全国書店新聞
             

令和3年2月15日号

1・0%の1兆2237億円/2020年紙の出版物販売額

出版科学研究所は2020年の出版物発行・販売概況を発表した。紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1・0%(123億円)減の1兆2237億円で16年連続の減少となったが、減少幅は大きく縮小した。販売金額の内訳は、書籍が同0・9%減の6661億円、雑誌が同1・1%減の5576億円。電子出版は同28・0%増の3931億円と大きく伸長し、紙と電子を合算した出版市場は同4・8%増の1兆6168億円と2年連続プラスになった。
新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛で在宅時間の増加、娯楽の制限など生活様式の大きな変化が起こり、読書の需要が高まったことと、コミックス『鬼滅の刃』(集英社)の爆発的なヒットが、出版市場を底上げした。4月の緊急事態宣言発令後に1400店を超える書店が一時休業を余儀なくされたが、取次調査による5~12月期の書店店頭の販売金額は全て前年を上回った。また『鬼滅の刃』はコミックスだけでなく、書籍のノベライズ作品や関連付録を付けた雑誌など、出版物全体に販売効果が波及した。
書籍の推定販売金額は前年比0・9%(62億円)減の6661億円。3月に始まった学校一斉休校を機に、学参、児童書が急激に売上を伸ばし、年間を通しても好調だった。リモートワークの導入に伴い、ビジネスやコンピュータの実用書も売行きを伸ばした。このほか文芸書、ゲーム攻略本が前年を上回るなど健闘したジャンルが多かった。
新刊点数は6万8608点で、同4・6%(3295点)減と大きく減少した。新刊点数が7万点を下回ったのは01年以来。内訳は、取次仕入窓口経由が同3・7%減の4万7589点、注文扱いが同6・5%減の2万1019点。コロナ禍で制作中止・延期となった書籍が多かった。
出回り平均価格は、同1・4%(16円)増の1198円と7年連続で上昇。新刊平均価格は同0・8%(10円)増の1207円だった。金額返品率は33・0%で同2・7ポイント改善した。2ポイント以上の改善は04年以来。
ジャンル別動向を見ると、文芸書は、本屋大賞受賞の凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)をはじめとした文学賞受賞作品や、東野圭吾、池井戸潤、村上春樹など人気作家の新刊が売上を牽引。ビジネス書では19年刊行の『FACTFULNESS』(日経BP発行/日経BPマーケティング発売)が紙版で84万部と好調を持続した。文庫本は、カミュ『ペスト』(新潮文庫)や五木寛之『大河の一滴』(幻冬舎文庫)など、コロナ禍を機に改めて注目され、ヒットする既刊が目立った。
雑誌の推定販売金額は同1・1%(61億円)減の5576億円。内訳は、月刊誌が同0・5%(23億円)増の4662億円、週刊誌が同8・5%(85億円)減の913億円。月刊誌は97年以来のプラスとなり、内訳を見ると定期誌は約9%減、ムックは約14%減だったが、コミックス(単行本)が約24%増と好調でプラス転換に貢献した。コミックスは『鬼滅の刃』の桁違いの伸びに加え、他にもアニメ化作品などヒットが多く、大幅に伸長した。
推定販売部数は同2・2%減の9億5427万冊。内訳は、月刊誌が同1・0%増の7億1170万冊、週刊誌が同10・4%減の2億4257万冊。平均価格は同0・3%(2円)増の591円。金額返品率は同2・9ポイント減の40・0%。内訳は月刊誌が同3・6ポイント減の39・5%、週刊誌が前年同率の42・3%。月刊誌はコミックスの返品率が大幅に改善し、7年ぶりに40%を下回った。
創復刊点数は同15点減の43点と、3年連続で過去最少を更新した。休刊点数は同29点減の98点。『東京ウォーカー』(KADOKAWA)、『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)など有力誌の休刊が相次いだ。不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同291点減の2975点、ムックは同1004点減の6449点。1号を1点とした付録添付誌数は同1009点減の1万302点だった。
電子出版の市場規模は同28・0%(859億円)増の3931億円。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同31・9%増の3420億円、電子書籍が同14・9%増の401億円、電子雑誌が同15・4%減の110億円。新型コロナ感染拡大に伴う巣ごもり需要でユーザー数が大幅に増えたことが市場拡大に寄与した。コミックは『鬼滅の刃』をはじめとする映像化作品が大きく牽引。書籍は、ライトノベルやビジネス書の人気が高く堅調に成長。電子化を解禁する作家・作品も増加している。雑誌は、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数減少が続き、3年連続の2桁減。
紙と電子の出版市場を合わせると1兆6168億円、同4・8%増。市場全体における電子出版の占有率は24・3%で同4・4ポイント増加した。

絵本専門士養成講座第8期受講生を募集

国立青少年教育振興機構は、絵本に関する高度な知識、技能や感性を備えた専門家を養成する第8期「絵本専門士養成講座」の受講生を募集している。
同講座は6月~22年1月まで実施。受講料6万5千円。定員70名(35名×2クラス)。募集締切3月5日、受講者決定5月中旬。申し込みは同機構ホームページの申込フォームから。
問い合わせは絵本専門士委員会事務局(同機構内)まで。℡03(6407)7714

フタバ図書が事業譲渡/地元ファンド、日販など出資の新会社に

フタバ図書(広島市西区)は1月28日、広島県が創設した「ひろしまイノベーション推進機構」が運営する「ふるさと連携応援ファンド」などが出資する新会社に事業譲渡すると発表した。事業再生ADR手続きを活用する。
新会社は現フタバ図書より3月1日にグループの主要事業を譲受後、フタバ図書の商号を続用する。新会社となるフタバ図書には、「ふるさと連携応援ファンド」のほか、日本出版販売(日販)、蔦屋書店、もみじ銀行、エディオン、広島マツダが計9億円出資する。
日販は出資とともに事業面での支援も行う。あわせて横山淳上席執行役員を同社退職の上、新会社の代表取締役社長CEOとしてフタバ図書に派遣する。
新体制の下、将来にわたり持続成長可能な地域書店の実現を目指すという。

兵庫組合新年互例会/デジタル教科書本格導入懸念の声/森理事長「“紙”ベースに共存を

兵庫県書店商業組合は1月19日、新年互例会をZoomで開催し、書店、取次、出版社など約40名が参加した。新型コロナウイルスの状況に鑑み、今回はオンライン形式での開催とした。コロナ禍で多くの新年行事が中止となる中で数少ない顔合わせの機会となり、開催を喜ぶ声が数多く聞かれた。
新年互例会は中島良太副理事長(三和書房)の司会で進行。安井唯善副理事長(安井書店)の開会の辞に続き、森忠延理事長(井戸書店)があいさつした。
森理事長は、コロナ禍で組合活動が停滞しないよう、オンラインで顔を合わせ話し合う機会を増やしていきたいとの方針を提示。右肩下がりの出版業界で関係者が同じ方向を向いて社会に対する情報発信を行っていく気運が醸成されたことが「コロナからの学び」だったとして、「昨年はステイホームで本を読む人が増える一方、デジタル機器への接触も増えた。出版社が作る本を、書店がその意図を汲み取って売らなければ、お客様は買ってくれない。本の良さを読者にどう伝えるかという初心に戻って本を売っていきたい」と抱負を語った。
また、兵庫組合が昨年、官公需適格組合となったことに触れ、「公共的な需要を組合で商売として取っていく。各地区の組合加盟書店の利益に結びつく形にもっていきたい」と述べた。
読書推進については、1月~3月に毎月各1回、Zoom講演会を開催することを説明し、「積極的に参加してほしい」と呼びかけた。
安井副理事長は「デジタル化推進の掛け声のもと、タブレット端末が各学校に行き渡り、紙の教科書・教材とどう折り合いをつけていくかが大きな関心事になっている。積極的に情報収集を行い、生き残ることができるよう対応したい」、山根金造相談役(巌松堂書店)は「政府はデジタル教科書の普及率を2025年度までに100%にする目標を掲げている。教科書は紙のほうが適していると主張する運動を展開していきたい」と述べ、小中学校でデジタル教科書の本格導入を目指す政府の動きに懸念を示した。
これについて森理事長は、「個人的な意見だが、(デジタル教科書の本格導入が進めば)小中学生の読解力は低下し、国の力はさらに落ちるのではないか。デジタルを駆使しながらリアルの『紙』を広げていく必要がある」と指摘し、リアルをベースにデジタルと共存する方向を目指すべきとの考えを示した。
来賓の奈良県書店商業組合・林田芳幸理事長(啓林堂書店)は「コロナ禍で不安な状態の中、本が少しでも人々の心を和らげることができればと思っている。本をしっかりと販売し、近隣の方々の悩みや不安を取り除くことの役に立ちたい」とあいさつした。
書店、取次、出版社、関係者が順番に新年あいさつを述べ、山根相談役の閉会の辞で終了した。

「春夏秋冬本屋です」/「ラジオで本を紹介する」/静岡・島田書店花みずき店店長・佐塚慎己

地域のFMラジオ局に頼まれて、月に1回、本を紹介しています。2009年の6月から始まってもう12年目になります。
原稿のファイルを見返してみると、売上ランキングの文芸の1位は村上春樹の『1Q84』、コミックの1位は『ONEPIECE54巻』でした。最初の頃は本を1冊、お気に入りの曲を1曲紹介していました。本はともかく楽曲の紹介は、音源を自分で用意するため本当に大変でした。
2年目に入り出演をお断りしようとしたら、本の紹介だけでOKということになって、こちらも肩の力が抜けて今までやってこれました。どれだけ反響があるのかわかりませんが、レジに立っているとき、「ラジオと一緒の声だね」とか「店長のおすすめ本買ってみるよ」と言われることもごく稀にあり、続ける励みになっています。
紹介する本の基準ですが、ラジオで聞いた方が店に来て、実際手に取ってもらいたいという気持ちがあるため、店にある程度在庫のあるものが中心になります。また、静岡書店大賞を受賞した本や静岡新聞社の本、地元作家の本も積極的に紹介しています。
何年やってもまだまだ上手にできませんが、お客様とリアル書店をつなぐかすがいとして、これからも頑張っていこうと思います。
1年間拙筆に付き合っていただき感謝です。

首里城復興へ県に100万円寄付/沖縄組合、加盟32書店で募金活動

沖縄県書店商業組合は1月8日、沖縄県庁に謝花喜一郎副知事を訪ね、首里城復興支援寄付金として約100万円を贈呈した。
首里城復興支援に向けて2019年12月~20年11月の1年間、組合加盟書店に協力を呼びかけ、県内32ヵ所に募金箱を設置し、募金活動を展開。書店利用者からの募金として総額100万6646円が寄せられた。沖縄県中小企業団体中央会の支援の下、県内企業4社合同で作成された特製の募金箱を無償で提供してもらい、募金活動に役立てた。
寄付金を贈呈した小橋川篤夫理事長(いしだ文栄堂)は「お客様の善意と組合加盟書店の皆様の協力に大変感謝している。集まった寄付金をぜひ首里城復興に役立ててほしい」と話した。
寄付金を受け取った謝花副知事は「多くの皆様から寄せられた善意を、首里城復興のためにしっかりと役立てていきたい」と感謝した。(竹田祐規広報委員)

第3回「書店向けWeb商談会」/4月5日~23日に開催

有志の出版社で構成する書店向けWeb商談会実行委員会(三芳寛要実行委員長=パイインターナショナル)はこのほど、「書店向けWeb商談会2021春」を4月5日~4月23日に開催すると発表し、今回で3回目となる開催にあたり出展社の募集を開始した。
コロナ禍をきっかけに始まった同商談会は、昨年10月に2回目を開催し、出版社など149社が出展、全国の書店員235名が参加し、779回の商談が行われた。取引金額は2000万円超で、好評のうちに終えた。一方、商談が行われなかった出展社もあったことから、今回は商談しなくても注文できる受付機能を追加する。また、実行委員会から事前のノウハウ提供、集客期間中のフォローアップも行う。商談方法はCalendlyでの商談予約+Zoomでの商談。
書店受付(集客期間)は3月8日~4月23日。実行委員会は多くの書店に参加してもらうため、日書連、取次への協力要請や書店本部への声掛けを行っていくとしている。

ABC雑誌発行社レポート2020年上半期雑誌販売部数

日本ABC協会は2020年上半期(1~6月)雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載したのは36社125誌。各雑誌部数の前年同期比の平均(既存誌ベース)は、週刊誌92・04%、月刊誌94・47%、合計93・90%となった。報告誌の状況は、朝日新聞出版『アサヒカメラ』、エムオン・エンタテインメント『andGIRL』『mamagirl』は休刊。光文社『HERS』は報告を中止。『GetNavi』『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』は、学研プラスからワン・パブリッシングに発行元を移管。KADOKAWA『KansaiWalker』は、発行周期を隔週刊から月刊に変更した。
一般週刊誌のトップは『週刊文春』の30万1166部で前年同期比4・8%増となった。2位の『週刊現代』は同3・8%減の20万156部、3位の『週刊新潮』は同14・7%減の16万8759部、4位の『週刊ポスト』は同16・0%減の15万9921部といずれも部数を落とした。新聞社系では、『週刊朝日』は同18・7%減の6万125部、『サンデー毎日』は同17・0%減の3万1515部だった。
ビジネス・マネー誌は、『週刊ダイヤモンド』が同6・2%減の6万2286部、『週刊東洋経済』が同12・7%減の4万7191部、『日経ビジネス』が同7・8%減の15万3531部、『プレジデント』が同11・6%減の11万6988部といずれも後退した。
女性週刊誌は、『女性セブン』が同7・6%減の17万8154部、『女性自身』が同6・7%減の16万4250部、『週刊女性』は同6・4%減の8万8821部と落ち込んだ。
女性月刊誌は、ミドルエイジ誌『GLOW』が同55・7%増の18万8904部と絶好調。宝島社の女性ファッション雑誌は『GLOW』のほか、2位『リンネル』、3位『sweet』、4位『InRed』と販売部数上位を独占した。シニア誌の『ハルメク』は同29・3%増の32万760部で、17年上期から6期連続伸長を記録している。

『推し、燃ゆ』芥川賞受賞9日で20万部突破/本屋大賞ノミネートで加速

第164回芥川賞受賞作の宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)が1月29日に20万部を突破した。
同作は、昨年7月発売の「文藝」秋季号に一挙掲載した作品で、掲載直後よりSNSを中心に話題沸騰。同号は発売4日で異例の増刷が決まり、9月に単行本化したもの。単行本は順調に版を重ね、受賞前の時点で7万部まで部数を伸ばしていた。
1月20日夕方に芥川賞受賞が報道されると、瞬く間に全国の書店店頭で完売し、即3万部の重版が決定した。さらに、受賞翌日の1月21日に本屋大賞へのノミネートが発表されると注文が殺到し、芥川賞受賞9日で20万部を達成した。
宇佐見氏は1999年静岡県生まれ、幼少時から神奈川県在住。21歳の大学2年。19年『かか』で第56回文藝賞を受賞し、デビューした。同作は20年に第33回三島由紀夫賞を史上最年少で受賞している。『推し、燃ゆ』は2作目となる。

12月期販売額は8・3%増/『鬼滅の刃』最終巻爆発的売行きで/出版科研調べ

出版科学研究所調べの12月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比8・3%増となった。
内訳は書籍、雑誌とも同8・3%増でいずれも大幅なプラスとなった。書籍は前年同月が13・1%減と二桁減に落ち込んでいたことと、当月も返品が大きく改善したことでプラスになった。雑誌の大幅増は『鬼滅の刃』(集英社)効果による。12月4日に最終巻となるコミックス23巻が初版395万部、またスピンオフ作品『鬼滅の刃外伝』(同)が初版100万部で発売された。いずれも発売日に品切れ店が相次ぐ爆発的な売れ行きとなり、重版がかかった。このため月刊誌は同11・2%増となった。一方、週刊誌は同8・7%減と低迷が続く。
返品率は、書籍が同3・0ポイント改善の29・9%。雑誌は同3・1ポイント改善の34・2%だった。内訳は月刊誌が同3・9ポイント改善の34・2%、週刊誌が同2・1ポイント悪化して44・8%。月刊誌の大幅改善はコミックスの販売増による。
書店店頭の売上げは、書籍が約2%減。文芸書は東野圭吾の新刊『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』(光文社)が23万部、加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)もヒットし、約8%増。新書は出口治明『自分の頭で考える日本の論点』(幻冬舎新書)や『スマホ脳』(新潮社)など久々に新たなヒットが登場し、前年並みに。
雑誌は、定期誌が約2%減、ムックが約12%減、コミックスが約45%増。『鬼滅の刃』全23巻が新刊・既刊ともに一気に売れたことに加え、『キングダム』(集英社)の新刊60巻が初版100万部に達した。

書店新風会新風賞贈賞式/『ぼくはイエロー~』『鬼滅』が受賞

書店新風会は1月6日、東京・千代田区の出版クラブビルで第55回新風賞の贈賞式を開催した。同会役員数名と受賞者が出席し、会員書店はリモートで参加した。受賞したブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)、特別賞の吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(集英社)の出版社と著者に賞状と賞品を贈った。
冒頭、大垣守弘会長(大垣書店)があいさつ。昨年はコロナ禍で地方総会や勉強会・研修会が中止となり、役員会・定例会もほぼリモートでの開催になったと報告し、「リモートは情報は短時間で正確に伝えられるが、意見の交流、吸い上げはしにくいと実感している。新しい事業の取り組みがやりにくかった」と振り返った。
一方、本に戻ってきた人が多数いたとして、「巣ごもりでスマホやタブレットに飽きた人たちが久々に書店に足を運び、『書店には新しい発見がある』『最近本をよく読むようになった』という意見をもらった」と喜んだが、「それはいつまでも続かない。書店がお客様にしっかりと本を薦めることが大事」と気を引き締めて語った。
新潮社の佐藤隆信社長は、同社内で編集、営業、宣伝がチームを組んだことや、早いうちから書店員に読んでもらい感想をPOPにしたことなどの取り組みを報告。「内容は海外の片隅の話だが、書店員が店頭で様々な発信をしてくれて50万部を超える結果につながり、勇気をもらった」と感謝の言葉を述べた。
集英社の廣野眞一社長は「1億冊を超えたコミックスはいくつもあるが、これほどのスピードで売れた例はかつてない。作者の実力と作品の力は大前提だが、読者と書店、アニメ関係者の誰一人が欠けてもこうした状況にはならなかった。我々の手を離れ、多くの人たちにブームを作ってもらった」と謝意を述べた。
両社の担当編集者も登壇し、著者のメッセージを伝えるなどした。
〔大垣守弘会長を再選/4期目に〕
新風賞贈賞式に先立ち新年総会を開き、2021年~2022年役員体制を承認。4期目となる大垣守弘会長の再任を決め、小林卓郎(煥乎堂)、林田芳幸(啓林堂書店)、大塚茂(柳正堂書店)の3副会長も再選した。

森井書房(兵庫)・森井社長の孫、藤井怜子さん/法務省作文コンテストで最優秀賞/「万引なくすには親子で読み聞かせを」

森井書房(兵庫・姫路市)の森井宏和社長の孫である藤井怜子さん(姫路市立大津中学校2年)が、法務省主催の「第70回〝社会を明るくする運動〟作文コンテスト」で最優秀賞の法務大臣賞(中学生の部)を受賞した。
「見逃さないで!『助けて』のサイン」と題した藤井さんの作文は、森井書房で起きる万引犯罪について考察し、子供たちの万引をなくして明るい社会を作るためには家庭での読み聞かせが大切と訴えたもの。
森井書房では小中学生による万引が多いという。万引犯にどのように対処しているかを祖父母や母親に尋ねたという藤井さんは、「店員は万引犯を捕まえることが仕事ではありません。万引を未然に防ぐこと、子供に罪を犯させないことが仕事なのです。おかしいな、と思った子には、必ず目を見て、笑顔で声掛けをします」「それでも防げないことがあります。そんな時、心の中で見抜けなかったことを悔やみつつ、なぜ盗んでしまったのか、子供の話をよく聞くようにしています。祖父母も母も決して声を荒らげません。なぜ盗ってはいけないのか、このままだとどうなるのかをわかりやすく丁寧に話します」と綴る。
ゲーム感覚で欲望のまま万引する子供たちのほとんどは「家庭に問題がある」と考え、「万引は心のSОSです」「寂しい・構って・見て・笑って。親、特にお母さんに切実なメッセージを送り続けた、最終手段なのだと思います」と子供たちの心に寄り添う。そして、「小中学生の万引をなくすには、まず家庭からです。日頃から様子をよく観察し、子供が出す『助けて』のサインを家族にいち早く察知してほしいのです」と訴える。
万引した子供たちが「イライラしていたから」とよく言うのは、自分が何に苛立っているのか言葉でうまく表現できないからで、親子で読書をしたり読み聞かせをすることで、親子の絆も強くなり、家庭内暴力や虐待もなくなる。子供たちの心身が健康になり、明るい社会を築くことができると結んでいる。
この作文コンテストは、小中学生に日常の家庭生活、学校生活などの体験を基に、犯罪や非行に関して考えたことや感じたことを書いてもらうもの。今回は全国から15万725点の応募があった。表彰式は新型コロナウイルスの状況に鑑み中止となった。