全国書店新聞
             

平成15年11月21日号

書店の信頼を支えに/「愛知書店新聞」が創刊100号

昭和62年に創刊、この10月発行で100号を迎えた愛知県書店商業組合の広報紙「愛知書店新聞」の100号記念感謝会が13日午後5時から名古屋市の東京第一ホテル錦で開かれた。
感謝会は大原鉦三氏(押切堂書店)の司会で進行。愛知組合高須理事長が「足かけ17年で100号。これを支えたのは出版社、販売会社、業界関係者、書店の皆さん。新聞を通じて皆さんの意見をいただき、組合活動に生かしていきたい。あわせて、出版業界の行き方、書店像を探っていく。今後も長く続けていきたい」とお礼の言葉。
続いて伊藤武司広報委員長(丸十伊藤書店)は「創刊当時は、まだバブルの絶頂で、株やママさんの記事も載った。最近は暗い話題が多いが、強烈な論調の記事もある。今後もわれわれ書店のための新聞という方針で200号に踏み出したい」とあいさつした。
祝辞を述べた日書連今西英雄副会長は「日書連47都道府県組合で、単発に機関紙を発行しても長く続かない例が多い。ここまで継続できたことは立派。これからは、ローカルがキーワード。各県組合が元気になってこそ日書連がある。リーダーとして愛知組合に期待したい」と述べた。
三省堂木村名古屋支社長の祝辞に続き、昭和62年当時、鬼頭理事長時代に副理事長として愛知書店新聞の創刊を指導した星野昌平相談役が乾杯の発声。「もう時効だが、編集会議で今度はどこの取次と対決しようか相談したこともある」と、当時のエピソードを紹介し、全員で乾杯した。

書店2氏が黄綬褒章

11月3日付で全国教科書供給協会から2氏が黄綬褒章を受けた。
▽北海道・宮田榮一(宮田書店)、▽神奈川県・前田陽康(前田書店)

京都組合が今年も本屋さんへ行こう

京都府書店商業組合は
今年も主婦の友社と共催で「あなたの街の本屋さんへ行こう」キャンペーンを実施している。
キャンペーン・ポスターを掲示している参加書店で応募用紙をもらい、応募箱に入れるだけで特賞「液晶テレビ」3台、BOOKS賞「図書券3千円」50本、「図書券千円」2百本、出版社賞などが当たる。応募期間は12月31日まで、抽選日は2月上旬。

主要出版社に働きかけ/ポイントカードで各県に再要請/日書連

日書連は11月14日、萬田会長、岡嶋再販研究委員長の連名で各都道府県書店組合に「ポイント付き販売への対応についてのお願い」を送付した。日書連は9月理事会で「再販違反に対しては契約に基づく正しい対応を出版社に求めたい」として主要33社への要請行動を決めており、改めて各県組合の働きかけを呼びかけた。
書店のポイントカード付き販売に対しては、すでに講談社が10月末、5%の高額ポイントを付けている書店ならびに取引取次店に是正を求める文書を出しており、これに続く各出版社の態度決定が求められるところ。
講談社浜田副社長は11月10日行われた販売会社企画説明会の席上、「ポイントカードの対策は先般、5%実施店と取次に文書で善処方をお願いした。取次の協力もなければ事態は改善しない。率が1、2%ならいいという考えは持っていない。値引きに変わりはない。順番として高いところからのアプローチをしている。ただ、契約は契約だが、社会に強硬措置が受け入れられるか頭を悩ませている」と、講談社の考え方を説明。
一方、小学館相賀社長は14日に開かれた東京組合研修会の席で「常識的に5%のポイント付与は普通でも、電鉄系書店が各駅で1%をつければ周辺書店にはボディブロー。神奈川組合で実施している読書ノートのように値引きにつながらないポイントを考えてはどうか」と提案した。
日書連が各県組合に送付した文書要旨は以下の通り。
「ポイント付き販売への対応についてのお願い」
ご高承の通り、日書連9月定例理事会は、ヤマダ電機など、再販出版物の販売に「ポイント」をつけ、値引き販売を実施している問題に対し、その実施は再販契約上、違反行為であり、主要出版社33社に再販契約に基づく措置を講ずるよう要請行動をすることを確認いたしました。さらに10月、徳島の移動理事会では、年内解決をめざし、出版社及び取次が速やかに違反に対する必要な措置を講ずるよう決議をいたしました。
その後の経過の中で、大手有力出版社は契約違反店への措置について、取引取次店へ要請を行ない、これを受けて各取次店は、今月中に違反店に文書で通知を出すことになりました。
出版業界三者間の再販契約書は、多様な出版物の円滑な取引を確保して、一般消費者の利益を保護するために、独占禁止法の適用除外で、合法な契約として遵守されております。これを
機に、同様の契約を締結している多くの出版社の理解をいただき、速やかな措置をお願いすることは当然の行為と判断されます。
つきましては、貴組合におかれましては再販契約書の主旨の基づき、再販契約の正しい履行と違反に対する措置を求める要請行動をお願い申し上げる次第であります。
ご多忙の折柄、誠に恐縮に存じますが、何卒、私どもの意とするところをお汲みとりいただき、ご協力を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
尚、要請された結果につきましては、後日、委員会宛にご報告下さるようお願いいたします。

井狩春男の必殺まるす固め

☆最近読んだ本の中に、ものを作るのと売るとではどっちが重要か、というテーマがあって、著者は、売ることであると断言していた。いくらイイものを作ったって、売れなければ意味がないという理由だ。
本や雑誌は、文化ではあるが、作っただけではそうとはいえない。定価がついている出版物は、読者が買わなければ文化と結びつかない。ほとんど売れなくて、倉庫に眠っている出版物は、文化などという光り輝くものではなく、ただの紙のかたまりでしかない。
本や雑誌は、読者に渡るまでは商品である。商品だから、売らなければならない。売ってくださるのは、ほとんどが書店。書店の売上が、出版文化を支えている(左右する)のである。書店が無ければ、出版は成立しない。
書店が超元気であって欲しい!出版社を励まし、リードしていただきたい!つねづねそう思っていたところに、書店人だけでなく、編集者、営業の方々が読んで勉強になる本が出た。書店時代に何店舗もオープンさせ、成功させたブックストア・コンサルタントの青田恵一さんが書かれた『よみがえれ書店――V字回復へのヒント』(発行=青田コーポレーション出版部発売=八潮出版社・℡03―3262―7012)である。
書店の売上が上がらないのは(順調な書店はゴメンなさい)、「すべての『ノウハウ』というソフトの欠如、あるいは軽視」からくるとし、そのノウハウを公開してしまっている。
「売上げ下降の要因と緊急対策」「本格対策戦略的マーケティング」「本格対策戦略的マネジメント編」などの章があって、書店再生は可能である、としめくくる。
書店の売上はなぜ落ちてきたのか。外部要因としては、「消費不況、読書人口の減少、競合の激化、隣接業種への読者流出、携帯電話など嗜好の多様化」など。売上ダウンの内部要因(つまり、店の内部の原因)としては、「リストラによる人材流出」「量的マイナス――サービス低下」「質的マイナス――基本の乱れノウハウの枯渇商品レイアウトの不適正化」などをあげている。では、どうしたらよいか。それは、じっくり本書をお読みいただきたい。
ドストエフスキーを知らない書店員がいると聞いた。その人にもオススメしたい。

藤原理事長4期目に/永年勤続従業員32名を表彰/宮城総会

宮城県書店商業組合(藤原直理事長)は11月9日午後2時より作並温泉・岩松旅館で平成15年度通常総会を開き組合員208名(委任状含む)が出席した。
あいさつした藤原理事長は、組合員の脱退・減少が相次ぐ現状について、日書連の存続に関わる大事な問題で、組織強化対策は最重要課題であり急務であると述べたほか、ポイントカード問題への積極的取組み、消費税の総額表示問題について詳細に報告した。
任期満了に伴う役員改選では、選考委員10名による指名推薦の結果、理事35名、監事2名を選出。4期目となる藤原理事長をはじめ各担当理事の留任を決定した。なお昭和58年以来20年間会計理事を務められた梅津理事が辞任され、後任に米竹隆理事を選出した。
提出議案は全て満場一致で承認可決。引き続き従業員永年勤続表彰式を行い、勤続25年の柴修氏(ブックス・ミヤギ)をはじめ32名を表彰。理事長より表彰状と記念品が手渡された。
審議終了後の一般質問では日本図書普及の営業担当者より、東北6県での図書カードへの移行について説明があり、白熱した討議が行われた。
第2部の懇親会では、版元・取次・運送会社と参加組合員が終始盛り上がりを見せ、和やかなうちに閉会した。(菅野喜広報委員)
〈永年勤続表彰者〉
▽勤続30年=大江勝秋(宝文館)▽同25年=伊藤良則、白石一憲(アイエ書店)小畑秀人(金港堂)古内克子(宝文堂)柴修(ブックス・ミヤギ)▽同20年=佐藤人文(アイエ書店)小畑珠美、長瀬清美(金港堂)千葉順也(宝文堂)▽同15年=田中茂男、砂金直樹(アイエ書店)佐藤陽子、桜井由美(金港堂)深田美紀(宝文堂)▽同10年=松崎吉隆(アイエ書店)武上真理、小松慶子(金港堂)相澤秀紀(宝文堂)松浦奈緒、春日優、佐藤直也(ブックス・ミヤギ)高橋みよし、我妻ゆう子(黒沼書店)木村愛子(文泉堂本店)工藤貴光、佐々木浩美(朝野堂)▽同5年=相澤真由美(宝文堂)田中真弓(ブックス・ミヤギ)丹野よしみ(黒沼書店)千葉正子、佐藤真理子(ムーン24)

新年会は1月15日横浜中華街で開催/神奈川理事会

神奈川県書店商業組会(池本武夫理事長)の11月定例理事会が5日、トーハン横浜支店会議室で行われた。主な議題は次の通り。
1、組合主催の新年会を1月15日、横浜中華街の華正楼本店で開催する。理事会の後、組合書店、出版社を交え夕食会を行う。組合員全員に案内を出す予定。
2、県主催の社会環境健全化推進キャンペーンに参加する。
3、書店店頭でのデジタル万引き防止にポスターを配布する。
4、増売企画として、偕成社『花よりも小さく』(星野富弘作)を取り上げる。来年1月末まで1万冊を目標に、1冊につき本体価格の2%の報奨を行う。
5、県下でポイントカード実施店が2、3ある模様で調査することにした。
6、神奈川図書が千葉県館山市のマンションに保養所を持っており、管財人から譲渡の話があったが、維持費・修理費がかかるため見送ることにした。
(平井弘一広報委員)

「大阪府読書推進会」の設立目指す/大阪理事会

大阪府書店商業組合(今西英雄理事長)は11月8日、組合会議室で定例理事会を開いた。
まず正副理事長より「大阪府読書推進会」設立の提案があった。読書を通して青少年の環境改善を図ろうというもので、大阪府、大阪市、各教育委員会、図書館、新聞社等に参加を働きかける。具体的には神奈川県組合の「県読書推進会」を参考に読書ノート運動や課題図書感想文コンクールを取り入れ、活動を通して業界の活性化を図る。以上について満場の同意を得たため特別チームを編成することを第一歩とした。その他の審議事項は次の通り。
〔出版倫理委員会〕
大阪府に申し入れていた会談が実現の運びとなった。11月25日に大阪府から高杉副知事が出席、組合は今西理事長、金田・並河・面屋各副理事長、虎谷出版倫理委員長、坂口広報委員長が出席する予定。万引き問題を中心に読書推進、青少年の健全育成等、幅広く意見交換する。
〔出店対策委員会〕
阪急ブックファースト大阪駅前店が530坪に増床し2004年4月オープン予定。旭屋書店が大阪駅周辺に出店する予定と報告された。2004年秋に予定されている三省堂大阪店のワンフロア1千坪と合わせて出店戦争は必至。
〔経営活性化委員会〕
雑誌予約獲得キャンペーンは175店が参加し、11月1日より予約獲得コンクールの火ぶたが切られた。期間は12月末日まで。なお参加率コンクールは南西支部(西成区・住吉区・住之江区)が1位を獲得した。
〔IT委員会〕
大阪を中心に展開している協業組織、パルネットチェーンのIT責任者を招いて講習会を開催する。これは同チェーン店でもある組合員を介して講演を依頼したところ快諾を得たもの。来年2月開催を予定している。(田中順二広報委員)

パソコン導入で組合の情報化推進/大分総会

大分県書店商業組合(大隈劭理事長)は10月29日正午、大分市の大分図書で第19期通常総会を開催した。
総会は組合員51名(委任状含む)が出席。樋口文雄副理事長の司会で進行し、第19期事業報告、収支決算と監査報告、第20期収支予算案などを審議。大隈理事長は「日書連の補助で組合にノートパソコンを購入、ホームページ作成と学校図書館販売促進に役立てたい。今年度は電子辞書が辞典販売で取り上げられ、年末発売される電子ブックも書店経営を左右する関心事となる。前向きに取り組もう。NHK正月ドラマとして、大分の戦国武将大友宗麟(原作=遠藤周作『王の挽歌』)が放映される。NHKより『のぼり』が用意されているので販売促進に役立てよう」と提言した。
本年は役員改選で理事全員を留任としたが、筑紫稔監事が退任したため、坂直繁氏(三光堂書店)を監事に選任し了承された。
総会終了後、県中央会・山本隆典課長から、平成16年度に施行の消費税総額表示について説明があった。続いて福岡組合・ナノビットの高崎洋至氏より、日書連マークを利用した学校図書館共有化モデル事業の動きについて講演が行われた。(金光直明広報委員)

雑誌、前年比で92%/03年上期ABCレポート

日本ABC協会は、このほど2003年1月~6月期の雑誌発行社レポートを発表した。今回掲載の雑誌数は『GetNavi』『FYTTE』『おはよう奥さん』(学研)『おとなの週末』『ViVi』(講談社)の5誌を加え、3誌減った結果、48社132誌。前年同期と比較した指数は週刊誌91・41、月刊誌92・25、合計91・94となった。週刊誌、月刊誌とも落ち込みが目立ち、雑誌低迷が浮き彫りとなった。主要50誌をまとめたのが別表。
総合週刊誌では、『サンデー毎日』が前期比プラスとなったほかは、軒並み前期割れとなった。前期トップに立った『週刊現代』は『週刊ポスト』に抜かれた。しかし『週刊ポスト』2万5千部減、『週刊現代』3万7千部減と、両誌ともに部数を減らしている。落ち込みが目立ったのは『週刊文春』と『週刊新潮』で、それぞれ6万1千部、5万1千部減らした。
総合月刊・隔月刊誌では『Tarzan』が1万2千部増で10万部の大台に乗せた。『BIGtomorrow』『日経エンタテイメント!』も前期比プラスとなった。女性週刊誌は『女性自身』3万6千部減をはじめ各誌とも減少となった。
ファッション・カルチャー誌では『CanCam』が2万5千部増、『CLASSY』が8千部増と好調だったが、あとは軒並み低調。『non・no』は3千部減で44万6千部となり、ピーク時(96年、97万部)の半分以下の部数に。『ViVi』は6万4千部減、『ESSE』は3万8千部減となった。角川書店の地域情報誌は『関西ウォーカー』が2万6千部減となったのをはじめ、すべて減少した。

講談社森局長がコミック販売テーマに講演/栗田出版販売セミナー

書店経営研究会(亀川正猷会長)主催の第24回出版販売実務セミナー(栗田出版販売ほか協賛)が11月13日、東京・春日の文京シビックホールで開かれた。
冒頭、亀川会長が「24回の開催を通じて一貫したテーマは、いかにして生き残るかということ」とあいさつ。続いて第1講で北見式賃金研究所の北見昌朗所長が「書店業界におけるパートタイマー100%活用術」をテーマに講演した。北見氏は「パートの勤続年数は概ね2年未満だが、給料以上の働きをするようになるのは3年目から。3年未満でやめられたら人件費のロスになる。仕事が出来る人に残ってもらえるシステムを作ることが大きな課題」と述べ、パート戦力化の重要性を強調した。
そしてパート戦力化には店長が「経営者マインドをもつ」ことが必要と指摘し、店長が経営者マインドをもつようにするには賞与査定を「基本給×月数」の年功序列ではなく、「売上予算達成」「人件費」「部下育成」などの項目別に評価し、「何をやったらいくらもらえるかを明確化すべき」と述べた。さらに、非正社員の雇用契約書、労働条件等について具体的に説明を行った。
第2講では講談社コミック販売局の森武文局長が「コミック販売の現状と展望」をテーマに講演。まず森氏はコミック販売の現況について「コミック誌は7年連続マイナス成長だが、コミックスは3年連続プラス。03年上半期もこの傾向が続いている」と説明し、コミックス伸長の原因として「廉価版コミックス」「リメイクコミックス」「メガヒット作品」「付加価値コミックス」をあげた。
そして新古書店、マンガ喫茶、レンタルコミックの台頭や新刊書店の転廃業、万引問題などコミックをめぐる環境変化に言及し、こうした変化に対応するために書店は「売れ筋、伸び盛り商品の充実」「お客様とのコミュニケーション」「POP等による情報発信」などを図るべきと指摘した。また、貸与権の獲得や万引防止対策に業界あげて取り組みたいとした。
最後に「コミックは店の規模の大小に関係なく、手をかけるほど伸ばすことができる。日本文化を代表するコンテンツで、今後も市場が拡大することは間違いない」との展望を示した。

高品質・高効率輸送実現を/第25回出版物関係輸送懇談会

東京都トラック協会の出版・印刷・製本・取次専門部会は11月10日午後3時半から大久保のホテル海洋で第25回出版物関係輸送懇談会を開き、トラック協会17名、版元18名、印刷4名、製本2名、取次5名、日書連から流通改善委員会の梅木秀孝委員が出席した。今回は「出版物輸送の現況について」をテーマに、高品質輸送と安全確保の向上への取り組みなどを話し合った。
懇談会の席上、荷主側を代表して雑協物流委員会の浅井淳委員長があいさつ。「出版物流が様々な問題を抱えながらも円滑に行われてきたのは、運送業界の四半世紀にわたる努力の賜物。出版業界は今年も前年クリアは難しい状況。売上が落ちれば業量も減り、運送業界は効率化・合理化がますます必要となる。9月からの大型トラックの速度規制については、取次、運送会社の努力で大きなトラブルは起きていないが、実際は綱渡りの状況だと思う」と述べた。
続いて瀧沢賢司部会長が出版物輸送の現況について報告。「出版不況の長期化で出荷業量は減少しているが、出版物の配達先は納品時間・条件などによってコース組されており、1店舗あたりの量が減少したからといって経費を削減することはできない。そのため収入減少を生じても経費は現状維持の結果となっている」と問題点を指摘。これに車輌買い替え費用負担が加わり、経営が圧迫され続けていると訴えた。そして、こうした問題を解決するには「ムダ・ムリを省いた高品質・高効率輸送の実現が不可欠」として、出荷業量の平準化を求めた。また、出版関連業界あげての拡販運動推進を提起した。
日書連流通改善委員会の梅木委員は「本がまったく売れず困っている。書店はぬるま湯につかっていた。努力不足を反省している。換金目的の万引、デジタル万引も問題だ。特に大書店やコンビニは店舗管理が悪く、立ち読みさせ放題。毅然とした対応が必要ではないか。当店では『アルバイト・ニュース』をビニールパック化したら売上が倍になった。中身を見せないようにしたほうが売れるのでは」と現状説明及び問題提起を行った。
取協輸送研究委員会の川島弘文委員は、9月から大型貨物自動車にスピードリミッター装着が義務付けられたことの輸送への影響について「現状は問題ないが、今後装着車の増加により配送時間が遅くなることが予想される。出版社には校了、搬入の遅延がないようお願いしたい」と話した。瀧沢部会長も「ボディーブローのようにじわじわと効いてくる問題」と注意を喚起した。

「クウネル」創刊号実売率7割超える

マガジンハウスは11月17日午後2時から東銀座の同社に販売会社と首都圏の協力書店を招いてクウネル感謝会・年末年始企画説明会を行った。
感謝会では同社吉田高販売担当取締役が「9月20日の創刊号発売日は大雨で売れ行きを心配したが、POSデータでもよい数字が出ている。この10年に出した雑誌の中では、よいスタート。今月20日の2号もよろしく」と、あいさつした。また、9月末締めの同社前期決算について「雑誌は100に届かなかったが、書籍はほとんど100。『ダイエット慎吾』が54万部、『べらべらブック』もよく、雑誌、書籍、ムックの合計では2年連続で前年をクリアした」と報告した。
久我販売局長は同誌の販売状況について「9千部重版して、現状で7割を超える実売率。30日を過ぎてもゆるやかなカーブで売れており、次号も並列販売を。売りたいと声をあげてくれる書店には100%応えたい」と述べた。
続いて稲垣販売企画部長は「ワゴン販売や多面展開で長期に展示いただいた書店が多かったのが特徴」と述べて、積極販売を行った書店の実例をプロジェクターで紹介。「千冊入荷して、全部出した。アルバイトの評判がよかった」(ブックガーデンデラ上野店)、「全店でフェアを行った。昔、オリーブ少女だった20、30代が読者」(青山ブックセンタールミネ店)、「だまされたと思って百冊積んで、69冊売れた。とにかく手にとってもらうことが重要」(西荻・今野書店)などの取り組みが報告された。さらに、太洋社の仕入れから営業まで女性社員11名で組織した「チーム・クウネル」の創刊誌プロジェクト報告では、「クウネルの着ぐるみを着て店頭販売したい」と、拡販の決意表明が行われた。
クウネル販売優秀店
①リブロ池袋本店、②青山BCルミネ店、③同・新宿店、④ブックガーデン・デラ上野店、⑤ブックファースト渋谷店、⑥教文館、⑦弘栄堂吉祥寺店、⑧三省堂有楽町店、⑨八重洲BC本店、⑩オリオン書房ノルテ店

3月に『旬の食材』/講談社2004年上期新企画

講談社は11月10日、本社に販売会社を招き、2004年上期新企画発表会を行った。
発表会で浜田副社長は11月末締めの15年度同社決算について「年度初めに売上げは伸びにくいと判断し、売上率の改善で利益確保を目指したものの、見通しとしては大変厳しい。『さらば外務省』のような話題作もあったが、雑誌もコミックも本誌がズルズル後退した。来期は配本調整などで売上率の向上を図りたい。来春の企画について、パートワークは店頭で目立つよう工夫して読者にPRしたい。『旬の食材』など大量販売の可能性もある」と述べた。
雑誌販売局小此木局長、書籍販売局岩崎局長から行われた主要企画の説明は以下の通り。
◇『週刊20世紀シネマ館』
講談社の分冊百科第12弾。20世紀の洋画を国内封切年を基に、思い出の名画として1年1冊を基本に編年構成。全50冊。1月15日創刊。毎週木曜発売。創刊号は1954年(ローマの休日)、第2号1952年(風とともに去りぬ)。通常号定価560円、創刊号サービス定価350円。全巻予約者に特製バインダー1個とオリジナルサントラCD、復刻版名画チラシセットをプレゼント。
◇『週刊花百科』
全80巻で約千種を網羅。花で楽しむ暮らしを提案する最新花百科。2月12日創刊、毎週木曜発売。創刊号の特集はバラ。通常号定価560円、創刊号サービス定価350円。全80巻予約者に特製バインダー1個と特製ガーデニング・エプロン進呈。
◇『旬の食材』(全7巻)
春夏秋冬を彩る旬の食材1200余種を産地取材。第1回配本は『春の魚』(5万部目標)『春・夏の野菜』(3万部目標)の2点同時発売。各巻予価2500円。
◇『日本の家』(全4巻)
近畿、中部、北海道・東北・関東、中国・四国・九州・沖縄の地域別に4巻編成。日本各地の古い町並みや住まいを紹介する。各巻予価3900円。第1回配本「近畿編」は3月20日刊行予定。目標3万部。

創業70周年で70円報奨/参加申し込み制で実施/三笠書房

昭和8年の創業から数えて70周年を迎えた三笠書房は、書店に対する感謝の気持として「単行本1冊70円報奨の大謝恩フェア」を実施する。
同フェアの出品図書は『武士道』(新渡戸稲造/奈良本辰也)、『男のH、女のH』(櫻井秀勲)、『ベストパートナーになるために』(ジョン・グレイ)など売れ行き良好の30点。Aセット=30点各5冊、セット予価18万7500円、Bセット=20点各5冊、12万5000円、Cセット=10点各3冊、3万7500円。小型店向けに6点各3冊、2万2500円、4点各3冊1万5000円のセットも準備している。いずれも4カ月長期委託。1月7日初荷で書店到着予定。
参加申込制で、12月6日までに同社にFAXで申し込むと、来年1月1日から6月30日までの期間中、スリップ1枚70円の報奨金が付く。フェアのための特別スリップは製作しないため、選定図書についてはセット送品以外の在庫、補充分も報奨金が付く。また、期間中に刊行する新刊4、5点にも同様の報奨金が付く。集計はPOS店についてはPOSデータを集計、POS店以外はスリップを集計し、来年7月15日までに同社へ送付する。
11日に行われた記者発表で三笠書房押鐘社長は「出品図書の定価は1200円から1400円平均なので、5%以上の報奨になる。普段置いていない書店でも、並べることで売れ筋を見つけてほしい。補充に期待している。最低5千セットは売りたい」と説明した。

柴田賞に藤堂氏/集英社4賞

集英社主催の第16回柴田錬三郎賞、第27回すばる文学賞、第16回小説すばる新人賞、第1回開高健ノンフィクション賞の贈賞式と祝賀パーティーが11月17日午後5時より東京・日比谷の帝国ホテルで開かれた。
今回の受賞作は、柴田錬三郎賞が藤堂志津子氏『秋の猫』、すばる文学賞が金原ひとみ氏『蛇にピアス』、千頭ひなた氏『ダンボールボートで海岸』、小説すばる新人賞が山本幸久氏『アカコとヒトミと』、開高健ノンフィクション賞が平岡泰博氏『虎山へ』、同・優秀賞が姜誠氏『越境人たち六月の祭り』、駒村吉重氏『ダッカへ帰る日―故郷を見失ったベンガル人』。
集英社の谷山尚義社長から各賞がおくられたあと、柴田錬三郎賞の選考委員・田辺聖子氏は「ペットと人間との関係を新しい視点で書いており、瞠目した。華があるが、上っ面でなく真実に迫っている。熟練した実力ある作家」と選評。すばる文学賞は藤沢周氏、小説すばる新人賞は阿刀田高氏、開高健賞は筑紫哲也氏が選考経過を報告した。各受賞者あいさつに続き、谷山社長は「出版不況と言われるが、出版の中心は活字文化。大事にしていきたい」とあいさつした。

本屋のうちそと

時おりやってくる4歳の孫は様々な「芸」でジジババを楽しませる。ある日“ジュゲムジュゲム”を披露。さすがジジの血を引く隔世遺伝の天才と喜んだ。
しかし「平家物語」を買いに来た子連れのお客が、あっという間に夢を打ち砕いた。誰が読むのかと聞いたのが悪かった。4歳の娘に暗唱させるのだという。すでに「雨ニモマケズ」を覚えていると言うので、「ホントかなあ」とたずねても、はにかんでなかなか口を開かない。
「じいちゃんも知っているゾ。アメニモマケズ、チョコレートニモマケズ」と水を向けると、蔑むように「ちがうちがう」と言って全編を澱みなく聞かせてくれた。
この幼児の暗唱ブームの発信元は、教育テレビの「にほんごであそぼう」だというので、翌朝8時からさっそくチャンネルを合わせた。コニちゃんこと元小錦と舌足らずの子どもが、毎日学芸会のように“マダアゲソメシマエガミノ”とか“アカギノヤマモコヨイカギリ”“オドロキモモノキサンショノキ”とやっている。
意味を教えるでも暗記をさせるというでもない。ただひたすら文章の断片を繰り返すことにより、子どもの頭の中で日本語の名文が組み立てられるという趣向である。
活字離れの時代、幼児の驚異的な暗記力に目をつけたこの試みは、小中高校での「朝の読書運動」に受け継がれ、本に親しみ思考する青年を生み出すかもしれないと思うのは飛躍だろうか。それでもつい期待したくなる最近の楽しい出来事だ。
(どんこ水)