全国書店新聞
             

平成17年12月11日号

新年号の原稿募集

本紙では1月1日・11日・21日付け発行の新年号特集として読者の皆さんからの原稿を募集します。テーマは①2006年、私の挑戦、わが店の挑戦、②紹介します我が家のお宝、③私のリラックスタイム、④自由題のいずれか。原稿は800字以内。住所、店名、氏名、年齢をお忘れなく。採用分には薄謝を進呈します。

まちづくり三法見直しを/第10回中小小売商サミット

第10回全国中小小売商サミット(全国中小小売商団体連絡会主催)が12月1日、東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテルで開かれ、日書連など小売12団体代表が一堂に会して、「まちづくり三法の抜本的見直し」を求める宣言を採択した。日書連からは下向磐理事ら総勢9名が出席した。
冒頭、全国商店街振興組合連合会・桑島俊彦理事長が主催者代表あいさつ。来賓祝辞では小泉純一郎首相(代読)、「中小企業と地域再生」議員連盟の中川秀直会長(自民党政調会長)、公明党・太田昭宏幹事長代行、民主党・松本剛明政調会長が中小企業政策への取り組みを話した。
このあと、まちづくり三法の抜本的見直しを訴え、①実効性のある景気対策②中小小売店、商店街等対策の大幅拡充③中小小売店に過度の負担を強いる消費税の税率引き上げに絶対反対――の3項目を求める宣言を満場一致で採択した。宣言文では、まちづくり三法は制定から7年を経過したが期待された効果を得ることができず、全国の中心市街地は活性化するどころか三法制定時より空洞化が進んでいると指摘している。
引き続き「まちづくり三法とまちづくりの動きについて」をテーマにシンポジウム。流通経済大学・原田英生教授をコーディネーターに、福島大学地域創造支援センター・鈴木浩教授、日本商工会議所・篠原徹常務理事、全国中小小売商団体連絡会・桑島代表の各氏が、まちづくりに果たす中小小売商業者の役割などについて話し合った。
サミット終了後に陳情活動を行い、小泉首相、関係議員・省庁などを表敬訪問。宣言文を手渡した。

読者謝恩図書カード、早期完売へ積極取り組み/東京組合

東京都書店商業組合発行の「読者謝恩図書カード」第1次郵送販売は多数の申し込みがあり、引き続き11月26日から29日まで第2次販売を受付。12月1日、2日着で申込書店に配送した。第2次販売から「30枚まで」の上限を外して希望枚数を申し込めるようにしたことから、今後大口購入が増えることが予想される。同組合は12月2日の理事会で早期完売を目指し全力で取り組むことを確認した。
「読者謝恩図書カード」は額面5250円で、組合員への卸値は4850円。販売価格は「読者謝恩」の趣旨に留意して各書店で判断してほしいとしている。販売開始後、同組合には多数の申し込み・問い合わせがあり、これを受けて第2次販売から「30枚まで」の上限を撤廃。今後は10枚単位で希望枚数を受け付けることにした。ただし発行枚数に限りがあるので、大量枚数の申し込みについては調整することもある。同組合は大口購入に加え、各支部への購入活動促進を図ることで、早期完売に向けて全力をあげて取り組むことを確認した。
共同受注委員会からは「卒業記念オリジナル図書カード」販売促進キャンペーンに組合あげて取り組みたいとの提案があり、了承された。図書カードは学生に相応しい実用的な贈り物で、特にオリジナルデザインの図書カードは卒業記念品として人気がある。山田委員長は「これから卒業シーズンを迎えるが、学校訪問時に卒業記念オリジナル図書カードを積極販売すれば、図書カードのマージンが入るとともに、先生とのパイプも太くなり図書納入にもメリットをもたらす」と趣旨説明した。
組織委員会の鳥井委員長は小学館グループ関連会社の昭和図書が10月12日にオープンした謝恩価格本と児童書の専門店「ブックハウス神保町」の組合加入を諮り、承認された。また、万引・出店問題委員会の小林委員長から、11月度の出店として①フタバ図書椎名町店(11月1日オープン、550坪、日販、豊島・練馬支部)②ブックファーストアトレ大森店(11月15日オープン、207坪、大阪屋、大田支部)③小田急商事ブックメイツ(11月23日オープン、100坪、トーハン、立川支部)――の3件が報告された。いずれも組合未加入。これに関連して、11月度新規出店3店舗を含めてアウトサイダーへの組合加入促進を強化することを申し合わせた。
また、厚生委員会の家田委員長は「平成18年東京組合新年懇親会」を来年1月17日午後5時半から東京ドームホテルで開催すると報告した。

東京地裁、仮処分申し立て却下/啓文堂久我山駅舎内出店差し止め

東京・京王電鉄久我山駅舎内に啓文堂書店が出店する計画を受けて、近隣で営業する久我山書店と板橋書店が京王電鉄と同社100%子会社の京王書籍販売(啓文堂書店)を相手に出店差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てていた問題で、同地裁は12月6日、「法的根拠となるものとは認めがたい」などとして却下する決定をした。7日、東京地裁の司法記者クラブで開かれた記者会見で、久我山書店の山田洋一社長は「不当な決定。中小企業者は潰れるしかないのか」と危機感を募らせた。
申立書で2書店は、鉄道事業者はその公共性に鑑みて周辺地域の中小企業者の事業活動や利益を不当に侵害してはならないと主張。特に鉄道事業者の100%子会社が駅舎内に出店すること、グループ会社の連結決算をかさに損益を度外視して出店できることが問題とし、憲法で保障される生存権的営業権(生業権)の侵害等を法的根拠として出店差し止めを求めていた。
記者会見で山田社長は「東京地裁の判断は、自由競争社会だからやむを得ないという一言に尽きる。鉄道事業の公共性に何ら言及することなく、周辺事業者への影響についても考慮していない。大規模事業者と小規模事業者を同列に置いて経済力の優劣を競わせようとするものであり、経済性を最優先とする今日の風潮に迎合し、国民の生存権的保障を放棄している」と主張。今回の決定は著しく不当であると訴えた。

学校図書館から教育を変える/全国SLAなどがフォーラム開く

全国学校図書館協議会(全国SLA)、関東地区学校図書館活動推進委員会、学校図書館整備推進会議の主催するフォーラム「学校図書館から教育を変える『文字・活字文化振興法』の具現化へ向けて」が、12月2日午後2時から日本出版会館で行われた。
冒頭で、主催者を代表して学校図書館整備推進会議・小峰紀雄議長が「文字・活字文化振興法の施策の具体化が今後の課題だ。子どもの言語力を育てるには、特に学校教育の中で読書と図書館整備の充実が必要。学校図書館の状況はこの10年で改善されつつあるが、まだ多くの課題が残されている。図書整備5ヵ年計画が平成18年で終了するため、高校も含め施策を期待したい」とあいさつ。
来賓の河村建夫衆議院議員・元文部科学大臣は「子ども読書活動推進法のあと、大人も含めたより包括的な法が必要だと考え、文字・活字文化振興法に取り組んだ。経済協力開発機構の学力調査で子どもの読解力の低下が問題になった。法の精神を生かして教育が変わり、子どもたちの未来が輝くようお願いする」と述べた。
第一部で、文部科学省初等中等教育局・坪田眞明児童生徒課長が学校図書館の現状について「全校一斉の読書活動が増えているが、学校図書館図書標準の達成率は小学校36・0%、中学校30・8%にとどまっている」と報告。平成18年度の概算要求で、学校図書館支援センターのモデル事業を進める「学校図書館機能強化プロジェクト」や、司書教諭を定数措置する「教職員定数改善計画」を盛り込んでいると説明した。
また全国SLA石井宗雄理事長は、文字・活字文化振興法を学校図書館や子どもの読書の充実に関する理念と目標の集大成であると位置づけ、法の掲げている子どもの言語力の涵養のために①学校図書館を基盤とした教育の充実②学校図書館の整備・充実③学校図書館の活用を促す教員の養成――が必要だと訴えた。
第二部のパネルディスカッションでは、教育委員会指導主事や学校長、司書教諭らのパネリストが、学校現場での取り組みを報告。「保護者がボランティアで学校図書館の蔵書整理や環境整備を行っている」「学校図書館システムを導入し、他の学校図書館や公立図書館とのネットワーク化を図っている」「授業計画の立案に司書教諭が関わって、図書館の活用を促したり、各学年学級の支援や指導にあたった」「学級担任と司書教諭の兼任はかなりの負担。専任化を進めてほしい」などの事例や意見が出された。

秋田県組合が中央会から感謝状

秋田県中小企業団体中央会の創立50周年記念大会が11月15日、秋田ビューホテルで開催され、秋田県書店商業組合に中央会会長感謝状が贈られた。
表彰式は各種団体関係者5百名余りが出席するなか行われ、秋田県中央会米沢實会長から加賀谷龍二事務局長(加賀谷書店)が表彰状を受け取った。出席した組合員が懇親会でも感謝と喜びを申し上げ、書店経営の支援に組合の活性化を期待した。
(木村和一広報委員)

生活実用書・注目的新刊

林信吾著『しのびよるネオ階級社会〝イギリス化〟する日本の格差』(平凡社新書267740円)はロンドンでの生活の長かった著者が語る、ロンドンの階級社会と近未来の日本社会の比較論である。これまで日本人の大半は中流だという幻想を抱いてきたが、正確には「一割の金持ちと、九割のそうでない人がいる社会」が実態ではなかったかと著者は指摘する。階級格差に未だにリアリティを持てない日本人に、現実を直視してもらおうというのがテーマである。
イギリス階級社会は国王を頂点に王室など貴族と代々の大地主が上流階級、そして中産階級、労働者階級だが、その線引きは単一ではない。収入や資産、職種による区分も大きい。医師、弁護士、エグゼクティブなどのアッパー・ミドルクラス。エリートサラリーマン、高級官僚、大学教授などミドルクラス。一般サラリーマン、下級公務員、農
民、零細自営業者、職人などがロウアー・ミドルクラス。たとえば建築現場で働く人のうち、建築士はミドル、大工や内装の職人がロウアー・ミドル、下働きはワーキングクラスなのだ。
「まず機会は平等で、あとは能力と努力によって、結果に差が出る」社会が正しいとしながら、やがてやって来る階級社会を見据えている。
三浦展著『下流社会新たな階層集団の出現』(光文社新書221780円)は単に所得が低いばかりでなく、意欲、能力の低い人々を「下流」と定義している。
ニート、フリーターなどと呼ばれる若者が増え、当然ながら活力のない風潮が蔓延している。マーケティングが生業の著者が、消費やライフスタイルから考察する社会論。
女性消費者の分類は面白くお嫁系、ミリオネーゼ系、かまやつ系(かまやつひろし風ユルいファッションの女性)、ギャル系、普通のOL系と分かれ、今時の女性を捉えている。しかし、あとがきに「サンプル数が少なく、統計学的有意性に乏しい」とあるように、やや強引な仮説が見受けられる。団塊世代、団塊ジュニア世代という人数の多い世代を一括りにするのは理解できるが、その隙間の世代は素通りである。おそらく、著者が1958年生まれであることと無縁ではないだろう。
(遊友出版・斎藤一郎)

訂正とお詫び

12月1日付1面に掲載した平成18年理事会日程で11月理事会が18日とあるのは22日の誤り、5月24日の理事会は(水)、25日総会は(木)でした。お詫びして訂正いたします。

日書連のうごき

11月1日出版倫理協議会に大橋副会長ほか役員が出席。個人情報連絡会に大橋副会長と大川専務理事が出席。
11月2日九州雑誌センター取締役会に丸岡会長出席。地域再生議員連盟総会に下向理事と大川専務理事が出席。
11月4日第35回野間読書推進賞贈呈式に丸岡会長と大川専務理事が出席。SJ実行委員会に丸岡会長、大橋副会長など役員出席。
11月7日ICタグ技術協力企業コンソーシアム解散総会に志賀副会長と大川専務理事が出席。平成17年度メディアコンテンツ業界電子タグ実証実験説明会に岩瀬専門委員と大川専務理事が出席。
11月8日「万引お詫び金」受入れ式に丸岡会長、大橋副会長、大川専務理事が出席。書店新風会総会に丸岡会長が出席。
11月9日鹿児島県情報化推進「日書連マーク」研修会に中尾専門委員が出席。第7回JPO運営委員会に志賀副会長と大川専務理事が出席。
11月10日第27回出版物関係輸送懇談会に梅木委員が出席。
11月14日出版物小売業公正取引協議会として規約改正の件で井門会長ほか3名が公取・消費者取引課訪問。
11月15日日書連再販研究委・東京組合合同委員会。出版流通改善協議会に下向理事ら4名が出席。大分組合情報化研修会に高崎委員が出席。第5回ISBNマネジメント委員会に志賀副会長が出席。
11月16日全国中小小売商団体連絡会第4回幹事会。
11月17日日書連各種委員会。増売/読書推進、指導教育、再販研究/公取協、共済会運営、組織強化/共同購買・福利厚生、書店経営実態調査、流通改善・取引改善、消費税問題、広報等。JPIC第30回定例評議員会、第74回定例理事会に丸岡会長ら役員が出席。中小企業会計啓発・普及セミナー。
11月18日日書連定例理事会。第4土曜日は子どもの本の日実行委員会に高須副会長、舩坂常任理事、大川専務理事が出席。読書週間「書店くじ」抽せん会。出版物小売業公取協理事会。出版物小売業公取協として井門会長ら3名が公取・消費者取引課訪問。日書連共済会理事会。
11月21日公取協月例会員懇談会に影山専務理事が出席。徳島県日書連マーク研修会に志賀副会長と長尾専門委員が出席。平成17年度八都県市青少年行政主管課長会議に大橋副会長と大川専務理事が出席。
11月22日情報化推進委員会。
11月24日「春の書店くじ」特賞当せん者「スペイン8日間の旅」出発。「子ども読書推進会議」平成17年度下半期運営幹事会。
11月25日出版平和堂維持会設立総会。日本図書普及役員会に井門副会長ら役員が出席。日本出版クラブ理事会・評議員会に鈴木副会長が出席。出版関係受章者祝賀会に鈴木副会長が出席。
11月28日徳島県日書連マーク研修会に長尾専門委員が出席。
11月29日発売日励行本部・実行合同委員会に藤原副会長ら役員が出席。

「声」/喜寿祝に感謝/杉並区・杉並みどり書房・奥川禮三

昨年は日書連より、今年は東京組合より喜寿慶祝金をいただき、感謝申し上げるが、気恥ずかしさも感じている。
いまだ単車で配達や仕入れに飛び回っており、もうこの辺でというサインかとも考えたが、永年自分を支えてくれた自分自身と古き良き僚友、カアチャンに深く感謝し、多くの友人、地元支部員にもありがとうと伝えたい。
ただ、日書連は数え年、東京組合は満年齢で慶祝金をいただいた。どちらでもいいようなものだが、二度もらう方がいいか、一度にもらった方がいいか、疑問。これからも、皆さんの邪魔にならないように元気でやっていきます。

「声」/店名騒動のその後/泉南市・尾崎ブックセンター・辻本キクヨ

11月21日号「声」に「似た名前の書店が近隣にオープン」を掲載していただきました。投稿した後、日販大阪支店長を訪ね、私どもの考えを伝えました。来週中には店名を変えさせますと約束していただき、ひとまず安心しました。
その後、問題の看板は「みやいおざき駅店」と書き換えられました。納得はできないものの、いつまでも言い募るのはどうかと思い、この線で落ちついております。
今回は大阪組合や支部の役員、日販会の皆様に大変お世話になり感謝いたしております。怒ることでエネルギーが充電されたような気もしております。皆様のご支援に応えて、よりよい書店となるよう頑張りたいと思います。

主婦の友社・村松社長講演/返品5%下げ条件に、書店正味3.5%下げ宣言

主婦の友社村松邦彦社長は11月29日に行われた出版科学研究所のセミナーで講演。中小書店支援策として「主婦の友社で返品が1%下がれば純利益が1億円増える。返品を5%下げれば書店正味を3・5%下げられる。コスト下げで書店に還元しなければ、出版社も危機を迎える」と、正味下げを提言した。
「中堅出版社主婦の友社の悩みと将来戦略」というテーマで講演した村松社長は、はじめに出版の将来の懸念材料として①IT事業進出、②再販制見直し、③書店廃業、④新しい小売業拡大、⑤フリーペーパー増加、⑥少子・高齢化、⑦読書離れ、⑧書店経営の多角化、⑨読者嗜好の多様化、⑩他業界からの参入をあげた。
特に書店に関する懸念材料として「7年間に7千店廃業し、雑誌のデリバリーがなくなった。中小書店をどう支援していくか考えなくてはいけない。書店経営が厳しくなれば、本・雑誌だけでなくCD、雑貨から食品まで扱い、本・雑誌への愛情が薄れていく」「出版社が百万円も2百万円もボーナスを出しているのは異常。書店は40歳の店長でも年収4、5百万円。欧米の場合、出版社の社員の給料は他企業の8割程度で、代わりにステータスは高い。これだけの(人件費)コストを払えるなら正味を下げるべきだ」と、出版社の人件費が高い矛盾を指摘した。
主婦の友社は7年前の経営危機をビル売却で脱した。社員の給料を下げ、経費のコストダウンを図った。製作面では書籍・雑誌の完全DTP化を推進した。1冊20円コストダウンすれば、年間3千万冊発行して6億円下がる。
DTP化は完全原稿を要求し、編集者の時間に対する意識も変化した。残業が減り、深夜タクシーがなくなるという副産物ももたらした。雑誌に欠かせない写真も同社はデジカメに切替えていく方針。フィルム、現像代は年に2億5千万円かかっており、設備投資を引いても1億円は浮く。
DTP化、デジタル化は
将来、雑誌が紙と電子媒体の両方で発行される予測への布石でもある。
主婦の友社は12年前、中国の出版社とのタイアップを開始した。『Ray』は現在68万部、『エフ』が61万部。『ベビモ』『コモ』『ミーナ』と相次いで中国市場に送り込んだ。『Ray』『カワイイ』は台湾、タイでも発行する。
村松社長が指摘したのは広告費の内外格差。中国版『Ray』にはヴィトン、シャネルなど日本版には入っていない広告が載っており、1頁の広告料は『Ray』で13万元(約192万円)。日本版『Ray』は165万円で、日中の物価指数から比較すると日本版の広告費は800万円でもおかしくないと言う。
40年前、『主婦の友』のカラー1頁広告は105万円。講談社の『with』が現在280万円で、この40年間に広告料金は2・7倍にしかなっていない。当時の大卒初任給が2万8千円だったことと比べても、雑誌はいかに広告費を上げてこなかったかがわかる。
5年前、同社は料理、園芸など実用書4点を部分再販で出版し、取次卸5・5掛、書店卸6・5掛の枠組みを作った。印刷コストの安い中国で作り、船便で日本に運んだ。40万部製作し36万部を販売した。
新実用シリーズは定価1200円の5%、60円をスリップ報奨で書店に戻した。印刷費を抑えるため最低ロットを3万部とし、輪転機にかけた。印刷所が大型輪転機を回す空き時間に印刷してもらうことで、コストダウンを図った。
現在、大阪屋と組んで返品を5%下げてくれれば書店にバック・マージン3・5%を出す実験を行っている。単独店舗、チェーン店、返品率の高い店、低い店と複数店舗でデータを集めている。社長が各店を回り、返品をチェックして管理した店は、返品が大幅に減っている。改めて明らかになったのは、努力する店は結果を伴うということ。
返品率を下げて利益を確保するという根拠を、村松社長はこう説明する。「雑誌の売上げは1兆9千億円。返品率30%で、5700億円の返品がある。5%返品が下がると950億円の純利が出る。書店の販売シェアを60%とすると570億円。これを1万5千軒の書店で割ると、1店当り年間380万円の利益が出る。5%返品が下がれば取次も増益になる。返品が減って定期購読がきちんと確保できれば出版社も利益が出る」
村松社長は富山・明文堂書店が「ざっしの定期便」で6500の定期をとったことを紹介。書店には責任販売と雑誌定期の獲得を、取次には垣根を越えた物流効率化を求めた。そして出版社には「毎年1%、3年で3%正味を下げてはどうか。スリップで返してもよい。定価を若干上げてもいい。書店の経常利益は0・04%で、(これを放置すれば)、いずれは出版社に跳ね返る」と指摘した。

生前の思い出語る/中村元副会長偲ぶ会

日書連元副会長、銀座・教文館社長、故・中村義治氏が亡くなって1年。故人を偲ぶ会が12月3日、柏市の日本閣南柏で行われ、教文館、出版業界、教会関係者など75名が集まった。
偲ぶ会では初めに松戸教会石井錦一牧師により記念礼拝。故人が愛唱した賛美歌と祈りを捧げたあと、会食に移り、教文館宮原会長の発声で献杯。在りし日の中村氏をスライドで紹介したのに続き、こぐま社佐藤社長、有隣堂篠崎相談役、ぴあ矢内会長、暮らしの手帖社大橋鎮子社主、太洋社國弘社長らが次々に中村氏との交流、思い出を語り、施主の中村タケ子さんがお礼の言葉を述べた。
なお、同日付で教文館から『中村義治追悼集いかなる時も望みを失わず』(非売品)が、同社創業120周年記念事業として出版された。

トーハン上期売上3049億円で微増

トーハンは12月1日、平成17年度上期中間決算を発表。売上高は3049億9400万円と前年を0・06%上回った。内訳は書籍1138億1900万円(2・1%減)、雑誌1735億8900万円(1・3%増)、NM商品175億8600万円(1・0%増)。返品率は書籍42・1%、雑誌33・3%、NM商品16・3%、合計で1・0ポイント増の36・2%。
売上総利益は売上伸長率を0・1ポイント上回る100・1%。営業費は98・9%。このうち販売費は98・1%、一般管理費は桶川SCMセンターで管理費、減価償却費の増があったが99・7%にとどまり、営業利益は54億6700万円、前年比107・6%となった。経常利益は26億8900万円、17・0%増。税引前中間純利益は25億3700万円、11・3%増。
藤井副社長は「書籍は前年9月に『ハリポタ』38億円があり、これをカバーできなかった。書籍の返品が多い点は桶川SCMの稼動でコントロールしていく」と述べた。

参考図書

◇『日本の出版社2006』
出版ニュース社から全国出版社名簿『日本の出版社2006』が刊行された。四六判8百頁、定価本体4500円。昭和30年以来、隔年で発行。40年の歴史を持つ出版社名簿の決定版。出版社4400社の所在地、電話、創立年、組織、資本金、従業員数、URL、メールアドレス、社長、営業代表者、発行部門、発行雑誌名などを収録。教科書発行所、取次、関係団体、主要新聞社、図書カード読み取り機設置店一覧も。

新刊紹介

◇『激浪の遙かに』
山口県指定無形文化財、萩焼作家・大和保男氏による初の小説『萩焼異伝逆さ獅子激浪の遙かに』がザメディアジョンから刊行された。恒文社発売、定価1785円。
11月22日の記者発表会でザメディアジョン今元山口支社長は「当社は広島に本社を置き、山口支社でタウン情報誌や『月刊松下村塾』を作っている。大和先生の小説は舞台が山口で、萩焼が4百年を迎えたタイミングもあり、話題になることを期待している」、恒文社庭野販売局長は「サスペンス、ミステリー、恋愛小説にアクションが加わったダイナミックさに感動し、販売のお手伝いをさせていただく」と述べた。
大和氏は「萩焼の歴史には謎が多く、今回の小説はその部分を意図した。特に若い人と年齢を重ねた方に読んでほしい」と語った。

よい本いっぱい文庫/今年も330施設に図書/日販

第41回「日販よい本いっぱい文庫」贈呈式が12月2日午前11時半から日販本社ビル21階の銀座アスターで行われた。同文庫は全国の各種学級・施設に本を贈る運動で、昭和39年以来続く日販の社会貢献活動。今年も330施設に4万5千冊を贈った。
贈呈式では日販鶴田社長が「この運動は日販の15周年イベントとして始まり、これまで8342カ所、148万冊を寄贈した。児童図書展や、おはなしマラソンも定着してきた。今後も子どもたちへの読書推進を草の根運動として継続していく」とあいさつ。厚生労働省藤木則夫障害福祉課長、富士見台聴こえとことばの教室徳光裕子理事長に目録を贈呈した。
これに対し、厚生労働省藤木課長は、日販と児童図書出版社、運輸会社に感謝を述べ、「本は人類が発明した最大の宝物。子どもたちがハンディに負けず生きる力と夢を与えてくれる」と祝辞。徳光園長は「幼い子どもの時から本に親しむ教育をしている。いただいた本で子どもも親も喜んでいる」と謝辞を述べた。
出版社を代表して児童図書出版協会竹下会長は「運動が継続しているのは日販の努力のおかげ。本との出合いで子どもたちの心が開かれ、共感する気持ちが育つ。今後も子どもの心に届く本を作っていきたい」とスピーチ。カンダコーポレーション吉林社長の音頭で乾杯した。

日販中間決算、売上高5.6%の減

日販は12月7日、第58期中間決算の概況を発表。売上高は対前年5・6%減の3202億7900万円となった。
内訳は書籍7・3%減の1113億4100万円、雑誌2・7%減の1693億8300万円、開発商品12・6%減の395億5400万円。返品率は書籍43・7%、雑誌37・2%、開発商品11・1%。書籍が3・4ポイント、雑誌が2・4ポイント上昇した。
営業費のうち販売費は返品増に伴う下請費、荷造費
の増加があったものの送品減で運賃も減り0・4%の減。一般管理費は人件費、経常経費の減少で前年を下回り、営業費全体で1・4%減となった。この結果、営業利益は13・8%減の60億7800万円、経常利益は36・7%減の18億3900万円。
古屋常務は「チェーン店のスクラップが多く、その分、返品率が増加した。所沢の書籍返品無伝化による影響もあった。返品率は10月後半から落ち着きを見せ、前年を割る状況が続いている」と説明した。

本屋のうちそと

近年ますます売上げ減少に悩んでいる。改善方法が見当たらない。定期配本の配達も減った。雑誌、週刊誌は小さな書店で。単行本、ベストセラーは駅前の大書店へ。テレビで、今まで15日ほどかかっていた本が5日で入荷するようになるというニュースに、「それでも遅い。ネット書店の流通はもっと早い」とコメントがあった。画面で発注して、来る日まで分かってしまうから、読者の気持ちはそちらに流れるでしょう。
それでも長年のお客様からの注文はありがたい。現在はFAX、電話、メールの注文が増えている。それをTS組合や取次に発注して、少しでも早くお客様の手に届けようと努力しているが、ままならない。
近所のお米屋さんは独自にホームページを開き配達すると謳っている。そのせいか自分の町以外からも注文があり、北へ南へと駆けずり回っている。いまは何の商売も不振。外食産業が良いといっても、町の商店街で食べ物屋は、めまぐるしく店舗を閉店したり、開店したり。その速さは尋常ではない。
大書店に山積みされた本が、小書店のお客様には届かない。それが本の売上げを伸ばす一番の方法だと思うが、出版社、取次はたった一人のお客様を満足させることが出来ない。流通が悪い、出版社が悪いと言っても、お客様には関係ない。新聞広告、書評を見て注文するのだから、当然どこの本屋にもあるものと思っている。昔のように店頭に本を並べ、来てくれるお客様を待っているだけではダメなのでしょう。最小人数で最大の販売を目指さなければなりません。(とんぼ)