全国書店新聞
             

令和5年11月15日号

日書連10月理事会/24年度の理事会等日程を決定/通常総会は6月20日に開催

日書連は10月19日、東京・千代田区の書店会館で定例理事会を開催し、会場6名、ウェブ14名、書面32名、計52名が出席。2024年度理事会日程案を承認し、定例理事会・委員会および通常総会、出版販売年末懇親会の日程を決めた。
[政策委員会]
2024年度の理事会日程案を承認した。理事会・委員会は従来通り年6回(24年5月・6月・9月・10月・12月、25年2月)開催。通常総会は6月20日、出版販売年末懇親会は12月18日に開催。
[組織委員会]
安永寛委員長は、全国45都道府県組合の9月の加入・脱退状況は加入なし・脱退13店で、13店の純減だったと報告した。
[指導教育委員会]
森松正一委員長は、今年度内に開催を予定している講演会の講師を選定中と報告した。
[広報委員会]
▽全国書店新聞の2024年1月~12月の刊行スケジュールを決めた。例年通り毎月2回(1日・15日)、年24回刊行する。6月15日号は通常総会議案書特集号とする。
▽全国書店新聞の2023年1月1日号~12月15日号まで24号分の紙面を1冊に綴じた「全国書店新聞合本」を来年2月に発行する。制作部数は20部。
▽深田健治委員長は、機関紙として各組合の総会記事は必ず掲載するとともに、各組合や地域書店が取り組むイベントなどローカルな記事についてもより充実させていきたいとの方針を示した。
[流通改善委員会]
藤原直委員長は、日本出版インフラセンター(JPO)雑誌コード管理委員会が2026年発行の雑誌から「定期刊行物コード(雑誌)」(雑誌JANコード)の運用方法を見直す決定をしたことを報告した。
今回の見直しでは、雑誌JANコードの4桁目に設定されている「予備コード」を活用。26年に発行される刊行物の場合、予備コードに西暦年下2桁目の「2」を設定し、12桁目(年号コード)に設定している西暦年下1桁の「6」と併せて、26年の下2桁を区別できるようにする。
現行の雑誌JANコードでは、発行年を数字1桁で区別しているが、この方法では10年に一度、コードが重複する問題が起きている。近年、ネット通販で商品が長期間にわたって販売されるようになり、商品情報の重複や商品の誤認が多く発生していること、19年から国際的な商品識別コードGTINの再利用が停止されたことから、同委員会でも対応方法を検討してきた。具体的な施行日は関係団体と協議で決定する。
[取引改善委員会]
柴﨑繁委員長は、雑誌付録問題について対策を話し合っていると報告した。
[読書推進委員会]
春井宏之委員長は、全国の各組合が独自に企画・運営する活動の補助申請を募る「令和5年度読書推進活動補助費」について説明した。1組合当たり支給上限は20万円。申請締切は11月30日。
[書店再生委員会]
平井久朗委員長は、出版文化産業振興財団が10月13日に補助金セミナーを開催したことを報告。今後、書店にメリットのある補助金の紹介に力を入れていくと述べた。
[図書館委員会]
書店、出版社、図書館の関係者らが共存・共栄の道を話し合う「書店・図書館等関係者における対話の場」の第1回会合が、10月3日に開催された。
対話の場に参加した高島瑞雄委員長は、書店の立場から①図書館の評価基準が利用者数と貸出冊数に偏重している②複本購入の中小書店への影響はそれほど大きくない③装備費を書店が負担していることは問題――などの意見を述べたと報告した。

書店文化を未来へつなげる/東京組合の新プロジェクト「明日にも、本屋さんを」始動

東京都書店商業組合は、東京の本屋が一丸となって書店文化を未来へつなげる「明日にも、本屋さんを」プロジェクトを10月27日から始動した。
同プロジェクトでは、新しい本屋の楽しみ方を提供することを目指し、TVアニメ「七つの大罪黙示録の四騎士」とコラボした本屋巡りLINE謎解きゲームを開催する。実施期間は、第1弾「本の迷宮からの脱出編」が10月27日~24年2月12日、第2弾「謎の聖騎士との対決編」が12月1日~24年2月12日。実施書店は都内180店舗。謎解きゲームをクリアした人には今回だけのNFTデジタルアイテムを進呈。
また、プロジェクトに賛同する著名人と「わたし、本を、本屋で買う。」を合言葉にYouTube動画や組合オリジナル小冊子を製作した。
小冊子は実施書店で商品を購入した人に1冊進呈する。「本好き」で知られる声優の梶裕貴さん、鬼頭明里さん、タレントの福尾誠さん、井上咲良さん、女優の本仮屋ユイカさんによるコラムなどを掲載する。実施書店では10月27日から井上さん、梶さんを起用したポスターを掲示中。12月1日からは本仮屋さんのポスターを掲示する。
東京組合プロジェクト特別委員会の田中秀治委員長(大和書店)は「本との予期せぬ出会いができる本屋の減少は、知的好奇心への刺激を減らすのみならず、これまで多種多様な本の出版が行われてきた日本の文化を失うことにつながると危惧している。今回のプロジェクトで街の本屋に足を運ぼうという人が一人でも増えてもらえることを願っている」と話している。
特設ページ=https://tokyo-shoten.or.jp/ashita/

髙須博久氏、平柿宗敏氏らに黄綬褒章/秋の叙勲

秋の叙勲で全国教科書供給協会から次の4氏が黄綬褒章を受章した。
 ・加藤登志雄(愛知県 日新堂書店 代表取締役社長)
 ・髙須博久(愛知県 豊川堂 代表取締役会長)
 ・平柿宗敏(滋賀県 平柿文仙堂 代表取締役)
 ・水野善博(岐阜県 水野書店 代表者)

取協・雑協/2024年度「年間発売日カレンダー」/完全土曜休配「年12日増」/京都など1府3県、発売日1日遅く

日本出版取次協会と日本雑誌協会は11月2日、2024年度「年間発売日カレンダー」を発表した。
22年度に実現した「週5日以内稼働」を継続することを柱に、日書連とも意見交換を行った結果、年度初めの売上面を考慮し、繁忙期に当たる4月の第1週土曜日を稼働日とした。また、輸送会社の出荷作業を伴わない「完全土曜休配」は23年度より12日増の年37日。設定した休配日はすべて完全休配日となる。年間稼働日は253日間。
また、働き方改革関連法「時間外労働の上限規制」の施行に伴い、商品搬入日、発売日を含む輸送スケジュールを24年4月1日から変更することも発表した。
京都府(共配エリア)、兵庫県(共配エリア)、和歌山県、愛媛県では、雑誌の発売日が1日遅くなり、書籍は現行より配送まで1日多く要する。秋田県、岩手県では、雑誌は現行通りだが、書籍は現行より配送まで1日多く要する。

兵庫総会/森忠延理事長を再任/書店議連への協力を推進

兵庫県書店商業組合は10月25日、神戸市中央区の神戸市立婦人会館で第35回通常総会を開催した。役員改選で森忠延理事長(井戸書店)を再任した。
安井唯善副理事長(安井書店)が開会を宣言し、森理事長があいさつ。「物価の高騰など書店を取り巻く環境は非常に厳しいが、お客様との信頼関係をしっかり築き、打開策を考えて取り組んでいきたい」と訴えた。また、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)が動き出したことに触れ、「後押ししてもらえるよう協力していきたい」と述べた。
続いて山根金造相談役(巌松堂書店)を議長に議案審議を行い、事業報告、支部報告、収支決算報告などすべての議案を原案通り可決承認した。
任期満了に伴う役員改選では理事をはじめとする役員を選任し、その後に開いた初理事会で森理事長を再任した。
総会終了後は北海道ゼネラルフーズの販売勉強会を実施。懇親会では書店と出版社、取次が熱心に意見交換を行った。
(大橋崇博広報委員)

公共図書館への納入・装備を支援/千葉組合総会

千葉県書店商業組合は9月18日、千葉市中央区の千葉県書店会館で第40期通常総会を開催した。新型コロナウイルスの感染防止の観点から、今年も書面議決による参加を呼びかけ、本人出席は最少人数で行った。
鈴木喜重理事長(ときわ書房)を議長に議案審議を行い、第40期事業報告、収支決算書、監査報告、第41期事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業報告では、共同販売事業として「県立中央図書館、西部図書館、東部図書館への図書納入」を行ったことを報告。前期は東部図書館のみの落札だったが、今期は3館すべて落札した。
事業計画では、①官公庁、業務用資材の共同販売事業、②書店会館の貸付利用事業、③学校図書館図書整備等5か年計画に関わる取り組み(公共図書館納入・装備の支援)、④組合活性化事業の促進――などに取り組むことを決めた。

富山総会/読書推進活動に注力/小中高生対象の読書コンクールを実施

富山県書店商業組合は8月29日、富山市の富山電気ビルディングで第37回通常総会を開催し、組合員26名(委任状含む)が出席した。
はじめに丸田茂理事長(清明堂書店)が開会あいさつ。続いて丸田理事長を議長に選任して議案審議をを行い、第36期事業報告および収支決算報告、第37期事業計画案、収支予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業計画では、①読書推進活動として小中高生に対しての読書コンクールなどの企画、②サン・ジョルディの日推進企画として、オリジナル図書カードの作成、販売(開始時期を1ヵ月早めて新学期プレゼント用に対応)――を行うことを決めた。
(澁谷英史広報委員)

スタンプラリー企画、公立図書館とコラボで/奈良組合理事会

奈良県書店商業組合は10月2日、大和郡山市のディーズブックで令和5年度第2回の理事会を開催した。
冒頭、林田芳幸理事長は「本に敬意を持ち、本の素晴らしさを届け続けられるように工夫を凝らしていこう」と呼びかけた。
主な議題では例年同様、読書推進企画としてスタンプラリーキャンペーンを公立図書館とコラボレーションして実施する方針を確認した。読者が書店と図書館のスタンプを4つ集めると、抽選で図書カードなどが当たるというもの。公立図書館と一緒に行うのは今年で4回目となる。実施期間は12月1日から24年1月14日まで。
役員人事では副理事長に川岸泰子氏(ベニヤ書店)を新たに選出した。
次回理事会は2024年2月1日の開催を予定している。(靏井忠義広報委員)

連載「春夏秋冬本屋です」~オカルトブーム~/沖縄・大城書店・代表取締役社長・大城洋太朗

様々なブームが錯綜する昨今、個人的に嬉しいブームはオカルトブームです。かく言う私もノストラダムスやマヤ歴に踊らされテレビや雑誌の恐怖特集を楽しみにしていたオカルトっ子です。様々な怪談や都市伝説の新刊が届く度、それらが陳列される平台にワクワクが止まりません。
閉店後に陳列を行う事はよくありますが、閉店後の真っ暗な店舗に入ると黒い人影がこちらに向かって来たときは声を上げました。その影は作業を終えたアルバイトの男性でしたが、あの時はオバケかよと理不尽に怒ってしまい申し訳ございませんでした。
沖縄には「御願(うぐぁん)」や「ユタ」などオカルティックな要素が日常生活と同居しており、それらに関する本は沖縄の出版社で多く出版され、ベストセラーとなっております。また、「耳切坊主」「逆立ち幽霊」「七つ墓」など沖縄の昔話の怪談を再調査しリバイバルさせた本なども出版されております。タイトルも怖いし表紙のデザインも怖いし、夜中に陳列するこちらの身にもなって欲しいものです。
日常を超えた部分に恐怖を感じ楽しむ事が出来ているのは、日常を恐怖せず過ごせているからだと思います。その事に感謝しオカルトブームを楽しもうと思います。

書店と図書館「共存」へ対話/複本問題など意見交換/日書連から髙島図書館委員長が出席

書店、出版社、著者や図書館の関係者らが、文部科学省や日本図書館協会の担当者らとともに、共存・共栄の道を話し合う「対話の場」の第1回会合が10月3日、ウェブで行われた。「書店・図書館等をめぐる現状と課題、今後の連携のあり方」をテーマに、複本問題などについて意見交換した。
対話の場は、「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」(書店議連)が今春出した提言を受け、設けられたもの。文化拠点としての書店等の振興、子供の読書活動、文化活動の推進等につながる取り組みを支援するとともに、著者、出版社、書店と図書館との共存・共栄による新たな価値創造の推進を図ることが目的。
出版文化産業振興財団(JPIC)の松木修一専務理事は、書籍・雑誌販売額や書店ゼロ自治体など、書店を巡る厳しい現状を報告。「図書館の貸出のせいだと言いたいわけではないが、一つの影響はあるのではないか。書店のない地域、書店が今後厳しくなる地域を文化のためにいかに守るか、自治体や図書館と一緒にやっていくことを考える時期にきている」と提起し、「このまま放置すれば、書店だけでなく出版社や取次も立ち行かなくなり、著者の執筆にも影響する。図書館の運営や図書館の利用者にも大きな影響を及ぼす。今こそ両者が連携し、出版文化を守る時ではないか」と訴えた。
今後の連携のあり方については、「図書館と出版界の間に長年横たわる複本問題を乗り越えないと、次の協力のステージに進めない」として、まず複本に対する一定の相互理解を醸成すべきとの考えを示した。
日本図書館協会の岡部幸祐専務理事は、図書館の現状と課題を報告。複本について「ある程度制限することが必要かもしれないが、利用者のニーズというものも考えてしまう」という図書館員の声を紹介した。また、選書の際の課題として、「資料費の削減」「予約数で購入する図書が左右される」「利用者のリクエストに応えると長期的に読まれる図書が選ばれにくい」などの回答があったと報告した。
この後、出席者が自己紹介し、意見を述べた。
日書連図書館委員会の髙島瑞雄委員長(高島書房)は、複本について「大場博幸教授の論文を読むと、中小書店は複本の影響をそれほど受けない。むしろ出版社や著者にボディブローのように効いてくるのではないか」と述べた。図書館の現状については「図書館の評価基準が利用者数と貸出冊数に偏重し、図書館職員は選書で厳しい立場に置かれているようだ」と懸念し、このような状況を変えて未来の読者のために良書を残すべきと訴えた。また、装備費を書店が負担していることについて問題点を指摘した。
久美堂の井之上健浩社長は、同社が2022年から町田市立鶴川駅前図書館の指定管理者を務めていることを説明し、「書店経営と図書館運営で本を扱っている。この対話の場を通じて書店と図書館の双方にとってプラスになることを提案していきたい」と話した。
第2回会合は10月30日。
[構成員]
▽淺野隆夫(札幌市役所・札幌市中央図書館)▽井之上健浩(久美堂)▽今村翔吾(日本文藝家協会会員・作家)▽植村八潮(日本図書館協会・専修大学)▽大場博幸(日本大学)▽岡部幸祐(日本図書館協会)▽私市憲敬(新潮社)▽曽木聡子(日本図書館協会)▽髙井和紀(全国都道府県教育長協議会・青森県立図書館)▽髙島瑞雄(高島書房)▽成瀬雅人(原書房)▽春山正実(全国市町村教育委員会連合会)▽松木修一(出版文化産業振興財団)▽吉本馨(全国公共図書館協議会・大阪府立中央図書館)

広島・盈進学園の取り組みに学ぶ/読書科、中学のカリキュラムに/兵庫県書店商業組合理事長・森忠延

兵庫県書店商業組合では中高生への読書推進活動「どっぷりつかるなら読書がいいね!2023」の一環として、「読書にどっぷりつかって~学生さんの報告」と題し、広島県福山市の盈神学園中学部で行われている、読書を通じて理解力・読解力の土台をつくり、伝える力を高める「読書科」、そして、「読書科」の実践から生まれた「本とつながる」というテーマで活動されている、文化部の「読書部」の報告をZoomで行いました。参加者は26名。
盈神学園中学部読書科担当の上山朋子教諭によると、読書科は32年間続けられて、2016年に改革を行い、「本と出会い、人を知る」というテーマで中学3年間に30冊の本を読んでいます。同じ本を読む集団読書により、他者の違う意見を共有することで他者を知り、尊重することを目指し、3年生では探究活動として修了論文を作り上げています。
また、読書部は「本から始まる出合い、人生に本のある喜びを」を主題にして、活動報告を部員5名で紹介してくれました。図書館にたくさんの人を呼び、メッセージを送りたいという思いは書店も同じであり、書店も本の紹介をしてほしい、SNSで発信をという思いを発表してくれました。「本にはいろんな可能性があり、一冊の本、一つの文章が人生を変える」という延和聰校長の言葉もありました。
中学校入学から読書離れが起こるとされていますが、書店議連の提言にもカリキュラムとして読書科を盛り込んでもらいたいと強く思いました。

読売、出版業界招き懇親会/山口社長「活字文化の発展に取り組む」

出版社や書店、取次、広告会社など出版関連業界の会社幹部ら約400人を招いた「読売出版懇親会」が10月16日、東京都千代田区のパレスホテル東京で開かれた。活字文化議員連盟会長の上川陽子外相や同事務局長の笠浩史衆院議員、子どもの未来を考える議員連盟会長の中曽根弘文・元外相らも出席し、和やかに歓談した。
文字・活字文化推進機構理事長を務める読売新聞グループ本社の山口寿一社長はあいさつで、出版界が一丸となって昨年から始まった「秋の読書推進月間」に触れ、「皆様が力を合わせて実現した大変意義のある活動で、読売も社を挙げて盛り上げる手伝いをしたい。アイデアを出し合いながら活字文化の発展に取り組んでいく」と訴えた。
来賓を代表してあいさつに立った日本書籍出版協会の小野寺優理事長(河出書房新社社長)は、インターネット上に真偽ない交ぜの情報があふれる現状を踏まえ、「私たちは責任あるコンテンツを発信し、時には制作規程もアピールして社会への信頼性、価値を高めていかなければならない」と呼びかけた。
今年の懇親会は、新型コロナウィルス禍前の8割程度の規模に戻して開催。参加者からは「コロナ禍では会えなかった業界の方々とようやく顔を合わせられるようになった。交流を深め、難局を乗り切っていきたい」などと、喜びの声が寄せられた。

JPIC「補助金セミナー」/複合化など目的に合わせて活用を

出版文化産業振興財団(JPIC)は10月13日、東京・千代田区の文化産業信用組合で「補助金セミナー」を開催した。「出版診断士研究会」に所属する中小企業診断士2名が講師となり、事業再構築補助金をはじめ書店や出版社で使用可能な補助金の概要と活用ポイントを解説した。
冒頭、JPICの松木修一専務理事は第10回事業再構築補助金の応募件数は1万821件、うち採択数は5205件だったと報告。12月または来年1月頃に見込まれる第12回の公募に向けた準備を呼びかけた。
はじめに鈴木直人氏が「主要な補助金の概要と活用ポイント」について説明した。鈴木氏は第10回公募の中で出版社の採択は16件、書店の採択は4件で、書店では商店街と連携したECモール事業や複合書店化による新市場進出などの事例があったと報告。
事業再構築補助金のほかにも「小規模事業者持続化補助金」(販路開拓による持続的発展)「IT導入補助金」「ものづくり補助金」(生産プロセス改善などのための設備投資)があるので、事業の目的や方向性にあわせて活用を検討してはどうかと解説した。
また、後払いである(採択の発表から補助金の支払いまで1年程度かかる)ことや、経費全額が補助されるわけではないことなどを注意点として指摘した。
続いて安田和博氏が出版業界向けに事業再構築補助金の概要を説明した。
安田氏は公募要領、手引き、概要、指針の資料4点は事業再構築補助金のポータルサイト(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/download.php)から入手しておくことを提案。公募要領に沿って、①まずは補助対象者に該当するかチェックする、②事業計画は定義された補助対象事業の要件(事業再構築要件、認定支援機関要件、付加価値額要件、市場縮小要件)のすべてを満たすよう検討する、③作成した事業計画は認定経営革新等支援機関(文化産業信用組合など)の確認を受けるなどのポイントを解説した。
本セミナーはYouTubeでアーカイブ動画を配信している。(https://www.youtube.com/watch?v=Jqu9ce4vTUI)。

日販調査店頭売上/9月期は前年比3.7%減/ムック、実用書、学参が前年超え

日本出版販売調べの9月期店頭売上は前年比3・7%減だった。雑誌は同3・1%減、書籍は同3・3%減、コミックは同5・2%減、開発品は同0・7%減。
全ジャンルで前月より売上前年比が回復し、なかでもムック、実用書、学参が売上を牽引した。
ムックは「ONEPIECEmagazineVol17」が好調に売上を伸ばし、2023年2月以来の前年超え。学参は英検、TOEICの関連書や『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』が好調で、6月期から4ヵ月連続で対前年プラスになった。

トーハン、ローソンとファミリーマートーへの配送、25年から引き継ぎ/中部トーハン会でトーハン・近藤社長「出版流通維持へ使命果たす」

中部トーハン会は10月25日、名古屋市中区のANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋で第56回定例総会を開催した。トーハンの近藤敏貴社長は、日本出版販売(日販)が2025年2月でローソンとファミリーマートへの雑誌や書籍の配送を終了することを受け、日販の撤退後はトーハンがローソンとファミリーマートへの配送を引き継ぐ方針であることを説明した。
近藤社長はトーハンが推進する出版流通改革の取り組みを説明し、出版業界の動向としてCVS配送問題に言及。トーハンがローソンとファミリーマートへの配送を開始する時期について、近藤社長は「2025年の何月かは現時点では申し上げられない」と明言を避けた。トーハンは現在、セブンイレブンの約2万店舗に配送しているが、これにローソンとファミリーマートへの配送が加わると、現在の約3倍のCVS配送を担うことになる。
近藤社長は、CVSの配送がなくなれば書店への配送にも影響が出ること、雑誌の配送がなくなれば書籍の配送にも影響が出ることを説明。「簡単なことではないが、やらなければならないことはたくさんある。この2年間で問題を解決していきたい」と述べ、会員書店と出版社に理解と協力を求めた。
トーハンは来年度からスタートする中期経営計画で出版流通改革に取り組み、トーハン川口センターや桶川センターに投資し物流強化を目指す。近藤社長は「我々には出版流通を守る使命がある。この問題をきちんとやらないと出版輸送は維持できない。リスクを冒してでも取り組まざるを得ない」と決意を示した。
最後に近藤社長は、「トーハンにとって取次業は祖業、本業であり、企業としてのアイデンティティ。これまで真摯に本業の復活に向けて取り組んできた結果、取引先からたくさんの応援の言葉をいただいている。今後も全国の書店に寄り添い続けていく。安心して一緒に仕事をしていただきたい」と呼びかけた。
中部トーハン会の総会は春井宏之幹事(岡崎市・正文館書店)の司会で進行。事業報告、会計報告、事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
あいさつに立った谷口正明会長(名古屋市・正文館書店)は、10月12日の東北日販会で藤原直会長が本の価格アップを出版社に求めたことに言及し、「(藤原氏の発言に)まったく賛成。私たちの業界は利益を内輪で取り合い、誰かが得をすると誰かが損をするということをやってきた。そうではなく、お金は外から持ってくるべき。消費者物価指数対比で本の値段はまだ安い。消費者物価指数に合わせて本の価格を変動させてほしいと出版社に要請するべきではないか」と述べ、書店収益改善の実現に向けて発想の転換を訴えた。
また、76年間営業してきたちくさ正文館書店の本店が6月に閉店したことに触れ、「これによって私の本の購入冊数も減った。店舗の持つ意味は大きい。本との出会いの場が減っており、何とかしなければ。今回の閉店は残念であり申し訳ない」と話した。

トーハンとDNP/桶川センター内に書籍製造ラインの導入目指す

トーハンと大日本印刷(DNP)は、トーハン桶川センター(埼玉県桶川市)への書籍製造ライン導入に向けた協議を開始することで合意したと発表した。取次の流通拠点内で書籍製造を行うことは、国内初の取り組み。新たな製造ラインは、DNP久喜工場(埼玉県久喜市)のデジタル製造機械の一部を移設する予定で、2025年度中の運用開始を目指す。
両社は21年に出版流通改革に向けた協議を開始した。読者と市場の需要に応じた商品供給を強化し、書店などでの欠品を減らすことで、販売機会の増大につなげる。返品率が10%以下と言われるドイツの出版流通構造を参考に流通基盤を再整備し、現状30%を超える返品率を低減する。また、返品する書籍の輸送や断裁に伴う環境負荷の低減も視野に入れている。
こうした販売機会の増大に向けて、少部数から印刷するプリントオンデマンド(POD)技術を用いた「桶川書籍デジタル製造ライン」の新設を目指す。出版社と連携して、書籍製造用のコンテンツデータを預かり(コンテンツデータバンク構想に連動)、需要に応じて少部数にも対応した印刷・製本を行い、注文から短時間での出荷・販売を実現する。
全国の書店に配送する拠点であるトーハン桶川センターで書籍を製造することで、製造と流通の連動を強化し、デジタル印刷を取り入れた柔軟な供給体制を構築する。これにより、読者の満足度を高めるとともに、書店や出版社の販売機会拡大を図る。また、これまで一時的な欠品や供給過剰によって発生していた返品の削減につなげ、出版サプライチェーン上の各プレーヤーの収益構造を改善していく。重版未定や絶版の書籍を減らし、デジタル印刷により多様なコンテンツを柔軟かつ持続的に販売できる仕組みを構築することで、読者が多様なコンテンツに触れる機会を担保し、著者に収益を還元して創出される商品を産み出し、供給の拡大にも貢献。出版文化のさらなる発展に寄与していくとしている。
今後の展開については、「桶川書籍デジタル製造ライン」の実現に向けて、先行的に一部の出版社・書店と連携し、DNPの既存製造ラインでの試験的な製造と検証に取り組む。また、デジタル印刷用のデータのラインアップの拡大に向けて「コンテンツデータバンク」を構築していくために、出版社や書籍製造会社との連携を強化する。

移転=中央社中部支店

中央社は11月6日、中部支店を次の住所に移転した。
▽住所=〒452-0901愛知県清須市阿原星の宮191-3アクティブ清須A棟
▽電話=052(400)7900/FAX=052(400)7916

連載「本屋のあとがき」~「本を売る」という行ない/ときわ書房本店・文芸書・文庫担当・宇田川拓也

2日間あった第31回神保町ブックフェスティバルの1日目に、家族を連れて足を運んだ。
今回はコロナ禍を経て久々の通常開催ということで、大変に盛況。バーゲンブックや謝恩価格本が並ぶワゴンも見て回りたかったが、小さい子供を連れて人波に飛び込むわけにもいかず、遠目から眺めるだけに留める。
代わりに飲食系のワゴンやテントを順に巡り、縁日のような気分で本の街をゆっくり歩きながら喉を潤し、腹を満たす。これはこれで、なかなかいいものである。
お昼を挟んで向かったのは、「こどもの本ひろば」。すずらん通りから少し離れた神保町三井ビルディング公開空地に設けられているため、絵本のワゴン、シールラリー、子供向けのステージなど、和やかな空気のなかで愉しむことができた。
本の街の賑わいに触れることは、本を商う者には英気を養ういい機会となった。とはいえ、書店が置かれた状況は、ますます厳しくなるばかり。さてどうしたものかと独りごちるも、今日も今日とて答えの出ないまま、忙しさに呑まれ、また一日が過ぎてゆく。
本を売る。それはもはや普通ではない、なにか特殊な行ないとなりつつあるのかもしれない。幸いにも本好きになってくれた我が子を見ていると、もう自分は「次に繋ぐ」という役割を果たしたような気もしているが、この子たちにとって本を求めることは、これからも「普通」であって欲しいものである。そのために、あとなにができるだろうか。