店の売上げを回復することは、無理だと思う。しかし、「利は元にあり」という言葉もあるように、視点をお客様から問屋サイドに向けてはどうだろうか。もちろん、それは大手取次になんとかしてもらうということではなく、新しい問屋を探すことだ。
売上げ=客単価×客数だが、客単価は、例えば当店では任天堂DSを仕入れて、毎週のように1万6800円で数個は売れ、トレカや駄菓子を扱えば、子どもたちは集まってくる。書店ということでも、本にこだわらず問屋を開拓して、絶滅危惧種から新しい本屋を目指してはいかがだろうか。

販売コン総合1位の健闘を称えあう/北陸トーハン会役員会

北陸トーハン会役員会が5月12日午後4時半より、金沢の都ホテルで開催された。出席者は役員27名(委任状含む)、トーハン北陸支店から支店長をはじめ5名の出席をいただいた。
冒頭、吉岡会長より全国トーハン会代表者会議の報告があり、今回2005年バリューアップ販売コンクール総合で全国第1位になったことについて参加者全員が健闘を称えあった。
会計報告、研修会報告等が原案通り承認され、今年度の総会は石川県の担当で6月21日に石川県七尾市「加賀屋本舗」で開催、講師を加賀屋代表取締役会長の小田禎彦氏に決定した。タイトルは「もてなしの心」となっている。
役員改選については、会長の意思で全員留任となったが、役員会・総会に出席できない方はご遠慮いただこうという意見が大勢を占めた。その他討議事項を協議の上、散会となった。
(渋谷恵一広報委員)

「今、なぜ論文募集なのか」/書店の情熱、意欲に期待したい/岩波ブックセンター信山社・柴田信

日書連は書店活性化のための懸賞論文「私の書店論」を広く内外から募集するが、この論文募集を最初に提案し、選考委員会特別委員にもなった岩波ブックセンター信山社・柴田信氏に、「今、なぜ論文募集なのか」を寄稿してもらった。
◇◇
書店を囲む商環境が加速度的に悪化しています。とりわけ中小の独立系書店にきびしい様相になってきました。昨今の業界紙からも、嘗て無かったほどの外側からの変化が予感できます。これが論文募集提案の前提です。
平成十八年四月一日現在、日書連加盟の書店数は六千六百八十軒だそうです。これは全国の書店数一万七千五百軒の38%にあたります。ピーク時から半減したこの数字をどう考えるかで意見は分かれます。中小書店の受難の象徴として捉える向きもありますが、私は、むしろ激しく荒れる向かい風の中に屹立する、六千六百八十軒もの仲間の存在に勇気づけられ、同時に出版業界のなかでの最大のこの組織を大切にしたいと思っています。これが提案の原点です。
先頃、本屋大賞というイベントが盛大に行われました。このイベントにはかなりの異見もありますが、それ以前に若い書店員の情熱や表現したいという意欲が伝わってきます。又、本紙を始めとして業界紙のコラムや読者欄には、経営者を含む若い方々の投稿が多く
見られ、現場の中でのしたたかな本気を感じます。さらにネットの世界でも、第一線で働く書店人が立ち上げたブログを開けると、ユニークで鋭い個々人の考えや主張に出逢うことができます。このように様々な場での、自己実現を目指そうとする姿勢に、私は現場の
挑戦的パワーを感じ、快い刺戟を受けています。これが提案の動機です。
必ず来るであろうデジタル時代、それと並行するように、今までにない変革の足音が、すぐ隣まで来ているようです。それは業界再編を含んだ大きなうねりで、私どもはともすると呑み込まれかねません。ですから、どんな変化にも、主体的に即対応できる現場の構築が急がれます。タイミングよく5月24日、日書連から「全国小売書店経営実態調査」の結果が発表されました。それによれば、2028票の回答があり、その中の85%が経営状態の悪化を訴えております。この調査にあった自由記述による意見は、改めて「意見集」として纏めるとか、楽しみです。私どもはこの調査結果や「意見集」を精査し、学習の糧にしようと考えています。
大変革の予兆が見える「今」だからこそ、自身で考えていること、それにそって実践していること、それらを論文にまとめることで、情報の共有化がなされ、結果、閉塞状況からの離陸の実現が期待できると思われます。これが論文募集提案の究極の目的です。

都市情報事業を統合/角川クロスメディアが発足

角川ホールディングスは角川書店ウォーカー事業部、㈱角川書店北海道、㈱ウォーカープラスに分かれて運営していた都市情報事業を統合することとし、4月1日、角川書店の雑誌部門を分社化して㈱角川クロスメディア(資本金2億5千万円、土屋良彦社長)を設立。6月1日にはウォーカープラス、角川書店北海道を統合した。
また、テレビ情報事業についても同日付で番組表製作、ネット配信業務を行ってきた㈱角川インタラクティブ・メディアを㈱角川ザテレビジョン(資本金2億5千万円、福田全孝社長)に統合した。同社も4月1日に角川書店雑誌事業部から週刊ザテレビジョン、月刊ザテレビジョン、月刊ザハイビジョン3誌が分社化していた。
6月1日に広告関係者を集めて東京會舘で行われた新会社説明会では、クロスメディア土屋社長が「4月1日にウォーカー事業部、広告事業部、代理店事業部を分社化して新会社が発足した。角川書店の広告事業は今後すべてクロスメディアマーケティング事業部が引き継ぐことになる。ウォーカープラス社の行ってきたネット広告、携帯、コンテンツ販売も加わる。ネット会員70万人、携帯会員30万人、計百万人の会員とも連動する。角川グループの目指すメガ・コンテンツ・プロバイダーとして、今後は広告にエンタテイメント性を加え、クロスメディアさせていきたい」とあいさつした。

秋に『大辞林』第3版/三省堂125年記念出版で

三省堂は5月30日、飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで2006秋企画発表会を開き、10月下旬に『大辞林』第3版、10月上旬に『ウィズダム英和辞典』第2版、『ウィズダム和英辞典』新刊を同時発売すると発表した。
三省堂八幡統厚社長は「辞書市場はデジタルの影響で冊子が縮小していたが、学ぶ辞書としてのよさが見直され、用途に応じた使い分けが始まっている。コンテンツのたらい回しでなく、媒体の特性を生かした価値の創出が必要」と述べたあと、「三省堂は明治14年に創業し、125年を迎えた。11年ぶりに『大辞林』第3版を出版する。デジタルの影響を最も受けたのは大型国語辞書。『大辞林』2版から11年、『広辞苑』6版からも7年出ていない。三省堂は創業125年を機に、改めて言葉の文化の発展に力を尽くしたい」と意欲を示した。
このあと北口営業部長が企画発表。全面改訂した『大辞林』第3版は23万8千項目を収めた国語+百科辞典として、10万部販売を目指すとした。予価税込み8190円、発売記念特価7665円(07年5月31日まで)。本格的にコーパスを活用した上級者向け『ウィズダム英和辞典』第2版は10万部、『ウィズダム和英辞典』は7万部が販売目標。定価は英和、和英とも税込み3360円。
『大辞林』販売促進費は5~19冊2百円、20~49冊3百円、50~99冊4百円、百冊以上5百円。初回配本のみ3カ月延勘。『大辞林』『ウィズダム』ともPOP大賞を募集しており、大賞は賞金各3万円、エリア賞1万円。

紙の辞書アピール/辞典協会が60周年

昭和21年4月に設立した辞典協会の創立60周年を記念した祝賀会が6月2日正午から九段下のホテルグランドパレスで開かれた。
辞典協会鈴木一行理事長(大修館)は「協会は発足して60年。この間、用紙の調達、生産、販売研究と様々な活動を行ってきた。近年は少子化、活字離れと売上げが厳しい中で辞典目録の発行などで販売支援に力点を置いた活動をしている。10年前に50周年記念の書籍を発行しているが、この中で電子メディアの問題が一部語られている。この10年は変化のスピードが早く、ここまで状況が変わるとは予測できなかった。電子書籍、パソコンといったメディアにも様々な良さがあるが、書籍の辞書にも優位性があり、この点を大いにアピールして勉強会などを計画するほか、いろいろな啓蒙活動を続けていきたい」とあいさつした。
来賓として学習書協会益井英博理事長(文英堂)は
「企業、組織の平均寿命が20年、30年といわれる中で60年の長きにわたって辞書の普及に努められたことはすばらしい。辞典はその時々の知識の集約。日本の文化、教育に多大な貢献をされてきた。電子辞書の拡大は同じ出版社として悔しい思いがする。ひとつの辞書を開発するには多大な時間と経費がかかり、それを回収するのは大変。協会の今後の役割に期待したい」と祝辞。日教販森内日出美社長が「活字を通して子どもたちの考える力を育てよう」と述べて、乾杯の音頭をとった。

売上げ1205億円/連合大会で三好社長が報告/大阪屋友の会

第40回大阪屋友の会連合大会が6月6日、三重県賢島「宝生苑」で開催され、書店205名、出版社224名、大阪屋27名など総勢484名が出席し過去最大規模で開かれた。
午後2時から行われた総会であいさつした田村定良連合会長は「連合会は昭和42年、高野山で第1回合同大会を開き、大阪屋を軸に出版社、書店を両輪に共栄を目指した。新しく発足した東海を含め9地区で増売、研修、懇親を重ねている。今年に入って景気は上向きだが、読者のニーズは10年前と大きく異なる。客の求める要望、サービスを考えなければいけない。各家庭にある書物の処分も今後考えていかなければいけない。1法人で解決できない問題は連合会を軸に解決し、新しい書店経営を目指したい」と述べた。
活動報告では、岐阜、愛知、三重、静岡の4県で東海地区友の会(中島弘道幹事長)を設立したこと、大阪地区青年部「阪青会」は連合会青年部に組織変更することが報告された。
増売優秀店表彰では40周年を記念して、雑誌、書籍、仕掛け販売各部門を総合、①名古屋市・榮進堂書店、②大阪市・波屋書房、③枚方市・野村呼文堂香里店と特別賞=大阪市・高松書店を表彰した。
祝辞を述べた大阪屋三好社長は友の会連合大会の歴史を振り返ったあと、大阪屋からの提案として①新たな協同、協力、強調関係の構築、②月商3~5百万円書店のグループ化による活性化、③新刊配本の受注制システム、④大阪屋友の会倶楽部発足と、会員限定の読者カード発行をあげ、読者カードについては「詳細は決定していないが、再販護持を前提に、トレーディングスタンプの容認範囲も踏まえ、年内に計画したい」と述べた。
今期決算では売上高1205億円を達成。3月末の決算棚卸では書店からの返品入帳を30日まで入帳、現在もほぼ月末入帳を実施していると報告した。
書協小峰理事長、雑協村松理事長、日書連丸岡会長、講談社野間副社長の祝辞に続き、小学館相賀社長が記念講演を行った。

本屋のうちそと

取次担当者ははっきりと言う。「この先、生残れるのはコンビニと大型店だけですよ」ウチのような小型店はさっさと消えてくれといわんばかりである。まあ今の世の中の流れとして普通に考えればそうなのだろうな。しかし変人な私は今の世の中がマトモだとは決して思っていない。規制せず放って置けば暴走する資本主義、させない為には金利を含めて幾つかの縛りが本来必要なのだと思う。しかし我が国は借金が多すぎてゼロ金利かそれに準じる金利でしか国家財政や経済が成立しない。私には今の景気回復はゼロ金利による幻の演出にしか見えない。コンビニは新規のFCオーナーの成り手が減少して本部直営店比率が上がり、それだと本部が儲からなくなるので困っているという。だが人件費や廃棄ロスといったコンビニ経営において当たり前の経費を本部負担にすると儲からなくなる商売って一体ナニ?と思うのだが。大型店は新規の出店をし続けることで新たな融資を受け、そのお金で前に出店した店の借金を払うシステムになっているが、今後新規の出店が出来なくなればどうするのだろう。
まちづくり3法の改正が決まりイオンの大型商業施設に出店拒否を決める街も出てきた。全国どこにでも大型店を望む消費者の欲望が、この国の地域社会にとって全て善だとは私は思わない。ただ、自給率の極めて低いこの国で農業を営むことが出来ずに、農地を潰して大型商業施設に農地を売りたいと願う人が多いのも、また事実である。
(海人)