全国書店新聞
             

平成31年3月15日号

取次、出版輸送と懇談会開く/キャッシュレス対応説明会も/滋賀組合

滋賀県書店商業組合(吉田徳一郎理事長)は2月5日、「取次各社・出版輸送との懇談会」と「スマホ決済サービス『PayPay』説明会」を近江八幡市の湖東信用金庫会議室で開催した。
午後4時から行われた懇談会には、組合理事10名、取次3名、出版輸送3名が出席。吉田理事長が、日頃の業務に対する感謝を述べた後、各社より現況説明が行われ、書店からは理事による質問や、事前に集めた書店からの要望アンケートを紹介し懇談を行った。
トーハン京都支店・大垣支店長は「滋賀の1月の対前年比は書籍96%、雑誌97%、コミック110%。今後は店頭活性化プロジェクトを進めていく」、日販京都支店・小川支店長は「コンビニでの成人向け雑誌取扱い中止は、撤去後の場所には書籍雑誌以外の商品が並べられる」、大阪屋栗田・宮崎氏は「楽天ポイント等の相乗効果を高めていきたい」とそれぞれ話した。出版輸送・手嶋取締役からは、輸送量減少や人件費等のコストアップで、ここ何年も据え置きだった返品運賃の見直しをお願いすることになるかもしれないとの説明があった。
書店からの要望では、取次には、「注文品処理を速く、送品ミスを無くしてほしい」「取次の店売を復活させてほしい」「スリップレスで、補充発注等手間がかかる」「取次担当者が店に来なくなった」、出版輸送には「返品を適時取次に届けてほしい」などの意見が出た。
また、懇談会に先立ち午後3時から、国が進める「キャシュレス化促進事業(消費者5%還元・事業者補助)」への書店対応として、「PayPay」取扱い営業担当者3名を招いて「スマホ決済サービス『PayPay』」の説明会を行った。
滋賀組合では今後、全組合書店のキャッシュレス化対応のため、支部単位での説明会開催や、希望書店への「PayPay」などキャッシュレス決済業者の訪問を進めていく。その始めとして、彦根支部(8書店)で2月23日、彦根市の銀座街商店街事務所で「PayPay」説明会を開いた。
(川瀬浩太郎広報委員)

中国・九州への配送、4月1日発売から1日遅く/輸送会社から法令順守の要請受け/取次協会

日本出版取次協会(取協)は3月5日、東京・千代田区の同協会会議室で業界紙向けの記者会見を開き、中国エリア5県、九州エリア7県で4月1日から、雑誌と書籍の配送を現行から1日遅くすると発表した。法令を遵守するため輸送スケジュールを変更したいとする輸送会社からの要請を受け入れ、3日目配送から4日目配送への変更を決断した。輸送会社の多くは人手不足とコスト上昇で経営状態が悪化し、出版物輸送の継続が困難な状況に陥りつつある。物流危機の出版業界への波及が顕在化し始めた。
輸送スケジュール変更の対象エリアは、中国全エリア(鳥取、島根、岡山、広島、山口)と九州全エリア(福岡、大分、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島)。
雑誌(一般誌、週刊誌、コミックス、ムック)は中国エリア、九州エリアともに発売日が1日遅くなる。ただし、一部銘柄は積込運用変更で現行発売日を維持する。また、九州エリアの一般誌は、取次引渡し日を1日繰上げて現行発売日を維持する。
書籍(新刊、書籍扱いコミックス、複合商品、注文品)は中国エリア、九州エリアともに発売日が1日遅くなる。全国一斉発売商品については「積込4日型」を設定し対応する。
開始日は4月1日以降に発売される商品より。
取協は昨年10月から、中国九州エリアの輸送会社から輸送スケジュールに関して変更を検討してほしいとする要請文書を受領し、その内容について様々な形で検討を重ねてきた。
要請文書は、現行のトラック幹線輸送(東京から現地の配送拠点)が運行管理・労務管理上、法令違反の状態にあり、出版物の継続的かつ安定的輸送の維持および法令を遵守するため、出版社からの商品搬入日、発売日を含む輸送スケジュールを変更せざるを得ないというもの。
手島梱包輸送(配送エリア=福岡県以外の九州)が10月5日付で「引渡し日変更のお願い」、日本通運(同=岡山、広島、鳥取、島根)が10月16日付で「出版物輸送のリードタイム延長について(お願い)」、阿知須運輸(同=山口)が11月30日付で「出版物輸配送所要時間見直しのお願い」との要請文書を提出。天龍運輸(同=福岡)も4日目配送の要望を口頭で伝えてきたという。
中国九州エリアではJRコンテナ、トラック便、その他(フェリー)を使って幹線輸送を行っているが、出版物は業量が一定でないため、JRコンテナでは常に全量を輸送するだけの枠を確保することが出来ず、幹線輸送はJRコンテナとトラック便等との併用となっている。
平成元年の労働省告示7号より「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」に定められた運転者の拘束時間、休息時間、運転時間を遵守するためには、中国九州エリアともに積込作業から荷降し・帰庫までの幹線輸送に丸3日を要する。さらに現地に到着してからの仕分けや店舗配送等の作業を入れると、4日目配送とせざるを得ない。
取協では、その他の輸送会社(トレーラー、船舶等)とも話し合ったが、3日目配送の現状を維持することはどのルートでも困難と判断し、4日目配送に変更するとの結論に至った。記者会見で取協運営委員会の安西浩和委員長(日販)は「トラック輸送途中の拘束時間、休憩時間、運転時間それぞれにルールがある。それを逸脱しているのが現行の輸送体制。これまで言われてきた輸送運賃の問題ではない。法令遵守の観点から問題を捉え、輸送スケジュール変更の結論に至った」と説明。
同・輸送研究委員会の柏木祐紀委員長(トーハン)は「気にかかるのは現地の読者の反応。時代に逆行する措置と映るのではないか。東京との発売日格差がさらに拡がることを真摯に受け止めなければならない。書店などの現場の混乱を考えると心苦しいが、輸送会社の法令遵守の問題。やむを得ない」と述べ、「輸送スケジュール変更は未来永劫ではなく、何らかの方法で法令に違反しない幹線輸送の方法を研究、検討していきたい」と理解を求めた。

九州選書市は9月18日開催/福岡県筑紫野市で九州ブロック会開く

九州ブロック会(中山寿賀雄会長)が2月6日、福岡県筑紫野市の大丸別荘で開かれ、各県組合理事長と理事9名、オブザーバー6名が出席。今年の九州選書市を9月18日に行うことなどを報告した。
中山会長を議長に選んで議案審議を行い、事業報告、決算報告および監査報告、事業計画案、予算案などすべての議案を原案通り承認可決した。
事業計画案では、①日書連の課題として書店環境改善実務者会議で継続して意見交換を行う、②来年の九州ブロック会は長崎で行い、今後も各県組合持ち回りで開催する、③今年の九州選書市は9月18日に開催する――などを説明した。
オブザーバーの九州雑誌センターからは、「取り扱い前年比が85%と低迷。ムック処理について前向きに検討している」との報告があった。テジマは「自然災害の影響で、九州は3日目地区から4日目地区に戻っている。これを解消するためには取協の指導が必要。返品運賃の値上げは、個別に交渉中で、実施時期は6月以降を考えている」と報告し、天龍運輸も同趣旨の報告を行った。

1月期販売額6・3%減/コミックスの好調が続く/出版科研調べ

出版科学研究所調べの1月期書籍雑誌推定販売金額(本体価格)は前年同月比6・3%減だった。
部門別では、書籍が同4・8%減、雑誌は同8・2%減といずれも低調。書籍のマイナスは、前年同月に部数の大きかった『漫画君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)や高単価の『広辞苑第7版』(岩波書店)などが売れていた影響を受けた。雑誌の内訳は、月刊誌が同7・6%減、週刊誌が同10・2%減だった。
返品率は、書籍が同1・4ポイント増の35・6%、雑誌は同0・4ポイント増の47・4%。内訳は月刊誌が同0・2ポイント増の49・3%、週刊誌が同1・4ポイント増の39・3%。月刊誌ではコミックスやムックの返品が改善されたが、週刊誌の返品増が目立った。
書店店頭の売上げは、書籍が約5%減。この中で新書は約6%増と好調だった。樹木希林『一切なりゆき』(文春新書)が12月20日の発売から1ヵ月で50万部を超えるヒットとなったことに加え、『妻のトリセツ』(講談社+α文庫)など新規ヒットが登場しプラスになった。
雑誌は、定期誌が約3%減、ムックが約6%減、コミックスが約7%増。コミックスは『キングダム』(集英社)や1月からアニメが放映中の『約束のネバーランド』(同上)などが好調で5ヵ月連続のプラスになった。

返品現地処理の話し合いについて経過報告/北海道理事会

北海道書店商業組合(志賀健一理事長)は2月19日、札幌市中央区の北海道建設会館で定例理事会を開催。返品現地処理の件については、志賀理事長が雑誌協会との懇談会を行ったことを報告した。このほか、事務局から中間決算について報告があった。
(事務局・髙橋牧子)

日書連のうごき

2月5日子どもの読書推進会議総会に西村副会長が出席。
2月6日書店大商談会に舩坂会長が出席。公共図書館プロジェクト会議に髙島顧問が出席。
2月8日潮ノンフィクション賞贈呈式に舩坂会長が出席。
2月12日読進協理事会に舩坂会長、西村副会長が出席。
2月13日常設委員会、部会。
2月14日定例理事会。JPO運営委員会に事務局が出席。
2月15日返品現地処理で雑誌協会との懇談会に柴﨑副会長、志賀理事が出席。
2月19日書店環境改善で小学館、ダイヤモンド社訪問に舩坂会長、鈴木、面屋両副会長が出席。
2月20日書店環境改善でトーハン、文藝春秋訪問に舩坂会長、鈴木、面屋両副会長が出席。雑誌コード管理委員会に柴﨑副会長が出席。
2月21日図書コード管理委員会に藤原副会長、志賀理事が出席。芥川・直木賞贈呈式に事務局が出席。
2月25日書店環境改善で集英社、講談社訪問に舩坂会長、鈴木、面屋副会長が出席。公取委出版物ヒアリングに本間副会長が出席。

「春夏秋冬本屋です」/「ケータイの進化に思う」/熊本・宮崎一心堂社長・宮﨑容一

日本にスマートフォン(スマホ)が登場してからおよそ15年。今ではすっかり定着し、なくてはならないものとなりました。一方でガラケーを望む声も、まだまだ多くあります。
ガラケーとは「ガラパゴスケータイ」の略で、スマホ参入前に使われていた普通の「携帯電話」のこと。「ケータイは電話とメールだけで十分」という人にとってスマホは無用で、ガラケーの方が魅力的でしょう。
しかし、スマホがこれだけ広がった今でも、なぜガラケーが根強く愛されるのでしょうか。
ガラケーは多くの家電製品、テレビやクーラーなどと同じで、ボタンによる操作は馴染み深いものがあります。また、通信料金の安さもガラケーの根強い要因と思われます。
先進的なモバイバルオペレーティングシステムを備え、よりパソコンに近い機能を持つスマホ。年代、世代、生活環境に応じて、ガラケーとスマホの選択をされてはどうでしょうか。
出版業界も「紙から電子」の時代へと大きく様変わりする中、時流に対応し、工夫を凝らした店作りが責務となっています。ケータイの進化と同様、書店も大きな転換期を迎えつつあります。

「春夏秋冬本屋です」執筆陣が4月1日号から代わります

街の本屋が日々の仕事を通じた喜びと手応えを綴る「春夏秋冬本屋です」の執筆陣は、4月1日号から以下の4氏に代わります。引き続きご期待ください。
神奈川・金文堂信濃屋書店 山本雅之氏
東京・教文館 森岡新氏
京都・若林書店 若林久嗣氏
兵庫・井戸書店 森忠延氏

NHK出版・ホーキング博士の遺作を拡販/東京組合

東京都書店商業組合(舩坂良雄理事長)は3月5日、東京都千代田区の書店会館で定例理事会を開催した。
事業・増売委員会では、NHK出版から、スティーヴン・ホーキング著『ビッグ・クエスチョン〈人類の難問〉に答えよう』(3月14日発売)について説明した。同書は、昨年逝去した天才物理学者・ホーキング博士による最後の書き下ろし。「神は存在するのか」「人工知能は人間より賢くなるのか」など、誰もが抱いている10の疑問に博士が分かりやすくユニークに答えたもの。特別増売企画として全組合員に3冊配本し、拡販に取り組む。条件は4ヵ月長期委託。
共同受注・デジタル委員会では、図書館への雑誌納入について実施するアンケート調査の質問項目案を審議。検討を踏まえ一部項目を変更して実施すると説明した。
この他、万引防止出版対策本部の阿部信行事務局長と㈱ウェリカジャパンの豊川奈帆代表取締役が「万引犯への損害賠償請求ネットワーク」について説明した。

中期経営計画「REBORN」推進へ/トーハン・機構改革と役員人事

トーハンは2月18日、3月1日付の機構改革・役員人事を発表した。4月にスタートする中期経営計画「REBORN」の推進に向け、機構改革ではAI推進担当、仕入プラットフォーム構築担当などを設置、特販支社と首都圏支社を統合して特販首都圏支社と名称変更した。
〈機構改革〉
【本部・部・室】
1.情報戦略本部を廃止し、その機能を情報システム部に移管する。
2.営業統括本部を営業本部に改称する。
3.AI推進担当を置き、社長直轄とする。
4.仕入プラットフォーム構築担当を置き、仕入部門管掌副社長直轄とする。
5.不動産事業部を新設し、事業改革推進室を廃止し、その機能を不動産事業部へ移管する。
6.営業統括推進部を営業統括部に改称する。
7.特販支社と首都圏支社を統合し、その名称を特販首都圏支社とする。
8.特販首都圏支社に、特販第一部と特販第二部と首都圏営業部を置き、首都圏支社の機能を首都圏営業部に移管する。
9.仕入企画推進室を仕入統括室に改称する。
10.複合第一事業部と複合第二事業部とニュープロダクト開発部と複合売場開発部を廃止し、複合事業本部に、複合仕入部と複合統括部を置く。
11.ロジスティックス部を、物流統括部に改称する。
12.輸送対策室を、物流統括部に統合する。
13.書籍流通業務部と雑誌流通業務部を、廃止する。
【グループ】
14.経営戦略部に、新規事業担当とフィットネス事業担当とマーケットイン型流通担当を置く。
15.取引部の書店経営推進室を廃止する。
16.取引部の取引総括グループと特販取引グループと、首都圏営業部の首都圏取引グループを統合し、その名称を取引グループとする。
17.営業統括部の店頭活性化プロジェクト推進室を、店頭活性化企画室に改称する。
18.営業統括部の機能の一部を、支社総括担当役員下の販売企画グループに移管する。
19.首都圏営業部の首都圏販売企画グループを、販売企画グループに改称する。
20.首都圏営業部の関東第一支店、関東第二支店、神奈川支店を統合し、その名称を関東支店とする。
21.関東支店に、リテールサポート第一グループとリテールサポート第二グループとリテールサポート第三グループとリテールサポート第四グループを置く。
22.首都圏営業部の首都圏特販グループを、特販グループに改称する。
23.グループ書店事業部に、総括グループを新設する。
24.書籍部の書籍仕入統括グループを、書籍仕入グループに改称する。
25.雑誌部にコミックグループを置き、コミック営業推進室を廃止し、その機能をコミックグループに移管する。
26.複合事業本部の企画総括グループを廃止し、総括グループと流通管理グループとライツ開発グループを置く。
27.複合仕入部に、複合仕入第一グループと複合仕入第二グループと複合仕入第三グループと戦略商品グループと開発商品グループを置く。
28.複合統括部に、複合統括第一グループと複合統括第二グループと西日本営業センターを置く。
〈役員人事〉
▽委嘱=営業本部長、支社総括担当営業統括部長、解=市場開発部長兼任委嘱
専務執行役員豊田広宣▽委嘱=取引・経理部門担当不動産事業部長、解=事業改革推進室担当
専務執行役員松本俊之▽解=書籍流通業務部長兼任委嘱、雑誌流通業務部長兼任委嘱
常務執行役員栃木裕史▽委嘱=営業本部副本部長グループ書店事業部門担当
常務執行役員藤原敏晴▽委嘱=情報システム部門担当、解=情報戦略本部長
常務執行役員高見真一▽委嘱=経営戦略部門担当、解=首都圏支社長
上席執行役員森岡憲司▽解=オムニチャネル推進担当兼任委嘱
上席執行役員塚田達夫▽委嘱=複合事業本部副本部長兼複合仕入部長、解=複合第一事業部長兼任委嘱、複合第二事業部長兼任委嘱、複合売場開発部長兼任委嘱
上席執行役員渡辺勝也▽委嘱=特販首都圏支社長
上席執行役員堀内洋一▽解=情報戦略本部副本部長兼任委嘱
執行役員青木亮二

トーハン森岡氏が顧問に/中央社

中央社は2月22日の取締役会で、トーハンの森岡憲司氏が3月1日付で顧問に就任することを決めた。

学習参考書協会・辞典協会「学参・辞典勉強会」②

学習参考書協会と辞典協会は「2019年新学期学参・辞典勉強会」を2月13日に東京都新宿区の研究社英語センターで開催した。第2回として、旺文社教育情報センターマネジャーの石井塁氏が「外部検定マイスター養成講座」と題し、「英語の外部検定利用入試」について行った講演の概要を紹介する。
【入試改革で外部検定利用が拡大/旺文社・石井塁氏】
今回の入試改革は戦後最大級と言われているが、現在の高校1年生から、2020年度実施の入試で大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に変わる。①国語と数学で記述式問題を導入②全科目で思考力系の問題を出題③英語の外部検定が利用可能――の3つが大きな変更点で、中でも英語の外部検定利用が改革の最大のポイントだ。
外部検定(外検)には、国産検定の英検、TEAP、GTECや、海外のTOEFL、TOEIC、IELTS、ケンブリッジ英検があるが、国産の3検定が中心になると考える。それぞれを比較すると、検定料は高低差があり、実施会場も全都道府県で行うものや、関東、中部といった各地域単位で行うものもある。会場については、通常の英検では自分の高校で行う「学校実施」があるが、国が入試で利用できると認定する試験の要件として、20年度より自校の先生が監督・採点することは不可となった。英検は大学入試用として「新方式」と呼ばれる3種類のテストで認定を受けており、基本的に公開会場に出向いて受検することになる。学校実施の場合は、他の外検もそうだが、スタッフを派遣して行う。
試験の実施方法では、ペーパーで行うものと、コンピュータで行うものがあるが、今の高校生はまだ紙の試験の方がやりやすいのではないかと思っている。高校生が外検を選ぶポイントは、①検定料が安い②試験会場が近い③高校での学習に即している④紙の試験(特に「書く」技能)⑤多くの大学で利用できる――ということで、これらを総合するとやはり国産3検定に人気が集まる。
外検を利用した入試は既に多くの大学で独自に導入されており、有名私立大では軒並み実施している状況だ。利用方法は大学によってさまざまで、①出願資格として用いる②入試で加点する③入試で得点換算する――の3つに分けられる。①は、例えば英検準2級以上で出願可とするもの。②は、一般入試で準2級は5点、2級は10点、準1級は15点加点するという使い方をする。③は、準2級は英語の試験で80点、2級は90点、準1級は100点とみなす。入試の英語も受験可とし、得点の良い方で合否判定するというもの。
使える外検も大学によりさまざまだが、英検はほぼ全大学で利用可能であるため、受験生はほとんどが英検を受けているという状況だ。大学入試で使える英語レベルは準2級以上。高校生は話すことを特に苦手にしているので、早い学年や小中学生から外検対策に取り組むとしたら、スピーキング対策が大きなカギになってくると思う。
既に広がっている外検入試だが、今回の入試改革で国が共通テストの英語の代わりに外検を使っても良い、両方使っても可という方針を打ち出した。また、受験生の外検成績を集約し、出願した大学にまとめて送る「成績提供システム」を国が開発するのが非常に大きなポイントだ。外検入試を行うか、このシステムを使うかは各大学の判断となるが、これにより外検利用が一気に拡大することが予想される。
このシステムには国が利用できると認定した「認定試験」しか登録できない。また、受験生は高校3年生の4~12月に受けた2回までの成績しか登録できない。受験生は高2の11月から高3の9月までにIDを申請し、外検に申し込むときにIDを使って登録するため、外検の結果を見てからその成績を使うということはできない。国は認定した外検とともに「CEFR」(外国語の運用能力を示す国際基準)を発表し、各検定のスコアを横並びで比較できるようにした。
英検は、「新方式」と呼ばれる①「S―Interview」(紙と対面式試験)、②「1day」(「書く」技能のみ紙の試験で他はコンピュータ)、③「英検CBT」(4技能全てコンピュータ)の3つの試験が認定された。従来型の英検は認定されず、システムを使わない入試なら利用できる。新方式は、級やスコア、問題構成などは従来型と変わらず、同じ問題集を利用できる。特に①は試験がほとんど従来型と変わらないのでお奨めだ。
英検は「英検CSE」というスコアで成績を出し、級の合否とCEFRの判定が出る。各級で測定できるCEFRは異なり、CEFR判定が出るCSEの範囲もそれぞれ設定されているため、簡単な級で満点を取っても高い判定が出るということはない。大学が入試でどの判定を求めてくるかだが、現状は「出願資格は準2級以上」など、「級合格」を求める大学が大半だ。「出願資格は準2級合格かつCSE1800以上」という「級合格とCSE」を組み合わせる大学や、級の合否は問わずCSEのみのクリアを求める大学も増えている。入試改革後は、CEFRを求める大学が増えるかもしれない。受験生は級合格を目指すのが鉄則で、実力に合った級を受けることが大事だ。
国立大学協会は、一般選抜では共通テストと外検の両方を必須、外検の利用は出願資格と加点のいずれか又は両方とする方針を発表した。公立大学協会は、共通テストと外検の両方必須が望ましいとした。ただこの方針には強制力はない。各大学の新入試予告が出始めており、今後変更もあり得るが、国公立大では、旧7帝大が「利用するが、必須とせず」。筑波大、一橋大、東京工業大など難関国公立大は「利用(=たぶん必須)」、その他国公立大も「利用(=たぶん必須)」。北海道大、東北大、岩手県立大など一部の大学は利用しない。これは、受験機会の公平性を気にしたからだ。私立大では利用校が大幅に増えるとみられる。共通テストの結果を見て志望校を変える受験生もおり、その際外検が急に必要になるケースもあることから、高校側としては「必須」という前提で外検を受検させることになるだろう。
成績提供システムについては、大半の大学が利用すると予想する。一部私立大では、システムとともに、高2の成績や従来型英検も可とした「独自回収」を併用するだろう。認定試験は何を採用するかだが、国公立大は「フル採用」、一部私立大で「いくつかに絞って指定」するとみられる。
受験生が2回の試験をどう受けるかだが、今のところ2回とも学校側で指定して受けさせるとする高校が多い。だが、1回は高校側で英検などを受検させて、もう1回は生徒が志望校を調べて決めさせるのが現実的だと思う。いつ受検するかについては、6~7月と9~10月に山が来るのではないか。高校側としては、外検は10月までに決着をつけ、11月以降は他教科の対策をしたいと考えると思う。
「どの外検がいいのか」という質問に対してだが、やはり国産3検定が中心になるだろう。現在圧勝の英検に、GTECがどれだけ伸びるか、そこにTEAPがどう絡むかが今後の動きになる。志望校がどの外検を使うか必ず確認すること。多くの大学で使えるのは英検で、準2級以上というのが答えになる。早い学年での対策については、スピーキング対策をしっかりすること、英検5級など易しい試験で検定慣れしておくことも奨めてほしい。

藤﨑氏が取締役に新任/河出書房新社

河出書房新社は2月25日に開いた定時株主総会後の取締役会で、左記の役員業務分担を行った。○新任。
代表取締役社長
小野寺優
常務取締役(営業・製作・総務担当)岡垣重男
取締役(編集担当)
阿部晴政
同(営業・製作担当)
山口茂樹
同(総務担当)金綱美紀夫
同(編集担当)○藤﨑寛之
監査役(非常勤)野村智夫
伊藤美代治取締役は退任した。

授賞3氏が喜びのスピーチ/第160回芥川賞・直木賞贈呈式

第160回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が2月21日、東京都内で開かれ、芥川賞を受賞した『ニムロッド』(群像12月号)の上田岳弘氏、『1R1分34秒』(新潮11月号)の町屋良平氏、直木賞を受賞した『宝島』(講談社)の真藤順丈氏に正賞の時計と副賞の100万円が贈られた。
上田氏は「作家は『流されていくとこうなってしまう』というものに反抗する使命を帯びている。根源的な衝動がなくならない限りは書いていきたい」と決意を語った。
町屋氏は「登場人物のボクサーはボクシングが好きという気持ちだけでは乗り越えられない壁にぶち当たった。自分が小説を続けていくことがどういうことか、もう一度考えないといけないという気持ちが体の中にあって、それが言葉になった。何かを続けていく傲慢さと向き合って書き続ける」と抱負を述べた。
真藤氏は「小説が降りてくるのを待つのではなく、小説をつかみ取りに行くような書き手でありたい。小説を書いていくことで、次の世代、新しい時代の書き手の肥やしになれればうれしい」と喜びを語った。

講談社、増収増益の決算/デジタル分野の伸び、紙の落込み補う/電子書籍が44%大幅増に

講談社は2月21日、東京・文京区の本社で定時株主総会を開き、第80期(平成29年12月1日~平成30年11月30日)の決算を発表。紙の書籍・雑誌の落ち込みをデジタル・版権分野を中心とした事業収入とWEB広告収入でカバーし、増収増益となった。
不動産賃貸収入を含めた全社売上高は前年比2・1%増の1204億8400万円、出版事業合計の売上高は同2・2%増の1173億円で、このうち書籍・雑誌など製品売上高は同9・0%減の669億円。営業利益は同3億円増の22億円、経常利益は同3億円増の47億円、税引前当期純利益は同22・5%増の45億700万円、当期純利益は同63・6%増の28億5900万円となった。
売上高の内訳は、雑誌が同8・9%減の509億900万円、書籍が同9・4%減の160億3300万円。雑誌のうち月刊誌や週刊誌などの「雑誌」は同1・9%減の144億1800万円、「コミック」は同11・4%減の364億9100万円。
広告収入は同8・6%増の50億600万円。このうち雑誌は同8・6%減の29億6400万円、WEBは同55・8%増の18億8000万円、その他は0・4%減の1億6200万円。WEB広告の伸長で6期ぶりに前年を上回った。
事業収入は同24・1%増の443億2100万円で、このうちデジタル関連収入は同33・9%増の334億円。デジタル関連収入のうち電子書籍が同44・1%増の315億円、国内版権が同5・2%減の60億円、海外版権が同9・3%増の47億円。
不動産賃貸収入は同0・6%増の31億5100万円。
年度前半は電子書籍の伸びが止まったが、海賊版サイト対策の効果もあり、年度後半はコミック分野を中心に売上げが回復した。また、SNSの活用で売り伸ばした写真集、年間を通して話題を提供した新書、アニメ化で火がつき大ヒット作に成長したコミックスが業績を牽引した。
同日行われた決算報告会で野間省伸社長は、第80期決算について「昨年前半は漫画村など海賊版サイトが猛威を振るい電子コミック市場は大打撃を受けた。業界全体が14年連続マイナスとなる中、増収増益になったことを喜んでいる」と評価した。
1月に芥川賞と直木賞を同時受賞。昨年立ち上げたアーティスト企画部で、乃木坂46の生田絵梨花『インターミッション』が発売1ヵ月で30万部、一昨年2月の発売から記録的な重版が続いている白石麻衣『パスポート』は35万部に達し今も売れ続けていると、写真集ビジネスが絶好調であることに言及。「今年の上半期は良い数字が期待できる」として、「創業110周年の年に素晴らしいスタートダッシュを切ることができた。様々な取り組みに挑戦する年にしたい」と意気込みを語った。
新役員体制は以下の通り。○印は新任。
代表取締役社長
野間省伸
常務取締役(社長室、総務局、編集総務局)
金丸徳雄
同(販売局)峰岸延也
同(ライツ・メディアビジネス局)古川公平
同(広報室、第五事業局・担当役員直轄[新企画開発チーム])渡瀬昌彦
取締役(第三事業局、第四事業局)森田浩章
同(第六事業局)
清田則子
同(第一事業局、第二事業局)鈴木章一
同(経理局)吉富伸享
同(IT戦略企画室)
吉羽治
同(非常勤)○野内雅宏
常任監査役白石光行
監査役足立直樹
顧問(相談役)森武文
顧問重村博文
同大竹深夫

定期購読獲得マニュアルを作成/絶好調「ラジオ英会話」さらに売り伸ばす/NHK出版「春の企画説明会」

NHK出版は2月7日、東京・文京区の東京ドームホテルで「2019年春の企画説明会」を開き、語学・家庭・趣味各分野のテキスト、書籍・ムックの注目企画の内容や販売施策を説明。定期購読獲得のため書店向けにオペレーションマニュアルを作成したことを報告し、増売への積極的な取り組みを要請した。
冒頭あいさつした小林毅専務は、18年の販売動向について、『ラジオ英会話』をはじめとする英語テキストが大きく伸長したと報告。「東京オリンピック・パラリンピック、20年度から始まる新学習指導要領で大きく変わる英語教育を見据えた客の購読が増えている」ことを理由にあげた。
19年度出版企画については、①テキストのイメージキャラクターにNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」で青天目澄子を演じた女優・松本穂香さんが決定、②各学習者のニーズやレベルに合った語学テキストを用意、③『きょうの料理』をリニューアル、④書籍大型企画を刊行――とポイントを説明した。
引き続き、語学テキスト、家庭テキスト、書籍の各担当者が企画説明。
語学テキストについては、18年度は『ラジオ英会話』の実売部数が前年比20%増と大きく伸びたと報告したあと、ゲストとして講師の大西泰斗氏が登場。「NHKはたくさんのネイティヴに確認するので内容に間違いがない」とテキストの信頼性を評価し、「このような出版社と仕事できることは大きな喜び」と語った。19年度の『ラジオ英会話』は「話すための単語力」をテーマに、すべての年齢・レベルの学習者に役立つものになるという。
家庭テキストでは、『きょうの料理』をシニア世代にもやさしい誌面にリニューアル。仕事をリタイアした男性や子育てが終わった主婦を「エントリーシニア」と名付け、新しいチャレンジをサポートすることを目指すとした。
定期購読獲得では、昨年行ったブックエース(茨城)とうさぎや(栃木)の企業対抗戦の結果を報告。今年は「定期購読(お取り置きサービス)受注獲得オペレーションマニュアル」と「定期購読申込書」を作成し、書店に配布する。また、定期購読獲得コンクールを今年も実施する。
書籍企画では、3月14日発売のスティーヴン・ホーキング『ビッグ・クエスチョン』、7月発売予定の伊坂幸太郎『クジラアタマ』、4月10日発売の池上彰『おとなの教養2』、3月25日に2点同時刊行する新シリーズ「学びのきほん」を説明した。また、1月30日に発売された『発現』の著者・阿部智里氏がゲストとして登壇した。
懇親会では同社の森永公紀社長、紀伊國屋書店の高井昌史社長、日書連の舩坂良雄会長があいさつ。舩坂会長は「NHKテキストの読者はシニアが多く、関連商品も買っていく。書店にとってありがたい商材」と述べ、同社出版物の高い商品力に期待を寄せた。