全国書店新聞
             

平成22年1月1日号

読書の楽しさと役割伝えたい/日書連大橋信夫会長に聞く今年の課題

2010年、いよいよ「国民読書年」の開幕だ。長引く日本経済の落ち込み、10年以上続く出版販売額マイナス、電子端末の攻勢など、書店を取り巻く厳しい環境の中で、国民読書年にあたり出版界・書店の反転攻勢の仕掛けと、その意気込みを日書連大橋会長に聞いた。聞き手は田中徹編集長。
〔国民読書年への意気込み〕
――今年は国民読書年です。出版業界として読書推進に期する意気込みをお聞かせください。
大橋出版業界はここ数年、「朝の10分間読書」「第4土曜日は子どもの本の日」「ブックスタート」など、地道な読書推進運動に取り組んできました。また、読書推進運動協議会として毎年、地域や職場で読書推進に功績のあった方を顕彰しています。日書連も春秋の読書週間で書店くじを配布し、サン・ジョルディの日の普及や、各地で文化講演会を開催するなどの運動に取り組んできました。北海道組合が提唱した「本屋の親父のおせっかい、中学生はこれを読め」、愛知組合の「孫の日に本を」など、県組合発の読書推進運動もあります。
こうした運動を背景に、一昨年、超党派の国会議員で結成している活字文化議員連盟が「2010年を国民読書年に」と決議してくれたわけで、国をあげて読書を普及していくことを重く受け止めています。
具体的な運動についてはJPICや文字活字機構が音頭をとっており、成人の日に本を贈る「20歳の20冊」や家庭に眠っている本を再活用する「ブックリボン」の運動に着手しています。日書連はこうした読書推進の潮流をさらに強固なものにすべく、全面的に協賛しているところです。
――政府がデフレ宣言をするなど、長引く景気低迷で消費者の購入意欲が落ちています。
大橋出版物は価格の優等生なんだが、再販制度があるのでデフレへの対応がとりにくい。書店だけが定価販売で高止まりしていると、悪者になりかねません。スーパーやコンビニでは価格が下がっています。散髪も千円を切る業者が出てきた。消費者庁あたりは、価格競争をさせたい。それが進んで、どの業界もいびつになってきている。
景気低迷で、日本全体の懐具合が寂しい。ビジネスマンの昼食代は5百円を切っているが、一方で夜の居酒屋は満席です。需要を喚起して、財布のヒモをゆるめる方向に働きかけないといけません。経済はそういう面がありますね。タンス預金はあるが、将来が不透明で見えないから使わずに蓄えている。特に高齢の方々はそうですよ。私はそういうふうに見ています。
懐が寒いから、書店にも客が入らない。それが永く続いたことによって、本を読まない世代が出てきた。最近、秋葉原の無差別殺人事件はじめ、日本全国で理解に苦しむ犯罪が多発していますね。短絡的にすぐ結論を出そうとするから、目障りなもの、邪魔なものをすぐ排除する風潮がある。そこで読書が必要なのです。忍耐強さや、考えながら取り組んでいく習慣に戻すのが国民読書年なのだろうなと理解しています。東北大学の川嶋隆太先生がアルツハイマー症との関連で読書の重要性を盛んにおっしゃっています。国民読書年は読書がいかに大切かということを再認識する意味でも重要な取り組みです。
北海道組合で聞いた話ですが、競争相手の書店が店をたたむ。それで1年ぐらいは前年より売上が伸びるけれど、そこから先は衰退するしかない。明日は我が身で、文字通り本屋のない町になっちゃう。アメリカは自動車で20キロも走らないと本屋がない。日本も過疎の町に行くと、週刊誌を売っているところはあるけれど、本屋はない。これは由々しき問題です。
――結果的には大都市に大型店だけ残る。
大橋大型店にも大型店であるがゆえの苦労がある。多店舗展開をした結果、競合他社とぶつかり、不毛の競争をやらされるわけですよ。いまの日本経済そのものが競争過多です。つぶし合いした結果、自分もつぶれちゃう。コンビニの世界がそうですね。
――小学館は今年、学年別『教育技術』の編集を強化すると聞きました。
大橋今の先生の教育技術は非常にプアだと。僕らの頃は一クラス55人いましたよ。いまは30人でも手が回らない。少子化の影響なんだろうな。その先生方があまり読書をしていないというのも困る。活字から知識を得る訓練がなされていない。親の世代も含めて、読書の楽しみを伝えていかなければいけない。
――JPICの読書調査で小学生の読書時間は増えていますね。
大橋教室でやっている朝の10分間読書運動が大きいと思う。朝、10分間本を読むことで集中力もつくし、アイドリングになる。そういうのが忍耐強さ、社会性を育てていく。本を読まない人間はすぐプッツンしちゃうんだね。
――読書年に当たって、個々の書店の役割はどうお考えですか。
大橋今まで書店はお客様を見ていなかった。「いらっしゃいませ」の声もかけない。それで、万引きされたと言ってるんだけれど、「いらっしゃいませ」と言われると、人は万引きができなくなるんですよ。このお店はちゃんとお客様の動向を見ているなと考えるんですね。これまでは近所の人が買いに来ているのに、どういう人がお店に来ているのか見ていなかった面がある。
出版社も読者のニーズを見ていない。企画、立案、新刊を出すについて読者が何を求めているか知ろうとしないで、一人よがりで出している。神保町ブックフェスティバルを始めた頃は出版社の社長さんを集めてやったから、お客さんに何か聞かれてもわからない。それで編集の女の子を来させたら、読者と直接話をするのは初めてですと非常に喜びました。企画編集して本を作っている人が読者に触れていなかった。
書店も昔は対面販売で会話をしながら、どこのうちの子どもが買いにきたとわかった。最近は私売る人、あなた買う人となって、スーパーのレジのように無駄な会話がない。無駄な会話が大事な会話だったのに。
――売り場のディスプレイというようなことは問題ないですか。
大橋本屋のおやじのおせっかい、中学生はこの本を読めとかね。そういうおせっかい心が大事だと思いますよ。北海道のキャンペーンが名古屋に飛び火して、熊本でもガイドブックを作るなど、そういう情報交換も必要ですね。一方で全国の書店がみんな金太郎飴になっちゃうのはこわい。それぞれの地域の持ち味を生かしながら書店のカラーを出していくことが大事だと思いますけどね。
〔書店の資金繰り改善へ〕
――昨年、日書連の重点的課題として送品・返品の同日精算問題に取り組みました。
大橋本屋が生き残るためには、キャッシュフローの問題を解決しなければいけません。そういうことから同日精算の問題を取り上げた。昨年ははかばかしい進捗がなかったが。今年はさらに推進しようと考えています。
運動を始めたころに比べると、当初10日だった返品入帳が5日まで繰り下がりました。日販もあと1日はできると言っている。返品を1日でも早く入帳する努力をしていただくことと、今すぐ解消できないなら、5年かかるとして1年で1日ずつでも繰り下げていくプログラムを示してほしい。遠方の書店は輸送時間もあるので現地でカウントするとか、送品の締め切りを返品に合わせるとか。これはやろうとすればできるが、お金が必要だからしたくない。だけど、それを言っていると、書店はますます減りますよ。取次は資金のため出版社にも協力を求めてと言うが、これは取次が出版社にやることで、日書連に言われても困る。
業界全体から集めた今の資金を保持したい。だけどそれはできなくなっていますよ。資金が楽になるのは1回だけではないかという人もいますが、その1回が大きい。3月末決算の書店は大変だと思いますよ。教科書なんかかかえているところは繁忙期も重なって大変です。
〔警察の万引き対策強化〕
――警視庁が昨年末、万引きは全件届け出るように取り組み強化を始めたそうですが。
大橋昨年12月2日に警視庁に呼ばれ、桜田門に行ってきました。17階の会議室に行くと米村警視総監が来て、業界代表3人が万引き被害の実態を話しました。本屋は万引き率が2%近い。コンビニに比べて1ケタ上なんですね。利幅が少ないところに万引き率が高いから、採算は大変厳しい。万引きをなんとか少なくしたいと申し上げました。
警視総監からは窃盗犯を100%警察に出してほしいと要請がありました。万引きの届け出が少ない。5分の1ぐらいと言われています。なぜ警察への届け出が少ないのか質問されました。当たり前です。犯人をつかまえると店員や店長が調書をとられるために半日も足止めされる。だから小額の万引きは届けないで、説諭して帰してしまう。警視庁は、今後近くの派出所から警官が来て、手続きも簡素化して、被害状況を書き込むことで供述調書に替える。負担はかけないので、100%被害届を出してくださいということでした。東京都では11月1日から始めています。
数年前、川崎で万引き犯が踏切に逃げ込み、電車にはねられ死んだ事件がありました。その時の世論は「万引きぐらいで、本屋は非情だ」というものだった。万引きは窃盗犯だけれど、万引きということで軽んじられる風潮がある。今回、万引き対策強化をお決めいただいたことは大変ありがたいと申し上げた。
もう一つ、警察に差し出せばいいのかということもある。万引きは窃盗犯であり、社会的ルールは厳しいということを教えるのも重要だが、一方で年配の方の万引きが増えている社会風潮は、競争が激化したことの表れですよ。書店店頭にはそういう変化が微妙に現れます。
――神保町が万引き防止のモデル地区になったそうですね。
大橋警視庁の話のあと、神田警察署が神保町をモデル地区にしようと、神田すずらん通り商店街に声がかかりました。警視庁の方針は各道府県の警察にも影響力がある。この件で県警から呼びかけがあれば、県組合はすぐに応えていただきたいですね。逆に書店組合から県警に取り調べ簡素化、短縮化を働きかけてもいいと思う。社会的な運動でもあるし、それが自分の店を守ることにもなる。

総額1千万円の補助金/国民読書年の各県企画に/12月理事会

日書連は12月17日、書店会館で定例理事会を開き、国民読書年に向けての各県組合の読書推進企画に対し総額1千万円の補助を行うことを明らかにした。1月委員会で審査し、給付額を決定する。
〔読書推進〕
国民読書年に向けた取り組みとして、日書連は各県組合から読書推進企画を提出してもらいたいとし、総額1千万円の補助金を出すことを明らかにした。1月20日までに各県から企画を提出してもらい、21日の委員会で検討する。
成人の日に自治体から本を贈る「20歳の20冊」については、初年度は茨城県大子町、千葉県袖ケ浦市、鳥取県日吉津村、島根県東出雲町の4自治体で成人式に本を贈ることになったと報告があった。家庭に眠る蔵書の再活用を図る「ブックリボン」は12月1日の締め切りまでに3万冊が集まり、仕分け中だという。
〔財産運用〕
日書連共済会の残余財産活用案として東京組合所有の書店会館の取得が持ち上がり、不動産鑑定士の評価結果が木野村委員長から報告された。書店会館は土地287・53平米、建物床面積が827・96平米だが、建物は耐用年数を過ぎているため評価額はゼロ。土地が2億8644万円。
資産として取得した場合、3月末には納税しなければならないが、理事会では「書店会館を取得した場合の税負担額を示して」「県組合への説明資料を提示してほしい」などの意見が上がり、早急に資料をまとめることになった。
〔物流研究〕
トーハン、日販の特急便正味引き下げ交渉を行ってきた戸和委員長は、①トーハン「ブックライナー」は12月1日から読者手数料50
円の撤廃と取引正味1%を
引き下げた、②日販は「クイックブック」スタートに合わせNOCS9000初期導入費用、月額使用料3カ月無料キャンペーンを年内いっぱい延長すると回答したことを報告した。
面屋副会長は「日書連が主導権を握り交渉したことでトーハンの1%下げを引き出した」と評価した。今後の方針について大橋会長は「特急料金を取ること自体が取次の怠慢」としてさらに取次にプッシュする意向を述べた。
〔取引改善〕
ゴマブックスの民事再生問題で柴﨑委員長は「トーハンと日販で出版社有事の場合の対応が違った。トーハンは民事再生申請時点で同社の委託期間中の商品を取引店に連絡したが、日販は有事でないと連絡しなかった。10月22日にゴマブックスが委託で商品を出した時点で民事再生を知った書店もある。2カ月で返品できなくなった商品の有無を調べたい」と述べ、日販取引店でゴマブックスの返品不能品の有無を調べることを明らかにした。

反響呼ぶためほんくん/過剰なポイントセール報告/日書連理事会

〔情報化推進〕
書店店頭のモニター画面でコミックの試読ができる「ためほんくん」は、12月16日の出版販売年末懇親会の会場でデモを行い、出版社の関心を集めたことを田江理事が報告した。
「ためほんくん」が新聞、テレビで大きく取り上げられたことから、実験に参加していない出版社数社と書店からテストに参加したい意向が表明されていること、小学館、集英社、講談社はコンテンツ提供を増やすことも説明された。
テスト参加店においては売上データ、試し読みの回数などを集計しており、テスト店全店からのデータ集計をまとめ、効果を測定していきたいとした。
大分組合大隈理事長からは同組合のホームページで書店在庫を読者に紹介する「埋もれ本」について紹介があった。
〔再販研究〕
岡嶋委員長から①ヤマダ電器LAVII池袋店が開店サービスとして半月間、出版物にも5%のポイントサービスを行った、②大阪・茨木市のコジマBOOKS文教堂が通常1%のポイントを「書籍購入でポイント3倍」セールを行った、③イトーヨーカドー専門店街が20%オフ、30%オフのセールを行い、くまざわ書店が20%オフのセールに参加した――などの報告が行われた。
公取協影山専務理事は、書店のポイントサービスについて「小売公取協が景品規約で認めているサービスは年間を通じて2%まで。付加したポイントが同一店舗内の他の商品に使えるなら値引きに当たる」とする考え方を説明した。
〔流通改善〕
4連休の関係で9月23日の祝日に発売日設定が行われたが、取協で売行き状況をアンケートしたところ、祝日でも雑誌が売れることが実証できたという評価が大勢だったという。また、輸送、印刷・製本からは業量平準化で円滑な運用ができたという評価だった。
出版社が読者に直接雑誌を定期販売する場合、書店経由以上の特典があるのではないかという調査については、雑協会員社の場合は同一条件が多いが、非会員社の場合、書店経由にはない特典があるケースが多いことがわかったとして、今後、是正を申し入れていくことになった。
〔指導教育〕
鶴谷副委員長が同委員会がこれまで取り上げたテーマを説明し、今後、①ウェブ時代の書店論、②ウェブ時代の取次多様化論、③再販制・委託制の変化と価格構造論の3つをテーマにイノベーターの役割を果たしていくと述べた。
〔増売運動〕
来年4月20日から30日まで実施する「春の書店くじ」のポスター、抽選券のデザインが決まったことを舩坂委員長が報告した。
また、埼玉と愛知の書店から読書週間書店くじ特賞当選が出たことに関して舩坂委員長は、書店くじ実施要綱に「書店関係者の当選は無効」と明記することを説明した。
〔消費税〕
藤井裕久財務相が12月9日、経団連首脳と会談した席で、「消費税は基幹税となるべきだが、引き上げの環境が整っていない」とし、時間をかけて世論を形成していく方針を示したことが報告された。
〔組織〕
各都道府県組合の組合員数は11月期は18名減少し、合計5308名となった。平成20年4月1日対比で194名のマイナス。

トーハン強い懸念表明/TRCの主帳合変更で談話

トーハンは12月21日午後2時から業界紙に対し、山﨑厚男社長がTRCの図書館取引に関する変更について同社の考え方を説明。TRCの行動は出版流通、図書館流通に大きな混乱をもたらしかねないと強い懸念を表明した。山崎社長の談話要旨は次の通り。
「12月15日に図書館流通センター(TRC)で臨時取締役会が開かれ、主帳合をトーハンから日販に変更する旨決議した。TRCは昭和54年に社団法人日本図書館協会事業部を再建する目的から図書館、出版社、取次で設立した一種のインフラ企業である。今回の一方的申し入れは、トーハンがTRCの創立を支援し30年にわたり取引を継続してきた経緯を全く考慮しないもので、断じて受け入れることはできない。先立つ10日、TRC石井代表取締役が当社を訪れ、第一に日教販問題、第二に学校図書館問題であると言われた。その後、石井氏が業界紙に発表した内容はこれらに一切触れず、物流システムの相違というようなあいまいな表現に終始している。
日教販問題は平成16年にTRCによる日教販の吸収合併が持ち上がり、小売と取次が合併することで公平な競争ができなくなる恐れがあると業界各社の反対を受け、日教販が撤回した。
学校図書館問題は、各地で地元書店が担ってきた学校図書館納入業務にTRCが参入してきた。過当競争を未然に防ぎ地域書店とTRCが共存共栄できるようお手伝いなり尽力してきたが、徐々にTRCと見解の相違が生じた。こうしたことを強行すると、図書館市場だけでなく、出版業界全体に大きな混乱を起こし、市場の公正な競争環境を損なうことが懸念される。今まで地域書店とTRC、トーハンで協力してやってきたが、こういう行動をとられることは看過できない。
標準マークを作っている書籍データセンターには標準マーク製作も含め離脱する旨の契約解除通知がなされた。同センターはすべての取次が株主として参加している業界全体のインフラであり、TRCが制作請負している標準マークを多くの会社が出版流通に利用している。これについても異議を申し立てたい。
万が一にも話し合いがつかない場合、取引先である書店、出版社に対しては当社の責任として引き続きマーク、図書装備、物流で図書館、地域読者の期待に応えていく販売支援体制があることを申し添える」

小売公取協が「景品・値引きの判断」改訂版

「出版物小売業公正競争規約における景品・値引きの判断について」は平成14年にまとめられ、公取委の一部修正指導も受けて発表したものだが、平成18年5月の規約・施行細則の一部変更を受けて、改訂版がまとまった。影山専務理事から①ポイントカードの場合、②自・他共通の割引券、金額証等、③図書券または図書カードの付加、④出版物の取引で別の書籍・雑誌を付加する――の4つの事例で説明があった。

11月の売上げ94・8%/新書、文芸書80%台に低迷/日販調べ

日販経営相談センター調べの11月期書店分類別売上調査が発表された。11月の平均は前年同月比94・8で、売上げはいぜん低迷している。コミックは103・3%、児童書は102・8%と前年同月を上回ったものの、新書、辞典、地図旅行、文芸書の4ジャンルは80%台の伸びにとどまった。
コミックは2カ月連続のプラス。売上上位100銘柄の冊数の伸び107・8%に対し、金額の伸びは110・5%。平均本体価格も前年の482・8円に対して今年は508・6円と上回った。
文庫は上位10銘柄の金額前年同月比90・5%に対して、冊数前年同月比は82・8%と冊数のマイナスが大きく影響した。
買い上げ1点当たりの平均単価は99・8%と前年を下回ったが、1人当たり買い上げ冊数が101・5%と前年を上回ったため、客単価は100・7%と前年をわずかながらも上回る結果となった。

海外の出版・書店事情①/ノセ事務所代表取締役・能勢仁

〔1、イギリスの出版・書店事情〕
イギリスは再販国ではない。1995年に自由価格国になった。イギリスの出版点数は11万5522点(06年)で、日本の7万7074点に比べて149・8%多い。出版社数は約2300社あり、書店数は1424店(07年)である。1997年に1839店あった書店が10年間に23%減の状態は日本と似ている。独立書店のシェアは2004年の57%から07年には50%へと低下し、この間チェーン書店とオンライン書店が着実にシェアを拡大している。イギリスの出版業界の年間売上は約30億ポンド(5千億円弱)である。書店の書籍の平均販売価格は6・34ポンド(約1014円)である。この価格はアメリカ、オランダ、スウェーデン等の書籍市場と比較すると低い。出版社と書店の取引は直取引が中心である。
イギリスの出版業界の最大の特色は出版物の輸出である。出版業界の売上の37%を輸出している。書籍はイギリスの輸出品の優等生なのである。輸出先はヨーロッパ諸国が41%、アジア諸国15%、北米12%、オーストラリア11%、中近東・北アフリカ9%、南アフリカ8%、中南米5%である。国別ではアメリカがトップで、日本は11位である。上位10カ国で約60%である。
1995年に再販制が崩れたことは冒頭に述べた。その引き金になったのはロンドンのチェーン書店(WHスミス、ウォーターストーンズ等)の自由価格政策の実施であった。イギリスの書店業界をリードしているのは上記の大型チェーン書店であった。ところがロンドンの巨大書店であるフォイルズ書店は冷めた態度でこの推移を見ていた。
〈フォイルズ書店〉
創業1905年、在庫50万点、500万冊という独立書店ではロンドン最大である。一世紀の歴史をもつ書店が一つの出店もしないで、一店巨艦主義を貫き、世界一の膨大な書籍をロンドン市民に提供しようとする姿勢がロンドンっ子に高く評価されたのである。他の書店がチェーン化を強化している風潮に流されず、チャリングクロスの一角を死守したのである。しかしロンドンの読者も変質している。特に若者達の志向がビジュアル化、デジタル化している。アメリカからボーダーズ書店がフォイルズ書店の真ん前に進出してきた。またロンドン市内のチェーン書店もCDの取り扱いを始めた。明らかに書店の環境は変わった。しかしフォイルズ書店は変えようとしなかった。フォイルズ書店の頑なな姿勢の中に特色を見ることができる。
フォイルズ書店は地上五階、地下一階で、五階は事務所並びに文化教室である。売場面積は320坪×4=1280坪、地階160坪を合計すると1440坪である。八重洲ブックセンターを一回り大きくした店といえる(なお、八重洲BCとは提携姉妹店である)。フォイルズ書店の特色は、①雑誌は全くない。②スコア(楽譜)の圧倒的な量に驚く。50坪位の売場全部が楽譜である。③動物関連書が多い。愛護団体支援のためである。④本以外の商品はない、文具関係もない。⑤旧植民地地域関係の書籍が多くみられる。⑥美術サロン、歴史資料室の評価は高い。⑦店内に迷路多し、増床のためである。⑧従業員が少ない。男女比は6対4、若い社員が少ない。⑨防犯鏡をふんだんに使っている。⑩児童書は貧弱である。⑪店の側面57㍍(32間)のショウウィンドウは総て版元の広告である。

絵本ワールドinひょうご/7千名が集まる

「絵本ワールドinひょうご2009」が11月14日、15日の両日、神戸市灘区の神戸海星女子学院大学で開催され、約4千名が集まった。主催の同実行委員会には兵庫県書店商業組合も名を連ねている。
14日は絵本作家・長野ヒデ子氏が「絵本と紙芝居と私」、15日は児童文学者・角野栄子氏が「それぞれの魔法、それぞれの旅立ち」をテーマに講演。このほか人形劇団クラルテによる「おひさま劇場」、わいわいこどもふれあい広場で紙芝居、読み聞かせ、エプロンシアター、ペーパークラフトなど数々のワークショップが開かれた。
なお、両日の収益はおよそ130万円で、昨年と比べて微増となっている。
また、子どもの本展示会「なんでも子どもの本ライブラリー」が同時開催された。兵庫県書店商業組合ほかが運営。自由に手にとってその場で読み聞かせができる子どもの本の展示会。父親、母親世代の懐かしい絵本から最新版の子供の本まで約7千冊を展示した。
(中島良太広報委員)

坂本龍馬ドラマ化記念/京都組合がブックフェア実施

京都府書店商業組合(中村晃造理事長)は、活性化委員会(黒澤靖委員長)が主管する「本屋さんへ行こうキャンペーン」を12月からスタートさせた。
このキャンペーンは組合加盟店舗への集客と顧客へのサービス還元を目的に京都組合が毎年実施しているもので、今回は「坂本龍馬ドラマ化記念ブックフェア」と題し、来年NHKで大河ドラマ「龍馬伝」が放映されるのを受けて企画。来年1月末日までの期間に読者からキャンペーンへの応募を募る。
内容はキャンペーンの対象となっている龍馬関連本の表紙に、傷の付かない弱粘性の応募シールをあらかじめ貼付しておき、来店客がその対象書籍を購入すれば応募シールが獲得できるというもの。組合加盟書店の店頭で配布されるキャンペーンチラシには応募券が付いており、獲得した応募シールを応募券に貼り、必要事項を記入して店頭に持ち込めば応募完了となる。応募者には抽選で図書カード2千円分が百名に当たる。
今回のキャンペーンの特徴は、賛同する出版社を募り、その出版社との協賛企画として展開したこと。龍馬関連本は多岐にわたるが、協賛出版社からの指定をキャンペーン応募の対象書籍とすることで選定が絞り込めた。
経費面では、拡材として用意したチラシ6万枚とA2判ポスター500枚が出版社の協力からオールカラーで印刷できたほか、キャンペーンを告知する広告費も補填することができた。また、取次からも協力が得られたことで、対象書籍の発注が潤滑に行える態勢も整えられた。
キャンペーン展開では京都組合で昨年誕生したマスコットキャラクター「ブックン」をチラシやポスター、応募シールに至るまで露出を徹底し、「ブックン」がキャンペーン参加店の目印となることで、今回のキャンペーンが組合加盟書店に限られた顧客サービスであるとの認識を高め定着させることも狙った。
京都組合では坂本龍馬ゆかりの地、京都の立地を生かして例年以上の効果を目指すとともに、組合加盟による利点としての差別化を図ることで、組合加盟店=読者サービスの店としてイメージを浸透させ、今後の来店客増加に寄与できればとしている。
(澤田直哉広報委員)

読みきかせらいぶらりい/JPIC読書アドバイザー・上野憲子

◇2歳から/『かくかくしかく』/得田之久=作/織茂恭子=絵/童心社840円/2009・3
あおいしかくと、ぴんくのしかくが、がたがたがったん…あっ、でんしゃになっちゃった!。ほかにもいろんな色のしかくが組み合わさって、子どもになじみのあるものに変身します。読んだ後に周りにあるしかく探しをしても楽しいでしょう。シンプルさとカラフルな色づかいも魅力です。
◇4歳から/『あいうえおべんとう』/山岡ひかる=作・絵/くもん出版1365円/2009・5
あっこちゃんのおべんとうは、あすぱらがす、いちご、うずらたまごにえびふらい、そしておにぎりで、あ・い・う・え・おのおべんとう!「あ」行から「ら」行までそろったおべんとうは、実際に作りたくなるほどよくできています。これならひらがなもおいしく(?)覚えられそうです。
◇小学校低学年向き/『ぼくのたからもの』/カタリーナ・ヴァルクス=作/ふしみみさを=訳/クレヨンハウス1575円/2009・8
バルのたからものは、池にもぐって集めたからすがいのかいがら。でもまわりからは、おなじものばかりでぱっとしないと言われ、むきになってほかのかいを探すのですが…。沈む夕日を眺めながらのラストは、じんわりと心があたたかくなります。登場人物の表情もとってもキュートです。

女性パワーでまちおこし/本町大好きおかみさん会代表として活躍/富士吉田市・一品堂書店・田辺綾子さん

山梨県富士吉田市で明治時代から書店を営む一品堂書店の4代目、田辺綾子さんは、地域の主婦らで作る町おこしグループ「本町大好きおかみさん会」の代表として活躍。女性発の活動が地域全体を巻き込んで盛り上がりを見せている。町おこしへの取り組みと地域密着型の書店経営について田辺さんに話を聞いた。
〔空き店舗活用してイベント〕
富士山の北側に広がる富士吉田市の下吉田地区は、昭和20年代から40年代にかけて織物業で栄えた町。富士吉田市の中心街として「本町」と呼ぶ。その町並みは今も昭和の時代の雰囲気を漂わせる。特に月江寺商店街は当時の町並みが残り深い情緒が感じられる。しかし現在、下吉田の商店街にはシャッターを閉めたままの空き店舗が目立ち、シャッター通り商店街と化したところも少なくない。
そんな町並みに活気を取り戻そうと、市では「まちがミュージアム!」と題して下吉田の商店街の空き店舗を活用した芸術作品等の展示会を行っている。さらに、行政にはない新しい視点から町おこしに取り組んでいる女性たちがいる。一品堂書店の田辺綾子さんが代表をつとめる「本町大好きおかみさん会」だ。
この会は2003年5月に設立。田辺さんなど数名の主婦の立ち話からスタートした。「商店街の垣根をこえて自分たちが楽しめることをしたい」「この町に住んでいることを誇りに持ちたい」「自分たちの町は自分たちの手で楽しい場所に変えていきたい」。こうして会の活動は始まった。
代表は言い出しっぺの田辺さんがつとめることに。メンバーは22名。年代は40代から70代までと幅広い。田辺さんは51歳。40代の女性1人のほかは全員年上だ。田辺さんのような商店のおかみさんのほか専業主婦もいる。活動は夫の理解がなければできない。イベントのとき、力仕事は男性が手伝う。一昨年からは地元の北陵高校の学生がボランティアスタッフをしてくれるようになった。メンバーの下にはこのように声をかければイベントを手伝ってくれる「縁の下の力持ち隊」と呼ばれる人たちがたくさんおり、地域を巻き込んだ活動となっている。
田辺さんは「やらされている感」をとても嫌う。自分たちが楽しめるイベントにしなければ長続きしないからだ。「自分たちが楽しいと思えることをやる。失敗を恐れずにアイデアを出し合い、出されたアイデアは即実行する。定着してきた年間行事を継続しながら、必ず一つは新しい事柄を取り入れて事業を実行している」と説明する。実際、各メンバーの資質は非常に高く、それぞれ自分が持っているものを出し惜しみしないという。
空き店舗・空き家や商店街を活用したイベント開催が活動の柱。この中のいくつかが季節ごとのイベントとして定例化している。まず1月の「どんど焼きナイトフィーバー」。子供たちの冬の思い出になるイベントが必要と始めた。子の神通り商店街で焼鳥、おでん、うどんなどの露店やフリーマーケット、紙芝居、占いなど楽しい催し多数。高校生ボランティアによる餅つきも好評だ。
3月下旬から4月上旬にかけては旧暦のお祝い「一月遅れのおひなまつり」を開催している。本町界隈の店先や玄関先におひなさまを飾りつける。また空き店舗におひなさまを飾って、お茶を飲みながら談笑する。7月には市民夏祭り協賛イベントとして「1日だけの歌声喫茶」をオープンする。町内のスナック「パリシェ」に東京・新宿の歌声喫茶「ともしび」の司会者や伴奏者などを呼び、プロの指導の下で皆が肩を寄せ合って歌集を見ながら歌う。同時に行っているのが手作りのお店「GRA人」(グレイト)。素人でもなく玄人でもない中間の人たち、という意味だそうだ。素人でも玄人でもない手作り好きが作った縮緬小物や陶芸を保険会社の駐車場で販売するイベントだ。
9月には「セピア色のあの頃に」と銘打って、各家庭にある古いアルバムから懐かしい写真を引っぱり出して店先や玄関先のイーゼルに飾りつけるイベントを行っている。また昨年は太宰治生誕百年だったことにちなんで、この地域が題材の『富嶽百景』を読む会を同時開催したという。一品堂書店でも太宰コーナーを作ってフェア展開した。
様々な活動を通じてメンバーは大きな自信を持つようになったという。「主婦とか商店のおかみさんとか一つの顔しか持っていなかった私たちが、会を通じて違う世界に飛び出して行った。一人ひとりの小さな力がまとまって大きな力になり、多くの人たちに認められた」。
実際、まちづくり推進や地域活性化につながる活動が評価され、平成21年関東商工会議所連合会ベストアクション賞を受賞している。また朝日新聞の取材を受けるなどメディアからの注目も高い。NHKの番組「生中継ふるさと一番!」(07年1月25日放送)で富士吉田市が紹介された際には田辺さんがナビゲーター役をつとめ、会の活動も取り上げられた。
〔充実感、書店業にも好影響〕
書店業とおかみさん会の両立については「まったく苦にならない」という。「書店をしているだけでは知り合うことができない多種多様な方々とお付き合いできるようになり、人間的に広がりが出てきたと思う。会の活動に携わることで精神的な充実感が得られている。書店業界は確かに厳しい。おかみさん会の活動があるから書店の仕事も頑張らなきゃという気持ちになれる。だから、いい形でバランスがとれている。どちらも少しでも長く続けたい」と前向きだ。
一品堂書店の創業は明治42年で、昨年百周年を迎えた。田辺さんは4代目になる。58年9月18日生まれで、3姉妹の長女。高校時代まで富士吉田で過ごし、東京の青山学院女子短期大学に入学。卒業後は東京・町田の久美堂に入社し、2年間修業した。同書店では社長の配慮で様々な部署の仕事を経験することができた。そして富士吉田に戻り一品堂書店に。「3姉妹の長女ということですでに書店を継ぐレールが敷かれていた。それに乗りたくないという気持ちもあったけれど、結局自分は客商売が好きなんだと思う。稼業を一生懸命やろうと戻ってきた」と振り返る。
当時は商店街もまだ活気づいており、3代目の父・一夫さんをはじめ総勢6人で店を回していた。学年誌全盛期で子供向けの配達が多く、『中1時代』に万年筆が付くと子供たちは大喜び、かなりの数を配達した。現在の客層は中高年がメインで、品揃えの中心は趣味や健康などの実用書。
「中小書店だからこそ、お客様の顔を1人ひとり思い浮かべながら、そのお客様に合った商品を提供しなければ。商品力をつけるため日々アンテナを高く立てるようにしている。日販のNOCSも活用してお客様の要望にできるだけ応えられるよう努力している」。
また売場のそこここに地域密着型書店としての工夫が凝らされている。おかみさん会のイベントをきっかけにして、地元住民の切り絵や富士山の写真を店内に展示するようになった。また、近所の方々手作りの陶芸作品やとんぼ玉の展示販売も行っている。
経営方針として①「まず人として、信用・信頼される人となれ」を心掛ける、②定価販売の雑誌・書籍を当店で買ってくれるお客様に感謝し、期待に応える。新しい出会いを提供し、お客様の人生が豊かになるお手伝いができる店にする、③地域の方々にとって情報発信の場となるように、いろいろな話題を提供できる店を作る、④年商1億円を目標に、積極的に外売に力を注ぐ。新規顧客を増やすためにアイデアを出し合い、まず行動に移す――の4点を話してくれた。特に外商力強化を強調した。
モットーは「目の前の現実から逃げない」こと。これは昨年1月のどんど焼きで、1年間の目標として書いたことでもある。「現実はこれからもずっと続く。逃げたくなることはあるし、見て見ぬふりをしてしまうことも多い。弱気になることもある。でも困難があっても、やらないよりはやったほうがいい。やらないで駄目だと後悔ばかり残るけど、やれば違う道が開けることもある」。
書店業とおかみさん会の両立で多忙を極める田辺さん。趣味の旅行と山登りを満喫できる日々が来るのは、まだまだ先のことになりそうだ。
(本紙・白石隆史)

わが社のイチ押し企画/ポプラ社・児童書編集局・村地春子

あけましておめでとうございます。
今年3月、ポプラ社では、「松谷みよ子おはなし集」を刊行いたします。
戦後を代表する児童文学作家である松谷みよ子先生の膨大な作品の中から、小学校低・中学年の子どもたち向けの魅力あふれる短編作品を選んで、全5巻にまとめたアンソロジーです。
2007年にポプラ社60周年企画として「角野栄子のちいさなどうわたち」(全6巻)を刊行して以来、2008年に「あまんきみこ童話集」(全5巻)、2009年に「もりやまみやこ童話選」と、ポプラ社では、毎年続けて代表的な児童文学作家の童話集を刊行してまいりました。
かつてはさかんに読まれた童話ですが、ざんねんなことに最近ではあまり手に取られなくなり、作品も作家も少なくなっている現状です。絵本から読み物へと移る時期の子どもたちの読書体験を支え、豊かな情感を育む童話を、もう一度読者に手渡したい、なによりも童話の楽しさを知ってほしい……。そんな思いをこめてスタートした童話集も、今回で四集目になりました。
「松谷みよ子おはなし集」には、『ジャムねこさん』『花いっぱいになぁれ』など、長い間読み継がれ親しまれてきた童話のほか、松谷作品の大きな柱のひとつである民話をモチーフとした話を二巻にわたって収録しています。ダイナミックでときにユーモラスで、人間の本性に触れるこれらの話には、童話とはまた違うこころゆさぶられる感動があります。子どもたちは作品の世界をこえて、とおい昔の人々の思いをも感じ取ることができるのではないでしょうか。
ポプラ社では今後も続けて、神沢利子先生、木村裕一先生ほかの先生方の作品集を順次刊行していく予定です。一流の作家のすばらしい作品を未来へとつないでいく役割をはたせればと願って、編集をすすめています。

わが社のイチ押し企画/学研マーケティング・第二販売部学参・辞典販売課・二角尚宏

平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。2010年が皆様にとって幸運な年になりますよう心より祈念いたします。
さて、辞書引き学習の浸透により、小学生用辞典の需要が高まり、すでに3年ほどが経過しました。そこで育った子どもたちが中学辞典、高校辞典へと繋がることに大いに期待をしているところです。また、高校辞典市場においては電子辞書の販売が頭打ち傾向であることから、この機会に私共出版社も紙の辞書への回帰を促すべく、一層商品の充実を図ってまいりますので、2010年新学期商戦を是非盛り上げていきたいと存じます。
今回、弊社の「イチ押し企画」としまして、その高校辞典の主力商品、『スーパー・アンカー英和辞典第4版』をご紹介させていただきます。英単語のanchor(アンカー)には、「頼みの綱、よりどころ、心の支え」の意味があり、「この辞書が、英語学習のよりどころになってほしい」という編集者・監修者の熱い思いが書名に込められている辞典です。
「スーパー・アンカー英和辞典」は「明快・親切」をモットーに、大学入試まで対応でき、見やすく引きやすい紙面で、日本語・英語の微妙なニュアンスの違いまで詳しく解説をしています。
「第4版」の具体的な改訂内容は次の通りです。
①掲載項目数を従来の6万6千語から7万2千語に増量しました。
②「直訳の落とし穴」欄を設け、日本人が陥りやすい英訳ミスを防ぐ解説を、随所に盛り込みました。
③「図版・イラスト」を増設し「事物」や「概念」の理解を助けます。
④「新語」を取り入れ、ニュースや英字新聞などで見聞きする用語を収録しました。
⑤見出しの重要度を5段階で表示するようにしました。
見本をご覧いただいた高校現場の先生方からも大変ご好評をいただいており、弊社の営業も一丸となって促進に力を入れてまいりますので、書店の皆様におかれましても、倍旧のご支援を何卒お願い申し上げます。

わが社のイチ押し企画/金の星社・出版部編集課・池田真純

数々のヒット曲を世に送り出した作詞家・阿久悠。その作品の数は、生涯で五千作にもおよびます。阿久悠は、小説家としても、その類いまれなる才能を発揮しました。直木賞候補となり映画化もされた代表作「瀬戸内少年野球団」が、金の星社から1月下旬より発売されます。
物語の舞台は、戦後まもない淡路島。戦争の傷跡が生々しく残る時代、足柄竜太は多感な少年期を迎えていました。民主主義教育が導入され、新しい時代に向けて急激に生活が変化する中、竜太とその仲間たちは、はじめて手にした野球ボールに魅せられ、野球に夢中になっていきます。早熟な竜太、熱血漢バラケツ、きりりとした美少女ムメ、そして、生徒の人気の的・担任の駒子先生。個性豊かな面々によって結成された〝江坂タイガース〟を、町民たちもこぞって応援しましたが、緒戦は惨敗に終わりました。それからの彼らは、ますます野球の練習に熱をいれていきます。
野球という夢と、仲間との友情。そして、初恋。転校していくみんなのあこがれ、ムメへの淡い恋心が、甘酸っぱく描かれています。高校生になり、青春まっただ中の江坂タイガースの仲間たちの姿を描いた続編も収録。敗戦直後の貧しいけれど活気に満ちた時代を、子どもたちの素直な視点で、ユーモアたっぷりに生き生きと描かれており、いまの子どもたちにもぜひ読んでほしい、さわやかな青春小説です。
「瀬戸内少年野球団」(全5巻)、四六判上製。第1巻『瀬戸内少年野球団上』、第2巻『瀬戸内少年野球団中』は、各184ページ、定価各1575円。第3巻『瀬戸内少年野球団下』は、160ページ、定価1575円。第4巻『続・瀬戸内少年野球団上』は、240ページ、定価1680円。第5巻『続・瀬戸内少年野球団下』は、160ページ、定価1680円。税込、分売可。

わが社のイチ押し企画/講談社・販売促進局長・佐藤雅伸

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は弊社出版物にご高配を賜り、誠にありがとうございました。
さて、弊社は昨年おかげさまで100周年を迎えることができました。本年は新たな一歩を踏み出す年となります。改めましてよろしくお願いいたします。
本年の大注目企画をジャンル毎にご紹介します。
【書籍】昨年末に発売になりました、五木寛之さん渾身の巨編『親鸞』(創業100周年企画)のご拡売ありがとうございます。本年4月末からは全国各地で「親鸞展」が順次開催され、2011年には親鸞聖人の七五〇回忌という大イベントを控えていますので、引き続き貴店店頭での大きな展開をお願いいたします。
また、渡辺淳一さんの『幸せ上手』や100周年記念「書き下ろし100冊」も宮部みゆきさん、浅田次郎さんなど錚々たる作家陣の話題作を続々と刊行予定ですのでご注目下さい。
【コミック】大ヒット公開中の「のだめカンタービレ最終楽章前編」に続き、「後編」が4月に公開される予定ですので、増売のチャンスです。また、「マンガ大賞2009」「このマンガがすごい!2010オンナ編」をダブル受賞した『ちはやふる』や『FAIRYTAIL』『エンゼルバンク』『ヤマトナデシコ七変化』などの映像化作品にもぜひご期待下さい。
【雑誌】『週刊現代』や女性誌・幼児誌など、好調な本誌に加え、福山雅治さんの写真集を発売予定(夏頃)です。NHK大河ドラマ『龍馬伝』の主役としても大人気の福山さんは幅広いファン層の支持を得ていますので、ベストセラー間違いなしです。
以上、本年もたくさんの話題作を刊行してまいりますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

わが社のイチ押し企画/小学館PS・営業企画部・北尾健

明けましておめでとうございます。
2009年は責任・委託販売併用企画を4点発売いたしました。中でも7月発売『くらべる図鑑』が大ヒット(発売6カ月で46万部)となり、毎月3万部を超えるロングセラー商品になっております。引き続き店頭で大きく取上げていただきますようお願い申し上げます。また、11月発売『世界大地図』も順調な売上げで推移しております。
さて、小学館は今年度も「RFIDタグ」を装着したプレNEOシリーズ新刊『せいかつの図鑑』を責任・委託販売併用企画として3月中旬に発売いたします。今年は「RFIDタグ」を活用し、より多様な仕入れ販売も検討して参ります。続いて雑誌ですが、まずは『小学一年生』です。今年も楽しく・ためになる付録が充実です。4月号「おしえて!ドラえもんズバット正かいマシン」、5月号「ポケモンおけいこウォッチ」など。また4月号より毎号付く「わかる!できる!おどろく!陰山メゾットまいにちドリル」も注目です。テレビCMも昨年以上に力を入れて参ります。今年は店頭陳列コンクールと増売コンクールに加え定期購読獲得コンクールを実施いたします。ぜひ、この三大コンクールへの参加をお待ちしております。
その他雑誌企画としては、最高峰のオーケストラによる究極の名演奏の決定版!隔週刊CDつきマガジン『ウィーン・フィル魅惑の名曲』が1月19日創刊。2月23日には歴史ブームの最中『真説歴史の道』が創刊!第一巻「織田信長の天下取りの道」、第二巻「坂本龍馬脱藩の道」。一巻・二巻同時創刊の特別定価250円。ワンコインで二冊読めばきっと三巻目も読みたくなるはずです。
今年も昨年同様雑誌新企画が充実しております。店頭での展開はもちろん、定期読者獲得をよろしくお願い申し上げます。
主な企画ラインナップを紹介させていただきましたが、今年も小学館の書籍・雑誌にご支援賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

仏壇に届けたSL機関車

ディアゴスティーニのパートワーク「蒸気機関車C62を作る」(全100巻)の配本が始まったのは2007年8月。仕事をリタイアしてから製作に取り掛かろうと毎号楽しみに集めているお客様が福岡県にお住まいだった。
しかし、100巻の完結を目前にして、そのお客様が57歳の若さで急逝されてしまった。残された未亡人はパートワークの箱を前に途方にくれた。故人の遺志をついでパートワークを完成させたい。どこかに模型を組み立ててくれる人はいないだろうか。
パートワークを届けていた北九州市門司の宗文堂書店野村社長は未亡人からの相談を受けて、小倉の中尾書店中尾隆一社長に話を持ち込んだ。
中尾社長は日書連情報化委員会の専門委員として活躍するかたわら、動力付きの模型飛行機を飛ばす地元飛行クラブの会長として雑誌にも紹介されたことがある模型好き。
頼まれていやとは断りきれないうちに、蒸気機関車の箱100巻が届けられた。組立作業をするといっても店を閉めて、夜10時すぎから屋根裏の作業所でセットを広げた。とにかく細かい部品が多い。番号を振ってひとつずつ組み立てていく。
9月、10月、11月と3カ月かかって、ほぼ外観を組み立て終わったが、線路の延長パーツを入手しようとディアゴスティーニ社に申し込んだところ、1週間前に締め切りを過ぎていたと断わられた。
模型は24分の1スケールで、かなり重厚な仕上がりだが、細部にこだわる中尾さんは「C62」の本物の色を確認するため、JR西日本の鉄道博物館がある京都梅小路まで足を伸ばし、実物で色を確認してきた。完成品は大人の両腕を伸ばしたほどの大きさ。前照灯もつくし、汽笛も鳴る。模型は暮れのある日、未亡人の家に無事届けられた。
中尾さんに製作の苦労を聞くと、細かいパーツの管理に気を使ったとのことだったが、もともと好きな模型製作だけに苦にはしなかった様子。「なにより、仏様に供えたいという未亡人の気持ちにこたえたかった」という。中尾さんなら一肌脱いでくれると考えた野村社長の判断と、日頃の組合のネットワークが役に立った、ちょっといい話。

わが社のイチ押し企画/河出書房新社・営業第二部第二課課長・菊池真治

2009年11月に発売しました『なんでも! いっぱい! こども大図鑑』は英国の大手出版社ドーリング・キンダスリー社発行の独創的な百科図鑑で、世界20カ国以上で刊行されております。その遊び心と工夫にあふれた構成は、従来の図鑑とは一線を画す画期的な内容となっております。
この1冊に「自然」「ヒトのからだ」「科学と技術」「宇宙」「地球」「人びととくらし」「歴史」「芸術と文化」という百科事典的8大テーマ、好奇心をくすぐる128のトピックスを収録し、こどもたちが知るべきこと、知りたいことの全てを網羅しました。従来の図鑑にありがちな、教科書的内容にとどまらず、環境やメディア、経済や戦争といった21世紀を生きるこどもたちにとって重要なトピックスも取り上げております。また、巻末には各テーマに関するトリビア的な数字やデータを掲載。こどもだけでなく実はおとなも楽しめるような、最新の調査に基づいた情報が満載です。そして最も目を引く特長は、なんといってもそのページ演出にあります。単調なレイアウトはこの本には1ページもありません。どのページも美しく魅力的で、ワクワクするような内容を演出力豊かに伝えております。
そして日本語版監修には、こどもたちに大人気の米村でんじろう先生を起用。科学のおもしろさを実験を通して視覚的に伝え、こどもたちの創造力に働きかけている先生の活動は、この本が目指すものと通じております。
書店様の拡販の成果もありまして、『なんでも! いっぱい! こども大図鑑』は予想以上のご予約を頂き、お陰様で発売前から重版が決定いたしました。さらに、その重版分も瞬く間に品切れとなり、嬉しい悲鳴をあげる結果となりました。本書は海外生産品につき迅速な重版対応が難しく、ご迷惑をお掛けしておりますが、2月下旬には、待望の第3刷ができあがって参ります。新学期商戦へ向けて、更なるご拡販を何とぞよろしくお願いいたします。