全国書店新聞
             

令和5年2月15日号

6・5%減の1兆1292億円/2022年紙の出版物販売額/出版科研調べ

出版科学研究所は『出版月報』1月号で2022年の出版物発行・販売概況を発表した。紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比6・5%(788億円)減の1兆1292億円だった。販売金額の内訳は、書籍が同4・5%減の6497億円、雑誌が同9・1%減の4795億円。電子出版は同7・5%増の5013億円で、前年までの2割前後の伸長が急速に鈍化。紙と電子を合算した出版市場は同2・6%減の1兆6305億円で4年ぶりの前年割れとなった。
20年、21年の出版市場を支えてきたコロナ特需は完全に終息。22年はロシアがウクライナに侵攻した影響で、原油価格の高騰や急激な円安が起き、様々な商品の価格が上昇。可処分所得が増えない中で、趣味・娯楽の一つである出版物の売上に大きな影を落とした。
書籍の推定販売金額は前年比4・5%(307億円)減の6497億円。前年は巣ごもり需要が続いて15年ぶりにプラスとなったが、好調だった文芸書や児童書、学参などが22年は伸び悩み、再びマイナスに転じた。推定販売部数は同5・8%減の4億9759万冊。年間ベストセラーの動向をみると、シニア向け生き方本やマネー関連書が上位にランクするなど、読者の年齢層や経済的不安を反映した売れ筋となった。トップの和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎)は57万5千部で、年々ヒット作の規模が小粒になっており、またヒットする本がシニア頼みになっている点も先細りが懸念される。
新刊点数は6万6885点で、同3・1%(2167点)減となった。内訳は、取次仕入窓口経由が同0・5%減の4万7180点、注文扱いが同9・0%減の1万9705点。09年の7万8555点をピークに、上下の変動はあるものの長期的には減少傾向にある。新刊推定発行部数は同3・2%減の2億6952万冊。平均価格は新刊が同2・2%(27円)増の1268円、出回りが同1・5%(18円)増の1256円。廉価な文庫本でも同2・0%(15円)増の748円となり、ここ5年で70円以上も上昇した。金額返品率は32・6%で同0・1ポイント増。15年以降7年連続で改善していたが、22年は横ばいで終わった。
雑誌の推定販売金額は同9・1%(481億円)減の4795億円。内訳は、月刊誌が同9・7%減の4017億円、週刊誌が同5・7%減の778億円。月刊誌の内訳をみると、定期誌は約4%減、ムックは約3%減、コミックス(単行本)は約18%減だった。定期誌は、月刊を隔月刊や季刊、不定期に刊行サイクルを変更したり、月刊誌を合併号にして刊行本数を減らす例も目立った。コミックスは、『SPY×FAMILY』、『チェンソーマン』(ともに集英社)などアニメ化で大幅に売れた作品はあったものの、20年から21年にかけて相次ぎ登場したメガヒットに比べ、ヒット作数も部数規模も及ばなかった。
推定販売部数は同12・4%減の7億7132万冊で、減少率は過去最大になった。内訳は、月刊誌が同14・0%減の5億7475万冊、週刊誌が同7・6%減の1億9657万冊。平均価格は同3・6%(22円)増の627円。内訳は月刊誌が同4・5%(30円)増の704円、週刊誌が同1・8%(7円)増の407円。雑誌の平均価格は、ここ40年で最大の値上げとなった。金額返品率は前年同率の41・2%。内訳は、月刊誌が同0・1ポイント増の40・6%、週刊誌が同0・7ポイント減の43・9%。
創復刊点数は同6点増の39点。月刊誌の創刊が1点もなかったのは初めて。休刊点数は同5点増の95点。唯一の歌舞伎専門誌『演劇界』(発行/演劇出版社、発売/小学館)、週刊誌『NHKウィークリーステラ』(NHKサービスセンター)などが休刊した。不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同106点減の2847点。ムックは同319点減の5729点。雑誌扱いコミックスの新刊点数は同145点増の9417点だった。
電子出版の市場規模は同7・5%(351億円)増の5013億円。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同8・9%増の4479億円、電子書籍が同0・7%減の446億円、電子雑誌が同11・1%減の88億円。統計を開始した14年に1144億円だった電子出版市場はわずか8年で約4・4倍の市場に成長。前年まで2割前後の伸長を続けてきたが、22年は伸び幅が一気に縮小した。コミックは、課金して読むユーザーの伸びが落ち着き、成長が減速した。書籍は、統計開始以降初めてマイナスに。文芸やビジネス、実用書などが伸び悩んだ。雑誌は、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の減少が続く。
紙と電子の出版市場を合わせると1兆6305億円、同2・6%減で4年ぶりのマイナス成長。市場全体における電子出版の占有率は30・7%で同2・9ポイント増加した。

絵本専門士養成講座第10期受講生を募集

国立青少年教育振興機構は、絵本に関する高度な知識、技能や感性を備えた専門家を養成する第10期「絵本専門士養成講座」の受講生を募集している。
同講座は6月~24年1月まで実施。受講料8万円。定員70名(35名×2クラス)。募集締切3月3日、受講者決定5月中旬。申し込みは同機構ホームページの申込フォームから。
問い合わせは絵本専門士委員会事務局(同機構内)まで。℡03(6407)7714

「本の日」キャンペーン2022/「BOOKMEETSNEXT」と提携/イベント実施店は売上前年比103・5%

「本の日」実行委員会(矢幡秀治代表=日書連会長)は、2022年度の実施内容と結果をまとめた冊子『11月1日は「本の日」キャンペーン2022取組報告』を作成した。
実行委員会では、出版文化産業振興財団(JPIC)を中心とした読書推進活動「BOOKMEETSNEXT」との提携により、キャンペーンの認知度アップと運営体制の強化を図った。この結果、調査に協力を得た7法人による11月1日「本の日」当日の売上前年比は、全店の数字が90・9%に留まったのに対し、イベント実施店では103・5%の実績を上げた。しかし、イベント実施店の売上前年比としては前年の109・3%を下回る結果となった。
各キャンペーンの実施結果は以下の通り。
■図書カードプレゼントキャンペーン日書連「秋の読者還元祭」との共催は2回目で、10月27日~11月23日に実施。書店は応募用の二次元バーコード付ポスターを店頭に掲出。応募用しおりも配布した(申込店のみ)。応募総数は11万9938名で、前年の6万7313名に比べて78・2%増と大きく伸びた。
■「本の日」ブックカバー大賞文庫本のブックカバーデザインを公募し、大賞作品をカバーにして配布した。参加書店は259店で、前年の171店を大きく上回った。219作品の応募から、イラストレーター・卯月小春さんの作品『本を持って旅にでる。』を大賞に決めた。
■イベント助成金企画「本の日」期間中の来店促進や認知度向上を目的としたイベントを実施する書店に1店舗最大5万円を助成した。38イベントに総額166万7564円を助成、対象イベントの総参加人数は3755名にのぼった。
■『告白』店頭飾り付けコンクール湊かなえ『告白』(双葉社)の文庫300万部突破を記念し、『呪術廻戦』(集英社)の芥見下々が描き下ろした幅広帯搬入のタイミングに合わせて店頭飾り付けコンクールを実施、454店舗が参加した。全国を6ブロックに分け、各ブロックから優秀店1店を湊氏が選出。4月より各優秀店で湊氏のサイン会を実施する予定。
■広報活動実行委員会の公式ホームページとTwitterで「本の日」をアピールした。11月1日には「本の日」メインイベントとして、小説紹介クリエイター・けんごさんのオンライントークイベント「けんごさんと本トーク。本と、読書と、本屋さんと。」を開催、500名以上が視聴した。

新理事長に足立岳彦氏/「組合の健全運営進める」/愛媛組合

愛媛県書店商業組合は1月18日、松山市の愛媛県官報販売所で臨時総会を開催し、1月2日に死去した光永和史理事長(松山堂書店)の後任に足立岳彦氏(愛媛県官報販売所)を選んだ。副理事長と専務理事は6月開催の定時総会で選任する予定。
足立理事長は「光永理事長の路線を引き継ぎ、財政面を含め組合の健全運営を進めていきたい」と所信表明した。

「春夏秋冬本屋です」/「いつか傘を買いに」/愛知・近藤商店代表取締役・近藤五三六

郷土にゆかりの光触媒反応の第一人者、東京理科大学栄誉教授である藤嶋昭氏の講演会が市内であり、聞きに行ってきました。窓拭きしなくても綺麗なままでいるガラスの加工や空気清浄機の開発の礎になる研究を行ってきた方です。著書や監修した本も多数あり、どれも興味深いものばかりです。東京生まれですが、お祖父様の実家のある当地へ疎開されていたそうです。加古里子先生の世界遺産の本(ピラミッド、万里の長城、奈良の大仏)についての科学的解説や加古先生との出会いのきっかけをお話し下さいました。また、歴代の科学者の中でも特に素晴らしい方を6人挙げました。その中で私の印象に残った方はマリー・キュリーでした。昨年10月に彼女の生涯をドキュメントした映画「キュリー夫人」を観たからでしょう。人間味溢れた描写は忘れられません。
話題を映画に変えます。一昨年7月に観た「まちの本屋」も忘れられないものでした。実在するまちの本屋さんが努力、工夫することによってまちには欠かせない存在になってゆくところを見習っていかなければならないと自戒する内容の映画でした。
最後に業務連絡です。尼崎の小林書店様へ!今池のシネマテークに来られた時の「いつか傘を買いに行きます」という自分勝手な約束はまだ忘れていません。

東京組合青年部新年会/田島会長「懇親深め新しい企画作りたい」

東京都書店商業組合青年部は1月20日、東京・文京区のホテル東京ガーデンパレスで新年懇親会を開催し、約60名が出席した。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催。
新年懇親会は黒田英揮副会長(黒田書店)の司会で進行。冒頭であいさつした田島英治会長(椿書房)は「青年部は、この新年会と6月の総会後に行っている懇親会を通じて企画が生まれたり、いろいろなことを進めることができた。また懇親を深め、青年部に声をかけていただき、次の新しい企画を作っていきたい」と述べた。
相談役の東京組合・矢幡秀治理事長(日書連会長)は「青年部はここ数年、SNSやインターネットを通じた取り組みを行っている。東京組合の『木曜日は本曜日』の活動も若い人たちを中心に新しい発想で取り組み、世間でも話題になって非常に良い回転で進んでいる」と若い力に期待を寄せ、「『週刊朝日』が休刊となるなど雑誌が特に厳しいが、我々は本屋をやめるわけにはいかない。青年部の方々と共に、いろいろな策を練りながら頑張りたい」とあいさつ。聖教新聞社・櫛田実書店部部長の発声で乾杯した。
会の最中には、読者に書店へ足を運んでもらうため青年部が開発を進めるWebアプリ「本屋で本を探そう」の紹介などを行った。

「絵本ワールドの成果個店で繋げて」/兵庫組合新年互礼会で森理事長

兵庫県書店商業組合は1月18日、尼崎市の尼崎市商工会議所7階会議室で新年互礼会を開催。出版社13社19名、取次4社5名、書店11社11名、来賓3名の合計38名が出席した。新型コロナウイルスの感染予防対策を施し、3年ぶりのリアル開催となった。
新年互礼会は新理事の大橋崇博氏(流泉書房)の司会で進行、中島良太副理事長(三和書房)のあいさつで開会。冒頭のあいさつで森忠延理事長(井戸書店)は、「コロナ禍で新年互礼会をリモートで2回開催したが、対面の意義と効果を鑑みリアル開催とした」と前置きして、「ロシアのウクライナ侵攻後、本が売れないどころか店頭にお客様が来ない。生活防衛のため本が後回しになっているのではないか」と消費動向に懸念を示した。組合の活動については、「秋に行った絵本ワールドは成功裏に終了した。この成果を個店での実施につなげ店頭を盛り上げてお客様に来ていただくことが急務だ」と述べ、「ことは切迫しており、すぐにでもやらなければならない」と奮起を促した。また、粗利アップなどを書店が一方的に要請するだけでは実現は難しいとして、書店側も努力が必要だと指摘した。
続いて、来賓を代表して大阪府書店商業組合の深田健治理事長(日書連副会長)が祝辞。自民党国会議員による書店議連は発足時に40名だったメンバーが約150名に拡大しており、街の書店が生き残れるように環境整備を働きかけていきたいと話した。
小学館パブリッシング・サービス関西支社の今野拓也支社長の発声で乾杯。しばしの歓談ののち参加出版社によるPRタイムとなった。聖教新聞社より恒例の兵庫各地銘酒セットが提供され、飲み比べで大いに盛り上がった。
閉会は、安井唯善副理事長(安井書店)がお礼の言葉を述べ、一本締めにてお開きとなった。
(安井唯善副理事長)

芥川賞・直木賞4人同時受賞/佐藤厚志氏は現役書店員で史上初

第168回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が1月19日に行われ、芥川賞は井戸川射子氏(35)の「この世の喜びよ」(群像7月号掲載)と佐藤厚志氏(40)の「荒地の家族」(新潮12月号掲載)の2作品、直木賞は小川哲氏(36)の「地図と拳」(集英社)と千早茜氏(43)の「しろがねの葉」(新潮社)の2作品が受賞した。井戸川氏と佐藤氏は初、小川氏は2回目、千早氏は3回目の候補だった。佐藤氏は現役書店員として史上初の芥川賞受賞となった。同日夜、都内で記者会見が開かれ、4氏が気持ちを語った。
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井戸川氏は兵庫県出身。高校の国語教師をしながら小説や詩を書き始め、19年に詩集「する、されるユートピア」(私家版)で中原中也賞を受賞。21年に小説集「ここはとても速い川」で野間文芸新人賞を受賞した。
受賞作は二人称で書いた。「育児が結構しんどくて、子供たちを私が見守っているように、私も誰かに見守られていたらいいのにと思って書いた。書くことがカウンセリングにもなった」と話した。
一番の目標は「言葉を上手に使うこと」。「これから詩も小説もいろいろなものを書いていきたい。自分がいいと思うものを書きたい」と抱負を語った。
佐藤氏は宮城県仙台市出身。丸善仙台アエル店(仙台市青葉区)で書店員として勤務する傍ら創作活動を続けている。17年に「蛇沼」で新潮新人賞を受賞しデビューした。
東京の丸善丸の内本店で電話が鳴る瞬間を待っていたという佐藤氏は、「地元がすごく盛り上がっていて、その期待に応えられるかというのがプレッシャーになっていた。受賞が決まって安心した。これからも今まで通りに毎日原稿を書き続けていくことが大事だと思う」と笑顔を見せた。
現役書店員の芥川賞作家として今後の発信力も期待されるが、「自分の小説も店に並べてしまえば商材の一つという感覚。他の本と同じように、今うちの店ではこれを推していますぐらいの感じで販売している」と気負いはない。今回4人が同時受賞したことについても「本屋としては『やった!』という感じ。それぞれの作品を手に取って読み比べていただければうれしい」と喜んだ。
小川氏は千葉県千葉市出身。東大大学院在学中の15年に「ユートロニカのこちら側」でハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。19年の「嘘と正典」が同年直木賞候補になった。
SFやクイズ小説、そして日露戦争から第二次世界大戦の旧満州の架空の都市を舞台にした今回の歴史巨編など、様々な作品を発表してきた小川氏だが、「分野のことは考えていない。自分が読みたい本や面白いと思う本を作り続けていきたい」と意欲を見せた。
選考委員の宮部みゆき氏が「最高の冒険小説」と講評したことには、「そう言われてみれば冒険小説かなと思う。この作品が持つ一つの可能性と魅力を引き出してくれた」と述べた。
千早氏は09年に「魚神(いおがみ)」で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
「全然取れると思っていなかったので、茫然としている。いま見ている景色がまだ脳内で処理できていない感じがする」と受賞の感想を語った。
受賞作は戦国末~江戸初期の石見銀山に生きた女の生涯を描いた時代小説。宮部氏が評価した「血と土のにおいがしてくるような筆力」をどう培ったかについて「小説は紙に書かれた色もにおいもないただの文字だが、そこからにおいとかが立ち上がってくるものが書ければいい」と説明し、「普通に生きている市井の人間の苦しみ、悲しみ、生きがい、感情を書いていきたい」と述べた。
【丸善ジュンク堂書店の中川社長ら/「芥川賞」佐藤氏に祝福のコメント】
丸善仙台アエル店の書店員である佐藤厚志氏『荒地の家族』の芥川賞受賞にあたって、丸善ジュンク堂書店の中川清貴社長と丸善仙台アエル店の石原聖店長がコメントを発表した。
中川社長は「佐藤さんが、日ごろは当社の書店で数多くの書籍や雑誌を読者にお届けしつつ、作家としてはこのような素晴らしい作品を生み出し、権威ある文学賞に選ばれたことは、同じ書店人としてたいへん大きな喜び。この作品が一人でも多くの読者に届くよう、全国の書店で応援していただければと思う」、石原店長は「同僚としてこれほど嬉しいことはない。厚志さんの描く風景、心情描写、いずれも、目の前にありありと浮かんで来るよう。日頃仕事に打ち込んでおられる様子から大変勤勉な方だとお見受けしていたが、その上に、隠れた努力、一流に達する努力をして来られたことに深い驚きと敬意を感じる」と祝福した。

紙とデジタル最適化求める/文字・活字推進機構など各界連絡会

文字・活字文化推進機構と学校図書館整備推進会議は12月7日、東京・千代田区の衆議院第一議員会館で、「学校図書館の整備・拡充」と「教科書での紙とデジタルの最適化」を求める各界連絡会を開催した。活字文化議員連盟と学校図書館議員連盟が共催。
会合では、第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」(22年~26年)の総額2400億円の予算(地方財政措置)が各自治体で目的に沿って実行されるよう求め、24年度から段階的に導入されるデジタル教科書では紙とデジタルのバランスをとり併用することを訴える報告を行った。
文字・活字文化推進機構の山口寿一理事長(読売新聞グループ本社社長)は、第6次計画の予算は「学校図書館の図書・新聞の購入、司書の配置、図書の更新・廃棄を後押しする貴重な財源」と強調。デジタル教科書については「デジタル偏重にならないように注意したい」と述べた。
学校図書館議員連盟の塩谷立会長は「各自治体に声をかけ、予算をしっかり活用してもらうようにしたい」と述べた。活字文化議員連盟の上川陽子会長は「紙とデジタルのベストミックスをどう図るか、回答を出したい」と話した。
学校図書館の整備・拡充では、相模原市書店協同組合の中村太郎専務理事が具体的事例を報告した。

秋田市支部7店舗でお年玉キャンペーンを実施/地域中小企業団体等支援事業を活用

秋田県書店商業組合の秋田市支部(仮称)は、昨年度に引き続き秋田市地域中小企業団体等支援事業を活用して、「年末年始はたくさん本を読んでお年玉もらっちゃおうキャンペーン」を12月20日から1月10日まで開催した。
図書カード1万円分を10名、同3000円分を100名に進呈。また、ダブルチャンス賞として、秋田杉で作った特製しおりを100名にプレゼントする。同支部所属の石川書店、加賀谷書店東通店、同・茨島店、ひらのや書店、TSUTAYA仁井田店、同・中野店、同・広面店の7店舗で1000円以上購入したお客様に応募用紙を手渡し、必要事項を記入の上、店内の応募箱に投函してもらう。当選者には後日、引換ハガキを送付するもの。キャンペーン開始翌日に地元新聞に記事が掲載されるなど出足は上々だった。
同支部は「新型コロナウイルスの感染者が再び増加し、季節的に人出が一段落ちる時期。年末年始は本をゆっくり読んでもらいたい、秋田を盛り上げたいとの思いから開催した」としている。
(石川信広報委員)

11月期販売額は4・2%減/コミックス、人気作新刊集中でプラスに/出版科研調べ

出版科学研究所調べの11月期の書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比4・2%減となった。内訳は書籍が同6・3%減、雑誌が同1・5%減。書籍は2月以降、毎月減少が続き、返品も上昇が続く。前年同月は本体12万円の『総合百科事典ポプラディア第三版』(ポプラ社、全18巻セット)が刊行されたことで、数字が跳ね上がっていた。新刊、出回りともに当月の平均価格が大きく下がったのは同書の影響。雑誌は書籍と比べて減少幅が小さい。内訳は月刊誌が同0・3%増、週刊誌が同10・5%減。月刊誌はコミックスで『ONEPIECE』『HUNTER×HUNTER』『怪獣8号』(いずれも集英社)、『東京卍リベンジャーズ』(講談社)など人気作の新刊が集中したため。月刊定期誌は女性誌などの苦戦で厳しい状況にある。
書店店頭の売上げは、書籍が約8%減。いずれのジャンルも厳しい中、ゲーム攻略本のみ約20%増。11月発売の「ポケモン」新作ソフトの攻略本『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット宝探し冒険ガイド』(小学館)が大部数で刊行されたため。
雑誌の売上げは、定期誌が約2%減、ムックが約3%減、コミックスが約6%増。コミックスがプラスとなったのは21年9月以来。前年同月が激減していたこともあるが、『ONEPIECE』や『HUNTER×HUNTER』などメガヒットタイトルが貢献した。

「春の読者還元祭2023」実施要項

▽名称 日書連主催「春の読者還元祭2023」
▽期間 2023年4月20日(木)より5月12日(金)まで
▽参加資格 組合加盟書店及び希望する書店
▽実施方法 期間中に来店したお客様、外商先などにキャンペーンサイトを案内。参加にはお客様自身による専用サイトへの応募が必要(応募上限は1日1回、キャンペーン期間中に最大23回の応募が可能)
▽販促物
①キャンペーンしおり(1種類150枚。図案は名画を予定)、②雑誌カード(A5サイズ130枚)、③店頭用A3ポスター1枚
1セット予価3630円(税込)で頒布。書籍、雑誌を購入したお客様(税込500円を目安)に進呈。店頭用A3ポスターは告知用。日書連ホームページからもダウンロード可能(今回はQRコード付き応募ポスターの作成なし)
▽申込方法 自主申込制。注文ハガキに申込セット数と実施書店名を記入の上、所属の都道府県組合宛に申し込む。申込締切は3月1日(水)
▽納品と請求方法 取引取次経由で4月中旬に納品。代金は取引取次から請求
▽賞品 総額300万円
図書カードネットギフト1万円   100本
同3千円             200本
同1千円            1400本
当選者には日本図書普及より直接、図書カードネットギフトメールを6月末頃送信の予定
▽報奨金 しおりを購入して応募者を150件以上集めた組合加盟書店に報奨金を支給(支給する報奨金は購入数に関わらず1セット分だけとする)
▽その他 販促活動への助成として、組合加盟全店にしおり20枚を無料進呈(雑誌カードは付かない)。キャンペーン開始までに全店に直送

大垣会長「地方書店存続のため努力」/新役員体制で若手を登用/書店新風会「新年懇親会」

書店新風会は1月11日、東京・新宿区のハイアットリージェンシー東京で新年懇親会と第57回新風賞贈賞式を開き、会員、出版社、取次など258名が出席した。
はじめにあいさつした大垣守弘会長(大垣書店)は、「海外に比べて日本は消費マインドの本格的な回復が遅れている。またウクライナ情勢の悪化や円安に伴う資源価格の高騰が幅広い業種で収益を押し下げ、消費低迷とコスト増加の二重苦に直面している。書店業界も昨年は厳しい1年だった」と指摘。
そうした中、出版文化産業振興財団(JPIC)の尽力で読書推進月間「BOOKMEETSNEXT」がスタートし、読進協の「読書週間」や日書連の「本の日」が一体となった読書推進キャンペーンが行われたのは「歴史的な出来事」と高く評価した。書店議連については「地方書店の存続のため、全面的に協力したい」と述べた。
また、RFIDやPOD(プリント・オン・デマンド)などの技術に期待を示し、「流通改革が日進月歩の勢いで進んでいる。それらをフル活用して、本を求める読者や書店に迅速に届ける仕組みを研究し、実現したい」と語った。
会員書店の年始の売上げ状況については、元旦から営業した店舗は53%、2日からは40%、それ以外は7%で、その初日の売上げの平均値は前年比98・5%と報告。「象徴的なのは、好調な店舗は同116・4%、厳しい店舗は同81・0%となり、大型商業施設や立地によって大きく変わってきていること。昨年1年間を見ても、お客様の消費動向は大きく変わってきている」として、「お客様の動向に応じた店作り、品揃え、立地を考えながら、地方書店存続のために精一杯頑張りたい。出版業界の停滞感を打破し、次の成長軌道を描く1年となることを祈念している」と結んだ。
第57回新風賞は和田秀樹著『80歳の壁』(幻冬舎)が受賞し、贈賞式では著者の和田氏と幻冬舎の石原正康専務に大垣会長から賞状と盾が贈られた。和田氏は「『80歳の壁』はある程度社会的な意義があった。この本が売れることで書店や出版社に高齢者は読者層であると知っていただけたことも収穫」とあいさつした。
また23年~24年の役員体制を発表、副会長に奥野康作氏(ブックエース/川又書店)、髙須大輔氏(豊川堂)を新任し、各委員長に若手を登用した。大垣会長は「新風会も世代交代の時期に差しかかっている」と述べ、新しい人材の成長に期待を示した。
今年の地方総会は9月中旬、山形で開催する。幹事店は八文字屋

インボイス制度説明会・研修会に財務省・国税庁から講師派遣/消費者庁

消費者庁は、消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関わる情報を周知広報するため、各団体および傘下団体(地域ブロック単位の団体)に対して説明会・研修会への講師派遣、会報誌紙への寄稿を行っている。積極的に活用していただきたい。
概要は次の通り。
①各団体が主催する説明会・研修会への講師派遣
インボイス制度に関して各団体(傘下団体を含む)の会員事業者向けの説明会・研修会の予定があれば、財務省・国税庁から講師を派遣する。団体の経理担当の受講が効果的だが、団体開催の理事会や団体事務局に向けた説明でも構わない。また、オンラインでの開催、少人数の説明会や複数回にわたる開催などにも対応可能。
今年10月から開始するインボイス制度について、事業者からよく質問を受ける内容を踏まえながら説明する。質疑応答の時間を設けることも可能。
講師派遣の依頼は随時受け付けている(申込期限は設けていない)。講師派遣は原則として平日9時~17時。それ以外の日程を希望する場合は応相談。
②各団体発行の会報誌等への寄稿
インボイス制度についての寄稿文のひな型を4種類用意し、各団体(傘下団体を含む)が発刊する会員事業者向けの会報誌紙に提供している。会報誌紙の掲載スペース等に合わせて文章を活用してほしい。
ひな型については文体の変更は可能だが、内容を変更するような修正はできない。希望に応じて団体の業界の実態に即した内容の寄稿にも対応するが、内容に関しての打ち合わせ等が必要な場合がある。
講師派遣と寄稿依頼の申し込みは左記まで。
消費者庁表示対策課担当=福田氏(電子メール:hirosuke.fukuda.cz1@caa.go.jp)、江本氏(naoki.emoto.i5l@caa.go.jp)

大賞にKADOKAWA「今こそ戦争について、考えよう」/読売出版広告賞

読売新聞に2022年に掲載された出版広告の中から優れた作品を表彰する「第27回読売出版広告賞」の贈賞式が1月25日、東京・千代田区の読売新聞東京本社で開かれ、「今こそ戦争について、考えよう」(22年5月10日付朝刊・全15段)の広告で大賞に輝いたKADOKAWAなどに賞が贈られた。
大賞は漫画「はだしのゲン」など長く読み継がれてきた名作や新刊を含むKADOKAWAの戦争関連書籍9作品が並んだ広告。創業者・角川源義氏による角川文庫発刊の辞も引用し、戦争や平和について考えることを提案している。9作品は期間限定で無料配信、戦争や紛争に対する人道支援のための募金を受け付けたことも注目を集めた。
同社の夏野剛社長に読売新聞東京本社の坂本裕寿取締役広告局長から表彰盾と副賞を贈呈。夏野社長は「この広告は社員がアイデアを出し合って制作した。自社で発刊する、戦争の悲惨さを訴える本を読んでもらうことが出版社としてできることではないかとの思いから進めた」と述べた。
大賞以外の受賞者は次の通り。(掲載日は東京本社発行版)
▽金賞=講談社「スモールワールズ」(22年2月6日付朝刊・全5段)▽銀賞=大修館書店「ジーニアス英和辞典」(22年11月11日付朝刊・全5段)▽銅賞=小学館「大ピンチずかん」(22年10月21日付夕刊・全3段)▽特別賞=朝日出版社「エモい古語辞典」(22年8月4日付朝刊・3段8割)

「本屋のあとがき」/「目黒孝二氏の訃報」/ときわ書房本店文芸書・文具担当宇田川拓也

1月19日に亡くなられた、目黒孝二氏の訃報に言葉を失った。
「本の雑誌」創刊者であり、本の雑誌社前社長の氏は、文芸評論家・北上次郎、競馬エッセイスト・藤代三郎としての顔も持つ才人であった。いま本稿をお読みのなかにも、大きな衝撃を受け、悲しみに暮れているという方々が少なからずいらっしゃることだろう。
「本の雑誌」を初めて購入したのは、電車通学をしていた高校生の頃。自宅近所の本屋には入荷がなかったので、大手書店のある駅で途中下車し、毎号買い求めていた。必ずチェックするのは、もちろん北上次郎名義の氏の書評ページだ。
あらすじを省き、セリフや場面を糸口に物語の美点を紹介していく文章は、まさに目の前で語られる「声」を読むようであり、ジャンルを問わず「これは読まねば!」と慌てて手を伸ばした小説は、数知れない。
先日、やはり訃報に接し、がっくりと肩を落としている某版元の方から連絡をいただいた。出版界にとって宝のような存在であり、あまりにも大きな喪失だとおっしゃる。
確かに、そう思う。けれど、もし氏がそんな我々を見たなら、きっと「きみたち、落ち込んでいる場合じゃないぞ。ほら、たくさんのひとが面白い小説を待っているじゃないか」と叱咤激励してくださったに違いない。
ときどき書評や文庫解説も書く文芸書・文庫担当として、自分なりによき小説との出会いのお手伝いを継承していきたい。