全国書店新聞
             

令和3年10月15日号

副会長に深田、光永両氏/16年ぶり副会長8人体制に/日書連9月定例理事会

日書連は9月16日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開いた。副会長人事では、新たに2名を追加し、深田健治氏(大阪・ブックスふかだ)と光永和史氏(愛媛・松山堂書店)を選任した。また、粗利30%以上獲得を目指す運動の今後の方針について矢幡秀治会長(東京・真光書店)は、担当委員会を自身が委員長を務める政策委員会に移し、同委員会主導で前に進める考えを示した。なお、新型コロナウイルス感染予防の観点から、今回の理事会も実出席とWeb出席、書面議決書を併用するハイブリッド形式で行った。
冒頭あいさつした矢幡会長は、「コロナ禍で売上げが厳しくなる中、日書連活動が停滞しているわけにはいかない。少しずつでも前に進める」として、日書連が最優先課題として取り組む書店経営環境改善運動に言及。業界3者で協議する実務者会議の座長として中心的な役割を果たしてきた面屋龍延副会長が6月に退任したことを契機に、今後は担当委員会を指導教育委員会から政策委員会に移すとの方針を示し、「粗利30%以上獲得を目指す運動をしっかりと続けていかなければならない。政策委員会主導で前に進める」と決意を語った。
議案審議では、深田氏と光永氏の副会長就任を承認した。
日書連定款第31条で「副会長は8人」と規定されている。6月の大阪府書店商業組合の理事長交代により、面屋龍延副会長(大阪・清風堂書店)が退任したため、副会長は鈴木喜重氏(千葉・ときわ書房)、藤原直氏(宮城・金港堂)、柴﨑繁氏(東京・王様書房)、渡部満氏(東京・教文館)、春井宏之氏(愛知・正文館書店)、安永寛氏(福岡・金修堂書店)の6人となっていた。
従来から1人欠員のまま副会長7人体制を続けてきたが、今回、深田氏と光永氏が就任したことで、16年ぶりに副会長8人体制となった。
深田副会長は当面委員長に就かず、政策委員会担当として日書連活動全般をサポートする。光永副会長は面屋前副会長が担当していた広報委員長に就任した。
各委員会報告は次の通り。
[読書推進委員会]
間近に迫った「読書週間×本の日秋の読者還元祭2021」(10月27日~11月11日)について春井宏之委員長が報告し、「抽選で5000名に図書カードネットギフト1000円分が当たる。当選率は10%を超える。上手に活用して集客と増売に役立てていただきたい」と述べた。
また、独自企画を提出した組合に補助金を支給する「読書推進活動補助費」については、11月30日の応募締切までに良い企画を出してほしいと呼びかけた。
[流通改善委員会]
「雑誌発売日諸問題解決に向けた対応のお願い」と題する要望書を7月28日付で雑誌発売日本部励行委員会に提出した。日書連は平成10年から毎年、同本部委員会宛に要望書を出している。今回の要望事項は以下の9項目。
①全国同時発売を目指して、発売日格差の解消に努めていただきたい。まずは、全誌とも3日目地区(北海道ならびに九州地区)を2日目地区に繰り上げるご努力を願いたい、②沖縄地区の「週刊誌航空輸送」の早期実現に向けて、格段のご尽力を賜りたい、③年間購読など、出版社が読者に販売する雑誌の着荷日については、該当地区の発売日に合わせた調整を願いたい。また、dマガジンの配信についても同様のご配慮をいただきたい、④次号発売告知の際に、地方の発売日遅れの現状を勘案して「一部地域遅れ」の注意書きのご努力を願いたい、⑤「雑誌発売日励行に関する協約」と「契約」の普及と「正しい理解」の啓蒙を促進するために、強力な指導力を発揮願いたい。特に、悪質な違反に対しては資格の取り消しも含めた厳格な対応を願いたい、⑥読者目線に立って合併号を廃止し、年間を通してレギュラー発売が出来るようなシステムを構築していただきたい、⑦「週刊朝日」「サンデー毎日」の同一地区、同時発売に向け、関係各位の格段のご努力を願いたい、⑧休配日等の日程決定に際しては、書店側の意向も反映されるよう検討願いたい、⑨業量平準化の更なる促進のため、発売日の分散など様々な施策に取り組んでいただきたい
[組織委員会]
全国会員組合の加入・脱退状況は、6月期が加入なし・脱退12店で12店純減、7月期が加入3店・脱退4店で1店純減、8月期が加入なし・脱退5店で5店純減。
【新副会長の略歴】
深田健治氏(ふかだ・けんじ)
大阪府守口市・㈲ブックスふかだ代表取締役社長。1956年(昭和31年)2月13日生まれ、65歳。同志社大学経済学部卒。78年きものやまと入社。87年㈲ブックスふかだ入社。2001年大阪府書店商業組合理事、07年常務理事、11年副理事長、21年理事長。13年~17年日本書店商業組合連合会顧問、21年理事。
光永和史氏(みつなが・かずふみ)
愛媛県松山市・㈱松山堂書店代表取締役社長。1953年(昭和28年)3月9日生まれ、68歳。松山商科大学短期大学部卒。71年教学出版社入社。73年松山堂書店入社、83年代表取締役社長。83年愛媛県書店商業組合理事、98年専務理事、2011年理事長。11年日本書店商業組合連合会理事。

「出版販売年末懇親会」を中止

日書連は9月16日の定例理事会で、12月15日に都内で開催を予定していた「出版販売年末懇親会」を中止することを決めた。
書店が主催する出版業界の懇親の場として出版社、取次、関連団体などを招いて毎年実施してきたが、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、昨年に続いて中止することとした。

21年度賦課金を2000円減額/コロナ禍の厳しい組合運営に配慮

日書連は9月16日、東京・千代田区の書店会館で臨時総会を開催し、2021年度の組合員1名当たりの一般賦課金を年額7400円から5400円に2000円減額することを決めた。
賦課金の減額は、コロナ禍による事業収入の減少で各組合の運営が厳しくなったことに配慮した。減額を実行した場合、当期決算で約600万円の損失が見込まれるが、前期からの繰越剰余金の範囲内にとどまるため、積立金の取り崩しは行わない予定。減額は21年度限定で実施する。
理事の補欠選挙では、退任した池田和雄(茨城・一貫堂書店)、吉田徳一郎(滋賀・ヨシダ書店)、面屋龍延(大阪・清風堂書店)、今井直樹(島根・今井書店)の4理事に代わり、新たな理事に青天目敦氏(茨城・ヤマサン)、平井浩氏(滋賀・文平堂)、深田健治氏(大阪・ブックスふかだ)、武田徹氏(島根・今井書店)を選任した。

新理事に青天目、平井、深田、武田の4氏を選任/小売公取協臨時総会

出版物小売業公正取引協議会(矢幡秀治会長)は9月16日、東京・千代田区の書店会館で臨時総会を開催した。
理事の補欠選挙を行い、退任した池田和雄(茨城・一貫堂書店)、吉田徳一郎(滋賀・ヨシダ書店)、面屋龍延(大阪・清風堂書店)、今井直樹(島根・今井書店)の4理事に代わり、新たな理事に青天目敦氏(茨城・ヤマサン)、平井浩氏(滋賀・文平堂)、深田健治氏(大阪・ブックスふかだ)、武田徹氏(島根・今井書店)を選任した。

楽天BN川村社長と懇談/大阪組合

大阪府書店商業組合は9月13日、大阪市北区の組合会議室で定例理事会を開催。楽天ブックスネットワーク(楽天BN)の川村興市社長らが8月25日に組合事務所を訪れ、深田健治理事長らと懇談した際の内容を報告した。
楽天BNと大阪組合の懇談は、深田理事長の就任に合わせて行われ、業界の諸問題について話し合った。楽天BNから川村社長と森岡忠弘本部長、黒田敬三副本部長、村松俊尚副本部長、大阪組合から深田理事長と戸和繁晴副理事長、堀博明副理事長、虎谷健二副理事長が出席した。
委員会報告では、読書推進委員会から「本の帯創作コンクール」について報告があった。第17回目の今回は応募作品数9120点(9月10日現在)。最終審査会を10月8日に行い、受賞作品を決定する。新型コロナウイルスの影響で、会場での表彰式は今年も中止し、代わりに「朝日新聞紙上表彰式」で受賞作品を発表する。
また、読書ノートは5月28日に発送完了。今年は121校に4万9851冊送った。
(石尾義彦事務局長)

コロナ後も良書提供の使命果たす/林田芳幸理事長を再選/奈良総会

奈良県書店商業組合は9月6日、大和郡山市のディーズブックス会議室で第37回通常総会を開き、任期満了に伴う役員改選で林田芳幸理事長(啓林堂書店)を再選した。
総会は川岸泰子理事が司会進行。林田理事長は「コロナ禍を乗り越えて以前のような生活に戻るとき、本は必ず必要。本の役割は大きい。それぞれの書店が工夫を凝らし、頑張ろう」とあいさつした。
森谷勝則副理事長を議長に議案審議を行い、第36期(令和2年度)事業報告、決算報告、監査報告、第37期(令和3年度)事業計画案、予算案を原案通り承認可決した。
また、任期満了に伴う役員改選で理事9名と監事1名の再選を決めた。総会後に理事会を開き、林田理事長を再選した。
林田理事長は「コロナ後の業界は大きく変わりそうな気配だが、いい本を提供し続けなければならない。皆さんの意見をよく聞いて、前へ進めていきたい」と意欲を述べた。
[奈良組合役員体制]
▽理事長=林田芳幸(啓林堂書店)
▽副理事長=森谷勝則(森谷書店)
(靏井忠義広報委員)

「春夏秋冬本屋です」/「本との様々な出会い方」/千葉・ときわ書房本店文芸書・文庫担当・宇田川拓也

人生の割と早い段階で、自分には伴侶を得ることや家族を持つような今後が訪れる機会はないだろうと強い予感を覚えていた。ところが気がついてみれば、社内結婚をしていまや4歳と1歳の子を持つ父親となっているのだから人生何が起こるかわからない。
私は図書館で本を借りる習慣がないが、妻は頻繁に図書館を利用する。時間があれば子供たちの散歩がてら近所の図書館に足を運び、絵本を何冊も借りてくる。寝る前に私がそこから1日3冊ずつ読み聞かせるのが、我が家のルーティンになった。本屋の給料でこの量をすべて買い求めていたら生活がままならなくなってしまうのはいうまでもなく、大変ありがたく思っている。おかげで子供たちはふたりとも、保育園の先生から感心されるほど本を身近なものとして手を伸ばし、親しむようになってくれた。
いずれこの子たちにも、自分の望む本を自分で選び求める時が来るだろう。買うのか、借りるのか。紙か、電子か。紙の本を買うなら書店か、ネット書店か、それとも中古か。いくつも選択肢があるが、どれが正解という考え方はして欲しくない。選べる環境を存分に活用し、貪欲に本と付き合っていってもらいたい。
その豊かな経験のなかで、それでも本は本屋で買って読むのが一番と思ってもらえるよう、私もまだまだ頑張らねば。

「ひろゆきと話そう」オンラインイベント/11月1日「本の日」に開催

本の日実行委員会は、今年の「本の日」メインイベントとして、日本最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」創設者で実業家、著述家のひろゆき(西村博之)さんのオンライントークイベント「ひろゆきと話そう。本のこと、自分のこと、未来のこと。」を11月1日に開催する。
書籍・雑誌、テレビ、SNSなど様々なメディアで活躍し、若い世代を中心にブレイク中のひろゆきさん。大の読書家として知られ、『1%の努力』(ダイヤモンド社)、『無敵の思考』(大和書房)、『論破力』(朝日新書)など多くの著書がある。コロナ禍では多くの若者が全国のリアル書店に足を運び、ひろゆきさんの著書がベストセラーになる原動力となった。
トークイベントでは、ひろゆきさんが若い世代に向けて、読書経験や著書について語る。また、学生からの質問に答え、「本」を接点に交流する。
開催概要は次の通り。
▽日時=11月1日午後7時~9時
▽開催方式=①Zoom参加(中学生~大学生限定60名)、②YouTubeライブ視聴(誰でも視聴可)URL:https://www.youtube.com/embed/tQFHRk9aWs0
▽参加費=無料
▽参加条件=居住地域または近くのリアル書店で、ひろゆきさんの書籍を必ず購入し、読んでから参加
▽申込方法(Zoom参加)=「本の日」ホームページ(https://honnohi.com/)の参加申込フォームから。申込期限は10月25日。

第58回文藝賞に澤大知氏の「眼球達磨式」/河出書房新社

河出書房新社は8月26日、第58回文藝賞は澤大知(さわ・だいち)氏の「眼球達磨式」に決定したと発表した。
今回の応募総数は2459作で、これまでの最多だった昨年の2360作を大きく更新した。選考委員は磯﨑憲一郎、島本理生、穂村弘、村田沙耶香の4氏。8月20日に東京・港区の明治記念館で選考会を行い賞を決定した。澤氏は1996年、神奈川県出身。受賞作、選評、選考経過、澤氏による受賞の言葉は、10月7日発売の「文藝」冬季号に掲載されている。贈呈式は11月12日、明治記念館で開催する予定。

「新聞展望」休刊に

新聞展望社が発行する、新聞・広告・出版・放送業界などの情報を手掛けるマスコミ業界専門紙「新聞展望」が8月20日号をもって休刊した。
同紙は1952年創刊。ホームページで「『真実・自由・勇気』を信条に発行を継続してまいりましたが、令和、そして新型コロナウイルス感染症に伴うニューノーマル時代を迎えるなか、業界専門紙としての一定の役割を終えたと判断いたしました」と記している。

日書連のうごき

9月1日JPO運営幹事会(Zoom)に事務局が出席。『2021出版再販・流通白書』事務局打合せ会に事務局が出席。
9月2日本の日実行委員会に矢幡会長が出席。
9月3日会計士による定期監査。
9月8日聖教新聞社による書店説明会に矢幡会長が出席。
9月9日JPICとの打合せ会に矢幡会長が出席。
9月16日日書連臨時総会、9月定例理事会開催。公取協臨時総会、9月理事会開催。
9月17日万引防止出版対策本部に事務局が出席。
9月21日文化産業信用組合理事会に矢幡会長が出席。
9月24日全国中小小売商団体連絡会に事務局が出席。
9月28日全国中央会商業専門委員会(Zoom)に矢幡会長が出席。JPO理事会(Zoom)に事務局が出席。
9月29日日本図書普及取締役会に矢幡会長、藤原、春井両副会長が出席。雑誌コード管理委員会に事務局が出席。
9月30日PayPayとの意見交換会に矢幡会長、渡部副会長が出席。

「本の日」イベント/全国31店舗の企画に助成金/「本の日」実行委員会

日書連が事務局を務める「本の日」実行委員会(矢幡秀治代表=日書連会長)は、10月1日~11月30日の期間中、作家などの1日店長や講演会・サイン会、絵本読み聞かせ会、オンラインイベントなどを実施する書店に対し、奨励金を助成するとしてイベント企画を募集していたが、このほど助成対象の31店舗を決定した。
店頭活性化委員会(奥野康作委員長)が、全国から応募された各イベント内容を審査して助成対象店舗を決定した。1店舗の助成金の上限金額は5万円。助成対象に選ばれた店舗は、イベント終了後に事後報告書とイベント報告書を提出することとし、確認後、助成金を振り込む。

海竜社が破産

海竜社は9月21日、東京地裁より破産手続き開始の決定を受けた。負債は約2億円。
1976年設立の同社は、家庭教育書・健康書・生活実用書など幅広い分野の書籍を発行し、『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』(池上彰著)などのベストセラーを発刊。2013年2月期には年売上高約8億1000万円を計上していた。
しかし、近年は出版業界が低迷するなか売上が落ち込み、21年2月期の年売上高は約1億3000万円へ減少。小規模経営で資金調達も限界に達し、代表の高齢化による後継者不在であったことから、事後処理を弁護士に一任。9月14日に自己破産を申請していた。

「西日本POP王決定戦」受賞作を発表/BOOKEXPO2021実行委

BOOKEXPO2021実行委員会(大垣全央実行委員長)は9月17日、コロナ禍で中止となった「BOOKEXPO2021」の会場で発表を予定していた「西日本POP王決定戦」の受賞作品を発表した。
今回は、322作品の応募の中からPOP部門とディスプレイ部門の金賞、銀賞、銅賞、佳作を決定した。両部門の金・銀・銅賞受賞は次の通り。〔POP部門〕
▽金賞=坪井雅之(大垣書店伏見店)▽銀賞=辻香月(大垣書店イオンモールKYOTO店)岡本歩(ダイハン書房高槻店)▽銅賞=小林由美子(小林書店)渡部彩翔(田村書店吹田さんくす店)香村明美(田村書店緑地店)西嶋清花(FUTABA+プリコ垂水店)
〔ディスプレイ部門〕
▽金賞=枡田愛(水嶋書房くずは駅店)▽銀賞=内原由貴(大垣書店イオンモール堺鉄砲町店)坂東かおり(西日本書店)伊澤知美・小野里佳(平和書店TSUTAYA京都リサーチパーク店)▽銅賞=岡本歩(ダイハン書房高槻店)奥田勝(ブックスタジオ大阪店)

読書アドバイザー第28期養成講座が開講/JPIC

出版文化産業振興財団(JPIC)は8月28日、第28期JPIC読書アドバイザー養成講座の開講式をオンラインで開催した。
昨年は新型コロナウイルス感染症のため開催を中止。今期は感染予防のため、来年3月までの全4回のスクーリングのうち、8月と10月の2回をオンラインで実施する。出版業界関係者や図書館関係者、会社員、教員、公務員ら100名が受講し、読書や出版について体系的に学ぶ。
開講式でJPICの近藤敏貴理事長(トーハン)は、「受講生の皆様は職業・年齢共に幅広く、日本中から集まっている。他ではなかなか話すことができない方々との楽しい読書交流が生まれることを期待している」と述べ、「コロナ禍において多くの方々が書店に足を向け、人々が出版物に寄せる信頼の厚さが改めて明らかになったが、出版業界には様々な課題が山積している。最も重要な解決法は、新たに読者を育てること。読者アドバイザーになられた後も一緒に活動し、力を貸していただきたい」と呼びかけた。
祝辞を述べた日本書籍出版協会・小野寺優理事長(河出書房新社)は、「講座を通じ本を巡る世界を存分に楽しく学んでほしい」と述べたうえで書籍出版の厳しい状況に言及。「多様な本の情報を不特定多数の人に直接伝え、書店に足を運んでもらう手段を構築できれば、本を読みたいと思う人はまだまだたくさんいる。読書アドバイザーになったら1人でも多くの方に本の世界の豊かさ、喜びを伝えてほしい」と話した。

本田靖春NF賞と科学出版賞を贈呈/講談社

令和2年度・3年度の「講談社本田靖春ノンフィクション賞」ならびに「講談社科学出版賞」の贈呈式が9月14日に開催された。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため関係者のみで行い、祝賀会は中止となった。各賞の受賞作品は次の通り。〔令和2年度〕
▽第42回「講談社本田靖春ノンフィクション賞」=片山夏子『ふくしま原発作業員日誌イチエフの真実、9年間の記録』(朝日新聞出版)、吉田千亜『孤塁双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)
▽第36回「講談社科学出版賞」=菅沼悠介『地磁気逆転と「チバニアン」地球の磁場は、なぜ逆転するのか』(講談社)
〔令和3年度〕
▽第43回「講談社本田靖春ノンフィクション賞」=細田昌志『沢村忠に真空を飛ばせた男昭和のプロモーター・野口修評伝』、村山祐介『エクソダスアメリカ国境の狂気と祈り』(ともに新潮社)
▽第37回「講談社科学出版賞」=毛内拡『脳を司る「脳」最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき』(講談社)

トーハンとメディアドゥ/NFTデジタル特典付出版物を開発

トーハンとメディアドゥは9月21日、ブロックチェーン技術を基盤とするNFT(非代替性トークン)を活用した「NFTデジタル特典付き出版物」を出版社と開発、10月12日から順次、全国の書店で発売していくと発表した。
両社では、購入した出版物などの特典として入手できるNFTを活用したデジタルコンテンツを「NFTデジタル特典」と呼び、商標登録を出願している。両社調べによると、出版物に「NFTデジタル特典」が付与され刊行されるのは世界初の試みだという。ユーザーは、出版物に添付されたカード上の16桁のギフトコードをデバイスで読み込むと、NFTが直接Webサイト上で発行され、自身が保有していることが証明可能なデジタルコンテンツを取得できる。
今回「NFTデジタル特典」付きで出版される第1弾は、扶桑社の『SPA!10月19・26日合併号特装版』(10月12日発売、特典=本誌登場アイドルのデジタルトレカ)、『北川綾巴1st写真集「君の太陽」特装版』(11月2日発売、特典=デジタルムービー&写真集未公開フォト)、主婦の友社の『岡崎紗絵1st写真集「すがお。」特装版』(10月14日発売、特典=購入者へのサンクスメッセージ付き動画)の3タイトル。
両社は、「紙と電子の垣根を超え、本を通してNFTのデジタルアイテムを提供する取り組みにより、店頭集客・売上増加を図り、併せて新たなユーザーを取り込み、出版市場・コンテンツ市場全体の活性化を目指す」としている。

JPIC近藤敏貴理事長が講演/出版科研セミナー

出版科学研究所は11月12日午後3時~4時45分、出版文化産業振興財団(JPIC)の近藤敏貴理事長(トーハン)を講師に21年度第1回「出版セミナー」を開催する。
セミナーのテーマは「岐路に立つ出版業界業界横断型組織出版文化産業振興財団が担うべき使命と挑戦」。出版流通の維持継続や書店の収益性悪化が大きな課題となり、デジタル化の進行によって本や雑誌の存在が薄れつつある中で、設立30周年を迎え新しく生まれ変わるJPICが何をなすべきか、これからの読書と出版産業の未来を見据え担うべき使命と業界発展への提言について話す。
セミナーは東京・千代田区の出版クラブビルを会場に、Zoomでオンライン配信も行う。会場定員は50名。受講料は、会場が一般3000円、全国出版協会会員社2000円、オンラインが一般2000円、会員社1000円(すべて税込)。11月4日までに同研究所ホームページ(https://shuppankagaku.com/seminar/)の専用フォーム又はFAXで申込む。

書籍等卸、20年度は2・2%増収/巣ごもり需要が追い風に/日経MJ卸売業調査

日経MJは9月1日号で「第50回日本の卸売業調査」の結果を発表。2020年度の全14業種(その他を含む)の売上高の合計は前年度比4・0%減で、営業利益も同41・2%減と落ち込んだ。売上高、営業利益ともに比較可能な02年度以降で最大のマイナス幅となった。
この調査は、消費財を中心とした卸売業を行う企業885社を対象に6月下旬~8月上旬に実施した。有効回答企業は534社。
業種別では、14業種のうち6業種で売上高が前年を上回った。新型コロナウイルスの影響で、アパレルなど衣料品店が苦戦している繊維(18・1%減)や服飾品(21・2%減)の減少が目立った。一方、巣ごもり需要が追い風になった雑貨は2・5%増、書籍・CD・ビデオ・楽器は2・2%増となった。
1年前と比べた景況感を聞いたところ、「良い」との回答は全業種の6・4%、「改善の兆しがある」が17・5%で、改善の手応えを持っている企業は合計23・9%。一方「悪い」は13・0%、「悪化の兆しがある」は20・5%で、景況感が悪化している企業は33・5%と全体の3分の1を占めた。「ほぼ横ばい」は40・8%だった。
コロナ禍の影響を受けた業務を複数回答で聞くと、「営業・商談」が86・6%で最も多く、次いで「受発注」の30・1%。経営の効率化や営業力強化、災害などリスク対策で取り組んでいることを尋ねると、最も多かったのは「不採算取引の見直し」で65・1%。「在庫日数の短縮・在庫削減」も59・7%に上った。
書籍・CD・ビデオ・楽器部門の売上高ランキングで1位になったのは日販グループホールディングスで、前期比1・0%増の5210億1000万円。2位のトーハンが同4・0%増の4245億600万円。楽天ブックスネットワークは決算期変更に伴いランキング対象外となった。

出版流通改革の進捗状況を発表/書店収益改善施策の取組みで成果/日販

日本出版販売(日販)は9月1日、取引構造改革とサプライチェーン改革の進捗状況をまとめた「出版流通改革レポートVol.1」を発表した。
同社は5月28日に動画配信した「NIPPANConference2021」で、流通の最適化と業務プロセスの効率化を実現することと、書店マージンを30%以上にすることを目指す「取引構造改革」と、持続可能な出版配送の構築実現を目指す「サプライチェーン改革」の2つに取り組む方針を発表しており、今回は8月までの進捗状況を報告したもの。今後も定期的に取り組み状況のレポートを発信する。
取引構造改革では、書店の収益改善を実現させるための低返品・高利幅スキーム「PPIプレミアム」について、先行して取り組んでいる出版社11社とグループ書店126店舗の実績(21年7月時点)は、店頭売上が前年比14・7%増で全国平均を13・3ポイント上回った。また返品率は22・4%で全国平均を11・4ポイント下回っており、店頭売上アップ・返品減の成果をあげたと報告した。これを受け書店7社が参加の意思を表明しており、10月から選定店舗での取り組みを開始。また、グループ書店126店舗では新たに出版社6社との取り組みを10月からスタートする。
併せてオープンデータプラットフォームを活用した取り組みを進めており、カルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ会社Catalyst・Data・Partnersと協力し、データの量と範囲の拡大によるマーケティング精度の向上や、統合データによる業務効率化の実現を図る。加えて、店頭売上や顧客購買履歴に基づいた需要予測を提供して、PPIプレミアムの効果を最大化していく。
PPIプレミアムは、23年度には書店マージン30%を達成することを目標に拡大を推進する。
また、欠品防止による売上アップへ商品供給体制を構築する施策として、大日本印刷のデジタル印刷技術を用い、出版社2社と重版対象商品や欠品アイテムを対象とした注文送品の取り組みを5月から開始。今後拡大を目指していく。
サプライチェーン改革では、配送コース再編により現地配送の効率アップを図るため、全国の運送会社23社と延べ31回にわたり協議した。まず、物量シェアが大きい首都圏エリアを効率化の先行ターゲットと定め運送会社4社と協議を進めており、一部で具体的なコース最適化プランを策定している。21年度中を目標に先行エリアでコース再編を進め、以降、順次全国のエリアへの拡大に取り組む。

「本屋続けて良かったなぁ通信」NET21-協業化の現場から

【協業化のメリットは仕入力と情報力/いろは堂代表取締役・曽根豊久】
私はNET21に創立時から加盟しています。当時、本が買い切り制になるという噂があり、私どものような地方の小さな店舗では生き残ることができないという危機感がありました。それがそもそもの加盟のきっかけです。
それとは別に、大手の版元は売上ランクの高い書店を中心に配本していて、小さい個人店ではほとんど配本がなかったと思います。しかし、NET21は法人対応されるので、それ相応の配本、対応をしてもらえる。これが最大のメリットだと思います。
また、NET21に加盟していると、地方にいるとなかなか知ることのできない情報を手に入れることができる。仲間がいるので、アイデアを出し合ったり、相談したり、版元品切れの客注を融通してもらったりできる。こういう点もメリットだと思います。”