全国書店新聞
             

平成21年5月1日号

景品規約見直し延期/小売公取協

消費者庁の設置により、景品表示法が公取委消費者取引課より消費者庁に移管される関係で、今年5月24日までに見直しを行うことになっていた書店の景品規約も当分の間、延期することになった。
書店の景品規約、「出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」は、平成18年の改定の際、平成21年5月24日までに見直しを行うと付則で明記されており、今年5月が改訂の期限だった。小売公取協は2月17日に公取委消費者取引課を訪問、現状維持の方針を伝えていたが、消費者庁設置関連法案の遅れに伴い、「検討する時間がない」として、見直しが延期になった。ただ、公取委は「現状維持の方針を容認したものではない」としている。

雑協新理事長に文春上野社長

日本雑誌協会は4月21日の定時総会で村松邦彦理事長(主婦の友社)が退任、第13代理事長に上野徹氏(文藝春秋)が就任した。
上野徹氏略歴
昭和17年12月北海道生れ、40年北海道大学法学部卒、文藝春秋入社。61年週刊文春編集長、平成8年第1編集局長、9年取締役、13年常務取締役、15年専務取締役、16年代表取締役社
長。21年4月雑協理事長。

フリー入帳、取次に該当用語なし/取引用語で取協回答

フリー入帳のはずの返品が出版社の倒産で宙に浮いたり、業界三者で取引用語の解釈が異なるためトラブルが起き、日書連が用語の統一を求めてきた問題で4月23日の日書連理事会に取協の回答が示された。「販売会社においては(フリー入帳という)該当用語はない」とするなど、現状認識の違いが際立つ回答だった。4月理事会の主な審議は以下の通り。
〔取引改善〕
出版業界の取引用語統一の問題については、4月23日付で取協から回答があったと柴﨑委員長が報告。「委託」については「出版社と販売会社、販売会社と小売書店それぞれの間で期間を定め、その期間内であれば返品を認める販売システム」とするなど、原則的な言葉の定義だけで、現状の問題点に踏みこむことを避けた内容。「見計らい送本」「フリー入帳」などの用語については「見計らい送本という言葉は現状存在していない」「販売会社において該当用語なし」などと回答している。
柴﨑委員長は「取協は回答をまとめるだけでも大変だったようだ。今後、取協と意見交換を行うほか、出版社とも取引用語統一を話し合っていきたい」と今後の取り組みを述べた。
請求と返品入帳の同日精算を求めて取次各社に働きかけを行ってきた問題では、年度末にあたる今年3月末の入帳状況について、東京組合と地方書店数店で調査を行い、この中間集計について報告があった。
調査内容は3月中の返品金額を100として3月31日で何%入帳したかというもの。まだ十分な回答が集まっていないが、都内書店分について、栗田出版販売では3月31日返品分まで入帳されていたことがわかった。また、同じく都内の書店でトーハン、日販とも今年は24日まで入帳したという結果が示された。柴﨑委員長は「トーハン、日販については、なお同日精算を働きかけていきたい」と述べた。
〔流通改善〕
小学館が7月に『くらべる図鑑』など3点の責任販売制商品を発売すると発表したのに続き、講談社も10月に責任販売制の『CDえほん/まんが日本昔ばなし』(2面参照)を発表。23日の理事会の席に講談社書籍部大竹部長と小学館書籍部市川GMが訪れ、企画説明を行った。
講談社大竹部長は「講談社百周年で書店に利益の出る責任販売制商品を考えた。中小書店でも5セット、10セットは売れる企画」と説明。セット販売を責任販売制、バラ売りは委託で販売し、セット販売分は10月から1年間の時限再販、来年11月からは自由価格とし、返品については40%の歩安入帳と説明した。
小学館は市川GMが「昨年秋の『ホームメディカ』はケースにICタグを付けていたが、今回の3点は本体奥付にICタグを貼りこんである。RFタグの特性で外側からでも読める。秋にも責任販売制の大型企画を出版することを考えている」と述べた。
これを受けて藤原委員長は「小学館、講談社とテスト的に責任販売制商品を出している。仕組みを理解の上、賛同いただきたい」と販売協力を呼びかけた。
発売日関係では、輸送業者の夏期統一休暇は、今年は8月13日(木)、14日(金)、15日(土)、16日(日)の4連休とし、祝日法で4連休となる9月23日は通常通りの発売設定となることが報告された。
〔政策審議会〕
2月理事会で大阪組合から提案があった「物流研究委員会」は戸和理事を委員長に10名の委員(2面掲載)を選出した。戸和委員長は「書店に本が早く届く新流通のスキームを考えていきたい」と今後の方針を述べた。
〔書店経営健全化〕
4月1日現在の各都道府県組合加盟店の総数は、昨年4月1日と比べて367店、6・3%少ない5502店となった。
物流研究準備委員会
▽委員長=戸和繁晴(大阪)▽副委員長=柴﨑繁(東京)▽委員=久住邦晴(北海道)、鶴谷禄郎(青森)、山本裕一(神奈川)、古澤隆(静岡)、西村俊男(新潟)、今井直樹(島根)、平野惣吉(徳島)、岩永藤房(佐賀)

日書連会長に名乗り/谷口副会長がマニフェスト発表

日書連谷口正明副会長は
4月23日に開かれた日書連理事会の冒頭、6月の日書連総会において行われる役員改選で会長に立候補すると宣言。マニフェスト(選挙公約)を配布した。
マニフェストでは日書連の体質改善のためには新陳代謝を高めることが必要とし、①日書連理事の任期を8年までとする、②執行部は会長が組閣し、委員会編成を7委員会に見直す、③理事会は審議決議承認機関として年4回まで開催。その分、委員会活動を充実させるなどとしている。
谷口副会長は「会長になることより、日書連の体質改善が目的。そのためにマニフェストを作成した。文化に貢献する町の本屋が生き残れるよう、対決でなく対話で問題を解決していきたい」と、会長選立候補の意欲を語った。

萬田相談役が長寿者表彰で謝辞

出版業界の発展を期して5月11日午後3時から千代田区紀尾井町のホテルニューオータニで第48回全出版人大会が開催される。大会では「古稀」を迎えた出版業界の長寿者祝賀が行われるが、今年は長寿者39名を代表して、日書連元会長の萬田貴久相談役(立川・オリオン書房)が謝辞を述べることになった。

返品運賃軽減取組む/図書館選書ツールを作成/4月理事会

〔情報化推進〕
日書連MARCを採用する図書館は全国で3千校に増えており、学年別貸出回数順、購入冊数順がわかる「選書ツール」を全国中央会の補助金事業で作成して選書に役立ててもらうことになった。
また、日書連で中学生向け図書目録『ティーンズBOOKGUIDE』を2万部製作。井門委員長は「日書連MARC採用の小・中学校3千校に各2冊、都道府県組合に各20冊を無料配布するほか、希望書店には100冊1セット7千円で斡旋する」と説明した。
今年の東京国際ブックフェアは7月9日から12日までの4日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開かれることになっているが、フェア初日の9日午後、同会場で選書ツール、図書館管理システムなどをテーマに日書連情報化研修会を実施する。
〔指導教育〕
書店の返品運賃を軽減するため、各県組合を対象に行った実態調査の結果を鶴谷委員が報告。①回答のあった46組合中、取次自家配地区の東京、大阪を除く44組合が返品運賃を負担している、②このうち38組合は全書店が負担、③埼玉、千葉、神奈川、愛知、京都、兵庫の6組合は地区によって返品運賃を負担している実態が明らかになったと報告した。「返品運賃を斡旋している」組合は17組合、「組合員の自由」が21組合、「それ以外」が6組合だった。
アンケートの集計結果を報告した鶴谷委員は「都道府県により運賃負担率の差が大きい。詳細な返品運賃地図を作り、返品運賃負担軽減の取り組みを行いたい」と今後の取り組みを述べた。
万引き問題の対応では、警察に万引きを届け出た場合の事件処理が煩雑すぎるとして、受理手続きの簡素化を警察庁、警視庁に要望することになった。
〔増売〕
舩坂委員長より、春の書店くじは276万枚を発行し、特賞「北京4日間の旅ペアでご招待」が当たる抽選会は5月8日午後5時半から東京・神楽坂の出版クラブ会館で行うことが報告された。
昨年秋の書店くじ「Wチャンス賞」には2556通の応募があり、2月理事会で行った抽選により1万円分の図書カードを百名に送った。
今年の「心が揺れた1冊の本」の募集には約1万件の投票、俳句募集にはホームページ、ハガキなどで7千句の応募があったことが報告された。
〔読書推進〕
NHKBSで放送されていた「NHK私の1冊日本の100冊」が4月12日からNHK総合テレビで再放送されていることが報告された。放送時間は隔週土曜日、深夜0時30分から40分の時間帯。
第1回は安藤忠雄が『五重塔』、第2回は押切もえが『人間失格』を紹介したほか、5月10日は児玉清が『蝉しぐれ』、24日は中村伊知哉が『紅い花』を取り上げる。
児童図書出版協会、出版文化産業振興財団と行う「第4土曜日は子どもの本の日」の読み聞かせキャンペーンは、今年7月から九州ブロックで展開する。
〔共同購買・福利厚生〕
中小企業の災害補償共済、福利厚生事業を行う「あんしん財団」が4月1日から5月31日まで普及強化活動を実施しており、中山委員長は各県組合の協力と理解を求めた。
日書連のオリジナル手帳「ポケッター」2010年版は製作部数を9万部にしたいと報告した。

ティーンズBOOKGUIDE斡旋

日書連はこのほど中学生を対象にした読書ガイド『ティーンズBOOKGUIDE』(A5判中綴じ80頁)を製作しました。熊本組合の「本はよかばい」掲載図書をベースに、ヤングアダルト出版会の協力で推薦図書を入れ替えました。掲載図書138点。巻末に北海道組合の中学生向け推薦図書リスト500点収録。学校図書館の選書などに利用できます。頒布希望の書店には1セット百部単位で斡旋いたします。セット本体価格7千円。送料は日書連負担。支払いは後日郵送する請求書に基づいて代金を振込んでください。申込みは日書連「ブックガイド係」へ。

講談社10月に責販制商品/『CD絵本まんが昔ばなし』

講談社は10月に刊行する『CD絵本まんが日本昔ばなし』(全5巻セット、B5変型、各巻48頁、CD5枚付き、セット予価6825円)を責任販売制度で発売する。
責任販売制を採用するのはセット販売分で、出荷条件は書店仕入れ正味65%の買切り3カ月延勘払い。返品は原則不可だが、やむを得ない場合は取次40%入帳の歩安入帳になる。また、セット販売分は10月の発売時から2010年10月末まで1年間の定価販売とし、11月より自由価格になる。バラの配本分は通常の新刊委託条件。
CDえほんシリーズは10月の5巻を第1期に来春、第2期⑥~⑩巻の刊行を予定。第1期5巻の編成は①ももたろう、したきりすずめ、②十二支のゆらい、かぐやひめ、③かちかち山、つるのおんがえし、④さるかに合戦、ねずみのすもう、⑤かさじぞう、ぶんぶく茶がま。各巻には表題作のほか、さらに2話ずつ昔ばなしを収録。朗読は市原悦子・常田富士夫で、主題歌「にっぽん昔ばなし」も収める。

7月にも財産移行/日書連共済会

今年3月末の日書連共済会の残余財産は5億3456万円になっていることを木野村祐助清算人が報告した。ホテルメトロポリタンエドモントとの契約は解約する方針で、これにより差入保証金610万円が返金される。残余財産を日書連に移行するのは今年7月になる見通し。

サン・ジョルディ名古屋2009/1万3千冊を福祉販売

「サン・ジョルディフェスティバル名古屋2009」が4月18日、19日の両日、名古屋市東区のOASIS21銀河の広場で開かれた。本と花の展示販売を中心に様々なイベントが行われ、2日間の来場者数は約2万人にのぼった。
愛知県書店商業組合は、イベントの目玉となっているリサイクル本のチャリティ販売を実施。読者から家庭にある読み終えた本を寄贈してもらい、定価の1割以上で販売するもので、売上金全額を中日新聞社会事業団を通じて各種福祉事業・施設などに寄付している。今回はバーゲン本と合わせて約1万3千冊を陳列し、95万4121円を売り上げた。
このほか会場では、愛知組合が本作りから陳列・販売まで手伝う自費出版相談、中学生はこれを読め、孫の日コーナーや、絵本の読み聞かせ、バラのチャリティ販売、フラワーアレンジメント教室などが行われた。また去年に続き、なごやっ子読書週間(4月23日~5月6日)記念イベント「なごやっ子読書フェスティバル2009」が名古屋市・名古屋市教育委員会の協力で行われ、読み聞かせや工作教室が多くの親子連れで賑わった。
18日午後0時45分から行われた開会式では、サン・ジョルディ名古屋実行委員会の谷口正明委員長(愛知県書店商業組合理事長)があいさつ。「サン・ジョルディは今年で24回目。チャリティ本の販売は阪神大震災の年に始めて累計約1千万円を今まで寄付してきた。来年は25回の記念すべき年。今年はそれに向けていい形で進めていきたい。全国でこれだけの規模でイベントを行なっているのは愛知以外にない。今回は経済情勢の逆風を受けて、一時はやめようかという話もあったが、先輩たちが築いてくださったこの日を消してはいけないということで、今日の開催にこぎつけることができた。この2日間、よいイベントを行なって読者の方に喜んでいただき、来年に続けたい」と話した。

各県組合総会スケジュール

◆青森県書店商業組合第22回通常総会
5月14日(木)午後3時から青森市のアラスカ会館で開催。
◆愛知県書店商業組合第26回通常総会
5月15日(金)午後2時から名古屋市千種区のホテルルブラ王山で開催。
◆東京都書店商業組合第33回通常総代会
5月20日(水)午後1時半から新宿区の日本出版クラブ会館で開催。
◆大阪府書店商業組合第27回通常総代会
5月20日(水)午後1時半から大阪市北区のホテルモントレ大阪で開催。
◆埼玉県書店商業組合第25回通常総会
5月25日(月)午後3時からさいたま市浦和区の埼玉書籍で開催。
◆福井県書店商業組合平成20年度通常総会
5月25日(月)午後4時から芦原温泉「灰屋」で開催。
◆沖縄県書店商業組合第21回通常総会
5月27日(水)午後1時から那覇市の那覇地域職業訓練センターで開催。
◆京都府書店商業組合第25回通常総会
5月28日(木)午後2時から京都市中央区の京都ホテルオークラで開催。
◆北海道書店商業組合第33回通常総会
6月9日(火)午後4時半から札幌市中央区のホテル札幌ガーデンパレスで開催。

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・那須啓輔

◇2歳から/『たまごさんがね‥』/とよたかずひこ=作・絵/童心社893円/2008・9
たまごが一つ転がっていきます。ころころころころ、はじめゆっくり、だんだん早く。でも落ちて割れてしまいました。そこでたまごの男前のセリフ「しんぱい、ごむよう!」。その後も目が離せません。緩急メリハリがあって、読み聞かせしても、子どもの目がそれない絵本です。
◇4歳から/『かにこちゃん』/きしだえりこ=作/ほりうちせいいち=絵/くもん出版840円/2008・4
40年前刊行の本を加筆修正した新刊本。赤いカニの海辺でのなにげない1日を描きます。日の出や夕暮れの太陽、海の絵はどれも壮大で、色があざやか。波の音「しゃぷしゃぷぴしゃぴしゃ」、カニの歩み「すこすこ」の描写は読み聞かせ会後、子どもたちの流行になりました。
◇小学校低学年向き/『給食番長』/よしながこうたく=作/長崎出版1575円/2007・6
給食を残す番長中心の1年2組と、残して欲しくない給食室のおばさん達との愛の戦いとは?大胆な動きの登場人物を、独特なアングルで描き、ストーリーも破天荒で、いつのまにか、臨場感あふれる世界に入り込んでしまいます。併記の博多弁バージョンにもチャレンジして下さい!

大手書店等の出店・増床相次ぐ/兵庫

兵庫県書店商業組合は4月14日にエスカル神戸で4月定例理事会を開催した。
各支部からは厳しい経営状況などが多く寄せられた一方、大手書店などの出店・増床の報告が目立つ。特に第5支部からは姫路手柄山に大手電機量販店が2000坪で出店、そのうち書籍の売り場面積が200坪で4月11日にオープンしたと報告があった。また第3支部から、元組合員だった春風堂書店(平成19年8月廃業)の丹波和夫氏の訃報が知らされた。
委員会報告では、増売委員会からサン・ジョルディの日に因んだこどもの読書週間特別企画「本屋さんが選んだこどもの本」共同フェアに関する報告があり、52店から62セットの申し込みがあった。申し込んだ組合員書店には販促ツールとしてPOP用紙およびPOPスタンドと帯2種類が配布される。販売期間は5月12日までとなっている。
また、今年度の移動理事会は第2支部の担当で7月14日に能勢温泉での開催実施を予定。
(中島良太広報委員)

来年の国民読書年成功へ/子どもの読書活動推進フォーラム

「子ども読書の日」を記念して「子どもの読書活動推進フォーラム」(文部科学省、国立青少年教育振興機構、文字・活字文化推進機構主催)が4月23日午後1時から東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれた。式典では主催者を代表して文部科学省スポーツ青少年局の山中伸一局長があいさつ。「毎日新聞の読書調査2008年版を見ると、1カ月に読んだ本は小学生が9・4冊、中学生が3・4冊、高校生が1・6冊と、ここ数年かなり増えている。朝の読書運動や読み聞かせ運動など、関係者皆様の地道な努力がこのような成果につながったと考えている。平成13年に議員立法された子どもの読書活動の推進に関する法律で4月23日は子ども読書の日とされ、国・地方公共団体は子ども読書の日にふさわしい事業を展開することになっている。この法律に基づいて、文部科学省では子どもの読書活動推進に関する基本的な計画を策定。来年を国民読書年とするという国会決議を踏まえ、子どもの読書応援プロジェクト事業などを通じて子どもの読書活動を推進し、学校図書館や地域の図書館の活動を支援していく」と述べた。
文字・活字文化推進機構の肥田美代子理事長は「20年前、初めて国会に行ったとき、国会で読書の議論は一切できなかった。しかし、この20年間で超党派の議員連盟、行政の大きな力によって景色が変わってきた。まず2000年を子ども読書年とするという国会決議があり、そのあとすぐ子どもの読書活動の推進に関する法律ができた。次に文字・活字文化振興法ができて、この中で初めて言語力という言葉を使った。そして来年は国民読書年。皆さんが読書推進で不断の努力を続けてくれたおかげで、国会も読書の大切さを認識し法整備もできた。国際子ども図書館ができ、文部科学省は言語力の充実という言葉を明記し、読書にしっかり取り組んでいくための部署を作ってくれた。言葉を大切にしようという日本の未来がいよいよ開き始めた。皆さんが先頭に立って2010年の国民読書年を盛り上げてくださることを心から願っている」とあいさつした。
来賓の国立国会図書館・吉永元信副館長は「国際子ども図書館は平成12年5月5日の子どもの日に上野の地に開館して以来、9年の月日が経とうとしている。この間、蔵書は29万冊に増加し、平成20年度の年間利用者数は13万5千名、1日の利用者数は平均480名となった。昨年10月9日には開館以来の来場者数が100万人を突破。日本における児童書のナショナルセンターとしての機能充実を図ってきた。来年は国民読書年。全国民を対象とした読書推進活動が行われる。読書習慣は早いうちに身につけたほうがいい。子どもの読書環境がますます整備されることを願っている」と祝辞を述べた。
このあと文部科学大臣表彰として読書活動優秀実践校140校を代表して大阪府寝屋川市立桜小学校、千葉県流山市立北部中学校、香川県立善通寺養護学校、秋田県立六郷高校。子どもの読書活動優秀実践図書館47館を代表して京都市醍醐中央図書館、浦添市立図書館。子どもの読書活動優秀実践団体(者)58団体・名を代表して都留文科大学児童文化研究部、長崎おはなしの会を表彰した。なお、団体で愛知県書店商業組合が表彰されている。表彰の後、詩人・童話作家の工藤直子氏が「子どものこころ詩のこころ」をテーマに講演した。
【各地の読書活動実践報告】
続いて文部科学大臣被表彰団体の代表者が子どもの読書活動推進実例報告を行った。内容は以下の通り。
◇大阪府寝屋川市立桜小学校
朝の15分間読書を行っている。教師の「読み聞かせ力」の向上を図る音読・朗読の研修や調べ学習の図書館利用も計画的に行っている。また、子どもが本を読む力を伸ばすため、国語科等で文法力、語彙力、読み取り力を高める研究や音読・暗唱指導を行っている。子どもたちの豊かな体験学習も重視している。図書委員会では本の貸し出し、読み聞かせ、休み時間・放課後の図書室開放を行っている。
◇流山市立北部中学校
毎日取り組んでいる朝の読書を柱に、1年間で1万ページを読破することを目指し、一人一冊ファイルを持ち、そこに記録していく「万里の長書」活動に取り組んだ。また、幅広い読書へ生徒の興味を広げるため、市内の公立図書館との連携や、地域の人材を活用した様々な読書活動を展開した。
◇香川県立善通寺養護学校
朝10分間、一斉読書の時間を設けている。教科書を使って学習できる児童生徒たちのグループは自分で選んだ童話や小説などを読み、重度障害のある児童生徒は先生から絵本や童話を読んでもらっている。読書活動は自己表現の場であり、地域の方との交流を通して人間関係育成の場としても大切な活動になっている。
◇秋田県立六郷高校
読書活動の核は、毎朝10分間、生徒・職員全員で取り組む朝の読書。美郷町立図書館「学友館」との連携によって、学友館の蔵書も学校の図書カードで利用が可能となっている。地域の専門家を招いて行う講話や読み聞かせなどの「図書館のつどい」、読書案内パンフレット作成とスピーチによる書籍紹介の授業実践は、学校図書館活性化に大きな役割を果たしている。
◇京都市醍醐中央図書館
毎月、子ども向けの行事に取り組み、昨年度は22回開催し、参加者は延べ560人。読み聞かせ、ストーリーテリング、パネルシアターなど工夫を凝らしたお楽しみ会を実施している。赤ちゃん絵本読み聞かせの会は、子育て支援の場として機能している。昨年度は10年間の取り組みを通じ構築した学校との信頼関係をもとに新規事業「出前貸出」を2校で展開。公共図書館が所蔵する豊富な児童書の中から子どもたちに読んでほしい本を選び、地域の小学校に出向き図書の貸し出しを行い、本との出会いを創出する場として好評を得ている。
◇浦添市立図書館
開館以来、児童室とおはなしコーナーで児童書の紹介や提供、定例おはなし会や各種子ども向け行事を行ってきた。学校訪問、ヤングアダルトコーナーの設置、市内学校図書館とのネットワーク事業、学校図書館への図書集配サービス等の実施は、いずれも県内初の試み。平成16年、国内初のアメリカ情報コーナーを設置。平成20年より月に一度、米国総領事館の協力のもと、領事による英語の絵本読み聞かせを行っている。
◇都留文科大学児童文化研究部
部内に児童文学班があり、子どもたちに本や昔話、童話の良さを伝えることを理念に活動している。月に1回、都留市民所有の1坪図書館で読み聞かせを中心とした「たんぽぽぶんこ」という子ども会活動を行っている。また、部単位で行う公演活動では大型紙芝居、大型絵本、パネルシアターなどを手作りし、読み聞かせをしている。
◇長崎おはなしの会
月例会、講習会のほかに、依頼を受けて①学校でのおはなし会、②公立図書館での図書ボランティア養成講座、③幼稚園教員、学校図書主任教諭向け研修会、④子ども会、児童館などでのおはなし会、⑤幼稚園、保育園、小学校、中学校の保護者会などでおはなしと読書のすすめ、⑥大学の公開講座――などを実施している。学校でのおはなし会では、対馬など離島訪問も行っている。

本・雑誌だって鮮度で勝負/築地育ちの江戸っ子本屋さん/東京築地・弘尚堂書店

地下鉄日比谷線「築地」駅から地上に出ると、かすかに海と魚の匂いがした。晴海通りを渡れば目の前が魚市場という場所で昭和27年から書店を営む弘尚堂書店の大長(おおおさ)清高社長は築地生れの築地育ち。波除(なみよけ)神社の氏子で、地元町会や消防団でも活躍している大長社長に築地と本屋の話を聞いた。
【都民の台所、魚河岸とともに】
昭和19年生まれの大長社長は築地小学校、文海中学校と地元の学校から都立竹の台高校に進み、大学は東京理科大で工業化学を専攻した。11歳の時、父親を亡くしたために、母親が従業員を使って店をやっていたが、大学1年の時に今度は母親が倒れ、店の切り盛りは姉2人が引き受けた。大学を卒業したら藍染の仕事をやりたかったのだが、卒業すれば店を継ぐのは自然の成り行きだった。
父親の五百次さんは現在の書店のある場所で戦前、戦後と、炭屋を営んでいた。当時の築地は縦横に堀割が流れ、舟を利用して料理屋などに炭を運んだ。かなり手広く商売をしていたようだ。昭和26年、火事で焼け出されて、店を新しくする際に書店業に転じた。
築地の魚市場は、関東大震災で日本橋の魚河岸が被災したのを受けて昭和10年、東京都中央卸売市場として開設される。戦中・戦後は経済統制で自由な商売ができなかったが、昭和25年頃から市場の動きも活発化、1千万都民の台所としての機能を果たしていくようになった。
築地市場は場内、場外で競りを営む仲買人や仕入れの小売商を含めて1日に3万人が出入りする。河岸のセリが始まるのは早朝でも、一晩中動いているのが卸売市場だ。客は河岸に仕入れにきたついでに、本・雑誌を求めていく。
昭和43年、理科大を卒業した大長さんが書店を継いだ頃は、客の大半は魚河岸の人間で、「まあ、雑誌屋だったね」と大長さんは言う。築地から仕入れ先の神田村まではバイクだと20分足らず。毎日、神田に雑誌を仕入れに通った。『平凡』『明星』は定価160円で、全国の大学が学園紛争で荒れた時代だ。
その後、神田の取次、弘正堂が雑誌を配達してくれるようになったが、弘正堂が配達をやめ、トーハン取引に変わったのを機に勧められて東京組合に入った。「中央支部では新しい方から2、3番目の組合員になる。組合に入った理由かい?やはりね、一人の力は小さいということかな」
都営大江戸線が開通して、「築地市場前」という駅ができてから、客は減ったが、それでも大判ムックの『築地まるかじり』(毎日新聞社)や『おいしい築地』(朝日新聞社)は3ケタ近く売れる。『魚のさばきかた』(NHK出版)などという入門書も観光客が買っていく。
魚市場のプロが買っていく本を聞くと、『食材図鑑』(小学館)は百部以上売って表彰されたし、『食材百科』(平凡社)、『旬の食材』(講談社)も春夏秋冬の各冊ごとによく売れたようだ。昨年始まった「魚食スペシャリスト検定」のテキストが売れるのも築地ならではだろう。コミックでは『魚河岸3代目』。巻数をまとめ買いしていく客もいるので、欠本がないように注意している。
変わったところでは月刊誌『電気技術』の定期購読がある。銀座は目と鼻の先だが、女性ファッション誌は全然売れない。
【仕入れは取次へ毎日バイクで】
大長さんは今でも毎日、神田村、トーハンに仕入れに行く。3時半に築地をスタートして神田村に4時前後。トーハンの店売に顔を出すのは4時半になる。店売は5時でしまるから、たいてい最後の客。本や雑誌も鮮度が命には変わりがない。だから出版社も講談社、小学館PS、文春、日経、マガジンハウス、八重洲出版と店売のある社は集品に出かける。にもかかわらず、「取次倉庫から出荷します」と、店売をしない出版社が増えているのは残念だと思う。
店の働き手は大長さんのほかに奥さんの紀子さんと、姉の作子さんのお二人。「おれも64歳だから、身体をこわしたら商売はむずかしい。あと、10年ぐらいかな」と言いながらも、「本屋は儲からないが、家族でやる限り、払うものは払える。お客さんも来てくれるし、再販制で定価販売があるから書店はつぶれないと思う。毎日新しい本、雑誌に触れるのは楽しいしね」と、ポジティブな考え方をする。
築地で生れ育っただけに築地6丁目町会、消防団と地元の世話役もこなす。3月にあった築地本願寺の350年祭では350人が参加して境内で海苔巻きを作るイベントを行った。6月第2日曜には築地の氏神、波除神社の例大祭がある。
明暦の大火のあと、このあたり一帯を埋め立てる工事が難航した時、海に漂うご神体を祀ったのが神社の由来。災難除け、商売繁盛の霊験あらたかな稲荷神社だ。大長さんは子どもの頃、2週間続く夏祭りに辰巳芸者や、タイ、ヒラメ、クジラを形どった張り子が練り歩いていたことを記憶している。築地に育ったお祭り好きと、商売人のDNAが書店を営む大長さんの中に息づいている。
(田中徹編集長)

43万語収録の「コトバンク」/朝日新聞など5社が用語サイト

朝日新聞社、講談社、小学館、朝日新聞出版、ECナビの5社は、約43万語を収録する用語解説サイト「Kotobank」(コトバンク)を4月23日にオープンした。URLはhttp://kotobank.jp/
「コトバンク」は、朝日新聞社が事業主体として全体をとりまとめ、講談社、小学館、朝日新聞出版と合わせてコンテンツを提供。ECナビがサービスの開発・運営を担当する。収録するのは、朝日新聞社から「時事キーワード」など38辞書、朝日新聞出版が「知恵蔵2009」など4辞書、講談社が「デジタル版日本人名大辞典+Plus」、小学館が「デジタル大辞泉」で、合計44辞書から構築された約43万語のデータを無料で検索・閲覧できる。また、用語解説だけでなく、関連するキーワードやニュース、ウェブ検索結果などの関連情報も一覧で確認可能。検索連動型キーワード広告による収益を主軸とし、2009年度は売上1億円を目指す。
4月22日に出版クラブで開かれた記者説明会で、朝日新聞社デジタルメディア本部長の大西弘美氏は、「コトバンクは、新聞・出版が今までの事業で培ってきた、確かな著者・編者・発行元による用語解説のみを掲載することで、情報の信頼性とクオリティ、検索性の高いナンバーワンの無料情報サイトを目指す。インターネット用語解説のオープンな共通プラットフォームを構築したことで、さらに情報の拡大を図り、3年後には200万語の収録を目標とする。将来的にはキーワード広告以外のビジネスモデルも考えていきたい」と述べた。

責任販売5百億円目標に/販売コン総合1位は岡山/トーハン会代表者総会

平成21年度全国トーハン会代表者総会が4月24日、東京・目白の椿山荘で開かれ、各地のトーハン会と青年部会あわせて53名と、出版社198名など総勢288名が出席した。
第一部施策説明会では、冒頭で山﨑厚男社長が21年度の基本方針を説明。まず08年のバリューアップ販売コンクールについて「目標25億円に対し、実績は23億8100万円で達成率は95・2%だったが、過去10年のコンクールで最も高い金額だった。昨年は北関東と東京の2つのトーハン会が発足し、新たに74会員が登録となり4月現在で親会1629会員、青年部233会員、合計1862会員となった」と報告し、増売の成果に感謝を述べた。
また平成21年度の基本方針について、①エリア戦略の強化②責任販売の拡大③書店複合化の推進――を掲げ、「全国を3つに分割して3営業本部を置き、それぞれのエリアに適合した施策を立案・実行して取引書店と共に成果を追求する。責任販売の平成20年度売上げは220億円を超す規模にまで成長した。21年度はこれを500億円まで拡大したい。出版業界の無駄をなくし、書店のマージン率アップを図るために絶対に行なわなければならない最重要課題だ。書店の複合化は、出版物と相乗効果を生むあらゆる商材サービスを導入していこうというもの。新商材の開発に積極的に取り組む」と説明した。
このほか再販問題について、ネット書店の割引販売やポイントサービスの値引きなど業界内部の動向に懸念を表明。「値引きが読者還元の唯一の方法だという発想が出版業界を危うくしている。e―honブックショップメンバーズは、ポイント還元で値引きではなく景品を提供する方法を採用している。トーハンは再販制度を護持しつつ、書店が利益を手にすることができる施策を提案し、健全な市場の維持を図っていきたい」と述べた。
続いて風間賢一郎副社長が責任販売について、近藤敏貴常務が書店店頭支援施策について詳しく説明。そのあと、出版文化産業振興財団・肥田美代子理事長が特別講演「2010年、国民読書年を目指して」を行なった。
第二部コンクール表彰式では、各地トーハン会を代表して京都トーハン会・横谷隆幸代表世話人が「施策説明を聞き、大幅な組織変更に驚き、かつ期待を抱いている。京都には独特の文化・風土があり、それを踏まえた営業提案を期待する。責任販売制の拡大は書店にとって大変ありがたいこと。会を挙げて取り組んでいきたい」とあいさつ。
続いてバリューアップ販売コンクールの表彰が行なわれ、総合第1位を獲得した岡山トーハン会・柿木純倫会長は「2年続けて1位になり会員一同喜んでいる。今年度は販売力のさらなる強化と販売効率アップの2本立てで、会の活動を進めていきたい」と受賞スピーチを行なった。
【08バリューアップ販売コンクール表彰】
〔前期〕
①山陰、②福岡、③中部、④岡山、⑤長野、⑥京都、⑦兵庫、⑧四国
〔後期〕
①山陰、②四国、③京都、④岡山、⑤兵庫、⑥福島、⑦大分、⑧埼玉、⑨岩手、⑩長野、⑪福岡、⑫熊本、⑬和歌山
〔総合〕
①岡山、②四国、③鹿児島、④山陰、⑤兵庫、⑥京都、⑦中部
特別賞=北関東
〔貢献賞〕
①中部、②京都、③福岡

参考図書

【「子どもの本」の別冊ガイド刊行/児童出協】
日本児童図書出版協会は月刊情報誌「こどもの本」別冊として、「日本児童図書出版協会がすすめる小学生・中学生のための読書ブックガイド」及び「同乳幼児・小学生のための絵本ガイド」の2009年版を刊行した。
「こどもの本」2008年1~12月号に掲載した新刊の中から学校や家庭での読書活動に適した本を厳選し、グレード別に紹介。また、冒頭では会員出版社が薦めるロングセラーを掲載する。

本屋のうちそと

生来の貧乏性に出来ているのだろう。日曜日でも通常通り8時前には店に入り、店周りの掃除、タバコ自販機の拭き掃除、店内の床掃除。商品の入荷がない分気持ちにゆとりがある。子供の日に向けて町会から注文を受けた500円の図書カードを100セット包装で昼過ぎまで要した。図書カード販売の利益が少なくても、この図書カードで子供達が雑誌やコミックを買いに来ると思えば、期待を持って作業に取り組める。
定額給付金については評論家やマスコミからは経済効果が少ないと評判が良くないようだが、わが町の産業である町工場の休業・閉鎖・倒産が相次ぐ中、一人1万2000円の現金収入は干天の慈雨だ。当市では5月に受付が開始されることから、前倒しの消費が発生すれば本屋にとっても幾ばくかの売上増が見込めるかも知れない。
休日の午後のまどろみの中で、缶コーヒーをすすりながら店番を続けるが、本の売上よりタバコの顧客のほうが断然多い。昨年始まったタスポ効果と言うもの。タバコの自動販売機の販売額が約6分の1に減少、手売り分の増加を勘案しても、かつての7割程度の売上だ。本はご他聞に漏れず、最悪の売上。何に期待をして店を継続するのか。過去を懐かしんでも現実は変化しない。現実は将来の予兆だとすると、店の市場環境に適応して変化していかなければ継続はできない。
わが町会には約100人の小中学生以下の子供がいるのだから、この数字掛ける定額給付金と子育て応援特別手当分の家計収入が増える。
家計支出からどれだけ子供向けコミックと雑誌の売上を伸ばすのか、5月に向けて頑張ろう。
(井蛙堂)