全国書店新聞
             

平成18年3月1日号

雑誌袋の斡旋中止

日書連共同購買・福利厚生委員会(中山寿賀雄委員長)が斡旋してきた販売用雑誌袋、週刊誌袋、ポリ袋の扱いについて、委託先のユタカ紙業から2月20日付けで「雑誌袋・ポリ袋斡旋中止のお願い」の申し入れがあり、今年3月20日をもって斡旋を中止することになった。
注文数の減少と製袋機械の老朽化に伴うもの。今後の雑誌袋斡旋は未定。

85%が経営悪化/実態調査集計で判明

2月22日に書店会館で行われた日書連2月理事会の概要は以下の通り。
〔書店経営実態調査〕
昨年末実施した「書店経営実態調査」は2012通を回収し、回収率29%。回答のうち9割にあたる1821通について、中間集計がまとまっていることを高須委員長が説明した。
最終調査結果は、生データを分析し、記者会見で報告するが、集計の一部として、「ここ数年間で経営はどうなったか」の設問に「よくなった」は0・9%、「ややよくなった」が3・7%、「変わらない」が7・5%だったのに対し、「やや悪くなった」は22・4%、「悪くなった」は63%、両者合わせて85%の書店が経営悪化を実感していることを紹介した。
高須委員長は「最近、アマゾン、セブンアンドワイなどインターネット書店から再販制、取引など出版業界に対する注文が相次いでいる。従来の業界三者に著者、読者も加えた5者でweb書店にどう対抗していくか、発想を変えて考えていきたい」と、今後の課題を述べた。
〔流通改善〕
『ハリー・ポッター』第6巻の販売条件について、静山社より2月20日付で①買切り扱い、②初回送品部数の5%を返品許容、③1冊40円の販売協力金を支払う――とする通知があったことが報告された。
藤原委員長は「前回販売時より、買切りなら低正味にという日書連の考え方を再三伝えてきたのに、日書連への連絡は取次より後回し。販売条件も低正味でなく、前回と同じ5%の返品許容枠を設けた。1部40円の報奨金は定価に換算すると1%。私どもの主張する低正味65%とは相当の開きがある。報奨金のつけ方も、返品枠は初回配本分のみで、報奨金は5月25日までの注文部数について支払う。しかし合計冊数の95%分しか払わない。最初から返品5%分を引いた報奨というのはおかしい。100%売り切った場合でも(その分の)報奨はしないのか」と強く批判し、静山社に再度見直しを求めていくことになった。
〔共済会運営〕
4月1日からの保険業法の改正施行に伴い、日書連共済会も同法の適用を受けることになると木野村委員長が報告した。
改正保険業法は財務基盤が脆弱で、監督・規制のない共済組織を排除する狙いで、委員長は「今後の選択肢として①解散、②ブロック単位などに細分化して保険業法のワク外に、③保険会社に丸投げ――が考えられるが、保険会社が運営すれば掛け金が高くなり、給付金額も従来より少なくなる」と指摘。今後の対応を早急に検討していく。

春の書店くじ実施要領

▽実施期間平成18年4月20日(木)より30日(日)まで。書籍・雑誌500円以上購入の読者に「書店くじ」を進呈
▽発行枚数600万枚。書店には1束(500枚)3750円(税込)で頒布
▽申込方法束単位で返信用申込書に必要事項を記入し、所属都道府県組合宛に申し込む。
▽配布と請求方法くじは取次経由で4月18日前後までに配布。代金は取引取次より請求。
▽当選発表5月23日。日書連ホームページ並びに書店店頭掲示ポスターで発表
▽賞品賞品総額8680万円、9・8本に1本の当選確率
特等賞=オーストラリア6日間の旅60本
1等賞=図書カード1万円600本
2等賞=図書カード又は図書購入時充当1千円1800本
3等賞=同5百円1万2000本
4等賞=図書購入時に充当百円60万本
ダブルチャンス賞=図書カード1万円100本
▽賞品引換え特等賞は当選券を読者より直接日書連に送付。1、2、3、4等賞は取扱書店で立替え。図書カード不扱い店または品切れの場合は、お買い上げ品代に充当。ダブルチャンス賞は7月5日(当日消印有効)までに読者が直接日書連にハズレ券10枚を送付
▽引換え期間読者は5月23日より6月30日(消印有効)まで。書店で立替えたくじは7月31日までに「引換当選券・清算用紙(発表ポスターと同送)」と一緒に日書連事務局に送付
▽申込み書店特典 組合経由の申込店から抽選で3店にオーストラリア6日間の旅無料随行員。
▽PR活動春の書店くじ宣伝用ポスター

5月初めにも施行へ/書店景品ルール改訂を申請/小売公取協

書店景品ルールの改正問題で、出版物小売業公正取引協議会は2月15日、公取委に公正競争規約改訂の申請書を提出した。2月22日に行われた出版小売公取協理事会で井門会長より報告されたもの。改訂案が施行されれば①ベタ付き景品提供は年2回90日まで、②複数回取引で提供するスタンプサービスによる景品提供は2%まで、③ただし初年度は1%までとなる。
景品規約の改訂は2月10日の臨時総会において改訂案が賛成多数で可決されたのを受け、15日、小売公取協大川事務局長が公取委に申請書を提出した。井門会長は出版小売公正競争規約改訂の今後の段取りについて、3月下旬か4月上旬にも公聴会が開かれ、承認されれば、4月末か5月初めには施行になる見通しと説明した。
さらに、臨時総会で改訂案が可決されたのを受けて、内外から問合せがあるとして「年2回7%の総付景品提供と、複数回取引のスタンプサービス1%を合わせて8%の景品を出せるかという質問があったが、これは違反。1回の商取引で出せる景品は7%が上限」と説明した。
さらに、「通年できるスタンプサービス1%を認めたのは、あくまで景品提供であり、値引きを認めたものではない」と強調。この点については23日昼、書協朝倉理事長に会い、小売公取協の考え方を説明してきた」と報告した。

33組合に490万円/情報化支援の資金給付/2月理事会

〔情報化推進〕
各県組合に対する情報化資金は33組合から申請があり、査定の結果、当初計画の総額300万円を上回る490万円を支出したいと志賀委員長が提案。追加申請のあった長野組合への支出も含め了承した。
2月8日には近畿ブロック会の学校図書館電算化をめぐるパネルディスカッションに志賀委員長が参加。小学館相賀社長の講演とともに有益な意見交換だったと報告した。
〔指導教育〕
岩波ブックサービス柴田信社長が新文化1月19日号に、日書連で「私の書店論」を募集してはどうかと提案した件で、大橋委員長は「柴田さんの提案は野に逸材ありという考え方。現場にはまだまだよいアイデアがあるはず。手詰まり状態にある書店業界に新風を吹き込む提案、アイデアなどの論文を集めたい」と、日書連としての論文募集を提起。同提案を承認した。今後、募集、締切、審査、表彰などの募集要項を早急に詰めるが、優秀作を掲載した冊子作成も検討する。
志賀副会長からは、岩波文庫全点を並べて「売れない文庫フェア」を実施。マスコミに大きく取り上げられた結果、売上げが2割増えた札幌・久住書房を紹介して、こうした事例を多数集めて欲しいとした。 〔増売運動〕
児童図書出協、取協と展開している「心にのこる子どもの本夏休み売行き良好書セール」の実施要領を承認。今年も「絵本」「読み物」「遊びと学習」「読み聞かせライブラリー絵本」各セットを受注する。
春の書店くじは舩坂委員長から申込み状況が報告され、締切を延長するので受注促進を呼びかけてほしいとした。昨年実施した読書週間書店くじ特賞「オーストリア8日間の旅」は赤澤副委員長を団長に5月12日から19日まで実施する。
〔読書推進〕
高須委員長は、新学期の増売シーズンに向けて店頭で「サアー本屋さんへ行こう」のCDを流し、演出効果を高めてほしいと呼びかけた。
〔環境改善検討ワーキング機関〕
理事会の前日、22日に開いた第1回会合の模様を鈴木委員長が報告。正味下げ、本の価格設定などについて意見交換したとした。今後、経営実態調査の結果も踏まえ、議論を重ねる。
〔組織強化〕
都道府県組合の1月期加入は7店、脱退31店で1月は24店の減。昨年4月から今年1月までの累計では289店減少し、組合員数は6749店となった。
〔スタートアップ21〕
商品基本情報センター、書籍データベースの再構築について井門委員長から報告があり、来年1月からISBNコードが13桁になるが、当面は10桁と併用できるシステムにしていくと報告した。
ICタグの実証実験は、宇都宮・新星堂ララスクエア宇都宮店、TSUTAYA新橋店、ブックハウス神保町の3カ所で2月から3月にかけて行われる。最近バーコードとICタグの両方読めるPOSレジが開発されている。
〔取引改善〕
雑誌付録の改善について柴崎副委員長が最近の実例を基に販売上の問題点を指摘。下向委員長は「付録をつけるなという要望ではなく、簡素化と付録組みの省力化を求めており、雑協と話し合っていく」と述べた。不公正取引については、当面事例の収集を続け、監視機構の編成は見送った。
〔共同購買・福利厚生〕
中小企業経営者、従業員のケガや健康を保証する「あんしん財団」加入状況は、2月16日現在で24店、56名となったことが中山委員長から報告された。
日書連で行っていた雑誌袋、週刊誌袋、ポリ袋の斡旋については、注文数が減少したことによりユタカ紙業から中止の申し入れがあり、3月20日をもって中止することになった。

マータイさん迎えもったいない大賞

ノーベル平和賞受賞者で「もったいない」を世界共通語に広めたケニア共和国環境副大臣、ワンガリ・マータイさんを迎え『私の、もったいない』大賞授賞式が2月21日、ホテル・ニューオータニで行われた。
マガジンハウスと毎日新聞社の共同企画で『もったいない』(4刷・9万8千部)が出版されたのは昨年6月。その後、「私のもったいない」を募集したところ、海外も含め6歳から92歳まで2011通の応募があり、大賞、優秀賞、マガジンハウス賞、毎日新聞社賞を決定。優秀作品56点は『私の、もったいない』(定価1200円)として2月16日、マガジンハウスから出版された。
授賞式でマータイさんは「『もったいない』は単なる言葉でなく、伝統に根ざした精神で、日本から世界に向けたプレゼント。環境面でもリーダーシップを発揮してほしい」と述べ、大賞の中西シゲ子さん(84歳)に賞状を手渡した。
小池環境大臣は「マータイさんによって『もったいない』が新たな息吹を吹き込まれた。来日したマータイさんに紹介した風呂敷も気に入ってもらえた。活用して地球温暖化防止に役立てたい」とあいさつした。
同書の売上げの一部は毎日新聞社を通じて、マータイさんの推進する植林運動「グリーンベルト運動」に寄付される。

共済会給付

(18・1・24~18・2・20)
▼病気傷害土浦市荒川沖町西区2―5―1博英堂飯田恭平殿
横浜市鶴見区上来吉4―6―2第三日本堂金子保殿
佐伯市中村東町5―9広田書店廣田仁久殿3口
▼死亡弔慰中央区銀座5―2―1東京旭屋書店早嶋健殿4口
中野区本町4―31―8中野文化堂書店渡辺保一殿
墨田区八広4―25―6松北堂吉田書店遠藤幸吉殿2口
名古屋市西区上名古屋2―5―3浄心堂書店冨田武信殿
松本市寿台7―12―1水琴堂書店小松康彦殿
大阪市住之江区中加賀屋2―11―4住之江書房栗山信正殿5口
尼崎市昭和南通7―161三和書房中島卯三郎殿6口
上川郡風連町仲町92丸市高橋商店高橋吉吾殿3口
▼前名義人死亡(遠藤幸吉)墨田区江東橋3―8松北堂吉田書店錦糸町支店遠藤吉勝殿
▼配偶者死亡(栗原くみ子)一関市大町1―24北上書房栗原秀郎殿5口
▼消防冠水高松市大田上町758―1前川書店前川勉殿1口80万円
▼漏水京都市上京区堀川下立売上ル4-5アポロン書房黒澤靖殿1口10万円
▼その他被災綾瀬市早川3211国分寺書店
笠間茂治殿1口5万円

1月期は0・2%減に/前年に続きマイナススタート/日販調べ

日販経営相談センター調べの書店分類別売上げ調査によると、1月期は99・8%と前年を0・2%下回った。前年1月期も対前年比はマイナスで、2年連続の前年割れになった。
書店規模別では、81~120坪クラスの書店が1・2%減となり、40坪以下、81~120坪、121坪以上はほぼ横ばい。
ジャンル別では、コミック、実用書、文庫、新書の4ジャンルが前年をクリアして、引き続き好調を維持している。コミックと実用書は2%台、文庫と新書は5%台の伸び。
文庫は『博士の愛した数式』(新潮社)、『白夜行』(集英社)などのメディア化作品が好調。新書は『超バカの壁』の動きがよい。
客単価は平均3・9%増の1163・0円。41~80坪店が12・6%増と2ケタの伸びとなり、他の規模は横ばい。

「声」/直接年間予約購読者への割引に疑問/長野県・山根屋書店・沓掛喜久男

『本社発行の雑誌、書籍は、お近くの書店でお求めください。書店への予約ご購入が入手確実です。書店に品切れの場合や、ご近所に書店がなく、やむをえず本社へご注文くださる場合は送料実費をいただきます』。以上は、ある雑誌の隅に極小の活字で記載されていたものです。この当たり前の記事が、小生には輝いて見えたのです。
しかし続いて『本誌を1年分以上前金で本社へご注文の場合は、送料を本社で負担いただきます。定価変更の場合は、差額を本社で負担いたします』とあり少々残念だったのですが、それでもかなり良心的に感じられました。
ところが、一般に出版社は直送の場合の送料、特大号の差額負担は当然で、さらに過剰な値引き、サービス品提供等で読者を誘っている。それは書店のマージンを上回っていることさえあります。再販には触れないのだろうか、その媒体を配達している書店は、どうして問題にしないのだろう。タブーなのか。もちろん出版社の固定定期読者によるメリットを承知の上で言わせてもらいました。

「声」/先行き不安の中、弱者に温かい政治を/北海道・高野名書店・高野名正治

2月14日の北海道新聞投書欄に、81歳の主婦の方の「読者の夢くれた書店の閉店寂しい」という投稿がありました。白糠町の老舗がなくなったことを嘆き、お客さんがすれ違えないほど店内が賑わった昔の光景を大切に胸にしまっておこう、と書いておられます。
全くその通りと、昔の本屋の賑わいを思い浮かべる店が多いことでしょう。本当に本が売れなくなり、先日は客数・売上高も開店以来最低の記録となりました。どうしてこんなに本や文具が売れないのか。不景気だから売れないのではないと思います。今、景気は回復と報道されていますが、景気がいいのは大企業です。今の年金、福祉、教育、雇用など全く不安定で、先行き不安では購買力は減ります。政府は、空前の利益を得ている大銀行、大企業から相応の税金を負担させ、公務員の天下りをやめさせることです。
年売上3千万以下の店は消費税の納税が免除でしたが、今年から1千万円以下となり、納税に苦労します。これからも大増税とされたらとても営業できず、「シャッター店」が待ち構えています。贅沢もせず働いてきた者を見殺しにするのでしょうか。弱者に温かい政治こそ望みです。

定款の改定原案最終調整へ/「帯コン」表彰式は11月4日開催/大阪組合

大阪府書店商業組合は2月18日午後2時から組合会議室で2月期理事会を開催した。庶務報告では、2月8日に開かれた近畿ブロック会の模様を報告。平成18年度理事会開催日・日程表の原案が提示されたが5・6月の開催日は保留して次回審議することになった。このほかの審議事項は以下の通り。
〔定款等改定委員会〕
2月23日に原案の最終調整、3月理事会に原案提示する。
〔読書推進委員会〕
2月14、15、16日にトーハン、大阪屋、日販会議室を会場に借りて「帯コン」の書店説明会を開催。「帯コン」後援を依頼した自治体から承認の連絡がほぼ100%返っており、残りは4自治体となっている。2月9日には東京で出版社と会合して、出版社の今年に賭ける意気込みを確認した。表彰式は会場を昨年より広い大阪ドーンセンター(客席500)とし、11月4日に行なう。17年度「読書ノート」は春季締め切りが2月末、名簿発表4月23日頃。18年度「読書ノート」の希望校募集は4月中旬で、5月中旬に配布。
〔雑誌発売日励行委員会〕
少年サンデー「兄ふんじゃった!」の早売り容認かと取れる表現について、近畿ブロック会での小学館・相賀社長による謝罪を了として議論を収めたいと発言があり承認された。発売日違反では、河内長野市・デイリーショップヤマザキの違反業者が新進・寺川と判明、出版社に厳正な措置を求めたことなどの報告があった。
〔再販・公取協委員会〕
出版物公取協の臨時総会で、トレーディングスタンプ等を容認する「公正競争規約・施行規則」の変更案を賛成多数で採択したことを報告。この総会では近畿ブロック会の各理事長連名で「この度の変更が値引き行為に拡大解釈されることのないよう理解を求める」という意見書を提出したと報告があった。
(中島俊彦広報委員)

寄席を企画し好評/山形県鶴岡支部

山形県書店商業組合鶴岡支部は、2月19日に落語家・柳家小太郎独演会を開催した。
山形県で三軒、鶴岡市で唯一の銭湯「鶴の湯」で、周辺の商店街振興組合にも呼びかけて開催したもの。3月に真打に昇進する小太郎さんも銭湯での落語は初めて。脱衣場が急遽寄席となり、50余人が1時間の独演会を楽しんだ。
銭湯は限られた人数しか入らないことから、終了後会場を「こぴあ」に移動。小太郎さんの臨場感あふれる身振り手振りと、会場に響き渡るテンポのよい名調子に約70人の参加者は大いに笑った。参加者からは「寄席は初めて。なかなかいいもんだのー」と次回の企画が期待された。
この企画は、三川町での「全国方言大会」と藤沢周平を偲ぶ会「寒梅忌」での出会いが生んだ人と人とのつながりによるものである。(佐藤一雄広報委員)

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・小森紀子

◇2歳から/『くっついた』/三浦太郎=作/こぐま社840円/2005・8
きんぎょさんときんぎょさんが…、ページをめくると「くっついた!」次はぞうさんとぞうさんが…。「くっついた!」という魔法の言葉はとてもあたたかで、気持ちがやさしくなります。子どもたちもおもわずお隣の友だちと「くっついた!」笑顔が広がる絵本です。
◇4歳から/『トトトのトナカイさん』/長谷川義史=作/ブロンズ新社1260円/2006・2
冬の「あの日」以外、とても退屈なトナカイさん。しかたがないのでしりとりをはじめることにしました。最初は「トナカイのイ」から。次は「イ・イ・イイノシシ!」とイノシシさんが走って登場!しりとりに出てくる動物たちがページいっぱいに描かれていきます。
◇小学校低学年向き/『さとうねずみのケーキ』/G・ジオン=文/M・B・グレアム=絵/わたなべしげお=訳/アリス館1470円/2006・1
見習いコックのトムは皿洗いばかりさせられて、ほかの料理人たちにばかにされていました。そんなトムの唯一の友だちは白ねずみのティム。ある日、お城で新しい料理長を決めるケーキコンテストが開かれることになり…。トムとティムのかけがえのない友情のお話しです。

編集部より

「声」欄への投稿を歓迎します。原則として6百字以内で、氏名・店名・住所・電話番号を明記の上、全国書店新聞編集部まで。主旨を変えずに文章に手を加えることがあります。紙上匿名はできますが、筆者の分からない原稿は掲載しかねます。FAX、Eメール投稿も可。
〒101―0062東京都千代田区神田駿河台1―2全国書店新聞編集部
FAX=03―3295―7180
Eメール=XLD07116@nifty.ne.jp

地元書店、学校図書館電算化に大きな役割/日書連・志賀情報化委員長が山形視察

「図書館納入は地元書店に!」――山形県書店商業組合は日書連MARCを利用した図書館管理システムの普及を推進し、学校図書館電算化に全県あげて取り組んでいる。導入実績は11校で、今春4校が新たに導入予定と着実に成果をあげている。日書連情報化推進委員会の志賀健一委員長は山形県を訪問。2月2日に地元書店が納入する学校図書館を視察した。また、1日、山形組合の五十嵐靖彦専務理事と懇談、同県の学校図書館電算化の現状と課題などについて話し合った。
志賀委員長は2日、五十嵐専務理事の案内で南陽市立赤湯小学校を視察した。
午前10時半、中間休みのチャイムが鳴ると、図書室は本を借りに来る児童、返しに来る児童、それに図書室の一角にある畳コーナーで遊ぶ児童で賑わった。実際、中間休みの時間中、50人を超える児童が図書室を訪れ、貸し出しカウンターには断続的に列が出来た。カウンターに立つ図書委員は高学年の女子。コンピューター、バーコードリーダーをスピーディーに操り、貸し出し・返却作業をこなしていく様は見事だった。図書主任をつとめる熊谷啓先生はそんな子供たちを温かい眼差しで見守る。
同図書室の蔵書数は8700冊。別に絵本を中心とした低学年向け図書室があり、こちらは1000冊。同校は図書予算のほかに地域社会からの寄付も多く、熊谷先生は「1万1千5百冊を目標に蔵書を増やしたい」という。
日書連MARC対応の学校図書館管理ソフト「情報BOX」を導入したのは03年11月。導入前に比べ貸し出し冊数は倍近くに増え、現在は月間6千冊になった。「毎日図書室に来る子もいますし、年間50冊ぐらい借りる子も珍しくない。120冊という子もいる」と熊谷先生。子供の読書離れが言われて久しいが、ここ赤湯小学校では無縁の話。同校では年に3回、読書週間を設定しており、期間中は2冊まで借りることができ、貸出冊数が飛躍的に増えるという。
管理ソフトを導入したメリットについて、熊谷先生は「貸し出しも返却もコンピューターで確実かつ迅速に管理できます。児童やクラスの読書傾向を月ごと、ジャンルごとに把握できる点も便利です」と話す。導入時のラベル貼り、登録作業は納入書店の山教販が行なった。その後の山教販、県書店組合のサポートにも「とても満足している」という。
また、教務主任の濱田芳郎先生は「教室からでもインターネットに接続できる。パソコン室に43台、各教室に1台パソコンがある。そういう意味で当校は恵まれていると思います」と、同校のIT化・電算化が順調に進捗している現状を説明した。
読書推進にも熱心に取り組んでいる。月2回、朝自習の時間帯に父兄ボランティアが読み聞かせを行なっている。「今は1年生4クラスだけですが、低学年で実績を作りながら高学年でも実施したいというのが校長先生の考え。図書委員の子供たちも年数回、図書室で読み聞かせを行なっており、みんなとても楽しみにしている」と熊谷先生。濱田先生は「公民館の図書室で毎週土曜日、ラジオのパーソナリティなどがお話し会を開いている。南陽市には読書推進に熱心な土壌がある」と付け加えた。
志賀委員長は日書連MARCが学校図書館の貸し出し増加に役立っていることなど全国の状況について話し、先生、父兄、児童、地域社会、書店が一体となって学校図書館充実に取り組んでいる赤湯小学校の事例を高く評価した。
情報センターとしての図書館実現へ、山形組合は積極的な取り組みを続けている。日書連が提供する図書館管理システム「情報BOX」の普及、「本屋ツール」による図書装備、「日書連MARC」による納入書籍の書誌データの提供など、学校図書館のシステム化を全県あげて推進。日書連MARC研修会開催、県組合ホームページでの啓蒙活動などで土台を作り、攻勢を強めているところだ。
志賀委員長は1日、山形市の八文字屋本部に県組合専務理事の五十嵐靖彦氏を訪ねて懇談するとともに、八文字屋外商部担当者の声を聞いた。「早く、美しく装備しなければ受注は難しいのが現状」と五十嵐専務理事。日書連図書館システム普及に強い意欲を持つ。
文部科学省の整備計画で、公立小中高校で校内LAN整備が終わることにより、すべての教室がインターネット接続できるようになる。平成17年度はその最終年度。「山形県も校内LAN整備はほぼ終わっているが、図書室にパソコンが入っているのは十分の一程度。高校はほとんど入っているが、小中学校にはあまり入っていない」(五十嵐専務理事)という。志賀委員長と五十嵐専務理事は「小中学校にシステムを普及する絶好のチャンス。先生方対象の研修会を積み重ねることなどで協力体制を構築、普及に弾みをつけたい」との見解で一致した。
本屋ツールに日書連MARCを同梱したのが司書ツール。学校図書館向けのMARC付ツールソフトだ。司書ツールについて、県内小中高校に納入している八文字屋外商部の担当者は「売上に結びついている」「これがなければ受注できない」と口を揃える。
「司書ツールがなければ受注できない。学校からは『納入が早く非常に助かる』と言っていただいている」(小・中・聾学校担当)、「早くきれいな装備という学校側のニーズに応えることができる。反応は上々で、台帳のフォーマットをそれまで使っていたものに合わせられることが喜ばれている。司書ツールがないと商売にならない。これからは司書の手間を省いてくれる業者に注文が流れるのでは」(中学担当)、「高校は事務簡素化のため、中学は学校司書がPTAから派遣で毎月3時間しか時間が取れず受入装備が必要なため利用している。評判もいい」(中学・高校担当)もはや司書ツールは営業に不可欠な存在というのが彼らの共通認識だ。

まぐまぐ!プレミアムで電子本販売/イーブックジャパン

メールマガジン配信サービスのまぐまぐとイーブックイニシアティブジャパンは、まぐまぐが運営するインターネットコンテンツのダウンロード販売サイト「まぐまぐ!プレミアム」での電子書籍販売に関して業務提携を結び、2月9日から一般向けサービスを開始した。
同サイトは有料メールマガジンと電子書籍を販売するサイトで、会員数は約9万人。取り扱いジャンルはマンガ、少女コミック、総合書籍、写真集、雑誌などイーブックジャパンが扱っているすべてのジャンル。販売価格は1記事・1話42円~、1冊210円~(税込)。決済方法は各種クレジット、イーバンク。
今回、電子書籍販売トップのイーブックジャパンの電子書籍販売の取扱いを開始したことで、より購入しやすい流通ルートを確立。今後は月2回以上の情報更新に加え、バナー広告やメルマガ等での情報告知や作品紹介など各種プロモーション活動を予定している。

プラスゲオ直営1号店が東京・成増にオープン

トーハンとゲオの共同出資会社、ティー・アンド・ジーは2月18日、AVレンタルおよびTVゲームリサイクルの書店向け新ブランド「プラスゲオ」直営1号店となる成増店(東京・板橋)をオープンした。
東京メトロ有楽町線地下鉄成増駅前で文教堂書店成増店に隣接出店している「チャートランド成増店」に「プラスゲオ」ブランドを導入してリニューアルオーブンしたもの。総店舗面積は125坪。売場構成はAVセル15坪、ゲーム25坪、AVレンタル70坪。
近々、複合書店のFC1号店オープンも決定している。ティー・アンド・ジーでは年内に直営1、2店とFC100店程度をオープンする予定。今後3年間で300店の出店を目標としている。
「プラスゲオ」のコンセプトは「幅広い世代への豊かな生活スタイルと居心地よい空間の提供」。本を核とする新業態複合書店として直営店およびFC店を展開。商材はTVゲームを核として新品とリサイクルのTVゲーム、リサイクルCD・DVD、AVレンタルを組み合わせ、小規模ゲーム専業タイプ45坪から大型店フルラインの500坪まで数タイプの新業態店舗を提案している。

ふるさとネットワーク/四国ブロック編

〔香川〕
第134回芥川賞は絲山秋子さんの「沖で待つ」、同・直木賞は東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」に決まり、2月17日に東京・丸の内の東京會館で贈呈式が行われた。両賞を創設したのは作家の菊池寛である。
菊池寛は1888年、香川郡(現・高松市)に生まれた。通俗小説、新聞小説、戯曲で数々の名作を残すとともに、経営手腕、職能団体創設、後進育成の方面でも大きな力を発揮した文壇の実力者だ。
彼が文壇に残した業績を時系列で紹介すると、21年に33歳で小説家協会を設立したのを皮切りに、23年に文藝春秋社を創設し、雑誌「文藝春秋」を創刊。26年、文芸家協会を組織。28年、文藝春秋の取締役社長に就任。30年、文化学院文学部長に就任。そして35年、芥川賞、直木賞を設立…等々、枚挙に暇がない。37年には東京市会議員に当選と、政界にも進出している。
高松市には「菊池寛通り」があり、その道路近くの中央公園には銅像が建っている。
〔徳島〕
県南部の清流、海部川の支流にホタルと大うなぎの生息地として知られる母川がある。川幅は広くないが水は清らかで、草木がいっぱいに茂る自然のままの水辺は風情がある。残したい日本の原風景だ。6月にはホタルを観賞する高瀬舟が浮かぶ。街灯がないためホタルの小さな光が川面や水辺を照らすと、墨絵を見ているような感覚。その近くの川岸に、大うなぎ伝説が残る巨大な「せり割り岩」がある。昔、岩の割れ目に親うなぎが隠れ住んでいたが、体が大きくなり過ぎて出られなくなった。子うなぎがせっせと食べ物を運んでいると、さらに大きくなって岩が真っ二つに割れてしまった。体長が2メートル近い大うなぎの大きさを物語る言い伝えだろう。大うなぎを専門的に展示する日本で唯一の大うなぎ水族館「イーランド」が赤字のため、昨年閉館した。母川にはまだ少なからず生息しているといわれる。(林健二広報委員)
〔愛媛〕
愛媛県の空の玄関口、松山空港へ到着すると、空港ビル正面に3本の陶器製のモニュメントが目に入ります。これが今回ご紹介する砥部焼きです。砥部焼きは220年の歴史をもち、特徴は白磁に藍色で様々な模様が描かれ、少しぼってりとした重さを感じるもの。生活磁器として古くから愛用されています。
砥部町へは市内から車で30分程。周囲はミカン山や田畑の広がる自然豊かな町で、ここに約120軒の窯元があります。商店街では、あちこちに陶器を使用したアートを見かけます。見学には砥部焼き伝統産業会館と陶芸館を訪ねると効率が良いです。ここに全窯元の作品が展示され、また砥部焼きの歴史や代表作品にも出会えます。そして時間が許せば、陶板の道を散策します。作品が歩道や道の壁に多数使用されていて、瀬戸内の風景と砥部焼きが同時に楽しめます。梅の咲く今頃が絶好の季節です。(光永和史広報委員)
〔高知〕
陸路は徳島県、海路はフェリーで大阪と結ぶ、土佐最東端の町、東洋町。全国屈指のサーフスポットとして若者たちで賑わう生見海岸、野根川の清流、緑豊かな野根山街道など、四季を通して自然の、美しさを堪能することができる。温かな潮風が育むポンカン、豊かな黒潮がもたらす豊富な魚介類など、山海の幸も豊富だ。県東部は日本有数のゆずの産地であるため、ゆず酢を利用した料理も多い。古くから伝わる「こけらずし」もその1つ。地元の素材を活かした押し寿司で、祝いの席で出されることが多い。サバを3枚におろして焼き、ゆず酢に浸す。30分ほど置いてダシが出たところで、焼きサバ入りのゆず酢を炊き上がったご飯にかけて混ぜ合わせる。寿司桶に酢飯を入れ、その上にニンジン、シイタケ、薄焼き卵などの具を重ねていく。最後に重石を2、3時間乗せて完成。ゆずの香りとサバ酢飯の風味は絶妙だ。

移転

◇ブックサービス
左記の住所に移転し2月28日から営業を開始した。
〒123―0865東京都足立区新田1―9―1ヤマト運輸王子ビル
℡03―5959―5061㈹FAX03―5959―5540

売上げ1545億円/純利益52億円、増益に転換/講談社

講談社は2月20日に記者会見を開き、第67期(平成16年12月1日~17年11月30日)の決算概要を発表。今期は売上高1545億7200万円、前年比3・3%減少したと報告した。販売の内訳は雑誌996億8500万円(5・0%減)、書籍286億5800万円(1・1%減)、広告収入202億4600万円(6・3%減)、その他59億8200万円(39・9%増)。
同社は前期、初の税引前損失を出したが、今期は税引前当期純利益77億500万円、当期純利益52億1500万円を計上した。
役員人事では新しく柳田和哉、山根隆、栗原良幸、皆川槇二の4氏が取締役に就任。小池武久、関根正之、山野勝、保月滋、伊原道紀の5取締役と稲垣文美常任監査役が退任し、顧問に委嘱された。
局長級人事では鈴木伸育雑誌販売部長が雑誌販売局長に昇格した。2月1日現在の従業員数は1009名(男705名、女304名)。
〈講談社役員〉
代表取締役社長
野間佐和子
代表取締役副社長(社業全般)野間省伸
常務取締役(コミック部門担当)〔第三編集局・第五編集局・第七編集局・ライツ事業局〕五十嵐隆夫
同〔業務局・経理局〕
横山至孝
取締役(書籍部門担当)〔広報室・編集総務局・校閲局・生活文化局〕
中沢義彦
同(雑誌部門担当)〔営業企画室・広告局〕
大塚徹哉
同〔学芸局・児童局・総合編纂局〕柳田和哉
同〔書籍販売局・流通業務局・システム開発室〕岩崎光夫
同〔販売促進局・雑誌販売局・コミック販売局〕
森武文
同〔社長室・社史編纂室・総務局〕山根隆
同〔第一編集局・文芸局〕鈴木哲
同〔第六編集局・ディズニー出版事業局・デジタル事業局〕栗原良幸
同〔第二編集局・第四編集局〕持田克己
取締役相談役(渉外・関連会社担当)浜田博信
取締役(非常勤)
皆川槇二
常任監査役関根邦彦
監査役高井伸夫
同足立直樹

参考図書

☆『書店の泣き所と対策』
ノセ事務所の能勢仁氏が書店の悩みと問題点をピックアップしてその対応策を記した『書店の泣き所と対策』が、明日香出版社から刊行された。
同書は「明日香かわら版」で2004年11月から1年間連載したものを再編集し、明日香出版社35周年記念出版の一環として刊行したもの。書店の12の泣き所について工夫や打開策を示し、特に店長・幹部にお薦めの1冊。希望書店に無料で送付しており、申込みは、店名・担当者名・住所・電話番号・部数を明記して明日香出版社のフリーFAX=0120―00―3802まで。

『GRACE』を今秋創刊/40代女性ターゲットに/世界文化社

世界文化社は2月20日、今秋創刊するラグジュアリー世代のためのハイクオリティ女性誌『GRACE』の記者説明会を行った。
説明会では大塚専務が新雑誌創刊の意図について「『家庭画報』の読者コアは50代。『MISS』が20~30代。『GRACE』は新40代を読者に、女性誌のラインができあがる。広告の引き合いも順調で、2月14日に創刊準備号2万6千部をデパートのカード会員、外資系ホテル、ハイエンドな企業と提携して配布。アンケートとモニター調査で創刊号に生かすマーケティングを行っている」と説明。
『ヴァンサンカン』『ヴォーグ日本版』の編集長を経て世界文化社に入社、昨年8月まで『MISS』の編集長だった十河ひろ美編集長は「ターゲットになるのはバブル期に20代を送り、ブランドとおしゃれに磨きをかけてきた新40代のニューリッチな女性。10年前より10歳は若く見える。イメージカラーはパープル。創刊準備号はレストランのオーナーソムリエールで楽天の社長夫人、三木谷晴子さんを取り上げた。今後も協力をお願いしている。マーケットを動かす雑誌に育てたい」と、意気込みを述べた。

第14回台北図書展に43万人が来場

第14回台北国際図書展示会が、2月7日から12日までの6日間、台湾・台北市の台北世界貿易センターで、行政院新聞局の主催により開催された。
主催者発表によると、参加は41ヵ国・地域、出展社数は台湾385社・海外5百社の計885社、出展ブース数は1910ブースだった。入場者は昨年の32万人を大幅に上回る43万人。
トーハンが主宰する日本事務局によると、日本からの出展は日本事務局経由で18ブース58社、独自出展が5ブース3社の合計23ブース61社となり、海外出展としては最大規模となった。日本ブースでは著作権取引の商談が活発に行われたほか、昨年に続き和書販売コーナーが設けられ、日本のベストセラー作品や雑誌を求める読者がつめかけた。
なお、優れた装丁者を表彰する「金蝶賞アジア新人デザイナー賞」が会期中に実施され、日本のデザイナーが金賞を受賞した。同賞の選考に際しては、日本事務局が窓口となり、書協の協力を得て、出版社、デザイン会社等から候補者を募った。

売上高557億円の減収増益/日経BP

日経BP社の平成17年売上高(平成17年1月1日~12月31日)は557億8700万円、前年比0・4%減となったが、経常利益は27億円、前年比5・6%増で減収増益の決算になったことが発表された。
売上げ内訳は広告収入274億2300万円(0・5%減)、販売収入253億9500万円(1・4%増)、事業その他29億7000万円(12・4%減)。
損益計算では営業利益が25億3400万円(3・4%増)、経常利益27億1700万円(5・6%増)、税引前利益68億200万円(200・1%増)。来期は売上げ1・1%増の551億円を目指す。

本屋のうちそと

二月のある一日。まず店舗前に置いた傘立てに犬のリードをつないで入ってきた三十代の女性が二十分ほど立ち読みをしていると、その犬が傘立てを引きずりながら駐車場を走り回る姿を目にしました。女性とともに駆け寄り事故には至りませんでしたがもう二メートルで車道という怖い思いをしました。「いつもここにつないでいても大丈夫だったのに…」と言うけれど犬の気持ちを察したら散歩したかったはずですね。
次は車いすで来店の七十代の男性。片手が不自由でもう一方の片手に杖を持っててそれを支点に常にバックでしか進めないのです。平台に何度もぶつかりキャスター付きの販売台を押しのけては方向転換し、うろうろ三十分の立ち読み(座り読み?)。近所の囲碁クラブの開店時刻に合わせて出ていきました。外は寒いし本屋なら買い物しなくても時間をつぶせると思ってのことでしょう。でもバックミラーを装備するくらいのことはしないと自動車ならぶつかったら事故になるはずですよ。
そして夕方、中年の女性が「エイカイワチュウキュウ」と大声で唱えながらやって来ました。雑誌を買った後はお釣りを財布に入れながら「ワッハッハ」を連発しながら店を後にしました。その間三分弱、店内のBGMをさえぎる奇声の主にお客様の視線が集中したのは言うまでもありません。
閉店間際の店内、コミックを注文してほしいと若い女の子。高校卒業後上京したはずなので私「帰ってきたの?」女の子「エッおばさん、私のこと覚えてるの?五年もいなかったんだよ」私「おばさん、ボケるにはもうちょっと時間がかかりそうなんだけど…」元気な女の子とおしゃべりしてやっと疲れが取れた一日でした。(あかり)